(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円環状のステータコアの径方向内側に設けられたスロットに収容されるスロット収容部と、前記円環状のステータコアの中心軸線の延びる方向である中心軸線方向において前記ステータコアの端面の外側に配置されるコイルエンド部とを有するコイルを、円環状に複数組み合わせて前記ステータコアの径方向内側に配置する工程と、
前記コイルエンド部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、前記スロット収容部同士の間隔を広げながら前記スロットに前記コイルを挿入する工程と、
前記スロット収容部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、前記コイルが径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程とを備える、ステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記コイルのうち、中心軸線方向における前記スロット収容部の略中央の部分を最初に径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程である、請求項1に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、中心軸線方向における前記スロット収容部の略中央の部分を最初に押圧した後、前記コイルの径方向外側への押圧が進むにしたがって、中心軸線方向における前記スロット収容部の略中央の部分から離間した部分に向かって徐々に前記コイルの押圧される部分が増加するように押圧する工程である、請求項2に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記ステータコアの周方向側から見て、全体として、前記スロット収容部および前記コイルエンド部が径方向内側に凸状に反るように前記コイルを挿入した後、前記スロット収容部および前記コイルエンド部を、全体として、前記ステータコアの周方向側から見て、径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記スロット収容部と前記スロットの底部とを接触させた状態で、前記コイルを前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記コイルエンド部を押圧することによる前記コイルを挿入する工程が終了した後に行われるように構成されている、請求項5に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記スロット収容部と前記スロットの底部との間に隙間が生じている状態を維持しながら、前記コイルを前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形した後に、前記スロット収容部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、前記スロットに前記コイルをさらに挿入する工程を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
前記コイルを成形する工程は、前記コイルエンド部の径方向外側への移動を規制するように前記コイルエンド部の径方向外側を規制した状態で、前記コイルを前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより前記コイルを成形する工程である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
円環状に複数組み合わせて前記ステータコアの径方向内側に配置された前記コイルに、前記スロット収容部を前記スロットに案内するための、前記スロットの形状に沿って径方向外側に向かって周方向の幅が大きくなるガイド治具を取り付ける工程をさらに備え、
前記コイルを成形する工程は、前記スロット収容部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧して前記ガイド治具に沿って移動させることにより、径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する工程である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のステータの組立方法。
円環状のステータコアの径方向内側に設けられたスロットに収容されるスロット収容部と、前記円環状のステータコアの中心軸線の延びる方向である中心軸線方向において前記ステータコアの端面の外側に配置されるコイルエンド部とを有するコイルの、前記コイルエンド部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、前記スロット収容部同士の間隔を広げながら前記スロットに前記コイルを挿入する挿入治具と、
前記スロット収容部を前記ステータコアの径方向内側から径方向外側に押圧することにより、前記コイルが径方向外側に凸状に反るように前記コイルを成形する成形治具とを備える、ステータの組立装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
(ステータの構造)
図1〜
図3を参照して、ステータ100の構造について説明する。なお、
図1では、絶縁シート50は省略されている。
【0016】
なお、本願明細書では、
図1に示すように、「ステータコア10の中心軸線方向」とは、ステータ100として完成した状態のステータコア10の中心軸線(ロータの回転軸線)に沿った方向(A方向)を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100として完成した状態のステータコア10の周方向(B1方向またはB2方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100として完成した状態のステータコア10の半径方向(C方向)を意味する。また、「径方向内側」とは、ステータ100として完成した状態のステータコア10の中心に向かう方向(C1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、ステータ100として完成した状態のステータコア10の外に向かう方向(C2方向)を意味する。
【0017】
図1に示すように、ステータ100は、円環状のステータコア10を備えている。詳細には、ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11から径方向内側へ向けて延びる複数のティース12とを含む。ティース12は、ステータコア10の周方向に沿って等角度間隔に配置されている。また、隣接する2つのティース12の間に、コイル20を保持するスロット13が形成されている。ステータコア10の径方向内側には、複数のスロット13が周状に配列されている。なお、複数のスロット13は、径方向に沿って延びるように形成されている。すなわち、隣接するスロット13同士の間隔が、スロット13の径方向外側の底部13a(
図4参照)に向かうにしたがって徐々に大きくなるように構成されている。
【0018】
複数のスロット13の各々の内壁面には、
図2に示す絶縁シート50が配置されている。絶縁シート50は、コイル20とスロット13とを絶縁する機能を有する。絶縁シート50は、スロット13の内壁面に沿った形状を有する。具体的には、絶縁シート50は、中心軸線方向から見て略U字形状で、かつ、周方向から見て略矩形形状を有するように形成されている。そして、略U字形状の絶縁シート50は、平板形状の状態から折り曲げられるように形成されており、径方向内側に、開口している。
【0019】
図3に示すように、コイル20は、略矩形形状の断面を有する平角導線により構成され、平角導線を複数回巻回して所定形状に成形することによって環形状に形成されている。
【0020】
コイル20は、円環状のステータコア10の互いに異なるスロット13に収容される一対のスロット収容部21(スロット収容部21aおよび21b)を含む。また、コイル20は、円環状のステータコア10の中心軸線の延びる方向である中心軸線方向(
図1参照)においてスロット13の外側に配置される一対のコイルエンド部22(コイルエンド部22aおよび22b)を含む。コイルエンド部22aおよび22bは、それぞれ、ステータコア10の一方の端面10a(
図1参照)の外側、および、ステータコア10の他方の端面10b(
図1参照)の外側に配置される。また、コイル20は、スロット収容部21aおよび21bからそれぞれ延びるリード線部23aおよび23bを含む。
【0021】
スロット収容部21aおよび21bは、略直線状に形成され、それぞれ別々のスロット13内に中心軸線方向に沿って配置される。コイルエンド部22aおよび22bは、略三角形状をなすように屈曲して形成され、周方向に離間したスロット収容部21aおよび21bの端部同士を接続している。
【0022】
コイル20は、ステータ100の各スロット13に対して周方向に複数配置される。複数のコイル20は、全体としてステータコア10の内周に沿う円環形状を成すように周状に配列される。
【0023】
(ステータの組立装置の構造)
次に、第1実施形態によるステータ100の組立装置200の構造について説明する。
【0024】
ステータ100の組立装置200は、ステータコア10に対して平角導線からなるコイル20を組み付けるための装置である。
図5に示すように、組立装置200には、挿入治具210が設けられている。挿入治具210は、コイル20のコイルエンド部22をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、スロット収容部21同士の間隔を広げながらスロット13にコイル20を挿入するように構成されている。
【0025】
挿入治具210(挿入治具210aおよび210b)は、ステータコア10の中心軸線方向(Z方向)の一方側と他方側とに設けられている。また、挿入治具210は、複数の円弧状の部分から構成されている。そして、挿入治具210の複数の円弧状の部分が径方向内側から径方向外側に移動することによって、円環状に組み合わされた複数のコイル20(コイルアッセンブリ40、
図4参照)のコイルエンド部22が、一斉に押圧される。
【0026】
ここで、第1実施形態では、
図6および
図7に示すように、組立装置200には、成形治具220が設けられている。成形治具220は、スロット収容部21をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル20を成形する(
図7参照)ように構成されている。成形治具220は、平板形状を有している。また、成形治具220は、鉄などの比較的硬度の高い部材料により形成されている。また、成形治具220は、コイル20(スロット13)と同じ数だけ設けられている。
【0027】
また、第1実施形態では、
図8に示すように、成形治具220は、ステータコア10の周方向側から見て、径方向外側に凸状に先細る形状を有する。具体的には、成形治具220は、コイル20に当接する当接部221を有する。当接部221は、周方向から見て、径方向内側から径方向外側に向かって、中心軸線方向の長さL1が徐々に小さくなる。なお、成形治具220の径方向外側の端部222は、径方向外側に突出する弧状に形成されている。また、
図9および
図10に示すように、中心軸線方向の長さL1が徐々に小さくなる部分223(部分223a、部分223b)と、端部222とは、共に、角部が面取りされた形状(R形状)を有する。
【0028】
また、弧状の端部222の中心軸線方向に沿った方向の長さL2は、ステータコア10(コイル20のスロット収容部21)の中心軸線に沿った方向の長さL3よりも大きい。そして、弧状の端部222は、ステータコア10の一方側の端面10aおよび他方側の端面10bよりも、中心軸線方向の外側に突出(露出)している。
【0029】
また、
図8に示すように、成形治具220は、当接部221から上方に延びる部分224と、部分224から径方向外側に延びる部分225とを含む。当接部221と部分224との境界近傍は、R形状に形成されている。また、部分224と部分225との境界近傍は、R形状に形成されている。また、部分225の上方側と下方側とにはそれぞれ、案内部231および案内部232が設けられている。そして、部分225が案内部231と案内部232との間を径方向内側から径方向外側に向かって案内される。これにより、成形治具220が径方向内側から径方向外側に向かって水平に移動する。
【0030】
(ステータの組立方法)
次に、ステータ100の組立方法について説明する。なお、
図4、
図5、
図6、
図7および
図11は、組立装置200(ステータコア10)をZ方向に沿った平面で切断した断面図を示している。また、
図5、
図6、
図7および
図11では、絶縁シート50は省略されている。
【0031】
〈コイルアッセンブリを形成する工程〉
まず、
図4に示すように、複数のコイル20が円環状に配置されることにより、コイルアッセンブリ40が形成される。
【0032】
〈絶縁シートを取り付ける工程〉
次に、円環状に複数組み合わせたコイル20のスロット収容部21に、絶縁シート50を取り付ける。具体的には、絶縁シート50は、コイルアッセンブリ40の径方向外側から径方向内側に向かって、コイルアッセンブリ40を形成した状態のコイル20のスロット収容部21に取り付けられる。
【0033】
〈ガイド治具を挿入する工程〉
次に、コイルアッセンブリ40(円環状に複数組み合わせてステータコア10の径方向内側に配置されたコイル20)を形成するコイル20にガイド治具30(第1ガイド治具31aおよび31b、第2ガイド治具32)が挿入される。ガイド治具30は、スロット収容部21をスロット13に案内するように構成されている。また、第1ガイド治具31aおよび31bは、スロット13の形状に沿って径方向外側に向かって周方向の幅が大きくなるように構成されている。具体的には、第1ガイド治具31aおよび31bは、スロット収容部21をスロット13に案内するガイド部131を含み、径方向外側に向かって幅が大きくなるくさび形状を有する。ガイド部131は、くさび形状の先端部(径方向内側の部分)における周方向両側の縁部であり、径方向に沿って直線状に形成されている。そして、ガイド治具30が挿入されたコイルアッセンブリ40が、ステータコア10の径方向内側に配置される。なお、第1ガイド治具31aおよび31bは、特許請求の範囲の「ガイド治具」の一例である。
【0034】
〈コイルエンド部を押圧することによるコイルの挿入工程〉
次に、
図5に示すように、コイル20のコイルエンド部22が挿入治具210によってステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧されることにより、スロット収容部21aおよび21b同士の間隔を広げながらスロット13にコイル20が挿入される。すなわち、コイル20と絶縁シート50とが一体となってスロット13に挿入される。なお、ガイド治具30は、隣接するスロット13同士の間隔がスロット13の底部13aに向かうにしたがって徐々に大きくなるスロット13に沿うように、径方向外側に向かって徐々に幅が大きくなる。そして、挿入の過程で、ガイド治具30は、スロット収容部21aおよび21bがガイド治具30に沿って径方向外側に移動するようにコイル20を案内しながら、コイル20の径方向移動によってスロット収容部21aと21bとの間を周方向(幅方向)に押し拡げるようにしてコイル20を変形させる。具体的には、第1ガイド治具31aおよび31bのガイド部131が絶縁シート50を介してコイル20の内側に接触した状態で、コイル20が径方向外側に移動されることにより、ガイド部131のくさび形状に沿うようにスロット収容部21aと21bとの間の間隔が広げられる。これにより、コイル20は、隣接するスロット13同士の間隔がスロット13の底部13aに向かうにしたがって徐々に大きくなるスロット13に沿って挿入される。
【0035】
また、コイルエンド部22aとコイルエンド部22bとの両方が同時に押圧されることにより、スロット収容部21aおよび21b同士の間隔を広げながらスロット13にコイル20が挿入される。コイルエンド部22aとコイルエンド部22bとは、それぞれ、コイルアッセンブリ40の中心軸線方向の両側にそれぞれ配置されている挿入治具210により押圧される。ここで、コイルエンド部22aおよび22b、および、スロット収容部21aおよび21bがステータコア10の径方向外側に移動するが、スロット収容部21aおよび21bは、ステータコア10との摩擦(主に、スロット13を形成するティース12の壁面との摩擦など)やガイド治具30との摩擦により、コイルエンド部22aおよび22bと比較して径方向外側への移動距離が小さい。具体的には、スロット収容部21が絶縁シート50に覆われているので、絶縁シート50とステータコア10との摩擦等により、スロット収容部21は、コイルエンド部22と比較して径方向外側への移動距離が小さくなる。このため、コイル20が、径方向外側(径方向内側に凸状)に反らされた状態となる。すなわち、径方向内側にスロット収容部21が膨らみ、コイル20(スロット収容部21およびコイルエンド部22)が全体として弓状となるコイル20の反りが発生する。
【0036】
そして、スロット収容部21とスロット13の径方向外側の底部13aとが所定の間隔d(隙間CL)を有して離間した状態で、コイルエンド部22を押圧することが停止される。これにより、コイルエンド部22を押圧することによる(挿入治具210による)コイル20の挿入工程が終了する。なお、スロット13の径方向外側の底部13aとは、径方向内側に開口しているスロット13の径方向外側に配置される内側面(隣接するティース12同士を接続する面)を意味する。
【0037】
〈コイルを成形する工程〉
次に、第1実施形態では、
図6および
図7に示すように、挿入治具210によるコイル20の挿入が終了した後、コイル20をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル20が径方向外側に凸状に反るようにコイル20を成形する。つまり、ステータコア10の周方向側から見て、スロット収容部21およびコイルエンド部22が径方向内側に凸状に反るようにコイル20を挿入した後、スロット収容部21およびコイルエンド部22を、全体として、ステータコア10の周方向側から見て、径方向外側に凸状に反るようにコイル20を成形する。具体的には、スロット収容部21をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧して第1ガイド治具31aおよび31bに沿って移動させることにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル20が成形される。ここで、スロット収容部21と、第1ガイド治具31aおよび31b(ガイド部131)との間の接触抵抗により、スロット収容部21およびコイルエンド部22が、全体として、径方向外側に凸状に反るようにコイル20が成形される。
【0038】
また、第1実施形態では、
図6に示すように、成形治具220は、コイル20のうち、中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分を最初に径方向内側から径方向外側に押圧する。そして、
図7に示すように中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分を最初に押圧した後、コイル20の径方向外側への押圧が進むにしたがって、中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分から離間した部分に向かって徐々にコイル20の押圧される部分が増加するようにコイル20が成形される。
【0039】
つまり、成形治具220がスロット収容部21の略中央の部分に当接した後、成形治具220の径方向外側への移動(径方向に沿って直線状に移動)に伴って、成形治具220とスロット収容部21とが接触する部分が徐々に増加する。これにより、スロット収容部21は、成形治具220の形状に倣うように、径方向外側に凸状に反るように成形される。なお、スロット収容部21だけでなく、成形治具220とコイルエンド部22とが当接する場合もある。
【0040】
なお、成形治具220は、成形治具220を駆動する専用の駆動装置によって移動されてもよいし、
図6および
図7に示すように、コイルエンド部22を押圧する挿入治具210によって移動されてもよい。
【0041】
また、第1実施形態では、
図7に示すように、スロット収容部21とスロット13の底部13aとを接触させた状態で、コイル20をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル20を成形する。つまり、成形治具220の移動時の荷重が、コイル20がスロット13の底部13aに接触することにより所定の大きさになった場合、成形治具220の移動が停止される。
【0042】
また、第1実施形態では、複数のコイル20は、一斉にステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧されることにより、径方向外側に凸状に反るように成形される。つまり、コイル20と同じ数だけ設けられた成形治具220が一斉に径方向内側から径方向外側に等速度で移動する。これにより、複数のコイル20が一斉に成形される。
【0043】
なお、凸状に反るようにコイル20を成形する工程では、コイル20を反らせるだけでなく、スロット収容部21同士の間隔を広げながらスロット13にコイル20を挿入する工程を少し含んでいる。成形治具220のストローク量(径方向の移動量)が多い場合は、スロット13にコイル20が挿入されるためである。
【0044】
〈スロット収容部を押圧することによるコイルの挿入工程〉
そして、第1実施形態では、
図11に示すように、コイル20を成形した後に、スロット収容部21をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、スロット13にコイル20をさらに挿入する。具体的には、組立装置200には、長方形形状の板部材250が設けられている。そして、スロット収容部21とスロット13の径方向外側の底部13aとが当接するように、板部材250により、スロット収容部21を押圧することによりスロット13にコイル20を挿入する。これにより、コイル20の成形後にスロット収容部21が反った状態(弓形の状態)であっても、スロット収容部21が中心軸線方向に沿うように成形される。また、スロット収容部21とスロット13の径方向外側の底部13aとの所定の間隔dが略ゼロ(離間していない状態)になる。すなわち、スロット収容部21の径方向外側の面と、スロット13の径方向外側の底部13a(内側面)とが面接触した状態になる。
【0045】
〈コイルエンド部を成形する工程〉
上記のスロット収容部21を押圧してスロット13にコイル20を挿入する工程の後、スプリングバックによって、コイルエンド部22が径方向内側に戻る(径方向内側に膨らむ、反る)場合がある。この場合、スロット収容部21を押圧することによりスロット13にコイル20を挿入する工程の後に、コイルエンド部22を径方向外側に押圧することにより、スロット収容部21よりも径方向内側に位置する(膨らんだ)コイルエンド部22を中心軸線方向に沿うように成形する。これにより、ステータ100の組立が終了する。
【0046】
[第2実施形態]
次に、
図12および
図13を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、コイル20の挿入が一旦停止された後、コイル20の成形が行われる。
【0047】
(ステータの組立方法)
第2実施形態の、〈コイルアッセンブリを形成する工程〉、〈絶縁シートを取り付ける工程〉、および、〈ガイド治具を挿入する工程〉は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
〈コイルエンド部を押圧することによるコイルの挿入工程(1)〉
ここで、
図12に示すように、コイルエンド部22が挿入治具210によってステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧されることにより、スロット13にコイル20が挿入される。このとき、コイル20(スロット収容部21)を底部13aとの間の間隔がd(
図5参照)になるまで挿入せずに、間隔d1(>d)の状態で、コイル20の挿入を一旦停止させる。この停止させる時点は、たとえば、コイル20の変形が比較的大きくなる前(コイル20が塑性変形した直後など)である。
【0049】
〈コイルを成形する工程〉
そして、第2実施形態では、
図13に示すように、コイル20を挿入する工程を一旦停止させた後、成形治具220によりコイル20を成形する。
【0050】
ここで、第2実施形態では、スロット収容部21とスロット13の底部13aとの間に隙間CL2が生じている状態を維持しながら、コイル20をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル20を径方向外側に凸状に反るように成形する。つまり、コイル20の挿入が終了した後、スロット収容部21とスロット13の径方向外側の底部13aとが所定の間隔d1を有して離間している。そして、この状態で、コイル20がステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧されることにより、コイル20が中心軸線方向に沿うように成形される。
【0051】
〈コイルエンド部を押圧することによるコイルの挿入工程(2)〉
その後、コイル20が成形された後、再び、挿入治具210によりコイルエンド部22を押圧することによりスロット13にコイル20を挿入する。なお、上記のコイルの挿入工程(1)、コイルを成形する工程、および、コイルの挿入工程(2)は、複数回行ってもよい。これにより、1回の挿入工程におけるコイル20の移動距離が小さくなるので、コイル20の反りが小さくなる。その結果、コイル20の成形(反りを小さくすること)を容易に行うことが可能になる。
【0052】
なお、第2実施形態のその他の工程は、上記第1実施形態と同様である。
【0053】
(第1および第2実施形態の効果)
第1および第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
第1および第2実施形態では、上記のように、スロット収容部(21)をステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル(20)が径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形する工程を備える。これにより、コイル(20)を挿入する工程において発生する、径方向内側にスロット収容部(22)が膨らみコイル(20)全体として弓状(径方向内側に凸状)となるコイル(20)の反りと反対方向にコイル(20)が反らされる(径方向外側に凸状に反らされる)ので、コイル(20)の反りを小さくすることができる。その結果、コイル(20)とロータとの間(スロット(13)の径方向内側の隙間)に存在する空気の層の厚みが比較的大きくなるので、スロット(13)の径方向内側の隙間の磁気抵抗が高くなる。このため、ロータに設けられる永久磁石から発生した磁束がコイル(20)側に向かって通過しにくくなる。その結果、コイル(20)を通過する磁束量が少なくなるので、コイル(20)において発生する渦電流が小さくなる。これにより、コイル(20)において発生する渦電流に起因する損失を低減することができる。
【0055】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、コイル(20)のうち、中心軸線方向におけるスロット収容部(21)の略中央の部分を最初に径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形する。このように構成すれば、スロット収容部(21)の略中央の部分を中心として、中心軸線方向の一方側と他方側とにおいて対称にコイル(20)を成形(変形)させることができる。
【0056】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、中心軸線方向におけるスロット収容部(21)の略中央の部分を最初に押圧した後、コイル(20)の径方向外側への押圧が進むにしたがって、中心軸線方向におけるスロット収容部(21)の略中央の部分から離間した部分に向かって徐々にコイル(20)の押圧される部分が増加するように押圧する。このように構成すれば、コイル(20)の成形時にコイル(20)にかかる力が分散されるので、コイル(20)が損傷するのを防止することができる。
【0057】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、ステータコア(10)の周方向側から見て、全体として、スロット収容部(21)およびコイルエンド部(22)が径方向内側に凸状に反るようにコイル(20)を挿入した後、スロット収容部(21)およびコイルエンド部(22)を、全体として、ステータコア(10)の周方向側から見て、径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形する。このように構成すれば、径方向内側に凸状に反ったコイル(20)が反対側の径方向外側に凸状に反らされるので、挿入工程におけるコイル(20)の反りと成形工程におけるコイル(20)の反りとが相殺する。これにより、コイル(20)の反りを低減する(周方向から見て、コイル(20)を直線に近い形状にする)ことができる。
【0058】
また、第1実施形態では、スロット収容部(21)とスロット(13)の底部(13a)とを接触させた状態で、コイル(20)をステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形する。このように構成すれば、スロット収容部(21)とスロット(13)の底部(13a)とが接触しているので、容易に、コイル(20)を径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、コイル(20)を成形する工程は、コイルエンド部(22)を押圧することによるコイル(20)を挿入する工程が終了した後に行われる。このように構成すれば、コイル(20)の挿入とコイル(20)の成形とを繰り返し行う場合に比べて、コイル(20)の挿入および成形のための工程数を低減することができる。
【0060】
また、第2実施形態では、上記のように、スロット収容部(21)とスロット(13)の底部(13a)との間に隙間(CL2)が生じている状態を維持しながら、コイル(20)をステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル(20)を径方向外側に凸状に反るように成形する。ここで、スロット収容部(21)とスロット(13)の内径側の内側面(底部(13a))との間に隙間(CL2)が無い状態でコイル(20)を押圧すると、底部(13a)からの反力によって、径方向外側に凸状に反るように成形できない場合がある。そこで、スロット収容部(21)とスロット(13)の底部(13a)との間に隙間(CL2)が生じている状態を維持しながらコイル(20)を成形することによって、容易に、コイル(20)を径方向外側に凸状に反らせることができる。
【0061】
また、第2実施形態では、上記のように、コイル(20)を挿入する工程を一旦停止させた後、コイル(20)を成形し、その後、再び、コイルエンド部(22)を押圧することによりスロット(13)にコイル(20)を挿入する。このように構成すれば、コイル(20)を最後まで挿入した後にコイル(20)を成形する場合と比べて、コイル(20)の成形時におけるコイル(20)の変形量(反り量)が小さくなる。これにより、コイル(20)の成形時においてコイル(20)を反対側(径方向外側)に反らせる反り量を小さくすることができるので、コイル(20)の成形を容易に行うことができる。また、コイル(20)の成形時におけるコイル(20)の反り量が小さくなることによって、コイル(20)に対する押圧の影響が小さくなるので、コイル(20)の損傷を低減することができる。
【0062】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、スロット収容部(21)をステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、スロット(13)にコイル(20)をさらに挿入する。このように構成すれば、成形された後のコイル(20)をスロット(13)の径方向内側の内側面(底部(13a))まで移動させることができる。これにより、スロット(13)の径方向内側の隙間を大きくすることができるので、渦電流に起因する損失をより低減することができる。
【0063】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、複数のコイル(20)を一斉にステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル(20)を径方向外側に凸状に反るように成形する。ここで、コイル(20)の一対のスロット収容部(21)は、互いに異なるスロット(13)に配置されている。そして、コイル(20)のスロット収容部(21)を1つずつ径方向外側に押圧した場合、押圧されている一方のスロット収容部(21)は径方向外側に移動する一方、他方のスロット収容部(21)は押圧されていない(径方向外側に移動しない)ので、一旦径方向外側に移動した一方のスロット収容部(21)が径方向内側に戻ってしまう。そこで、複数のコイル(20)を一斉に押圧することによって、スロット収容部(21)の径方向内側への戻りを抑制することができる。
【0064】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、成形治具(220)は、ステータコア(10)の周方向側から見て、径方向外側に先細る形状を有する。このように構成すれば、径方向内側に凸状に反ったコイル(20)を、容易に、径方向外側に凸状に反るように成形することができる。
【0065】
また、第1および第2実施形態では、上記のように、スロット収容部(21)をステータコア(10)の径方向内側から径方向外側に押圧してガイド治具(31a、31b)に沿って移動させることにより、径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)が成形される。このように構成すれば、スロット収容部(21)と、ガイド治具(31a、31b)との間の接触抵抗により、容易に、スロット収容部(21)およびコイルエンド部(22)を、径方向外側に凸状に反るようにコイル(20)を成形することができる。
【0066】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0067】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、成形治具220の当接部221が、径方向外側に先細る形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図14に示す第1変形例による成形治具320のように、成形治具320の当接部321が、径方向外側に突出する長方形形状(先細らない形状)に形状を有していてもよい。なお、当接部321の径方向外側の端部322は、上記第1および第2実施形態の成形治具220の当接部221と同様に面取りされている。また、成形治具の当接部が、径方向外側に突出するように湾曲していてもよい。
【0068】
また、上記第1および第2実施形態では、中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分が最初に径方向内側から径方向外側に押圧されることによりコイル20が成形される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分以外の部分を押圧することによりコイル20を成形してもよい。
【0069】
また、上記第1および第2実施形態では、コイル20の成形時において、コイル20の径方向外側への押圧が進むにしたがってコイル20の押圧される部分が増加する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、中心軸線方向におけるスロット収容部21の略中央の部分のみを押圧することによりコイル20を成形してもよい。
【0070】
また、上記第1および第2実施形態では、コイル20が平角導線により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、平角導線以外の導線によって構成されているコイル20に本発明を適用することができる。
【0071】
また、上記第1および第2実施形態では、一方側のコイルエンド部22と他方側のコイルエンド部22との両方を同時に押圧することによりスロット13にコイル20を挿入する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一方側のコイルエンド部22を押圧した後、他方側のコイルエンド部22を押圧することにより、スロット13にコイル20を挿入してもよい。
【0072】
また、上記第1および第2実施形態では、スロット13にコイル20を挿入する工程の前に、スロット収容部21に絶縁シート50を取り付ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、絶縁シート50をステータコア10のスロット13に予め配置した後、スロット13にコイル20を挿入するようにしてもよい。また、絶縁シート50が無いステータ100であって、コイル20とステータコア10のスロット13の側面の間に摩擦が発生する場合にも本発明は適用可能である。
【0073】
また、上記第1および第2実施形態では、スロット収容部21と、第1ガイド治具31aおよび31b(ガイド部131)との間の接触抵抗により、コイル20を凸状に成形する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図15に示すように、コイルエンド部22の径方向外側への移動を規制するようにコイルエンド部22の径方向外側を規制した状態で、コイル20をステータコア10の径方向内側から径方向外側に押圧することにより、コイル20を成形してもよい。具体的には、円環状に組み合わされた複数のコイル20(コイルアッセンブリ40)のコイルエンド部22の径方向外側の部分を支持するように規制治具240を設ける。規制治具240は、円環形状を有する。円環形状の規制治具240により、コイルエンド部22の径方向外側への移動が規制される。これにより、コイルエンド部22の径方向外側への移動が規制された状態で、中心軸線方向におけるコイル20の中央部側が径方向外側に押圧されるので、容易に、コイル20を径方向外側に凸状に反らせることができる。