(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753399
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】端子接続構造およびこの構造を備えるサーバ用電源システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/18 20060101AFI20200831BHJP
H01R 4/34 20060101ALI20200831BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
G06F1/18 E
G06F1/18 D
H01R4/34
H01R11/01 P
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-527089(P2017-527089)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057517
(87)【国際公開番号】WO2017006587
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-134645(P2015-134645)
(32)【優先日】2015年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-135037(P2015-135037)
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕治
(72)【発明者】
【氏名】畠中 伸治
【審査官】
征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−111353(JP,A)
【文献】
特開平05−335041(JP,A)
【文献】
特開2012−248140(JP,A)
【文献】
特開2014−203814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/18
H01R4/24−4/46;11/00−11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の第1の端子と、
この第1の端子の上に並置可能な大きさの方形状の複数の第2の端子と、
前記第1の端子とほぼ同じ大きさの方形状の押え板と、
前記第1の端子と前記押え板との間に前記複数の第2の端子を挟んで締結するためのボルトと、を含み、
少なくとも前記第1の端子と前記押え板とは平板方形状であり、
前記押え板の少なくとも1つの外辺には立ち上げ片が形成されていることを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
前記複数の第2の端子は前記第1の端子の同一面上に並置されることを特徴する請求項1に記載の端子接続構造。
【請求項3】
前記押え板は、高熱伝導性材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の端子接続構造。
【請求項4】
前記押え板は、高剛性材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の端子接続構造。
【請求項5】
前記押え板は、鉄系金属で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の端子接続構造。
【請求項6】
前記第1の端子は、電源回路が発生した電力を出力するための端子であり、
前記第2の端子は、前記電力を前記電源回路の外部に分配するための配線導体に接続された端子である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の端子接続構造。
【請求項7】
前記電源回路は、低電圧大電流を出力する回路であることを特徴とする請求項6に記載の端子接続構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の端子接続構造を備えたことを特徴とするサーバ用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばデータセンタに設置されたサーバシステムに直流電力を供給する電源システム等における端子接続構造およびこの構造を備えるサーバ用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、特許文献1に示された従来の一般的なサーバシステム用電源システムの概略構成を示すものである。
【0003】
この電源システムは、交流400Vの系統電源3に接続される無停電電源装置1と、この無停電電源装置1から出力される交流電力の電圧を絶縁して変換する変圧器2とを備える。
【0004】
無停電電源装置1は、バッテリ1a,AC/DC変換器1b,DC/AC変換器1cを備える。このバッテリ1aは、系統電源3からの交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器1bにより充電される。そして、AC/DC変換器1bから出力される直流電力、またはバッテリ1aから放電される直流電力は、DC/AC変換器1cにより交流400Vの交流電力に変換される。
【0005】
DC/AC変換器1cから出力される400Vの交流電力は変圧器2により200Vまたは100Vの交流電力に変換される。さらに、変換された交流電力はサーバシステム4内の電力変換器5により低電圧(12V)の直流電力に変換される。電力変換器5は、AC/DC変換器5aとDC/DC変換器5bの直列回路で構成されている。この12Vの直流電力は負荷となる複数台のサーバ4a〜4nに供給される。サーバシステム内の個別のサーバ4a〜4nは、12Vの直流電力で動作する。
【0006】
複数台のサーバ4a〜4nは、所定数ずつサーバラックに収納されてサーバシステムを形成する。電力変換器5は、各サーバシステムに対応して設けられる。そして電力変換器5は、各サーバが収納されているサーバラックに一体に収納される。
【0007】
しかしながら、このような電源システムは、AC/DC変換器1b、5aやDC/DC変換器5b等の多くの変換器により、電力変換が行われるため、電力変換段数が多くなる。そのため、全体の電力変換効率が低下する。そこで、
図16および
図17に示すような直流電力供給のための電源システムが提案されている。
【0008】
図16に示す電源システムは、無停電電源装置1のAC/DC変換器1bから出力される高電圧(400V)の直流電力を、直流用配電機器2aを介してサーバシステム4に給電する。そして、この高電圧(400V)の直流電力は、サーバシステム4内のDC/DC変換器5dにより12Vの低電圧の直流電力に変換される。この電源システムは、高電圧直流給電システム(HVDC)と称される。
【0009】
また、
図17に示す電源システムでは、無停電電源装置1が、さらにDC/DC変換器1dを備えている。AC/DC変換器1bから出力される高電圧(400V)の直流電力は、DC/DC変換器1dにより、低電圧(48V)の直流電力に変換される。この低電圧(48V)の直流電力は、直流用配電機器2aを介してサーバシステム4に給電される。この低電圧(48V)の直流電力は、サーバシステム4内のDC/DC変換器5eにより、さらに低電圧(12V)の直流電力に変換される。この電源システムは、低電圧直流給電システムと称される。
【0010】
このような直流給電を行う電源システムは、電力変換の段数が少ないので、電力変換効率を高めることができる。
【0011】
しかし、
図16に示す高電圧直流給電を行う電源システムにおいては、直流配電用遮断器2aとして高電圧の直流電力を遮断するための遮断器が必要である。高電圧の直流電力を遮断可能な遮断器は、大形であるだけでなく、直流高電圧(DC400V)配電に対する感電対策も必要となる。
【0012】
一方、
図17の電源システムは、低電圧の直流大電流を取り扱うので、配電線等の導体における損失や発熱が大きくなるという問題がある。
【0013】
また、
図15に示す電源システムでは、データセンタに、数百kW以上の大容量で大形の無停電電源装置1を集中配置している。そのため、データセンタに設置する無停電電源装置の設置スペースが大きくなる。しかも、無停電電源装置1に故障が発生した際は、すべてのサーバが停止することになり、システム全体の信頼性が低下するという問題がある。
【0014】
このような従来の電源システムが有する問題点を解決するため、特許文献1には
図18に示す電源システムが提案されている。
【0015】
図18に示す電源システムは、交流の系統電源3から供給される200Vの交流電力をサーバシステム4に給電するものである。サーバシステム4のサーバラック40には、無停電電源装置10と複数のサーバ4a〜4nが収納されている。無停電電源装置10は、電源ユニット20とバッテリユニット30により構成されている。電源ユニット20の電源回路部21は、系統電源3から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器22とこのAC/DC変換器22の直流電力を12Vの直流電力に変換するDC/DC変換器23を備える。DC/DC変換器23から出力される12Vの直流電力がサーバ4a〜4nに供給される。
【0016】
また、バッテリユニット30のバッテリ回路部31は、直流電力を充電するバッテリ32と、双方向に直流電流の通流を行うDC/DC変換器33とを備える。バッテリ32は双方向のDC/DC変換器33を介して電源回路部21の出力に並列に接続される。バッテリ32は、双方向のDC/DC変換器33を通して、電源回路部21の直流出力によって充電されるとともに、充電した直流電力をDC/DC変換器33を介してサーバ4a〜4nに供給する。
【0017】
そして、このように構成された電源ユニット20とバッテリユニット30は、
図19(a)、(b)に示すように、共通のシェルフ50に収納されて、無停電電源装置10を構成している。電源ユニット20とバッテリユニット30のそれぞれの背面側に引き出された出力端子は、コネクタ44を介してサーバラック40内の電力母線42、43に接続される。電力母線42、43は、ここには図示しないサーバ(負荷)4の電源入力端子に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2014/141486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記したように、直流電力を低電圧で供給する電源装置では、電圧が低い分出力電流が大電流となり出力端子の接続部で大きくな損失や発熱が発生する問題がある。
この発明は、このような問題を解決するため、低電圧の直流電力を供給する電源装置から大電流を取り出しても損失や発熱を小さくすることのできる端子接続構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題を解決するため、この発明の一実施形態である端子接続構造は、方形状の第1の端子と、この第1の端子上に並置可能な大きさの方形状の複数の第2の端子と、前記第1の端子とほぼ同じ大きさの方形状の押え板と、前記第1の端子と前記押え板との間に前記複数の第2の端子を挟んで締結するためのボルトと、を含むことを特徴とする。
【0021】
この発明においては、前記複数の第2の端子は前記第1の端子の同一面上に並置される。
【0022】
また、この発明においては、少なくとも前記第1の端子と前記押え板とは平板方形状とするのがよい。
【0023】
そして、前記押え板は、高熱伝導性材料で形成し、さらに高剛性材料で形成すのがよい。
また、前記押え板は、鉄系金属で形成することができる。
【0024】
さらに、この発明においては、前記押え板の少なくとも1つの外辺には立ち上げ片を形成する。
【0025】
また、前記第1の端子は、電源回路が発生した電力を出力するための端子とし、
前記第2の端子は、前記電力を前記電源回路の外部に分配するための配線導体に接続された端子とすることができる。
【0026】
さらに、この発明においては、前記電源回路は、低電圧大電流を出力する回路とすることができる。
【0027】
この発明の端子接続構造は、サーバ用電源システムに適用することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る接続構造は、方形状の第1の端子と、方形状の複数の第2の端子と、前記第1の端子とほぼ同じ大きさの方形状の押え板と、前記第1の端子と前記押え板との間に前記複数の第2の端子を挟んで締結するためのボルトとを含む。そのため、第1の端子と第2の端子との接続部に大電流が流れる場合であっても、第2の端子それぞれに流れる電流が均等化されるとともに、第1の端子と第2の端子との間の接触抵抗が低減されることにより端子部における損失および発熱を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明に係るサーバシステムの概略構成を示す図である。
図1(a)は、正面断面図、
図1(b)は側面断面図である。
【
図2】この発明に係る無停電電源装置の正面図である。
図2(a)はシェルフの各収納室にユニットを収納されていない状態を示す正面図である。
図2(b)はシェルフの各収納室にユニットを収納した状態を示す正面図である。
【
図3】無停電電源装置のシェルフに電源ユニット及びバッテリユニットが収納される途中の状態を示す斜視図である。
【
図4】無停電電源装置のシェルフに電源ユニット及びバッテリユニットが収納された状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4における接続導体モジュールの挿入工程を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】無停電電源装置の組み立ての完成状態を示す斜視図である。
【
図7】接続導体モジュールの構成を示す分解斜視図である。
【
図8】接続導体モジュールの構成を
図7とは逆方向から見た斜視図である。
【
図9】接続導体モジュールの組み立て中の構成を示す正面図である。
【
図10】接続導体モジュールを組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図11】無停電電源装置の外観を示す斜視図である。
【
図12】(a)は無停電電源装置の接続端子部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)におけるA部をさらに拡大して示す平面図である。
【
図13】無停電電源装置の一部の蓋板を外した状態を示す斜視図である。
【
図14】無停電電源装置の接続導体モジュールの出力端子と引出導体との接続構造を示す斜視図である。
【
図15】従来のサーバシステム用電源システムの構成を示すブロック構成図である。
【
図16】従来のサーバシステム用電源システムの他の構成を示すブロック構成図である。
【
図17】従来のサーバシステム用電源システムの他の構成を示すブロック構成図である。
【
図18】従来のサーバシステム用電源システムの他の構成を示すブロック構成図である。
【
図19】
図18に示すサーバシステム用電源システムの概略構成を示す斜視図であり、(a)は正面から見た斜視図、(b)は背面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、
図1〜
図13を参照して、本発明に係る電源システムについて説明する。以下で説明する電源システムの概略回路構成は、
図18に示した電源システムの概略回路構成と同じである。
図1〜
図13において、
図15から
図19を用いて説明した従来のサーバシステムと同じまたは等価な要素には、同じ符号を付している。
【0031】
図1は、サーバラック40内に収められたサーバシステムの概略構成を示す図である。サーバラック40内には、多段に重ねられた複数のサーバユニット4(a〜n)と無停電電源装置10が収められている。
図1(a)は、サーバラック内部の構成を示すために一部を切断して示す正面図である。
図1(b)は、サーバラック内部の構成を示すために一部を切断して示す側面図である。
サーバラック40は、例えば、EIA(米国電子工業会)によって規格化された19インチラックである。
【0032】
無停電電源装置10は、金属製のシェルフ11とこのシェルフ11に収められた電源ユニット20、バッテリユニット30および後述する接続導体モジュール6等により構成されている。
図2(a)は、無停電電源装置10のシェルフ11を正面から見た図である。シェルフ11には、内部を、幅方向を4等分して形成された複数の収納室が設けられている。左の2列の収納室は、さらに上下2段に分割されている。したがって、シェルフ11には、4個の小収納室12(a〜d)と2個の大収納室13(a、b)が形成されている。
4個の小収納室12(a〜d)には、
図2(b)に示すように、電源ユニット20(a〜d)が出し入れ可能に収納される。また、大収納室13(a、b)には、バッテリユニット30(a、b)が、出し入れ可能に収納される。
【0033】
電源ユニット20は、AC/DC変換器22およびDC/DC変換器23とで構成される。AC/DC変換器22は、商用の系統電源3から給電される交流電力を直流電力に変換する。DC/DC変換器23は、AC/DC変換器22の出力である直流電力をサーバユニット4(a〜n)に供給するための電圧(例えば12V)の直流電力に変換して出力する。バッテリユニット30はバッテリ32と双方向のDC/DC変換器33とで構成される。電源ユニット20が動作しているとき、DC/DC変換器33は、電源ユニット20から出力される直流電力を用いてバッテリ32を充電する。一方、電源ユニット20が出力不能となったとき、DC/DC変換器33は、バッテリ32に充電された直流電力を放電する。電源ユニット20の直流出力部とバッテリユニット30の直流出力部とは、電気的に接続されている。
【0034】
ここに示す実施例では、シェルフ11の収納室12に電源ユニット20が最大4個収納され、収納室13にバッテリユニット30が最大2個収納される。それぞれの収納個数は、必要とするサーバの電源容量によって決定される。
【0035】
サーバラック40内には、サーバユニット4と無停電電源装置10以外に、直流母線を構成する正極バー導体45および負極バー導体46が設けられている。この直流母線には、無停電電源装置10の出力部が電気的に接続される。無停電電源装置10から出力される直流電力は、この直流母線を介して各サーバユニット4(a〜n)に給電される。サーバラック40内には複数の無停電電源装置10が収められていても良い。この場合、各無停電電源装置10のそれぞれの出力部は、直流母線に並列に接続される。
【0036】
この発明の一実施形態である無停電電源装置10を、
図3ないし
図6を用いて説明する。
図3から
図6は、無停電電源装置10の構成を、組み立て工程順に示したものである。
【0037】
図3は、4個の電源ユニット20(a〜d)および2個のバッテリユニット30(a,b)をシェルフ11に挿入する途中の状態を示している。
図4は、シェルフ11へ各ユニットの挿入を完了した状態を示している。
【0038】
図5は、シェルフ11の後部上面カバー16を外して、接続導体モジュール6を抜き出した状態を示す図である。
【0039】
接続導体モジュール6は、後述するとおり、シェルフ11内に装着されている。接続導体モジュール6は、絶縁材で形成されたモジュールケース61と導電性を有する接続導体部とで構成されている。接続導体部は、接続端子62(P、N),接続端子63(P、N),引き出し端子64P、65Nおよび接続導体64,65で構成されている。
接続導体モジュール6の前面側開口部には、各電源ユニット20の出力端子と接続するための接続端子62(P、N)、およびバッテリユニット30の出力端子と接続するための接続端子63(P、N)が備えられている。また、接続導体モジュール6の背面側には、電力を外部へ出力するための引き出し端子64P、65Nが備えられている。接続端子62Pと接続端子63Pとは、正電位側の接続端子であり、正極接続導体64と接続される。接続端子62Nと接続端子63Nとは、負電位側の接続端子であり、負極接続導体65と接続される。
【0040】
電源ユニット20とバッテリユニット30の背面には、出力端子が備えられている。それぞれの出力端子が、接続導体モジュール6の接続端子62(P、N)および接続端子63(P、N)と嵌合する。
【0041】
電源ユニット20およびバッテリユニット30の出力電力は、引き出し端子64P、64Nおよび65P、65Nから外部に取り出される。
【0042】
図6は、シェルフ11と接続導体モジュール6の挿入部分の拡大図である。接続導体モジュール6は、ネジを使用しないでシェルフ11に固定される。すなわち、シェルフ11には、両側壁に嵌合溝11mが設けられるとともに、底壁に複数の嵌合突起11nが設けられる。また、接続導体モジュール6には、嵌合溝11mに嵌り合う嵌合片61mが両側壁に設けられるとともに、底壁部に嵌合突起11nと嵌り合う嵌合孔61n(不図示)が設けられる。
【0043】
接続導体モジュール6がシェルフ11に挿入されると、接続導体モジュール6の嵌合片61mがシェルフ11の嵌合溝11mに嵌合し、接続導体モジュール6の嵌合孔61nがシェルフ11の嵌合突起11nに嵌合する。これにより、シェルフ11に挿入された接続導体モジュール6が、ネジを用いることなく、シェルフ11に強固に固定される。そして、シェルフ11に挿入された接続導体モジュール6の上部開口には、上面カバー16が被せられる。上面カバー16は、シェルフ11にネジで固定されるので、接続導体モジュール6がシェルフ11から抜け出ることはない。
【0044】
接続導体モジュール6が、ネジを用いることなく、シェルフ11に固定されることにより、接続導体モジュール6内の接続導体部とシェルフ11間の絶縁性能を高めることができる。併せて、接続導体モジュール6内の正電位導体部と負電位導体部の間の絶縁性能を高めることができる。
【0045】
次に、接続導体モジュール6の組立工程を、
図7ないし
図10を用いて説明する。
【0046】
まず、
図7に、接続導体モジュール6の全部品が分解された状態を示す。
【0047】
接続導体モジュール6は、絶縁樹脂などの絶縁材で構成されたモジュールケース61と、導電性を有する接続導体部とからなる。モジュールケース61は、前部ケース61aと後部ケース61bに分割して構成されている。前部ケース61aと後部ケース61bは、前、後面が開口され、矩形状の筒状体をなし、仕切壁により仕切られて形成された複数の端子室を内部に備える。前部ケース61a内に後部ケース61bの一部が挿入され、両ケースが一体に嵌合結合される。前部ケース61aと後部ケース61bの固定はネジによらないで行われる。そのため、前部ケース61aは、上面の先端部に嵌合孔61dの設けられた弾性結合片61cを複数備える。また、後部ケース61bは、この嵌合孔61dに対応してこれに嵌り合う複数の嵌合突起61eを上面に備える。
【0048】
モジュールケース61によって保持される正極接続導体64および負極接続導体65は、銅平板等で構成されたバー状導電体である。この接続導体64、65の幅方向の両端部または両端部近傍に、外部へ直流電力を取り出すための引き出し端子64P、65Nがそれぞれ1対ずつ一体に形成されている。これにより、無停電電源装置10の左右どちらの側からも直流電力の取り出しが可能となる。
【0049】
正極接続導体64には、それぞれ2個の接続端子62P,63Pが固定ネジ64kにより締め付け固定される(
図8参照)。接続端子62Pは、電源ユニット20の正極出力端子に接続される端子である。接続端子63Pは、バッテリユニット30の正極出力端子に接続される端子である。
負極接続導体65には、それぞれ2個の接続端子62N,63Nが固定ネジ65kにより締め付け固定される(
図8参照)。接続端子62Nは、電源ユニット20の負極出力端子に接続される端子である。接続端子63Nは、バッテリユニット30の負極出力端子に接続される端子である。
接続端子62P,62Nには、2段、2列に配置される電源ユニット20a〜20dの各出力端子に対応して、接続端子片62hおよび62dがそれぞれ4個ずつ設けられている。一方、接続端子63P、63Nには、2列に配置されるバッテリユニット30a、30bの各出力端子に対応して、接続端子片63n、63fがそれぞれ2個ずつ設けられている。
【0050】
前部ケース61aには、シェルフ11に形成された収納室12(a〜d)、13(a、b)に対応して、仕切壁によって仕切られた複数の端子室62(a〜d)、63(a、b)が形成されている。これらの端子室62(a〜d)、63(a、b)には、接続端子片62(d、h)、63(f、n)の先端が前部ケース61aの前面の開口から前面側へ突出するように、接続端子62(P、N)、63(P、N)が収納される。
【0051】
それぞれ接続端子62P、62N、63P、63Nが一体的に結合固定された接続導体64、65が前部ケース61aに組み込まれる前の状態を
図8に示す。なお
図8は、
図7とは逆方向からみた斜視図である。
【0052】
接続端子62P、62N、63P、63Nの結合固定された接続導体64、65は、前部ケース61aの後面側の開口から挿入される。このとき、接続端子62P、62N、63P、63Nの側辺が、前部ケース61aの底壁部に設けられた保持溝61g、61hに嵌め込まれる。接続端子62P、62N、63P、63Nの側辺が前部ケース61aの底壁部に設けられた保持溝61g、61hに嵌合することにより、接続導体64、65が、前部ケース61a内の所定位置に保持される。
【0053】
接続導体64、65が前部ケース61aに挿入された後、後部ケース61bが前部ケース61aに挿入嵌合される。この際、後部ケース61bの嵌合突起61eが、前部ケース61aの上面の弾性結合片61cを弾性変形させて押し上げながら、弾性結合片61cの下側に入り込む。後部ケース61bの嵌合突起61eは、前部ケース61aの弾性結合片61cに設けられた嵌合孔61dの位置に達すると、嵌合孔61dに嵌合する。嵌合孔61dと嵌合突起61eとが嵌合することにより、前部ケース61aと後部ケース61bとが結合固定され、一体的なモジュールケース61が形成される。これにより、前部ケース61aに組み込まれた接続導体64、65が後面側から後部ケース61bによって抑えられ、接続導体64、65がモジュールケース61によって固定的に保持される。
【0054】
接続導体64、65が前部ケース61aに組み込まれた状態を
図9に示す。この
図9において、正極接続導体64およびこれに結合された接続端子62P、63Pは、密度の高いハッチングで示されている。そして、負極接続導体65およびこれに結合された接続端子62N、63Nは、密度の低いハッチングで示されている。
【0055】
図9に示すように、正極の接続端子62P、63Pと負極の接続端子62N、63Nとは、モジュールケース61の幅方向に交互に配列される。
【0056】
組み立ての完成した接続導体モジュール6の外観を
図10に示す。モジュールケース61は、後部ケース61bの一部が前部ケース61aに挿入されて構成される。このため、外観からは、前部ケース61aと後部ケース61bとを結合した形跡(分割線)等をほとんど見ることができず、モジュールケース61は、ほぼ一体的な外見を示す。
【0057】
電源ユニット20の外観を
図11に示す。
【0058】
電源ユニット20は、ユニットケース24内に、AC/DC変換器22、DC/DC変換器23を収納している。電源ユニット20の背面には、直流電力を出力するための正極出力端子21Pと負極出力端子21Nとが、2組ずつ備えられている。正極出力端子21Pと負極出力端子21Nとを2組備えるのは、1端子当たりに通電する電流を低減するためと、接続導体モジュール6との電気的接続部の接触抵抗を低減するためである。
【0059】
出力端子21P、21Nは、挟持型の雌型端子に形成されている。出力端子21P、21Nと接続される接続導体モジュール6の接続端子片62(d、h)、63(f、n)は、
図10に示すように平板の雄型端子に形成されている。また、図示しないが、バッテリユニット30の出力端子31P、31Nも、電源ユニット20の出力端子21Pおよび21Nと同じ形状の挟持型の雌型端子に形成されている。
【0060】
接続導体モジュール6が無停電電源装置10のシェルフ11に挿入、固定された状態を、
図12(a)、(b)に示す。接続導体モジュール6の各接続端子と電源ユニット20およびバッテリユニット30の出力端子との接続部である
図12(a)のA部分を拡大して
図12(b)に示す。接続端子片62(d、h)が、電源ユニット20の出力端子21P、21Nの間隙に挿入されて出力端子21P、21Nにより挟持される。これにより、電源ユニット20と接続導体モジュール6の間の電気的な接続が、モジュールケース61の前面開口部において行われる。図示しないが、接続導体モジュール6の接続端子片63(f、n)が、同様に、バッテリユニット30の出力端子31P,31Nの間隙に挿入されて出力端子31P,31Nにより挟持される。これにより、バッテリユニット30と接続導体モジュール6の間の電気的な接続が行われる。
【0061】
次に、接続導体モジュール6と無停電電源装置10との間の接続構造について、
図13および
図14を参照して説明する。無停電電源装置10は、上述したとおり、シェルフ11内に電源ユニット20、バッテリユニット30、接続導体モジュール6を収納する。
【0062】
無停電電源装置10のシェルフ11の背面には、外部出力端子11P、11Nが備えられている。外部出力端子11P、11Nは、接続線12によって、接続導体モジュール6の外部引き出し端子64P、65Nと接続される。これによって、無停電電源装置10の外部出力端子11P、11Nが、接続線12と接続導体モジュール6とを介してシェルフ11内の電源ユニット20、バッテリユニット30の出力端子に接続される。外部出力端子11P、11Nと接続導体モジュール6の外部引き出し端子64P、65Nとの接続作業を容易にするため、接続線12としては、可撓性を有する絶縁電線を使用するのがよい。
【0063】
無停電電源装置10は、低電圧かつ大電流の直流電力を出力する。したがって、接続線12は、
図13に示すように、2本の正極側接続線12a、12bと2本の負極側接続線12c、12dで構成される。このように2本の接続線を並列接続して接続線12を構成すると電気抵抗が半減されるので、接続線12の抵抗損失を低減することができる。これにより、無停電電源装置10全体の効率を高めることができる。
【0064】
図14は、本発明の一実施形態である無停電電源装置10が備える端子構造を説明するための図である。この図は、接続導体モジュール6の引き出し端子64Pに2本の接続線12a、12bを並列接続するための端子構造の実施例を示している。
【0065】
接続線12a、12bの一端には、方形状に形成された接続端子13a、13bが接続されている。2つの接続端子13a、13bは、方形状に形成された引き出し端子64P上に並べて配置される。さらに接続端子13a、13bの上に、引き出し端子64Pとほぼ同じ大きさの方形状に形成された押え板14が配置される。接続端子13a、13bを挟み込んだ引き出し端子64Pと押え板14とが、締結ボルト15a、15bによって均等な圧力で締結される。これにより、接続端子13a、13bが、均等な圧力で引き出し端子64Pに固定される。
【0066】
押え板14は、機械的剛性が高くかつ熱伝導性が高い長方形状の鉄板で形成されており、表面に錫めっきが施されている。
このような構成にすると、2つの接続端子13a、13bの接触面全体をほぼ均等な圧力で引き出し端子64Pに接触させることができる。このため、2つの接続端子13a、13bと引き出し端子64Pの接触部分の接触抵抗を低減することができる。その結果、2つの接続端子13a、13bに流れる電流の偏りが抑えられるとともに、端子部の接触抵抗によって発生する損失を低減することが可能となる。
【0067】
同様に、接続線12c、12dの一端に方形状の接続端子13c,13dが接続されている。この接続端子13c,13dを挟み込んだ引き出し端子65Nと押え板14とが、締結ボルト15a、15bによって、均等な圧力で締結される。これにより、接続端子13c,13dが、均等な圧力で引き出し端子65Nに固定される。
したがって、2つの接続端子13c,13dの接触面全体をほぼ均等な圧力で引き出し端子65Nに接触させることができる。このため、2つの接続端子13c,13dと引き出し端子64Pの接触部分の接触抵抗を低減することができる。その結果、2つの接続端子13c,13dに流れる電流の偏りが抑えられるとともに、端子部の接触抵抗によって発生する損失を低減することが可能となる。
【0068】
押え板14は、機械的剛性が高くかつ熱伝導性が高ければ、鉄板以外の他の材料、例えばステンレスで形成されていても良い。さらに、押え板14には、外側辺の一部を直角に折り曲げて数mm立ち上げた立ち上げ片14aが形成されている。この立ち上げ片14aは、押え板14の剛性を高めるとともに、表面積を拡大して放熱効果を高める働きをする。これにより、端子接続部分の放熱効果が向上し、この部分の温度上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:無停電電源装置
11:シェルフ
12(a、b、c、d):接続線
13(a、b、c、d):接続端子
14:押え板
14a:立ち上げ片
15(a、b):締結ボルト
16:上面カバー
20(a,b,c,d):電源ユニット
30(a,b):バッテリユニット
40:サーバラック
4(a〜n):サーバユニット
6:接続導体モジュール
61:モジュールケース
62(P,N)、63(P、N):接続端子
64P、65N:引き出し端子