特許第6753471号(P6753471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753471
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ポリアリレート樹脂及び電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/193 20060101AFI20200831BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20200831BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20200831BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20200831BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20200831BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20200831BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   C08G63/193
   C08G63/672
   C08L67/03
   C08K5/18
   G03G5/05 101
   G03G5/06 313
   G03G5/06 312
   G03G5/047
【請求項の数】10
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2018-547189(P2018-547189)
(86)(22)【出願日】2017年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2017033119
(87)【国際公開番号】WO2018079118
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-213093(P2016-213093)
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
(72)【発明者】
【氏名】北口 健二
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−131623(JP,A)
【文献】 特開平11−174699(JP,A)
【文献】 特開2000−143788(JP,A)
【文献】 特開2011−202129(JP,A)
【文献】 特開2012−196809(JP,A)
【文献】 特開2014−231613(JP,A)
【文献】 特開2016−031472(JP,A)
【文献】 特開2016−050186(JP,A)
【文献】 特開2017−145368(JP,A)
【文献】 特開2017−146548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00−64/42
G03G5/00−5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位とのみを含む、ポリアリレート樹脂。
【化1】
【化2】
(前記一般式(1)及び(2)中、R1、メチル基を表し、
前記一般式(2)中、Xは、化学式(2A)、(2B)、又は(2C)で表される二価の基を表す。)
【化3】
【請求項2】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、化学式(1−1)で表される繰り返し単位であり、
前記一般式(2)で表される繰り返し単位は、化学式(2−1)、又は(2−2)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載のポリアリレート樹脂。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項3】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の数n1と前記一般式(2)で表される繰り返し単位の数n2とが、下記計算式(i)を満たす、請求項1に記載のポリアリレート樹脂。
0.30≦n1/(n1+n2)≦0.70・・・(i)
【請求項4】
導電性基体と、感光層とを備え、
前記感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含み、
前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含み、
前記ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位として、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とのみを含む、電子写真感光体。
【化7】
【化8】
(前記一般式(1)及び(2)中、R1、メチル基を表し、
前記一般式(2)中、Xは、化学式(2A)、(2B)、又は(2C)で表される二価の基を表す。)
【化9】
【請求項5】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、化学式(1−1)で表される繰り返し単位であり、
前記一般式(2)で表される繰り返し単位は、化学式(2−1)、又は(2−2)で表される繰り返し単位である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化10】
【請求項6】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の数n1と前記一般式(2)で表される繰り返し単位の数n2とが、下記計算式(i)を満たす、請求項に記載の電子写真感光体。
0.30≦n1/(n1+n2)≦0.70・・・(i)
【請求項7】
前記正孔輸送剤は、一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物を含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化11】
(前記一般式(10)中、
101及びR108は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
103、R104、R105、R106及びR107は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すか、R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接する2つが結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよく、
102及びR109は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。)
【化12】
(前記一般式(11)中、
111及びR112は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表し、
113、R114、R115、R116、R117及びR118は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表し、
1及びd2は、各々独立に、0又は1を表し、
3、d4、d5及びd6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
7及びd8は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。)
【化13】
(前記一般式(12)中、
121、R122、R123、R124、R125及びR126は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表し、
1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
3及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。)
【請求項8】
前記感光層に含有される前記正孔輸送剤は1種のみであり、前記正孔輸送剤は前記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物である、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とを含み、
前記電荷発生層は、前記電荷発生剤を含み、
前記電荷輸送層は、前記正孔輸送剤と前記バインダー樹脂とを含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電荷輸送層は、電子アクセプター化合物を更に含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリレート樹脂及び電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。電子写真感光体としては、例えば、単層の感光層を備える電子写真感光体が用いられる。単層の感光層は、電荷発生の機能と電荷輸送の機能とを有する。
【0003】
特許文献1に記載の電子写真感光体の表面層は、例えば、二価フェノール成分と、下記構成単位例で示される二価カルボン酸成分とから得られるポリアリレート樹脂を含有する。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−20514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電子写真感光体では、フィルミングの発生を抑制することが困難であった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光層に含有させた場合に電子写真感光体のフィルミングの発生を抑制できるポリアリレート樹脂を提供することである。また、本発明の目的は、このようなポリアリレート樹脂を含有することで、フィルミングの発生を抑制できる電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む。
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】
前記一般式(1)及び(2)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。前記一般式(2)中、Xは、化学式(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)で表される二価の基を表す。
【0012】
【化4】
【0013】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含む。前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含む。前記ポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
前記一般式(1)及び(2)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。前記一般式(2)中、Xは、化学式(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)で表される二価の基を表す。
【0017】
【化7】
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリアリレート樹脂によれば、感光層に含有させた場合に電子写真感光体のフィルミングの発生を抑制することができる。また、本発明の電子写真感光体によれば、フィルミングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図1B】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図1C】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図2A】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図2B】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図2C】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
図3】化学式(PA−1)で表されるポリアリレート樹脂の1H−NMRスペクトルを示す。
図4図3に示す1H−NMRスペクトルの6.90ppm以上9.00ppm以下の範囲の拡大図を示す。
図5図3に示す1H−NMRスペクトルの1.2ppm以上4.5ppm以下の範囲の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
【0021】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0022】
以下、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
【0023】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上6以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。
【0024】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基又はオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。
【0025】
炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンの例は、シクロペンタン、シクロヘキサン又はシクロヘプタンである。
【0026】
<ポリアリレート樹脂>
本実施形態はポリアリレート樹脂に関する。本実施形態のポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む。以下、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂を、ポリアリレート樹脂(PA)と記載することがある。また、一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)と記載することがある。
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
一般式(1)及び(2)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。一般式(2)中、Xは、化学式(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)で表される二価の基を表す。
【0030】
【化10】
【0031】
本実施形態のポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)の両方を有する。そのため、ポリアリレート樹脂(PA)は、感光層に含有された場合に、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)のフィルミングの発生を抑制することができる。フィルミングは、感光体の表面に微小成分が付着して固着する現象である。微小成分の一例は、トナー成分であり、より具体的には、トナー又はトナーから遊離した外添剤である。微小成分の別の例は、非トナー成分であり、より具体的には記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)である。
【0032】
一般式(1)及び(2)中のR1は、何れも、水素原子を表す。或いは、一般式(1)及び(2)中のR1は、何れも、メチル基を表す。感光体の耐フィルミング性に加えて、感光体の耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、一般式(1)及び(2)中のR1が、各々、メチル基を表すことが好ましい。
【0033】
感光体の耐フィルミング性に加えて、感光体の耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、一般式(2)中のXが、一般式(2A)、(2B)又は(2D)で表される二価の基を表すことが好ましい。
【0034】
繰り返し単位(1)の好適な例は、化学式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位である。以下、化学式(1−1)で表される繰り返し単位及び化学式(1−2)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1−1)及び(1−2)と記載することがある。繰り返し単位(1)のより好適な例は、繰り返し単位(1−1)である。
【0035】
【化11】
【0036】
【化12】
【0037】
繰り返し単位(2)の好適な例は、化学式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される繰り返し単位である。以下、化学式(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(2−1)、(2−2)、(2−3)及び(2−4)と記載することがある。繰り返し単位(2)のより好適な例は、繰り返し単位(2−1)、(2−2)又は(2−3)である。
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
感光体の耐フィルミング性、耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)とが次のとおりであるポリアリレート樹脂(PA)が好ましい。
繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり、繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−1)であるか;
繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり、繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−2)であるか;又は
繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり、繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−3)である。
【0043】
より好適な一態様として、繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり、繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−3)であるポリアリレート樹脂(PA)が挙げられる。このような構造を有するポリアリレート樹脂(PA)によれば、感光体の耐フィルミング性、耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を更に向上させることができる。また、ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(2−3)を含むことで、感光層形成用の溶剤に対するポリアリレート樹脂(PA)の溶解性を向上させることもできる。
【0044】
より好適な別の態様として、繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり、繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−1)又は(2−2)であるポリアリレート樹脂(PA)も挙げられる。繰り返し単位(1−1)が有するナフチレン基、繰り返し単位(2−1)が有する化学式(2A)で表される二価の基、及び繰り返し単位(2−2)が有する化学式(2B)で表される二価の基は、各々、ポリアリレート樹脂(PA)の分子鎖が直線状となる位置関係でカルボニル基と結合する。ポリアリレート樹脂(PA)がこのような位置関係を形成する基を有することで、感光体の耐フィルミング性に加えて、感光体の耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を向上させることができる。
【0045】
ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1)の数n1と繰り返し単位(2)の数n2とが、下記計算式(i)を満たすことが好ましい。
0.30≦n1/(n1+n2)≦0.70・・(i)
【0046】
「n1/(n1+n2)」は、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1)の数n1と繰り返し単位(2)の数n2との和に対する、繰り返し単位(1)の数n1の比率を表す。比率n1/(n1+n2)が0.30以上0.70以下であると、感光体の耐フィルミング性、耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)をバランス良く向上させることができる。比率n1/(n1+n2)は0.40以上0.60以下であることがより好ましく、0.50であることが更に好ましい。
【0047】
また、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1)の数n1と繰り返し単位(2)の数n2との和に対する、繰り返し単位(2)の数n2の比率n2/(n1+n2)は、0.30以上0.70以下であることが好ましく、0.40以上0.60以下であることがより好ましく、0.50であることが更に好ましい。
【0048】
繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)又は(1−2)である場合には、n1はポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1−1)又は(1−2)の数に相当する。繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)である場合には、n2はポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)の数に相当する。
【0049】
比率n1/(n1+n2)及び比率n2/(n1+n2)の各々は、1本の分子鎖から得られる値ではなく、感光層に含有されるポリアリレート樹脂(PA)の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。比率n1/(n1+n2)及び比率n2/(n1+n2)の各々は、例えば、次の方法で測定される。プロトン核磁気共鳴分光計を用いて、ポリアリレート樹脂(PA)の1H−NMRスペクトルを測定する。溶媒としてCDCl3を、内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いる。得られたポリアリレート樹脂(PA)の1H−NMRスペクトルにおける繰り返し単位(1)に特徴的なピークと繰り返し単位(2)に特徴的なピークとの比率から、比率n1/(n1+n2)及び比率n2/(n1+n2)の各々を算出する。
【0050】
ポリアリレート樹脂(PA)における繰返し単位(1)及び(2)の配列は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。ランダム共重合体は、繰返し単位(1)と、繰返し単位(2)とがランダムに配列した共重合体である。交互共重合体は、繰返し単位(1)と繰り返し単位(2)とが交互に配列した共重合体である。周期的共重合体は、1つ又は複数の繰返し単位(1)と、1つ又は複数の繰返し単位(2)とが周期的に配列した共重合体である。ブロック共重合体は、複数の繰返し単位(1)から形成されるブロックと、複数の繰返し単位(2)から形成されるブロックとが配列した共重合体である。
【0051】
ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、50,000以上であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が10,000以上である場合、バインダー樹脂の耐摩耗性が高まり、電荷輸送層又は単層型感光層が摩耗しにくくなる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PA)が電荷輸送層形成用の溶剤又は単層型感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層又は単層型感光層の形成が容易になる傾向がある。
【0052】
ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法として、例えば、ポリアリレート樹脂の繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法は、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用することができる。
【0053】
ポリアリレート樹脂(PA)を合成するための芳香族ジカルボン酸は、2種使用される。以下、ポリアリレート樹脂(PA)を合成するための2種の芳香族ジカルボン酸を、各々、第1芳香族ジカルボン酸及び第2芳香族ジカルボン酸と記載することがある。
【0054】
第1芳香族ジカルボン酸は、化学式(DC−1)で表される化合物である。化学式(DC−1)で表される化合物の好適な例は、化学式(DC−1−1)で表される化合物(以下、化合物(DC−1−1)と記載することがある)である。
【0055】
【化17】
【0056】
【化18】
【0057】
第2芳香族ジカルボン酸は、化学式(DC−2)、(DC−3)、(DC−4)又は(DC−5)で表される化合物である。以下、化学式(DC−2)、(DC−3)、(DC−4)及び(DC−5)で表される化合物を、各々、化合物(DC−2)、(DC−3)、(DC−4)及び(DC−5)と記載することがある。
【0058】
【化19】
【0059】
第1芳香族ジカルボン酸及び第2芳香族ジカルボン酸は、各々、誘導体化して使用されてもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体の例は、芳香族ジカルボン酸ジクロライド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル又は芳香族ジカルボン酸無水物である。芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、芳香族ジカルボン酸の2個の「−C(=O)−OH」基が各々「−C(=O)−Cl」基で置換された化合物である。
【0060】
ポリアリレート樹脂(PA)を合成するための芳香族ジオールは、化学式(BP−1)及び(BP−2)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP−1)及び(BP−2)と記載することがある)である。ポリアリレート樹脂(PA)を合成するための芳香族ジオールは、芳香族ジアセテートに変形させて使用されてもよい。
【0061】
【化20】
【0062】
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基及び触媒は、公知の塩基及び触媒から適宜選択することができる。塩基の例は、水酸化ナトリウムである。触媒の例は、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン又はトリメチルアミンである。
【0063】
ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位として繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)のみを含んでいてもよい。或いは、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)に加えて、繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)以外の繰り返し単位を更に含んでもよい。ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)の合計含有率は、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位の総数に対して、80個数%以上であることが好ましく、90個数%以上であることがより好ましく、100個数%であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位の総数に対する繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)の合計含有率が100個数%である場合、ポリアリレート樹脂(PA)は繰り返し単位として繰り返し単位(1)及び繰り返し単位(2)のみを含む。以上、本実施形態に係るポリアリレート樹脂(PA)について説明した。
【0064】
<感光体>
次に、本実施形態に係るポリアリレート樹脂(PA)を含有する感光層を備える感光体について説明する。感光体は、導電性基体と感光層とを備える。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(PA)とを含む。感光体は、単層型感光体であってもよく、積層型感光体であってもよい。
【0065】
(積層型感光体)
以下、図1A図1Cを参照して、感光体100が積層型感光体である場合の感光体100の構造について説明する。図1A図1Cは、各々、感光体100の一例(積層型感光体)を示す部分断面図であり、この感光体100は本実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
【0066】
図1Aに示すように、感光体100としての積層型感光体は、例えば、導電性基体101と感光層102とを備える。感光層102は、電荷発生層102aと電荷輸送層102bとを含む。つまり、積層型感光体には、感光層102として、電荷発生層102aと電荷輸送層102bとが備えられる。
【0067】
図1Bに示すように、感光体100としての積層型感光体では、導電性基体101上に電荷輸送層102bが設けられ、電荷輸送層102b上に電荷発生層102aが設けられてもよい。ただし、一般に電荷輸送層102bの膜厚は、電荷発生層102aの膜厚に比べ厚いため、電荷輸送層102bは電荷発生層102aに比べ破損し難い。このため、積層型感光体の耐摩耗性を向上させるためには、図1Aに示すように、導電性基体101上に電荷発生層102aが設けられ、電荷発生層102a上に電荷輸送層102bが設けられることが好ましい。
【0068】
図1Cに示すように、感光体100としての積層型感光体は、導電性基体101と感光層102と中間層103(下引き層)とを備えていてもよい。中間層103は、導電性基体101と感光層102との間に備えられる。図1A及び図1Bに示すように、感光層102は導電性基体101上に直接備えられてもよいし、図1Cに示すように、感光層102は導電性基体101上に中間層103を介して備えられてもよい。なお、感光層102上には、保護層104(図2C参照)が設けられていてもよい。
【0069】
電荷発生層102a及び電荷輸送層102bの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層102aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層102bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0070】
感光層102のうちの電荷発生層102aは、電荷発生剤を含有する。電荷発生層102aは、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)を含有してもよい。電荷発生層102aは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
【0071】
感光層102のうちの電荷輸送層102bは、バインダー樹脂と正孔輸送剤とを含有する。電荷輸送層102bは、必要に応じて、電子アクセプター化合物及び添加剤の少なくとも1種を含有してもよい。
【0072】
フィルミングの発生を抑制するためには、ポリアリレート樹脂(PA)を含有する電荷輸送層102bが、感光体100の最表面層として配置されることが好ましい。以上、図1A図1Cを参照して、感光体100が積層型感光体である場合の感光体100の構造について説明した。
【0073】
(単層型感光体)
以下、図2A図2Cを参照して、感光体100が単層型感光体である場合の感光体100の構造について説明する。図2A図2Cは、各々、感光体100の別の例(単層型感光体)を示す部分断面図であり、この感光体100は本実施形態に係るポリアリレート樹脂を含む。
【0074】
図2Aに示すように、感光体100としての単層型感光体は、例えば、導電性基体101と感光層102とを備える。感光体100としての単層型感光体には、感光層102として、単層型感光層102cが備えられる。単層型感光層102cは、一層の感光層102である。
【0075】
図2Bに示すように、感光体100としての単層型感光体は、導電性基体101と、単層型感光層102cと、中間層103(下引き層)とを備えてもよい。中間層103は、導電性基体101と単層型感光層102cとの間に設けられる。図2Aに示すように、感光層102は導電性基体101上に直接備えられてもよいし、図2Bに示すように、感光層102は導電性基体101上に中間層103を介して備えられてもよい。
【0076】
図2Cに示すように、感光体100としての単層型感光体は、導電性基体101と、単層型感光層102cと、保護層104とを備えてもよい。保護層104は、単層型感光層102c上に設けられる。
【0077】
単層型感光層102cの厚さは、単層型感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。単層型感光層102cの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0078】
感光層102としての単層型感光層102cは、電荷発生剤とバインダー樹脂と正孔輸送剤とを含有する。単層型感光層102cは、電子輸送剤を更に含有してもよい。単層型感光層102cは、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。感光体100が単層型感光体である場合、電荷発生剤と、バインダー樹脂と、正孔輸送剤と、必要に応じて添加される成分(例えば、電子輸送剤又は添加剤)とは、一層の感光層102(単層型感光層102c)に含有される。
【0079】
フィルミングの発生を抑制するためには、ポリアリレート樹脂(PA)を含有する単層型感光層102cが、感光体100の最表面層として配置されることが好ましい。以上、図2A図2Cを参照して、感光体100が単層型感光体である場合の感光体100の構造について説明した。次に、積層型感光体及び単層型感光体について、更に詳細に説明する。
【0080】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、上述のポリアリレート樹脂(PA)を含む。感光層がポリアリレート樹脂(PA)を含むことで、上述したように、感光体のフィルミングの発生を抑制することができる。
【0081】
感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含有していてもよい。或いは、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)に加えて、ポリアリレート樹脂(PA)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含んでいてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)の含有率は、バインダー樹脂の質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の含有率がバインダー樹脂の質量に対して100質量%であるとき、感光層(例えば、電荷輸送層又は単層型感光層)はバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(PA)のみを含む。
【0082】
その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂(PA)以外のポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリル酸(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
正孔輸送剤は、一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物(以下、化合物(10)、(11)又は(12)と記載することがある)を含むことが好ましい。また、正孔輸送剤としては、化合物(10)、(11)及び(12)以外の正孔輸送剤(以下、その他の正孔輸送剤と記載することがある)を使用することもできる。以下、化合物(10)、(11)及び(12)、並びにその他の正孔輸送剤について説明する。
【0085】
化合物(10)は、下記一般式(10)で表される。
【0086】
【化21】
【0087】
一般式(10)中、R101及びR108は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R103、R104、R105、R106及びR107は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。或いは、R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接する2つが結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよい。R102及びR109は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0088】
一般式(10)中、R101〜R109が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はn−ブチル基が更に好ましい。
【0089】
一般式(10)中、R101〜R109が表わすフェニル基は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよい。フェニル基が有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0090】
一般式(10)中、R101〜R109が表わす炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0091】
一般式(10)中、R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを表してもよい。例えば、R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接したR106及びR107が互いに結合して、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成してもよい。R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成する場合、この炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンはR103、R104、R105、R106及びR107が結合するフェニル基と縮合して二環縮合環基を形成する。この場合、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとフェニル基との縮合部位は、二重結合を含んでもよい。R103、R104、R105、R106及びR107のうちの隣接した二つが互いに結合して表される炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンとしては、シクロヘキサンが好ましい。
【0092】
1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR102は、互いに同一でも異なっていてもよい。b2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR109は、互いに同一でも異なっていてもよい。b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。
【0093】
一般式(10)中、R101及びR108は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有するフェニル基又は水素原子を表すことが好ましい。R102及びR109は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。R103、R104、R105、R106及びR107は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。或いは、R103、R104、R105、R106及びR107のうち隣接した二つが互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンを形成することが好ましい。b1及びb2は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性を向上させるためには、一般式(10)中、R101及びR108が各々水素原子を表すことがより好ましい。
【0094】
化合物(10)の好適な例としては、化学式(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)又は(HTM−4)で表される化合物(以下、化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)又は(HTM−4)と記載することがある)が挙げられる。
【0095】
【化22】
【0096】
【化23】
【0097】
【化24】
【0098】
【化25】
【0099】
化合物(11)は、下記一般式(11)で表される。
【0100】
【化26】
【0101】
一般式(11)中、R111及びR112は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表す。R113、R114、R115、R116、R117及びR118は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表す。d1及びd2は、各々独立に、0又は1を表す。d3、d4、d5及びd6は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。d7及びd8は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0102】
一般式(11)中、R111〜R118が表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0103】
一般式(11)中、d3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR113は、互いに同一でも異なっていてもよい。d4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR114は、互いに同一でも異なっていてもよい。d5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR115は、互いに同一でも異なっていてもよい。d6が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR116は、互いに同一でも異なっていてもよい。d7が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR117は、互いに同一でも異なっていてもよい。d8が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR118は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0104】
一般式(11)中、R111及びR112は、各々独立に、水素原子又はフェニル基を表すことが好ましい。R113、R114、R115、R116、R117及びR118は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキルを表すことが好ましい。d1及びd2は、互いに同じであり、0又は1を表すことが好ましい。d3及びd5は、各々0を表すことが好ましい。d4及びd6は、互いに同じであり、0又は2を表すことが好ましい。d7及びd8は、各々、0を表すことが好ましい。感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性を向上させるためには、d1及びd2は、各々、1を表すことがより好ましい。感光体の電気特性(特に感度特性)及び耐摩耗性を向上させるためには、R111及びR112は、各々、水素原子を表すことが好ましい。感光体の耐フィルミング性、電気特性(特に感度特性)及び耐摩耗性を向上させるためには、d1及びd2は各々1を表し、R111及びR112は各々水素原子を表すことが特に好ましい。
【0105】
化合物(11)の好適な例としては、化学式(HTM−5)、(HTM−6)又は(HTM−7)で表される化合物(以下、化合物(HTM−5)、(HTM−6)又は(HTM−7)と記載することがある)が挙げられる。
【0106】
【化27】
【0107】
【化28】
【0108】
【化29】
【0109】
化合物(12)は、下記一般式(12)で表される。
【0110】
【化30】
【0111】
一般式(12)中、R121、R122、R123、R124、R125及びR126は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。e3及びe6は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0112】
一般式(12)中、R121〜R126が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0113】
一般式(12)中、e1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR121は、互いに同一でも異なっていてもよい。e2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR122は、互いに同一でも異なっていてもよい。e3が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR123は、互いに同一でも異なっていてもよい。e4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR124は、互いに同一でも異なっていてもよい。e5が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR125は、互いに同一でも異なっていてもよい。e6が2以上4以下の整数を表すとき、複数のR126は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0114】
124、R125及びR126を有するジフェニルアミノフェニルエテニル基は、R121、R122及びR123を有するジフェニルアミノフェニルエテニルが結合するフェニル基のオルト位、メタ位又はパラ位に結合する。
【0115】
一般式(12)中、e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。e1及びe2の一方が0を表し他方が2を表し且つe4及びe5の一方が0を表し他方が2を表すか、或いはe1、e2、e4及びe5が各々1を表すことがより好ましい。e3及びe6は、各々、0を表すことが好ましい。
【0116】
一般式(12)中、R121、R122、R123、R124、R125及びR126は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。e1、e2、e4及びe5は、各々独立に、0以上2以下の整数を表すことが好ましい。e3及びe6は、各々、0を表すことが好ましい。感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性を向上させるためには、e1及びe2の一方が0を表し他方が2を表し、且つe4及びe5の一方が0を表し他方が2を表すことがより好ましい。
【0117】
化合物(12)の好適な例としては、化学式(HTM−8)又は(HTM−9)で表される化合物(以下、化合物(HTM−8)又は(HTM−9)と記載することがある)が挙げられる。
【0118】
【化31】
【0119】
【化32】
【0120】
感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性に加えて電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(10)、(11)又は(12)が好ましい。同じ理由から、正孔輸送剤としては、化合物(HTM−1)〜(HTM−9)がより好ましい。
【0121】
感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性を向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(10)、(11)又は(12)が好ましく、化合物(10)がより好ましい。感光体の耐フィルミング性及び耐摩耗性を向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−5)又は(HTM−8)が好ましく、化合物(HTM−2)又は(HTM−3)がより好ましい。
【0122】
感光体の耐フィルミング性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(10)、(11)又は(12)が好ましく、化合物(11)がより好ましい。感光体の耐フィルミング性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)又は(HTM−6)が好ましく、化合物(HTM−5)又は(HTM−6)がより好ましい。
【0123】
感光体の耐フィルミング性、耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を向上させるためには、感光層(具体的には、電荷輸送層又は単層型感光層)に含有される正孔輸送剤は1種のみであり、この1種の正孔輸送剤は化合物(10)、(11)又は(12)であることが好ましい。
【0124】
感光体の耐フィルミング性、耐摩耗性及び電気特性(特に感度特性)を更に向上させるためには、感光層(具体的には、電荷輸送層又は単層型感光層)に含有される正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次のとおりであることが好ましい。正孔輸送剤は1種のみであり、この1種の正孔輸送剤は化合物(10)、(11)又は(12)である。バインダー樹脂が、繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1−1)であり且つ繰り返し単位(2)が繰り返し単位(2−3)であるポリアリレート樹脂(PA)である。
【0125】
感光層は、正孔輸送剤として、化合物(10)、(11)又は(12)のみを含んでいてもよい。或いは、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(10)、(11)又は(12)に加えて、化合物(10)、(11)及び(12)以外の正孔輸送剤を更に含んでいてもよい。正孔輸送剤が化合物(10)、(11)又は(12)を含む場合、化合物(10)、(11)又は(12)の含有量は、正孔輸送剤の質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0126】
その他の正孔輸送剤としては、下記化学式(HTM−10)〜(HTM−12)で表される化合物(以下、化合物(HTM−10)〜(HTM−12)と記載することがある)が挙げられる。
【0127】
【化33】
【0128】
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0129】
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0130】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM−1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM−2)で表される。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
【0132】
【化34】
【0133】
【化35】
【0134】
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。
【0135】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0136】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
【0137】
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
【0138】
(電子輸送剤及び電子アクセプター化合物)
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は電子アクセプター化合物を含有してもよい。また、感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は電子輸送剤を含有してもよい。
【0139】
電子輸送剤及び電子アクセプター化合物の例としては、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物(例えば、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン)、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。電子輸送剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。電子アクセプター化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層に含有される電子輸送剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
【0141】
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層に含有される電子アクセプター化合物の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0142】
(材料の組み合わせ)
正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであることが好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることが好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電子アクセプター化合物が3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノンであることが好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであり、電子アクセプター化合物が3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノンであることが好ましい。
【0143】
バインダー樹脂が繰り返し単位(1−1)と繰り返し単位(2−3)とを含むポリアリレート樹脂であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂が繰り返し単位(1−1)と繰り返し単位(2−1)とを含むポリアリレート樹脂であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂が繰り返し単位(1−1)と繰り返し単位(2−2)とを含むポリアリレート樹脂であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;又は
バインダー樹脂が繰り返し単位(1−2)と繰り返し単位(2−4)とを含むポリアリレート樹脂であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかである。
【0144】
正孔輸送剤及びバインダー樹脂が、次に示す組み合わせの何れかであることがより好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電子アクセプター化合物が3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノンであることがより好ましい。正孔輸送剤及びバインダー樹脂が次に示す組み合わせの何れかであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであり、電子アクセプター化合物が3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノンであることがより好ましい。なお、ポリアリレート樹脂(PA−1)〜(PA−6)については、各々、実施例で後述する。
【0145】
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−1)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−2)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−3)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−4)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−5)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかであるか;又は
バインダー樹脂がポリアリレート樹脂(PA−6)であり、正孔輸送剤が化合物(HTM−1)、(HTM−2)、(HTM−3)、(HTM−4)、(HTM−5)、(HTM−6)、(HTM−7)、(HTM−8)及び(HTM−9)の何れかである。
【0146】
以上、正孔輸送剤及びバインダー樹脂の好適な組み合わせについて説明した。
【0147】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物又は有機燐化合物が挙げられる。
【0148】
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0149】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0150】
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
【0151】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0152】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。添加剤の例は、感光層の添加剤の例と同じである。
【0153】
<感光体の製造方法>
感光体の製造方法として、積層型感光体の製造方法の一例、及び単層型感光体の製造方法の一例を説明する。
【0154】
(積層型感光体の製造方法)
積層型感光体の製造方法において、感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを有する。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含む。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及びベース樹脂を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
【0155】
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(PA)と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(PA)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層用塗布液には、必要に応じて電子アクセプター化合物及び添加剤の1以上を加えてもよい。
【0156】
(単層型感光体の製造方法)
単層型感光体の製造方法において、感光層形成工程では、単層型感光層を形成するための塗布液(以下、単層型感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して単層型感光層を形成する。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(PA)と、溶剤とを含む。このような単層型感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(PA)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。感光層用塗布液は、必要に応じて電子輸送剤及び添加剤の1以上を加えてもよい。
【0157】
電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液及び単層型感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
【0158】
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
【0159】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散器を用いることができる。
【0160】
各成分の分散性又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、塗布液は、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
【0161】
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
【0162】
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
【0163】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に有してもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0165】
感光体の電荷発生層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤を準備した。また、感光体の電荷輸送層を形成するための材料として、以下の正孔輸送剤及びバインダー樹脂を準備した。
【0166】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べた化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニンを準備した。
【0167】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HTM−1)〜(HTM−12)を準備した。
【0168】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA−1)〜(PA−4)の各々を作製した。
【0169】
[ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−1)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−1)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−1)及び繰り返し単位(2−3)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−1)の比率n1/(n1+n2)は0.50であった。ポリアリレート樹脂(PA−1)の比率n2/(n1+n2)は0.50であった。
【0170】
【化36】
【0171】
ポリアリレート樹脂(PA−1)の作成において、反応容器として、温度計及び三方コックを備える容量2Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン(実施形態で述べた化合物(BP−1))20.01g(82.56ミリモル)、tert−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)を入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水600mLを加えた。反応容器の内容物を20℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
【0172】
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−1−1)のジクロライド)9.84g(38.9ミリモル)、及び4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−5)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)を、クロロホルム(アミレン添加品)300gに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
【0173】
反応容器内のアルカリ性水溶液Aを10℃で攪拌しながら、アルカリ性水溶液Aにクロロホルム溶液Bを投入した。これにより、重合反応を開始させた。反応容器の内容物の温度(液温)を13±3℃に調節しながら、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量2Lの三角フラスコに、イオン交換水500mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム300g及び酢酸6mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水500mLで洗浄した。イオン交換水による洗浄を8回繰り返した。その結果、水洗した有機層が得られた。
【0174】
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、ポリアリレート樹脂(PA−1)が得られた。ポリアリレート樹脂(PA−1)の収量は30.0gであり、収率は87.0モル%であった。得られたポリアリレート樹脂(PA−1)の粘度平均分子量は、55,400であった。
【0175】
[ポリアリレート樹脂(PA−2)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−2)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−2)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−1)及び繰り返し単位(2−1)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−2)の比率n1/(n1+n2)は0.50であった。ポリアリレート樹脂(PA−2)の比率n2/(n1+n2)は0.50であった。
【0176】
【化37】
【0177】
具体的には、次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(PA−2)を作製した。4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−5)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)を、実施形態で述べた化合物(DC−2)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(PA−2)の粘度平均分子量は、57,000であった。
【0178】
[ポリアリレート樹脂(PA−3)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−3)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−3)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−1)及び繰り返し単位(2−2)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−3)の比率n1/(n1+n2)は0.50であった。ポリアリレート樹脂(PA−3)の比率n2/(n1+n2)は0.50であった。
【0179】
【化38】
【0180】
具体的には、次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(PA−3)を作製した。4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−5)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)を、実施形態で述べた化合物(DC−3)のジクロライド38.9ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(PA−3)の粘度平均分子量は、50,600であった。
【0181】
[ポリアリレート樹脂(PA−4)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−4)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−4)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−2)及び繰り返し単位(2−4)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−4)の比率n1/(n1+n2)は0.50であった。ポリアリレート樹脂(PA−4)の比率n2/(n1+n2)は0.50であった。
【0182】
【化39】
【0183】
具体的には、次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(PA−4)を作製した。1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン(実施形態で述べた化合物(BP−1))20.01g(82.56ミリモル)を、実施形態で述べた化合物(BP−2)82.56ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(PA−4)の粘度平均分子量は、57,000であった。
【0184】
[ポリアリレート樹脂(PA−5)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−5)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−5)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−1)及び繰り返し単位(2−3)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−5)の比率n1/(n1+n2)は0.30であった。ポリアリレート樹脂(PA−5)の比率n2/(n1+n2)は0.70であった。
【0185】
【化40】
【0186】
具体的には、次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(PA−5)を作製した。2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−1−1)のジクロライド)の添加量を、9.84g(38.9ミリモル)から、23.3ミリモルに変更した。また、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−5)のジクロライド)の添加量を、11.47g(38.9ミリモル)から54.5ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(PA−5)の粘度平均分子量は、50,100であった。
【0187】
[ポリアリレート樹脂(PA−6)の作製]
下記のポリアリレート樹脂(PA−6)を作成した。ポリアリレート樹脂(PA−6)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1−1)及び繰り返し単位(2−3)のみを含んでいた。ポリアリレート樹脂(PA−6)の比率n1/(n1+n2)は0.70であった。ポリアリレート樹脂(PA−6)の比率n2/(n1+n2)は0.30であった。
【0188】
【化41】
【0189】
具体的には、次の点を変更した以外は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の作製と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(PA−6)を作製した。2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−1−1)のジクロライド)の添加量を、9.84g(38.9ミリモル)から、54.5ミリモルに変更した。また、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(実施形態で述べた化合物(DC−6)のジクロライド)の添加量を、11.47g(38.9ミリモル)から23.3ミリモルに変更した。得られたポリアリレート樹脂(PA−6)の粘度平均分子量は、50,800であった。
【0190】
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、作製したポリアリレート樹脂(PA−1)〜(PA−6)の各々の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちポリアリレート樹脂(PA−1)を代表例として挙げる。
【0191】
図3は、ポリアリレート樹脂(PA−1)の1H−NMRスペクトルを示す。図4は、図3に示す1H−NMRスペクトルの6.90ppm以上9.00ppm以下の範囲の拡大図を示す。図5は、図3に示す1H−NMRスペクトルの1.2ppm以上4.5ppm以下の範囲の拡大図を示す。図3図5中、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示し、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示す。1H−NMRスペクトルにより、ポリアリレート樹脂(PA−1)が得られていることを確認した。ポリアリレート樹脂(PA−2)〜(PA−6)についても、1H−NMRスペクトルにより、それぞれポリアリレート樹脂(PA−2)〜(PA−6)が得られていることを確認した。
【0192】
バインダー樹脂として、化学式(PA−a)〜(PA−f)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(PA−a)〜(PA−f)と記載することがある)も準備した。なお、化学式(PA−a)〜(PA−f)中の繰り返し単位に付された添え字は、樹脂に含まれる繰り返し単位の総数に対する、添え字が付された繰り返し単位の数の比率を示す。
【0193】
ポリアリレート樹脂(PA−a)は、下記化学式(PA−a)で表される繰り返し単位のみを有していた。(PA−a)の粘度平均分子量は、60,300であった。
【0194】
【化42】
【0195】
ポリアリレート樹脂(PA−b)は、下記化学式(PA−b)で表される2種の繰り返し単位を有していた。(PA−b)の粘度平均分子量は、45,600であった。
【0196】
【化43】
【0197】
ポリアリレート樹脂(PA−c)は、下記化学式(PA−c)で表される2種の繰り返し単位を有していた。(PA−c)の粘度平均分子量は、45,600であった。
【0198】
【化44】
【0199】
ポリアリレート樹脂(PA−d)は、下記化学式(PA−d)で表される2種の繰り返し単位を有していた。(PA−d)の粘度平均分子量は、47,800であった。
【0200】
【化45】
【0201】
ポリアリレート樹脂(PA−e)は、下記化学式(PA−e)で表される2種の繰り返し単位を有していた。(PA−e)の粘度平均分子量は、58,000であった。
【0202】
【化46】
【0203】
ポリアリレート樹脂(PA−f)は、下記化学式(PA−f)で表される2種の繰り返し単位を有していた。(PA−f)の粘度平均分子量は、59,500であった。
【0204】
【化47】
【0205】
<感光体の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A−1)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−6)を製造した。
【0206】
(感光体(A−1)の製造)
中間層を形成した。まず、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法を用いて、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚1.5μm)を形成した。
【0207】
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、Y型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を12時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ過液を、中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0208】
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤としての化合物(HTM−1)50質量部と、添加剤としてのヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF株式会社製「イルガノックス(登録商標)1010」)2質量部と、電子アクセプター化合物としての3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン2質量部と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(PA−1)100質量部とを、テトラヒドロフラン550質量部及びトルエン150質量部を含む溶剤に対して添加した。これらを混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上にディップコート法を用いて塗布し、120℃で40分間乾燥させた。これにより、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。感光体(A−1)は、積層型感光体であった。感光体(A−1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
【0209】
(感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−6)の製造)
下記(1)〜(3)の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−6)の各々を製造した。
(1)感光体(A−1)の製造においてはバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(PA−1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−6)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類のバインダー樹脂を使用した。
(2)感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(HTM−1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−15)及び(B−1)〜(B−6)の各々の製造においては表1及び表2に示す種類の正孔輸送剤を使用した。
(3)感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(HTM−1)を50質量部使用したが、感光体(A−16)の製造においては化合物(HTM−11)25質量部と化合物(HTM−12)25質量部とを使用した。
【0210】
<評価>
まず、バインダー樹脂の種類を変化させて、感光体の耐フィルミング性について検討した。
【0211】
<耐フィルミング性の評価>
感光体(A−1)〜(A−6)及び感光体(B−1)〜(B−6)の各々に対して、耐フィルミング性の評価を行った。耐フィルミング性の評価として、以下に示す画像評価及びフィルミング率の評価を行った。
【0212】
(画像評価)
感光体を評価機に搭載した。評価機は、カラープリンター(株式会社沖データ製「C711dn」)であった。評価機のトナーカートリッジにシアントナーを充填した。高温高湿環境(温度32℃及び相対湿度85%RH:以下、HH環境と記載することがある)下で、評価機を用いて、2,000枚の用紙に16秒間隔で印刷した。次いで、低温低湿環境(温度10℃及び相対湿度15%RH:以下、LL環境と記載することがある)下で、評価機を用いて、2,000枚の用紙に16秒間隔で印刷した。LL環境下で2,000枚の用紙に印刷した後、評価機を2時間静置した。次いで、LL環境下にてソリッド画像(画像濃度100%)を1枚印字した。ソリッド画像を評価画像とした。目視で評価画像を観察し、画像の欠けの有無を確認した。下記基準で画像を評価した。画像評価の結果を、表1に示す。なお、感光体の表面にフィルミングが発生すると、画像に欠けが現れる傾向がある。
【0213】
(評価基準)
良好:画像の欠けが確認されなかった。
不良:画像の欠けが確認された。
【0214】
(フィルミング率の評価)
上述の画像評価において評価画像を印刷した後、感光体を評価機から取り出し、感光体の表面におけるトナーフィルミングの発生の程度を観察した。具体的には、光学顕微鏡(株式会社ニコン社製「セナーK・K」)を用いて感光体表面を観察し、観察画像を得た。光学顕微鏡の視野は、1.7mm×2.1mm角であり、観察倍率は50倍であった。感光体の表面の観察箇所は、3箇所(具体的には、感光体の上端から25mmの領域、中央部の領域、及び下端から25mmの領域)であった。
【0215】
光学顕微鏡の観察画像に対して二値化処理を施した。具体的には、画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて、観察画像に対して輝度値180を閾値とした二値化処理を行った。観察画像を構成する画素は、各々、0以上255以下の輝度値を有していた。閾値未満の輝度値を有する画素は、フィルミングが発生している領域に対応する。一方、閾値以上の輝度値を有する画素は、フィルミングが発生していない領域に対応する。
【0216】
二値化した画像を画像解析し、画像全体に対する付着物の面積の割合を算出した。具体的には、二値化処理によりフィルミングが発生している領域の面積(At)と、フィルミングが発生していない領域の面積(An)とを求めた。得られたAt及びAnから、下記計算式に従って、フィルミングが発生している領域の面積比率(A)を求めた。
面積比率A[%]=[At/(At+An)]×100
【0217】
感光体の3箇所の観察画像の各々について面積比率Aを求めた。3箇所の面積比率Aの和を3で除することにより、面積比率Aの数平均値を求めた。面積比率Aの数平均値をフィルミング率とした。得られたフィルミング率を、表1に示す。なお、フィルミング率が低いほど、感光体の表面にフィルミングが発生し難いことを示す。
【0218】
表1中、HTM及び分子量は、各々、正孔輸送剤及び粘度平均分子量を示す。
【0219】
【表1】
【0220】
次に、バインダー樹脂の種類に加えて、正孔輸送剤の種類を変化させて、感光体の電気特性及び耐摩耗性についても検討した。
【0221】
<電気特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−6)の各々に対して、電気特性の評価を行った。電気特性の評価として、帯電特性の評価及び感度特性の評価を行った。帯電特性の評価として、以下に示す帯電電位の評価を行った。感度特性の評価として、以下に示す感度電位(以下、露光後電位と記載する)の評価を行った。電気特性の評価環境は、温度23℃且つ相対湿度50%RHであった。
【0222】
(帯電電位V0の評価)
ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の回転数31rpm及び感光体への流れ込み電流−10μAの条件下で、感光体を帯電させた。帯電させた感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を感光体の帯電電位(V0、単位:−V)とした。測定された感光体の帯電電位(V0)を、表2に示す。
【0223】
(露光後電位VLの評価)
ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を−600Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.8μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から80ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を感光体の露光後電位(VL、単位:−V)とした。測定された感光体の露光後電位(VL)を、表2に示す。
【0224】
<耐摩耗性の評価>
感光体(A−1)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−6)の電荷輸送層の各々に対して、耐摩耗性を評価した。まず、感光体の製造において調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ0.3mm)に塗布した。電荷輸送層用塗布液を塗布したポリプロピレンシートを、120℃で40分間乾燥させた。これにより、ポリプロピレンシート上に厚さ20μmの電荷輸送層(評価用シート)が形成された。続けて、ポリプロピレンシートから評価用シートを剥離した。そして、剥離された評価用シートをウィール(テーバー社製「S−36」)に貼り付けて、試験片を得た。得られた試験片の質量(摩耗試験前における試験片の質量)M1を測定した。
【0225】
次いで、試験片に対して摩耗試験を行った。詳しくは、試験片をロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)の回転台に取り付けた。そして、試験片上に荷重500gfの摩耗輪(テーバー社製「CS−10」)を乗せた状態で、回転台を回転速度60rpmで回転させて、1000回転の摩耗試験を行った。続けて、摩耗試験後における試験片の質量M2を測定した。そして、試験前後の試験片の質量変化である摩耗減量(M1−M2)を求めた。求めた摩耗減量を、表2に示す。
【0226】
表2中、HTM、分子量、V0及びVLは、各々、正孔輸送剤、粘度平均分子量、帯電電位及び露光後電位を示す。
【0227】
【表2】
【0228】
表1に示す耐フィルミング性の評価結果から、次のことが示された。感光体(A−1)〜(A−6)の感光層は、バインダー樹脂として、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂を含有していた。具体的には、感光体(A−1)〜(A−6)の感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA−1)〜(PA−6)の何れかを含有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−6)では、画像評価が良好であり、フィルミング率が低く、耐フィルミング性に優れていた。
【0229】
一方、感光体(B−1)〜(B−6)の感光層は、バインダー樹脂として、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂を含有していなかった。具体的には、感光体(B−1)〜(B−6)の感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA−a)〜(PA−f)の何れかを含有していたが、ポリアリレート樹脂(PA−a)〜(PA−f)は一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂ではなかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(B−1)〜(B−6)では、画像評価が不良であり、フィルミング率が高く、耐フィルミング性に劣っていた。
【0230】
また、表2に示す耐摩耗性の評価結果から、次のことが示された。感光体(A−1)〜(A−3)及び(A−5)〜(A−16)の感光層は、バインダー樹脂として、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂を含有していた。更に、一般式(1)及び(2)中のR1がメチル基を表していた。そのため、表2から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−3)及び(A−5)〜(A−16)では、摩耗減量が小さく、耐フィルミング性に加えて耐摩耗性にも優れていた。
【0231】
更に、表2に示す電気特性(特に感度特性)の評価結果から、次のことが示された。感光体(A−1)〜(A−14)の感光層は、バインダー樹脂として、一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリアリレート樹脂を含有していた。更に、感光体(A−1)〜(A−14)の感光層は、正孔輸送剤として、化合物(10)、(11)又は(12)を含有していた。そのため、表2から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−14)では、露光後電位(VL)の絶対値が小さく、耐フィルミング性が向上しつつ、感度特性が特に向上していた。また、感光体(A−1)〜(A−3)及び(A−5)〜(A−14)では、耐フィルミング性及び耐摩耗性が向上しつつ、感度特性が特に向上していた。
【0232】
以上のことから、本発明に係るポリアリレート樹脂は、感光層に含有させた場合に感光体のフィルミングの発生を抑制できることが示された。また、本発明に係る感光体は、フィルミングの発生を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明に係るポリアリレート樹脂は、感光体に利用することができる。本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用することがきる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5