特許第6753565号(P6753565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753565
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】加工材の排出装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 45/00 20060101AFI20200831BHJP
   B21D 45/04 20060101ALI20200831BHJP
   B65G 47/08 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B21D45/00 C
   B21D45/04 C
   B65G47/08 C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-550956(P2018-550956)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(86)【国際出願番号】JP2016084236
(87)【国際公開番号】WO2018092260
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】396008934
【氏名又は名称】松本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸介
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−185450(JP,U)
【文献】 特開2010−240679(JP,A)
【文献】 特開2001−062664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 45/00 − 45/04
B65G 23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下金型に対して上金型が昇降することにより素材をプレス加工するプレス加工装置に配備され、このプレス加工により生じたワークとスクラップとからなる加工材を排出する加工材の排出装置において、
駆動軸体と従動軸体との間に、前記ワークを受ける無端周転体が架け渡されたワーク用無端コンベアと、駆動軸体と従動軸体との間に、前記スクラップを受ける無端周転体が架け渡されたスクラップ用無端コンベアと、前記上金型に上端部が取り付けられたストライカと、前記上金型の昇降に応じて、前記ストライカを介して、前記ワーク用無端コンベアおよび前記スクラップ用無端コンベアの各駆動軸体を同期回転させるラック・ピニオン式駆動手段とを備え、
このラック・ピニオン式駆動手段は、前記ストライカの押し下げ力が作用して、垂直に往復動する垂直ラックと、前記ワーク用無端コンベアおよび前記スクラップ用無端コンベアの各駆動軸体に連結される出力軸と、該出力軸に回転力を伝達可能に連結され、前記垂直ラックに噛合し、前記垂直ラックの垂直往復運動を前記出力軸の回転運動に変換するピニオンと、該ピニオンを一方向のみに回転させるワンウェイクラッチとを有し、これらの垂直ラック、出力軸、ピニオン、ワンウェイクラッチはケーシングに収納された加工材の排出装置
【請求項2】
下金型に対して上金型が昇降することにより素材をプレス加工するプレス加工装置に配備され、このプレス加工により生じたワークとスクラップとからなる加工材を排出する加工材の排出装置において、
駆動軸体と従動軸体との間に、ワークを受ける無端周転体が架け渡されたワーク用無端コンベアを有し、
駆動軸体と従動軸体との間に、スクラップを受ける無端周転体が架け渡されたスクラップ用無端コンベアを有し、
これらのワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとが上下に平行に離間した状態で設けられ、
上金型の昇降に応じて、垂直に往復動する1本の垂直ラックを設け、
この垂直ラックに噛合し、垂直ラックの垂直往復運動を上記各駆動軸体の回転運動に変換する、上下に離間した状態で配された一対のピニオンを設け、
各ピニオンを一方向のみに回転させる一対のワンウェイクラッチをそれぞれ設け、
ワークはワーク用無端コンベアにより、スクラップはスクラップ用コンベアによりそれぞれ排出される加工材の排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は加工材の排出装置、詳しくは金属板などの素材をプレス加工して生じた加工材(例えばワーク(製品)、スクラップ)を、無端コンベアにより排出する加工材の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動手段により上下動自在に設けられた上金型と、上金型の下方に配設された下金型とを備えたプレス機には、金属製の板材(素材、被加工材)から得られたワークやスクラップを排出するため、下金型の直下に、受け板付きのシュート(排出装置)が設けられている。プレス加工時には、下金型の上面に板材を載置し、その後、駆動手段により上金型を上下動させる。これにより、板材から打ち抜かれたワークとスクラップとが、シュートの受け板上に落下する。
【0003】
従来、受け板上のワークやスクラップを外部へ排出するため、それまでの駆動ローラ(駆動軸体)と従動ローラ(従動軸体)との間に無端ベルト(無端周転体)が架け渡された電動式ベルトコンベアに代えて、外部動力を必要とせず、プレス機の上金型の上下動の力を駆動源とした加工材の排出装置が開発されている(例えば、本願出願人が先に出願した特許文献1)。
これは、プレス加工時の上金型の垂直往復運動を、シュートの水平往復運動に変換する方式を採用したものである。具体的には、プレス加工により生じた加工材を受け、水平方向に往復動することで、この加工材をプレス加工装置の外部に排出するシュートと、上金型に上端部が取り付けられ、下端面に内部空間と連通した開口を有する筒形状のストライカと、上金型の昇降に応じて、ストライカを介して、シュートを往復駆動させるラック・ピニオン式駆動手段とを備えている。
【0004】
上金型の昇降により、素材を上金型と下金型との間でプレス加工することで、加工材が生じる。この加工材を下金型の下方に配置されたシュートが受ける。上金型が所定位置まで下降した時、ラック・ピニオン式駆動手段がシュートを駆動し、シュートを往復動させる。すなわち、シュートは、所定の速度で一方向(加工材の排出方向)に往動し、いったん停止後、逆方向に復動する。シュートの停止時、加工材にはシュートの動きにより所定の力が作用する。この力は、加工材とシュートとの間に作用する摩擦により加工材に作用する上記力とは反対方向の力より大きい。その結果、加工材はシュートからプレス加工装置の外部に排出される。
このようなラック・ピニオン機構を採用したことで、加工材の排出装置の垂直往復運動から水平往復運動への変換動作がスムーズとなり、耐久性に優れ、かつ上金型からシュートへ高い動力伝達効率で動力を伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−240679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の加工材の排出装置では、上述したようにプレス加工時の上金型の垂直往復運動を、シュートの水平往復運動、すなわち所定の速度で加工材の排出方向に往動し、いったん停止後、逆方向に復動する運動に変換する方式を採用していた。そのため、何らかの原因でシュート上に加工材が残ってしまった場合、それが障害となり、以降の被加工物をスムーズに排出できなくなるおそれがあった。
これに対して、前記電動式ベルトコンベアにあっては、このような問題は生じない。しかしながら、上述したようにプレス機とは別の駆動源が必要となり、コスト高を招く。さらには、常に無端ベルトが駆動ローラと従動ローラとの間で周転しているため、プレス時に投下された加工材の鋭利なエッジが無端ベルトを傷つけてしまい、無端コンベアの寿命を短くしていた。
【0007】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、ラック・ピニオン式駆動手段として、垂直に往復
動する垂直ラックと、無端コンベアの駆動軸体に回転力を伝達可能に連結され、垂直ラックに噛合し、垂直ラックの垂直往復運動を駆動軸体の回転運動に変換するピニオンと、ピニオンを一方向のみに回転させるワンウェイクラッチとを有した構成にすれば、上述した問題点はすべて解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0008】
この発明は、無端コンベア専用の駆動源を必要とせず、廉価であるとともに、無端周転体の寿命を長くすることができ、また常時、確実に加工材を排出することができ、さらには既製のプレス加工装置への設置も可能な加工材の排出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、下金型に対して上金型が昇降することにより素材をプレス加工するプレス加工装置に配備され、このプレス加工により生じたワークとスクラップとからなる加工材を排出する加工材の排出装置において、
駆動軸体と従動軸体との間に、前記ワークを受ける無端周転体が架け渡されたワーク用無端コンベアと、駆動軸体と従動軸体との間に、前記スクラップを受ける無端周転体が架け渡されたスクラップ用無端コンベアと、前記上金型に上端部が取り付けられたストライカと、前記上金型の昇降に応じて、前記ストライカを介して、前記ワーク用無端コンベアおよび前記スクラップ用無端コンベアの各駆動軸体を同期回転させるラック・ピニオン式駆動手段とを備え、このラック・ピニオン式駆動手段は、前記ストライカの押し下げ力が作用して、垂直に往復動する垂直ラックと、前記ワーク用無端コンベアおよび前記スクラップ用無端コンベアの各駆動軸体に連結される出力軸と、該出力軸に回転力を伝達可能に連結され、前記垂直ラックに噛合し、前記垂直ラックの垂直往復運動を前記出力軸の回転運動に変換するピニオンと、該ピニオンを一方向のみに回転させるワンウェイクラッチとを有し、これらの垂直ラック、出力軸、ピニオン、ワンウェイクラッチはケーシングに収納された加工材の排出装置である。
【0010】
素材(被加工材)の種類は限定されない。例えば、各種の金属板、各種の合成樹脂板などを採用することができる。
加工材とは、素材をプレス加工して得られた製品(例えば一定形状に打ち抜かれた板片)の他、プレス加工時に排出されるスクラップを含む。
下金型および上金型は、ヒータを内蔵した加熱式の金型でもよい。また、ヒータを有しない金型でもよい。
コンベア駆動装置により駆動される無端コンベアとしては、例えば、各種のベルトコンベア(ゴムベルトコンベア、スチールベルトコンベア、金網ベルトコンベア、ケーブルベルトコンベア、マグネットベルトコンベアなど)を採用することができる。その他、バケットコンベア、スクレーパコンベアなどの各種のチェーンコンベアを採用することができる。
【0011】
無端コンベアの台数は任意である。1台でも2台以上でもよい。
無端コンベアによる加工材の排出(搬送)方向は任意である。例えば、水平方向、傾斜方向、および垂直方向の何れでもよい。
無端周転体は、適用される無端コンベアの種類に応じて適宜変更される。例えば、ベルトコンベアの場合には、無端ゴムベルト、無端スチールベルトなどである。
駆動回転体および従動回転体も適用される無端コンベアの種類に応じて変更される。例えば、ゴムベルトコンベアの場合には駆動ローラおよび従動ローラで、チェーンコンベアの場合には駆動スプロケットおよび従動スプロケットである。
【0012】
ケーシングの形状およびサイズは、ラック・ピニオン式駆動手段を収納可能であれば任意である。
ラック・ピニオン式駆動手段の構造は任意である。例えば、上方へばね付勢された垂直ラックを、上金型に固定されたストライカによって殴打することでピニオンを回転させるものを採用することができる。また、垂直ラックを上金型に固定(ストライカを介しての間接固定でも可能)し、垂直ラックが上金型と一体的に昇降することで、ピニオンを回転させるものでもよい。
ラック・ピニオン式駆動手段の使用数は任意である。例えば、各無端コンベアに対して1つずつでも、全ての無端コンベアに対して1つでもよい。
ピニオンは1枚物でも、1本の軸に複数枚(通常2枚)のピニオンが連結された変速ピニオンでもよい。
【0013】
垂直ラックの形状は任意である。例えば、断面円形(丸棒)、断面正方形(角棒)などの棒状でも、板状でもよい。
垂直ラックの長さ(高さ)は任意である。これを長尺にしてピニオンの回転数を増やし、上金型の1回の昇降に伴なった無端周転体の周方向への移動距離、ひいては加工材の排出距離を長くすることができる。
また、ラックとピニオンとの歯数を変更することで、上金型の1回の昇降により無端周転体が周方向への移動する距離を変更することができる。
【0014】
出力軸と駆動軸体とは、例えば溶接などにより分離不能に連結しても、ジョイント、シャフト、ギヤなどの回転力伝達部材を介して間接的に連結してもよい。
ワンウェイクラッチの種類は限定されない。例えば、外輪(アウターレース)と内輪(インナーレース)の間にスプラグと呼ばれるダルマ形の輪留めが組み込まれたスプラグ式のワンウェイクラッチを採用することができる。その他、カム式のワンウェイクラッチでもよい。これは、外輪、内輪、ローラおよびスプリングを備え、この外輪の内側または内輪の外側にカム面を有するポケットが形成されたものである。
ワンウェイクラッチによって出力軸が許容される回転方向とは、無端コンベアによって加工材をプレス加工装置から離反するように排出させる方向である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、下金型に対して上金型が昇降することにより素材をプレス加工するプレス加工装置に配備され、このプレス加工により生じたワークとスクラップとからなる加工材を排出する加工材の排出装置において、駆動軸体と従動軸体との間に、ワークを受ける無端周転体が架け渡されたワーク用無端コンベアを有し、駆動軸体と従動軸体との間に、スクラップを受ける無端周転体が架け渡されたスクラップ用無端コンベアを有し、これらのワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとが上下に平行に離間した状態で設けられ、上金型の昇降に応じて、垂直に往復動する1本の垂直ラックを設け、この垂直ラックに噛合し、垂直ラックの垂直往復運動を上記各駆動軸体の回転運動に変換する、上下に離間した状態で配された一対のピニオンを設け、各ピニオンを一方向のみに回転させる一対のワンウェイクラッチをそれぞれ設け、ワークはワーク用無端コンベアにより、スクラップはスクラップ用コンベアによりそれぞれ排出される加工材の排出装置である。
【0016】
ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとの使用台数は任意である。1台ずつまたは2台ずつでもよいし、一方の台数を増やしてもよい。
ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとの配置位置は任意である。
ストライカの形状、サイズは任意である。
ストライカが取り付けられる上金型の位置も任意である。
コンベア駆動装置の使用数は、1台のみとして、各駆動軸体が連結されたワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとを同期駆動させるようにしてもよい。また、ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとに対して、それぞれ専用のコンベア駆動装置を用いて、両無端コンベアを同期駆動させてもよい。
【0017】
ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとは、何れを上方に配置してもよい。また、これらの無端コンベアは、それぞれの加工物の搬出方向を同一に揃えてもよいし、揃えなくてもよい。
コンベア駆動装置の使用数は、各無端コンベアに合わせて1つずつである。
垂直ラックの長さは、上下配置された各コンベア駆動装置のピニオンに噛合できれば任意である。
また、垂直ラックはストレートな部材でも、段差状に屈曲した部材でもよい。要は、垂直ラックの垂直(鉛直)部分に、上下配置された各ピニオンが噛合できれば任意である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、上金型の昇降により、素材を上金型と下金型との間でプレス加工することで、加工材が生じる。この加工材は、プレス加工装置の付近に配置された無端コンベアの無端周転体が受ける。
上金型が下降した際、ラック・ピニオン式駆動手段によって無端コンベアの駆動軸体を回転させることで、無端コンベアにより加工材がプレス加工装置から排出される。すなわち、上金型の押し下げ力の作用により垂直ラックが垂直に下方へ往動することで、ピニオンは所定の速度で一方向に回転する。これにより、出力軸を介して駆動軸体が一定回数だけ回転し、無端周転体が駆動軸体と従動軸体との間で所定距離だけ周転する。その結果、加工材はその距離分だけプレス加工装置の外部に排出される。その後、上金型の上昇に伴ない垂直ラックが上昇してピニオンが逆回転するものの、ワンウェイクラッチにより出力軸の逆回転は阻止される。
【0019】
また、無端コンベアの駆動源として、プレス加工装置の上金型の上下動の力を採用したため、無端コンベア専用の駆動源を必要とせず、装置コストが廉価で、ランニングコストが不要となる。
さらに、加工材の排出に無端コンベア方式を採用したため、従来のシュート水平往復運動方式のものと異なり、無端周転体が受けた加工材はすべて確実にプレス加工装置の外部に排出することができる。
さらにまた、加工材を無端周転体が受ける時、無端周転体は停止している。そのため、プレス時に投下された加工材の鋭利なエッジが無端周転体に衝突しても、従来の電動式の無端コンベアに比べて無端周転体が傷付き難くなり、この無端周転体の寿命を長くすることができる。
【0020】
また、プレス加工により生じたワークは、ワーク用無端コンベアの無端周転体が受け、スクラップはスクラップ用無端コンベアの無端周転体が受ける。
上金型が所定位置まで下降した時、ストライカの押し下げ力の作用によって垂直ラックが垂直に下方へ往動することにより、ピニオンは所定の速度で一方向に回転する。これにより、出力軸を介して駆動軸体が一定回数だけ回転し、ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアの各無端周転体が、各駆動軸体と各従動軸体との間で所定距離だけ周転する。その結果、ワークおよびスクラップはその距離分だけプレス加工装置の外部に排出される。その後、上金型の上昇に伴なって垂直ラックが上方へ移動し、ピニオンが逆回転するものの、ワンウェイクラッチの作用により出力軸の逆回転は阻止される。
このように、ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアの各駆動軸体に、回転力伝達可能に出力軸を連結したため、これらの無端コンベアを1台のコンベア駆動装置により同期駆動させ、プレス後のワークとスクラップとを同時に排出することができる。もちろん、複数台の専用のコンベア駆動装置を使用し、ワーク用無端コンベアとスクラップ用無端コンベアとを同期駆動させてもよい。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、上金型の昇降により発生したワークとスクラップとは、上下配置されたワーク用無端コンベアと、スクラップ用無端コンベアとの各無端周転体がそれぞれ受ける。
上金型が下降する際、垂直ラックも上金型と一体的に下方へ移動するため、上下方向に配置された各コンベア駆動装置のラック・ピニオン式駆動手段のピニオンは同期回転する。これにより、各無端コンベアの無端周転体が所定距離だけ周転し、ワークおよびスクラップは、その周転距離分だけプレス加工装置の外部に排出される。
このようにしたことで、上下に離間配置されたワーク用無端コンベアを駆動するコンベア駆動装置と、スクラップ用無端コンベアを駆動するコンベア駆動装置とを、上金型にストライカを介して連結された1本の垂直ラックにより同期駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置のプレス成形前の使用状態を示す正面図である。
図2】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置の斜視図である。
図3】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置の一部を構成するラック・ピニオン式駆動手段を示す斜視図である。
図4】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置の一部を構成するラック・ピニオン式駆動手段を示す正面図である。
図5】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置の一部を構成するラック・ピニオン式駆動手段を示す平面図である。
図6】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置の一部を構成するラック・ピニオン式駆動手段を示す側面図である。
図7】この発明の実施例1に係る加工材の排出装置のプレス成形時の使用状態を示す正面図である。
図8】この発明の実施例2に係る加工材の排出装置のプレス成形前の使用状態を示す正面図である。
図9】この発明の実施例2に係る加工材の排出装置のプレス成形時の使用状態を示す正面図である。
図10】この発明の実施例3に係る加工材の排出装置を示す斜視図である。
図11】この発明の実施例3に係る別の加工材の排出装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。説明の都合上、加工材の排出装置の前方向をX1方向、その後ろ方向をX2方向、金型の右方向をY1方向、左方向をY2方向、上方向をZ1方向、下方向をZ2方向とする。
【実施例】
【0024】
図1において、10はこの発明の実施例1に係る加工材の排出装置(以下、排出装置)で、この排出装置10は、下金型11に対して上金型12が昇降することにより素材(例えば所定形状の鋼板材)aからワーク(加工材)Wをプレス成形するプレス機(プレス加工装置)Pに配備され、プレス加工により生じたワークWを排出する装置である。
【0025】
まず、プレス機Pの構成を詳細に説明する。
図1に示すように、プレス機Pは、矩形枠状の架台13に固定された下金型11と、下金型11の上方に上下動自在に配設された上金型12とを備えている。
上金型12は、図示しない駆動源により、所定の速度、所定のストロークで上下に駆動される。したがって、下金型11に載置された素材aは、上金型12の往復動によりワークWにプレス加工され、その一部がスクラップとなる。プレス加工されたワークWは、下金型11のX2側に配されたX1−X2方向に延びるシュート14を滑落して排出される。
【0026】
次に、図1図6を参照して、排出装置10を詳細に説明する。
図1および図2に示すように、排出装置10は、プレス加工により生じたワークWを、シュート14を介して無端ベルト(無端周転体)15により受け、プレス機Pの外部に排出するベルトコンベア(無端コンベア、ワーク用無端コンベア)16と、上金型12のプレススライド12aに上端部が取り付けられたストライカ17と、上金型12の昇降に応じて、ストライカ17を介して、ベルトコンベア16の駆動ローラ(駆動軸体)18を回転させるラック・ピニオン式駆動手段19を有するコンベア駆動装置Aとを備えている。
【0027】
ベルトコンベア16は、ワークWの排出方向をX2方向として、下金型11のX2方向に配置されている。ベルトコンベア16は、X1−X2方向に離間して配置された駆動ローラ18と従動ローラ(従動軸体)20との間に、ワークWを受けるゴム製の無端ベルト15が、所定のテンションにより架け渡されたものである。これらのローラ18,20の長さ方向は、Y1−Y2方向に向けられている。
ストライカ17は、所定長さの円柱体で、その上端部がプレススライド12aのX2−Y2側のコーナー部分の下面に固定されている。
【0028】
次に、図3図6を参照して、コンベア駆動装置Aを詳細に説明する。
コンベア駆動装置Aは、主にラック・ピニオン式駆動手段19と、これを収納するケーシング21とからなる。
ラック・ピニオン式駆動手段19は、ストライカ17の押し下げ力が上端面に入力され、垂直に往復動する垂直ラック22と、ベルトコンベア16の駆動ローラ18に連結される出力軸23と、出力軸23に回転力を伝達可能に連結され、垂直ラック22に噛合し、垂直ラック22の垂直往復運動を出力軸23の回転運動に変換するピニオン24と、ピニオン24を一方向のみに回転させるカムクラッチ(ワンウェイクラッチ)25とを有している。
【0029】
ケーシング21は、駆動ローラ18のY2側の端付近に配された幅狭で縦長な矩形ボックスで、Y1側の半分を構成する第1ケース部26と、Y2側の半分を構成する第2ケース部27とを有している。これらは鋳鉄品である。
ケーシング21の内部空間の上部の中央部分には、Y1−Y2方向に延びる短尺な入力軸28が、各ケース部26,27に1つずつ配設された一対の上側ベアリング29によって回転自在に支持されている。入力軸28のY1側の端部には、内部空間に嵌入されたカムクラッチ25を介して大径ギヤ30が取り付けられている。カムクラッチ25は、垂直ラック22の下降時のピニオン24の回転力を大径ギヤ30に伝達するものの、垂直ラック22の上昇時のピニオン24の回転力は、この大径ギヤ30に伝達しない構成となっている。また、入力軸28の長さ方向の中間部にはカラー31が挿通され、入力軸28のY2側の端部にはピニオン24が固定されている。
【0030】
さらに、ケーシング21の内部空間の下部の中央部分には、ケーシング21の幅より長尺でY1−Y2方向に延びた出力軸23が、各ケース部26,27に配置された一対の下側ベアリング32により回転自在に支持されている。すなわち、第1ケース部26のY1側の端板の下部の中央部分と、第2ケース部27のY2側の端板の下部の中央部分とには一対の軸孔33が形成され、出力軸23の両端部は、これらの軸孔33から外方へ突出している。このうち、出力軸23のY1側の突出部分には、ジョイント34(図10)を介
して、ベルトコンベア16の駆動ローラ18の回転軸35が連結されている。
さらにまた、出力軸23のY1側の端部付近には、大径ギヤ30に噛合する小径な出力ギヤ36が固定されている。垂直ラック22が下降することでピニオン24が回転し、その回転力がカムクラッチ25から大径ギヤ30に伝達される。大径ギヤ30が回転することで出力ギヤ36が回転し、これにより出力軸23、ジョイント34を介して駆動ローラ18の回転軸35が回転する(図2)。
【0031】
第2ケース部27のX1側の端部には、第2ケース部27の上面と下面とを貫通した状態で、垂直ラック22を昇降させる円形のラック昇降孔37が形成されている。
第2ケース部27の上側のラック昇降孔37には、第2ケース部27の高さの約半分の長さを有した円筒状のラック昇降ガイド38の上端部付近が嵌入されている。ラック昇降ガイド38の上端部は大径化し、第2ケース部27の上面から突出している。また、ラック昇降ガイド38の下半分のX2側の部分は切欠され、開口部となっている。この開口部を通して、垂直ラック22とピニオン24とが噛合する。
ラック昇降ガイド38のうち、開口部より上方の部分には、垂直ラック22と略同一長さのコイルばね39の下端部が着脱自在に取り付けられている。
【0032】
また、第1ケース部26のX1側の下端部には、この第1ケース部26のボルト止め用の板片部41を残して、矩形状の切欠部40が形成されている。また、第2ケース部27のX2側の下端部には、この第2ケース部27をボルト止めするための別の板片部41を残し、矩形状の別の切欠部40が形成されている。これらの板片部41には、そのZ1−Z2方向の両端面を貫通してボルト孔42が配設されている。各ボルト孔42に挿入された図示しない2本のボルトにより、ケーシング21、ひいてはラック・ピニオン式駆動手段19がプレス機Pの架台13に据え付けられる。
【0033】
垂直ラック22は、丸棒のX2側の端部に、一定ピッチで多数の歯が形成された縦長な部材である。なお、丸棒に代えて長尺な板材でもよい。この垂直ラック22の上端には、厚肉で大径な円板のヘッド部43が固定されている。また、垂直ラック22の下端には、上側のラック昇降孔37からの垂直ラック22の飛び出しを防止する円板形のストッパ部材44が、ビスBにより着脱自在に固定されている。垂直ラック22は、ヘッド部43の下面にばね上端を当接した状態で、コイルばね39の内部空間に挿入されている。これにより、ストライカ17の押し下げ力で垂直ラック22が下降した場合でも、その力が解除されれば、コイルばね39のばね力により垂直ラック22は元の高さまで戻る。
カムクラッチ25は、図示しないものの、外輪、内輪、ローラおよびスプリングを備え、この外輪の内側にカム面を有するポケットが形成されたカム式のワンウェイクラッチである。
【0034】
図3図6において、符号45は、第1ケース部26の上部一帯のY2側の面に形成された大径ギヤ収納部、符号46は、大径ギヤ30収納部の奥面の中央部に形成された上側ベアリング収納部、符号47は、第1ケース部26の下部のY2側の面に形成された出力ギヤ収納部、符号48は、出力ギヤ収納部47の奥面の中央部に形成され、軸孔33と同軸的に連通した下側ベアリング収納部、符号49は、第2ケース部27の上部のY1側の面に形成され、X1側の端部がラック昇降孔37の長さ方向の中間部分と連通したピニオン収納部、符号50は、ピニオン収納部49の奥面の中央部に形成された別の上側ベアリング収納部、符号51は、第2ケース部27の下部のY1側の面に形成され、別の軸孔33と同軸的に連通した別の下側ベアリング収納部である。
また、図2において、符号52は、従動ローラ20の回転軸、符号53は、回転軸35,52の厚肉な軸支板、符号54は、無端ベルト15のY1−Y2側の端からワークWが落下することを防止するサイドガイド板である。
【0035】
次に、図1および図7を参照して、この発明の実施例1に係る排出装置10の作動を説明する。
まず、プレス機Pによる素材aのプレス加工を説明する。
図示しない駆動源により、上金型12が上死点と下死点との間を所定速度で昇降する。このとき、素材aが位置決めされた下金型11上に上金型12が下降し、両金型11,12が協働して、素材aが所定形状にプレス加工される(図7)。これにより、ワークWが成形されるとともに、不要なスクラップ(切り屑、切粉など)Sが発生する(図11参照)。このうち、ワークWは自動または手動で下金型11のX2側の端から排出され、その後、シュート14を滑落して、ベルトコンベア16の無端ベルト15のX1側の端部上に投下される。このとき、無端ベルト15は停止状態にある。そのため、プレス時に投下されたワークWの鋭利なエッジが無端ベルト15に衝突しても、従来の電動式ベルトコンベアの場合より無端ベルト15が傷付き難くなり、無端ベルト15の寿命を長くすることができる。
【0036】
以下、排出装置10の具体的な作動を説明する。
素材aのプレス加工時、図1に示すように上金型12と一体的にストライカ17が下降(往動)し、垂直ラック22の上端に当接する。その後、ストライカ17がさらに下降することで、垂直ラック22はラック昇降ガイド38によってガイドされながら、垂直に押し下げられる。これにより、ピニオン24が入力軸28を中心にして所定回数だけ一方向へ回転し、その回転力がカムクラッチ25を経て大径ギヤ30へと伝達される(図3図6)。その後、この大径ギヤ30が回転することにより出力ギヤ36が回転し、出力軸23、ジョイント34および回転軸35を介して、ベルトコンベア16の駆動ローラ18が一方向へのみ回転する。その結果、駆動ローラ18と従動ローラ20との間で無端ベルト15が所定距離だけ周転(移動)し、これに伴ない無端ベルト15上のワークWは、この所定距離分だけプレス機Pの外部へ排出される(図7)。
【0037】
次いで、上金型12の上昇に伴ないストライカ17が上昇する。このとき、入力軸28と大径ギヤ30との間にカムクラッチ25が介在しているため、大径ギヤ30、ひいては出力軸23の逆回転が阻止される。
その後は、次の素材aを自動または手動により下金型11に供給し、上述した上金型12の昇降に伴なうワークWの成形と、ラック・ピニオン式駆動手段19によるベルトコンベア16の無端ベルト15の間欠的な周転が行われ、ワークWがプレス機Pから順次排出されて行く。
【0038】
このように、ベルトコンベア16の駆動源として、プレス機Pの上金型12の上下動の力を採用したため、ベルトコンベア専用の駆動源を必要とせず、装置コストが廉価で、ランニングコストが不要となる。
また、排出装置10としてベルトコンベア方式のものを採用したため、従来のシュート水平往復運動方式のものの場合とは異なり、無端ベルト15が受けたワークWのすべてを確実にプレス機Pの外部へと排出することができる。
また、大径ギヤ30の内側空間にカムクラッチ25を嵌入したため、ケーシング21の幅(X1−X2方向の長さ)が短くなり、ケーシング21の小型化を図ることができる。
さらに、第1ケース部26と第2ケース部27とを鋳鉄品とし、各ケース部26,27の内側には、ラック・ピニオン式駆動手段19の主要構成体である大径ギヤ30、一対の上側ベアリング29、出力ギヤ36、一対の下側ベアリング32をそれぞれ収納する収納部45〜51のみを形成し、余剰の空間を設けないようにしたため、ケーシング21が堅牢となり、ラック・ピニオン式駆動手段19の耐久性を高めることができる。
【0039】
次に、図8および図9を参照して、この発明の実施例2に係る加工材の排出装置を説明する。
図8に示すように、実施例2の排出装置10Aの特徴は、実施例1のラック・ピニオン式駆動手段19の一部の部品を変更し、上金型12の昇降ストロークが長いプレス機P1に適用可能なラック・ピニオン式駆動手段19Aを有するコンベア駆動装置A1を採用した点である。
このプレス機P1に適用する際には、まず架台13の上面に小型で脚長な門型台60を取り付け、この門型台60の上板61にベルトコンベア16のX1側の端部を固定する。上板61には、ラック昇降孔37と対峙する部分に、ラック孔62が形成されている。
【0040】
次に、ラック・ピニオン式駆動手段19の部品構成を一部変更し、ラック・ピニオン式駆動手段19Aとする。詳しくは、第2ケース部27のラック昇降孔37の下側開口からドライバを差し込み、ビスBを外して垂直ラック22の下端からストッパ部材44を離脱し、垂直ラック22をラック昇降孔37から抜き取るとともに(図4)、ラック昇降ガイド38からコイルばね39を取り外す。また、ストライカ17の下端部に、垂直ラック22の1.5倍の長さを有する長尺ラック(垂直ラック)22Aの上端部を着脱可能に連結する(図8)。
【0041】
素材aのプレス加工時には、上金型12と一体的にストライカ17を介して長尺ラック22Aが下降する。このとき、長尺ラック22Aが垂直ラック22より長尺であるため、長尺ラック22Aの下端部が上板61のラック孔62を通って門型台60の内部空間へ侵入するとともに(図9)、ピニオン24が入力軸28を中心にして回転する。しかも、長尺ラック22Aが垂直ラック22より長尺であるため、上金型12の1回の昇降でのベルトコンベア16によるワークWの排出距離が、実施例1の殴打タイプの場合より長くなる。その結果、駆動ローラ18と従動ローラ20との間で無端ベルト15がそれに応じた距離だけ周転(移動)し、これによって無端ベルト15上のワークWは、プレス機Pの外部へ実施例1のときより長い距離だけX2方向へ排出される。
【0042】
このように、コンベア駆動装置Aとして、ケーシング21の上面と下面とを貫通してラック昇降孔37を形成し、垂直ラック22の下端に、コイルばね39のばね力によって垂直ラック22が上側のラック昇降孔37から飛び出すのを防止するストッパ部材44を着脱自在に取り付け、さらにはコイルばね39を、ラック昇降ガイド38を介してケーシング21に着脱自在に取り付けた構成のものを採用している。そのため、上述したように実施例1のラック・ピニオン式駆動手段19について、簡単な部品交換を行うだけで、実施例2のラック・ピニオン式駆動手段19Aを有したコンベア駆動装置A1に構造変更することができる。これにより、新設や既存のプレス装置に拘わらず、排出装置10を様々な装置構成のプレス機に組み込むことができる。
【0043】
すなわち、例えば、上金型12が上死点に在る時のプレススライド12aと架台13との距離(高さ)が十分にとれない(小型の)プレス機Pの場合には、垂直ラック22をストライカ17により殴打する実施例1のコンベア駆動装置Aを、架台13の上面に直接固定すればよい。
一方、プレススライド12aと架台13との距離が十分にとれる(大型の)プレス機P1の場合には、上金型12に長尺ラック22Aが固定される実施例2のコンベア駆動装置A1に構成変更して使用すればよい。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。
【0044】
次に、図10および図11を参照して、この発明の実施例3に係る加工材の排出装置を説明する。
図10に示すように、実施例3の排出装置10Bの特徴は、1台の実施例1のコンベア駆動装置Aを使用し、3台のベルトコンベア16を同期駆動させるようにした点である。
具体的には、実施例1のベルトコンベア16のY1方向に、無端ベルト15の排出方向を揃えた2台のベルトコンベア16A,16Bを平行配置し、各駆動ローラ18の回転軸35をジョイント(回転力伝達部材)34により連結した構成となっている。このうち、ベルトコンベア16AはスクラップSの排出用のもの(スクラップ用無端コンベア)である。
【0045】
なお、コンベア駆動装置Aの設置位置は、1台目のベルトコンベア16と2台目のベルトコンベア16Aとの間に配置してもよい(図11)。この場合には、出力軸23の両端部に、一対のジョイント34を介して、対応するベルトコンベア16の各駆動ローラ18の回転軸35が連結されることになる。
また、ジョイント34に代えて、ベベルギヤを内蔵したギヤボックスや、フレキシブルシャフトを採用することにより、隣接するベルトコンベア16〜16BのワークW(スクラップS)の排出方向を、直交方向や傾斜方向などに変更することができる。
さらに、ラック・ピニオン式駆動手段19のケーシング21の取り付け向きを変更する(X1側とX2側とを反対にする)ことで、ベルトコンベア16、16AによるワークWの排出方向を逆方向(X1方向)としてもよい。
【0046】
その他、排出装置10(10A,10B)は、ワークWのプレス機間の搬送に使用することができる。
また、ジョイント34に代えて、フレキシブルジョイントを採用すれば、プレス機の極めて狭い空間でも、ベルトコンベア16とラック・ピニオン式駆動手段19とを分離状態で組み込むことができる。
さらにまた、このラック・ピニオン式駆動手段19の出力軸と、プレス機の扇風機とを回転力伝達可能に連結して、無電力によりプレス機を空冷することができる。
【0047】
また、図示しないものの1本の長尺ラックを使用し、上下2段配置されたワーク排出用のベルトコンベア16と、スクラップ排出用のベルトコンベア16Aとを、同時駆動させるように構成してもよい。
詳しくは、ベルトコンベア16の専用となるコンベア駆動装置A1と、ベルトコンベア16Aの専用となる別のコンベア駆動装置A1とを、平面視してラック孔62同士を一致させた状態で上下平行に離間して配置し、上金型12のプレススライド12aに、各コンベア駆動装置A1に組み込まれた各ピニオン24に噛合可能な長さを有する1本の長尺ラックを、上金型12のプレススライド12aに固定されたストライカ17に着脱自在に連結した構成となっている。
【0048】
上金型12の昇降に伴ない、この長尺ラックも昇降するため、上下方向に配置された各コンベア駆動装置A1のピニオン24は同期回転する。これにより、上下2段配置されたベルトコンベア16,16Aの無端ベルト15が所定距離だけ周転し、ワークWおよびスクラップSは、各無端ベルト15の周転距離分だけプレス機P1の外部に排出される。
このように構成したことで、上段配置されたベルトコンベア16を駆動するコンベア駆動装置A1と、下段配置されたベルトコンベア16Aを駆動する別のコンベア駆動装置A1とを、上金型12に連結された1本の長尺ラックにより同期駆動させることができる。
【0049】
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能であるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、例えば、金属板などの素材をプレス加工して生じた加工材をプレス機の外へ排出する技術として有用である。
【符号の説明】
【0051】
10,10A,10B 加工材の排出装置、
11 下金型、
12 上金型、
15 無端ベルト(無端周転体)、
16、16A、16B ベルトコンベア(無端コンベア)
17 ストライカ、
18 駆動ローラ(駆動軸体)、
19,19A ラック・ピニオン式駆動手段、
20 従動ローラ(従動軸体)、
22 垂直ラック、
22A 長尺ラック(垂直ラック)、
23 出力軸、
24 ピニオン、
25 カムクラッチ(ワンウェイクラッチ)、
34 ジョイント(回転力伝達部材)、
A,A1 コンベア駆動装置、
P,P1 プレス機(プレス加工装置)、
W ワーク(加工材)、
S スクラップ(加工材)、
a 素材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11