特許第6753606号(P6753606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753606
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ペット用給水器およびそのフィルター
(51)【国際特許分類】
   A01K 39/02 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   A01K39/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-198292(P2016-198292)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-57340(P2018-57340A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】今泉 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】日下 浩辰
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−148018(JP,A)
【文献】 特開2014−097010(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0019809(US,A1)
【文献】 特開2016−021885(JP,A)
【文献】 特開2015−006658(JP,A)
【文献】 特開昭58−098112(JP,A)
【文献】 実公昭12−014157(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0237153(US,A1)
【文献】 特開昭56−129016(JP,A)
【文献】 実公昭13−008575(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−100181(JP,U)
【文献】 特開2009−112887(JP,A)
【文献】 特開平07−026460(JP,A)
【文献】 特開平10−006425(JP,A)
【文献】 特開2006−020519(JP,A)
【文献】 特表平01−501161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00− 9/00
A01K31/00−34/24
A01K39/00−39/06
A01K61/00−61/65
A01K61/80−63/10
B01D23/00−35/04
B01D35/08−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクの上方に水飲み部が設けられ、かつ貯水タンクから水飲み部に供給された水が貯水タンクに戻るようにしたペット用給水器における貯水タンクおよび水飲み部間に着脱自在に設けられ、かつ水飲み部から貯水タンクに戻る水を上面側から下面側に通過させるようにしたペット用給水器のフィルターであって、
通水孔が形成された底壁の外周縁部および内周縁部に外周壁および内周壁が立ち上がり設けられるとともに、その底壁に前記外周壁および前記内周壁間を周方向に複数の内部濾過室に仕切る複数の仕切壁が立ち上がり状に設けられたフィルタートレイと、
前記フィルタートレイの上端開口部を被覆するように配置され、かつ物理濾材によって構成される上面被覆濾材とを備え、
前記仕切壁は、外端縁が前記外周壁に連結され、かつ内端縁が前記内周壁から外径方向に離間した位置に配置された主仕切壁と、前記主仕切壁の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びるように配置された二股基端壁と、外端縁が前記二股基端壁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が前記内周壁にそれぞれ連結されるように配置された二股先端壁とを備え、
前記上面被覆濾材は、少なくとも前記主仕切壁および前記二股先端壁に固着されていることを特徴とするペット用給水器のフィルター。
【請求項2】
前記上面被覆濾材は、前記二股基端壁に固着されている請求項1に記載のペット用給水器のフィルター。
【請求項3】
前記上面被覆濾材の外周縁部が前記フィルタートレイの外周縁部よりも外側に張り出すように配置されている請求項1または2に記載のペット用給水器のフィルター。
【請求項4】
前記上面被覆濾材は不織布によって構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【請求項5】
平面視ドーナッツ形状に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【請求項6】
平面視半円弧状に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【請求項7】
貯水タンクと、その貯水タンクの上側に着脱自在に設けられたフィルターと、そのフィルターの上側に設けられた水飲み部とを備え、貯水タンクから水飲み部に供給された水が前記フィルターを上面側から下面側に通過して前記貯水タンクに戻るようにしたペット用給水器であって、
前記フィルターは、通水孔が形成された底壁の外周縁部および内周縁部に外周壁および内周壁が立ち上がり設けられるとともに、その底壁に前記外周壁および前記内周壁間を周方向に複数の内部濾過室に仕切る複数の仕切壁が立ち上がり状に設けられたフィルタートレイと、前記フィルタートレイの上端開口部を被覆するように配置され、かつ物理濾材によって構成される上面被覆濾材とを備え、
前記仕切壁は、外端縁が前記外周壁に連結され、かつ内端縁が前記内周壁から外径方向に離間した位置に配置された主仕切壁と、前記主仕切壁の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びるように配置された二股基端壁と、外端縁が前記二股基端壁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が前記内周壁にそれぞれ連結されるように配置された二股先端壁とを備え、
前記上面被覆濾材は、少なくとも前記主仕切壁および前記二股先端壁に固着されていることを特徴とするペット用給水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犬や猫等のペットに飲み水を供給するためのペット用給水器およびそのフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットとして飼育される犬や猫に水を与える場合、水を貯留したボウル等の容器を所定の箇所に設置しておき、適当なときに、その容器からペットが水を飲用するのが一般的である。ところがこのような水の与え方では、ボウル内の水が長時間放置される場合があり、衛生上好ましくない。
【0003】
そこで、近年になって、下記特許文献1,2に示すように水を自動的に循環させつつ供給するようにした循環型自動給水器(水遣り器)が提案されている。
【0004】
このペット用循環型自動給水器は、水を貯留しておく貯水タンクと、貯水タンクの上方に設けられたフィルターと、フィルターの上方に設けられた水飲み部とを備え、貯水タンク内の水を循環ポンプによって水飲み部に汲み上げて、その水を水飲み部に流通させた後、フィルターに通過させてから貯水タンクに戻すように循環させるものである。こうして水を循環させておき、水飲み部を流通する水をペットに飲用させるようにしている。
【0005】
一方、従来の循環型自動給水器に採用されているフィルターとして図13に示すようなドーナッツ状のフィルター9が周知である。
【0006】
このフィルター9は、フィルタートレイ90を備えている。フィルタートレイ90は、多数の通水孔91が形成されたドーナッツ状の底壁92を備え、その底壁92の外周縁部に沿って外周壁93が立ち上がり状に一体に形成されるとともに、内周縁部に沿って内周壁94が立ち上がり状に一体に形成されている。さらに外周壁93および内周壁94間には、径方向に延びる4本の仕切壁95が周方向に沿って等間隔おきに形成されており、フィルタートレイ90が仕切壁95によって4つの内部濾過室に仕切られている。各内部濾過室内には活性炭98が収容されるとともに、フィルタートレイ90の上面開口部にはその開口部を閉塞するようにしてドーナッツ状の不織布99が取り付けられている。
【0007】
このフィルター9は、循環型自動給水器における貯水タンクおよび水飲み部間に着脱自在に装着されている。そして水飲み部から貯水タンクに戻る水が、フィルター9の不織布99をその上面側から通過して濾過された後さらに、活性炭98を通って濾過されて、底壁92の通水孔91を通って流出して貯水タンクに戻るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−97010号
【特許文献2】特開2014−97011号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記図13に示す従来のフィルター9は、不織布99をフィルタートレイ90に取り付けるに際して、フィルタートレイ90の外周壁93、内周壁94および仕切壁95の各上端面に不織布99を溶着して付着するようにしている。このため図14に示すように不織布99における仕切壁95に対応する溶着部95aは、不織布99を構成する繊維が溶融固化しているため、嵩がほとんどない薄い平坦な状態で仕切壁95の上面に密着する一方、不織布95における外周壁93、内周壁94および仕切壁95に対応しない部分(壁無し部)は、嵩高く盛り上がった状態となり、不織布99の上面に溶着部95aに沿って溝型の水路状部が形成されてしまう。このためフィルター9の不織布95の上面に落下した水の一部が、溝型水路状の溶着部95aに流れ込んでその水Wが、溶着部95aに沿って不織布上を流通していき、その水Wがフィルター9の活性炭98や不織布99を通過することなく、溶着部95aに沿って外側から中央に向かって流通し中央孔を通って貯水タンクに戻される場合があった。このように一部の水が活性炭98や不織布99等の濾材を通過しない場合があり、十分な濾過性能を確実に得ることができないおそれがあるという課題があった。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な濾過性能を確実に得ることができるペット用給水器およびそのフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0012】
[1]貯水タンクの上方に水飲み部が設けられ、かつ貯水タンクから水飲み部に供給された水が貯水タンクに戻るようにしたペット用給水器における貯水タンクおよび水飲み部間に着脱自在に設けられ、かつ水飲み部から貯水タンクに戻る水を上面側から下面側に通過させるようにしたペット用給水器のフィルターであって、
通水孔が形成された底壁の外周縁部および内周縁部に外周壁および内周壁が立ち上がり設けられるとともに、その底壁に前記外周壁および前記内周壁間を周方向に複数の内部濾過室に仕切る複数の仕切壁が立ち上がり状に設けられたフィルタートレイと、
前記フィルタートレイの上端開口部を被覆するように配置され、かつ物理濾材によって構成される上面被覆濾材とを備え、
前記仕切壁は、外端縁が前記外周壁に連結され、かつ内端縁が前記内周壁から外径方向に離間した位置に配置された主仕切壁と、前記主仕切壁の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びるように配置された二股基端壁と、外端縁が前記二股基端壁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が前記内周壁にそれぞれ連結されるように配置された二股先端壁とを備え、
前記上面被覆濾材は、少なくとも前記主仕切壁および前記二股先端壁に固着されていることを特徴とするペット用給水器のフィルター。
【0013】
[2]前記上面被覆濾材は、前記二股基端壁に固着されている前項1に記載のペット用給水器のフィルター。
【0014】
[3]前記上面被覆濾材の外周縁部が前記フィルタートレイの外周縁部よりも外側に張り出すように配置されている前項1または2に記載のペット用給水器のフィルター。
【0015】
[4]前記上面被覆濾材は不織布によって構成されている前項1〜3のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【0016】
[5]平面視ドーナッツ形状に形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【0017】
[6]平面視半円弧状に形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載のペット用給水器のフィルター。
【0018】
[7]貯水タンクと、その貯水タンクの上側に着脱自在に設けられたフィルターと、そのフィルターの上側に設けられた水飲み部とを備え、貯水タンクから水飲み部に供給された水が前記フィルターを上面側から下面側に通過して前記貯水タンクに戻るようにしたペット用給水器であって、
前記フィルターは、通水孔が形成された底壁の外周縁部および内周縁部に外周壁および内周壁が立ち上がり設けられるとともに、その底壁に前記外周壁および前記内周壁間を周方向に複数の内部濾過室に仕切る複数の仕切壁が立ち上がり状に設けられたフィルタートレイと、前記フィルタートレイの上端開口部を被覆するように配置され、かつ物理濾材によって構成される上面被覆濾材とを備え、
前記仕切壁は、外端縁が前記外周壁に連結され、かつ内端縁が前記内周壁から外径方向に離間した位置に配置された主仕切壁と、前記主仕切壁の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びるように配置された二股基端壁と、外端縁が前記二股基端壁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が前記内周壁にそれぞれ連結されるように配置された二股先端壁とを備え、
前記上面被覆濾材は、少なくとも前記主仕切壁および前記二股先端壁に固着されていることを特徴とするペット用給水器。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]のペット用給水器のフィルターによれば、上面被覆濾材の主仕切壁に対応する部分が溝型水路状に形成されて、その水路状部に沿って水が外側から内側に流動する。そこで本発明においては、上面被覆濾材を分岐先端壁に固着しているため、上面被覆濾材の主仕切壁に対応する部分の内側に盛り上がり部が形成される。このため仕切壁対応部分を流動する水は、上記盛り上がり部によってせき止められて拡散することにより、上面被覆濾材に浸透してフィルターを通過して貯留タンクに戻るようになる。このように上面被覆濾材の主仕切壁に対応する部分を流通する水の一部が、上面被覆濾材を通過せずに貯留タンクに戻るという不具合を防止でき、上面被覆濾材に確実に通過させて濾過できるため、十分な濾過性能を得ることができる。
【0020】
発明[2]のペット用給水器のフィルターによれば、上面被覆濾材を分岐基端壁にも固着しているため、仕切壁全域が上面被覆濾材に固着されて、フィルタートレイ内における内部濾過室の各間を確実に仕切りことができるとともに、上面被覆濾材の取付強度を向上させることができる。
【0021】
発明[3]のペット用給水器のフィルターによれば、上面被覆濾材の外周縁部がフィルタートレイの外周縁部よりも外側に配置されているため、フィルタートレイ外側を通過しようとする水も上面被覆濾材の外周縁部に通過させて濾過することができ、濾過性能をより一層向上させることができる。
【0022】
発明[4]〜[6]のペット用給水器のフィルターによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0023】
発明[7]のペット用給水器によれば、上記発明[1]と主要部が同様であるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1はこの発明の第1実施形態であるペット用循環型自動給水器においてトップファンネルを分離した状態で示す斜視図である。
図2図2は第1実施形態の給水器を示す正面断面図である。
図3図3は第1実施形態の給水器に適用されたフィルターを分解して示す斜視図である。
図4図4は第1実施形態のフィルターを示す平面図である。
図5図5は第1実施形態のフィルターの断面図である。
図6図6は第1実施形態のフィルターにおいて上面被覆濾材の溶着部を説明するための模式平面図である。
図7図7は第1実施形態のフィルターのトレイを示す平面図である。
図8図8はこの発明の第2実施形態であるペット用循環型自動給水器においてトップファンネルを分離した状態で示す斜視図である。
図9図9は第2実施形態の給水器に適用されたフィルターを分解して示す斜視図である。
図10図10は第2実施形態のフィルターを示す平面図である。
図11図11は第2実施形態のフィルターの断面図である。
図12図12は第2実施形態のフィルターのトレイを示す平面図である。
図13図13は従来のフィルターを分解して示す斜視図である。
図14図14は従来のフィルターにおいて不織布の溶着部を説明するための模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1はこの発明の第1実施形態であるペット用循環型自動給水器P1においてトップファンネルを分離した状態で示す斜視図、図2は第1実施形態の給水器P1を示す正面断面図である。
【0026】
両図に示すように、この第1実施形態のペット用循環型自動給水器P1は、犬や猫等のペット用として好適に用いられるものである。この給水器P1は、貯水タンク1と、支持フレーム2と、トップファンネル3と、フィルター5とを基本的な構成要素として備えている。
【0027】
貯水タンク1は、内部にペット用の飲み水を貯留できるように水密性を有し、かつ上端が開口された容器よって構成されている。この貯水タンク2の周囲を囲う周壁は、水平断面が略楕円形に形成されることによって、上端開口部も平面視略楕円形状に形成されている。
【0028】
貯水タンク1の上端開口部には支持フレーム2が着脱自在に取り付けられている。支持フレーム2は、略凹球面型ないし略椀型の形状を有しており、中央部には平面視円形のフィルター設置用凹段部21が形成されている。このフィルター設置用凹段部21の底壁には、中央部にトップファンネル取付用の筒状部22が形成されるとともに、筒状部22の外側に通水用の開口23が形成されている(図2参照)。
【0029】
フィルター5は、支持フレーム2におけるフィルター設置用凹段部21の底壁上に載置可能に構成されており、そのように載置した状態ではフィルター設置用凹段部21内に収容できる大きさに形成されている。
【0030】
図3図7に示すようにフィルター5は、フィルタートレイ6と、内部濾材71と、上面被覆濾材72とを備えている。
【0031】
フィルタートレイ6は、中央に円形の中央孔60が形成された平面視ドーナッツ状に形成されている。このフィルタートレイ6は、底壁61を備え、その底壁61の上面側における外周縁部に立ち上がり状に外周壁62が周方向に連続して形成されている。
【0032】
本第1実施形態において外周壁62は、上側から下側に向かうに従って次第に内側に位置するように形成されて、内側に向かって下り傾斜する傾斜壁によって構成されている。この外周壁62は上端から下端にかけてのほぼ全域において一定の勾配を有し、断面が直線状に形成されている。
【0033】
底壁61の上面側には、その上面側を周方向に沿って4つの内部濾過室に仕切るための4つの仕切壁65〜67が立ち上がり状に形成されている。各仕切壁は、主仕切壁65、二股基端壁66および二股先端壁67を備えている。
【0034】
主仕切壁65は、外端縁が外周壁62に連結され、かつ内端縁が中央孔60の周縁部よりも外径方向に離間した位置(中央孔60の周縁部近傍)に配置されるように、径方向に沿って配置されている。なおフィルタートレイ6における中央孔60の周縁部の位置は、後述する内周壁63の形成位置に相当するものである。
【0035】
二股基端壁66は、主仕切壁65の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びるように配置されている。さらに二股先端壁67は、外端縁が二股基端壁66の周方向の両側端縁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が中央孔60の周縁部の位置にそれぞれ配置されるように、略径方向に沿ってそれぞれ配置されている。
【0036】
また底壁61の上面側における中央孔60の外周縁部には、隣合う二股先端壁67間を連結するように内周壁63が形成されている。本実施形態において内周壁63は、二股基端壁66に対応する部分には形成されておらず、周方向に沿って間欠的に(不連続に)形成されている。なお内周壁63は必ずしも周方向に間欠的に形成する必要はなく、周方向に連続して形成するようにしても良い。
【0037】
また底壁61には、周方向に長い長孔状の通水孔64が周方向および径方向に並ぶようにして多数形成されている。
【0038】
フィルタートレイ6は例えば、硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されており、底壁61、外周壁62、内周壁63および仕切壁65〜67が互いに一体に形成されている。またフィルタートレイ6における外周壁62、内周壁63および仕切壁65〜67の各上端面は、同一平面上に配置されるように構成されている。
【0039】
フィルタートレイ6において、仕切壁65〜67によって仕切られた各内部濾過室には内部濾材71がそれぞれ収容されている。内部濾材71としては、活性炭等の吸着濾材が用いられている。本実施形態において、内部濾材71は、活性炭等が袋詰めされた活性炭袋が採用されている。
【0040】
フィルタートレイ6における平面視ドーナッツ状の上面開口部には、その上面開口部を覆うようにして平面視ドーナッツ状の上面被覆濾材72が取り付けられている。本実施形態において上面被覆濾材72としては、不織布等の物理濾材が用いられている。この不織布製の上面被覆濾材72は、以下に示すようにフィルタートレイ6に溶着されている。
【0041】
図6は第1実施形態のフィルター5において上面被覆濾材72の溶着部62a,63a,65a,66a,67aを説明するための模式平面図である。
【0042】
図4および図6に示すように上面被覆濾材72は、外周壁62の上端面に対応する部分と、内周壁63の上端面を含む内周縁部全周に対応する部分とにそれぞれ溶着(固着)されることにより、溶着部(固着部)62a,63aが形成されている。さらに上面被覆濾材72は、仕切壁の上端面全域つまり、主仕切壁65、二股基端壁66および二股先端壁67の各上端面に対応する部分にもそれぞれ溶着(固着)されることにより、溶着部(固着部)65a,66a,67aが形成されている。
【0043】
上面被覆濾材72の溶着部62a,63a,65a,66a,67aは、上面被覆濾材72を構成する不織布の繊維が溶着固化されているため、嵩がほとんどない薄い平坦な状態で各壁62,63,65,66,67に密着する一方、上面被覆濾材72のそれ以外の部分は、嵩高く盛り上がった状態となり、上面被覆濾材72の上面において溶着部62a,63a,65a,66a,67aは溝型の水路状に形成される。ところが本実施形態では、主仕切壁65の内端側において、上面被覆濾材72は二股基端壁66および二股先端壁67の部分が溶着されて溶着部66a,67aとしているため、上面被覆濾材72のうち、この溶着部66a,67aに囲まれる領域が嵩高く盛り上がって、盛り上がり部75が形成される。この盛り上がり部75は、溶着部65aにより形成される溝型の水路状部の内端側に配置されて、その水路状部を途中で遮るように配置される。本実施形態ではこの構成を採用することによって後に詳述するように濾過性能を向上させることができる。
【0044】
一方、図3図5に示すように本実施形態において、上面被覆濾材72はフィルタートレイ6よりも径寸法が少し大きく形成されており、上面被覆濾材72の外周縁部73がフィルタートレイ6の外周縁部(外周壁上端)に対し周方向全域において外側に張り出すように配置されている。さらに上面被覆濾材72の中央孔は、フィルタートレイ6の中央孔60よりも径寸法が少し小さく形成されており、上面被覆濾材72の内周縁部74がフィルタートレイ6の中央孔周縁部に対し周方向全域において内側に張り出すように配置されている。
【0045】
このように構成されたフィルター5が図1および図2に示すように、貯水タンク1に設けられた支持フレーム2におけるフィルター設置用凹段部21の底壁に載置されることにより、その凹段部21内に適合した状態に収容される。この収容状態では、支持フレーム2の底壁の中央に設けられたトップファンネル取付用筒状部22に対応して、フィルター5の中央孔60が配置されている。
【0046】
ここで本第1実施形態においては、フィルター5のフィルタートレイ6における外周縁部(外周壁62の外面)と、支持フレーム2におけるフィルター設置用凹段部21の周壁内面との間に僅かに隙間が形成されるが、本第1実施形態においては、フィルター5の不織布製の上面被覆濾材72の外周縁部73が外方に突出するように形成されているため、この外周縁部73が上記の隙間の上方を覆うように配置されている。
【0047】
図1および図2に示すように、トップファンネル3は、傘状ないし山状に形成された平面視円形の水飲み部31と、水飲み部31の下面側における中央位置から垂直下方に延びる送水パイプ32とを備えた硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されている。送水パイプ32の上端は、水飲み部31の上面側に開放されている。
【0048】
このトップファンネル3の送水パイプ32の下端部が、フィルター5の中央孔60を介して支持フレーム2のトップファンネル取付用筒状部22に嵌め込まれて固定される。これにより、トップファンネル3がその水飲み部31が椀状の支持フレーム2内においてフィルター5の上方を覆うように配置された状態で支持フレーム2に支持される。
【0049】
なおトップファンネル3は主として猫用と犬用のものがあり、本第1実施形態のように水飲み部31が傘状ないし山状に形成されて、水飲み部31に水が溜まる部分がないトップファンネル3は猫用として好適に用いられる。また後述する第2実施形態に示すように、水飲み部31の上部に水が溜まる凹部が設けられたトップファンネルは、犬用として好適に用いられるものである。
【0050】
本第1実施形態の給水器P1においては、貯水タンク1内には循環ポンプ(図示省略)が収容されおり、その循環ポンプの吐出口がトップファンネル3における送水パイプ32の下端に連結されている。
【0051】
本第1実施形態のペット用循環型自動給水器P1は以上のように構成されており、貯水タンク1内にペットの飲み水用として所定量の水が貯留された状態で、上記の循環ポンプを駆動すると、貯水タンク1内の水が上記循環ポンプによってトップファンネル3の送水パイプ32に吐出され、その水が送水パイプ32を上昇して、送水パイプ32の上端開口部から水飲み部31の上面側に放出される。放出された水は自重によって、外周方向に拡散しながら水飲み部31に沿って流下していき、水飲み部31の外周縁部から外側に流出して落下する。水飲み部31から流出した水は、フィルター5の上面被覆濾材72を上から下に通過してフィルタートレイ6内に導入され、さらに内部濾材71を通過してから、底壁61の通水孔64を通過することによってフィルター5から下方に流出して、貯水タンク1内に戻るようになっている。
【0052】
このように水を貯水タンク1と水飲み部31との間に循環させておいて、水飲み部72を流通する水を犬や猫等のペットに飲用させるものである。
【0053】
またこのような水の循環によって、フィルター5を通過する水は、不織布製の上面被覆濾材72によって、ペットの食べかすや被毛、埃やゴミがこし取られる一方、活性炭製の内部濾材71によって、カルキ臭等の不快臭が吸着除去される。こうして循環する水が濾過されて浄化されることにより、飲み水として良好な水質が維持される。
【0054】
一方、本第1実施形態の給水器P1において、フィルター5を交換する場合には、トップファンネル3を取り外してフィルター5を露出させた後、そのフィルター5を支持フレーム2のフィルター設置用凹段部21から取り出して、新たなフィルター5を凹段部21に収容して、トップファンネル3を取り付けるようにすれば良い。
【0055】
本第1実施形態の循環型自動給水器P1においては、フィルター5におけるフィルタートレイ6の主仕切壁65の内端から二股に分岐するように二股基端壁66および二股先端壁67を形成する一方、上面被覆濾材72を、仕切壁65〜67に溶着して溶着部65a〜67aとしているため以下に説明するように、十分な濾過性能を確実に得ることができる。
【0056】
すなわち図4および図6に示すように溶着部65aは既述した通り溝型の水路状に形成されているため、水飲み部31からフィルター5の上面被覆濾材72に流下した水のうち、一部の水は溝型水路状の溶着部65aに流れ込んでその水Wが、溶着部65aに沿って外側から内側に向かって流動していく。その一方既述した通り、水路状の溶着部65aの内側には盛り上がり部75が形成されて、その盛り上がり部75が水路状の溶着部65aの内端側を遮るように配置される。このため水路状の溶着部65aを外側から内側に流れる水Wは、盛り上がり部75によってせき止められて、それ以上内側に流動するのが防止され、盛り上がり部75の外周縁(溶着部66a)に沿って周方向に拡散していき、上面被覆濾材72に浸透してフィルタートレイ6内に浸入する。こうしてフィルタートレイ6内に浸入した水Wは上記と同様に、内部濾材71を通過した後、底壁61の通水孔64を通過して貯水タンク1に戻ることになる。このように本実施形態においては、溶着部65aを流通する水Wが、上面被覆濾材72や内部濾材71を通過せずに中央孔60を通って貯水タンク1に戻るという不具合(図14参照)を確実に防止でき、溶着部65aを流通する水も濾材72,71に確実に通過させて濾過することができるため、十分な濾過性能を得ることができる。
【0057】
なお本実施形態においては、上面被覆濾材72を仕切壁65〜67の全域に溶着するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上面被覆濾材72を、必ずしも二股基端壁66に溶着する必要はない。つまり上面被覆濾材72を、少なくとも主仕切壁65および二股先端壁67に溶着することによって、主仕切壁65による水路状の溶着部65aの内側に、盛り上がり部75を形成できるため上記と同様に、水路状の溶着部65aを流通する水Wを拡散できて、上面被覆濾材72に浸透させることができ、十分な濾過性能を得ることができる。もっとも本発明においては、本実施形態のように上面被覆濾材72を仕切壁65〜67の全域に溶着するのが好ましい。すなわちその構成を採用した場合には、フィルタートレイ6内における内部濾過室の各間を確実に仕切ることができる上さらに、上面被覆濾材72の取付強度も向上させることができる。
【0058】
また本第1実施形態においては、フィルター5における上面被覆濾材72の外周縁部73をフィルタートレイ6の外周縁部(外周壁62)よりも外側に張り出すように配置しているため既述した通り、その外周縁部73によって、フィルタートレイ6の外周壁外面と、支持フレーム2におけるフィルター設置用凹段部21の周壁内面との間の隙間(フィルター外側隙間)の上方が被覆されている。このため水飲み部31の外周縁部から流出した水のうち、上記のフィルター外側隙間を通過しようとした水は、上面被覆濾材72の外周縁部73を通過することになる。従って一部の水が濾過されずに貯水タンク1に戻るという不具合を確実に防止でき、より一層濾過性能を向上させることができる。
【0059】
さらに本第1実施形態においては、フィルター5における上面被覆濾材72の内周縁部74をフィルタートレイ6の中央孔内周縁部よりも内側に張り出すように配置しているため、その内周縁部74によって、フィルタートレイ6の中央孔内周縁部と、トップファンネル3の送水パイプ外周面との間の隙間(フィルター内側隙間)の上方が被覆される。このため水飲み部31から流出した水のうち、上記のフィルター内側隙間を通過しようとする水は、上面被覆濾材72の内周縁部74を通過することになる。従ってこの点においても、一部の水が濾過されずに貯水タンク1に戻るという不具合を確実に防止でき、より一層確実に濾過性能を向上させることができる。
【0060】
図8図12はこの発明の第2実施形態であるペット用循環型自動給水器P2を示す図である。この第2実施形態の給水器P2が、上記第1実施形態の給水器P1に対し大きく相違する点は、第1実施形態の給水器P1が円形タイプであるのに対し、第2実施形態の給水器P2は半円タイプである点である。
【0061】
すなわちこの第2実施形態の給水器P2は、貯水タンク1が平面視略半円状に形成されており、その上端開口部に平面視略半円状の支持フレーム2が設けられている。さらに支持フレーム2には、平面視略半円状のフィルター設置用凹段部21が形成されており、その凹段部21内に平面視略半円状ないし略半円弧状のフィルター5が設置されている。
【0062】
このフィルター5は、その円弧中心に対応する位置には、上記第1実施形態のフィルター5の中央孔60に相当する円弧状内縁部60が形成されている。
【0063】
なお本第2実施形態においては、円弧中心側が内周縁部側となり、外側の円弧の部分が外周縁部側となる。
【0064】
このフィルター5のフィルタートレイ6における仕切壁は上記第1実施形態と同様、外端が外周壁62に連結され、かつ内端縁が内周壁63から外径方向に離間した位置に配置された主仕切壁65と、主仕切壁65の内端縁から二股に分岐して略周方向に沿って両側にそれぞれ延びる二股基端壁66と、外端縁が二股基端壁66の周方向の端縁にそれぞれ連結され、かつ内端縁が内周壁63にそれぞれ連結された二股先端壁67とを備えている。さらに上記と同様に、不織布としての上面被覆濾材72が、外周壁62、内周壁63、主仕切壁65,二股基端壁66および二股先端壁67の各上端面に対応する部分が溶着されて溶着部(固着部)62a,63a,65a,66a,67aとして構成されている。
【0065】
またこのフィルター5における上面被覆濾材72の外周縁部73は上記第1実施形態と同様、フィルタートレイ6の外周壁62よりも外側に張り出すように配置されるとともに、内周縁部74は、フィルタートレイ6の円弧状内縁部60よりも内側に張り出すように配置されている。
【0066】
またトップファンネル3は、その水飲み部31が平面視半円状に形成されている。そしてその水飲み部31によってフィルター5を覆うようにして、送水パイプ32の下端がフィルター5の円弧状切欠部60を通じて、上記実施形態と同様に支持フレーム2に支持されている。
【0067】
この第2実施形態の給水器P1において他の構成は、上記第1実施形態の給水器P2の構成と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0068】
この第2実施形態の給水器P2においても上記第1実施形態と同様、主仕切壁65による溶着部65としての溝型の水路状部を流通する水は、二股基端壁66の内側に形成される盛り上がり部75によってせき止められて周方向に拡散することにより、その水は上面被覆濾材72および内部濾材第71を通過するため、一部の水が濾過されずに貯水タンク1に戻るような不具合を防止でき、十分な濾過性能を得ることができる。
【0069】
さらにこの第2実施形態の給水器P2においても上記第1実施形態と同様、フィルター5の上面被覆濾材72の外周縁部73をフィルタートレイ6の外周壁62よりも外側に張り出すように配置するとともに、内周縁部74をフィルタートレイ6の内縁部60よりも内側に張り出すように配置しているため、その上面被覆濾材72の外周縁部73および内周縁部74によって、フィルタートレイ6の外側および内側の隙間の上方が被覆される。このため、水飲み部31の外周縁から流出されて貯水タンク1内に戻る水のうち、上記の各隙間を通過しようとする水は上面被覆濾材72を通過するため、より一層濾過性能を向上させることができる。
【0070】
なお上記実施形態においては、フィルタートレイ6の仕切壁において、主仕切壁65に対し二股基端壁66が略直交するように配置されているが、それだけに限られず、本発明においては、主仕切壁65に対する二股基端壁66の傾斜角度は特に限定されるものではない。同様に二股基端壁66に対する二股先端壁67の傾斜角度も特に限定されるものではない。
【0071】
さらに上記実施形態においては、フィルタートレイ6の仕切壁において、主仕切壁65および二股基端壁66間のコーナー部の曲率半径が比較的小さく形成されているが、それだけに限られず、当該コーナー部の曲率半径を大きくして、円弧状に形成するようにしても良い。同様に二股基端壁66および二股先端壁67間のコーナー部の曲率半径も限定されるものではなく、円弧状に形成するようにしても良い。
【0072】
また上記実施形態においては、上面被覆濾材72をフィルタートレイ6に溶剤や熱により溶着固定(固着)するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、接着剤を用いて接着固定(固着)するようにしても良い。
【0073】
また上記実施形態においては、上面被覆濾材72として不織布を使用しているが、それだけに限られず、本発明においては、上面被覆濾材として、スポンジ等、不織布以外の物理濾材を使用するようにしても良い。
【0074】
また上記実施形態においては、内部濾材71として活性炭を使用しているが、それだけ限られず、本発明においては、内部濾材として、ゼオライト等、活性炭以外の吸着濾材や化学濾材を使用するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明のペット用給水器は、犬や猫等のペットの飲み水供給用として用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:貯水タンク
5:フィルター
6:フィルタートレイ
61:底壁
62:外周壁
63;内周壁
64:通水孔
65:主仕切壁
66:二股基端壁
67:二股先端壁
72:上面被覆濾材
73:外周縁部
P1,P2:ペット用循環型自動給水器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14