(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
線引き具は、薬剤が包まれた複数の分包部が連なって構成された分包シート連続体に、前記複数の分包部が連なる連なり方向に沿って線を引くために使用される。以下、本発明の一実施形態に係る線引き具について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1〜
図3に示すように、線引き具1は、分包シート連続体Tに線を引くためのインク付与部2と、該インク付与部2にインクを供給するためのインク貯留部3と、インク付与部2を保持する保持部4と、使用時には、該保持部4と共に分包シート連続体Tを挟持し、非使用時には、インク付与部2が乾かないように該インク付与部2を収納する収納部5であって、インク付与部2と共に分包シート連続体Tを挟むように構成された支持台50を有する収納部5と、分包シート連続体Tを長手方向にガイドするように構成されたガイド部6とを有する本体部10を備える。本実施形態の線引き具1は、分包シート連続体Tを挟持するように構成されており、本体部10は、分包シート連続体Tを挟持する一対の挟持部78と、インク付与部2を収納部5に収納した非使用状態で一対の挟持部78をロックするロック部9とを有している。
【0022】
インク付与部2は、分包シート連続体Tにインクを付与(付着)するように構成され、インク付与部2の移動軌跡上に線が引かれるように構成されている。インク付与部2は、例えば、フェルトペンの先端に設けられたペン先のように、フェルト、合成繊維、又は合成樹脂等で形成されている。具体的には、
図2及び
図3に示すように、インク付与部2は、柱状に形成されており、分包シート連続体Tに線が明確に表されるように、先端が所定の太さを有するように形成されている。
【0023】
図2に示すように、インク付与部2は、先端に、軸方向外方に向けて突出する湾曲面を有する湾曲部21と、該湾曲部21から基端側に向けて延びる胴部22とを有する。インク付与部2は、先端に湾曲部21を有することによって、線引き作業の際に、該湾曲部21が分包シート連続体Tに沿って当接するように構成されている。そのため、インク付与部2は、先端が角状に形成されているインク付与部2と比較して、広い範囲で分包シート連続体Tに当接するので、細く形成されていても、太い線を引くことができる。また、本実施形態のインク付与部2では、湾曲部21が分包シート連続体Tに当接するので、先端に角部が形成されているインク付与部2と比較して、分包シート連続体Tに対して、折れや、線引きの跡(インク付与部2の跡)が付き難くなっている。
【0024】
インク貯留部3は、インクを貯留するための有底筒状の貯留部本体31と、該貯留部本体31を閉鎖する蓋部32とを有する。蓋部32は、貯留部本体31に対して嵌合するためのスカート部321を有し、該スカート部321が貯留部本体31の側壁311に対して嵌合することで、貯留部本体31を閉鎖するように構成されている。具体的には、蓋部32は、スカート部321が貯留部本体31の側壁311に内嵌合することで、貯留部本体31を閉鎖している。この構成により、スカート部321が貯留部本体31内に収まった状態となるため、スカート部321が貯留部本体31の側壁311の外側に露出している場合に比べて、蓋部32が不用意に外れ難くなっている。
【0025】
インク貯留部3は、貯留部本体31と蓋部32とでインクを貯留するための貯留領域Zを形成している。本実施形態では、インク貯留部3は、インクを吸収したインク吸収体Vを収容するものである。そのため、貯留したインクがインク貯留部3から漏れ難くなっている。しかしながら、インク貯留部3は、液状のインクを直接貯留することもできる。
【0026】
インク付与部2は、基端が貯留領域Zに達するように、貯留部本体31に挿通されている。本実施形態では、インク吸収体Vがリング状に形成されており、インク付与部2は、貯留領域Z内で、該インク吸収体Vに密着状態で挿通されている。インク付与部2とインク吸収体Vとが接触していることで、インク付与部2は、インクを含浸した状態で保たれている。本実施形態では、インク付与部2及びインク吸収体Vは、交換可能に構成されている。
【0027】
保持部4は、インク付与部2を保持する部分である。保持部4は、インク付与部2を分包シート連続体Tに当てるように構成されている。本実施形態の保持部4は、
図2に示すように、筒状に形成されている。保持部4は、インク付与部2を挿通した状態で保持している。保持部4は、インク付与部2の先端が先端面41から突出するように保持部4を保持することで、インク付与部2を分包シート連続体Tに当てるように構成されている。本実施形態では、保持部4は、インク付与部2の湾曲部21と胴部22との境界X近傍に先端面41が位置するように、インク付与部2を保持している。そのため、インク付与部2は、保持部4から先端がわずかに突出した状態となっている。保持部4は、内周面をインク付与部2の外周面に密着させた状態でインク付与部2を保持している。
【0028】
保持部4は、インク付与部2が外れないように保持するための保持手段42を有する。本実施形態の保持部4は、内周面の基端側に、径内方向に突出する保持手段42としての突出部42が形成されている。保持部4は、突出部42がインク付与部2に対して食い込むか、又は突出部42がインク付与部2の中途部に形成された凹部に係合する(嵌る)ことで、インク付与部2をしっかりと保持している。保持部4は、インク付与部2を抜き差しできるように構成されている。そのため、インク付与部2は、インク吸収体Vの交換と同時に、又はインク付与部2自体の劣化時に、容易に交換することができる。
【0029】
図2及び
図3に示すように、収納部5は、有底筒状に形成されている。収納部5の内径は、インク付与部2の外径よりも大きく、保持部4の外径よりも小さく形成されていると共に、収納部5と保持部4とを、互いの中心が同じ軌跡上に位置するように位置合わせすると、収納部5の内周縁5aは、保持部4の内周縁4aと外周縁4bとの間に位置するように構成されている。そのため、収納部5とインク付与部2を保持した保持部4とを、互いの中心の軌跡を一致させた状態で接近させると、収納部5の端面51と保持部4の先端面41とが当接する。収納部5は、線引き具1の使用時(
図2の状態)には、端面51と保持部4の先端面41及びインク付与部2の先端との間で分包シート連続体Tを挟持できるように構成されている。即ち、収納部5の端面51は、インク付与部2に対向して位置し、分包シート連続体Tを支持する支持台50である。線引き具1の非使用時(
図3の状態)には、インク付与部2が乾かないように該インク付与部2を収納することができる。尚、収納部5の中心と保持部4の中心とは、例えば、同半径の円軌跡上や、直線軌跡上で一致していてもよい。
【0030】
本実施形態では、収納部5と保持部4との間に分包シート連続体Tを位置させた状態で、例えば、保持部4を収納部5に接近させると(収納部5を保持部4に接近させてもよい)、インク付与部2の先端が分包シート連続体Tに当接し、収納部5の端面51(支持台50)とインク付与部2及び保持部4の先端面41との間で分包シート連続体Tを挟持した状態となる。即ち、本実施形態では、インク付与部2が保持部4によって分包シート連続体Tに当てられた状態では、分包シート連続体Tは、収納部5とインク付与部2の先端及び保持部4とによって挟持された状態となっている。この場合、
図2に示すように、分包シート連続体Tは、収納部5の端面51(支持台50)のうちの、外周縁近傍で支持されている。分包シート連続体Tが挟持された状態とは、例えば、
図2に示すように、保持部4の先端面41と収納部5の端面51(支持台50)との間に隙間が形成された状態や、保持部4の先端面41と収納部5の端面51(支持台50)とが分包シート連続体Tを介して密接している状態が含まれる。
【0031】
収納部5の内径は、保持部4の外径よりも小さく形成されているので、収納部5は、保持部4が収納部5内に収まらないようになっている。即ち、収納部5に対してインク付与部2と保持部4とが押し付けられても(
図3の状態)、収納部5の端面51(支持台50)と保持部4の先端面41とが当接するので、保持部4が収納部5内に落ち込むことがない。このように、収納部5は、インク付与部2の先端が収納部5の底部に当接するのを防止し、インク付与部2の先端が傷まないように、該インク付与部2を収納できるように構成されている。
図3に示すように、本実施形態では、収納部5は、非使用時に保持部4が当接する部分がゴム製の部材によって形成されており、非使用時には、保持部4の先端面41が収納部5の端面51に食い込んだ状態となることでシールが形成され、インク付与部2の乾燥を防ぐ効果を向上させている。また、収納部5は、インク付与部2を収納できるように構成されているので、インク付与部2が不用意に分包シート連続体Tや手指などに付着し、インク付与部2が付着した部分が汚れてしまうことを防ぐことができる。
【0032】
ガイド部6は、インク付与部2が保持部4によって分包シート連続体Tに対して当てられた状態で分包シート連続体Tを連なり方向(該分包シート連続体Tの長手方向)にガイドするように構成されている。ガイド部6は、作業者の作業のやり易さに応じて、作業者が線引き作業中に適宜、選択、及び変更できるように構成されている。ガイド部6は、一対の挟持部78に設けられている。ガイド部6については後述する。
【0033】
一対の挟持部78は、分包シート連続体Tを挟持する部分である。
図2に示すように、一対の挟持部78は、分包シート連続体T内の薬剤Pとの干渉を回避した状態で、分包シート連続体Tを挟持できるように構成されている。本実施形態では、一対の挟持部78同士の間には、分包シート連続体Tの複数の分包部Cの通過を許容するための凹部Rが形成されている。具体的には、一対の挟持部78は、一端同士が接続されており、一対の挟持部78同士の間には、分包シート連続体Tと該一対の挟持部78とが接触するのを回避するための凹部Rが形成されている。一対の挟持部78は、作業者が把持するための把持部となっている。また、一対の挟持部78は、一端同士が接続され、他端同士が接離可能に構成されている。本実施形態では、一対の挟持部78のうちの少なくとも一方の挟持部が、長辺と短辺とを有する細長い片状の部材で形成されている。以下、一対の挟持部78のうちの一方の挟持部を第1挟持部7とし、他方の挟持部を第2挟持部8とする。尚、説明上、一対の挟持部78が互いに対向する側を内側、該対向する側とは反対側を外側と称する。
【0034】
図4に示すように、第1挟持部7は、細長い片状の部材である。
図4は、
図1における第1挟持部7を180度反転させた状態の図である。第1挟持部7には、長手方向における両端のうちの一端側に、第2挟持部8と接続するための接続手段7Jが設けられ、他端側に、インク付与部2、インク貯留部3、及び保持部4が設けられている(組み込まれている)。本実施形態では、第1挟持部7は、長方形板状の第1挟持片71と、該第1挟持片71の端縁から内側に延びる第1延出片72とを有する。第1挟持部7は、例えば、樹脂製材料等の、軽量な材料で形成されている。
【0035】
第1挟持片71は、インク貯留部3及び保持部4と一体的に形成されている。具体的には、第1挟持片71は、他端側における外面からインク貯留部3の側壁311が延出し、内面から保持部4が延出するように形成されている。
【0036】
第1延出片72は、薄板状の部材である。第1延出片72は、第1挟持片71の長辺側の端縁から、該第1挟持片71の厚み方向内側に延出する一対の長手片部721と、第1挟持片71の他端側における短辺側の端縁から内側に延出する短手片部722とを有する。
【0037】
一対の長手片部721は、第1挟持片71の一端から他端に亘って端縁から延出している。一対の長手片部721は、第1挟持片71の長手方向に沿った縦方向の長さが、第1挟持片71の厚み方向に沿った延出方向の長さよりも長い片状部材である。一対の長手片部721は、同形状に形成されている。そのため、一方の長手片部721について説明する。長手片部721は、一端側に位置する一端片部721aと、他端側に位置する他端片部721bと、一端片部721aと他端片部721bとの間に位置する中央片部721cとを有する。長手片部721は、一端片部721a及び他端片部721bの延出方向の長さが中央片部721cの延出方向の長さよりも長くなるように構成されている。そのため、長手片部721には、中央部が外側に向けて凹む凹状部70が形成されている。
【0038】
一端片部721aは、略長方形状に形成されている。一端片部721aは、中央片部721c側に位置する側端面721a1であって、中央片部721cの端面721c1と連続する側端面721a1が、厚み方向と略同方向に延びるように構成されている。一端片部721aには、後述する第2挟持部8の凸部801と嵌合する嵌合孔701と、後述する第2挟持部8の突起片802が移動する移動孔702とが形成されている。
【0039】
他端片部721bは、第1挟持片71から延出した保持部4と短手方向で重なる位置に設けられている。中央片部721cは、一端片部721aと他端片部721bとを繋いでいる。
【0040】
短手片部722は、一対の長手片部721の他端同士を接続している。
図4に示すように、短手片部722は、外面に、ロック部9が掛止される掛止部722aを有する。掛止部722aは、上下2段で構成されている。ロック部9が上段に位置する掛止部722aに掛止されると、一対の挟持部78同士はきつく留められる。ロック部9が下段に位置する掛止部722aに掛止されると、一対の挟持部78同士は緩く留められる。上段に位置する掛止部722aは、線引き具1の保管時等、線引き具1を比較的長期に使用しない場合に、インク付与部2が乾くのを防止するために使用される。下段に位置する掛止部722aは、線引き具1を頻繁に使用する際や、一対の挟持部78で分包シート連続体Tを挟持する際等に使用される。掛止部722aとロック部9との関係は後述する。
【0041】
図5に示すように、第2挟持部8は、細長い片状の部材である。第2挟持部8は、長手方向における両端のうちの一端側に、第1挟持部7と接続するための接続手段8Jが設けられ、他端側に、収納部5が設けられている(組み込まれている)。本実施形態では、第2挟持部8は、長方形板状の第2挟持片81と、該第2挟持片81の端縁から内側に延びる第2延出片82とを有する。第2挟持部8は、例えば、樹脂製材料等の、軽量な材料で形成されている。
【0042】
第2挟持片81は、収納部5を構成するための基台Kと一体的に形成されている。基台Kは、第2挟持片81の内面から厚み方向内側に突出するように形成されている。該基台Kには、外側に向かって凹んだ形状をなす受入凹所Hが形成されており、該受入凹所H内に筒状部材Dが嵌め入れられている。基台Kは、側壁と該筒状部材Dと受入凹所Hの底部とで収納部5を構成している。本実施形態の第2挟持片81には、他端近傍に段差810が形成されている。該段差810を境に一端側を第1片部811、他端側を第2片部812とする。本実施形態の基台Kは、第2片部812に設けられている。
【0043】
第2延出片82は、薄板状の部材である。第2延出片82は、第2挟持片81における第1片部811の長辺側の端縁から、該第1片部811(第2挟持片81)の厚み方向内側に延出する一対の長手片部821と、第2挟持片81の一端側における短辺側の端縁から内側に延出する短手片部822とを有する。
【0044】
一対の長手片部821は、第1片部811の一端から他端に亘って端縁から延出している。一対の長手片部821は、第1片部811の長手方向に沿った縦方向の長さが、第1片部811の厚み方向に沿った延出方向の長さよりも長い片状部材である。一対の長手片部821は、同形状に形成されている。そのため、一方の長手片部821について説明する。長手片部821は、一端側に位置する一端片部821aと、該一端片部821aから他端側に向かって縦方向に延びる中央片部821cとを有する。長手片部821は、一端片部821aの延出方向の長さが中央片部821cの延出方向の長さよりも長く、中央片部821cの延出方向の長さが段差810の高さと略同じとなるように構成されている。また、基台Kは、第2片部812に設けられている。そのため、第2挟持部8には、一端片部821aと、中央片部821cと、基台Kとによって、外側に向けて凹む凹状部80が形成されている。
【0045】
一端片部821aは、略長方形状に形成されている。一端片部821aは、中央片部821c側に位置する側端面821a1であって、中央片部821cの端面821c1と連続する側端面821a1が、厚み方向と略同方向に延びるように構成されている。一端片部821aには、第1挟持部7の嵌合孔701に嵌る円盤状の凸部801と、第1挟持部7の移動孔702に嵌る突起片802とが形成されている。
【0046】
一対の挟持部78は、第2挟持部8の凸部801が第1挟持部7の嵌合孔701に嵌ることで構成されるヒンジ構造を有し、互いに接離可能に構成されている。一対の挟持部78は、第1挟持部7と第2挟持部8とが所定の間隔以上離間しないように構成されている。即ち、第2挟持部8の突起片802と第1挟持部7の移動孔702とで、ストッパー構造を構成している。具体的には、突起片802が移動孔702内を移動し、該突起片802が移動孔702の内周縁における最内端まで移動することで、一対の挟持部78同士が離間する動きが停止するように構成されている。本実施形態では、
図2に示すように、第1挟持部7と第2挟持部8との間に、第1挟持部7と第2挟持部8とをヒンジの軸を中心として離れる方向に付勢する付勢手段B1が設けられている。付勢手段B1は、一対の挟持部78の一端側に設けられている。具体的には、付勢手段B1は、ヒンジ構造の他端側に隣接して設けられている。本実施形態の付勢手段B1は、圧縮コイルばねである。
【0047】
一対の挟持部78は、第1挟持部7と第2挟持部8とが接続された状態で、第1挟持部7の一端片部721aと第2挟持部8の一端片部821aとが短手方向で重なるように構成されている。そのため、一対の挟持部78で分包シート連続体Tを挟持すると、第1挟持部7の側端面721a1及び第2挟持部8の側端面821a1のうちの少なくとも一方は、分包シート連続体Tの幅方向における両端縁のうちの一方の端縁をガイド可能に構成されている。そのため、本実施形態では、第1挟持部7の側端面721a1及び第2挟持部8の側端面821a1は、ガイド部6である。本実施形態では、第1挟持部7の一端片部721a及び第2挟持部8の一端片部821aは同形状となっており、第1挟持部7の一端片部721aと第2挟持部8の一端片部821aとは、第1挟持部7の側端面721a1と第2挟持部8の側端面821a1とが短手方向で面一となるように重ねられる。以下、第1挟持部7の側端面721a1及び第2挟持部8の側端面821a1をまとめて、一対の挟持部78の側端面721a1,821a1と称する場合がある。
【0048】
図1及び
図2に示すように、一対の挟持部78には、第1挟持部7と第2挟持部8とが対向した状態で、第1挟持部7に形成された凹状部70と第2挟持部8に形成された凹状部80との間が短手方向に対して開口した凹部Rが形成されている。
【0049】
図2及び
図5に示すように、ロック部9は、第2挟持片81の他端側に設けられている。ロック部9は、第2片部812の外面側に位置する板状のベース部91と、該ベース部91の端縁から該ベース部91の厚み方向に延びる側壁部92とを有する。ロック部9は、第2挟持片81に対して短手方向を中心に回動可能に取り付けられている。具体的には、ロック部9は、第2挟持片81に対して回動することで、ベース部91の板面方向が第2挟持片81の板面方向に一致した一致状態(
図5の状態)と、ベース部91の板面方向が第2挟持片81の板面方向に対して傾斜した傾斜状態(
図2の状態)とに変更可能に構成されている。本実施形態では、
図2に示すように、第2挟持部8とロック部9との間に、該ロック部9を回動方向下方側(一致状態となる方向)に付勢する付勢手段B2が設けられている。付勢手段B2は、一対の挟持部78の一端側に設けられている。具体的には、付勢手段B1は、第2挟持部8の基台Kの底部とロック部9のベース部91との間に設けられている。本実施形態の付勢手段B2は、圧縮コイルばねである。
【0050】
側壁部92は、短手方向で対向する一対の第1側壁部921と、該一対の第1側壁部921の他端側同士を繋ぐ第2側壁部922とを有する。一対の第1側壁部921は、同形状に形成されている。そのため、一方の第1側壁部921について説明する。
図5に示すように、第1側壁部921は、ベース部91から、該ベース部91の厚み方向に対して一端側に傾斜して延びる第1端面921aと、該第1端面921aから他端側に向けてベース部91の板面方向と同方向に延びる第2端面921bと、該第2端面921bからベース部91の厚み方向に延びる第3端面921cとを有する。該第3端面921cは、一対の挟持部78で分包シート連続体Tを挟持すると、分包シート連続体Tの幅方向における両端縁のうちの一方の端縁をガイド可能に構成されている。そのため、本実施形態では、第3端面921cは、ガイド部6である。
【0051】
第2側壁部922には、内面に爪片922aが形成されている。ロック部9は、付勢手段B1の付勢力に抗して爪片922aが上段に位置する掛止部722aに引っ掛かることで、一対の挟持部78同士を閉じて、線引き具1を非使用状態にする(
図3の状態)。また、ロック部9は、付勢手段B1の付勢力に抗して爪片922aが下段に位置する掛止部722aに引っ掛かることで、線引き具1を使用状態にする(
図2の状態)。そして、ロック部9は、付勢手段B2の付勢力により、爪片922aが掛止部722aに引っ掛かった状態を維持できる。即ち、付勢手段B1が一対の挟持部78同士を離間する方向に付勢すると共に、付勢手段B2がロック部9を回動方向下方側に付勢することによって、線引き具1を、使用状態、及び非使用状態でロックすることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の線引き具1は、一対の挟持部78の長手方向に少なくとも2つのガイド部を有している。
図5に示すように、本実施形態の線引き具1は、側端面721a1,821a1が分包シート連続体Tをガイドする状態(分包シート連続体TA)、又は第3端面921cが分包シート連続体Tをガイドする状態(分包シート連続体TB)に、ガイド部6を選択可能に構成されている。
【0053】
本実施形態に係る線引き具1の説明は以上である。以下、本実施形態に係る線引き具1の使用方法について説明する。まず、分包部C、及び分包シート連続体Tについて説明する。
【0054】
図6に示すように、分包シート連続体Tは、例えば、薬局や病院等で提供されるような、錠剤や粉状の薬剤Pを服用量ずつ別々に収容するように構成されたシート状の包装体である。分包シート連続体Tは、薬剤Pが包まれた複数の分包部Cが連なることで構成されている。分包シート連続体Tは、例えば、1日における服用回数と服用日数とを乗算した数の複数の分包部Cが連なることで構成されている。分包シート連続体Tは、例えば、透明な樹脂シートやグラシン紙で形成されている。監査作業を行いながら線引き作業を行う観点から、分包シート連続体Tは、分包部Cの内部の薬剤Pを目視できる程度に透明である方が好ましい。分包シート連続体Tは、例えば、一枚の長方形状の長尺なシート部材が、長手方向に沿って半分に折り曲げられ、シート部材の端縁同士が張り合わされることによって形成されている。即ち、
図2(
図6も参照)に示すように、分包シート連続体Tは、長手方向に形成された折り曲げ部Wと、該折り曲げ部Wを境に幅方向における一方側に広がる第1シートT1と、該折り曲げ部Wを境に幅方向における他方側に広がる第2シートT2と、第1シートT1と第2シートT2とを張り合わせるシール部Sと、を備える。
【0055】
図6に示すように、シール部Sは、シート部材の長手方向に沿って形成された第1シール部S1と、シート部材の幅方向に沿って形成された複数の第2シール部S2とを有する。第1シール部S1は、半分に折られた状態のシート部材における折り曲げ部W側を一端として、シート部材の他端に近い位置に形成されている。複数の第2シール部S2は、長手方向に所定の間隔を開けて、第1シール部S1から幅方向一端側に延びている。第1シール部S1、隣り合う第2シール部S2、及び折り曲げ部Wによって区画された空間が、薬剤Pを収容するための薬剤収容部Qとなっている。各第2シール部S2には、シート部材の幅方向に沿ってミシン目Mが形成されている。該ミシン目Mにより一包に切り離し可能である2つの第2シール部S2に挟まれた部分が分包部Cである。即ち、1つの分包部Cには、1つの薬剤収容部Qが形成され、該薬剤収容部Qには、薬剤Pが収容された状態となっている。
【0056】
以上のように、分包シート連続体Tは、ミシン目Mが切り離されることで複数の分包部C毎に分離されるが、分包シート連続体Tとしては、薬剤Pが包まれた複数の分包部Cが連なって構成されたものとなっている。本実施形態では、薬剤Pが包まれた複数の分包部Cが連なる連なり方向は、分包シート連続体Tの長手方向に一致している。以下、連なり方向を長手方向と称する。尚、一般的に流通している分包シート連続体Tの幅方向の長さは70mmであるが、例えば、幅方向の長さが50mmとなるように形成された分包シート連続体Tも流通している。
【0057】
図2に示すように、作業者は、ロック部9の爪片922aと第1挟持部7の掛止部722aとのロック状態を解除して、一対の挟持部78が接離可能な状態とする。続いて、作業者は、一対の挟持部78を離間させる。作業者が一対の挟持部78を離間させると、一対の挟持部78は、分包シート連続体Tをガイド部6によってガイドする方向及び一対の挟持部78の長手方向に直交する方向に開放される。一対の挟持部78の開放された部分から、分包シート連続体Tを第1挟持部7と第2挟持部8との間に通し、一対の挟持部78によって分包シート連続体Tを挟む。本実施形態では、一対の挟持部78の他端側同士を離間させて、一対の挟持部78の他端側を開放する。一対の挟持部78の他端側から一端側に向けて、分包シート連続体Tをガイド部6によってガイドする方向と分包シート連続体Tの長手方向とが一致するように分包シート連続体Tを第1挟持部7と第2挟持部8との間に通し、一対の挟持部78によって分包シート連続体Tを挟む。そして、分包シート連続体Tの第1シール部S1がインク付与部2の先端に位置するように、分包シート連続体Tを一対の挟持部78同士の間に位置させる。作業者は、一対の挟持部78が分包シート連続体T内の薬剤Pと干渉しないように、一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持する。本実施形態では、
図6に示すように、作業者は、薬剤収容部Qが一対の挟持部78に形成された凹部Rに位置するように、分包シート連続体Tを一対の挟持部78同士の間に位置させ、一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持する。作業者は、一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持すると、ロック部9の爪片922aを第1挟持部7の下段に位置する掛止部722aに掛止して線引き具1をロック状態にする。作業者が一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持することで、インク付与部2が分包シート連続体Tに当たった状態が維持される。
【0058】
作業者は、例えば、右手で分包シート連続体Tを把持し、左手で線引き具1を把持する。
図6では、一例として、作業者が、分包シート連続体Tの幅方向中央部を右手で把持し、左手で線引き具1の中央部を把持している場合を表したが、線を引き作業を行い易い位置を把持すればよい。例えば、作業者は、左手で分包シート連続体Tを把持し、右手で線引き具1を把持してもよい。また、
図6では、作業者は、一対の挟持部78が分包シート連続体Tの幅方向に対して傾斜するように線引き具1を把持しているが、作業者は、一対の挟持部78が分包シート連続体Tの幅方向と平行となるように線引き具1を把持してもよい。
【0059】
作業者は、分包シート連続体Tを引っ張ることで分包シート連続体Tに線を引くと共に、監査作業を行う。具体的には、作業者は、分包シート連続体Tの幅方向一端側の端縁を一対の挟持部78の側端面721a1,821a1に当接させながら、又は該一端側の端縁と側端面721a1,821a1との距離が略一定となるように、分包シート連続体Tを長手方向右方に引っ張る(
図6の矢印)。即ち、ガイド部6は、分包シート連続体Tと接することで分包シート連続体Tをガイドするものであってもよいし、分包シート連続体Tとガイド部6との間隔を略一定の間隔で維持するための目安となるものであってもよい。監査作業の際には薬剤収容部Qが凹部Rに位置しているため、薬剤Pが収容されて分包シート連続体Tが膨らんだ状態であっても、作業者は、支障なく分包シート連続体Tを引っ張ることができる。
【0060】
以下、本実施形態の作用についてまとめる。本実施形態の線引き具1は、インク付与部2、保持部4、支持台50、及びガイド部6を備え、且つ保持部4を介してインク付与部2が支持台50に支持された分包シート連続体Tに当てられた状態で、ガイド部6が該分包シート連続体Tを連なり方向にガイドするように構成されている。そのため、作業者は、例えば、インク付与部2が当てられた分包シート連続体Tを連なり方向に引っ張るだけで、分包シート連続体Tが連なり方向にガイドされて、該分包シート連続体Tに線を引くことができる。このように、作業者は、ペンや定規等の線を引くための道具を準備することなく、線引き具1を準備するだけで、分包シート連続体Tに対する線引き作業を行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、線引き具1は、分包シート連続体Tを挟持する一対の挟持部78を備え、一対の挟持部78のうちの一方の挟持部78は、保持部4を有し、一対の挟持部のうちの他方の挟持部78は、支持台50を有しているので、作業者は、一対の挟持部78を介して、分包シート連続体Tを一方の手で把持しつつ、他方の手で分包シート連続体Tを把持することができる。そのため、作業者は、両者を持った手元で線引き作業をすることができるので、狭い作業スペースでも線引き作業を行うことができる。また、作業者は、分包シート連続体T内の薬剤Pと一対の挟持部78とが干渉しないように、一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持することで、分包部C内の薬剤Pを該分包部Cの外側から目視しながら線引き作業を行うことができる。そのため、作業者は、分包部C内の薬剤Pが処方箋に基づいているかを確認する監査作業を行いながら、線引き作業を行うことができる。
【0062】
また、上記実施形態では、一対の挟持部78同士の間には、分包シート連続体Tの複数の分包部Cの通過を許容するための凹部Rが形成されている。そのため、作業者は、分包シート連続体Tを該凹部Rに位置させて線引き作業を行うことで、分包シート連続体Tが一対の挟持部78に引っ掛かることなく、分包シート連続体Tに線を引くことができる。このように、作業者は、スムーズに線引き作業を行うことができる。
【0063】
また、一対の挟持部78は、作業者が把持するための把持部となっているので、作業者は、一対の挟持部78を一方の手だけでしっかりと把持することができ、安定して線引き作業を行うことができる。更に、上記実施形態では、一対の挟持部78の一端同士が接続されているので、線引き具が一体的に構成され、扱い易い。
【0064】
即ち、上記実施形態では、作業者は、分包シート連続体Tを一対の挟持部78に対して位置合わせする作業、一方の手で一対の挟持部78を介して分包シート連続体Tを挟持し、且つ他方の手で分包シート連続体Tを把持する作業、分包シート連続体Tを線引き具1に対して長手方向に引っ張る(又は線引き具1を分包シート連続体Tに対して長手方向に引っ張る)作業、及び監査作業を含む一連の作業を作業台等の無い場所でも(空中でも)問題なく行うことができる。また、作業者は、手元の狭い範囲で上記一連の作業を行うことができるので、作業スペースに余裕が無い場合でも、容易に作業することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、線を引く方向に沿って監査作業を行うので、作業者は、略一定の方向に視線を向けながら、線が引かれているかの確認と、監査とを実施することができる。そのため、作業者は、監査に集中することができる。また、作業者は、略一定の方向に視線を向けて作業することができるので、作業者にとって作業性がよいものとなっている。
【0066】
上記実施形態では、線引き具1は、他端側に第3端面921c(ガイド部6)を有しているため、作業者は、該第3端面921cをガイド部6として線引き作業を行うこともできる。また、作業者は、作業中に、側端面721a1と第3端面921cとの間でガイド部6を適宜変更してもよい。即ち、上記実施形態では、線引き作業の作業性に応じて、ガイド部6を変更することができるので、作業者にとって作業性がよいものとなっている。
【0067】
上記実施形態では、一対の挟持部78のうちの少なくとも一方の挟持部78が、長辺と短辺とを有する細長い片状の部材で形成されている。そのため、作業者は、該一方の挟持部78を下側にして線引き具1を把持することで、分包シート連続体Tを一方の挟持部78上に載置した状態で作業をすることができるので、分包シート連続体Tが垂れ下がるのが防止され、監査作業を行い易い。
【0068】
上記実施形態では、軽量で持ち運び可能な線引き具1で分包シート連続体Tに線引き作業を行うことができるので、線引き用の装置を薬剤分包装置に取り付けたり、線引き用の装置を備えた薬剤分包装置に入れ替えたりする等、線引き作業のために必要となるコストを削減することができる。
【0069】
尚、本発明の線引き具1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
上記実施形態では、線引き具1は、分包シート連続体Tの幅方向における両端縁のうちの少なくとも一方の端縁をガイドすることができるように、長手方向に離間して設けられた一対の挟持部78の側端面721a1,821a1及びロック部9の第3端面921cという、2つのガイド部6を備える場合について説明した。しかしながら、線引き具1は、ガイド部6を少なくとも1つ有していればよい。例えば、
図7のように、第1変形例の線引き具1は、ロック部9を備えない構成として、ガイド部6としての側端面721a1,821a1を備えていてもよい。
【0071】
上記実施形態では、第1挟持部7の一端片部721aと第2挟持部8の一端片部821aとが接続手段7J,8Jを介して接続されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、一対の挟持部78は、第1挟持部7が第2挟持部8に対して短く形成され、第1挟持部7が第2挟持部8に設けられた収納部5に対して接離するように構成されていてもよい。この場合、第1挟持部7と第2挟持部8とを接続するための接続手段7J,8Jは、一対の挟持部78の他端側に設けられる。このように、一対の挟持部78は、一端又は他端のうちの一方の端部同士が接続されていればよい。この場合、第1挟持部7の端面703であって、一端側を向く端面703がガイド部6となる。第2変形例の線引き具1は、該端面703と、第2挟持部8の側端面821a1との2つのガイド部6を有している。
【0072】
また、この場合、
図9に示すように、第3変形例の線引き具1は、第2挟持部8が一端片部821aを備えない構成として、ガイド部6としての第1挟持部7の端面703を有している。
【0073】
本実施形態では、一対の挟持部78同士の間には、凹部Rが形成されている場合について説明したが、
図8及び
図9に示すように、一対の挟持部78同士の間には凹部Rが形成されていなくてもよい。
【0074】
上記実施形態では特に言及するものではないが、
図10に示すように、線引き具1の本体部10は、分包シート連続体Tの幅方向長さに応じてガイド部6の位置を調整できる調整部11を備えていてもよい。調整部11は、一対の挟持部78に沿って長手方向に移動可能に構成されていてもよい。調整部11は、短手方向で対向する一対の側部110を有する。即ち、第4変形例の線引き具1では、該側部110における他端側を向く端面11aが、ガイド部6として機能している。線引き具1は、調整部11を備えることによって、様々な幅の分包シート連続体Tをガイドすることができる。調整部11は、本体部10に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0075】
上記実施形態では、インク付与部2及びインク吸収体Vが交換可能に構成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。インク付与部2及びインク吸収体Vのみならず、インク貯留部3自体が交換可能に構成されていてもよい。また、例えば、インク付与部2及びインク貯留部3は、筆記具としてのフェルトペン等のような一体的なものとして、本体部10に対して着脱可能に構成されていてもよい。インク貯留部3自体を交換可能に構成したり、インク付与部2及びインク貯留部3として筆記具を使用したりすることで、線の色も自在に変更することができる。特に後者の場合、インク付与部2及びインク貯留部3の入手が容易なので、汎用性が高い。
【0076】
上記実施形態では、一対の挟持部78は、一端同士が接続されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。一対の挟持部78同士は、分離されて構成されていてもよい。この場合、例えば、線引き具1の使用時に一対の挟持部78が接合される。
【0077】
上記実施形態では、シール部Sは、シールがされていない非シール部と比較して剛性が高く、安定して線を引けるので、作業者が第1シール部S1に線を引く態様を説明したが、例えば、作業者は、分包シート連続体Tの折り曲げ部Wの近傍の部分であって、シール部Sが形成されていない部分に線を引いてもよい。
【0078】
上記実施形態では、第1挟持部7の側端面721a1と第2挟持部8の側端面821a1とがガイド部6である場合について説明したが、これに限定されるものではない、第1挟持部7の側端面721a1と第2挟持部8の側端面821a1のうちの少なくとも一方がガイド部6であってもよい。また、ガイド部6は、側端面721a1,821a1や第3端面921cに限られず、一対の挟持部78におけるその他の部分に設けられていてもよいし、一対の挟持部78とは別体として設けられていてもよい。
【0079】
上記実施形態及び変形例では、一対の挟持部78のうちの少なくとも一方の挟持部78が、長辺と短辺とを有する細長い片状の部材で形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。一対の挟持部78は、分包シート連続体Tの幅方向の長さよりも短い部材で形成されていてもよい。この場合、作業者は、分包シート連続体Tを該分包シート連続体Tの幅方向における他端側から線引き具1を介して挟持して、第1シール部S1に線を引いてもよい。