(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
錠剤に付着したインクを効率よく乾燥させるためには、錠剤に吹き付ける気体の温度を高くするか、あるいは、単位時間あたりに吹き付けられる気体の量(風量)を大きくする必要がある。しかしながら、錠剤に吹き付けることができる気体の温度には、一定の限界がある。また、風量を大きくして、錠剤に気体を強く当てると、搬送中の錠剤が吹き飛ばされてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、インクジェット方式の錠剤印刷装置において、搬送中の錠剤が吹き飛ばされることを抑制しつつ、錠剤に気体を強く当てて、錠剤の表面に付着したインクを効率よく乾燥させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、搬送される複数の錠剤の表面に付着したインクを乾燥させる乾燥ユニットであって、気体の流れを形成する送風ファンと、気体を加熱するヒータと、加熱後の気体を錠剤に向けて吹き出す複数の吹出口と、
前記吹出口から吹き出された気体を吸引する複数の吸引口と、を有し、前記複数の錠剤は、搬送方向に直交する幅方向に整列された状態で搬送され、前記複数の吹出口は、それぞれ、搬送される錠剤に対向する位置に設けられ、前記複数の吹出口は、前記幅方向に間隔をあけて設けられ、各吹出口が、錠剤に対応する前記幅方向の位置に設けられ
、前記吸引口は、幅方向に隣り合う前記吹出口の間に位置する。
【0010】
本願の第
2発明は、第
1発明の乾燥ユニットであって、前記複数の吹出口は、それぞれ、前記搬送方向および前記幅方向に対して垂直に、気体を吹き出す。
【0011】
本願の第
3発明は、第
2発明の乾燥ユニットであって、前記複数の吹出口のそれぞれに設けられた整流板をさらに有する。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって
、前記複数の吸引口から前記送風ファンへ気体を送る循環ダク
トをさらに有する。
【0013】
本願の第
5発明は、第
4発明の乾燥ユニットであって、前記吹出口と前記吸引口とが、前記幅方向に交互に配列されている。
【0014】
本願の第
6発明は、第
4発明または第
5発明の乾燥ユニットであって、前記送風ファンから前記複数の吹出口へ気体を送る供給ダクトと、前記供給ダクトを覆う外装カバーと、を有し、前記供給ダクトと前記外装カバーとの間に、前記循環ダクトが形成されている。
【0015】
本願の第
7発明は、第
6発明の乾燥ユニットであって、前記外装カバーは、外部へ気体を排出する排気部と、外部から気体を取り込む外気導入部と、を有する。
【0016】
本願の第
8発明は、第1発明から第
7発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記複数の吹出口を有する熱風ノズル部が、着脱可能である。
【0017】
本願の第
9発明は、第1発明から第
8発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記ヒータと前記複数の吹出口との間を複数の流路に分割する分流板をさらに有する。
【0018】
本願の第
10発明は、第1発明から第
9発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記吹出口へ向かう気体から粉塵を除去するフィルタをさらに有する。
【0019】
本願の第
11発明は、第1発明から第
10発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記送風ファンは、前記ヒータよりも低い位置に配置されている。
【0020】
本願の第
12発明は、第1発明から第
11発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記送風ファンは、二重反転ファンである。
【0021】
本願の第
13発明は、第1発明から第
12発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットであって、前記送風ファンおよび前記ヒータは、それぞれ出力を調節可能である。
【0022】
本願の第
14発明は、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、複数の錠剤を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される錠剤の表面にインク滴を吐出するヘッドと、第1発明から第
13発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットと、を備える。
【0023】
本願の第
15発明は、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、複数の錠剤を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される錠剤の表面にインク滴を吐出するヘッドと、第
4発明から第
7発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットと、前記搬送機構、前記ヘッド、および前記乾燥ユニットを制御する制御部と、を備え、前記搬送機構は、複数の吸着孔を有する環状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを回動させる機構と、前記搬送ベルトの内側の空間から気体を吸い出す吸引機構と、を有し、前記制御部は、前記乾燥ユニットの起動時に、前記吸引機構を停止させた状態で、前記送風ファンおよび前記ヒータを起動する。
【0024】
本願の第
16発明は、錠剤の表面に印刷を行う錠剤印刷装置であって、複数の錠剤を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される錠剤の表面にインク滴を吐出するヘッドと、第
4発明から第
7発明までのいずれか1発明の乾燥ユニットと、前記搬送機構、前記ヘッド、および前記乾燥ユニットを制御する制御部と、を備え、前記搬送機構は、複数の吸着孔を有する環状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを回動させる機構と、前記搬送ベルトの内側の空間から気体を吸い出す吸引機構と、を有し、前記制御部は、前記乾燥ユニットの停止時に、前記吸引機構を動作させた状態で、前記ヒータを停止する。
【発明の効果】
【0025】
本願の第1発明〜第
16発明によれば、搬送中の錠剤に対して、加熱された気体が横向きに当たることを抑制できる。したがって、搬送中の錠剤が吹き飛ばされることを抑制しつつ、錠剤に気体を強く当てることができる。その結果、錠剤の表面に付着したインクを、効率よく乾燥させることができる。
【0026】
特に、本願の第
2発明によれば、搬送中の錠剤に対して、加熱された気体を真上から当てることができる。これにより、搬送中の錠剤が吹き飛ばされることをより抑制できる。
【0027】
特に、本願の第
3発明によれば、搬送中の錠剤に対して、加熱された気体を、より精度よく真上から当てることができる。
【0028】
特に、本願の第
4発明によれば、加熱された気体を再利用できる。これにより、気体の加熱に要するエネルギーを低減できる。また、外部から粉塵が混入しにくいため、錠剤に吹き付ける気体を清浄な状態に維持しやすい。
【0029】
特に、本願の第
5発明によれば、各吹出口から吹き出された気体を、吸引口に効率よく吸引できる。
【0030】
特に、本願の第
6発明によれば、気体の循環が可能な乾燥ユニットを、コンパクトに形成できる。
【0031】
特に、本願の第
7発明によれば、循環ダクト内の気体の一部を外部へ排出するとともに、循環ダクト内に外部の気体を導入できる。これにより、循環する気体の湿度を低下させることができる。
【0032】
特に、本願の第
8発明によれば、錠剤の幅方向の間隔が変更されるなどの仕様変更があったときに、変更後の仕様に適した熱風ノズル部に交換できる。
【0033】
特に、本願の第
9発明によれば、ヒータを通過した気体を、複数の吹出口に効率よく案内できる。これにより、吹出口毎の風量の差を低減できる。
【0034】
特に、本願の第
10発明によれば、錠剤に吹き付ける気体を、清浄な状態に保つことができる。また、気体の流れを均一化して、吹出口毎の風量の差を低減できる。
【0035】
特に、本願の第
11発明によれば、ヒータの熱による送風ファンの劣化を抑制できる。
【0036】
特に、本願の第
12発明によれば、静圧の高い気流を形成できる。静圧の高い気流は、抵抗による風量の低下が生じにくい。したがって、複数の吹出口から気体を強く吹き出すことができる。
【0037】
特に、本願の第
15発明によれば、乾燥用の気体の温度を、迅速に上昇させることができる。
【0038】
特に、本願の第
16発明によれば、乾燥ユニットにおける気体の温度を、迅速に低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0041】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、錠剤搬送機構10、印刷部20、乾燥ユニット30、および制御部40を備えている。
【0042】
錠剤搬送機構10は、複数の錠剤9を保持しつつ搬送する機構である。錠剤搬送機構10は、一対のプーリ11と、一対のプーリ11の間に掛け渡された環状の搬送ベルト12とを有する。錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、振動フィーダや搬送ドラム等により構成される搬入機構51によって、等間隔に整列されるとともに、搬送ベルト12の外周面に供給される。一対のプーリ11の一方は、搬送用モータ13から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト12が、
図1中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ11の他方は、搬送ベルト12の回動に伴い従動回転する。
【0043】
図2は、錠剤搬送機構10の部分斜視図である。
図2に示すように、搬送ベルト12には、複数の吸着孔14が設けられている。複数の吸着孔14は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、
図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構15を有する。吸引機構15を動作させると、搬送ベルト12の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔14に吸着保持される。
【0044】
このように、複数の錠剤9は、搬送ベルト12の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12を回動させることによって、複数の錠剤9を搬送方向に搬送する。後述する4つのヘッド21の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0045】
また、
図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側に、ブロー機構16を有する。ブロー機構16を動作させると、搬送ベルト12の複数の吸着孔14のうち、搬出機構52に対向する吸着孔14のみが、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔14における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト12から搬出機構52へ、錠剤9が受け渡される。搬出機構52は、搬送ベルト12から受け渡された錠剤9を、例えば他の搬送ベルトによって、錠剤印刷装置1の外部へ搬出する。
【0046】
印刷部20は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を記録する部位である。
図1に示すように、本実施形態の印刷部20は、4つのヘッド21を有する。4つのヘッド21は、搬送ベルト12の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。4つのヘッド21は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド21から吐出されるインクには、食品衛生法で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0047】
図3は、1つのヘッド21の下面図である。
図3には、搬送ベルト12と、搬送ベルト12に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。
図3中に拡大して示したように、ヘッド21の下面である吐出面210には、インク滴を吐出可能な複数のインクノズル211が設けられている。本実施形態では、ヘッド21の下面に、複数のインクノズル211が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各インクノズル211は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のインクノズル211を二次元的に配置すれば、各インクノズル211の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のインクノズル211は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0048】
インクノズル211からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、インクノズル211内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してインクノズル211内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0049】
乾燥ユニット30は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させるためのユニットである。乾燥ユニット30は、搬送ベルト12の周囲の、印刷部20よりも搬送方向下流側の位置に設けられる。本実施形態では、搬送ベルト12のうち、プーリ11によって円弧状に回動する部分に対向するように、乾燥ユニット30が配置されている。乾燥ユニット30は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける。これにより、錠剤9の表面に付着したインクから水分が蒸発して、インクが乾燥する。その結果、錠剤9の表面にインクが定着する。なお、乾燥ユニット30の詳細な構造については、後述する。
【0050】
制御部40は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部40と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部40は、CPU等のプロセッサ41、RAM等のメモリ42、およびハードディスクドライブ等の記憶部43を有するコンピュータにより構成される。記憶部43内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0051】
また、
図4に示すように、制御部40は、上述した錠剤搬送機構10(搬送用モータ13、吸引機構15、およびブロー機構16を含む)、印刷部20(4つのヘッド21を含む)、乾燥ユニット30(後述する送風ファン81およびヒータ82を含む)、搬入機構51、および搬出機構52と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部40は、記憶部43に記憶されたコンピュータプログラムPやデータをメモリ42に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ41が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0052】
<2.乾燥ユニットについて>
続いて、乾燥ユニット30の詳細な構造について説明する。
図5は、乾燥ユニット30の外観斜視図である。
図6は、乾燥ユニット30内の供給ダクト60の斜視図である。
図5および
図6に示すように、この乾燥ユニット30は、供給ダクト60と、供給ダクト60を覆う外装カバー70とを有する。
【0053】
供給ダクト60は、搬送ベルト12の表面に向けて、乾燥用の熱風を供給するためのダクトである。本実施形態の供給ダクト60は、縦管部61、横管部62、および熱風ノズル部63を有する。縦管部61は、開口を有する下端部から上方へ向けて延びる。横管部62は、縦管部61の上端部から熱風ノズル部63へ向けて、水平に延びる。熱風ノズル部63は、横管部62の下流側の端部に対して、着脱可能となっている。
【0054】
熱風ノズル部63は、幅方向に配列された複数の分岐ノズル64を有する。各分岐ノズル64は、下流側の端部に吹出面65を有する。吹出面65は、錠剤9の搬送経路に沿って円弧状に湾曲している。分岐ノズル64内の空間は、吹出面65へ向かうにつれて、徐々に上下に拡大する。また、各吹出面65には、複数の内吹出口66が設けられている。本実施形態では、1つの分岐ノズル64の吹出面65に、複数の内吹出口66が上下に一列に配列されている。
【0055】
外装カバー70は、供給ダクト60を内部に収容する筐体である。外装カバー70は、搬送ベルト12の表面に対向する円弧状の通気面71を有する。通気面71は、上述した熱風ノズル部63の複数の吹出面65を覆っている。
図7は、通気面71の付近の横断面図である。
図5および
図7に示すように、通気面71には、複数の外吹出口72と、複数の吸引口73とが設けられている。複数の外吹出口72は、それぞれ、内吹出口66と重なる位置に、設けられている。複数の吸引口73は、それぞれ、分岐ノズル64と重ならない位置に、設けられている。すなわち、外装カバー70の通気面71には、外吹出口72の列と、吸引口73の列とが、幅方向に交互に配置されている。
【0056】
本実施形態では、内吹出口66と、それに対応する外吹出口72とで、熱風を吹き出す1つの吹出口31が構成される。乾燥ユニット30は、このような吹出口31を複数有する。複数の吹出口31は、それぞれ、搬送ベルト12上に保持される複数の錠剤9に対応する幅方向の位置に、設けられている。複数の吹出口31の幅方向の間隔と、搬送ベルト12上に保持される複数の錠剤9の幅方向の間隔とは、同一となっている。
【0057】
図8は、分岐ノズル64が存在する幅方向の位置における、乾燥ユニット30の縦断面図である。
図9は、分岐ノズル64が存在しない幅方向の位置における、乾燥ユニット30の縦断面図である。
図8および
図9に示すように、乾燥ユニット30は、供給ダクト60の内部に、送風ファン81、ヒータ82、フィルタ83、および複数の分流板84を有する。
【0058】
送風ファン81は、乾燥ユニット30の内部に気流を形成するための機構である。送風ファン81は、縦管部61の内部に収容されている。本実施形態では、送風ファン81に、二重反転ファンが用いられている。二重反転ファンは、上下に配置された2枚のインペラ811,812を、互いに逆向きに回転させる。これにより、静圧の高い気流が形成される。静圧の高い気流は、ヒータ82、フィルタ83、複数の内吹出口66、複数の外吹出口72などの抵抗による風力の低下が生じにくい。ただし、送風ファン81は、二重反転ファン以外の他タイプのファンであってもよい。
【0059】
ヒータ82は、供給ダクト60内の気体を加熱するための機構である。ヒータ82には、例えば、通電により発熱する電熱式のヒータが用いられる。本実施形態では、横管部62の内部に、幅方向に延びる柱状のヒータ82が、3本収容されている。ただし、ヒータ82の形状や数は、必ずしも本実施形態の通りでなくてもよい。
【0060】
送風ファン81およびヒータ82は、制御部40からの指令に基づいて動作する。送風ファン81を動作させると、縦管部61から横管部62を通って熱風ノズル部63へ向かう気流が発生する。また、その状態でヒータ82を動作させると、当該気流が、ヒータ82に加熱されることによって、熱風となる。乾燥ユニット30は、内吹出口66および外吹出口72により構成される吹出口31から、搬送ベルト12上の錠剤9へ向けて、当該熱風を吹き付ける。
【0061】
また、送風ファン81の駆動時には、供給ダクト60と外装カバー70との間の空間から、供給ダクト60内に空気が吸い込まれる。したがって、供給ダクト60と外装カバー70との間の空間が負圧となる。このため、複数の吹出口31から吹き出された気体は、複数の吸引口73を通って、供給ダクト60と外装カバー70との間の空間へ、吸引される。そして、吸引された気体が、再び供給ダクト60内に吸い込まれる。すなわち、本実施形態では、供給ダクト60と外装カバー70との間の空間が、複数の吸引口73から送風ファン81へ気体を送る循環ダクト32となっている。
【0062】
図8および
図9のように、本実施形態では、送風ファン81が、ヒータ82よりも低い位置に配置されている。このため、仮に、送風ファン81の故障などで、送風ファン81からヒータ82へ向かう気流が停止したとしても、ヒータ82の熱が送風ファン81側へ伝わりにくい。したがって、送風ファン81を構成する部材が、熱によって劣化することを抑制できる。
【0063】
フィルタ83は、横管部62内の、ヒータ82よりも下流側の位置に設けられている。フィルタ83は、吹出口31へ向かう気体から粉塵を除去する役割を果たす。吸引口73から乾燥ユニット30内に吸引される気体の中に、錠剤9の微粉等の粉塵が含まれている場合には、当該粉塵が、フィルタ83に捕捉されることによって、除去される。これにより、錠剤9に吹き付ける熱風を、清浄な状態に維持することができる。また、フィルタ83を通過することによって、気体の流れが均一化される。これにより、吹出口31毎の風量の差を低減できる。
【0064】
複数の分流板84は、フィルタ83と複数の内吹出口66との間の空間を、複数の流路に分割するための部材である。複数の分流板84は、各分岐ノズル64内において、上下に配列されている。ヒータ82およびフィルタ83を通過した熱風は、複数の分岐ノズル64内に流れ込むとともに、各分岐ノズル64内において、分流板84によって複数の流路に分岐して流れる。これにより、熱風が、複数の内吹出口66に、効率よく案内される。その結果、吹出口31毎の風量の差が、より低減される。
【0065】
以上のように、この乾燥ユニット30は、搬送ベルト12上に整列した状態で搬送される複数の錠剤9に対して、複数の吹出口31から熱風を吹き付ける。これにより、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる。特に、この乾燥ユニット30では、複数の吹出口31が、それぞれ、搬送ベルト12上の錠剤9に対応する幅方向の位置に、設けられている。すなわち、各吹出口31は、搬送される錠剤9と対向する位置に、設けられている。このため、搬送中の錠剤9に対して、熱風が幅方向に当たりにくい。したがって、搬送中の錠剤9が吹き飛ばされることを抑制できる。また、錠剤9が搬送ベルト12から吹き飛ばされにくいため、錠剤9に気体を強く当てて、乾燥性能を向上させることができる。
【0066】
また、複数の吹出口31は、それぞれ、錠剤9の搬送方向および幅方向に対して垂直に、熱風を吹き出す。このため、搬送中の錠剤9に対して、搬送方向の前後から当たる熱風も低減される。すなわち、各錠剤9に対して、真上(搬送ベルト12に対して垂直な方向)から、熱風を当てることができる。したがって、搬送中の錠剤9が、搬送ベルト12から吹き飛ばされることを、より抑制できる。
【0067】
また、
図8に示すように、本実施形態の分岐ノズル64は、複数の整流板85を有する。複数の整流板85は、複数の内吹出口66の間において、熱風の吹き出す方向と平行に延びている。このような整流板85を設けることによって、搬送中の錠剤9に対して、熱風をより精度よく真上から当てることができる。
【0068】
また、この乾燥ユニット30は、吹出口31から吹き出した熱風を、吸引口73から再び外装カバー70の内部へ吸引する。そして、吸引した熱風を、再び吹出口31から吹き出す。このようにすれば、一旦加熱された気体を再利用できる。したがって、気体の加熱に要するエネルギーを低減できる。また、外部から粉塵が混入しにくいため、錠剤9に吹き付ける気体を清浄な状態に維持しやすい。
【0069】
特に、本実施形態の構造では、吸引口73から送風ファン81へ気体を送るための循環ダクト32が、供給ダクト60と外装カバー70との間に形成されている。すなわち、供給ダクト60の表面を、循環ダクト32の一部として利用している。このようにすれば、供給ダクト60の外側に、供給ダクト60から分離した循環ダクトを別途設ける場合よりも、乾燥ユニット30全体を、コンパクトに形成できる。したがって、錠剤印刷装置1の外形寸法も小型化することができる。
【0070】
また、本実施形態の乾燥ユニット30では、吹出口31と吸引口73とが、幅方向に交互に配列されている。このため、吹出口31から吹き出された気体を、その吹出口31の幅方向の両隣の吸引口73によって、効率よく吸引できる。これにより、熱風の循環効率を高めることができる。
【0071】
また、この乾燥ユニット30では、複数の内吹出口66を有する熱風ノズル部63が、横管部62の下流側の端部に対して着脱可能となっている。このため、錠剤印刷装置1の仕様変更があったときに、変更後の仕様に適した熱風ノズル部63に交換できる。例えば、搬送ベルト12に保持される複数の錠剤9の幅方向の間隔が変更された場合には、それに合わせて、複数の内吹出口66の幅方向の間隔を変更することができる。また、熱風乾燥が不要な場合には、熱風ノズル部63を、内吹出口66の無いものに交換することもできる。
【0072】
<3.起動時および停止時の動作について>
図10は、錠剤印刷装置1における、乾燥ユニット30の好ましい起動手順を示したフローチャートである。乾燥ユニット30を起動させるときには、まず、制御部40は、乾燥ユニット30の送風ファン81およびヒータ82を起動する(ステップS1)。これにより、乾燥ユニット30における気体の循環を開始する。
【0073】
このとき、制御部40は、錠剤搬送機構10の吸引機構15を停止させた状態とし、搬送ベルト12の内部を常圧としておく。そうすると、乾燥ユニット30の複数の吹出口31から吹き出された気体は、搬送ベルト12の複数の吸着孔14に吸い込まれることなく、乾燥ユニット30の複数の吸引口73へ吸引される。したがって、乾燥ユニット30において、気体を効率よく循環させることができる。これにより、乾燥用の気体の温度を、迅速に上昇させることができる。
【0074】
やがて、乾燥ユニット30において循環する気体が、乾燥に適した第1目標温度まで上昇すると(ステップS2)、制御部40は、錠剤搬送機構10の吸引機構15を起動させる(ステップS3)。
【0075】
図11は、錠剤印刷装置1における、乾燥ユニット30の好ましい停止手順を示したフローチャートである。乾燥ユニット30を停止させるときには、まず、制御部40は、乾燥ユニット30のヒータ82を停止させる(ステップS4)。これにより、乾燥ユニット30における気体の加熱を停止する。
【0076】
このとき、制御部40は、錠剤搬送機構10の吸引機構15を動作させた状態としておく。このため、乾燥ユニット30の複数の吹出口31から吹き出された気体の一部は、搬送ベルト12の複数の吸着孔14に吸い込まれる。これにより、乾燥ユニット30において、循環する気体の温度を、迅速に低下させることができる。
【0077】
やがて、乾燥ユニット30において循環する気体が、環境温度に近い第2目標温度まで低下すると(ステップS5)、制御部40は、錠剤搬送機構10の吸引機構15と、乾燥ユニット30の送風ファン81とを停止させる(ステップS6)。
【0078】
<4.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0079】
図12は、一変形例に係る乾燥ユニット30の縦断面図である。
図12において、上記の実施形態と同等の部分には、同一の符号が付されている。
図12の例では、乾燥ユニット30の複数の吹出口31が、水平に配列されている。そして、錠剤9の搬送経路のうち、錠剤9が水平に移動する部分に対して、複数の吹出口31が対向する。
図12の構成では、錠剤搬送機構10と乾燥ユニット30とが、上下に重なるように配置される。したがって、上記の実施形態よりも、錠剤印刷装置1の上下方向の寸法は増大するものの、水平方向の寸法を抑えることができる。
【0080】
一方、上記の実施形態の構成では、錠剤搬送機構10と乾燥ユニット30とが、水平方向に重なるように配置される。したがって、
図12の例よりも、錠剤印刷装置1の水平方向の寸法は増大するものの、上下方向の寸法を抑えることができる。
【0081】
図13は、他の変形例に係る乾燥ユニット30の縦断面図である。
図13において、上記の実施形態と同等の部分には、同一の符号が付されている。
図13の例では、外装カバー70に、排気部74と外気導入部75とが、設けられている。排気部74には、排気ファン741が設けられている。また、外気導入部75には、外気導入ファン751が設けられている。排気ファン741および外気導入ファン751を動作させると、循環ダクト32内の気体の一部が、排気部74を通って外部へ排出されるとともに、外部の気体が、外気導入部75を通って、循環ダクト32内に取り込まれる。
【0082】
このようにすれば、乾燥ユニット30において循環する気体の湿度を下げることができる。したがって、インクから蒸発した水分によって、気体の湿度が過剰に高くなることを防止できる。これにより、乾燥ユニット30の乾燥性能を高めることができる。
【0083】
また、上記の実施形態では、外装カバー70の幅方向に隣り合う外吹出口72の列の間に、複数の小さな円孔である吸引口73が、上下に配列されていた。そして、外吹出口72と吸引口73とが、略同一の大きさであった。しかしながら、外吹出口72は、吸引口73とは異なる大きさであってもよい。また、幅方向に隣り合う外吹出口72の列の間に、上下に延びるスリット状の吸引口73が設けられていてもよい。
【0084】
また、送風ファン81およびヒータ82は、それぞれ出力を調節可能であってもよい。また、制御部40は、錠剤9の種類、印刷部20におけるインクの吐出量、錠剤9の搬送速度などの諸条件に応じて、送風ファン81およびヒータ82のいずれか一方または両方の出力を調節してもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、搬送ベルト12の吸着孔14に、錠剤9を吸着保持しつつ、錠剤9を搬送していた。しかしながら、錠剤9の保持・搬送の方法は、他の方法であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、印刷部20に、4つのヘッド21が設けられていた。しかしながら、印刷部20に含まれるヘッド21の数は、1〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0087】
また、本発明において処理対象となる「錠剤」は、例えば、素錠、口腔内崩壊錠(OD錠)、フィルムコーティング錠(FC錠)、糖衣錠、割線錠などを含むが、必ずしも医薬品としての錠剤には限定されない。本発明の錠剤印刷装置は、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓に対して、印刷を行うものであってもよい。
【0088】
また、錠剤印刷装置1の細部の構成については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。