特許第6753710号(P6753710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753710
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】アクセルペダル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20200831BHJP
   G05G 1/30 20080401ALI20200831BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20200831BHJP
   G05G 5/04 20060101ALI20200831BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20200831BHJP
   F02D 11/04 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B60K26/02
   G05G1/30 E
   G05G5/03 B
   G05G5/04 B
   F02D11/02 S
   F02D11/04 C
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-133228(P2016-133228)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-2018(P2018-2018A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】連 哲朗
【審査官】 田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269638(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0092098(KR,A)
【文献】 特開2005−075320(JP,A)
【文献】 特開2013−112257(JP,A)
【文献】 特開2011−251667(JP,A)
【文献】 特開2010−026569(JP,A)
【文献】 特開2007−137152(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/030068(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0125682(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103802668(CN,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1272926(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0057360(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
F02D 11/02
F02D 11/04
G05G 1/30
G05G 5/03
G05G 5/04
G05G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルを有するペダルアームと、
前記ペダルアームを休止位置と最大踏込み位置の間で所定の軸線回りに回動可能に支持するハウジングと
記ハウジングに対して移動自在に配置された可動部材と、
前記ペダルアームを前記休止位置に戻す付勢力を及ぼすべく前記ハウジングと前記可動部材の間に介在する第1戻しバネと、
前記可動部材と前記ペダルアームの間に介在して踏力に対する反力を生じ得る反力バネと、
前記可動部材を所望のタイミングで移動不能にロックし得るロック機構と、
前記反力バネの付勢力を所望のタイミングで調整する反力調整機構と、を備え、
前記反力調整機構は、所定の駆動力により前記可動部材に対し相対的に移動して前記反力バネの一端部の規制位置を変化させる規制位置調整ユニットを含む、
ことを特徴とするアクセルペダル装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、所定の駆動力により一方向において楔作用を生じて前記可動部材をロックするロック部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル装置。
【請求項3】
前記規制位置調整ユニットは、所定の駆動力により回転させられる回転部材と、前記回転部材の回転力のみが伝達されてその軸線方向に相対的に移動自在でかつ前記可動部材との係合関係により前記可動部材に対して相対的に移動して前記反力バネの一端部の規制位置を移動させる係合移動部材を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクセルペダル装置。
【請求項4】
前記回転部材は、所定の駆動力により回転駆動されるスプラインシャフトであり、
前記係合移動部材は、前記スプラインシャフトと係合すると共に前記可動部材に螺合しかつ前記反力バネの反力を受けるスプラインスリーブである、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【請求項5】
前記規制位置調整ユニットは、前記スプラインスリーブと前記反力バネの一端部の間に配置されたバネ受け部材をさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【請求項6】
前記可動部材は、内壁面をもつ筒状に形成されて前記ハウジングに対して所定方向に摺動自在に配置されたスライダからなり、
前記第1戻しバネ及び反力バネは、前記所定方向に伸縮する伸縮バネからなり、
前記反力バネは、前記スライダの内部に配置され、
前記スプラインシャフト及びスプラインスリーブは、前記所定方向に伸長して形成されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のアクセルペダル装置。
【請求項7】
前記アクセルペダルの踏力にヒステリシスを発生させるヒステリシス発生機構をさらに含み、
前記ヒステリシス発生機構は、前記ペダルアームと前記反力バネの間に介在すると共に前記スライダの内部に摺動自在に配置され踏力の増加に伴って摺動抵抗力が増加する内部スライダを含む、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【請求項8】
前記ペダルアームは、前記内部スライダに対して離脱可能に係合し、
前記ペダルアームを前記休止位置に戻すべく、前記ペダルアームに直接係合して付勢力を及ぼす第2戻しバネをさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載のアクセルペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブバイワイヤシステムを採用した車両等に適用されるアクセルペダル装置に関し、特に、燃費改善等のために過踏込みを抑制し又車間距離を確保するためのディスタンス制御等を実現するべく、アクセルペダルの踏力に対抗する反力又はアクセルペダルを押し戻す力を発生する機構を備えたアクセルペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載のエンジンにおいて、電子制御スロットルシステム(ドライブバイワイヤシステム)に適用されるアクセルペダル装置としては、本発明者等が開発した反力付加機構を備えたアクセルペダル装置が知られている(特許文献1参照)。
このアクセルペダル装置は、アクセルペダルを有しハウジングに対して揺動自在に支持されたペダルアーム、ペダルアームを休止位置に戻す付勢力を及ぼす第1戻しバネ、アクセルペダルの踏力に対抗する反力を付加する反力付加機構等を備えている。
【0003】
ここで、反力付加機構として、第1戻しバネの反力を受けつつハウジングに対して移動自在に配置された可動部材、可動部材とペダルアームの間に介在して踏力に対する反力を生じ得る反力バネ、可動部材を所望のタイミングで移動不能にロックし得るロック機構を含む構成を採用している。
【0004】
このアクセルペダル装置では、過踏込みを抑制するべくロック機構が作動した後において、運転者がアクセルペダルを踏み続ける限り、付加された反力が運転者に負荷として作用し続ける。したがって、運転者が疲労しないように改善する余地がある。
また、ロック機構が作動した後において、運転者がアクセルペダルを踏み続ける限り、反力発生位置(ロック位置)をアクセルペダルのストロークに対して変更できない。したがって、運転者がアクセルペダルを踏み続ける状態であっても、路面状態の変化等に応じてロック位置を可変として適切な反力を付加できるように改善する余地がある。
さらに、前車と接近しているにも拘わらず、運転者がアクセルペダルを踏み続けている場合に、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏変えを促すために、反力を発生さてアクセルペダルを押し戻す機能、すなわち、ディスタンス制御を行える機能の採用が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5371147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、低コスト化、装置全体の小型化等を図りつつ、燃費改善等のためにアクセルペダルの過踏込みを抑制する反力付加機構等を備える構成において、運転者の疲労を解消して操作性を改善でき、運転状況に応じて適切な反力を付加することができ、ディスタンス制御等も行うことができる、応答性に優れたアクセルペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクセルペダル装置は、アクセルペダルを有するペダルアームと、ペダルアームを休止位置と最大踏込み位置の間で所定の軸線回りに回動可能に支持するハウジングと、ハウジングに対して移動自在に配置された可動部材と、ペダルアームを休止位置に戻す付勢力を及ぼすべくハウジングと可動部材の間に介在する第1戻しバネと、可動部材とペダルアームの間に介在して踏力に対する反力を生じ得る反力バネと、可動部材を所望のタイミングで移動不能にロックし得るロック機構と、反力バネの付勢力を所望のタイミングで調整する反力調整機構を備え、反力調整機構は、所定の駆動力により可動部材に対し相対的に移動して反力バネの一端部の規制位置を変化させる規制位置調整ユニットを含む、構成となっている。
【0008】
この構成によれば、運転者が休止位置から最大踏込み位置に向けてアクセルペダルを踏み込むと、ペダルアームの回転により増加した反力バネの付勢力により可動部材が移動する。そして、可動部材の移動により、第1戻しバネの付勢力が増加することで踏力が増加する。一方、運転者がアクセルペダルを最大踏込み位置から休止位置に向けて戻すと、踏力が減少しつつ第1戻しバネ及び反力バネの付勢力により、ペダルアームが休止位置に戻る。
【0009】
ここで、運転者がアクセルペダルを踏み込む際に、例えば過踏込みによる余分な発進エネルギを節約したい場合には、所望のタイミングで、例えば運転者がアクセルペダルを踏み込む体勢にあることを検知するセンサ信号等に基づいて、ロック機構が作動して、可動部材が移動不能にロックされる。
すると、反力バネのみが変形されるため、直列に接続された二つのバネ(第1戻しバネ、反力バネ)が作用する場合に比べてバネ定数が大きくなり反力が増加する。
これにより、運転者の踏力に対する反力(抵抗力)が増加するため、過踏込みを抑制することができ、急激な発進を防止して燃費を改善することができる。
【0010】
また、ロック機構が作動した後の所望のタイミングで、例えば、ロック機構により可動部材が移動不能にロックされたことを検知するセンサ信号等に基づいて、反力調整機構を作動させて、反力バネの付勢力を弱めるように調整することができる。
特に、反力調整機構が、所定の駆動力により可動部材に対し相対的に移動して反力バネの一端部の規制位置を変化させる規制位置調整ユニットを含むため、非調整時においては、規制位置調整ユニットが可動部材と一体的に移動して、可動部材に対する反力バネの一端部の規制位置が所定位置に維持されるが、調整時においては、所定の駆動力により、規制位置調整ユニットが、可動部材に対して相対的に移動して反力バネの一端部の規制位置を変化させる。
例えば、調整時において、規制位置調整ユニットが、反力バネの付勢力を弱める方向に規制位置を移動させ、又は、反力バネの付勢力を強める方向に規制位置を移動させることができる。
これによれば、運転者がアクセルペダルを踏み続けている場合、ロック状態を維持しつつ付加された反力が低減されるため、運転者へ加わる負荷を低減でき、疲労等を緩和することができる。
さらに、ロック機構が作動した後において、運転者がアクセルペダルを踏み続けている場合でも、反力バネの付勢力を高める方向に、すなわち、ペダルアームを休止位置に向けて押し戻す方向に、反力調整機構を作動させることにより、ロック状態を容易に解除することができ、又、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏変えを促すディスタンス制御等を行うことができる。
【0011】
上記構成において、ロック機構は、所定の駆動力により一方向において楔作用を生じて可動部材をロックするロック部材を含む、
構成を採用してもよい。
この構成によれば、運転者がアクセルペダルを踏み込む際に可動部材をロックする場合は、所定の駆動力によりロック部材が一方向に駆動されると、ロック部材が可動部材を押圧してロック状態となる。
一方、運転者がアクセルペダルを戻すと、楔作用が解除されて、ロック部材による可動部材のロック状態が解除される。
ここでは、ロック状態において、運転者がアクセルペダルを踏み続けている場合でも、反力バネの付勢力を高める方向に反力調整機構を作動させることにより、ロック状態を容易に解除することができる。
【0013】
上記構成において、規制位置調整ユニットは、所定の駆動力により回転させられる回転部材と、回転部材の回転力のみが伝達されてその軸線方向に相対的に移動自在でかつ可動部材との係合関係により可動部材に対して相対的に移動して反力バネの一端部の規制位置を移動させる係合移動部材を含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、回転部材と係合移動部材とは、両者の間において回転力のみが伝達され、その軸線方向においては相対的に移動自在であり力が伝達されない。
したがって、所定の駆動力により回転部材が回転すると、係合回転部材が回転する。すると、係合回転部材は、可動部材との係合関係により可動部材に対して相対的に移動し、可動部材に対する反力バネの一端部の規制位置を変化させることができる。
【0014】
上記構成において、回転部材は、所定の駆動力により回転駆動されるスプラインシャフトであり、係合移動部材は、スプラインシャフトと係合すると共に可動部材に螺合しかつ反力バネの反力を受けるスプラインスリーブである、構成を採用してもよい。
この構成によれば、スプラインシャフトとスプラインスリーブとは、スプライン構造をなすものであり、両者の間において回転力のみが伝達され、その軸線方向においては相対的に移動自在である。
また、スプラインスリーブと可動部材とは螺合関係にあるため、スプラインスリーブが回転しないときは可動部材に対して相対的に移動せず、スプラインスリーブが回転するときに可動部材に対して相対的に移動する。
したがって、所定の駆動力によりスプラインシャフトが回転すると、スプラインスリーブが回転する。すると、スプラインスリーブは、可動部材に対して相対的に移動し、可動部材に対する反力バネの一端部の規制位置を変化させる。
例えば、スプラインシャフト及びスプラインスリーブを所定の駆動力により一方向に回転させると、スプラインスリーブが可動部材に対して一方向に相対的に移動して、反力バネの付勢力を弱める方向に規制位置を移動させることができる。
一方、スプラインシャフト及びスプラインスリーブを所定の駆動力により他方向に回転させると、スプラインスリーブが可動部材に対して他方向に相対的に移動して、反力バネの付勢力を強める方向に規制位置を移動させることができる。
【0015】
上記構成において、規制位置調整ユニットは、スプラインスリーブと反力バネの一端部の間に配置されたバネ受け部材をさらに含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、反力バネの一端部をバネ受け部材が受け、バネ受け部材をスプラインスリーブの端部が受ける形態であるため、スプラインスリーブが回転しても、その回転力が反力バネに影響を及ぼすのを防止できる。それ故に、反力バネの連れ回り等を防止して、所期の付勢特性を得ることができる。
【0016】
上記構成において、可動部材は、内壁面をもつ筒状に形成されてハウジングに対して所定方向に摺動自在に配置されたスライダからなり、第1戻しバネ及び反力バネは、所定方向に伸縮する伸縮バネからなり、反力バネは、スライダの内部に配置され、スプラインシャフト及びスプラインスリーブは、所定方向に伸長して形成されている、構成を採用してもよい。
この構成によれば、可動部材(スライダ)、第1戻しバネ、反力バネ、スプラインシャフト及びスプラインスリーブが、全て所定方向に配列される構造であるため、部品を集約して配置することができ、装置の小型化に寄与する。
【0017】
上記構成において、アクセルペダルの踏力にヒステリシスを発生させるヒステリシス発生機構をさらに含み、ヒステリシス発生機構は、ペダルアームと反力バネの間に介在すると共にスライダの内部に摺動自在に配置され踏力の増加に伴って摺動抵抗力が増加する内部スライダを含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、運転者が休止位置から最大踏込み位置に向けてアクセルペダルを踏み込むと、内部スライダを介して反力バネが圧縮されつつスライダが移動し、スライダの移動により第1戻しバネが圧縮されることで踏力が増加する。
一方、運転者がアクセルペダルを最大踏込み位置から休止位置に向けて戻すと、踏力が減少しつつ第1戻しバネ及び反力バネの付勢力により、内部スライダを介してペダルアームが休止位置に戻る。
【0018】
ここで、アクセルペダルが踏み込まれると、内部スライダが反力バネに抗してペダルアームにより押圧されるため、内部スライダは摺動抵抗を増加させつつスライダの内部を相対的に移動する。一方、アクセルペダルが戻されると、内部スライダは摺動抵抗を減少させつつスライダの内部を相対的に移動する。
したがって、踏力において踏込み時に大きくかつ戻し時に小さくなるようなヒステリシスを発生させることができ、踏力において所望のヒステリシス特性を得ることができる。また、反力バネが、ヒステリシス発生機構の内部スライダに反力を及ぼすバネを兼ねるため、構造の簡素化及び装置の小型化等を達成しつつ、反力を付加する機構とヒステリシス発生機構を両立させることができる。
【0019】
上記構成において、ペダルアームは、内部スライダに対して離脱可能に係合し、ペダルアームを休止位置に戻すべく、ペダルアームに直接係合して付勢力を及ぼす第2戻しバネをさらに含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、ペダルアームは内部スライダに対して離脱可能であるため、スライダがロック状態から解除されないような作動不良の状態が生じても、ペダルアームは第2戻しバネの付勢力により休止位置へ確実に戻ることができ、安全性が保証される。
【発明の効果】
【0020】
上記構成をなすアクセルペダル装置によれば、構造の簡素化、低コスト化、装置全体の小型化等を達成しつつ、燃費改善等のためにアクセルペダルの過踏み込みを抑制する反力付加機構等を備える構成において、運転者の疲労を解消して操作性を改善でき、運転状況に応じて適切な反力を付加することができ、ディスタンス制御等も行うことができる、応答性に優れたアクセルペダル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るアクセルペダル装置に一実施形態を示す側面図である。
図2図1に示すアクセルペダル装置の内部を示す側面図である。
図3図1に示すアクセルペダル装置の一部を示した部分断面図である。
図4図1に示すアクセルペダル装置に含まれるロック機構の一部をなすロック部材を示す模式図である。
図5図1に示すアクセルペダル装置に含まれる反力調整機構(駆動源、規制位置調整ユニット)を示す分解斜視図である。
図6図1に示すアクセルペダル装置に含まれる可動部材、反力バネ、ロック機構、反力調整機構、及びヒステリシス発生機構の動作を示す模式図であり、(a)は休止位置にある状態を示す模式図、(b)は最大踏込み位置にある状態を示す模式図である。
図7図1に示すアクセルペダル装置に含まれる可動部材、反力バネ、ロック機構、反力調整機構、及びヒステリシス発生機構の動作を示す模式図であり、(a)は所定の踏込み位置にてロック機構が作動した状態を示す模式図、(b)はロック機構が作動した後に反力調整機構により反力バネの付勢力を弱めるように調整した状態を示す模式図である。
図8図1に示すアクセルペダル装置に含まれる可動部材、反力バネ、ロック機構、反力調整機構、及びヒステリシス発生機構の動作を示す模式図であり、(a)は所定の踏込み位置にてロック機構が作動した状態を示す模式図、(b)はロック機構が作動した後に反力調整機構により反力バネの付勢力を高めるように調整した示す模式図である。
図9図1に示すアクセルペダル装置の踏力特性を示すグラフであり、(a)は反力が付加されない場合の踏力特性を示すグラフ、(b)は反力が付加された後に反力調整機構により反力が弱められた場合の踏力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この実施形態に係るアクセルペダル装置は、図1ないし図3に示すように、自動車等の車体に固定されるハウジング10、ペダルアーム20、第1戻しバネ30、可動部材としてのスライダ40、反力バネ50、内部スライダ61,62、ロック部材70、駆動源80、第2戻しバネ90、駆動源100、回転部材としてのスプラインシャフト110、係合移動部材としてのスプラインスリーブ120、バネ受け部材130、ペダルアーム20の回転角度位置を検出する位置センサ140等を備えている。
【0023】
ここで、ロック部材70、駆動源80により、可動部材としてのスライダ40を所望のタイミングで移動不能にロックし得るロック機構が構成されている。
また、スライダ40、反力バネ50、ロック機構(ロック部材70、駆動源80)により、アクセルペダル22の踏力に対抗する反力を付加する反力付加機構が構成されている。
【0024】
また、スプラインシャフト110、スプラインスリーブ120、バネ受け部材130により、駆動源100の駆動力によりスライダ40に対し相対的に移動して反力バネ50の一端部51の規制位置を変化させる規制位置調整ユニットが構成されている。
そして、駆動源100、規制位置調整ユニット(スプラインシャフト110、スプラインスリーブ120、バネ受け部材130)により、反力バネ50の付勢力を所望のタイミングで調整する反力調整機構が構成されている。
【0025】
さらに、スライダ40の内部に配置された反力バネ50、内部スライダ61,62により、アクセルペダル22の踏力にヒステリシスを発生させるヒステリシス発生機構が構成されている。
【0026】
ハウジング10は、樹脂材料により形成されており、図1及び図2に示すように、ネジにより互いに結合される第1ハウジング10a及び第2ハウジング10bにより構成されている。
第1ハウジング10aは、図2に示すように、支軸11、受け部12、凹部13、凹部14、固定部15a,15b、受け部16、休止ストッパ17、全開ストッパ18等を備えている。
【0027】
支軸11は、ペダルアーム20を軸線L1回りに揺動自在に支持する円柱状に形成されている。
受け部12は、図2及び図3に示すように、第1戻しバネ30の一端部31を受ける環状溝に形成されている。
凹部13は、図2及び図3に示すように、所定方向Hに伸長すると共に所定方向Hに垂直な断面が略矩形の内部空間を画定し、スライダ40を所定方向Hに摺動自在に収容するように形成されている。
凹部14は、図3に示すように、ロック部材70を回動自在に収容するように形成されている。
固定部15aは、図3に示すように、駆動源80を収容して固定するように形成されている。
固定部15bは、図3に示すように、駆動源100を収容して固定するように形成されている。
受け部16は、図2に示すように、第2戻しバネ90の一端部91を受ける環状座面を画定する。
休止ストッパ17は、図2に示すように、ペダルアーム20を休止位置に停止させるべく、上端部23が当接するように形成されている。
全開ストッパ18は、図2に示すように、ペダルアーム20を最大踏込み位置(全開位置)に停止させるべく、当接部25が当接するように形成されている。
【0028】
第2ハウジング10bは、図1に示すように、位置センサ140を収容するセンサ収容部19等を備えている。
そして、第2ハウジング10bは、ペダルアーム20、第1戻しバネ30、スライダ40、反力バネ50、内部スライダ61,62、ロック部材70、第2戻しバネ90、駆動源100、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120、バネ受け部材130等が第1ハウジング10aに装着された状態で、ペダルアーム20の下方領域を除いて全体を覆うように形成されている。
【0029】
ペダルアーム20は、全体が樹脂材料により成形されており、図2に示すように、円筒部21、アクセルペダル22、上端部23、受け部24、当接部25等を備えている。
円筒部21は、ペダルアーム20が軸線L1回りに揺動自在に支持されるべく、第1ハウジング10aの支軸11に嵌合されるように形成されている。
アクセルペダル22は、運転者が足で踏めるように円筒部21から下方に伸長して一体的に形成されている。
上端部23は、円筒部21から上方に伸長して一体的に形成されている。
受け部24は、第2戻しバネ90の他端部92を受けるべく、円筒部21と上端部23の間の領域に形成されている。
当接部25は、ハウジング10の全開ストッパ18に離脱可能に当接するべく、円筒部21の下方近傍に形成されている。
【0030】
第1戻しバネ30は、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイル状の伸縮バネであり、図2及び図3に示すように、一端部31が第1ハウジング10aの受け部12に係合しかつ他端部32がスライダ40の端面壁41に係合しつつ所定の圧縮代に圧縮された状態で所定方向Hに伸縮自在に取り付けられている。
そして、第1戻しバネ30は、スライダ40、反力バネ50、内部スライダ61,62等を介して、ペダルアーム20を休止位置に戻す付勢力を及ぼすようになっている。
【0031】
スライダ40は、図2及び図3に示すように、その内部に反力バネ50を圧縮自在に収容すると共に内部スライダ61,62を摺動自在に収容するように一端側に開放した内壁面をもつ筒状に形成され、ハウジング10の凹部13内において所定方向Hに摺動自在に配置されている。
【0032】
スライダ40は、所定方向Hに垂直な断面が略矩形の内部空間を画定するように形成され、図2及び図3に示すように、端面壁41、内壁面42,43、外壁面44、外壁面45、雌ネジ46等を備えている。
端面壁41は、図3に示すように、第1戻しバネ30の他端部32を受けるように形成されている。
内壁面42,43は、図3に示すように、内部スライダ61,62を摺動させるように形成されている。
外壁面44は、図3に示すように、ロック部材70がロック状態で当接するように形成されている。
外壁面45は、図3に示すように、凹部13により画定される摺動面13aに押し付けられるように形成されている。
雌ネジ46は、図3に示すように、端面壁41の中央領域に設けられた貫通孔の内周面において、スプラインスリーブ120の雄ネジ122が螺合するように形成されている。
【0033】
反力バネ50は、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイル状の伸縮バネであり、図2及び図3に示すように、一端部51がバネ受け部材130に係合しかつ他端部52が内部スライダ62に係合して、所定の圧縮代に圧縮された状態で所定方向H(第1戻しバネ30の伸縮方向と同一方向)に伸縮自在に取り付けられている。
そして、反力バネ50は、内部スライダ61,62を介して、ペダルアーム20を休止位置に戻す付勢力を及ぼすようになっている。
【0034】
内部スライダ61は、樹脂材料、例えば含油ポリアセタール等の高摺動性材料により、スライダ40の内部空間に収容される略矩形の輪郭をなすように形成されている。
内部スライダ61は、図3に示すように、スライダ40の下側の内壁面42に摺動自在に接触するように形成され、又、内部スライダ62の傾斜面62aと接触する傾斜面61a、ペダルアーム20の上端部23が離脱可能に係合する係合面61b等を備えている。
内部スライダ62は、樹脂材料、例えば含油ポリアセタール等の高摺動性材料により、スライダ40の内部空間に収容される略矩形の輪郭をなすように形成されている。
内部スライダ62は、図3に示すように、スライダ40の上側の内壁面43に摺動自在に接触するように形成され、又、内部スライダ61の傾斜面61aと接触する傾斜面62a、反力バネ50の他端部52を受ける受け面62b等を備えている。
そして、内部スライダ61,62は、スライダ40の内部に配置されて、反力バネ50の付勢力に抗しつつペダルアーム20の上端部23により押圧されることで、くさび作用を生じつつスライダ40に対して相対的に摺動し得るようになっている。
【0035】
したがって、ペダルアーム20が、バネ(反力バネ50、第1戻しバネ30、第2戻しバネ90)の付勢力に抗して最大踏込み位置(全開位置)に向けて踏み込まれる場合は、上端部23が反力バネ50の付勢力に抗して内部スライダ61,62を図3中の左向きに押すことで、傾斜面61a,62aのくさび作用により生じる摩擦力(摺動抵抗)が大きくなり、反力バネ50の付勢力の増加に伴って摩擦力が直線的に増加する。
一方、ペダルアーム20が、バネ(反力バネ50、第1戻しバネ30、第2戻しバネ90)の付勢力に応じて休止位置に向けて戻される場合は、傾斜面61a,62aのくさび作用により生じる摩擦力(摺動抵抗)は小さくなり、反力バネ50の付勢力により内部スライダ61,62が元の位置に向けて図3中の右向きに移動するに連れて、反力バネ50の付勢力が減少することで摩擦力が直線的に減少する。
ここで、戻り動作の際の摩擦力は、踏み込み動作の際の摩擦力よりも小さくなるため、図9(a)の実線で示すように、踏込み動作から戻し動作までの全体の踏力(ペダル荷重)にヒステリシスを発生させることができる。
【0036】
ロック部材70は、図3及び図4に示すように、平行な2つの平面部71、所定の曲率をなす2つの湾曲面部72を有し、その中心Cが駆動源80の回転軸80aに固定されている。
ここで、ロック部材70がロック状態を生じる条件は、図4に示すように、湾曲面部72,72がスライダ40の外壁面44及び第1ハウジング10aの内壁面14aと接触した状態で、法線力をFn、摩擦力をFf、合力をF、摩擦角をφ、ウェッジ角をθとするとき、0<θ≦φ、すなわち、0<θ≦tan−1(Ff/Fn)を満足するように、ロック部材70が形成されることである。
そして、ロック部材70は、図3の二点鎖線で示すように、一方向(時計回り)に回転することで、スライダ40をハウジング10(の摺動面13a)に押し付けて楔作用を生じ、移動不能にロックしたロック状態とする。
一方、ロック部材70は、第1戻しバネ30の戻し力によるスライダ40の移動に追従して、図3の実線で示すように、他方向(反時計回り)に回転することにより、ロック状態を解除し得るようになっている。
【0037】
駆動源80は、一方向への回転駆動力を及ぼすアクチュエータであり、ロック部材70を回動自在に結合する回転軸80a等を備えている。
そして、駆動源80は、第1ハウジング10aの固定部15に収容されて固定され、ロック部材70を図3中の実線で示すロック解除状態から二点鎖線で示すロック状態にするべく、一方向にのみ回転駆動力を及ぼすようになっている。
【0038】
上記構成においては、運転者がアクセルペダル22を踏み込む際に、例えば過踏み込みによる余分な発進エネルギを節約したい場合、所望のタイミングで、例えば運転者がアクセルペダル22を踏み込む体勢にあることを検知するセンサ信号等に基づいて、駆動源80を一方向に回転させる。すると、ロック部材70が一方向に回転し、湾曲面部72が、スライダ40を第1ハウジング10aの内壁面13aに押し付けて移動不能にロックする。
それ以後の踏み込み時には、直列に配置された二つのバネ(第1戻しバネ30及び反力バネ50)のうち反力バネ50のみが圧縮されるため、二つのバネ(第1戻しバネ30、反力バネ50)が作用する場合に比べてバネ定数が大きくなり、図9(b)の点線で示すように反力すなわち踏力が増加する。
【0039】
例えば、反力バネ50のバネ定数をk1、第1戻しバネ30のバネ定数をk2とすると、直列に配置された反力バネ50及び第1戻しバネ30の合成バネ定数は(k1・k2)/(k1+k2)であり、k1>(k1・k2)/(k1+k2)の関係が成立する。
したがって、反力バネ50及び第1戻しバネ30が共に付勢力を及ぼす状態に比べて、反力バネ50のみが付勢力を及ぼす状態の方がバネ定数を大きくでき、踏力が増加することになる。
このように、所望のタイミングでスライダ40をロックすることにより、アクセルペダル22の踏力に対抗する反力を付加することができ、それ故に、運転者の過踏み込みを抑制することができ、急激な発進を防止して燃費を改善することができる。
【0040】
上記のように、スライダ40を移動不能にロックするロック機構が、ロック部材70及び駆動源80により構成され、一方向へ回転する場合にのみ楔作用を生じてスライダ40をロックするワンウエイロック(すなわち、スプラグ)として機能し、駆動源80としても一方向への回転駆動力を及ぼすだけのアクチュエータを適用することができるため、駆動源の省電力化及び小型化、又、制御回路(ECU)の不要化、低コスト化等を達成することができる。
【0041】
第2戻しバネ90は、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、図2に示すように、一端部91が第1ハウジング10aの受け部16に係合しかつ他端部92がペダルアーム20の受け部24に係合して、所定の圧縮代に圧縮された状態で伸縮自在に取り付けられている。
そして、第2戻しバネ90は、ペダルアーム20を休止位置に戻す付勢力を及ぼすようになっている。
【0042】
このように、第2戻しバネ90は、ペダルアーム20の上端部23が内部スライダ61に対して離脱可能に係合した状態で、ペダルアーム20に直接係合してペダルアーム20を休止位置に戻す付勢力を及ぼすように形成されている。
したがって、スライダ40がロック状態から解除されない又はスライダ40が第1ハウジング10aにスティックして停止し又は内部スライダ61,62がスライダ40内においてスティックして停止したような作動不良の状態が生じても、ペダルアーム20は、第2戻しバネ90の付勢力により休止位置へ確実に戻され、安全性が保証される。
【0043】
駆動源100は、図2及び図3に示すように、ハウジング10の固定部15bに固定され、回転駆動力を及ぼすモータであり、例えばDCモータ等が適用される。
【0044】
スプラインシャフト110は、金属材料又は高強度の樹脂材料等により形成され、図3及び図5に示すように、ハウジング10内でかつ第1戻しバネ30の内側において、所定方向Hに伸長するように配置され、駆動源100の回転軸100aに、連結部材(不図示)等を介して直結されている。
また、スプラインシャフト110は、図3及び図5に示すように、その外周面において、周方向に所定間隔をおいて突出すると共に軸線方向(所定方向H)に伸長する複数の凸条部111を備えている。
【0045】
スプラインスリーブ120は、金属材料又は高強度の樹脂材料等により形成され、図3及び図5に示すように、スプラインシャフト110が内部に嵌め込まれた状態で、所定方向Hに伸長するように配置されている。
また、スプラインスリーブ120は、図3及び図5に示すように、その内周面において周方向に所定間隔をおいて凹むと共に軸線方向(所定方向H)に伸長する複数の凹条部121、その外周面においてスライダ40の雌ネジ46と螺合する雄ネジ122、バネ受け部材130が当接する端部123等を備えている。
【0046】
複数の凸条部111は、複数の凹条部121に対して、軸線回りに相対移動不能にかつ軸線方向(所定方向H)に相対的に移動するように摺動自在に嵌合する。
すなわち、スプラインシャフト110とスプラインスリーブ120とは、スプライン構造をなすものであり、スプラインシャフト110からスプラインスリーブ120への回転力のみが伝達され、スプラインスリーブ120はスプラインシャフト110に対してその軸線方向(所定方向H)に相対的に移動自在となっている。
また、スプラインスリーブ120は、スライダ40と螺合により係合しているため、反力バネ50の調整時において、スプラインシャフト110を介して回転するときに、スライダ40に対して軸線方向(所定方向H)に相対的に移動するようになっている。
要するに、スプラインシャフト110が、駆動源100により回転させられる回転部材として機能し、スプラインスリーブ120が、回転部材の回転力のみが伝達されてその軸線方向Hに相対的に移動自在でかつ可動部材(スライダ40)との係合関係により可動部材に対して相対的に移動して反力バネ50の一端部51の規制位置を移動させる係合移動部材として機能する。
【0047】
バネ受け部材130は、樹脂材料、例えば含油ポリアセタール等の高摺動性材料により、スライダ40の内部空間に適合する略矩形の輪郭をなすように形成されている。
そして、バネ受け部材130は、図3に示すように、スライダ40の内部に配置されて、一方側の面で反力バネ50の一端部51を受け、他方側の面でスプラインスリーブ120の端部123と当接するように配置されている。
このように、スプラインスリーブ120と反力バネ50の一端部51の間にバネ受け部材130が配置されているため、スプラインスリーブ120が回転しても、その回転力が反力バネ50に影響を及ぼすのを防止できる。それ故に、反力バネ50の連れ回り等を防止して、所期の付勢特性を得ることができる。
【0048】
上記回転部材としてのスプラインシャフト110、係合移動部材としてのスプラインスリーブ120、バネ受け部材130により、駆動源100の駆動力によりスライダ40に対し相対的に移動して反力バネ50の一端部51の規制位置を変化させる規制位置調整ユニットが構成されている。
また、駆動源100、規制位置調整ユニット(スプラインシャフト110、スプラインスリーブ120、バネ受け部材130)により、反力バネ50の付勢力を所望のタイミングで調整する反力調整機構が構成されている。
【0049】
すなわち、駆動源100により、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120が一方向に回転すると、スプラインスリーブ120がスライダ40に対して一方向(図3中の左向き)に相対的に移動して、反力バネ50の付勢力を弱める方向に一端部51の規制位置を移動させることができる。
例えば、ロック機構が作動した後の所望のタイミングで、例えば、ロック機構によりスライダ40が移動不能にロックされたことを検知するセンサ信号等に基づいて、反力調整機構を作動させて、反力バネ50の付勢力を弱めるように調整することができる。
これによれば、運転者がアクセルペダル22を踏み続けている場合、ロック状態を維持しつつ付加された反力が低減されるため、運転者へ加わる負荷を低減でき、疲労等を緩和することができる。
【0050】
一方、駆動源100により、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120が他方向に回転すると、スプラインスリーブ120がスライダ40に対して他方向(図3中の右向き)に相対的に移動して、反力バネ50の付勢力を強める方向に一端部51の規制位置を移動させることができる。
したがって、ロック機構が作動した後において、運転者がアクセルペダル22を踏み続けている場合でも、所定の制御信号に基づき、反力バネ50の付勢力を高める方向に、すなわち、ペダルアーム20を休止位置に向けて押し戻す方向に、反力調整機構を作動させることにより、ロック状態を容易に解除することができる。
例えば、アクセルペダル22からブレーキペダルへの踏変えを促すディスタンス制御を行う場合は、運転者がアクセルペダル22を踏んでいる状態で、所定の制御信号に基づき、ロック機構によりスライダ40をロック状態にして、速やかにスプラインスリーブ120を他方向に移動させ、反力バネ50の付勢力を大きくする。
そして、その付勢力が運転者の踏力を上回ることで、ペダルアーム20が休止位置に向けて押し戻されるか、あるいは運転者がアクセルペダル22から足を離してペダルアーム20が休止位置に戻ることで、所望のディスタンス制御を行うことができる。
【0051】
位置センサ140は、図1に示すように、ペダルアーム20の軸線L1の周りの領域において、ペダルアーム20の円筒部21及び第2ハウジング10bのセンサ収容部19に配置されている。
位置センサ140は、例えば非接触式の磁気式センサであり、ペダルアーム20の円筒部21の領域に設けられた磁性材料からなる環状のアマチャ、アマチャの内周面に結合された円弧状の一対の永久磁石、第2ハウジング10bに埋設された磁性材料からなる二つのステータ、二つのステータ間に配置された2つのホール素子等により形成されている。
また、その他に関連する部品として、端子、種々の電子部品が実装された回路基板等が設けられている。
そして、位置センサ140は、ペダルアーム20が回動することにより、磁束密度の変化をホール素子で検出して電圧信号として出力し、ペダルアーム20の角度位置を検出するようになっている。
【0052】
この実施形態に係るアクセルペダル装置によれば、構造の簡素化、低コスト化、装置全体の小型化等を達成しつつ、燃費改善等のためにアクセルペダル22の過踏み込みを抑制する反力付加機構等を備える構成において、運転者の負荷を低減して操作性を改善でき、運転状況に応じて適切な反力を付加することができ、ディスタンス制御等も行うことができる、応答性に優れたアクセルペダル装置を得ることができる。
【0053】
また、可動部材として所定方向Hに摺動自在に配置されたスライダ40、第1戻しバネ30及び反力バネ50として所定方向Hに伸縮する伸縮バネ、規制位置調整ユニットとして所定方向Hに伸長するスプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120を採用しているため、スライダ40、第1戻しバネ30、反力バネ50、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120が全て所定方向Hに配列されることになる。それ故に、部品を集約して配置することができ、装置の小型化に寄与する。
【0054】
次に、このアクセルペダル装置の動作について、図1図2図6(a),(b)ないし図9(a),(b)を参照しつつ説明する。
先ず、運転者がアクセルペダル22を踏み込まない休止位置にあるとき、第1戻しバネ30、反力バネ50、第2戻しバネ90の付勢力により、ペダルアーム20の上端部23が休止ストッパ17に当接して、ペダルアーム20は図1及び図2の実線で示す休止位置に停止している。
また、規制位置調整ユニットのスプラインスリーブ120及びバネ受け部材130もスライダ40に対して所定の規制位置に停止している。そして、スプラインスリーブ120及びバネ受け部材130は、スライダ40と一体的に移動するようになっている。
【0055】
この状態から、運転者がアクセルペダル22を踏み込むと、ペダルアーム20は、第1戻しバネ30、反力バネ50、第2戻しバネ90の付勢力に抗して、図2中の反時計回りに回転して最大踏込み位置(全開位置)まで至り、当接部25が第1ハウジング10aの全開ストッパ18に当接して停止する。
【0056】
このとき、図6(a)→図6(b)に示すように、内部スライダ61,62は、反力バネ50に抗して所定量移動し、スライダ40は、ハウジング10に対して所定量移動し、スプラインスリーブ120及びバネ受け部材130は、スライダ40と一体的に所定量移動する。
【0057】
一方、運転者が踏力を緩めると、ペダルアーム20は、踏み込み時の抵抗荷重(ペダル荷重)よりも小さい抵抗荷重(ペダル荷重)を運転者に及ぼしながら、第1戻しバネ30、反力バネ50、第2戻しバネ90の付勢力により休止位置に向けて回転し、上端部23が第1ハウジング10aの休止ストッパ17に当接して停止する。
尚、ロック機構が作動しない状態においては、図9(a)に示すようなヒステリシスをなす踏力特性が得られる。
【0058】
ところで、運転者がアクセルペダル22を踏み込む際に、例えば過踏み込みによる余分な発進エネルギを節約するべくその踏み込みを抑制させる場合、所望のタイミングで、例えば運転者がアクセルペダル22を踏み込む体勢にあることを検知するセンサ信号等に基づいて、駆動源80が一方向に回転すると、図7(a)に示すように、ロック部材70が時計回りに回転して、スライダ40をハウジング10に対して押圧し移動不能にロックする。
【0059】
すると、その後の踏み込み動作においては、第1戻しバネ30及び反力バネ50のうち反力バネ50のみが圧縮されるため、直列に接続された二つのバネ(第1戻しバネ30、反力バネ50)が作用する場合に比べてバネ定数が大きくなり、図9(a)の点線で示すように反力が増加する。
これにより、運転者の踏力に対する抵抗力(反力)が増加するため、過踏み込みが抑制され、急激な発進が防止されて、燃費が改善される。
【0060】
一方、運転者が踏力を緩めると、第1戻しバネ30の付勢力により、スライダ40が戻り方向へ移動し、スライダ40の移動に追従してロック部材70が反時計回りに回転し、ロック状態が解除される。
【0061】
そして、ペダルアーム20は、第1戻しバネ30、反力バネ50、第2戻しバネ90の付勢力により、踏み込み時の抵抗荷重(ペダル荷重)よりも小さい抵抗荷重(ペダル荷重)を運転者に及ぼしながら、休止位置に向けて回転し、上端部23が第1ハウジング10aの休止ストッパ17に当接して停止する。
【0062】
また、ロック機構が作動した後の所望のタイミングで、例えば、ロック機構によりスライダ40が移動不能にロックされたことを検知するセンサ信号等に基づいて、駆動源100が一方向へ回転すると、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120が一方向に回転し、スプラインスリーブ120がスライダ40に対して一方向(図7(b)中の左向き)に相対的に移動して、図7(b)に示すように、反力バネ50の付勢力を弱める方向に一端部51の規制位置を移動させる。
【0063】
これによれば、運転者がアクセルペダル22を踏み続けている場合でも、図9(b)の実線で示すように、ロック状態を維持しつつ付加された反力が低減されるため、運転者へ加わる負荷を低減でき、疲労等を緩和することができる。
【0064】
さらに、図8(a)に示すように、ロック機構が作動した後において、運転者がアクセルペダル22を踏み続けている場合には、ロックが解除されない。
そこで、所定の制御信号に基づき、駆動源100が他方向に回転すると、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120が他方向に回転し、スプラインスリーブ120がスライダ40に対して他方向(図8(a)中の右向き)に相対的に移動して、反力バネ50の付勢力を強める方向に一端部51の規制位置を移動させる。
【0065】
このように、運転者の踏力に逆らって、反力バネ50の付勢力を高める方向に、すなわち、ペダルアーム20を休止位置に向けて押し戻す方向に、反力調整機構を作動させることにより、ロック状態を容易に解除することができる。
例えば、アクセルペダル22からブレーキペダルへの踏変えを促すディスタンス制御を行う場合は、図8(b)に示すように、運転者がアクセルペダル22を踏んでいる状態で、所定の制御信号に基づき、ロック機構によりロック状態にして、速やかにスプラインスリーブ120を他方向に移動させ、反力バネ50の付勢力を大きくする。
そして、その付勢力が運転者の踏力を上回ることで、ペダルアーム20が休止位置に向けて押し戻されるか、あるいは運転者がアクセルペダル22から足を離してペダルアーム20が休止位置に戻ることで、所望のディスタンス制御を行うことができる。
【0066】
上記実施形態においては、反力付加機構(可動部材40、反力バネ50、ロック機構)を備えることを前提とし、ヒステリシス発生機構を備えた構成において、反力調整機構を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ヒステリシス発生機構を廃止した構成において、反力調整機構を採用してもよい。
この場合、内部スライダ61,62に替えて、反力バネ50の他端部52とペダルアーム20の上端部23の間に平板状の可動スペーサを介在させるか又は上端部23を反力バネ50の他端部52に直接当接させてもよい。
【0067】
上記実施形態においては、ペダルアーム20の上端部23を内部スライダ61に対して離脱可能に係合させ、第2戻しバネ90を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、スライダ40及び内部スライダ61,62の機能が保証される限り、上端部23を内部スライダ61に連結し、第2戻しバネ90を廃止した構成において、反力調整機構を採用してもよい。
【0068】
上記実施形態においては、ロック機構として、一方向のみに回転駆動力を及ぼす駆動源80、一方向に回転してロック作用を及ぼすロック部材70を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、一方向への回転により楔作用を生じるローディングカム機構を採用し、ロック部材としてボールやローラ等を採用してもよい。
また、駆動源として、直線駆動力を及ぼすアクチュエータ等を採用し、ロック部材として楔作用を生じる楔部材を往復動させ、一方向において楔作用を生じる構成としてもよい。
【0069】
上記実施形態においては、反力調整機構として、回転駆動力を及ぼす駆動源100、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120を含む規制位置調整ユニットを含む構成を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、反力バネ50の付勢力を所望のタイミングで調整できるものであれば、駆動源として直線的な駆動力を及ぼすソレノイド等のアクチュエータ、このアクチュエータに連結されて非調整時に可動部材と一体的に移動しかつ調整時にのみ可動部材と相対的に移動して反力バネ50の規制位置を変化させるロッド等を備えた反力調整機構を採用してもよい。
【0070】
上記実施形態においては、ロック機構の駆動源として駆動源80を採用し、反力調整機構の駆動源として駆動源100を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ロック機構と反力調整機構に共通の一つの駆動源を採用してもよい。
【0071】
上記実施形態においては、規制位置調整ユニットを構成する回転部材及び係合移動部材として、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、駆動源により回転させられるものであれば、その他の回転部材を採用してもよく、又、回転部材の回転力のみが伝達されてその軸線方向に相対的に移動自在でかつ可動部材との係合関係により可動部材に対して相対的に移動して反力バネの一端部の規制位置を移動させるものであれば、その他の係合移動部材を採用してもよい。
【0072】
上記実施形態においては、反力調整機構として、スプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120の他に、バネ受け部材130を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、バネ受け部材130を廃止して、反力バネ50の一端部51をスプラインスリーブ120の端部123で直接受ける構成を採用してもよい。
【0073】
上記実施形態においては、可動部材として所定方向Hに摺動するスライダ40、第1戻しバネ及び反力バネとして所定方向Hに伸縮する第1戻しバネ30及び反力バネ50、規制位置調整ユニットとして所定方向Hに伸長するスプラインシャフト110及びスプラインスリーブ120を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、直線運動を円弧運動に変更した捩りバネ及び規制位置調整ユニット等を採用してもよい。
【0074】
以上述べたように、本発明のアクセルペダル装置は、構造の簡素化、低コスト化、装置全体の小型化等を達成しつつ、燃費改善等のためにアクセルペダルの過踏み込みを抑制する反力を付加する機構等を備える構成において、運転者の操作性を改善でき、運転状況に応じて適切な反力を付加することができ、ディスタンス制御等も行うことができる、応答性に優れたアクセルペダル装置を得ることができるため、自動車等に適用できるのは勿論のこと、二輪車、その他の車両等においても有用である。
【符号の説明】
【0075】
L1 軸線
H 所定方向
10 ハウジング
10a 第1ハウジング
10b 第2ハウジング
11 支軸
12 受け部
13 凹部
13a 摺動面
14 凹部
14a 内壁面
15a,15b 固定部
16 受け部
17 休止ストッパ
18 全開ストッパ
19 センサ収容部
20 ペダルアーム
21 円筒部
22 アクセルペダル
23 上端部
24 受け部
30 第1戻しバネ
40 スライダ(可動部材)
41 端面壁
42,43 内壁面
44,45 外壁面
46 雌ネジ
50 反力バネ
51 一端部
52 他端部
61,62 内部スライダ(ヒステリシス発生機構)
61a,62a 傾斜面
61b 係合面
62b 受け面
70 ロック部材(ロック機構)
72 湾曲面部
80 駆動源(ロック機構)
90 第2戻しバネ
100 駆動源(反力調整機構)
110 スプラインシャフト(回転部材、規制位置調整ユニット、反力調整機構)
111 複数の凸条部
120 スプラインスリーブ(係合移動部材、規制位置調整ユニット、反力調整機構)
121 複数の凹条部
122 雄ネジ
123 端部
130 バネ受け部材(規制位置調整ユニット、反力調整機構)
140 位置センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9