(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753721
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】金属−セラミックス回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20200831BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20200831BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20200831BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20200831BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L25/04 C
H01L23/12 D
H05K1/02 E
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-149102(P2016-149102)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-18992(P2018-18992A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】島津 昌弘
【審査官】
河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−195309(JP,A)
【文献】
特開2012−004534(JP,A)
【文献】
特開平10−242327(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/034078(WO,A1)
【文献】
特開2014−130989(JP,A)
【文献】
特開2015−053414(JP,A)
【文献】
特開2005−213107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 23/12
H01L 25/07
H01L 25/18
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に純度99質量%以上のアルミニウムからなる金属回路板の一方の面が直接接合し、金属回路板の他方の面に厚さ17μm以上の純度99質量%以上のニッケルからなるニッケルめっき皮膜が形成されていることを特徴とする、金属−セラミックス回路基板。
【請求項2】
前記ニッケルめっき皮膜の厚さが17〜100μmであることを特徴とする、請求項1に記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項3】
前記ニッケルめっき皮膜の厚さが20〜60μmであることを特徴とする、請求項1に記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項4】
前記セラミックス基板の他方の面に純度99質量%以上のアルミニウムからなる金属ベース板の一方の面が直接接合していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項5】
前記ニッケルめっき皮膜上に半田層が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項6】
前記ニッケルめっき皮膜上に前記半田層を介して厚さ100μm以下のチップ部品が取り付けられていることを特徴とする、請求項5に記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項7】
前記金属回路板の他方の面の算術平均粗さRaが0.5〜2μmであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の金属−セラミックス回路基板。
【請求項8】
セラミックス基板の一方の面に純度99質量%以上のアルミニウムからなる回路用金属板の一方の面を直接接合する工程と、セラミックス基板の一方の面に直接接合した回路用金属板の表面の略全面を覆うように第1の電着レジストを形成する工程と、第1の電着レジストの一部を除去して回路用金属板の一部を露出させ、この回路用金属板の露出部分に厚さ17μm以上の純度99質量%以上のニッケルからなるニッケルめっき皮膜を形成する工程と、このニッケルめっき皮膜を覆うように第2の電着レジストを形成する工程と、第1および第2の電着レジストの不要部分を除去して回路用金属板の不要部分を露出させ、この回路用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属回路板を形成する工程と、第1および第2の電着レジストを除去する工程とを備えたことを特徴とする、金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記セラミックス基板の一方の面に回路用金属板の一方の面を直接接合する際に、前記セラミックス基板の他方の面に純度99質量%以上のアルミニウムからなるベース用金属板を直接接合し、前記回路用金属板の表面の略全面を覆うように第1のレジストを形成する際に、ベース用金属板の表面の略全面を覆うように前記第1のレジストを形成し、前記第1および第2の電着レジストの不要部分を除去して回路用金属板の不要部分を露出させる際に、ベース用金属板の不要部分を露出させ、前記回路用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属回路板を形成する際に、ベース用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属ベース板を形成することを特徴とする、請求項8に記載の金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックス基板と前記回路用金属板および前記ベース用金属板との直接接合は、前記セラミックス基板を収容した鋳型内に金属溶湯を注湯した後、鋳型を冷却して溶湯を凝固させることによって行われることを特徴とする、請求項9に記載の金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1および第2の先着レジストを除去した後に、前記Niめっき皮膜上に厚さ100μm以下のチップ部品を半田付けすることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれかに記載の金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記セラミックス基板の一方の面に前記回路用金属板の一方の面を直接接合する工程の後、前記第1の電着レジストを形成する工程の前に、前記回路用金属板の他方の面の算術平均粗さRaを0.5〜2μmに調整する工程を備えたことを特徴とする、請求項8乃至11のいずれかに記載の金属−セラミックス回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板の一方の面に金属回路板が接合した金属−セラミックス回路基板およびその製造方法に関し、特に、パワーモジュール用などの大電力素子搭載用の金属−セラミックス回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電力を制御するために、パワーモジュールが使用されている。このようなパワーモジュール用の絶縁基板として、セラミックス基板の一方の面に接合された金属回路板上のチップ部品や端子の半田付けが必要な部分などにめっきが施された金属−セラミックス回路基板が使用されている。
【0003】
このようなパワーモジュール用の金属−セラミックス回路基板に使用する金属−セラミックス接合部材として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属部材の全面または一部の面に1.0μmより厚く且つ15.0μm以下の厚さの電気ニッケルめっきが施され、ヒートサイクルが繰り返し加えられても半田クラックの発生やチップの破損を防止することができる、金属−セラミックス接合部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−288716号公報(段落番号0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のパワーモジュール用の金属−セラミックス回路基板板では、基板上に搭載する半導体チップなどの電子部品の高出力化や高密度実装化により発熱量が増大しており、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返し加えられても半田クラックの発生やチップの破損を防止できるようにすることが望まれている。
【0006】
しかし、特許文献1の金属−セラミックス接合部材などの従来の金属−セラミックス接合部材をパワーモジュール用の金属−セラミックス回路基板に使用して、厚さ100μm以下の小型で高性能な薄型チップを基板に半田付けした場合、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返されると、半田クラックが発生したり、チップが破損するおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返し加えられても半田クラックの発生やチップの破損を防止することができる、金属−セラミックス回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、セラミックス基板の一方の面に金属回路板の一方の面を直接接合し、金属回路板の他方の面に厚さ17μm以上のニッケルめっき皮膜を形成することにより、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返し加えられても半田クラックの発生やチップの破損を防止することができる、金属−セラミックス回路基板を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による金属−セラミックス回路基板は、セラミックス基板の一方の面に金属回路板の一方の面が直接接合し、金属回路板の他方の面に厚さ17μm以上のニッケルめっき皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この金属−セラミックス回路基板において、ニッケルめっき皮膜の厚さが、17〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがさらに好ましい。また、ニッケルめっき皮膜が純度99質量%以上のニッケルからなるのが好ましく、金属回路板が純度99質量%以上のアルミニウムからなるのが好ましい。また、セラミックス基板の他方の面に金属ベース板の一方の面を直接接合してもよい。この場合、金属ベース板が純度99質量%以上のアルミニウムからなるのが好ましい。また、ニッケルめっき皮膜上に半田層を形成してもよい。この場合、ニッケルめっき皮膜上に半田層を介してチップ部品を取り付けてもよい。また、金属回路板の他方の面の算術平均粗さRaが0.5〜2μmであるのが好ましい。
【0011】
本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に回路用金属板の一方の面を直接接合する工程と、セラミックス基板の一方の面に直接接合した回路用金属板の表面の略全面を覆うように第1の電着レジストを形成する工程と、第1の電着レジストの一部を除去して回路用金属板の一部を露出させ、この回路用金属板の露出部分に厚さ17μm以上のニッケルめっき皮膜を形成する工程と、このニッケルめっき皮膜を覆うように第2の電着レジストを形成する工程と、第1および第2の電着レジストの不要部分を除去して回路用金属板の不要部分を露出させ、この回路用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属回路板を形成する工程と、第1および第2の電着レジストを除去する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この金属−セラミックス回路基板の製造方法において、セラミックス基板の一方の面に回路用金属板の一方の面を直接接合する際に、セラミックス基板の他方の面にベース用金属板を直接接合し、回路用金属板の表面の略全面を覆うように第1のレジストを形成する際に、ベース用金属板の表面の略全面を覆うように第1のレジストを形成し、第1および第2の電着レジストの不要部分を除去して回路用金属板の不要部分を露出させる際に、ベース用金属板の不要部分を露出させ、回路用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属回路板を形成する際に、ベース用金属板の不要部分をエッチングにより除去して金属ベース板を形成してもよい。この場合、セラミックス基板と回路用金属板およびベース用金属板との直接接合は、セラミックス基板を収容した鋳型内に金属溶湯を注湯した後、鋳型を冷却して溶湯を凝固させることによって行われるのが好ましい。ニッケルめっき皮膜が純度99質量%以上のニッケルからなるのが好ましく、金属回路板が純度99質量%以上のアルミニウムからなるのが好ましい。また、第1および第2の先着レジストを除去した後に、Niめっき皮膜上にチップ部品を半田付けするのが好ましい。また、セラミックス基板の一方の面に回路用金属板の一方の面を直接接合した後、第1の電着レジストを形成する前に、回路用金属板の他方の面の算術平均粗さRaを0.5〜2μmに調整するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明よれば、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返し加えられても半田クラックの発生やチップの破損を防止することができる、金属−セラミックス回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による金属−セラミックス回路基板の実施の形態を示す断面図である。
【
図2A】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、セラミックス基板に回路用金属板およびベース用金属板を接合する工程を示す断面図である。
【
図2B】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、回路用金属板とベース用金属板の表面に第1の電着レジストを形成する工程を示す断面図である。
【
図2C】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、第1の電着レジストの一部を除去して回路用金属板の一部を露出させる工程を示す断面図である。
【
図2D】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、回路用金属板の露出部分にNiめっき皮膜を形成する工程を示す断面図である。
【
図2E】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、Niめっき皮膜を覆うように第2の電着レジストを形成する工程を示す断面図である。
【
図2F】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、第1および第2の電着レジストの不要部分を除去する工程を示す断面図である。
【
図2G】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、エッチング処理により、回路用金属板とベース用金属板の不要部分を除去して、金属回路板と金属ベース板を形成する工程を示す断面図である。
【
図2H】本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態において、第1および第2の電着レジストを剥離する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による金属−セラミックス回路基板およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の金属−セラミックス回路基板では、セラミックス基板10の一方の面に金属回路板12の一方の面が直接接合し、金属回路板12の他方の面に厚さ17μm以上(好ましくは17〜100μm、さらに好ましくは20〜60μm)のニッケルめっき皮膜18が形成されている。ニッケルめっき皮膜18の厚さが17μm未満であると、厚さ100μm以下の小型で高性能な薄型チップを基板に半田付けして、従来よりも厳しい条件のヒートサイクルが繰り返されると、ニッケルめっき皮膜18の表面(の金属回路板12の結晶粒界に対応する部分)に大きなしわのような変形(段差)が生じて、半田クラックが発生したり、チップが破損するおそれがある。一方、ニッケルめっき皮膜18が100μmより厚くなると、ニッケルめっき皮膜18を形成するコストが高くなる。また、セラミックス基板10の他方の面に金属ベース板14の一方の面を直接接合してもよい。また、ニッケルめっき皮膜18上には、半田層22介してチップ部品24を取り付けることができる。
【0017】
セラミックス基板10として、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素などを主成分とするセラミックス基板を使用することができ、放熱性が求められる場合には窒化アルミニウム基板を使用するのが好ましく、強度が求められる場合には窒化珪素基板を使用するのが好ましい。
【0018】
ニッケルめっき皮膜18は、純度99質量%以上のニッケルからなるのが好ましく、純度99.5質量%以上のニッケルからなるのがさらに好ましい。このようなニッケルめっき皮膜18は、電気めっきで形成することができるので、無電解Ni−Pめっき皮膜を形成する場合と比べて、低コストで形成することができる。また、無電解Ni−Pめっき皮膜(例えば、2質量%以上のPを含む無電解Ni−Pめっき皮膜)の場合には、ヒートサイクルによってPがリッチな層が形成されて、めっき皮膜が剥離し易くなるが、純度99質量%以上のニッケルからなるニッケルめっき皮膜18は、Ni−P合金ではなく、Pをほとんど含まないので、そのようなめっき皮膜の剥離が生じ難くなる。
【0019】
金属回路板12と金属ベース板14は、純度99質量%以上のアルミニウムからなるのが好ましく、純度99.7質量%以上のアルミニウムからなるのがさらに好ましく、純度99.9質量%以上のアルミニウムからなるのが最も好ましい。このように(硬度が低く柔らかい)純度99質量%以上のアルミニウムからなる金属回路板12および金属ベース板14をセラミックス基板10に直接接合すれば、接合時や接合後にヒートサイクルが繰り返し加えられたときに、熱膨張差による応力の発生によりセラミックス基板10にクラックが発生するのを抑制することができ、金属−セラミックス回路基板の耐ヒートサイクル性を向上させることができる。なお、純度99質量%以上のアルミニウムからなる金属回路板12および金属ベース板14のビッカース硬度Hvは、20〜40程度であるのが好ましい。
【0020】
金属ベース板14は、放熱板として使用することができ、他方の面(裏面)に多数のピンやフィンが一体に形成された放熱板でもよい。
【0021】
本発明による金属−セラミックス回路基板の実施の形態は、
図1および
図2A〜
図2Hに示すように、本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態によって製造することができる。
【0022】
本発明による金属−セラミックス回路基板の製造方法の実施の形態では、まず、
図2Aに示すように、セラミックス基板10の一方の面に回路用金属板12’を直接接合するとともに、他方の面にベース用金属板14’を直接接合して、金属−セラミックス接合基板を作製する。セラミックス基板10と回路用金属板12’およびベース用金属板14’との直接接合は、セラミックス基板10を収容した鋳型内にアルミニウム溶湯を注湯した後、鋳型を冷却して溶湯を凝固させる、所謂溶湯接合法によって行うことができる。
【0023】
次に、
図2Bに示すように、回路用金属板12’とベース用金属板14’の(露出している)表面の略全面を覆うように第1の電着レジスト16を形成する。この第1の電着レジスト16の形成は、金属−セラミックス接合基板を電着槽内の電着フォトレジスト液に浸漬し、回路用金属板12’とベース用金属板14’に取り付けられた(図示しない)電極間に電圧を印加することにより、回路用金属板12’とベース用金属板14’の(露出している)表面の略全面を覆うように電着レジスト皮膜を形成し、乾燥した後、紫外線により露光して硬化させることにより形成することができる。なお、第1の電着レジスト16を形成する前に、バフ研磨などにより、回路用金属板12’とベース用金属板14’の表面の算術平均粗さRaが0.5〜2μm程度になるように調整するのが好ましい。
【0024】
次に、
図2Cに示すように、第1の電着レジスト16のうち、回路用金属板12’の表面に形成された第1のレジスト16の一部を(レーザー照射などにより)除去して回路用金属板12’の一部を露出させる。
【0025】
次に、回路用金属板12’の露出部分にNiめっき液を接触させて電気めっきを行うことにより、
図2Dに示すように、回路用金属板12’の露出部分にNiめっき皮膜18を形成する。
【0026】
次に、
図2Eに示すように、Niめっき皮膜18を覆うように第2の電着レジスト20を形成する。この第2の電着レジスト20の形成は、第1の電着レジスト16の形成方法と同様の方法により行うことができる。
【0027】
次に、
図2Fに示すように、回路用金属板12’の表面に形成された電着レジスト(第1の電着レジスト16と第2の電着レジスト20)のうち、Niめっき皮膜18を覆う所定の部分以外の電着レジストの不要部分と、ベース用金属板14’の表面に形成された電着レジスト(第1の電着レジスト16)のうち、所定の部分以外の電着レジストの不要部分を(レーザー照射などにより)除去して回路用金属板12’とベース用金属板14’の不要部分を露出させる。
【0028】
次に、
図2Gに示すように、エッチング処理を行うことにより、回路用金属板12’の不要部分を除去して所望の回路パターンの金属回路板12を形成するとともに、ベース用金属板14’の不要部分を除去して金属ベース板14を形成する。なお、所謂溶湯接合法によってセラミックス基板10と回路用金属板12’およびベース用金属板14’とを直接接合した場合には、回路用金属板12’およびベース用金属板14’の不要部分として、(図示しない)湯道の部分も除去する。
【0029】
次に、
図2Hに示すように、レジスト剥離液により電着レジスト(第1の電着レジスト16と第2の電着レジスト20)を剥離して、セラミックス基板10の一方の面に所望の回路パターンの金属回路板12が直接接合するとともに他方の面に金属ベース板14が直接接合した金属−セラミックス回路基板を作製する。
【0030】
このようにして作製した金属−セラミックス回路基板の金属回路板12上のNiめっき皮膜18上には、
図1に示すように、半田層22を介してチップ部品24を半田付けすることができる。なお、第1の電着レジスト16の一部を除去した後にニッケルめっき皮膜18を形成しているので、ニッケルめっき皮膜18を金属回路板12の一部(好ましくはチップ部品24を半田付けするための半田層22よりわずかに大きい部分)に形成することができ、半田濡れ性が悪いアルミニウムからなる金属回路板12でも、ニッケルめっき皮膜18上に精度良くチップ部品24を半田付けすることができる。
【0031】
なお、チップ部品24の半田付けに使用する半田として、通常のSn/Pb系の半田を使用してもよいが、Pbフリー半田(実質的に鉛を含まない半田)を使用するのが好ましい。Pbフリー半田には、Sn/Ag系やSn/Ag/Cu系などの半田があり、いずれも従来の半田より融点が高い。Pbフリー半田は、Snリッチの組成であり、このSnがニッケルめっき皮膜18内に拡散され、金属回路板12のアルミニウムと反応することによって脆化層が形成されて、ニッケルめっき皮膜18の剥離の原因になり易く、また、ヒートサイクルが繰り返し加えられると、アルミニウムからなる金属回路板12の結晶粒界に対応する部分に大きなしわのような変形(段差)が生じて、半田クラックの発生やチップの破損の原因にもなり易いが、本発明による金属−セラミックス回路基板の実施の形態では、ニッケルめっき皮膜18が非常に厚くなっているため、このようなSnの拡散を防止することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明による金属−セラミックス回路基板およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0033】
[実施例1]
セラミックス基板として100mm×50mm×0.6mmの大きさの略矩形の窒化アルミニウム基板を鋳型内に収容した後、鋳型内を窒素雰囲気にした状態で加熱し、アルミニウム溶湯をその表面の酸化膜を取り除きながら鋳型内に注湯し、その後、鋳型を冷却して溶湯を凝固させることによって、セラミックス基板の一方の面に90mm×40mm×0.8mmの大きさの略矩形の回路用金属板が直接接合するとともに、セラミックス基板の他方の面に90mm×40mm×0.6mmの大きさの略矩形のベース用金属板が直接接合した金属−セラミックス接合基板を作製した。なお、このようにして作製した金属−セラミックス接合基板の金属板の表面の一部(0.5gの部分)を削って、試料としてビーカーに入れ、JIS H1307の「アルミニウム及びアルミニウム合金の誘導結合プラズマ発光分光分析方法」に従って、塩酸(1+1)15mLを加えて加熱分解し、これに過酸化水素水1mLを加えて加熱して試料を完全に溶解し、ICP発光分光分析により定量分析したところ、金属板のアルミニウムの純度は99.9質量%以上であった。
【0034】
このようにして作製した金属−セラミックス接合基板の回路用金属板およびベース用金属板の表面をバフ研磨して、その表面の算術平均粗さRaを1.0に調整した後、金属−セラミックス接合基板を電着槽内の電着フォトレジスト液に浸漬し、回路用金属板とベース用金属板に取り付けた電極間に120Vの電圧を印加することにより、回路用金属板とベース用金属板の(露出している)表面の略全面を覆うように電着レジスト皮膜を形成し、80℃で30分間乾燥した後、紫外線により露光して硬化させることにより、厚さ40μmの第1の電着レジストを形成した。
【0035】
このようにして形成された第1の電着レジストのうち、回路用金属板の表面に形成された第1の電着レジストの15mm×15mmの大きさの略矩形の部分にレーザー照射することにより、その部分の電着レジストを除去して回路用金属板を露出させた後、その露出部分をワット浴からなる液温50℃のNiめっき液に接触させて電流密度20A/dm
2で電気めっきを行うことにより、回路用金属板の露出部分にNiめっき皮膜を形成した。なお、このようにして形成したNiめっき皮膜の中央部を切断して、Niめっき皮膜の上面に略垂直な断面を露出させ、この断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察して、この断面上のNiめっき皮膜の略中央部分の厚さを測定したところ、18μmであった。また、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)により、Niめっき皮膜の表面に電子を照射して、JIS K0189の「マイクロビーム分析−電子プローブマイクロ分析−波長分散X線分光法のパラメータの決定方法」に従って、Niめっき皮膜の組成を分析したところ、Niめっき皮膜中のNiは99質量%以上であった。
【0036】
このようにしてNiめっき皮膜を形成した金属−セラミックス接合基板のNiめっき皮膜を覆うように、第1の電着レジストの形成方法と同様の方法により、厚さ40μmの第2の電着レジストを形成した。
【0037】
次に、回路用金属板の表面に形成された電着レジスト(第1および第2の電着レジスト)のうち、Niめっき皮膜とその周りの部分を覆う85mm×35mmの大きさの略矩形の分以外の電着レジストの不要部分と、ベース用金属板の表面に形成された電着レジストのうち、85mm×35mmの大きさの略矩形の部分以外の電着レジストの不要部分にレーザー照射することにより、その電着レジストの不要部分を除去して回路用金属板とベース用金属板の不要部分を露出させた後、塩化第二鉄溶液によってエッチング処理を行うことにより、回路用金属板の不要部分を除去して所望の回路パターンの金属回路板を形成するとともに、ベース用金属板の不要部分を除去して金属ベース板を形成し、その後、乳酸を主成分とするレジスト剥離液により電着レジストを剥離して、セラミックス基板の一方の面に所望の回路パターンの金属回路板が直接接合するとともに他方の面に金属ベース板が直接接合した金属−セラミックス回路基板を作製した。
【0038】
このようにして作製した金属−セラミックス回路基板を(絶縁性流体として)パーフルオロポリエーテル(PFPE)に浸漬して−40℃で4分間保持した後に、室温で0.5分間保持し、その後、PFPEに浸漬して125℃で4分間保持した後に、室温で0.5分間保持するヒートサイクルを1500サイクル繰り返すヒートサイクル試験(液相ヒートサイクル試験)を行った後、レーザー顕微鏡のコンター図(等高線図)からNiめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は40μmであり、表面の変形が比較的小さかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。なお、上記のヒートサイクル試験後にNiめっき皮膜の表面の最大の段差が50μm以下(好ましくは40μm以下)であれば、金属−セラミックス回路基板の金属回路板のNiめっき皮膜上にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)チップのような薄い半導体チップをPbレス半田により半田付けした場合に、上記のヒートサイクル試験を行っても、チップの割れなどの不具合を防止することができる。
【0039】
また、作製した金属−セラミックス回路基板のNiめっき皮膜上にSiチップをPbレス半田により半田付けして、上記と同様のヒートサイクル試験を行った後、Siチップの破損の有無を確認したところ、Siチップの破損は確認されなかった。
【0040】
[実施例2]
バフ研磨により回路用金属板とベース用金属板の表面の算術平均粗さRaを1.2μmに調整し、Niめっき皮膜の厚さを30μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は32μmであり、表面の変形が比較的小さかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。また、作製した金属−セラミックス回路基板のNiめっき皮膜上にSiチップをPbレス半田により半田付けして、上記と同様のヒートサイクル試験を行った後、Siチップの破損の有無を確認したところ、Siチップの破損は確認されなかった。
【0041】
[実施例3]
Niめっき皮膜の厚さを50μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は18μmであり、表面の変形が比較的小さかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。また、作製した金属−セラミックス回路基板のNiめっき皮膜上にSiチップをPbレス半田により半田付けして、上記と同様のヒートサイクル試験を行った後、Siチップの破損の有無を確認したところ、Siチップの破損は確認されなかった。
【0042】
[実施例4]
バフ研磨により回路用金属板とベース用金属板の表面の算術平均粗さRaを1.0μmに調整し、電気めっきの際の電流密度を60A/dm
2とした以外は、実施例2と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は30μmであり、表面の変形が比較的小さかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。
【0043】
[実施例5]
バフ研磨により回路用金属板とベース用金属板の表面の算術平均粗さRaを1.4μmに調整し、電気めっきの際の電流密度を100A/dm
2とした以外は、実施例2と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は28μmであり、表面の変形が比較的小さかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。
【0044】
[比較例1]
Niめっき皮膜の厚さを5μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は60μmであり、表面の変形が大きかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。また、作製した金属−セラミックス回路基板のNiめっき皮膜上にSiチップをPbレス半田により半田付けして、上記と同様のヒートサイクル試験を行った後、Siチップの破損の有無を確認したところ、Siチップの破損が確認された。
【0045】
[比較例2]
Niめっき皮膜の厚さを10μmとした以外は、実施例1と同様の方法により、金属−セラミックス回路基板を作製し、ヒートサイクル試験を行った後に、Niめっき皮膜の表面の最大の段差を測定したところ、最大の段差は58μmであり、表面の変形が大きかった。この最大の段差の部分は、アルミニウムの粒界上のNiめっき皮膜の一部であった。また、作製した金属−セラミックス回路基板のNiめっき皮膜上にSiチップをPbレス半田により半田付けして、上記と同様のヒートサイクル試験を行った後、Siチップの破損の有無を確認したところ、Siチップの破損が確認された。
【符号の説明】
【0046】
10 セラミックス基板
12 金属回路板
12’ 回路用金属板
14 金属ベース板
14’ ベース用金属板
16 第1の電着レジスト
18 Niめっき皮膜
20 第2の電着レジスト
22 半田層
24 チップ部品