(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音制御手段により、前記一言語だけの案内メッセージと、前記一言語および前記他言語の案内メッセージとは、予め選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の音案内装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した交通信号に関する音声案内は、特許文献1にも例示されている通り、あくまで日本語のみによる案内を意図するものであった。ところが、昨今の外国人の旅行者や居住者の増加に伴って、単一の言語(日本語)による案内では、外国人歩行者を支援するには不十分であり、複数言語による案内が望まれている。
【0005】
そこで、音声案内を日本語だけでなく外国語も加えて、複数言語による音声案内を行うようにする場合、通常は日本語での音声案内後に続けて外国語での音声案内を行うことになる。しかし、音声案内の再生時間は、例えば灯色(青信号)の秒数に限定されるため、
図4(b)に示すように、外国語での音声案内中に灯色が変わると、音声案内が途中で打ち切られてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、複数言語により音声案内を行う場合でも、予め限定された再生時間内に収まる範囲で必要なメッセージを全て出力することができる音案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]各種情報を音により案内する音案内装置(100)において、
情報別に定められた案内メッセージを音声として出力する音発生手段(60)と、
前記音発生手段(60)における音声の出力を制御する音制御手段(101,105)とを備え、
前記案内メッセージは、複数言語で用意され、かつ複数言語のうち何れか一言語では、再生時間の長さが予め限られた所定時間内となる標準パターンと、該標準パターン
の内容の一部を削除して、再生時間
を短くした短縮パターン
とを含み、前記一言語以外の他言語では、前記短縮パターンの再生時間と合わせた再生時間の合計が、前記所定時間内に収まる再生時間に設定され、
前記音制御手段(101,105)により、前記一言語だけの案内メッセージが選択された場合、前記標準パターンの案内メッセージが出力され、前記一言語および前記他言語の案内メッセージが選択された場合、前記短縮パターンの案内メッセージが出力され、続けて前記他言語の案内メッセージが順次出力されることを特徴とする音案内装置(100)。
【0008】
[2]前記音制御手段(101,105)により、前記一言語だけの案内メッセージと、前記一言語および前記他言語の案内メッセージとは、予め選択可能であることを特徴とする前記[1]に記載の音案内装置(100)。
【0009】
[3]前記一言語以外の他言語の案内メッセージには、さらに複数言語の案内メッセージが用意されており、
前記音制御手段(101,105)により、前記一言語以外の複数言語のうち何れか一つを他言語として選択可能であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の音案内装置(100)。
【0010】
[4]各種情報ごとの前記案内メッセージには、情報の重要度に応じて優先順位が定められており、
複数の前記案内メッセージの出力が重複した場合には、前記音制御手段(101,105)により、優先順位の高い前記案内メッセージが選択され、前記音発生手段(60)から出力されることを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の音案内装置(100)。
【0011】
[5]前記音発生手段(60)と、前記音制御手段(101,105)とは、歩行者用信号灯器に付設される押ボタン箱(10)に組み込まれており、
前記案内メッセージは、前記歩行者用信号灯器の作動に関する情報を音声により案内するものであることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の音案内装置(100)。
【0012】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の音案内装置(100)によれば、音発生手段(60)により、情報別に定められた案内メッセージが音声として出力される。これにより、各種情報を聴覚的に案内して利用者を支援することができる。
【0013】
案内メッセージは、一言語(例えば日本語)に限られるものではなく、複数言語で用意されている。そのため、一言語が分かる利用者だけでなく、他言語しか分からない利用者に対しても、音声案内による便宜を図ることができる。ここで一言語の案内メッセージには、再生時間が長い標準パターンの他、
標準パターンの内容の一部を削除して、再生時間
を短
くした短縮パターンも含まれている。
【0014】
一般に案内メッセージの再生時間は、案内する情報自体の量や状況別に案内可能な時間等に応じて定められるが、その最大値を予め所定時間とする。よって、一言語における標準パターンの再生時間は、所定時間を越えない範囲で定めれば良い。一方、短縮パターンは、所定時間内に他言語の案内メッセージも含ませる関係上、余分な内容を極力省いて必要最低限の再生時間とする。
【0015】
そして、他言語の案内メッセージは、一言語の短縮パターンの再生時間と合わせた再生時間の合計が、前記所定時間内に収まる再生時間に設定する。これにより、限られた所定時間を越えることなく、一言語および他言語による音声案内が可能となる。すなわち、他言語の再生時間は、一言語の後に続けても所定時間内に収まる範囲で設定されるため、他言語の案内メッセージが時間不足で途中で打ち切られることはない。
【0016】
前記[2]に記載の音案内装置(100)によれば、前記音制御手段(101,105)において、一言語だけの案内メッセージと、一言語および他言語の案内メッセージとを、予め選択できる。これにより、案内メッセージの出力形態を、一言語に限るか、複数言語の組み合わせで行うかを、任意に決めることができる。
【0017】
前記[3]に記載の音案内装置(100)によれば、一言語以外の他言語の案内メッセージには、さらに複数言語の案内メッセージが用意されている。よって、音声案内は特定の2カ国語に限られることなく、より多くの言語の中から設置状況や地域に応じて選択した言語による音声案内が可能となる。なお、所定時間内に収まる範囲であれば、2カ国語のみならず、3カ国以上の言語による音声案内を可能としても良い。
【0018】
前記[4]に記載の音案内装置(100)によれば、複数の案内メッセージの出力が重複した場合には、音制御手段(101,105)により、優先順位の高い案内メッセージが選択されて音発生手段(60)から出力される。これにより、複数の音声案内が同時に出力されて、何れの案内も聞き取り難い状況となることを避けることができる。
【0019】
前記[5]に記載の音案内装置(100)によれば、本装置の基本的な構成要素は、押ボタン箱(10)に組み込まれる。従って、歩行者用信号灯器で歩行者支援を行う際、音発生手段(60)や音制御手段(101,105)を別途設置する必要なく、押ボタン箱(10)と併せてまとめて設置することができる。この場合の案内メッセージは、歩行者用信号灯器の作動に関する情報を音声により案内するものとなり、特に、視覚障がい者の歩行時における安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る音案内装置によれば、複数言語により音声案内を行う場合でも、予め限定された再生時間内に収まる範囲で必要なメッセージを全て出力することができ、確実に複数言語で利用者を聴覚的に支援することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜
図6は、本発明の実施の形態を示している。
本実施の形態に係る音案内装置100は、各種情報を音により案内するものである。以下、音案内装置100を、歩行者用信号灯器に付設される押ボタン箱10に組み込んだ例について説明する。
【0023】
押ボタン箱10は、歩行者用信号灯器の作動を指示するものである。図示省略したが歩行者用信号灯器は、例えば横断歩道の両端等に設置され、付帯する交通信号器に連動して灯色が変化する。一般に歩行者用信号灯器は、青色点灯(青信号)で歩行者の通行を許可し、青色点滅(青点滅信号)で灯色変化のタイミングを予告し、赤色点灯(赤信号)で歩行者の通行を禁止する。なお、歩行者用信号灯器の灯色変化のタイミング等は、外部にある交通信号制御機により制御される。
【0024】
音案内装置100は、押ボタン箱10に一体に組み込まれている。
図1に示すように、音案内装置100は、音を出力する音発生手段であるスピーカー60と、スピーカー60による音の出力を制御する音制御手段である制御部101および音響出力回路105とを備えている。ここで制御部101は、音の出力の制御のみならず、押ボタン箱10全体の作動を制御するものである。
【0025】
音案内装置100は、スピーカー60、制御部101、音響出力回路105の他にも、押ボタン箱10と共通の構成要素として、入出力端子板102、無線受信部103、タイムスイッチ回路104、それに上部スイッチ40A、前面スイッチ40B、確認表示灯50を備えている。すなわち、音案内装置100の構成要素は、そのまま押ボタン箱10の構成要素となっている。
【0026】
制御部101は、CPU、ROM、RAM等を有する周知の構成である。CPUは、各種演算および制御を行うものであり、ROMには、各種演算および制御の処理に関するプログラムやデータ等が記憶されている。また、RAMは、各種カウンタ等の記憶領域を含むCPUの作業領域等を備えている。制御部101のCPUは、入出力端子板102を介して図示省略した外部の交通信号制御機や交通信号付加装置等に接続されている。
【0027】
入出力端子板102は、商用電源より押ボタン箱10の作動に必要な電力が給電される他、制御部101からの各種信号を外部へ出力したり、外部から各種信号を受け入れ制御部101に入力するものである。無線受信部103は、外部からのアンテナ信号を受信するものであり、アンテナ信号は制御部101に入力される。タイムスイッチ回路104は、内蔵タイマーを備えており、タイムスイッチ信号を出力することにより、任意の時間帯で制御部101からの特定の信号の出力を停止できる。
【0028】
音響出力回路105は、スピーカー60による音の出力を直接制御するものである。ここでスピーカー60が出力する音には、情報別に定められた案内メッセージの音声の他、言語をなさない効果音や電子音、自然音、音楽のフレーズ等も含まれている。前記制御部101のCPUから音響出力回路105に音出力制御信号が出力されると、音響出力回路105によって案内メッセージ等の音が出力される。なお、音量に関しては、音の種類毎に個別に設定できるようになっている。
【0029】
音響出力回路105も、CPU、ROM、RAM等を有する周知の構成である。CPUは、音の出力制御を実行しスピーカー60より出力させる。ROMには、音処理手順(プログラム)やデータ等が記憶されている。RAMは、CPUにより音処理手順を実行して取得した情報を記憶する。さらに音響出力回路105は、制御部101と信号の入出力を行う入出力インターフェース、CPUからの音出力制御信号に基づき具体的な音を生成する音制御IC、音制御ICに管理され、多種多様な音をデータ化し記憶する音データROM、音制御ICから生成された音信号を増幅するアンプ回路等を備えている。
【0030】
音データROMには、例えば、位置表示音、確認音、案内メッセージである音声案内音等の音データが予め記憶されている。ここで音声案内音には、確認案内音と信号案内音とがあり、それぞれ複数言語として日本語と英語で用意されている。さらに、信号案内音の日本語には、再生時間の長さが異なる標準パターンと短縮パターンが用意されている。なお、複数言語としての日本語と英語は単なる例示であり、フランス語、ドイツ語、中国語や韓国語等、他の国の言語であってもかまわない。
【0031】
位置表示音は、押ボタン箱10の所在を知らせるために、例えば所定のメロディーとして出力される。音制御手段(制御部101,音響出力回路105)により、位置表示音を出力するか否かは選択できるように設定されている。ここでの選択は、例えば音響出力回路105の基板上に設けられた専用スイッチ(図示せず)で行うようにすると良い。位置表示音の出力を選択した場合、基本的には常時、位置表示音がスピーカー60から出力されるが、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号またはタイムスイッチ回路104からのタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で位置表示音の出力を停止することもできる。
【0032】
確認音は、押ボタン箱10にある上部スイッチ40Aや前面スイッチ40Bが感応状態となった場合に、例えば電子音(ピピピピピ等)として出力される。ただし、確認音も、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号またはタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。また、確認音の出力中に上部スイッチ40Aまたは前面スイッチ40Bが感知した場合(再感知時)は、確認音は出力しないように設定されている。
【0033】
音声案内音は、歩行者用信号灯器の作動に関する情報を音声で案内するものである。本実施の形態における音声案内音は、
図2および
図3に例示した確認案内音と信号案内音とがあり、それぞれ複数言語で用意されている。
確認案内音は、確認案内音1,2の2種類あり、上部スイッチ40A、前面スイッチ40Bが感知状態となった場合に、前記確認音の鳴動終了後に出力される。ただし、確認案内音も、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号またはタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。
【0034】
詳しくは、上部スイッチ40Aが操作されて感知状態になると、制御部101から入出力端子板102を介して音響式信号が出力され、このリコール時に確認案内音1は出力される。同様に、前面スイッチ40Bが操作されて感知すると、制御部101から入出力端子板102を介して高齢者等感応信号が出力され、このリコール時に確認案内音2は出力される。確認案内音1,2である案内メッセージの内容は、
図2に例示した日本語と、
図3に示した英語とで用意されている。
【0035】
信号案内音は、歩行者青信号案内音と歩行者青点滅信号案内音の2種類あり、歩行者用信号灯器の灯色の変化に応じて出力される。この信号案内音が、本発明における「案内メッセージ」として、複数言語で用意され、かつ複数言語のうち何れか一言語(日本語)では、再生時間の長さが予め限られた所定時間内となる標準パターンと、該標準パターンより再生時間の短い短縮パターンを含んでいる。なお、信号案内音も、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号またはタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止できるように設定されている。
【0036】
詳しくは、歩行者用信号灯器が青色点灯(青信号)になると、外部の交通信号付加装置から音出力制御信号が送出され、これを音案内装置100の制御部101が受信した時に、歩行者青信号案内音は出力される。また、歩行者用信号灯器が青色点滅(青点滅信号)になると、外部の交通信号付加装置から音出力制御信号が送出され、これを音案内装置100の制御部101が受信した時に、歩行者青点滅信号案内音は出力される。
【0037】
歩行者青信号案内音の内容は、
図2に例示した日本語では、標準パターンとして「ピンポン、信号が青になりました。左右の安全を確かめてから横断しましょう。」の長文と、短縮パターンとして「ピンポン、信号が青になりました。」の短文がある。ここで標準パターンの長文は、その再生時間が予め限られた所定時間である青色点灯(青信号)時間内にちょうど収まる長さに設定されている。また、短縮パターンの短文では、その再生時間は、次述する英語版の再生時間と合わせた合計が、青色点灯(青信号)時間内に収まる長さに設定されている。
【0038】
歩行者青信号案内音の英語版は、
図3に例示したように、長文と短文の用意はなく、一律に「Please wait until the light turns green.」という音声案内が用意されている。かかる英語版の再生時間は、前記日本語版の短縮パターンの再生時間と合わせた再生時間の合計が、青色点灯(青信号)時間内に収まる長さに設定されている。この青色点灯(青信号)時間内に収まる長さであれば、必ずしもこの所定時間に合致させる必要はなく、前記短縮パターンの再生時間との兼ね合いで多少短くなってもかまわない。
【0039】
同様に、歩行者青点滅信号案内音についても、
図2および
図3に例示したように、日本語と英語版が用意され、かつ日本語では、標準パターンと短縮パターンがある。そして、英語版では、日本語の短縮パターンの再生時間と合わせた再生時間の合計が、所定時間内に収まる再生時間に設定されている。ここでの所定時間は、青色点滅(青点滅信号)時間であり、歩行者青信号案内音を出力する青色点灯(青信号)時間よりも短い時間となる。よって、歩行者青点滅信号案内音の案内メッセージの内容は、歩行者青信号案内音のものに比べて全般的に短く設定されている。
【0040】
前記制御部101は、前述したように、音響出力回路105を介してスピーカー60による音の出力を制御するが、かかる制御の一つとして、一言語だけの案内メッセージが選択された場合、標準パターンの案内メッセージを出力し、一言語および他言語の案内メッセージが選択された場合、短縮パターンの案内メッセージを出力し、続けて他言語の案内メッセージを順次出力する機能を備えている。
【0041】
具体的には、制御部101は、日本語だけの歩行者青信号案内音が選択された場合、日本語の標準パターンの案内メッセージを出力し、日本語および英語の歩行者青信号案内音が選択された場合、日本語の短縮パターンの案内メッセージを出力し、続けて英語の案内メッセージを順次出力する。歩行者青点滅信号案内音の出力に関しても、同様に制御される。
【0042】
音制御手段(制御部101,音響出力回路105)により、一言語(日本語)だけの案内メッセージと、一言語(日本語)および他言語(英語)の案内メッセージとは、予め選択可能である。具体的には例えば、音響出力回路105の基板上に設けた専用スイッチ(図示せず)により、初期設定として選択しても良く、あるいは、後から変更できるようにしてもかまわない。
【0043】
ところで、前述の確認案内音1,2、歩行者青信号案内音、歩行者青点滅信号案内音および位置表示音の出力要求が重複することもタイミング的にあり得る。このように複数音の出力要求が重複した場合には、何れか1種類の音だけを出力するように設定されている。そのために、各種情報ごとの案内メッセージには、情報の重要度に応じて優先順位が定められている。
【0044】
具体的には例えば、音の優先順位は、次のとおり(a)から優先順位の高いものとする。(a)歩行者青点滅信号案内音、(b)歩行者青信号案内音、(c)確認案内音1、(d)確認案内音2、(e)確認音、(f)位置表示音。複数の案内メッセージの出力要求が重複した場合には、音制御手段(制御部101,音響出力回路105)により、優先順位の高い案内メッセージが選択され、スピーカー60から出力されるように設定されている。
【0045】
音声案内音である(a)〜(d)の何れかと、確認音の出力要求が重複した場合には、音声案内音と確認音の両方を出力することができるように設定されている。また、確認案内音1,2の出力中に、同一の確認案内音1,2の出力要求があった場合は、後の要求を無効とするように設定されている。
【0046】
さらに、音制御手段(制御部101,音響出力回路105)は、タイムスイッチ機能を備えている。すなわち、内蔵のタイムスイッチ回路104および外部からのタイムスイッチ入力等により、音出力の有無を設定することができる。タイムスイッチ回路104は、例えば1日1回の音出力を入切することができる。また、タイムスイッチ回路104は、タイムスイッチ出力を備え、他の押しボタン箱にタイムスイッチ信号を出力できるように設定されている。
【0047】
図5に示すように、押ボタン箱10は、前記音案内装置100の構成部品を収納する箱状の筐体11を本体とする。筐体11は、その背面側となり前面側が開口したベース本体20と、該ベース本体20の開口を前方から覆うように組み合わされた前面ケース30とから成る。前面ケース30の上下に、上部スイッチ40Aと前面スイッチ40Bが設けられており、これらを総称する際にはスイッチ40と表記する。スイッチ40は、操作時に押す必要はなく、単に触れることで操作可能な接触感知式のセンサスイッチから構成されている。
【0048】
筐体11の各面部の外面は、突起物がなく滑らかな平面であり、二面ないし三面が接合する角は丸みを付けて安全性を考慮している。また、筐体11の上面は、斜め後方へ下向きに傾斜しており、異物を置きにくい構造となっている。ベース本体20は、前面側が開口したケース状の部材であり、前面ケース30は、背面側が開口してベース本体20の開口周縁に被さる底浅なフタ状の部材である。上部スイッチ40Aは、前面ケース30の正面上部の傾斜面に配設され、前面スイッチ40Bは、前面ケース30の正面下部の垂直な前面に配設されている。
【0049】
前面ケース30の正面上部の傾斜面は、視覚障がい者にとって触りやすい位置ないし方向となるため、上部スイッチ40Aは、特に視覚障がい者用として設定されている。一方、前面ケース30の正面下部の前面スイッチ40Bは、健常者ないし高齢者用として設定されている。また、前面ケース30の正面において、上下のスイッチ40A,40Bの間には、確認表示灯50が配設されている。確認表示灯50は、例えば、交通信号制御機から送出される表示駆動信号により点灯するように制御されるが、歩行者用信号灯器の作動に関する各種情報を表示可能に構成しても良い。
【0050】
音案内装置100のうち制御部101、入出力端子板102、無線受信部103、タイムスイッチ回路104、それに音響出力回路105等は一つの制御基板100a上に組み込まれた状態で構成されている。
図6に示すように、制御基板100aは、ベース本体20の背面内側に配設されている。また、スピーカー60は、従来は制御基板100a上に配設されていたが、本実施の形態に係る押ボタン箱10では、
図6に示すように、制御基板100aではなく前面ケース30の内側に配設されている。
【0051】
次に、本実施の形態に係る音案内装置100の作用について説明する。
本音案内装置100によれば、押ボタン箱10に備えられたスピーカー60より、歩行者用信号灯器の作動に関して情報別に定められた案内メッセージが音声出力される。これにより、各種情報を聴覚的に案内して利用者、特に視覚障がい者を支援することができ、歩行時における安全性を高めることができる。
【0052】
音案内装置100におけるスピーカー60、制御部101および音響出力回路105等の基本的な構成要素は、全て押ボタン箱10の筐体11に組み込まれている。そのため、歩行者用信号灯器において歩行者支援を行うに際し、スピーカー60や音制御手段を押ボタン箱10とは別途設置する必要はなく、押ボタン箱10と併せてまとめて設置することができる。
【0053】
図2および
図3に示すように、案内メッセージにおいて、最も重要となる確認案内音と信号案内音は、それぞれ一言語(日本語)に限られるものではなく、英語版も用意されている。ここで信号案内音には、歩行者青信号案内音と歩行者青点滅信号案内音の2種類あるが、それぞれに再生時間が長い長文の標準パターンの他、再生時間が短い短文の短縮パターンが用意されている。
【0054】
歩行者青信号案内音の再生時間は、歩行者用信号灯器が青色点灯(青信号)である間の所定時間内に限られる。よって、歩行者青信号案内音の日本語における標準パターン(
図2参照)の再生時間は、
図4(a)に示すように、所定時間を越えない範囲で定められる。一方、短縮パターン(
図2参照)は、所定時間内に併せて英語の案内メッセージ(
図3参照)も順次出力する関係上、極力余計な案内を省いた必要最低限の再生時間に設定する。
【0055】
歩行者青信号案内音の英語版は、
図4(c)に示すように、日本語の短縮パターンの再生時間と合わせた再生時間の合計が、所定時間内に収まる再生時間に予め設定される。これにより、限られた所定時間内における日本語および英語による音声案内が可能となる。すなわち、他言語の再生時間は、一言語の後に続けても所定時間内に収まる範囲で設定されるため、
図4(b)に示すように、他言語の案内メッセージが時間不足により途中で打ち切られることはない。
【0056】
音制御手段をなす制御部101および音響出力回路105により、日本語だけの案内メッセージが選択された場合、日本語の標準パターンによる案内メッセージが出力される。一方、日本語および英語の案内メッセージが選択された場合、日本語の短縮パターンの案内メッセージが出力され、続けて英語による案内メッセージが順次出力される。これにより、日本語を理解できる利用者だけでなく、英語しか理解できない利用者に対しても、音声案内による便宜を図ることができる。
【0057】
日本語だけの案内メッセージを出力するか、日本語および英語の案内メッセージを出力するかは、予め選択可能である。よって、案内メッセージの出力形態を、一言語に限るか、複数言語の組み合わせで行うかを、任意に選択することができる。ここでの選択は、前述したように音響出力回路105の基板上に設けた専用スイッチ(図示せず)により、初期設定として選択しても良く、あるいは、後から変更できるようにしてもかまわない。その他、前回の歩行者信号の灯色秒数を学習して、その秒数により短文、長文、言語を決定するように制御しても良い。
【0058】
また、複数言語として、日本語と英語の2カ国語を例示したが、日本語(一言語)以外の他言語の案内メッセージには、英語に加えてフランス語、ドイツ語、中国語や韓国語等の複数言語の案内メッセージを音響出力回路105の音データROMに記憶させても良い。この場合も、一言語以外の複数言語のうち何れか一つを他言語として、任意に選択できるようにする。
【0059】
具体的には例えば、音響出力回路105の基板上に設けた専用スイッチ(図示せず)により、複数言語のうち何れか一つを初期設定として選択しても良く、あるいは、後から変更できるようにしてもかまわない。その他、利用者の顔画像を認識して、適切な言語を判定したり、押しボタンのスイッチをタッチパネル式にして、利用者が言語を選択できるように構成しても良い。また、スマートフォン等のアプリケーションを利用して要求言語を押ボタン箱に通知するように構成することも可能である。
【0060】
さらに、複数言語のうち「一言語」に関しても、日本語に限定されることなく、設置場所や地域に応じて他の言語を適宜選択できるようにしても良い。この場合、複数言語の全てに関して、基本となる標準パターンの他、短縮パターンも用意することになる。そして、各言語の何れの組み合わせにおいても、それぞれの再生時間の合計が予め限られた所定時間内に収まるように設定すれば良い。
以上、歩行者青信号案内音を代表して説明したが、歩行者青点滅信号案内音についても歩行者青信号案内音と同様に制御される。
【0061】
歩行者青信号案内音が出力されるタイミングは、歩行者用信号灯器の灯色変化に起因する。すなわち、歩行者用信号灯器が青色点灯(青信号)になると、外部の交通信号付加装置から音出力制御信号が送出される。この音出力制御信号を音案内装置100の制御部101が受信すると、音響出力回路105に音出力制御信号が入力される。すると、音響出力回路105のCPUの制御により、音声制御ICは音声データROMを参照して歩行者青信号案内音を生成し、アンプ回路を介してスピーカー60から出力される。
【0062】
ここで音響出力回路105により、日本語だけの案内メッセージが選択されている場合、日本語の標準パターンによる案内メッセージが出力される(
図4(a)参照)。一方、日本語および英語の案内メッセージが選択されている場合、日本語の短縮パターンの案内メッセージが出力され、続けて英語による案内メッセージが順次出力される(
図4(c)参照)。
【0063】
また、歩行者用信号灯器が青色点滅(青点滅信号)になると、前記歩行者青信号案内音と同様の制御の流れを経て、歩行者青点滅信号案内音が生成され、スピーカー60から出力される。日本語だけ、または日本語および英語の案内メッセージの選択についても、同様に予め選択された方が出力される。
これらの信号案内音は、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号または内蔵のタイムスイッチ回路104からのタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止することができる。
【0064】
音声による案内メッセージには、信号案内音の他に確認案内音もある。上部スイッチ40Aが操作されて感知状態になると、制御部101から入出力端子板102を介して外部の交通信号付加装置へ音響式信号が出力される。この音響式信号に基づき、先ず上部スイッチ40Aの感知状態を知らせる確認音(ピピピピピ等)が出力され、その後、
図2または
図3に例示した確認案内音1が出力される。
【0065】
同様に、前面スイッチ40Bが操作されて感知状態になると、制御部101から入出力端子板102を介して外部の交通信号付加装置へ高齢者等感応信号が出力される。この高齢者等感応信号に基づき、先ずは確認音(ピピピピピ等)が出力され、その後、
図2または
図3に例示した確認案内音2が出力される。確認案内音1,2に関しても、
図2に例示した日本語のみならず、
図3に例示したように複数言語の一つとして英語も用意されており、前記信号案内音の場合と同様に予め選択される。
【0066】
ただし、確認案内音1,2に関しては、案内メッセージの再生時間が日本語でも英語版でも、それぞれ前記信号案内音と比べて短いものとなる。そのため、日本語の短縮パターンを特に用意する必要はなく、2カ国語で順次出力する場合でも所定時間内に収めることができる。
なお、確認案内音1,2も、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号または内蔵のタイムスイッチ回路104からのタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で出力を停止することができる。
【0067】
その他、押ボタン箱10のスピーカー60からは、押ボタン箱10の所在を知らせる位置表示音が出力されるが、この位置表示音に関しては、不要であれば予め出力しないように選択することができる。また、位置表示音を出力するように選択した場合であっても、交通信号付加装置から送出される音出力制御信号またはタイムスイッチ回路104からのタイムスイッチ信号により、任意の時間帯で位置表示音の出力を停止することができる。
【0068】
また、前述の確認案内音1,2、歩行者青信号案内音、歩行者青点滅信号案内音および位置表示音の出力要求が重複した場合には、音制御手段(制御部101,音響出力回路105)により、前述したように優先順位の高い何れか1種類の案内メッセージが選択され、スピーカー60から出力される。これにより、複数の音声案内が同時に出力されて、何れの案内も聞き取り難い状況となることを避けることができる。
【0069】
ただし、確認音は単純で短い電子音であるため、この確認音と、確認案内音1,2、歩行者青信号案内音、歩行者青点滅信号案内音の何れかが重複した場合には、これら音声案内音と確認音の両方が出力される。さらに、確認案内音1,2の出力中に、同一の確認案内音1,2の出力要求があった場合は、後の要求は無効とされる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、音案内装置100は、押ボタン箱10における歩行者支援に用いるだけでなく、建物の入口や玄関における誘導、ATMの操作案内、エレベーターの利用、トイレ内での設備案内等、様々な支援装置に活用することができる。