(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気車制御装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システムの概要構成図である。
図1に示す電気車(鉄道車両)は、交流電力の供給源である架線Pに集電器10が接触することにより、架線Pから電力供給を受けて走行する。
図1に示す電気車システム1は、主要な構成要素として、集電器10と、遮断器12と、車輪Wと、変圧器14と、モータ16と、電気車制御装置20とを備える。
【0009】
電気車制御装置20は、コンバータ(第1の変換部)22と、第1のコンデンサ24−1、24−2と、第2のコンデンサ26−1、26−2と、インバータ(第2の変換部)28と、第1の切替部30と、バッテリ(蓄電部)32と、第2の切替部34とを備える。また、電気車システム1は、制御部40と、操作盤50と、表示盤60とを備える。
【0010】
集電器10は、架線Pから交流電力を取得する。遮断器12は、集電器10と変圧器14との間に直列に接続される。遮断器12は、所定の条件下で変圧器14への交流電力の供給を遮断する。変圧器14は、集電器10から出力された交流電力の電圧を所望の電圧に変換する。所望の電圧に変換された交流電力は、電気車制御装置20のコンバータ22に出力される。
【0011】
コンバータ22は、入力された交流電力を直流電力に変換する。コンバータ22は、例えば中性点クランプ方式(NPC(Neutral-Point-Clamped)方式)と称される電力変換回路である。コンバータ22の出力側(直流側)は、第1のコンデンサ24−1、24−2と、第2のコンデンサ26−1、26−2とを並列に備える3レベル回路を形成している。
【0012】
また、
図1に示すように、電気車制御装置20は、コンバータ22とインバータ28とを導通させるように複数系統の給電線が設けられている。
図1では、一例として第1〜第3の給電線を設けている。第1の給電線Pは、例えば正電位に維持される。第2の給電線Cは、第1の給電線Pよりも低電位(例えば中間電位)に維持される。第3の給電線Nは、第2の給電線Cよりも低電位(例えば負電位)に維持される。
【0013】
第1のコンデンサ24−1、24−2は、コンバータ22から出力される電力を平滑化する。第1のコンデンサ24−1は、第1の給電線Pと、第2の給電線Cとの間(コンバータ22側)に接続される。また、第1のコンデンサ24−2は、第2の給電線Cと、第3の給電線Nとの間(コンバータ22側)に接続される。
【0014】
また、第2のコンデンサ26−1、26−2は、インバータ28に出力する電力を平滑化する。第2のコンデンサ26−1は、第1の給電線Pと、第2の給電線Cとの間(インバータ28側)に接続される。また、第2のコンデンサ26−2は、第2の給電線Cと、第3の給電線Nとの間(インバータ28側)に接続される。
【0015】
インバータ28は、コンバータ22により出力された直流電力を、制御部40等から入力された制御信号に基づいて、所望の周波数や電圧等の三相交流(U相、V相、W相)に変換し、変換した三相交流をモータ16へ出力する。また、インバータ28は、例えば電気車を非常走行させる場合に、バッテリ32の全電圧を主回路電圧として入力し、所望の周波数や電圧等の三相交流をモータ16へ出力する。
【0016】
モータ16は、インバータ28から入力された三相交流によってロータを回転させ、駆動力を出力する。モータ16の出力する駆動力は、図示しない歯車等の連結機構を介して車輪Wに伝達され、伝達された駆動力により車輪Wを回転させることで、電気車を走行させる。モータ16は、例えば、かご型三相誘導電動機である。車輪Wは、線路Rを介して接地される。
【0017】
また、電気車制御装置20において、第1の切替部30は、
図1に示すように、グランド端子の接続先を、第2の給電線Cおよび第3の給電線Nのいずれかに切り替える。グランド端子は、例えば線路Rに電気的に接続される。
【0018】
また、第1の切替部30は、第1の接触器30−1と、第2の接触器30−2とを備える。例えば、第1の接触器30−1は、第2の給電線Cをグランド端子に接続させる。また、第2の接触器30−2は、第3の給電線Nをグランド端子に接続させる。ここで、2つの接触器30−1、30−2は、一方をa接点のスイッチとし、他方をb接点のスイッチとする。a接点は、制御部40等から制御信号が入力されなければ導通せず(Normally Open)、制御信号が入力されると導通する。また、b接点は、例えば制御部40等から制御信号が入力されなければ導通し(Normally Close)、制御信号が入力されると導通しない。
【0019】
第1の実施形態において、第1の切替部30に入力される制御信号は、例えば電気車に対する非常走行指令や非常走行解除指令等に基づく切替命令等であるが、これに限定されるものではない。他の切替部に入力される制御信号も同様とする。また、非常走行とは、例えば架線Pからの電力が正常に供給されない状況で、バッテリ32からの電力を用いて電気車を走行させることである。非常走行解除とは、例えばバッテリ32からの電力供給を解除し、架線Pからの電力を用いて電気車を走行させる状態にすることである。
【0020】
例えば、第1の切替部30は、バッテリ32からの電力供給を行うか否かに基づいて、グランド端子の接続先を切り替える。この場合、第1の接触器30−1をb接点とし、第2の接触器30−2をa接点とする。したがって、第1の接触器30−1は、制御部40等からの制御信号が入力されなければ、第2の給電線Cをグランド端子に接続する。また、第2の接触器30−2は、制御部40等からの制御信号が入力されなければ、第3の給電線Nをグランド端子に接続しない。これにより、例えば、架線Pから電力が正常に供給される状況では、制御信号が入力されないため、第2の給電線Cをグランド端子と接続(C側接地)することができる。また、例えば、架線Pから電力が正常に供給されない状況で、バッテリ32と接続して電気車を非常走行させたい場合には、制御信号の入力により第3の給電線Pをグランド端子と接続(N側接地)することができる。
【0021】
上述したように、第1の接触器30−1および第2の接触器30−2に、それぞれa接点とb接点とを設定することで、制御信号のON/OFFにより、グランド端子の接続先を容易に切り替えることができる。また、第1の接触器30−1をb接点とし、第2の接触器30−2をa接点とすることで、例えば接触器の動作不良等が生じた場合でも、第1の給電線P側の対地電位が高圧になることを防止することができる。
【0022】
バッテリ32は、電力を蓄える蓄電部である。バッテリ32は、例えば架線Pからの電力が遮断された場合に、電気車を走行させるために、蓄電された直流電力をインバータ28に供給する。なお、バッテリ32からの電力は、電気車が徐行運転できる程度の電力であればよく、架線Pから得られる電力よりも小さい値でもよい。
【0023】
また、
図1の例において、バッテリ32は、電気車制御装置20と一体に設けられているが、別体に設けられてもよい。また、バッテリ32からの両極端子は、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続される。また、電気車制御装置20は、バッテリ32と、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nとの間に第2の切替部34を備える。第2の切替部34は、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線および第3の給電線に接続するか否かを切り替える。
【0024】
また、第2の切替部34は、第3の接触器34−1と、第4の接触器34−2とを備える。例えば、第3の接触器34−1は、第1の給電線Pをバッテリ32の正極端子に接続させる。また、第4の接触器34−2は、第3の給電線Nをバッテリ32の負極端子に接続させる。ここで、2つの接触器34−1、34−2は、双方をa接点のスイッチとする。したがって、第2の切替部34は、例えば制御部40等から制御信号が入力された場合に、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nに接続する。
【0025】
制御部40は、操作盤50等から入力された情報に基づいて、電気車の電力切替制御や走行制御等を行う。また、制御部40は、入力された情報に基づく命令を電気車制御装置20内の各機器に出力したり、処理内容や処理結果等を操作盤50または表示盤60に出力する出力制御を行う。また、制御部40は、外部のシステムと、有線または無線等でデータの送受信を行う通信制御を行ってもよい。なお、制御部40は、電気車制御装置20内に設けられていてもよい。また、制御部40における各機能のうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムメモリに格納されたプログラムを実行することで機能するソフトウェア機能部である。また、制御部40は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0026】
操作盤50は、例えば電気車の主電源であるマスタースイッチや、運転手が種々の操作を行うマスターコントローラ等を含む。マスターコントローラは、種々の対応を採用し得るが、例えば前方に押すことによって制動・減速を指示し、後方に引くことによって加速を指示することができる横軸型のマスターコントローラである。マスターコントローラに対してなされた操作量を示す信号、或いは操作に基づいて決定される制御信号は、制御部40に入力される。
【0027】
また、操作盤50には、電気車に非常走行を実行させるための操作ボタン等を設けていてもよい。例えば、運転手が操作盤50に設けられた操作ボタンを押下することで、操作盤50は、非常走行指令を制御部40に出力する。また、運転手が操作ボタンの押下を解除することで、操作盤50は、非常走行解除指令を制御部40に出力してもよく、制御部40に出力していた非常走行指令を停止してもよい。運転手の操作により、非常走行を実行するか否かを決定するための操作機構については、上述した操作ボタンに限定されるものではなく、例えばレバーやスイッチ等でもよい。
【0028】
表示盤60は、制御部40の指示に基づいて、車両の速度等を含む車両に関する各種情報を表示する。例えば、表示盤60は、電気車が非常走行中である場合には、その旨を示す情報の表示(例えば、ランプの点灯)等を行ってもよい。
【0029】
ここで、第1の実施形態において、制御部40は、第1の切替部30による切り替えおよび第2の切替部34による切り替えのタイミングを同期させる。例えば、制御部40は、架線Pからの電力を用いてインバータ28を動作させる場合に、第2の給電線Cをグランド端子と接続させるとともに、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nから遮断させる。また、制御部40は、バッテリ32からの電力を用いてインバータ28を動作させる場合に、グランド端子を第2の給電線Cではなく、第3の給電線Nと接続させるとともに、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続させる。
【0030】
なお、制御部40は、第1の切替部30および第2の切替部34による切り替えのうち、第1の切替部30を先に切り替える。第1の切替部30を先に切り替えることでバッテリ32からの放電が開始される前に確実に接地する給電線を切り替えることができる。また、制御部40は、第1の切替部30および第2の切替部34に対して並行して制御信号を出力してもよい。これにより、第1の切替部30および第2の切替部34における切り替えを連動させて、グランド電位にする箇所を適切に切り替えることができる。
【0031】
ここで、
図2は、第1の実施形態における各切替部の切り替えの様子を示す図である。
図2の例では、非常走行指令に基づく制御信号のON/OFFに対応する第1の切替部30および第2の切替部34の切り替えタイミングを示している。
図2の例では、第1の切替部30により、第2の給電線Cとグランド端子との接続(C側接地)、および第3の給電線Nとグランド端子との接続(N側接地)の切り替えを行う。また、
図2の例では、第2の切替部34により、バッテリ32の両極端子を、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nに接続するか(ON)、否か(OFF)の切り替えを行う。
【0032】
例えば、
図2の時刻t0〜t1では、制御部40により非常走行指令に基づく制御信号が出力されていないため(
図2に示すOFF)、第1の切替部30は、第2の給電線Cをグランド端子に接続し、第3の給電線Nをグランド端子から遮断する(
図2に示すC側接地)。また、同区間において、第2の切替部34は、バッテリ32の両極端子を、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと遮断する(
図2に示すOFF)。これにより、電気車制御装置20は、制御部40からの制御信号が入力されない場合に、架線Pからの交流電力を用いて、コンバータ22で変換された直流電力をインバータ28に出力することができる。
【0033】
また、
図2の時刻t1〜t2では、制御部40により非常走行指令に基づく制御信号が出力されるため(
図2に示すON)、第1の切替部30および第2の切替部34は、それぞれ接続状態の切り替えを行う。第1の切替部30は、制御部40から非常走行指令に基づく制御信号を受け付けた場合、第2の給電線Cをグランド端子から遮断し、第3の給電線Nをグランド端子と接続する(
図2に示すN側接地)。また、同区間において、第2の切替部34は、バッテリ32の両極端子を、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続する(
図2に示すON)。これにより、電気車制御装置20は、例えば非常走行指令に基づく制御信号の入力があった場合に、バッテリ32からの直流電力をインバータ28に出力することができる。また、インバータ28は、バッテリ32からの直流電力を用いて所望の周波数や電圧等の三相交流をモータ16へ出力する。これにより、電気車を非常走行させることができる。
【0034】
また、
図2に示す時刻t2の時点で非常走行指令に基づく制御信号の入力が終了した場合(
図2に示すOFF)、上述した時刻t0〜t1のとき(非常走行前)と同様の接続状態となるように、第1の切替部30および第2の切替部34における接続状態を切り替える。
【0035】
このように、第1の実施形態では、バッテリ32から直流電力が供給される場合に、第3の給電線Nを接地することができるため、バッテリ32からの電力を安定させることができる。なお、上述した非常走行指令に基づく制御信号のON/OFFは、例えば電気車の運転手が操作盤50に設けられた非常走行を行う操作ボタンを押下するか否かにより制御することができる。
【0036】
例えば、操作盤50は、上述した操作ボタンの押下を受け付けて、非常走行指令を制御部40に出力し、制御部40から第1の切替部30および第2の切替部34に制御信号(切替命令)を出力させることができる。また、操作盤50は、上述した操作ボタンの押下の解除を受け付けて、非常走行指令を制御部40に出力するのを終了する。これにより、制御部40から第1の切替部30および第2の切替部34に制御信号が出力されなくなるため(OFF状態)、
図2に示すような切り替えを行うことができる。なお、操作盤50は、上述した操作ボタンの押下の解除を受け付けた場合に、非常走行解除指令を制御部40に出力し、制御部40から第1の切替部30および第2の切替部34に非常走行前の接続状態に切り替えを行う制御信号(切替命令)が出力させてもよい。
【0037】
また、上述した非常走行指令または非常走行解除指令は、例えば電気車の外部に設けられた管理システム等からインターネット等の通信ネットワークを介して取得してもよい。例えば、電気車システム1は、通信ネットワークにより管理システムとデータの送受信が可能な状態で接続されており、管理システムからの非常走行指令や非常走行解除命令を受け付けて、第1の切替部30および第2の切替部34による切り替えを行う。なお、上述の例では、制御部40が管理システムからの非常走行指令を受け付けて第1の切替部30および第2の切替部34に制御信号を出力してもよく、管理システムから第1の切替部30および第2の切替部34に直接制御信号(切替命令)を送信してもよい。
【0038】
次に、第1の実施形態における制御部40の切替制御処理について、フローチャートを用いて説明する。
図3は、第1の実施形態における切替制御処理の第1の実施例を示すフローチャートである。第1の実施例では、制御部40が非常走行指令を受け付けた場合の切替例を示している。
図3の例において、制御部40は、非常走行指令を受け付けたか否かを判定する(ステップS100)。非常走行指令は、上述したように、電気車の運転手が操作盤50に設けられた操作ボタン等を押下することで、制御部40に指令を出力してもよく、外部にある管理システム等から送信された非常走行指令を受信してもよい。
【0039】
非常走行指令を受け付けた場合、制御部40は、第1の切替部30に切替命令を出力する(ステップS102)。ステップS102の処理により、第1の切替部30は、第1の接触器30−1により、第2の給電線Cとグランド端子とを遮断し、第2の接触器30−2により、第3の給電線Nをグランド端子と接続する。
【0040】
次に、制御部40は、第2の切替部34に切替命令を出力する(ステップS104)。ステップS104の処理により、第2の切替部34は、第3の接触器34−1および第4の接触器34−2により、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nに接続する。なお、上述したステップS102およびステップS104における切替命令は、例えば上述した制御信号のON状態に相当する。
【0041】
上述したステップS102およびステップS104の処理は、同時または短時間に連動して行われる。また、制御部40は、第1の切替部30および第2の切替部34に対して並行して切替命令を出力してもよく、少なくとも一方を先に切り替えるように切替命令を出力してもよい。
【0042】
図4は、第1の実施形態における切替制御処理の第2の実施例を示すフローチャートである。第2の実施例では、制御部40が非常走行解除指令を受け付けた場合の切替例を示している。
図4の例において、制御部40は、非常走行解除指令を受け付けたか否かを判定する(ステップS200)。非常走行解除指令は、上述したように、電気車の運転手が操作盤50に設けられた操作ボタン等の押下を解除することで、操作盤50から制御部40に非常走行解除指令が出力されてもよく、外部にある管理システム等から制御部40に出力されてもよい。
【0043】
非常走行解除指令を受け付けた場合、制御部40は、第2の切替部34に切替命令を出力する(ステップS202)。ステップS202の処理により、第2の切替部34は、第3の接触器34−1および第4の接触器34−2により、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nから遮断する。
【0044】
次に、制御部40は、第1の切替部30に切替命令を出力する(ステップS204)。ステップS204の処理により、第1の切替部30は、第1の接触器30−1により、第2の給電線Cをグランド端子と接続し、第2の接触器30−2により、第3の給電線Nとグランド端子とを遮断する。なお、上述したステップS202およびステップS204における切替命令は、例えば上述した制御信号のOFF状態に相当する。
【0045】
上述したステップS202およびステップS204の処理は、同時または短時間に連動して行われる。また、制御部40は、第1の切替部30および第2の切替部34に対して並行して切替命令を出力してもよい。
【0046】
ここで、上述した第1の実施形態では、第1の切替部30の第1の接触器30−1および第2の接触器30−2を別体に設けているが、1つの接触器として一体に設けられてもよい。一体に形成されることで、接触器内の制御コイルを共通化することができ、第1の切替部30による接続の切り替えを同時に行うことができる。また同様に、第2の切替部34の第3の接触器34−1および第4の接触器34−2についても、別体に設けられてもよく、一体に設けられてもよい。
【0047】
上述したように、第1の実施形態によれば、架線Pからの交流電力を用いてインバータ28が動作する場合に、第1の切替部30により第2の給電線Cを、グランド端子に接続させるとともに、第2の切替部34によりバッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nから遮断させる。また、バッテリ32からの電力を用いてインバータ28が動作する場合に、第1の切替部30により第3の給電線Nをグランド端子に接続させるとともに、第2の切替部34によりバッテリの両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続させる。これにより、電気車制御装置20の適切な箇所をグランド電位に切り替えることができる。また、バッテリ32からの直流電力に基づいて、インバータ28への給電を行い、モータ16を駆動させて車輪Wを回転させ、電気車を走行させることができる。
【0048】
第1の実施形態では、例えば電気車が、駅間の線路上やトンネル内等、安全が確保できない状態で、架線Pからの電力が供給されなくなった場合に、制御部40から非常走行指令等に基づく制御信号を出力することで、バッテリ32からの電力による非常走行を行うことができる。この場合、例えば、制御部40は、電気車が次の駅に到着したり、トンネルを抜けた位置まで移動した場合に、上述した運転手による操作や管理システムからの指令を受け付けなくても、電気車の位置情報に基づき、制御信号を第1の切替部30および第2の切替部34に出力し、切替制御を行う処理を行ってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システムについて、図を用いて説明する。
図5は、第2の実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システムの概要構成図である。なお、以下に示す第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と同様の構成部分については、同一の符号を付するものとし、ここでの具体的な説明は省略する。
【0050】
図5に示す電気車は、交流電力の供給源である架線Pに集電器10が接触することにより、架線Pから電力供給を受けて走行する。
図5に示す電気車システム2は、主要な構成要素として、集電器10と、遮断器12と、車輪Wと、変圧器14と、モータ16と、電気車制御装置70とを備える。電気車制御装置70は、コンバータ22と、第1のコンデンサ24−1、24−2と、第2のコンデンサ26−1、26−2と、インバータ28と、第1の切替部30と、バッテリ32と、第2の切替部34と、第3の切替部72とを備える。また、電気車システム1は、
図5に示すように制御部80と、操作盤50と、表示盤60とを備える。
【0051】
第2の実施形態における電気車システム2は、上述した第1の実施形態における電気車システム1と比較すると、第3の切替部72が追加されている。また、制御部80は、上述した第1の切替部30および第2の切替部34だけでなく、第3の切替部72に対する制御が追加されている。したがって、以下の説明では、主に上述した第1の実施形態との相違部分について説明する。
【0052】
第3の切替部72は、コンバータ22とインバータ28との間に接続され、コンバータ22からの直流電力を遮断するか否かを切り替える。第3の切替部72は、第5の接触器72−1と、第6の接触器72−2とを備える。例えば、第5の接触器72−1は、コンバータ22側の第1の給電線Pを、インバータ28側の第1の給電線Pに接続させる。また、第6の接触器72−2は、コンバータ22側の第2の給電線Cを、インバータ28側の第2の給電線Cに接続させる。ここで、2つの接触器72−1、72−2は、双方をb接点のスイッチとする。したがって、第3の切替部72は、例えば制御部80等から制御信号が入力されなければ、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cを、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cに接続させる。また、第3の切替部72は、制御部80等から制御信号が入力された場合に、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cと、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cとを遮断する。
【0053】
ここで、
図5の例において、第3の切替部72は、第1のコンデンサ24−1、24−2よりも、インバータ28側に接続される。第1のコンデンサ24−1、24−2は、コンバータ22から出力される電力を平滑化し、コンバータ22を安定的に動作させるものである。そのため、第3の切替部72は、コンバータ22だけでなく、第1のコンデンサ24−1、24−2も含めて接続または遮断の切り替えを行う。
【0054】
制御部80は、例えばバッテリ32からの電力を用いてインバータ28が動作する場合に、第3の切替部72に制御信号を出力し、第3の切替部72により、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cと、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cとを遮断させる。制御部80は、上述した第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72における切り替えのタイミングを同期させる。また、制御部80は、第3の切替部72を第2の切替部34よりも先に切り替えてもよい。これにより、バッテリ32により第1のコンデンサ24−1、24−2が充電されることを防止することができる。また、制御部80は、第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72に対して並行して制御信号を出力してもよい。これにより、第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72における切り替えを連動させて、グランド電位にする箇所を適切に切り替えることができる。
【0055】
ここで、
図6は、第2の実施形態における各切替部の切り替えの様子を示す図である。
図6の例では、非常走行指令に基づく制御信号のON/OFFに対応する第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72の切り替えタイミングを示している。
図6の例では、第1の切替部30により、上述したC側接地およびN側接地の切り替えが行われ、第2の切替部34により、上述したバッテリ32と、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nとの接続の切り替え(ON/OFF)が行われる。また、
図6の例では、第3の切替部72により、コンバータ22と接続するか、遮断するかの切り替えが行われる。
【0056】
例えば、
図6の時刻t0〜t1では、制御部80から非常走行指令に基づく制御信号が出力されていない。そのため、第1の切替部30は、上述したようにC側接地される。また、第2の切替部34は、バッテリ32の両極端子と、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nとを遮断する。また、第3の切替部72は、コンバータ22とインバータ28とを、第1〜第3の給電線で接続させる(
図6に示すコンバータ接続)。つまり、第2の実施形態では、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cを、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cに接続させる。
【0057】
ここで、
図6の時刻t1〜t2において、制御部40により非常走行指令に基づく制御信号が出力されるため(
図6に示すON)、第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72は、それぞれ接続状態の切り替えを行う。第1の切替部30は、制御部80から制御信号を受け付けた場合、第2の給電線Cをグランド端子から遮断し、第3の給電線Nをグランド端子と接続する(
図6に示すN側接地)。また、同区間において、第2の切替部34は、バッテリ32の両極端子を、第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続する(
図6に示すON)。また、同区間において、第3の切替部72は、インバータ28に供給されるコンバータ22からの電力を遮断する(
図6に示すコンバータ遮断)。例えば、第3の切替部72は、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cと、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cとを遮断する。
【0058】
また、
図6に示す時刻t2の時点で非常走行指令に基づく制御信号の入力が終了した場合(
図6に示すOFF)、上述した時刻t0〜t1のとき(非常走行前)と同様の接続状態となるように、第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72における接続状態を切り替える。このように、第2の実施形態では、バッテリ32から直流電力が供給される場合に、コンバータ22側を切り離すため、コンバータ22の出力側(直流側)での電力消費を抑えることができる。
【0059】
次に、第2の実施形態における制御部80の切替制御処理について、フローチャートを用いて説明する。
図7は、第2の実施形態における切替制御処理の第1の実施例を示すフローチャートである。第1の実施例では、制御部80が非常走行指令を受け付けた場合の切替例を示している。なお、
図7の例におけるステップS300〜S302の処理は、上述したステップS100〜S102の処理と同様であるため、ここでの具体的な説明は省略する。
【0060】
図7の例において、制御部80は、ステップS302の処理後、第3の切替部72に切替命令を出力する(ステップS304)。ステップS304の処理により、第3の切替部72は、第5の接触器72−1および第6の接触器72−2により、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cと、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cとを遮断させる。
【0061】
次に、制御部80は、第2の切替部34に切替命令を出力する(ステップS306)。ステップS306の処理により、第2の切替部34は、第3の接触器34−1および第4の接触器34−2により、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nに接続する。なお、上述したステップS304およびステップS306における切替命令は、例えば上述した制御信号のON状態に相当する。
【0062】
なお、上述したステップS302、ステップS304、およびステップS306の処理は、同時または短時間に連動して行われる。ただし、第3の切替部72の切替前に、第2の切替部34の切替が行われると、バッテリ32により第1のコンデンサ24−1、24−2の充電が行われることになるため、
図7のフローチャートに示したように、第3の切替部72による切り替え処理は、第2の切替部34の切り替え処理よりも先に行われることが好ましい。
【0063】
図8は、第2の実施形態における切替制御処理の第2の実施例を示すフローチャートである。第2の実施例では、制御部80が非常走行解除指令を受け付けた場合の切替例を示している。なお、
図8の例におけるステップS400〜S404の処理は、上述したステップS200〜S204の処理と同様であるため、ここでの具体的な説明は省略する。
【0064】
図8の例において、制御部80は、ステップS404の処理後、第3の切替部72に切替命令を出力する(ステップS406)。なお、上述したステップS406における切替命令は、例えば上述した制御信号のOFF状態に相当する。ステップS406の処理により、第3の切替部72は、第5の接触器72−1および第6の接触器72−2により、コンバータ22側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cと、インバータ28側の第1の給電線Pおよび第2の給電線Cとを接続させる。なお、上述したステップS402、ステップS404、およびステップS406の処理は、同時または短時間に連動して行われる。また、制御部80は、第1の切替部30、第2の切替部34、および第3の切替部72に対して、並行して切替命令を出力してもよい。
【0065】
上述したように、第2の実施形態によれば、例えば電気車の非常走行等におけるバッテリ32の動作時に、上述した第1の切替部30および第2の切替部34による切り替え制御の他に、第3の切替部72により、コンバータ22からの電力を遮断する制御を行うことで、コンバータ22の直流側での電力消費を抑えることができる。したがって、例えば、コンバータ22の直流側に放電抵抗または電圧検出器等が接続されている場合に、それらの抵抗における電力消費を抑えることができる。
【0066】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、架線Pからの交流電力を直流電力に変換するコンバータ22と、第1の給電線P、第1の給電線Pよりも低電位に維持される第2の給電線C、および第2の給電線Cよりも低電位に維持される第3の給電線Nを含む複数系統の給電線で、コンバータ22に接続され、複数系統の給電線から得られる直流電力に基づいて、電気車の車輪Wを駆動するモータ16に交流電力を出力するインバータ28と、電力を蓄えるバッテリ32と、グランド端子の接続先を、第2の給電線Cと第3の給電線Nとのいずれかに切り替える第1の切替部30と、バッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nに接続するか否かを切り替える第2の切替部34と、架線Pからの交流電力を用いてインバータ28が動作する場合に、第1の切替部30により第2の給電線Cを、グランド端子に接続させるとともに、第2の切替部34によりバッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nから遮断させ、バッテリ32からの電力を用いてインバータ28が動作する場合に、第1の切替部30により第3の給電線Nをグランド端子に接続させるとともに、第2の切替部34によりバッテリ32の両極端子を、それぞれ第1の給電線Pおよび第3の給電線Nと接続させる制御部40と、を持つことにより、グランド電位にする箇所を適切に切り替えることができる。
【0067】
例えば、電気車が交流車である場合に、架線Pからの交流電力をインバータ28に供給する場合と、バッテリ32からの電力をインバータ28に供給する場合とで、接地切替を行うことで、事故による停電等で架線からの給電が不能となった場合でも、電気車を走行させることができる。
【0068】
また、第1の切替部30における2つの接触器のうち、一方をa接点、他方をb接点とし、その2つの接触器による切り替え動作を同期させることにより、切り替え時における安全性を確保することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。