(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753752
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】自転車用電動モータの支持構造およびこれを含む自転車用ドライブユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 25/08 20060101AFI20200831BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20200831BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20200831BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20200831BHJP
F16C 35/06 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
F16C25/08 Z
B62M6/55
F16C19/16
F16C19/54
F16C35/06 Z
【請求項の数】35
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-194072(P2016-194072)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54085(P2018-54085A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年9月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田内 充
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−086473(JP,A)
【文献】
実開昭51−006422(JP,U)
【文献】
実開昭62−167931(JP,U)
【文献】
実開昭54−043747(JP,U)
【文献】
特開2001−088768(JP,A)
【文献】
特開2007−181325(JP,A)
【文献】
実開昭64−040254(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 35/00−39/06
F16C 43/00−43/08
B62M 6/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、
支持部と、
第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、
前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向し、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、を含み、
前記第1の規制部材は、前記第1の軸受に対して前記第1の方向の下流側に離れた位置において前記支持部に固定され、
前記支持部は、前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部を含み、
前記第1の規制部材は、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部を含み、
前記支持部は、前記出力軸が貫通する孔を含み、
前記第1の軸受は、前記孔に配置され、
前記第1のねじ部は、前記第1の方向において前記第2の部分と前記第1の軸受との間に設けられ、前記孔の内周面の少なくとも一部を含み、
前記第1の規制部材は、筒状に形成され、
前記第2のねじ部は、前記第1の規制部材の外周部に形成され、
前記第1の規制部材は、前記第1の方向の上流側の第1の端部に、前記第2のねじ部の外周面よりも前記出力軸の径方向の外方に突出する第1の突出部をさらに含む、自転車用電動モータの支持構造。
【請求項2】
ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、
支持部と、
第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、
前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向し、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、を含み、
前記支持部は、前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部、および、前記出力軸が貫通する孔を含み、
前記第1の軸受は、前記孔に配置され、
前記第1の規制部材は、筒状に形成され、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部を含み、
前記第1のねじ部は、前記第1の方向において前記第2の部分と前記第1の軸受との間に設けられ、前記孔の内周面の少なくとも一部を含み、
前記第2のねじ部は、前記第1の規制部材の外周部に形成され、
前記第1の規制部材は、前記第1の方向の上流側の第1の端部に、前記第2のねじ部の外周面よりも前記出力軸の径方向の外方に突出する第1の突出部をさらに含む、自転車用電動モータの支持構造。
【請求項3】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、円環状に形成されている、請求項1または2に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項4】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項5】
ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、
支持部と、
第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、
前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、を含み、
前記支持部は、前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部を含み、
前記第1の規制部材は、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部と、前記第1の方向の上流側の第1の端部に設けられ、前記第2のねじ部の外周面よりも前記出力軸の径方向の外方に突出する第1の突出部とを含む、自転車用電動モータの支持構造。
【請求項6】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、円環状に形成されている、請求項5に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項7】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向する、請求項5または6に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項8】
前記支持部は、前記出力軸が貫通する孔を含み、
前記第1の軸受は、前記孔に配置される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項9】
前記支持部は、
前記出力軸の径方向の外方から前記ロータおよび前記ステータを覆う外周部と、
前記孔が形成され、前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第1の端面を覆う第1の側壁部と、
前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第2の端面を覆う第2の側壁部と、を含む、請求項1〜4、8のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項10】
前記第2の側壁部は、前記外周部に着脱可能に取り付けられている、請求項9に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項11】
前記第2の側壁部に設けられ、第2の内輪体、第2の外輪体、および、前記第2の内輪体と前記第2の外輪体との間に設けられる第2の転動体を含み、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方が前記出力軸に支持され、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の他方が前記第2の側壁部に支持される第2の軸受をさらに含む、請求項9または10に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項12】
前記出力軸の外周部は、前記第2の軸受の前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方に結合され、前記出力軸の前記第1の方向とは反対の第2の方向への移動を規制する第1の段差部を有する、請求項11に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項13】
前記出力軸の外周部は、前記第1の部分と前記第1の段差部との間に、前記ロータの前記第2の方向への移動を規制する第2の段差部を有する、請求項12に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項14】
ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、
支持部と、
第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、
前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、を含み、
前記出力軸の外周部は、前記出力軸の前記第1の方向とは反対の第2の方向への移動を規制する第1の段差部と、前記第1の部分と前記第1の段差部との間に設けられ、前記ロータの前記第2の方向への移動を規制する第2の段差部とを有する、自転車用電動モータの支持構造。
【請求項15】
前記支持部は、前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部を含み、
前記第1の規制部材は、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部を含む、請求項14に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項16】
前記支持部は、前記出力軸が貫通する孔を含み、
前記第1の軸受は、前記孔に配置される、請求項15に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項17】
前記支持部は、
前記出力軸の径方向の外方から前記ロータおよび前記ステータを覆う外周部と、
前記孔が形成され、前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第1の端面を覆う第1の側壁部と、
前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第2の端面を覆う第2の側壁部と、を含む、請求項16に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項18】
前記第2の側壁部は、前記外周部に着脱可能に取り付けられている、請求項17に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項19】
前記第2の側壁部に設けられ、第2の内輪体、第2の外輪体、および、前記第2の内輪体と前記第2の外輪体との間に設けられる第2の転動体を含み、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方が前記出力軸に支持され、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の他方が前記第2の側壁部に支持される第2の軸受をさらに含む、請求項17または18に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項20】
ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、
支持部と、
第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、
前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向し、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、
前記支持部に設けられる第2の軸受と、を含み、
前記支持部は、
前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部と、
前記出力軸が貫通する孔と、
前記出力軸の径方向の外方から前記ロータおよび前記ステータを覆う外周部と、
前記孔が形成され、前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第1の端面を覆う第1の側壁部と、
前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第2の端面を覆う第2の側壁部と、を含み、
前記第1の規制部材は、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部を含み、
前記第1の軸受は、前記孔に配置され、
前記第2の軸受は、前記第2の側壁部に設けられ、第2の内輪体、第2の外輪体、および、前記第2の内輪体と前記第2の外輪体との間に設けられる第2の転動体を含み、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方が前記出力軸に支持され、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の他方が前記第2の側壁部に支持され、
前記出力軸の外周部は、前記第2の軸受の前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方に結合され、前記出力軸の前記第1の方向とは反対の第2の方向への移動を規制する第1の段差部を有し、前記第1の部分と前記第1の段差部との間に、前記ロータの前記第2の方向への移動を規制する第2の段差部を有する、自転車用電動モータの支持構造。
【請求項21】
前記第2の側壁部は、前記外周部に着脱可能に取り付けられている、請求項20に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項22】
前記第1のねじ部は、前記第1の方向において前記第2の部分と前記第1の軸受との間に設けられ、前記孔の内周面の少なくとも一部を含み、
前記第1の規制部材は、筒状に形成され、前記第2のねじ部は、前記第1の規制部材の外周部に形成されている、請求項16〜21のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項23】
前記第1の規制部材は、前記第1の方向の上流側の第1の端部に、前記第2のねじ部の外周面よりも前記出力軸の径方向の外方に突出する第1の突出部をさらに含む、請求項22に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項24】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、円環状に形成されている、請求項23に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項25】
前記第1の規制部材の前記第1の端部は、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向する、請求項23または24に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項26】
前記第1の規制部材は、前記第2のねじ部の前記第1の方向の下流側に設けられる把持部をさらに含む、請求項1〜13、16〜25のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項27】
前記把持部は、所定の工具を係合可能な形状を有する、請求項26に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項28】
前記出力軸の軸心に沿う方向への前記第1の規制部材の移動を規制する第2の規制部材をさらに含む、請求項1〜13、15〜27のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項29】
前記第2のねじ部は、前記第1のねじ部から前記第1の方向の下流側に突出する第2の突出部を含み、
前記第2の規制部材は、前記第2の突出部に取り付けられる、請求項28に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項30】
前記第2の規制部材は、前記第2の突出部にねじ込まれる第3のねじ部を含む、請求項29に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項31】
前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と、前記第1の規制部材とは、一体に形成されている、請求項1〜30のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項32】
前記出力軸と同軸に設けられ、前記ロータと前記第1の軸受の前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方との間に挟まれるスリーブをさらに含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造と、前記ロータ、前記ステータ、および、前記出力軸を含む自転車用電動モータと、を含み、自転車の推進をアシスト可能に構成される、自転車用ドライブユニット。
【請求項34】
前記出力軸の径方向において、前記ロータは、前記ステータの内側に配置されている、請求項33に記載の自転車用ドライブユニット。
【請求項35】
前記自転車のクランク軸が設けられるハウジングをさらに含み、
前記支持部の少なくとも一部は、前記ハウジングと一体に形成される、請求項33または34に記載の自転車用ドライブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用電動モータの支持構造およびこれを含む自転車用ドライブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される自転車用電動モータの支持構造は、ウェーブワッシャを用いて軸受のスラスト方向の位置決めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−17539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自転車用電動モータの支持構造では、自転車がオフロードを走行して、自転車用電動モータに振動が与えられるときに、ウェーブワッシャが変形して、自転車用電動モータの出力軸が軸方向に移動してしまうことがある。
【0005】
本発明の目的は、出力軸の軸方向への移動を抑制することを可能とした自転車用電動モータの支持構造およびこれを含む自転車用ドライブユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に従う自転車用電動モータの支持構造の一形態は、ロータ、ステータ、および、前記ロータと共に回転する出力軸を含む自転車用電動モータの支持構造であって、支持部と、第1の内輪体、第1の外輪体、および、前記第1の内輪体と前記第1の外輪体との間に設けられる第1の転動体を含み、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の一方は、前記出力軸のうちの前記ロータに連結される第1の部分と他の部材に連結可能な第2の部分との間の部分を支持し、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方は、前記支持部に支持される第1の軸受と、前記支持部とは別体に形成され、前記出力軸と同軸に配置され、前記出力軸の軸心に沿って前記第1の部分から前記第2の部分に向かう第1の方向への、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方の移動を規制する第1の規制部材と、を含む。
【0007】
(1)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1の規制部材が第1の方向への第1の内輪体および第1の外輪体の他方の移動を規制する。第1の規制部材は、支持部とは別体に形成されるため、第1の規制部材の支持部に対する位置を調整することによって第1の規制部材と第1の内輪体および第1の外輪体との位置関係を適切なものにすることができる。このため、第1の内輪体および第1の外輪体の一方が支持する出力軸の軸方向への移動を抑制することができる。
【0008】
(2)前記(1)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記支持部は、前記出力軸と同軸に設けられる第1のねじ部を含み、前記第1の規制部材は、前記第1のねじ部にねじ込まれる第2のねじ部を含む。
(2)の自転車用電動モータの支持構造によれば、支持部の第1のねじ部を第1の規制部材の第2のねじ部にねじ込む長さを調整することによって、第1の規制部材の支持部に対する位置を調整することができる。
【0009】
(3)前記(2)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記支持部は、前記出力軸が貫通する孔を含み、前記第1の軸受は、前記孔に配置される。
(3)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1の軸受は、支持部に含まれる出力軸が貫通する孔に配置されるため、孔の内部において出力軸を支持することができる。
【0010】
(4)前記(3)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1のねじ部は、前記第1の方向において前記第2の部分と前記第1の軸受との間に設けられ、前記孔の内周面の少なくとも一部を含み、前記第1の規制部材は、筒状に形成され、前記第2のねじ部は、前記第1の規制部材の外周部に形成されている。
(4)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1の規制部材の第2のねじ部を第1のねじ部にねじ込むことによって、第1の規制部材を適切な位置に配置することができる。
【0011】
(5)前記(4)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1の規制部材は、前記第1の方向の上流側の第1の端部に、前記第2のねじ部の外周面よりも前記出力軸の径方向の外方に突出する第1の突出部をさらに含む。
(5)の自転車用電動モータの支持構造によれば、上記第1の規制部材の第1の突出部は、第1のねじ部の内径よりも大きくなるので、第1の規制部材が第1のねじ部の内部を第1の方向に移動することが規制される。
【0012】
(6)前記(5)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1の規制部材の前記第1の端部は、円環状に形成されている。
(6)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1の端部が出力軸の軸まわりに不連続に形成されている場合と比較して、第1の規制部材は第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方からの第1の方向に向かう力を安定して受けることができる。
【0013】
(7)前記(5)または(6)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1の規制部材の前記第1の端部は、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と接触可能に対向する。
(7)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1の端部と第1の内輪体および第1の外輪体の他方とが接触することによって、第1の規制部材が出力軸の第1の方向への移動を規制することができる。
【0014】
(8)前記(3)〜(7)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記支持部は、前記出力軸の径方向の外方から前記ロータおよび前記ステータを覆う外周部と、前記孔が形成され、前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第1の端面を覆う第1の側壁部と、前記出力軸の軸心に沿う方向において前記ロータおよび前記ステータの第2の端面を覆う第2の側壁部と、を含む。
(8)の自転車用電動モータの支持構造によれば、外周部、第1の側壁部、および、第2の側壁部によってロータおよびステータが囲われるので、モータに異物等が付着することを抑制できる。
【0015】
(9)前記(8)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第2の側壁部は、前記外周部に着脱可能に取り付けられている。
(9)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の側壁部を外周部から取り外した状態で、モータを支持部に組み込んだり、モータのメンテナンスを行ったりすることができ、組立の作業性およびメンテナンス性が向上する。
【0016】
(10)前記(8)または(9)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第2の側壁部に設けられ、第2の内輪体、第2の外輪体、および、前記第2の内輪体と前記第2の外輪体との間に設けられる第2の転動体を含み、前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方が前記出力軸に支持され、第2の内輪体および第2の外輪体の他方が前記第2の側壁部に支持される第2の軸受をさらに含む。
(10)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第1軸受の他に第2の軸受によってもモータの出力軸が支持されるため、モータの出力軸を安定して支持することができる。
【0017】
(11)前記(10)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記出力軸の外周部は、前記第2の軸受の前記第2の内輪体および前記第2の外輪体の一方に結合され、前記出力軸の前記第1の方向とは反対の第2の方向への移動を規制する第1の段差部を有する。
(11)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の内輪体および第2の外輪体の一方と第1の段差部との結合によって、出力軸の第2の方向への移動を規制することができる。
【0018】
(12)前記(11)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記出力軸の外周部は、前記第1の部分と前記第1の段差部との間に、前記ロータの前記第2の方向
への移動を規制する第2の段差部を有する。
(12)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の段差部によってロータの第2の方向への移動を規制することができる。
【0019】
(13)前記(3)〜(12)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1の規制部材は、前記第2のねじ部の前記第1の方向の下流側に設けられる把持部をさらに含む。
(13)の自転車用電動モータの支持構造によれば、把持部を用いて第1の方向の下流
側から支持部の第1のねじ部に第1の規制部材の第2のねじ部をねじ込むことができる。
【0020】
(14)前記(13)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記把持部は、所定の工具を係合可能な形状を有する。
(14)の自転車用電動モータの支持構造によれば所定の工具を把持部に係合して第1の規制部材を回転させることができるので、第1の規制部材を取り付けるときの作業性を向上させることができる。
【0021】
(15)前記(2)〜(14)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記出力軸の軸心に沿う方向への前記第1の規制部材の移動を規制する第2の規制部材をさらに含む。
(15)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の規制部材によって、第1の規制部材を適切な位置に保持できる。
【0022】
(16)前記(15)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第2のねじ部は、前記第1のねじ部から前記第1の方向の下流側に突出する第2の突出部を含み、前記第2の規制部材は、前記第2の突出部に取り付けられる。
(16)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の規制部材を同軸上に配置できるため、簡便な構造で第1の規制部材の移動を規制することができる。
【0023】
(17)前記(16)に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第2の規制部材は、前記第2の突出部にねじ込まれる第3のねじ部を含む。
(17)の自転車用電動モータの支持構造によれば、第2の規制部材を第2の突出部にねじ込むことによって、第2の規制部材と第1の規制部材とを結合することができる。
【0024】
(18)前記(1)〜(17)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方と、前記第1の規制部材とは、一体に形成されている。
(18)の自転車用電動モータの支持構造によれば、部品点数の削減に貢献できる。
【0025】
(19)前記(1)〜(18)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造において、前記出力軸と同軸に設けられ、前記ロータと前記第1の軸受の前記第1の内輪体および前記第1の外輪体の他方との間に挟まれるスリーブをさらに含む。
(19)の自転車用電動モータの支持構造によれば、スリーブによってロータと第1の内輪体および第1の外輪体の他方との位置関係を維持することができる。
【0026】
(20)本発明に従う自転車用ドライブユニットの一形態は、前記(1)〜(19)のいずれか一項に記載の自転車用電動モータの支持構造と、前記ロータ、前記ステータ、および、前記出力軸を含む自転車用電動モータと、を含み、自転車の推進をアシスト可能に構成される。
(20)の自転車用ドライブユニットによれば、自転車の走行状態に応じてモータの出力軸が軸方向に移動してしまうことが抑制され、モータの出力軸の移動に伴う騒音の発生を抑制することができる。
【0027】
(21)前記(20)に記載の自転車用ドライブユニットにおいて、前記出力軸の径方向において、前記ロータは、前記ステータの内側に配置されている。
(21)の自転車用ドライブユニットによれば、ロータをステータの外側に配置する構成と比較して、ロータを回転軸に支持させる構造を簡素化することができる。
【0028】
(22)前記(20)または(21)に記載の自転車用ドライブユニットにおいて、前記自転車のクランク軸が設けられるハウジングをさらに含み、前記支持部の少なくとも一部は、前記ハウジングと一体に形成される。
(22)の自転車用ドライブユニットによれば、自転車用電動モータを安定してハウジングに支持させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本自転車用電動モータの支持構造およびこれを含む自転車用ドライブユニットは、出力軸の軸方向への移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1の実施形態の自転車用ドライブユニットの斜視図。
【
図3】
図2の自転車用ドライブユニットから第1のハウジングおよび第1のハウジングに取り付けられる部材を省略した側面図。
【
図6】第2の実施形態の自転車用ドライブユニットの斜視図。
【
図8】変形例の自転車用ドライブユニットの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
図1〜
図5を参照して、第1の実施形態の自転車用ドライブユニット10について説明する。自転車用ドライブユニット10は、自転車用電動モータの支持構造50と、自転車用電動モータ30とを含む。以下、「自転車用ドライブユニット」を、単に「ドライブユニット」と記載する。以下、「自転車用電動モータの支持構造」を、単に「支持構造」と記載する。以下、「自転車用電動モータ」を、単に「モータ」と記載する。
【0032】
図1および
図2に示すドライブユニット10は、自転車の推進をアシスト可能に構成される。ドライブユニット10は、自転車(図示略)に取り付けられる。ドライブユニット10は、外周部に自転車のフレーム(図示略)に取り付けるための複数の取付部10A、および、クランク軸14を配置するための孔10Bを含む。一例では、ドライブユニット10は、クランク軸14の周りに設けられる。
【0033】
図3および
図4に示されるとおり、ドライブユニット10は、ハウジング12、自転車のクランク軸14、出力部16、制御部18、減速機20、モータ30、および、支持構造50を含む。
【0034】
図4に示されるとおり、ハウジング12は、第1のハウジング部分12Aおよび第2のハウジング部分12Bを含む。第1のハウジング部分12Aおよび第2のハウジング部分12BはボルトB(
図1および
図2参照)によって互いに取り付けられる。第2のハウジング部分12Bは、モータ30が貫通する孔12Cを含む。ハウジング12には、クランク軸14が設けられる。ハウジング12は、クランク軸14の少なくとも一部、出力部16の少なくとも一部、制御部18、減速機20、モータ30の少なくとも一部、および、支持構造50の少なくとも一部を収容する。
【0035】
クランク軸14は、両端部がハウジング12から突出するようにハウジング12に設けられる。出力部16の軸心は、クランク軸14の軸心と一致する。出力部16は、クランク軸14の外周部に、クランク軸14から離間して設けられる。クランク軸14の回転は、ワンウェイクラッチ14Aを介して出力部16に伝達される。出力部16は、一方の端部がハウジング12から突出するようにハウジング12に設けられる。制御部18は、人力駆動力を検出するトルクセンサ(図示略)等の種々のセンサからの信号に基づいてモータ30を制御する。制御部18は、回路基板および回路基板に実装されるマイクロコンピュータを含む制御部品を含む。
【0036】
図5に示されるとおり、モータ30は、ロータ32、ステータ34、および、ロータ32と共に回転する出力軸36を含む。出力軸36の径方向において、ロータ32は、ステータ34の内側に配置されている。モータ30は、インナロータ型のモータである。出力軸36は、ロータ32に連結される第1の部分36A、他の部材に連結可能な第2の部分36B、および、第1の部分36Aと第2の部分36Bとの間の部分36Cを含む。ロータ32は、出力軸36に回転不能に固定されている。出力軸36は、中空に形成されていてもよく、中実に形成されていてもよい。第2の部分36Bには、減速機20(
図4参照)と噛み合う歯車38が設けられる。第2の部分36Bと歯車38とは一体に形成される。第2の部分36Bに連結される他の部材は、歯車38と噛み合う減速機20の第1の歯車22Aである。別の例では、第2の部分36Bに第2の部分36Bと別体の歯車38が設けられる。この場合、第2の部分36Bに連結される他の部材は、歯車38である。ロータ32およびステータ34は、それぞれ環状に形成されている。ロータ32は、ロータコアと、ロータコアに支持される複数の永久磁石とを含む。ステータ34は、ステータコアと、ステータコアに巻きつけられる複数のコイルとを含む。ロータコアおよびステータコアは、金属材料によって形成される。モータ30は、いわゆるブラシレスモータである。
【0037】
図4に示されるとおり、減速機20は、モータ30と出力部16とを結合する。減速機20は、モータ30の回転を減速して出力部16に伝達する。一例では、減速機20は、モータ30の一方向の回転を出力部16に伝達し、出力部16の一方向
の回転をモータ30に伝達しないワンウェイクラッチ20Aを備える。
【0038】
減速機20は、第1の軸22および第2の軸24を含む。第1の軸22および第2の軸24は、クランク軸14と平行する。第1の軸22には、第1の歯車22Aおよび第2の歯車22Bが設けられる。第1の軸22の一端部は、軸受22Cを介して第1のハウジング部分12Aに回転可能に支持され、他端部は、軸受22Dを介して支持部52に回転可能に支持される。第2の軸24には、第3の歯車24Aおよび第4の歯車24Bが設けられる。第2の軸24の一端部は、軸受24Cを介して第1のハウジング部分12Aに回転可能に支持され、他端部は、軸受24Dを介して第2のハウジング部分12Bに回転可能に支持される。第1の歯車22Aは、出力軸36の歯車38と噛み合う。第2の歯車22Bは、第3の歯車24Aと噛み合う。第4の歯車24Bは、出力部16の外周部の歯車16Aと噛み合う。第1の歯車22Aの歯数は、歯車38の歯数よりも多い。第3の歯車24Aの歯数は、第2の歯車22Bの歯数よりも多い。出力部16の歯車16Aの歯数は、第4の歯車24Bの歯数よりも多い。このため、モータ30の回転は、減速機20によって3段階にわたって減速されて出力部16に伝達される。ワンウェイクラッチ20Aは、第1の軸22に設けられてもよいが、第2の軸24に設けられるのがより好ましい。ワンウェイクラッチ20Aは、例えば第3の歯車24Aと第2の軸24との間に設けられる。ワンウェイクラッチ20Aは、例えばローラクラッチを含む。減速機20の構成は、これに限らない。例えば減速機20は、歯車を2つ用いて1段階で減速したり、歯車を4つ用いて2段階で減速したり、歯車を8つ以上用いて4段階以上にわたって減速したりする構成とすることができる。減速機20は、遊星歯車機構、ベルトおよびチェーンのいずれか1つを含んでいてもよい。
【0039】
図5に示されるとおり、支持構造50は、支持部52と、第1の軸受54と、第1の規制部材56とを含む。一例では、支持構造50は、第2の軸受58、第2の規制部材60、および、スリーブ62をさらに含む。
【0040】
支持部52は、外周部64と、第1の側壁部66と、第2の側壁部68と、を含む。支持部52は、出力軸36が貫通する孔70を含む。外周部64は、出力軸36の径方向の外方からロータ32およびステータ34を覆う。外周部64は、円筒形状を有する。外周部64の内周部には、ステータ34が固定して設けられる。外周部64は、第1の側壁部66に固定される。外周部64は、第1の側壁部66にボルトによって固定されてもよく、かしめによって固定されてもよく、溶接または接着によって固定されてもよい。
【0041】
第1の側壁部66は、出力軸36の軸心に沿う方向においてロータ32およびステータ34の第1の端面34Aを覆う。第1の側壁部66には、孔70が形成される。第1の側壁部66は、出力軸36の軸心に沿う方向と直交する方向に延びる円盤形状の板状部66Aと、板状部66Aの中央付近において出力軸36の軸心に沿う方向に延びる突出部66Bとを含む。孔70は、突出部66Bを出力軸36の軸心に沿う方向に貫通する。支持部52は、出力軸36と同軸に設けられる第1のねじ部70Aを含む。孔70の内周面は、第1のねじ部70Aと、非ねじ形成部70Bとを含む。第1のねじ部70Aには、雌ねじが形成されている。非ねじ形成部70Bは、第1のねじ部70Aよりもステータ34側に形成されている
。第1のねじ部70Aは、出力軸36の軸心に沿って第1の部分36Aから第2の部分36Bに向かう第1の方向A1において第2の部分36Bと第1の軸受54との間に設けられる。第1のねじ部70Aは、孔70の内周面の少なくとも一部を含む。第1のねじ部70Aは、孔70のうちの第1の方向A1において板状部66Aよりも下流側に形成される。
図4に示されるとおり、板状部66Aには、第1の軸22の軸受22Dを支持する凹部66Cが形成されている。支持部52の外周部64は、第2のハウジング部分12Bを挿通する。外周部64および第1の側壁部66の少なくともいずれか一方には、ボルトを挿通可能な複数の孔が形成されており、ハウジング12の内部空間側から図示しないボルトによって第2のハウジング部分12Bに固定されている。
【0042】
図5に示されるとおり、第2の側壁部68は、出力軸36の軸心に沿う方向においてロータ32およびステータ34の第2の端面34Bを覆う。第2の側壁部68は、円形の板形状を有する。第2の側壁部68は、外周部64と一体に形成される。第2の側壁部68と外周部64とは、ワンピース構造を有する。第2の側壁部68は、ステータ34側の表面部分に凹部68Aを含む。凹部68Aには、第2の軸受58が配置される。第2の側壁部68の第1の方向A1の上流側の外表面は、
図1および
図4に示されるようにカバー部材37によって覆われている。カバー部材37は、第2のハウジング部分12Bにボルトによって着脱可能に固定されている。カバー部材37は、金属材料によって形成され、第2の側壁部68に接触して設けられている。カバー部材37には、外表面に放熱用のフィンが形成されるのが好ましい。
【0043】
第1の軸受54は、孔70に配置される。第1の軸受54は、第1の内輪体72、第1の外輪体74、および、第1の内輪体72と第1の外輪体74との間に設けられる第1の転動体76を含む。第1の内輪体72は、第1の部分36Aと第2の部分36Bとの間の部分36Cを支持する。第1の軸受54は、ラジアル軸受である。一例では、第1の内輪体72は、出力軸36の部分36Cに圧入されている。他の例では、第1の内輪体72は、出力軸36の部分36Cに隙間嵌めされている。第1の外輪体74は、支持部52に支持される。一例では、第1の外輪体74は、孔70の非ねじ形成部70Bに隙間嵌めされている。転動体76は、球体であることが好ましいが、円柱体または円筒体であってもよい。第1の軸受54は、第1の方向A1において少なくとも一部が板状部66Aとオーバーラップするように配置されるのが好ましい。
【0044】
第1の規制部材56は、支持部52とは別体に形成されている。第1の規制部材56は、出力軸36と同軸に配置され、第1の方向A1への、第1の外輪体74の移動を規制する。第1の規制部材56は、筒状に形成される。第1の規制部材56は、第2のねじ部82を含む。一例では、第1の規制部材56は、外周部78、内周部80、第1の突出部56C、および、把持部56Dをさらに含む。第1の規制部材56は、例えば金属材料によって形成される。第1の規制部材56は、高い剛性を有し、弾性変形しないことが好ましい。
【0045】
第2のねじ部82は、第1のねじ部70Aにねじ込まれる。第2のねじ部82は、第1の規制部材56の外周部78に形成されている。第2のねじ部82は、雄ねじを含む。第2のねじ部82は、第1のねじ部
70Aから第1の方向A1の下流側に突出する第2の突出部82Aを含む。すなわち、第2の突出部82Aは、第2のねじ部82のうちの第2の端部56B側の部分である。出力軸36の軸心に沿う方向において、第2のねじ部82は、第1のねじ部70Aよりも長い。
【0046】
第1の突出部56Cは、第1の方向A1の上流側の第1の端部56Aに、第2のねじ部82の外周面よりも出力軸36の径方向の外方に突出する。第1の規制部材56の第1の端部56Aは、円環状に形成されている。第1の規制部材56の第1の端部56Aは、第1の外輪体74と接触可能に対向する。
【0047】
把持部56Dは、第2のねじ部82の第1の方向A1の下流側に設けられる。把持部56Dは、所定の工具を係合可能な形状を有する。把持部56Dは、出力軸36の軸心に垂直な方向の断面が、例えば六角形状を有する。この場合、所定の工具は、レンチである。
【0048】
第2の規制部材60は、出力軸36の軸心に沿う方向への第1の規制部材56の移動を規制する。第2の規制部材60は、第2の突出部82Aに取り付けられる。第2の規制部材60は、第2の突出部82Aにねじ込まれる第3のねじ部84を含む。第2の規制部材60は、例えば金属材料によって形成される。第2の規制部材60は、高い剛性を有し、弾性変形しないことが好ましい。第2の規制部材60は、支持部52との間に隙間ができないように、第3のねじ部84が第2の突出部82Aにねじ込まれる。第2の規制部材60と、支持部52との間には、ワッシャなどの中間部材が設けられてもよいが、この場合には、第2の規制部材60および中間部材の間と、中間部材と支持部52との間に隙間ができないように第2の規制部材60の第3のねじ部84が第2の突出部82Aにねじ込まれる。
【0049】
第2の軸受58は、第2の側壁部68に設けられる。第2の軸受58は、第2の内輪体86、第2の外輪体88、および、第2の内輪体86と第2の外輪体88との間に設けられる第2の転動体90を含む。第2の軸受58は、ラジアル軸受である。第2の内輪体86は、出力軸36に支持される。一例では、第2の内輪体86は、出力軸36に隙間嵌めされている。別の例では、第2の内輪体86は、出力軸36に圧入されている。第2の外輪体88は、第2の側壁部68に支持される。一例では、第2の外輪体88は、第2の側壁部68の凹部68Aに隙間嵌めされている。別の例では、第2の外輪体88は、凹部68Aに圧入されている。
【0050】
出力軸36の外周部36Dは、第1の段差部36Eおよび第2の段差部36Fを有する。第1の段差部36Eは、出力軸36の第1の方向A1の上流側の端部付近に設けられる。第1の段差部36Eは、第2の軸受58の第2の内輪体86に結合され、出力軸36の第1の方向A1とは反対の第2の方向A2への移動を規制する。第1の段差部36Eの第1の方向A1の上流側の端面は、第2の軸受58の第2の内輪体86の第1の方向A1の下流側の端面に対向する。第2の段差部36Fは、外周部36Dの第1の部分36Aと第1の段差部36Eとの間に設けられる。第2の段差部36Fは、ロータ32の第2の方向A2へ移動を規制する。第2の段差部36Fの第1の方向A1の下流側の端面は、ロータ32の第1の方向A1の上流側の端面に対向する。
【0051】
スリーブ62は、出力軸36と同軸に設けられる。スリーブ62は、ロータ32と第1の軸受54の第1の内輪体72との間に挟まれる。このため、ロータ32は、第2の段差部36Fとスリーブ62との間に挟み込まれて出力軸36に対する第1の方向A1および第2の方向A2への移動が規制される。また、スリーブ62によって第1の内輪体72の第2の方向A2への移動が規制される。
【0052】
第1の軸受54の位置調整の方法について説明する。
第1の軸受54の位置調整の方法は、第1の工程および第2の工程を含む。
【0053】
第1の工程は、第1の側壁部66の孔70に、第1の方向A1の下流側から第1の規制部材56を挿入する工程を含む。このとき、工具を用いて把持部56Dを回転させることによって、第1の規制部材56の第2のねじ部82を第1のねじ部70Aにねじ込む。第2のねじ部82の第1のねじ部70Aへのねじ込み量を調整することによって、第1の規制部材56の支持部52に対する位置が調整される。
【0054】
第2の工程は、第2のねじ部82に第2の規制部材60をねじ込む工程を含む。第2のねじ部82を第2の規制部材60にねじ込むことによって、第1の規制部材56の支持部52に対する移動が規制される。
【0055】
第1の工程において、第2のねじ部82の第1のねじ部70Aへのねじ込み量を調整することによって、第1の外輪体74と第1の規制部材56の第1の端部56Aとの距離を適切な距離にすることができる。第1の外輪体74と第1の規制部材56の第1の端部56Aとの適切な距離は、例えば、第1の外輪体74と第1の規制部材56とが接触する距離、または、第1の外輪体74と第1の規制部材56との間に微小な隙間が生じる距離である。第1の外輪体74と第1の規制部材56との距離は、例えば0μm以上、かつ、1mm以下が好ましく、200μm以下がさらに好ましい。好ましくは、第1の規制部材56は、第1の外輪体74に
予圧を付与するように支持部52に配置される。
【0056】
(第2の実施形態)
図6および
図7を参照して、第2の実施形態のドライブユニット110について説明する。ドライブユニット110は、支持構造150を含む。ドライブユニット10と、ドライブユニット110とは、支持構造150の支持部94の構成のみが異なり、他の部分は同様であるので、第1の実施形態と共通する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。第2の実施形態では、支持部94の少なくとも一部が、ドライブユニット110のハウジング92と一体に形成される。なお、
図6および
図7では、モータ30、ハウジング92の一部分、および、支持構造150以外の部材を省略して示す。
【0057】
図6に示されるとおり、ドライブユニット110は、ハウジング92を含む。ハウジング92は、第1のハウジング部分12Aおよび第2のハウジング部分92Bを含む。第1のハウジング部分12Aおよび第2のハウジング部分92BはボルトBを介して互いに取り付けられる。
図7に示されるとおり、第2のハウジング部分92Bには、ハウジング92の外側から第2のハウジング部分92Bにステータ34、ロータ32、および、出力軸36を取り付けるための開口92Cが形成されている。
【0058】
支持構造150は、支持部94と、第1の軸受54と、第1の規制部材56とを含む。一例では、支持構造150は、第2の軸受58、第2の規制部材60、および、スリーブ62をさらに含む。
【0059】
支持部94は、外周部96、第1の側壁部98、および、第2の側壁部99を含む。支持部
94の少なくとも一部は、ハウジング92と一体に形成される。外周部96および第1の側壁部98は、第2のハウジング部分92Bと一体に形成される。第1の側壁部98は、ハウジング92と一体に形成されている点以外は、第1の実施形態の第1の側壁部
66と同様な構成である。外周部96は、ハウジング92と一体に形成されている点以外は、第1実施形態の外周部64(
図4参照)と同様な構成である。第2のハウジング部分92Bは、第1の実施形態における第2のハウジング部分12B、外周部64、および、第1の側壁部66(いずれも
図4参照)をワンピース構造にした構成と同様である。第2の側壁部99は、円盤形状を有する。第2の側壁部99は、外周部96に着脱可能に取り付けられている。第2のハウジング部分92Bの開口92Cは、外周部96の第1の方向A1の上流側の端部に形成されている。第2の側壁部99は、開口92Cを塞ぐように取り付けられる。一例では、第2の側壁部99は、ボルト(図示略)によって外周部96に着脱可能に取り付けられている。第2の側壁部99の構造は、外周部96と別体で構成される点以外は、第1の実施形態の第2の側壁部68(
図4参照)の構造と同様である。第2の側壁部99の外表面には、第1の実施形態のカバー部材37(
図4参照)と同様な放熱フィンを設けてもよい。
【0060】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う自転車用電動モータの支持構造および自転車用ドライブユニットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用電動モータの支持構造および自転車用ドライブユニットは、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0061】
・出力軸36を中空に形成して、第1の軸受54の第1の外輪体74が出力軸36のうちの第1の部分36Aと第2の部分36Bとの間の部分36Cを支持し、第1の軸受54の第1の内輪体72が支持部52に支持されるようにすることもできる。この場合、支持部52の一部が、出力軸36の内周空間に配置されるように支持部52を構成する。第1の軸受54は、出力軸36の内周空間に配置され、出力軸36の径方向で支持部52の一部と出力軸36との間に挟まれる。
【0062】
・出力軸36を中空に形成して、第2の軸受58の第2の外輪体88が出力軸
36に支持され、第2の軸受58の第2の内輪体86が第2の側壁部68,99に支持されるようにすることもできる。この場合、支持部52の一部が、出力軸36の内周空間に配置されるように支持部52を構成する。第2の軸受58は、出力軸36の内周空間に配置され出力軸36の径方向で支持部52の一部と出力軸36との間に挟まれる。
【0063】
・モータ30を、出力軸36の径方向において、ロータ32がステータ34の外側に配置されるようにすることもできる。すなわち、モータ30を、アウタロータ型のモータにすることもできる。この場合、出力軸36の径方向に延びて、出力軸36の外周部とロータ32とを連結する連結部を設ければよい。
【0064】
・第1の軸受54を、
図8に示す第1の軸受100に変更することもできる。第1の軸受100は、いわゆるカップアンドコーン型の軸受である。第1の軸受100は、第1の内輪体102、第1の外輪体104、および、第1の内輪体102と第1の外輪体104との間に設けられる第1の転動体106を含む。第1の外輪体104と、第1の規制部材56とは、一体に形成されている。なお、第1の外輪体104と、第1の規制部材56とは、別体で構成されていてもよい。
【0065】
・第1の突出部56Cは省略されてもよい。第1の突出部56Cは、円環状以外の形状であってもよい。第1の突出部56Cは、例えば出力軸36の周方向に離間して複数の凸部を含んでいてもよい。
【0066】
・把持部56Dは、工具が係合可能な形状に形成されなくてもよい。把持部56Dは省略されてもよい。把持部56Dを省略する場合、例えば第2のねじ部82の外表面部の一部に工具を係合可能であって、平行な2つの平面を形成しておくことができる。
【0067】
・第2の規制部材60の外周部は、工具が係合可能な形状に形成されていてもよい。
・第2の規制部材60は省略されてもよい。第2の規制部材60を省略する場合、第1の規制部材56の位置調整を行った後、支持部52の一部、たとえば突出部66Bを変形させたり、接着剤を塗布したり、溶接したりして、第1の規制部材56を支持部52に固定することもできる。
【0068】
・ドライブユニット10を、自転車の車輪の車軸周りに設けることもできる。この場合、クランク軸14は省略され、モータ30の出力は、リアスプロケットまたはチェーンに伝達されるか、あるいはリアスプロケットを介さずにハブシェルに伝達されるように構成される。
【0069】
・ドライブユニット10の自転車の推進をアシストするモータ30以外のモータに本発明を適用することもできる。例えば、電動変速機のモータ、電動アジャスタブルシートポストのモータ、電動サスペンションのモータなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0070】
10…ドライブユニット(自転車用ドライブユニット)、12,92…ハウジング、30…モータ(自転車用電動モータ)、32…ロータ、34…ステータ、34A…第1の端面、34B…第2の端面、36…出力軸、36A…第1の部分、36B…第2の部分、36C…部分、36D…外周部、36E…第1の段差部、36F…第2の段差部、50…自転車用電動モータの支持構造、52,94…支持部、54…第1の軸受、56…第1の規制部材、56A…第1の端部、56C…第1の突出部、56D…把持部、58…第2の軸受、60…第2の規制部材、62…スリーブ、64,96…外周部、66,98…第1の側壁部、68,99…第2の側壁部、70…孔、70A…第1のねじ部、72…第1の内輪体、74…第1の外輪体、76…第1の転動体、78…外周部、78A…外周面、80…内周部、82…第2のねじ部、82A…第2の突出部、84…第3のねじ部、86…第2の内輪体、88…第2の外輪体、90…第2の転動体。