特許第6753757号(P6753757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753757
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】燃料ポンプ用DCモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   H02K13/00 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-204338(P2016-204338)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-68004(P2018-68004A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年12月8日
【審判番号】不服2019-1075(P2019-1075/J1)
【審判請求日】2019年1月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504100743
【氏名又は名称】有限会社 ジャパンマグネット
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】藤川 和豊
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 柿崎 拓
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−171304(JP,A)
【文献】 特開2006−158032(JP,A)
【文献】 特表2008−524979(JP,A)
【文献】 特開2005−176492(JP,A)
【文献】 特開平8−256462(JP,A)
【文献】 特開2016−127800(JP,A)
【文献】 特開2006−42463(JP,A)
【文献】 特開平10−23717(JP,A)
【文献】 特開2009−51227(JP,A)
【文献】 特開2006−191749(JP,A)
【文献】 特開2005−269780(JP,A)
【文献】 実開昭56−52471(JP,U)
【文献】 米国特許第3353047(US,A)
【文献】 実開昭61−72066(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0261701(US,A1)
【文献】 特開2002−153019(JP,A)
【文献】 特開2005−278228(JP,A)
【文献】 実開昭55−74267(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K13/00
H02K23/00-23/68
H01R39/18-39/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子の外周面に摺接するカーボンブラシを有する燃料ポンプ用DCモータであって、
前記カーボンブラシは、前記整流子に摺接する面に、ロータの回転方向に沿った凹部が設けられ、該凹部によって2つの均一の厚さの立ち上がり部が対向して形成されるとともに、該2つの立ち上がり部の先端にそれぞれ先端から凹部が設けられた内側に向かって傾斜したテーパ部が形成され、該立ち上がり部の先端が前記ロータの軸方向2箇所で前記整流子に同時に摺接することを特徴とする燃料ポンプ用DCモータ。
【請求項2】
前記カーボンブラシは、
銅を20重量パーセント、カーボンを77重量パーセント含み、硬さが26ショア、抵抗率が2500マイクロオーム・センチメートルの銅を含む高硬度、高抵抗率のカーボン材料からなることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ用DCモータ。
【請求項3】
前記ロータがベアリング軸受けで軸支されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料ポンプ用DCモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプ用DCモータに関し、詳しくは、カーボンブラシの寿命を飛躍的に改善した燃料ポンプ用DCモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラシを用いるこの種のDCモータとしては、特許文献1に開示された「DCモータ」が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された「DCモータ」には、ブラシホルダ18に固定されたカーボンホルダ31に内装されて支持され、コミテータ26の外周面に摺接するカーボンブラシ30が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された「DCモータ」で採用されているカーボンブラシ30は、そのコミテータ(整流子)26の外周面に摺接する面が平面状に形成されているため、この「DCモータ」を例えば、二輪車の燃料ポンプに用いた場合、カーボンブラシ30の磨耗により、その寿命が3000時間に満たないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−004624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、寿命を飛躍的に改善した燃料ポンプ用DCモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、整流子の外周面に摺接するカーボンブラシを有する燃料ポンプ用DCモータであって、前記カーボンブラシは、前記整流子に摺接する面に、ロータの回転方向に沿った凹部が設けられ、該凹部によって2つの均一の厚さの立ち上がり部が対向して形成されるとともに、該2つの立ち上がり部の先端にそれぞれ先端から凹部が設けられた内側に向かって傾斜したテーパ部が形成され、該立ち上がり部の先端が前記ロータの軸方向2箇所で前記整流子に同時に摺接することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記カーボンブラシは、銅を20重量パーセント、カーボンを77重量パーセント含み、硬さが26ショア、抵抗率が2500マイクロオーム・センチメートルの高硬度、高抵抗率のカーボン材料からなることを特徴とする
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ロータがベアリング軸受けで軸支されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、整流子の外周面に摺接するカーボンブラシを有する燃料ポンプ用DCモータであって、前記カーボンブラシは、前記整流子に摺接する面に、ロータの回転方向に沿った凹部が設けられ、該凹部によって2つの均一の厚さの立ち上がり部が対向して形成されるとともに、該2つの立ち上がり部の先端にそれぞれ先端から凹部が設けられた内側に向かって傾斜したテーパ部が形成され、該立ち上がり部の先端が前記ロータの軸方向2箇所で前記整流子に同時に摺接するように構成したので、燃料ポンプ用DCモータの寿命を飛躍的に改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る燃料ポンプ用DCモータの一実施例の左側面図、正面図、右側面図及び斜視図である。
図2図2は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータのA−A断面図である。
図3図3は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータのブラケットに収容されるカーボンブラシ組立体の正面図、側面図、裏面図及び斜視図である。
図4図4は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータのブラケットの左側面図、B−B断面図、右側面図及び斜視図である。
図5図5は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータのカーボンブラシの上面図、正面図、側面図及び斜視図である。
図6図6は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータにおけるカーボンブラシの長寿命化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施例について、願書に添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る燃料ポンプ用DCモータの一実施例を示すもので、図1(A)は、その左側面図、図1(B)は、その正面図、図1(C)は、その右側面図、図1(D)は、その斜視図である。また、図2は、図1(A)のA−A断面図である。
【0020】
図1及び図2において、本発明に係る燃料ポンプ用DCモータ100は、筒状のハウジング10内に、ロータ20と、マグネット30とが収容され、一端にカーボンブラシ組立体400が収容されるブラケット50が設けられて構成される。
【0021】
ここで、ロータ20は、シャフト24と、このシャフト24に取り付けられ、それぞれコイル21が巻設された電機子を構成する、例えば、3極のロータコア22と、シャフト24に取り付けられ、ロータコア22のコイル21に順次電流を流すための整流子23とを有している。
【0022】
ロータ20のシャフト24は、ハウジング10に設けられたベアリング軸受け11をとブラケット50に設けられたベアリング軸受け51とで軸支され、ハウジング10の中心軸上に位置するように収容される。
【0023】
マグネット30は、燃料ポンプ用DCモータ100の固定子を構成するもので、ハウジング10の内周面に沿って取り付けられた、例えば、2つのマグネット30からなっている。
【0024】
ブラケット50は、カーボンブラシ40を含む一対のカーボンブラシ組立体400を収容するもので、カーボンブラシ組立体400に含まれるカーボンブラシ40はロータ20の整流子23の外周面に摺接される。このカーボンブラシ組立体400及びブラケット50の詳細については、後に図3及び図4を参照して詳述し、カーボンブラシ40の詳細については、後に、図5及び図6を参照して詳述する。
【0025】
上記構成からなる燃料ポンプ用DCモータ100は、シャフト24に図示ないインペラが取り付けられ、例えば、二輪車用の燃料ポンプに適用される。
【0026】
図3は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータ100のブラケット50に収容されるカーボンブラシ組立体400の正面図、側面図、裏面図及び斜視図である。また、図4は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータ100のブラケット50の左側面図、B−B断面図、右側面図及び斜視図である。
【0027】
カーボンブラシ組立体400は、図3に示すように、ブラシバネ41の先端にカーボンブラシ40が取り付けられ、ブラシバネ41の他端には、ブラケット50に取り付けるための取付部43が設けられている。また、カーボンブラシ40には、電流を供給するための端子42が設けられている。また、ブラシバネ41の上面には、防振ゴム44が取り付けられている。
【0028】
上記構成からなる1対のカーボンブラシ組立体400a及び400bは、図4に示すように、取付部43a及び43bをブラケット50に螺子止めすることにより、ブラケット50内に収容される。
【0029】
ここで、カーボンブラシ組立体400aのカーボンブラシ40a及びカーボンブラシ組立体400bの40bは、ブラシバネ41a及び41bにより、ロータ20の整流子23の外周面に摺接され、ロータコア22のコイル21に順次電流が供給され、ロータ20が回転する。
【0030】
図5は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータ100のカーボンブラシ50の詳細を示すもので、図5(A)は、その上面図、図5(B)は、その正面図、図5(C)は、その側面図、図5(D)は、その及び斜視図である。また、図6は、図1に示した燃料ポンプ用DCモータ100におけるカーボンブラシ70の長寿命化を説明する図で、図6(A)は、初期状態におけるカーボンブラシ70とロータ20の整流子23との位置関係を示す図、図6(B)から図(D)は、カーボンブラシ70の磨耗が進むに従ったカーボンブラシ70とロータ20の整流子23との位置関係の推移を示す図である。
【0031】
図5に示すように、カーボンブラシ40は、整流子23に摺接する面に、ロータ20の回転方向に沿った凹部40−1が形成され、カーボンブラシ40と整流子23とがロータ20の軸方向で2箇所で摺接する形状から形成されている。
【0032】
また、このカーボンブラシ40には、ロータ20の軸方向の2箇所で立ち上がる均一の厚さの立ち上がり部40−2が設けられている。
【0033】
このカーボンブラシ40は、銅を含む高硬度、高抵抗率のカーボン材料から形成され、このカーボン材料としては、例えば、銅を20Wt%(重量パーセント)、カーボンを77Wt%(重量パーセント)含み、硬さが26HS(ショア)、抵抗率が2500μΩ・cm(マイクロオーム・センチメートル)の材料を用いることができる。
【0034】
この場合の、カーボン材料の見掛比重は、2.1g/cm3、摩擦計数は0.14〜0.16μ、接触電圧降下は、0.5〜1.5Vである。
【0035】
上記構成のカーボンブラシ40を用いると、燃料ポンプ用DCモータ100の寿命を6000時間以上に延ばすことができる。
【0036】
その理由は、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面に、ロータ20の回転方向に沿った凹部40−1を形成したので、カーボンブラシ40と整流子23とがロータ20の軸方向で2箇所で摺接することになり、これによりカーボンブラシ40の整流子23に摺接する面の電流密度が高くなったためと考えられる。
【0037】
すなわち、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面の電流密度が高くなると、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面での皮膜形成が良好となり、これにより、カーボンブラシ40の磨耗が少なくなったためと考えられる。
【0038】
これに対して、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面が平面状で、カーボンブラシ40の全面が整流子23に摺接していると、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面の電流密度は低くなり、この結果、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面での皮膜形成が不十分な状態となって、カーボンブラシ40の整流子23による磨耗が大きくなり、カーボンブラシ40の磨耗も大きくなると考えられる。
【0039】
また、本願発明に係るカーボンブラシ40の形状によれば、ロータ20の軸方向の2箇所で立ち上がる均一の厚さの立ち上がり部40−2を有しているので、図6(A)から図6(C)の状態になるまでは、カーボンブラシ40は整流子23とロータ20の軸方向で2箇所で摺接することになり、これにより、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面の電流密度は高い状態に維持されるので、カーボンブラシ40の整流子23に摺接する面での良好な皮膜形成が維持されて、カーボンブラシ40の磨耗は小さくなるので、この結果、燃料ポンプ用DCモータ100の長寿命化が図れる。
【0040】
更に、本願発明に係る燃料ポンプ用DCモータ100においては、ロータ20のシャフト24がベアリング軸受け11及び51で軸支されているので、カーボンブラシ40の長寿命化だけでなく、燃料ポンプ用DCモータ100の全体の長寿命化が図れる。
【0041】
なお、上記実施例では、本発明の燃料ポンプ用DCモータ100を二輪車用の燃料ポンプに適用する場合を示したが、本発明の燃料ポンプ用DCモータ100は、他の燃料ポンプにも同様に適用することができる。
【0042】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…ハウジング
11…ベアリング軸受け
20…ロータ
21…コイル
22…ロータコア
23…整流子
24…シャフト
40、40a、40b…カーボンブラシ
40−1…凹部
40−2…立ち上がり部
41、41a、41b…ブラシバネ
42、42a、42b…端子
43、43a、43b…取付部
44、44a、44b…防振ゴム
100…燃料ポンプ用DCモータ
400、400a、400b…カーボンブラシ組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6