(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば高粘度な液を用いた場合、サックバック弁によってノズル側の流路に負圧が付与されたとしても、ノズルの開口付近に残留している液を上流側に吸引できないことがある。このように、サックバック弁による吸引力(すなわち、サックバック量)が不十分な場合、ノズルの移動等によって開口から液がぼた落ちする虞がある。
【0005】
例えば、変形することで流路内の容積を変化させるダイヤフラムと、ボタン部分が押圧されることによってダイヤフラムの原点位置を示す信号を発信するリミットスイッチと、リミットスイッチに対して当接または離間する方向に移動可能な可動部材と、回転駆動力を発生させる電動モータと、この回転駆動力を用いてダイヤフラムを変形させるダイヤフラム駆動部と、この回転駆動力を用いて可動部材を回動させる可動部材駆動部と、を有するサックバック弁がある。このサックバック弁では、電動モータの回転駆動力を用いて可動部材を回動させ、該可動部材がリミットスイッチのボタン部分を押すことでダイヤフラムの原点位置を得ることができる。
【0006】
しかしながら、可動部材や可動部材駆動部がリミットスイッチの筐体部分と衝突することを防止する観点から、可動部材の可動範囲はモータの回転数1回転未満に相当する範囲に制限される。そのため、このようなサックバック弁では、サックバック量を広範囲に調整することが困難となる。
【0007】
なお、このようなサックバック弁であっても、ダイヤフラム駆動部がネジ構造を有し、電動モータの回転駆動力が該ネジ構造によってダイヤフラムに対する直線駆動力に変換される場合には、サックバック量を広範囲に調整しうる。具体的には、該ネジ構造におけるネジのピッチを大きくする(すなわち、電動モータの回転量に対するダイヤフラムの変位量を大きくする)ことで、サックバック量を広範囲に調整することができる。他方、このようにネジのピッチが大きいサックバック弁では、サックバック量を調整する際の最小単位が大きくなり、サックバック量の微調整をし難いという欠点がある。例えば、電動モータがパルスモータである場合には、1パルスあたりのサックバック量が大きくなってしまい、微調整によってサックバック量を所望の値にすることが困難になる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、サックバック弁に関してサックバック量を広範囲に調整することができ、且つサックバック量の微調整もすることができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様にかかるバルブユニットは、処理液を吐出するノズルに前記処理液を送給する流路と、前記流路内の容積を変化させるサックバック弁と、を備え、前記サックバック弁は、変形することで前記流路内の容積を変化させるダイヤフラムと、直線駆動によって前記ダイヤフラムを変形させるピストンと、ボタン部分を含み、前記ボタン部分が押圧されることによって前記ダイヤフラムの原点位置を示す信号を発信するリミットスイッチと、前記リミットスイッチに対して当接または離間するように移動可能な可動部材と、回転駆動力を発生させる電動モータと、前記回転駆動力を直線駆動力に変換して前記ピストンに伝達し、前記ピストンを直線駆動させることによって前記ダイヤフラムを変形させる第1駆動部と、前記回転駆動力を直線駆動力に変換して前記可動部材に伝達し、前記可動部材を前記リミットスイッチに対して当接または離間するように直線駆動させる第2駆動部と、を有し、前記可動部材の可動範囲は、前記電動モータの1回転に相当する前記可動部材の移動距離よりも大きい。
【0010】
第2の態様にかかるバルブユニットは、第1の態様にかかるバルブユニットであって、前記電動モータは両軸モータであり、前記ダイヤフラム側に位置する第1軸部分は前記第1駆動部に前記回転駆動力を伝達し、反対側に位置する第2軸部分は前記第2駆動部に前記回転駆動力を伝達する。
【0011】
第3の態様にかかるバルブユニットは、第1または第2の態様にかかるバルブユニットであって、前記流路に沿って前記サックバック弁よりも上流側に位置し、前記流路を開状態または閉状態に切り替える開閉弁、をさらに備える。
【0012】
第4の態様にかかる基板処理装置は、第1から第3までのいずれか1つの態様にかかるバルブユニットと、基板を保持する基板保持部と、前記流路に前記処理液を送る送給部と、前記流路を通じて送られた前記処理液を前記基板に吐出するノズルと、前記可動部材が前記リミットスイッチの前記ボタン部分を押圧することで前記リミットスイッチが発信する前記ダイヤフラムの原点位置を示す信号に基づいて、前記電動モータの回転駆動を制御する制御部と、を備える。
【0013】
第5の態様にかかる基板処理装置は、第4の態様にかかる基板処理装置であって、前記処理液は、前記基板上に塗布膜を形成するための塗布液である。
【発明の効果】
【0014】
第1から第3の態様にかかるバルブユニットおよび第4もしくは第5の態様にかかる基板処理装置では、可動部材の可動範囲は、電動モータが1回転した際の可動部材の移動距離よりも大きい。このため、サックバック量を広範囲に調整することができ、且つサックバック量の微調整もすることができる。その結果、液のぼた落ち等の問題を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図面には、方向を説明するためにXYZ直交座標軸が付される場合がある。座標軸における+Z方向は鉛直上方向であり、XY平面は水平面である。
【0017】
<1 実施形態>
<1.1 塗布装置1の全体構成>
図1は、塗布装置1の概略構成図である。
図2は、ノズル移動機構の構成を示す上面図である。
【0018】
塗布装置1は、基板Wを水平姿勢で保持し、基板Wの略中心を通過して鉛直方向に伸びる軸AX1周りに基板Wを回転させる回転保持部3を備えている。回転保持部3は、基板Wを回転可能に保持するスピンチャック5と、スピンチャック5を回転させるチャック回転機構7とを備えている。スピンチャック5には、図示しない通気路が形成されており、その通気路内を排気することで、基板Wの裏面を真空吸着して保持するように構成されている。このように、回転保持部3は、基板Wを保持する基板保持部として機能する。なお、基板Wの保持態様は、本実施形態とは異なり、基板Wのエッジ部分を複数のチャックピン等で狭んで保持する態様であっても構わない。チャック回転機構7は、モータ等で構成される。
【0019】
また、塗布装置1は、薬液吐出時に、回転する基板Wから飛散する薬液を受け止めて回収するカップ9を備える。カップ9は、図示しない機構により昇降するように構成されている。回転保持部3に保持された基板Wの上方には、レジスト液などの薬液を基板Wに向けて吐出するノズル11が配置される。ノズル11は、基板Wの上方の吐出位置と基板Wの外側の待機部13の待機位置との間で、ノズル移動機構15(
図2参照)により移動される。
【0020】
塗布装置1は、
図2のように、2つ以上のノズル11を備えている。各ノズル11は、異なる種類の薬液を吐出するようにしてもよい。薬液としては、例えば、カラーレジスト液、それ以外のレジスト液、反射防止膜形成用の薬液などの塗布液が用いられる。各ノズル11は、待機部13で待機する。待機部13は、その位置において、ノズル11から吐出した薬液を排液できるように構成されている。
【0021】
ノズル移動機構15は、1つのノズル11を把持する把持部17を備える。把持部17は、第1移動部19によりY方向に移動されるようになっており、把持部17および第1移動部19は、第2移動部21によりX方向に移動されるようになっている。すなわち、第1移動部19および第2移動部21は、把持部17を基板Wの表面に沿って2次元方向(XY方向)に移動可能である。第1移動部19および第2移動部21は、例えばモータ等により駆動される。また、第1移動部19は、上下シリンダ23を介在させて、第2移動部21に取り付けられている。上下シリンダ23は、把持部17および第1移動部19をZ方向に移動させる。上下シリンダ23は、例えば、エアなどの気体を供給すること等により駆動される。このような構成となっているので、ノズル移動機構15は、把持部17に把持されたノズル11をXY方向およびZ方向に沿って移動させることができる。
【0022】
塗布装置1は、ノズル11に薬液を送給するための構成として、ノズル11に連通する配管31と、配管31を通じてノズル11に薬液を供給する送給部33と、を備える。また、塗布装置1は、配管31の経路に沿って上流側から順に、メインフィルタ43と、バルブユニット100と、2次フィルタ45と、を備える。
【0023】
送給部33は、薬液を貯蔵する薬液容器37と、薬液容器37の薬液を吸い上げて送り出すポンプ39と、薬液容器37とポンプ39との間の配管31に設けられたトラップタンク41とを備えている。トラップタンク41は、薬液容器37の薬液残量を検知するものであり、図示しない残量検知センサが設けられている。また、トラップタンク41には、ドレイン41aが設けられている。ドレイン41aは、薬液残量検知後の薬液吐出時などにエア等を排出する排気排液ラインである。
【0024】
メインフィルタ43は、該メインフィルタ43を通過する薬液中の異物を回収し除去するための機構である。また、メインフィルタ43には、ドレイン43aが設けられている。ドレイン43aも、ドレイン41aと同様に排気排液ラインであり、薬液容器37の交換後の初期供給時やその他供給に伴って混入するエア等を排出する。ドレイン41a,43aを使用しない場合は、図示しない開閉弁等でドレイン41a,43aに薬液が流れないようになっている。
【0025】
バルブユニット100は、開閉弁35およびサックバック弁47を有し、配管31内における薬液の流動を調整する部分である。バルブユニット100の具体的な構成については、後述する<1.2 バルブユニット100の構成>で詳細に説明する。
【0026】
2次フィルタ45は、該2次フィルタ45を通過する薬液中の異物を回収し除去するための機構である。2次フィルタ45が設けられていることにより、メインフィルタ43よりも下流側で薬液中に発生した異物を除去することができる。
【0027】
また、塗布装置1は、装置を構成する各部を統括的に制御する制御部51と、塗布装置1に対して各種指示を与えるための操作部53と、各種の動作条件等を記憶する記憶部55と、を備えている。制御部51は、CPU等で構成され、例えば、回転保持部3、ノズル移動機構15、ポンプ39およびバルブユニット100等を制御する。操作部53は、例えば、液晶モニタなどの表示部と、キーボード、マウスその他スイッチ等少なくともいずれかで構成される入力部とを備えている。
【0028】
<1.2 バルブユニット100の構成>
図3は、バルブユニット100の構成を概略的に示す図である。
図4は、開閉弁35の各構成のうちリミットスイッチ69側の部分を示す斜視図である。
図5は、可動部材60が移動する様子を示す平面図である。
図6は、サックバック弁47の各構成のうちリミットスイッチ79側の部分を示す斜視図である。
図7は、可動部材70が移動する様子を示す平面図である。
【0029】
バルブユニット100は、主として、ノズル11に薬液を送給する流路101と、流路101を開状態または閉状態に切り替える開閉弁35と、流路101内の容積を変化させるサックバック弁47と、を備える。
【0030】
開閉弁35およびサックバック弁47は一体的に構成されており、開閉弁35は流路101に沿ってサックバック弁47よりも上流側に位置する。
【0031】
流路101は、上流側から順に、上流側流路64と、下流側流路65と、サックバック用流路74と、を含んで構成される。上流側流路64および下流側流路65は開閉弁35の筐体内部を通過する流路であり、開閉弁35が開動作を行うと両者が連通状態とされ、開閉弁35が閉動作を行うと両者が非連通状態とされる。サックバック用流路74はサックバック弁47の筐体内部を通過する流路であり、下流側流路65と連通している。
【0032】
開閉弁35は、変形することで流路101内を開状態または閉状態に切り替えるダイヤフラム63と、リミットスイッチ69と、リミットスイッチ69に対して当接または離間する方向に移動可能な可動部材60と、回転駆動力を発生させる電動モータ66と、電動モータ66の回転駆動力を用いてダイヤフラム63を変形させる駆動部67と、電動モータ66の回転駆動力を用いて可動部材60を移動させる駆動部68と、を有する。
【0033】
電動モータ66は、ダイヤフラム63側およびリミットスイッチ69側に伸びる軸66aを有する両軸モータである。ダイヤフラム63は、可撓性および耐薬液性を有することが望ましく、例えばフッ化樹脂(具体的にはPTFE)で構成される。
【0034】
軸66aのうちダイヤフラム63側に位置する部分(図示省略)は、駆動部67に回転駆動力を伝達する。駆動部67は、この回転駆動力を直線駆動力に変換してピストン62に伝達し、中空のシリンダ61内で該ピストン62を
図3の上下方向に直線駆動させる部分である。ピストン62の先端にはダイヤフラム63が取り付けられている。また、ダイヤフラム63の周縁部は、シリンダ61内部の側壁に固定されている。
【0035】
このため、ピストン62が
図3の上方向に移動されると、この移動に応じてダイヤフラム63も上方向に変形する。その結果、ダイヤフラム63が
図3に実線で示す形状になって、上流側流路64と下流側流路65とが連通する。本明細書では、このように上流側流路64と下流側流路65とが連通する状態を開状態と呼び、開状態にするための動作を開動作と呼ぶ。
【0036】
他方、ピストン62が
図3の下方向に移動されると、この移動に応じてダイヤフラム63も下方向に変形する。その結果、ダイヤフラム63が
図3に破線で示す形状になって、弁座65aがダイヤフラム63を介在してピストン62を受ける状態(すなわち、上流側流路64と下流側流路65とが連通しない状態)になる。本明細書では、このように上流側流路64と下流側流路65とが連通しない状態を閉状態と呼び、閉状態にするための動作を閉動作と呼ぶ。
【0037】
以上のような構成となっているので、ポンプ39が動作され且つ開閉弁35が開状態にされることで、ノズル11から基板Wに薬液が吐出される。他方、ポンプ39が停止され且つ開閉弁35が閉状態にされることで、ノズル11から基板Wへの薬液吐出が停止される。
【0038】
軸66aのうちダイヤフラム63とは反対側(すなわち、リミットスイッチ69側)に位置する部分は、駆動部68に回転駆動力を伝達する。駆動部68は、この回転駆動力を可動部材60に伝達して該可動部材60を回動させる部分である。駆動部68としては、例えば、
図4に示すように軸66aの上端部分の側面に可動部材60を取り付ける固定具を採用しうる。
【0039】
このため、電動モータ66の軸66aが
図5の時計周り方向に回転されると、この回転に応じて可動部材60が軸66a(より具体的には、軸66aの中心を通る軸AX2)の周りを回動し、リミットスイッチ69に近づく。そして、可動部材60が
図5の実線で示す位置まで移動してリミットスイッチ69のボタン部分69aを押圧すると、リミットスイッチ69が制御部51に対して、ダイヤフラム63の原点位置を示す信号(以下、原点信号とよぶ)を発信する。
【0040】
制御部51は、入力された原点信号および同時点に電動モータ66のエンコーダから入力された位置信号(例えば、パルス数に関する信号)を基に、ダイヤフラム63の原点位置に対応する電動モータ66の原点情報を取得する。
【0041】
また、電動モータ66の軸66aが
図5の反時計周り方向に回転されると、この回転に応じて可動部材60が軸66a(より具体的には、軸66aの中心を通る軸AX2)の周りを回動し、リミットスイッチ69から遠ざかる。ただし、可動部材60や駆動部68がリミットスイッチ69の筐体部分と衝突することを防止するため、可動部材60の可動範囲は
図5の二点鎖線で示す位置までに制限されている。このように、可動部材60の可動範囲は、仮に電動モータ66が1回転した際の可動部材60の移動距離よりも小さく設定される。
【0042】
サックバック弁47は、変形することで流路101内の容積を変化させるダイヤフラム73と、リミットスイッチ79と、リミットスイッチ79に対して当接または離間する方向に移動可能な可動部材70と、回転駆動力を発生させる電動モータ76と、電動モータ76の回転駆動力を用いてダイヤフラム73を変形させる駆動部77(第1駆動部)と、電動モータ76の回転駆動力を直線駆動力に変換して可動部材70を移動させる駆動部78(第2駆動部)と、を有する。
【0043】
電動モータ76は、ダイヤフラム73側およびリミットスイッチ79側に伸びる軸76aを有する両軸モータである。ダイヤフラム73は、可撓性および耐薬液性を有することが望ましく、例えばフッ化樹脂(具体的にはPTFE)で構成される。
【0044】
軸76aのうちダイヤフラム73側に位置する部分(図示省略の第1軸部分)は、駆動部77に回転駆動力を伝達する。駆動部77は、この回転駆動力を直線駆動力に変換してピストン72に伝達し、中空のシリンダ71内で該ピストン72を
図3の上下方向に直線駆動させる部分である。ピストン72の先端にはダイヤフラム73が取り付けられている。また、ダイヤフラム73の周縁部は、シリンダ71内部の側壁に固定されている。
【0045】
このため、ピストン72が
図3の上方向に移動されると、この移動に応じてダイヤフラム73も上方向に変形する。こうしてダイヤフラム73が
図3に破線で示す形状になると、流路101(具体的には、サックバック用流路74)の容積が大きくなる。その結果、流路101内の圧力が瞬間的に小さくなり、流路101と連通するノズル11の開口付近に残留している液に対して流路101の上流側への吸引作用がはたらく。
【0046】
他方、ピストン72が
図3の下方向に移動されると、この移動に応じてダイヤフラム73も下方向に変形する。こうしてダイヤフラム73が
図3に実線で示す形状になると、流路101(具体的には、サックバック用流路74)の容積が小さくなる。その結果、流路101内の圧力が瞬間的に大きくなり、流路101と連通するノズル11の開口付近に残留している液に対して吐出方向への押出作用がはたらく。
【0047】
軸76aのうちダイヤフラム73とは反対側に位置する部分(第2軸部分)は、駆動部78に回転駆動力を伝達する。駆動部78は、この回転駆動力を直線駆動力に変換して可動部材70に伝達し、可動部材70をリミットスイッチ79に対して当接または離間するように直線駆動させる部分である。
図6および
図7に示すように、駆動部78は、可動部材70の下面側に取付けられ下方に伸びるネジ部分78a(雄ネジ)と、内部にネジ部分78aが螺入されるネジ孔(雌ネジ)を有し且つ軸76aと一体的に回転するカップリング部78bと、左右に間隔をあけて上下方向に伸びる2つの棒状のガイド78cと、を有する。
【0048】
電動モータ76の筐体部分および2つのガイド78cは装置に固定されている。また、可動部材70には平面視において両側にそれぞれ切り欠きが設けられており、この2つの切り欠きが水平方向に間隔をあけて上下方向に伸びる2つのガイド78cに対して摺動自在に係合している。このため、電動モータ76の動作によって軸76aが回転すると、カップリング部78bも軸76aと一体的に回転し、可動部材70が2つのガイド78cに沿って上下方向に直線駆動される。
【0049】
このため、軸76aが正方向に回転してネジ部分78aが上方に螺進すると、ネジ部分78aと一体の可動部材70が上昇してリミットスイッチ79に近づく。そして、可動部材70が
図7の実線で示す位置まで移動してリミットスイッチ79のボタン部分79aを押圧すると、リミットスイッチ79が制御部51に対して原点信号を発信する。
【0050】
制御部51は、入力された原点信号および同時点に電動モータ76のエンコーダから入力された位置信号(例えば、パルス数に関する信号)を基に、電動モータ76の原点情報を取得して、電動モータ76の駆動を制御する。
【0051】
また、軸76aが逆方向に回転してネジ部分78aが下方に螺進すると、ネジ部分78aと一体の可動部材70が下降してリミットスイッチ79から遠ざかる。また、本実施形態では、カップリング部78bの上面とリミットスイッチ79の下面との間隔が十分に確保される。これにより、可動部材70の可動範囲が、電動モータ76の1回転に相当する可動部材70の移動距離よりも大きくなる。
【0052】
仮に、
図4および
図5に示す開閉弁35のように可動部材を回動させる場合、可動部材や駆動部がリミットスイッチの筐体部分と衝突することを防止する観点から、可動部材の可動範囲が1回転未満に制限されてしまう。これに対して、本実施形態にかかるサックバック弁47では、電動モータの回転駆動力を直線駆動力に変換して可動部材70に伝達する。このため、可動部材を回動させる場合のような制限はなく、上記間隔を大きくすることで可動部材の可動範囲を理論上はいくらでも大きくできる。このため、本実施形態にかかるサックバック弁47では、サックバック量を広範囲に調整することができ、液のぼた落ち等の問題を改善することができる。本実施形態では、例えば、可動部材70の可動範囲が電動モータ76の3回転に相当する可動部材70の移動距離となるように、上記間隔が設定される。
【0053】
また、本実施形態にかかるサックバック弁47は、ネジのピッチを大きくするのではなく可動部材70の可動量を大きくすることで、サックバック量を広範囲に調整する構造である。このため、サックバック量を調整する際の最小単位が大きくならず、微調整によってサックバック量を所望の値にすることができる。
【0054】
電動モータ66、76は、制御部51により予め設定された動作条件により制御される。また、電動モータ66、76は、個々に制御され、動作開始を合わせることもずらすことも可能である。また、制御部51から電動モータ66、76に与えられるパルス信号を各々変えることで、ピストン62、72の上下方向の移動量および速度の少なくともいずれかを変えることができる。
【0055】
<1.3 塗布装置1の動作例>
次に、塗布装置1の動作例について説明する。以下の動作は、制御部51が塗布装置1の各部を制御することにより実行される。なお、処理の開始時には、ポンプ39の動作が停止されており、開閉弁35は閉状態になっている。
【0056】
図示しない搬送機構により回転保持部3に基板Wが搬送されると、回転保持部3は基板Wの裏面を保持する。そして、回転保持部3は、基板Wを軸AX1周りに予め設定された回転速度(rpm)で回転させる。
【0057】
また、ノズル移動機構15は、待機部13の待機位置に存在する複数個のノズル11のうち任意の1つのノズル11を把持部17で把持し、把持したノズル11を待機位置から基板Wの上方の吐出位置に移動させる。
【0058】
そして、開動作によって開閉弁35が開状態にされた後、ポンプ39の送給動作が開始される。また、サックバック弁47でダイヤフラム73が下方に変形されて、流路101内の薬液に対して吐出方向への押出作用がはたらく。
【0059】
これにより、ポンプ39で送られた薬液は、配管31、および配管31に介在して設けられたメインフィルタ43、バルブユニット100の流路101、および2次フィルタ45を通じて送られ、ノズル11から吐出される。2次フィルタ45が設けられていることにより、メインフィルタ43以降に発生した異物を除去することができ、製品の歩留まりを向上することができる。
【0060】
基板Wに対する薬液処理を終了する際には、ポンプ39の送給動作が停止された後、閉動作によって開閉弁35が閉状態にされる。また、サックバック弁47でダイヤフラム73が上方に変形されて、流路101と連通するノズル11の開口付近に残留している液に対して流路101の上流側への吸引作用がはたらく。これにより、ノズル11からの薬液吐出が停止し、ノズル11の開口から薬液がぼた落ちすることを有効に抑制することができる。
【0061】
また、上述したように、本実施形態では、駆動部78が電動モータ76の回転駆動力を直線駆動力に変換して可動部材70を移動させている。そして、カップリング部78bの上面とリミットスイッチ79の下面との間隔を確保することで、可動部材70の可動範囲が、電動モータ76が1回転した際の可動部材70の移動距離よりも大きく設定されている。
【0062】
このため、本実施形態の態様では、可動部材70の可動範囲が電動モータ76の1回転分以下の態様に比べて、ダイヤフラム73の変形量を大きくすることができる。その結果、サックバック弁47による薬液の押出力および吸引力(すなわち、サックバック量)を広範囲に調整することができる。本実施形態のように複数種類の薬液を利用する場合には、薬液の種類に応じて押出力および吸引力を調整しうる。例えば、薬液の粘性が相対的に大きい場合には吸引力も相対的に大きくし、薬液の粘性が相対的に小さい場合には吸引力も相対的に小さくすることで、ノズル11の開口からのぼた落ちを適切に抑制することができる。
【0063】
ノズル11から薬液の吐出が停止されると、ノズル移動機構15は、把持するノズル11を吐出位置から待機位置に移動させ、ノズル11を待機部13に載置し、把持部17からノズル11を離す。また、回転保持部3は、基板Wの回転を停止させ、基板W裏面の保持を解除する。回転保持部3による基板W裏面の保持が解除された基板Wは、図示しない搬送機構により、他の処理装置等に搬送される。
【0064】
<2 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0065】
上記実施形態では、塗布装置1が塗布膜を形成するための塗布液を基板W上に吐出する態様について説明したが、これに限られるものではない。例えば、洗浄処理装置が汚れを除去するための洗浄液(例えば、純水)を基板W上に吐出する態様においても、本発明を利用することができる。本発明に係るバルブユニットは、処理液の種類を問わず、該バルブユニットを用いて処理液の流動を調整する種々の基板処理装置に適用できる。
【0066】
また、上記実施形態では、塗布装置1が複数種類の液を基板Wに吐出可能な構成であったが、塗布装置1が1種類の処理液のみを基板Wに吐出可能な構成であっても構わない。
【0067】
また、上記実施形態では、バルブユニット100が、流路101、開閉弁35、およびサックバック弁47を一体的に備える態様について説明したが、これに限られるものではない。例えば、バルブユニットが流路およびサックバック弁を有し、開閉弁を有さない態様であっても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、電動モータ66、76が両軸モータである態様について説明したが、これらが片軸モータであっても構わない。
【0069】
また、上記実施形態では、駆動部68が電動モータ66の回転駆動力をそのまま利用して、可動部材60を回動させる態様について説明したが、これに限られるものではない。駆動部68が、駆動部78と同様に、電動モータ66の回転駆動力を直線駆動力に変換して可動部材60を移動させる態様でも構わない。
【0070】
また、各部の機構(例えば、回転駆動力を直線駆動力に変換する機構)や各部の個数(ノズル11の数)を上記実施形態で説明した態様から変更しても構わない。
【0071】
以上、実施形態およびその変形例に係るバルブユニットおよび基板処理装置について説明したが、これらは本発明に好ましい実施形態の例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。本発明は、その発明の範囲内において、各実施形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施形態において任意の構成要素の省略が可能である。