特許第6753802号(P6753802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753802
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20200831BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20200831BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20200831BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20200831BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20200831BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20200831BHJP
【FI】
   H01M2/06 K
   H01M2/02 K
   H01M2/26 A
   H01M2/30 D
   H01M10/04 Z
   !H01M10/0585
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-36751(P2017-36751)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-142478(P2018-142478A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169029
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】木村 愛佳
(72)【発明者】
【氏名】水田 政智
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−113929(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3062384(JP,U)
【文献】 特開2013−222545(JP,A)
【文献】 特開2004−079240(JP,A)
【文献】 特表2011−505671(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/105096(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06
H01M 2/02
H01M 2/26
H01M 2/30
H01M 10/04
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置されたセパレータを含む電極体と、
解質と、
記電極体と前記電解質とを内部に格納する外装体と、
記電極体に電気的に接続されかつ外装体の外部に少なくとも一部が突出する電極端子と、を有する二次電池であって、
記電極端子は、前記正極層に接続された正極端子と、前記負極層に接続された負極端子とを有し、
記外装体は、熱融着性樹脂層と金属層と保護層との三層構造であって、前記電極体を挟んで一枚のシートが折り返された構造を有し、かつ、前記シートが折り返された折り返し辺以外の辺には、前記熱融着性樹脂層同士を熱融着した熱封止部を有し、
記正極端子と前記負極端子は折返し辺に隣接する一方の辺から突出し、折返し辺に近い側に配置した電極端子の一方の端子の厚さが、折返し辺から遠い側に配置した電極端子の他方の端子の厚さより薄いことを特徴とことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記折返し辺から近い側に前記負極端子を配置したことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極端子はアルミニウムを主材とし、前記負極端子は銅を主材としていることを特徴とする請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記外装体は、シートの折り返し面を基準にして略面対称になっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極層は主面が矩形形状を有する正極活物質層を有し、前記負極層は主面が矩形形状を有する負極活物質層を有し、前記正極活物質層および前記負極活物質層の対向する主面のうち、小さい面積を有する活物質層の主面短辺の長さが110mm以上の矩形であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記折り返し辺に近い側に配置した電極端子の厚さは、遠い位置に配置した電極端子の厚さの0.6倍より小さいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極端子は正極端子本体と該正極端子本体の突出方向の一部を囲む正極端子樹脂層とを有し、前記負極端子は負極端子本体と該負極端子本体の突出方向の一部を囲む負極端子樹脂層とを有し、前記負極端子本体の厚さは前記正極端子本体の厚さより小さく、前記負極端子樹脂層の厚さは前記正極端子樹脂層の厚さより小さいことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の二次電池としては、特許文献1に記載されている構成が知られている。この二次電池は、1枚のシートを折り返し、内部に電極体を格納するとともに電極体に接続した正極端子及び負極端子を一つの辺から突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−141714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の二次電池の場合、折り返し辺に近い側の端子の厚さが折返し辺から遠い側の端子の厚さと同じであるため、折り返し辺に近い側の端子を折り返し辺側に近づけようとすると、封止時の熱によってシート内層樹脂が封止部からはみ出すおそれがある。また、折り返し辺に近い側の端子を折返し辺から離すと電池が大型化する。
【0005】
本発明は、大型化を抑制しつつ封止部分からのはみ出しを抑制する二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二次電池は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置されたセパレータを含む電極体と、電解質と、電極体と電解質とを内部に格納する外装体と、電極体に電気的に接続され、かつ外装体の外部に少なくとも一部が突出する電極端子とを有する二次電池であって、電極端子は、正極層に接続された正極端子と、負極層に接続された負極端子とを有し、外装体は、熱融着性樹脂層と金属層と保護層との三層構造であって、電極体を挟んで一枚のシートが折り返された構造を有し、かつ、シートが折り返された折り返し辺以外の辺には、熱融着性樹脂層同士を熱融着した熱封止部を有し、正極端子と負極端子は折返し辺に隣接する一方の辺から突出し、折返し辺に近い側に配置した電極端子の一方の端子の厚さが、折返し辺から遠い側に配置した電極端子の他方の端子の厚さより薄いことを特徴としている。
返し辺から近い側に配置した電極端子は、負極端子であることが好ましい。正極端子はアルミニウムを主材とし、負極端子は銅を主材としていることが好ましい。外装体は、シートの折り返し面を基準にして略面対称になっていることが好ましい。正極層は主面が略矩形形状を有する正極活物質層を有し、負極層は主面が略矩形形状を有する負極活物質層を有し、正極活物質層および負極活物質層の対向する主面のうち、小さい面積を有する活物質層の主面は短辺の長さが110mm以上であることが好ましい。折り返し辺に近い側に配置した電極端子の厚さは、遠い位置に配置した電極端子の厚さの0.6倍より小さいことが好ましい。正極端子は、正極端子本体と、正極端子本体の突出方向の一部を囲む正極端子樹脂層とを有し、負極端子は、負極端子本体と、負極端子本体の突出方向の一部を囲む負極端子樹脂層とを有し、負極端子本体の厚さは正極端子本体の厚さより小さく、かつ負極端子樹脂層の厚さは正極端子樹脂層の厚さより小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、大型化を抑制しつつ封止部分からのはみ出しを抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る二次電池の平面図である。
図2図1のA−A断面である。
図3図1のB−B断面図である。
図4図1のC−C断面図である。
図5図1の二次電池の外装体を取り除いた平面図である。
図6図1の二次電池を端子側から見た図である。
図7図1の二次電池の製造工程を説明する図である。
図8図7(c)の端子が突出した辺の熱封止を説明する図である。
図9】比較例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図を使用して、本発明の実施形態に係る二次電池を説明する。まず、図1から図6を使用して二次電池の構成を説明し、図7及び図8を使用して製造方法を説明し、図9の比較例を使用して本実施形態の効果を説明する。本実施形態の二次電池としてのリチウムイオン二次電池1は、外装体2、電極端子3,4、電極体5、電解質を含んで構成される。リチウムイオン二次電池1の外観形状を図1に、各断面構造を図2から図4に、部分的に詳細な構造を図5及び図6に示す。なお、各図において、同一の要素同士、或いは相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図の寸法比率は、実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
まず、外装体について説明する。図に示す2はリチウムイオン二次電池1の外装体であり、扁平でかつ主面は略矩形形状をしている。外装体2は一枚のシートを折り返して使用される。図1の20及び図2の20は折返し辺を示している。図2の拡大図は一枚のシートの構造を示している。例えば、熱融着性樹脂層21と金属層22と保護層23との三層構造を有するラミネートフィルム構造である。以下、外装体2として完成する前のシートをラミネートフィルム2と称することがある。熱融着性樹脂層21は、熱融着が可能な合成樹脂、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂を使用できる。金属層22は、例えばアルミ箔を使用することで水分の侵入を防止できる。保護層23は、耐久性あるいは耐熱性に優れた合成樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロンを使用できる。なお、保護層23は必須のものではなく、金属層22の内側に熱融着性樹脂21を備えた構成であってもよい。熱融着性樹脂層21は、30μmから100μmが好ましい。バリア層22は12μm〜50μmが好ましい。保護層23は6μmから50μmが好ましい。
【0011】
24は外装体2のカップ状の凸部の底部であり、25はカップ状の凸部の頂部である。折り返し辺20で折り返した状態で略面対称となるようにリチウムイオン二次電池1の扁平面に対し垂直方向(図2の上下方向)の両側にカップ状の凸部をそれぞれ形成している。26及び27はラミネートフィルム2の熱融着性樹脂層21同士を熱融着した熱封止部である。28は後述する正負極端子3,4とラミネートフィルム2の熱融着性樹脂層21とを熱融着した熱封止部である。外装体2は、折り返し辺20と熱封止部26,27,28を結ぶ面を折り返し面としこれを基準にして略面対称となるように形成されている。
【0012】
次に、電極端子について説明する。3は正極端子であり、正極端子3は正極端子本体31、正極端子本体31の長手方向(突出方向)の一部分においてその周囲に形成された正極端子樹脂層32により構成されている。正極端子本体31は、例えばアルミニウム板である。形状は例えば直方体であり外装体2からの突出方向を基準にして、幅(端子が突出する外装体の辺に平行な部分の長さ)、厚さ(端子が突出する外装体の辺に垂直方向の長さ)、長さ(突出方向の長さ)の順に40mmから100mm、0.1mmから0.5m
m、30mmから60mmが好ましい。正極端子樹脂層32は、例えばポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を使用でき、ラミネートフィルム2の熱融着性樹脂層21と熱融着させるため、熱融着性樹脂層21と同種のものが好ましい。正負極端子樹脂層32の厚さとしては0.1mmから0.2mmが好ましい。
【0013】
4は負極端子であり、負極端子4は、負極端子本体41、負極端子本体41の長手方向(突出方向)の一部分においてその周囲に形成された負極端子樹脂層42により構成されている。負極端子本体41は例えば銅板である。これに限定されず、銅板にニッケルメッキを施したり、さらに耐腐食層を表面に形成することもできる。形状は例えば直方体であり、外装体2からの突出方向を基準にして、幅(端子が突出する外装体の辺に平行な部分の長さ)、厚さ(端子が突出する外装体の辺に垂直方向の長さ)、長さ(突出方向の長さ)の順に40mmから100mm、0.05mmから0.3mm、30mmから60mmが好ましい。負極端子樹脂層42は例えばポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を使用でき、ラミネートフィルム2の熱融着性樹脂21と熱融着させるため、ラミネートフィルム2の熱融着性樹脂21と同種のものが好ましい。負極端子樹脂層42の厚さとしては0.05mmから0.15mmが好ましい。
【0014】
次に、電極体5について説明する。電極体5は、本実施形態では、負極層7、セパレータ8、正極層6、セパレータ8の順で繰り返し積層され、積層方向の最外層には負極層7が配置された積層構造体となっている。なお、1層の正極層と、1層の負極層と、正極層と負極層の間および正極層と負極層の一方側に配置された2層のセパレータによるいわゆる巻回構造体も使用可能である。
【0015】
正極層6は、図2から図4では3層で構成されている。61は正極集電箔である。62は正極集電箔61の両側に形成された正極活物質層である。63は正極集電箔61から延出され、正極活物質層62が形成されていない部分であり、正極集電箔リード部と称する。図5で示すように、正極活物質層62は主面が矩形の形状となっている。正極活物質層62の周縁は負極活物質層72の周縁より内側となるサイズとなっている。正極集電箔リード部63は正極集電箔61から延出する方向を基準にして幅が狭く形成されている。正極集電箔61はアルミ箔、アルミニウム合金箔、銅箔、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔が使用できる。
【0016】
正極活物質層62は、例えば、ニッケル酸リチウム(例:LiNiO)、マンガン酸リチウム(例:LiMnO)、スピネル型マンガン酸リチウム(例:LiMn)、またはコバルト酸リチウム(例:LiCoO)等のリチウム複合酸化物からなる正極活物質と、バインダと、バインダを溶解可能な溶剤とを混合したものを、正極集電箔61の主面に塗布し、乾燥させて溶剤を除去することにより形成される。ここで、リチウム複合酸化物の遷移金属(Ni、Mn、Co)の一部は、Li、Mg、B、Al、V、Cr、Fe、Co、Ni、Mn、W、またはTi等で置換されていてもよい。なお、正極活物質層62に用いられるリチウム複合酸化物の少なくとも一部は、スピネル型であることが好ましい。なぜならこの種の材料は、他の種の材料に比べて、充放電によるリチウムの吸蔵放出に伴う結晶構造変化が、比較的安定的であるため、粒子の変形によって粒子間の空孔が狭くなることが減少し、後に述べる面内方向のLiイオン移動性の低下が、より少なくなるからである。
【0017】
また、正極活物質層62には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、繊維状炭素等の炭素材料からなる導電助剤を添加しても良い。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン
、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等が単独若しくは組み合わせて用いられる。3本の正極集電箔リード部63はその一端側で正極端子本体31上に重ねられ、正極端子本体31と電気的に接続されている。接続方法としては超音波溶接が使用でき、図5に示す64が溶接部である。
【0018】
負極層7は、図2図4では正極層6より1層多い4層で構成されている。71は負極集電箔である。72は負極集電箔71の両側に形成された負極活物質層である。73は負極集電箔71から延出され負極活物質層72が形成されていない部分であり、負極集電箔リード部と称する。図5に示すように負極活物質層72は主面が矩形の形状となっている。負極集電箔71は銅箔、ステンレス箔、または、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。負極活物質層72の活物質材としては非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、黒鉛、あるいは非晶質炭素で被覆された黒鉛等のような、リチウムイオンを吸蔵および放出する負極活物質に結着剤を混合したものを使用できる。なお、正極活物質層62に用いられるバインダや導電助剤は、負極活物質層62にも共通して用いることができる。4本の負極集電箔リード部73はその一端側で負極端子本体41上に重ねられ、負極端子本体41と電気的に接続されている。接続方法としては超音波溶接が使用でき、図5に示す74が溶接部である。
【0019】
次に、セパレータ8について説明する。図2〜4では6層で構成されている。正極層6と負極層7の間に配置されたセパレータ8は、図5に示すように主面が矩形の形状であり、セパレータ8の周縁は、負極活物質層72の周縁及び正極活物質層62の周縁より外側となるサイズとしている。セパレータ8はリチウムイオンを通過できかつ正極活物質層62と負極活物質層72の間の電気的絶縁をとると共に後述する電解質を保持する機能を有するものであって、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性単層膜や、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造のものや、ポリオレフィン微多孔性膜と有機不織布等を積層したものも用いることができる。また、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニアなどの無機粒子をポリオレフィン微多孔膜の片面あるいは両面に付着させたものや、これらの無機粒子をポリオレフィン膜に分散させたものも用いることができる。セパレータの厚さは、10μmから40μmが好ましい。薄すぎると機械的強度に懸念があり、厚すぎると、後に述べるセパレータの表裏面間のLiイオン移動性が悪くなる。
【0020】
次に、電解質(不図示)について説明する。電解質はリチウムイオン二次電池1に一般的に利用される電解質、例えば、溶媒にリチウム塩が溶解した非水電解質を用いることができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の溶媒を一種または二種以上組み合わせた有機溶媒を用いることができる。また、リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO等を用いることができる。
【0021】
電解質の量は、余剰電解質分が含まれた量とする。ここで余剰電解質量とは、外装体2内に存在する全電解質の体積から、正極層6の空孔体積、負極層7の空孔体積、およびセパレータ8の空孔体積の合計(以下、電極体5の空孔体積)を差し引いた電解質量である。この値が正のとき、電解質量の倍率(外装体2内に存在する全電解質の体積/電極体5の空孔体積)としては、電極体5の空孔体積の1倍を超えることになる。電解質量の倍率は、電極体5の空孔体積に対して1倍超であればよいが、1.1倍〜1.7倍の電解質量となるように設定することが好ましく、倍率が1.2倍〜1.6倍であることがさらに好ましい。外装体2内に、電極体5の空孔体積を満たす電解質量と余剰電解質分とを含む量の電解質が収容された状態で、例えば、複数のリチウムイオン二次電池1を扁平面を対向させ
リチウムイオン二次電池1の厚さ方向に積層しケースの一部または別の弾性部材により外装体2の外側から電極体5の扁平面を加圧すると、電極体5の主面側と外装体2の間の余剰電解質が外装体2内における電極体5の周辺部、すなわち電極体5の電極の積層方向に対し垂直方向に移動して貯留される。
【0022】
この貯留分を収納するために、電極体5の外縁と外装体2の内側とは1mmから5mm程度離間させておくことが好ましい。この貯留分を収納するための離間部分は、外装体2と電極体5の4辺すべてとの間に設けることが好ましい。余剰電解質は、後に述べるように、電極体5に対するLiイオンの供給源になるため、4方向から供給可能としたほうが好ましいからである。また、Liイオン供給源としての観点から、前記離間部分の距離が小さすぎて余剰電解質が少なすぎると、サイクル特性が低下し、前記離間部分の離間が大きすぎると主面の面内方向に電池外形サイズを大きくすることにつながるのでスペース効率の悪化が著しくなる。
【0023】
なお、図6図1の正負極端子3,4側から見た側面図であり、後述する図8の封止工程により形成される。折り返し辺20から近い位置には、ニッケルメッキした銅を主材とした厚さ0.2μm、幅60mmの負極端子本体41の周囲に厚さ0.1mmの負極端子樹脂層42を形成した負極端子4を配置し、折り返し辺20に遠い位置には、アルミニウムを主材とした厚さ0.4μm、幅60mmの正極端子本体31の周囲に厚さ0.15mmの正極端子樹脂層32を形成した正極端子3を配置している。つまり、折返し辺に近い側に配置した負極端子4の厚さ(0.4mm)が、折返し辺から遠い側に配置した正極端子3の厚さ(0.7mm)より薄くなっている。折り返し辺に近い側に配置した負極端子4の厚さは、遠い位置に配置した正極端子の厚さの0.57倍となっている。正負極端子本体の厚さを変え、正負極樹脂層の厚さを同じにすることも可能であるが、0.6倍より小さいことが好ましい。
【0024】
図7及び図8を使用して、リチウムイオン二次電池1の製造工程を説明する。図7(a)は外装体の準備工程である。この工程は、一枚のラミネートフィルム2を折り返したときに対向する面となる2か所にカップ状の凹部を形成する。この凹部は外装体として密封した後の外観ではカップ状の凸部となる部分である。図7(a)の29は凹部の底部であり、図1の凸部の頂部25に対応する。30は凹部の頂部であり、図1の凸部の底部24に対応する。図7(b)は格納工程を示す。この工程は、あらかじめ電極端子3,4と電極体5とを接続した状態のものを用意し、電極体5の部分を一方の凹部上に配置すると共に、電極端子3,4の電極端子樹脂層32,42を外装体2の熱封止部28となる領域に配置した。このとき、電極体5の負極活物質層72と対向する正極活物質層62の主面は110mm×200mmのサイズのものを用い、負極活物質層72の主面は120mm×210mmのサイズのものを用いた。正極層6と負極層7は以下のように作成した。
【0025】
第一の正極活物質としてスピネル構造を有するLi1.1Mn1.9粉末と、第二の正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni/Liモル比0.7)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で71:23:2:4の割合で、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に添加することで正極スラリーを調製した。この正極スラリーを正極集電箔61上に塗布・乾燥して正極集電箔61に正極活物質層62を形成した。正極活物質層の片面あたりの厚さは79μmであった。
【0026】
負極活物質として非晶質性炭素で被覆された球状天然黒鉛粉末と、フッ素樹脂系バインダーとしてポリフッ化ビニリデンと、カーボンブラック系導電助剤とを、固形分質量比で96.5:3:0.5の割合でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に添加し、攪拌させることで、これらの材料をNMP中に均一に分散させて負極スラリーを作製した。この負極スラリーを負極集電箔71上に塗布・乾燥して負極集電箔71に負極活物質層72を形成した。負極活物質層72の片面あたりの厚さは60μmであった。
【0027】
図7(c)は、折り返し工程、仮封止工程、注液工程及び最終封止工程を示している。
折り返し辺20となる位置を基準としてラミネートフィルム2を折り返し(折り返し工程)、ヒーターヘッド100、ヒータヘッド120により熱封止した(仮封止工程)。次いで、熱封止していない残りの辺を上向きとした状態で真空チャンバー内に配置し、熱封止していない辺から電解液を注入した。この注入工程では、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの3:7混合溶媒に1MのLiPF6を溶解した電解質を注入し、外装体2内部を減圧した。その後、最終封止工程として、ヒーターヘッド130によって熱融着して外装体2を密閉し、真空チャンバー内を大気圧に戻した後、真空チャンバーから取出し、種々の検査を行い出荷可能なリチウムイオン二次電池1を作製した。
【0028】
電極体5の側面から外装体2の内部境界すなわち熱融着した部分の内側境界までの離間距離(最も近い距離)は、電極端子を設けた辺は7mm、折り返し辺は3mm、それ以外の辺は2mmとした。注入した電解質量は、電極体5の空孔体積の1.4倍の量とし、電極体5の周囲に余剰電解質が存在していた。
【0029】
ここで図8を使用して図7(c)の正負極端子3,4が突出している辺の熱封止について説明する。図8(a)は、各部品の配置の状態を、図8(b)は、ラミネートフィルム2に接触するヒーターヘッド100面を、図8(c)はヒーターヘッド100の側面を示した図であり棒状のヒーター104が挿入されている。図8(a)の図の上からヒーターヘッド100、折り返されたラミネートフィルム2の一方の面、折り返されたラミネートフィルム2に挟まれた正負極端子3、4(端子本体31,41及び樹脂層32、42)、折り返されたラミネートフィルム2の対向する他方の面、反対側のヒーターヘッド100が配置され、ヒーターヘッド100が正負極端子3,4方向に移動してラミネートフィルム2と正負極端子3,4とを加圧しつつ加熱される。
【0030】
図8(b)のヒーターヘッド100の面101は、正極端子3側に接する面であり、図の横幅方向の長さは正極端子樹脂層32及び正極端子樹脂層32に近接するラミネートフィルム2の一部を含む長さとなっており、ヒーター104からヒーターヘッド100を伝達した熱によりラミネートフィルム2の一部と正極端子樹脂層32の間、及び正極端子樹脂層32に近接する一部のラミネートフィルム2同士が重なる部分とが熱融着される。面101の位置は面102よりも早くラミネートフィルム面に接する位置となっている。面101の奥行き方向の長さ(図の上下方向の長さ)は面102及び103と同じである。
【0031】
面102は負極端子4側に接する面であり、図の横幅方向の長さは、負極端子樹脂層42及び負極端子樹脂層42に近接するラミネートフィルムの一部を含む長さとなっており、ヒーター104からヒーターヘッド100を伝達した熱によりラミネートフィルムの一部と負極端子樹脂層42の間、及び負極端子樹脂層42に近接する一部のラミネートフィルム同士が重なる部分とが熱融着される。面102の位置は面101より遅く、103よりも早くラミネートフィルム面に接する位置となっている。そのため、熱が加わっている時間は面101よりも短く、面103よりも長く接している。
【0032】
面103は面101,102から垂直に伸びた側面端部の間をつないでおり、ラミネートフィルム2を折り返して重ねた部分を熱封止されるように形成されている。
【0033】
そして、ヒーター104の温度が180℃となるまで待機し、その後、ヒーターヘッド100を正負極端子3,4方向に移動させる。まずラミネートフィルム2の一部はヒーターヘッド100の面101に接して加圧と共に加熱する。その後、面102、面103の順に加圧と共に加熱する。面103が接してから10秒後にヒーターヘッド100を元の位置に戻し、熱封止が完了する。図7(c)のヒーターヘッド120、130は平坦なヒーターヘッドでラミネートフィルム2の両側から加熱し加圧することで熱封止できる。
【0034】
図9を使用して比較例を説明する。図9(a)は、図6図8(a)と比べて正極端子3と負極端子4の配置を逆にしている。すなわち、折り返し辺20から遠い位置には、ニッケルメッキした銅を主材とした厚さ0.2μm、幅60mmの負極端子本体41の周囲に厚さ0.1mmの負極端子樹脂層42を形成した負極端子4を配置し、折り返し辺20に近い位置には、アルミニウムを主材とした厚さ0.4μm、幅60mmの正極端子本体31の周囲に厚さ0.15mmの正極端子樹脂層32を形成した正極端子3を配置し、ヒーターヘッドの面101,102の面位置も逆にしている。その結果、図9(b)に示すように、折り返し辺20の端部の熱封止部において熱融着樹脂層21が外装体2の内側と外側にはみ出した。これは面103からの熱に加えて面101からの熱も折り返し辺20の端部に加わり、折り返えされたラミネートフィルム2の熱融着樹脂層23が加圧と加熱によって電極端子を有する辺からはみ出したものと推測される。
【0035】
内側はみ出し樹脂91または外側はみ出し樹脂92が生じると以下のような課題が生じうる。ラミネートフィルム2で挟んだ電極体5のうち正極層6又は負極層7に接触する位置まで内側はみ出し樹脂91が近づいた場合、ラミネートフィルム2の金属層22と正極層6又は負極層7との間の電気的絶縁性が低下するおそれがある。また、複数個のリチウムイオン二次電池1をリチウムイオン二次電池1の厚さ方向に積層し電極端子を有する辺の側にて電極端子同士をバスバーによって電気的に接続する場合、バスバーを固定するためのバスバーモジュールやスペーサが必要となるが、外装体2から外側に突起物が出ていると、突起を避けてレイアウトしなければならず、レイアウト自由度が損なわれ、装置の大型化につながるおそれがある。
【0036】
本実施形態では、正極端子3および負極端子4は、外装体2による熱封止部分で異なる厚さを有し、折返し辺20に近い位置には正極端子3より薄い負極端子4を配置した。これによって、外側はみ出し部91が発生しなかったので、装置の大型化を抑制できるという効果がある。また、内側はみ出し部92が発生しなかったので、ラミネートフィルム2の金属層22と正極層6又は負極層7との間の電気的絶縁性の低下を抑制することができる。
【0037】
以上、リチウムイオン二次電池1を例に実施の形態を説明したがこれに限るものではない。また、正極層や負極層の積層数は任意に変更でき、電極体の最外層を正極層にすることもできる。セパレータは複数の矩形形状ではなく単数の長方形形状のものとし、セパレータの間に正極層又は負極層を配置するように九十九折や巻回構造とすることもできる。正極活物質はマンガン酸リチウムに限らず、負極活物質は黒鉛にかぎらず非晶質炭素等を使用することもできる。また折り返し面を基準に面対称となるように外装体にカップ状の凸部を形成したが、あらかじめカップ状の凸部を両側ともに形成しないことで略面対称とすることもできる。
【0038】
なお、リチウムイオン二次電池1は、正極層6と、負極層7と、正極層6と負極層7との間に配置されたセパレータ8とを含む電極体5と、電解質と、電極体5と電解質とを内部に格納する外装体2と、電極体5に電気的に接続され、かつ外装体2の外部に少なくとも一部が突出する電極端子3、4とを有する二次電池1であって、電極端子は、正極層6に接続された正極端子3と、負極層7に接続された負極端子4とを有し、正極端子3と負極端子4は外装体2の同一辺から突出し、外装体2は、金属層22の両側に樹脂層21,23を配置した一枚のシートを折返し電極体5を間に挟んだ構造を有し、かつ折り返された辺以外の辺には熱封止部26,27,28を有し、外装体2は、シートの折り返し面を基準にして略面対称になっているため、端子の位置は略中央に配置でき、複数のリチウムイオン二次電池1を積層するタイプの組電池に利用した場合でも、あるリチウムイオン二次電池1の電極端子と、隣接するリチウムイオン二次電池1の外装体2の金属層22との距離を離すことができるので、間に絶縁体や空間を配置する必要がなく大型化を抑制できる。
【0039】
また、特許文献1のように外装体が折り返したシートの片側のみに発電要素を格納する凹部を形成し電極端子が二次電池の厚さ方向の縁部分に配置した構造ではないので発電要素と電極端子とを電気的につなぐ集電箔リードが特許文献1と比べて短くなる。その結果、集電箔リードは集電箔に間欠的に活物質を塗布し活物質を塗布していない集電箔部分を集電箔リードとすることから、単位ピック長あたりの活物質量が多くなり短い集電箔リードを使用することで製造コストが低減できるということがある。
【符号の説明】
【0040】
1・・・リチウムイオン二次電池
2・・・外装体
3・・・正極端子
4・・・負極端子
5・・・電極体
6・・・正極層
7・・・負極層
8・・・セパレータ
26,27,28・・・熱封止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9