(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点と直流電源とに両端が接続されるリアクトルとを含むDC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
前記DC/DCコンバータに接続され前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサの両端間電圧の検出値であるコンデンサ電圧検出値が入力され、前記コンデンサ電圧検出値の振動除去の処理を行う振動除去器を備え、
前記振動除去器は、
前記DC/DCコンバータの三角キャリア波における谷点毎、または山点毎で検出される前記コンデンサ電圧検出値について、それぞれの回での今回検出値と前回検出値との偏差の符号が正負で反転した場合には、前記今回検出値と前記前回検出値との平均値を処理後の前記コンデンサ電圧検出値として出力し、前記今回検出値と前記前回検出値との偏差の符号が正負で反転しない場合には前記今回検出値を処理後の前記コンデンサ電圧検出値として出力し、
前記制御装置は、
前記コンデンサのコンデンサ電圧の目標値となるコンデンサ電圧指令値と処理後の前記コンデンサ電圧検出値とに応じて前記DC/DCコンバータを制御する、制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態におけるDC/DCコンバータの制御装置30を含むモータ駆動装置100の基本構成を示している。モータ駆動装置100は、直流電源10、DC/DCコンバータ11、低圧側コンデンサ17、高圧側コンデンサ18及び負荷104を含んで構成される。DC/DCコンバータ11は、リアクトル12、第1スイッチング素子14、第2スイッチング素子16を有する。第1スイッチング素子14は、上側スイッチング素子に相当し、第2スイッチング素子16は、下側スイッチング素子に相当する。負荷104は、インバータ105と、インバータ105に接続され、インバータ105によって駆動されるモータ106とを有する。モータ106はU相、V相、W相の3相交流電流により駆動される3相モータである。
【0013】
直流電源10の正極にはリアクトル12の一端が接続され、リアクトル12の他端には第1スイッチング素子14の一端及び第2スイッチング素子16の一端の接続点Cが接続される。第1スイッチング素子14の他端は正極母線19を介して、負荷104を構成するインバータ105の正極側に接続される。第2スイッチング素子16の他端は負極母線20を介して、直流電源10の負極とインバータ105の負極側とに接続される。低圧側コンデンサ17は、DC/DCコンバータ11の入力側で、リアクトル12の一端及び直流電源10の正極の間と負極母線20との間に接続され、電圧を平滑化させるために用いられる。高圧側コンデンサ18は、DC/DCコンバータ11の出力側で、正極母線19及び負極母線20の間に接続され、リアクトル12からの出力電圧を平滑化させるために用いられる。
【0014】
なお、実施の形態では、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16はNPNトランジスタとする。第1スイッチング素子14は、正極母線19側がコレクタ、リアクトル12側がエミッタとされる。第2スイッチング素子16は、リアクトル12側がコレクタ、負極母線20側がエミッタとされる。また、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のそれぞれに並列に環流ダイオードが接続される。
【0015】
DC/DCコンバータ11において、第1スイッチング素子14をオフ状態及び第2スイッチング素子16をオン状態とすることで、リアクトル12を介して直流電源10の正極から負極に向けたリアクトル電流i
Lが流れる。これによって、リアクトル12にエネルギーが蓄積される。次に、第2スイッチング素子16をオフ状態とすることで、リアクトル電流i
Lが遮断され、リアクトル12の端部に直流電源10の電圧(電源電圧v
b)よりも高い電圧が生じる。そして、これに応じた電流が正極母線19に向けて流れて高圧側コンデンサ18が充電されて高圧側コンデンサ18の両端間電圧であるコンデンサ電圧v
cが上昇する。このコンデンサ電圧v
cが負荷104に印加される。また、第1スイッチング素子14がオン状態とされることで、高圧側コンデンサ18から直流電源10の正極へ向けたリアクトル電流i
Lが流れる。これによって、コンデンサ電圧v
cが低下する。DC/DCコンバータ11の出力電圧、すなわちコンデンサ電圧v
cは、キャリア信号の1周期に対する第1スイッチング素子14のオン割合を示すデューティ比によって決定される。
【0016】
DC/DCコンバータ11は、制御装置30によって各スイッチング素子14,16のオンオフ状態が制御される。制御装置30には、DC/DCコンバータ11の現在の状態値が入力される。制御装置30は入力された状態値に応じてDC/DCコンバータ11を制御する。状態値として、直流電源10の電源電圧v
b、リアクトル12を流れるリアクトル電流i
L、コンデンサ18のコンデンサ電圧v
c、負荷であるモータ106の電流i
u,i
w及びモータ106の回転角θの検出値が対応するセンサから制御装置30へ入力される。例えば、モータ駆動装置100は、コンデンサ電圧v
cを検出する高圧側の電圧センサ21と、直流電源10の電源電圧v
bを検出する低圧側の電圧センサ22とを備える。制御装置30は、モータの電流i
u,i
w及びモータの回転角θからDC/DCコンバータ11の出力電流i
mを算出する。
【0017】
図2は、制御装置30の構成を示す図である。制御装置30は、振動除去器31、デューティ比制御器34、及び三角波比較器36を含んで構成される。
【0018】
振動除去器31には、高圧側の電圧センサ21からコンデンサ電圧検出値v
cが入力される。振動除去器31は、後述のようにコンデンサ電圧検出値v
cの振動除去の処理を行って、処理後のコンデンサ電圧検出値v
cを出力する。
【0019】
デューティ比制御器34には、コンデンサ電圧指令値v
c*と処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとの偏差が入力される。デューティ比制御器は、例えば入力された偏差を比例積分演算であるPI演算して、指令値となるデューティ比d(k+1)を求めるための演算が行われる。算出されたデューティ比d(k+1)は、後述の三角波比較器36に入力される。
【0020】
次に、振動除去器31を説明する。
図3は、振動除去器31の構成を示す図である。振動除去器31は、DC/DCコンバータ11の三角キャリア波における谷点毎で検出されるコンデンサ電圧検出値v
cを高圧側の電圧センサ21から取得する。そして、振動除去器31は、DC/DCコンバータ11の三角キャリア波における谷点毎で検出されるコンデンサ電圧検出値v
cについて、それぞれの回での今回検出値と前回検出値との偏差の符号が正負で反転するか否かに応じて、振動除去処理を行う。振動除去処理は、偏差の符号が正負で反転した場合には、今回検出値と前回検出値との平均値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力し、偏差の符号が正負で反転しない場合には今回検出値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力する。
【0021】
また、実施形態では、今回検出値と前回検出値との偏差の符号を、今回から予め設定された複数回前までさかのぼって計算する。そして、振動除去器31は、偏差の符号の変化が所定回数以上では、今回検出値と前回検出値との平均値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力する。一方、振動除去器31は、偏差の符号の変化が所定回数未満では今回検出値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力する。以下、コンデンサ電圧検出値v
cを検出値v
cとして説明する場合がある。
【0022】
具体的には、本実施形態では、振動除去器31は、今回検出値と前回検出値との偏差の符号を、今回から3回前までさかのぼって合計4回、計算する。
図3に示すように、振動除去器31は、減算器40(40−1〜40−4)、前回検出取得部42(42−1〜42−4)、判定器44(44−1〜44−4)、加算器45、絶対値計算器46及び出力切換部48を含んで構成される。
【0023】
前回検出取得部42は、入力された検出値v
cについて、その検出の回より1つ前である前回に検出された検出値v
cを、制御装置30の記憶部より取得して出力する。前回検出取得部42−1〜42−3の出力値は、対応する回と同じ回、及び次の回の減算器40と、その前の回の前回検出取得部42とに入力される。前回検出取得部42−4の出力値は、対応する回の次の回の減算器40に入力される。減算器40は、対応する回と同じ回の検出値から、その前の回の検出値を減算した値である偏差を判定器44に出力する。
【0024】
判定器44は、入力された偏差の符号の正負を判定し、判定結果を加算器45に出力する。例えば、判定器44は、入力された偏差の符号が正の場合に1を出力し、偏差の符号が負の場合に−1を出力する。判定器44は、偏差の符号が0であれば出力しない、すなわち出力値が0である。
【0025】
例えば、判定器44−1には、今回の検出値v
cから前回の検出値v
cを減算した偏差が入力される。判定器44−2には、前回の検出値v
cから、今回より2回前の検出値v
cを減算した偏差が入力される。判定器44−3には、2回前の検出値v
cから、今回より3回前の検出値v
cを減算した偏差が入力される。判定器44−4には、3回前の検出値v
cから、今回より4回前の検出値v
cを減算した偏差が入力される。
【0026】
加算器45は、すべての判定器44−1〜44−4から判定結果が入力され、その判定結果を加算する。加算された結果は、絶対値計算器46に入力される。
【0027】
絶対値計算器46は、加算された結果である数値の絶対値を算出して出力切換部48に出力する。出力切換部48には、今回の検出値v
cと、今回の検出値v
c及び前回の検出値v
cの平均値とも入力される。
【0028】
出力切換部48は、絶対値計算器46から入力された絶対値に応じて、今回検出値、または今回検出値及び前回検出値の平均値を、振動除去の処理後の検出値として出力する。具体的には、出力切換部48は、入力された絶対値が2以下の場合には、今回検出値及び前回検出値の平均値を処理後の検出値として出力する。一方、出力切換部48は、入力された絶対値が2より大きい場合には、今回検出値を処理後の検出値として出力する。出力切換部48に入力された絶対値が2以下であることは、今回から4回前までさかのぼって偏差の符号の変化が1回以上あることを意味する。
【0029】
これにより、振動除去器31によって、今回検出値と前回検出値との偏差の符号が、今回から4回前までさかのぼって計算される。そして、振動除去器31は、偏差の符号が正負で反転した場合には、今回検出値と前回検出値との平均値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力し、偏差の符号が正負で反転しない場合には今回検出値を処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして出力する。実施形態では、偏差の符号が、4回前までさかのぼって計算されるので、振動除去処理の精度を高くできる。なお、偏差の符号は、5回以上の任意の回数前までさかのぼって計算してもよい。
【0030】
振動除去器31の出力は、振動除去の処理後のコンデンサ電圧検出値v
cとして、減算器37に入力される。減算器37は、処理後のコンデンサ電圧検出値v
cからコンデンサ電圧指令値v
c*を減算した値を偏差として、デューティ比制御器34に出力する。
【0031】
デューティ比制御器34は、入力された偏差に応じて、上記のように指令値となるデューティ比d(k+1)を求めるための演算を行う。デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)は、三角波比較器36に入力される。三角波比較器36は、三角波キャリア信号の値と、デューティ比とを比較し、その比較した結果に基づいてスイッチング信号を生成し、DC/DCコンバータ11の各スイッチング素子14,16に出力される。各スイッチング素子14,16は、そのスイッチング信号によりオンオフ状態が制御されることにより、適切な電圧制御が行われる。これにより、リアクトル電流指令値に応じてDC/DCコンバータ11が制御される。
【0032】
具体的には、制御装置30は、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。これにより、DC/DCコンバータ11は、指令値とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0033】
なお、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)は、リミッタ(図示せず)に入力することもできる。リミッタは、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)の入力をうけ、入力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内になるように制限する。リミッタから出力された最適範囲のデューティ比d(k+1)は、三角波比較器36に入力される。これにより、制御装置30は、三角波比較器36に入力されたデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。
【0034】
上記の制御装置30によれば、振動除去器31による処理後のコンデンサ電圧検出値v
cを用いてDC/DCコンバータ11を制御するので、コンデンサ電圧v
cの制御を安定化させることができる。これにより、高圧側コンデンサ18に流れるリップル電流を抑制できるので、高圧側コンデンサ18の発熱を抑制しつつ高圧側コンデンサ18の容量を小さくできる。
【0035】
一方、比較例として、本実施形態と異なり、振動除去器を介さずにコンデンサ電圧の検出値と指令値とを用いて、DC/DCコンバータを制御する構成が考えられる。この比較例において、DC/DCコンバータのキャリア周波数fccを、インバータのキャリア周波数fciの2倍の周波数以外の周波数とする場合がある。この場合には、DC/DCコンバータの三角波キャリアにおける谷点毎にコンデンサ電圧検出値をサンプリングすると、コンデンサ電圧検出値が大きく振動する可能性がある。実施形態では、振動除去器31により、コンデンサ電圧v
cについて今回検出値と前回検出値との偏差の符号の反転により振動を判定し、振動した場合に今回検出値と前回検出値との平均値を処理後の検出値として出力する。これにより、コンデンサ電圧v
cの制御の安定化を図れる。
【0036】
なお、上記では、振動除去器31において、DC/DCコンバータ11の三角波キャリアにおける谷点毎のコンデンサ電圧検出値を用いる場合を説明した。一方、DC/DCコンバータ11の三角キャリア波における山点毎で検出されるコンデンサ電圧検出値について、それぞれの回での今回検出値と前回検出値との偏差の符号が正負で反転するか否かに応じて、処理後のコンデンサ電圧検出値を出力してもよい。この場合において、偏差の符号の反転に応じて処理後のコンデンサ電圧検出値を出力する方法は、三角キャリア波における山点毎で検出されるコンデンサ電圧検出値を用いる場合と同様である。
【0037】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、処理後のコンデンサ電圧検出値とコンデンサ電圧指令値との偏差をデューティ比制御器に入力する場合を説明した。
図4は、第2の実施形態における制御装置30aの構成を示す図である。第2の実施形態では、制御装置30aは、
図4に示すように、電流指令生成器(iL指令生成器)32と、オブザーバ33とを含んで構成される。
【0038】
電流指令生成器32には、振動除去器31から出力された処理後のコンデンサ電圧検出値v
cと、コンデンサ電圧指令値v
c*との偏差が入力される。電流指令生成器32は、例えば入力された偏差を比例積分演算であるPI演算して、リアクトル12を流れるリアクトル電流の指令値i
L*を生成するPI制御器とすることができる。後述のデューティ比制御器34aには、リアクトル電流指令値i
L*と、後述のオブザーバ33から出力されるリアクトル電流i
Lの推定値との偏差が入力される。なお、以下において、図中の推定値には上付の波線(チルダ)を付して示す。
【0039】
オブザーバ33は、処理後のコンデンサ電圧検出v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを受けて、これらの値からリアクトル電流i
Lの推定値を、DC/DCコンバータ11の状態方程式を用いて算出して出力する。
【0040】
ここで、DC/DCコンバータ11の状態方程式を説明するために、まず、コンデンサ電圧の検出誤差Δv
cを含まないと仮定した比較例の状態方程式としての比較例状態方程式を説明する。
【0041】
比較例状態方程式は、数式(1)にて表される。ここで、コンデンサ電圧はv
c、リアクトル電流はi
L、電源電圧はv
b、出力電流(負荷電流)はi
m、リアクトル12のインダクタンスはL、コンデンサ18のキャパシタンスはC、リアクトル12の抵抗値はR
L、デューティ比はdと示す。
【数1】
【0042】
数式(1)にデッドタイムを考慮した誤差デューティ比Δdを組み込むと数式(2)に示す状態方程式となる。ここで誤差デューティ比とは、第1スイッチング素子のオン時間の割合であるデューティ比に対する、デッドタイムの有無の違いにより生じるデューティ比の差分である。
【数2】
【0043】
数式(2)を、双1次変換を用いて離散化させると数式(3)のように示される。
【数3】
【0044】
図5は、実施形態のオブザーバ33を示す図である。オブザーバ33において、入力信号、出力信号が
図5で示されるようになる。
図5において、Aは、数式(3)の破線枠αで示される係数と、破線枠A1で示される行列とを乗じたものであり、α×A1で表される。
【0045】
図5において、Bは、数式(3)の破線枠αで示される係数と破線枠B1で示される行列とを乗じたものであり、α×B1で表される。
図5のCは、数式(4a)、数式(4b)で表されるものである。
【数4】
【0046】
図5のCとして、数式(4a)、数式(4b)で表されるもので用いることによりリアクトル電流の推定精度を高くできるが、計算量軽減のために、数式(5)を用いることもできる。
【数5】
【0047】
ここで、本実施形態では、DC/DCコンバータ11の状態方程式として、誤差デューティ比Δdとコンデンサ電圧検出誤差Δv
Cとを含む数式(6)を定義する。
【数6】
【0048】
数式(6)を、双1次変換を用いて離散化させると数式(7)のように示される。
【数7】
【0049】
数式(7)に基づいて、コンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v
c〜(チルダ)(k)と、リアクトル12の電流の推定値であるリアクトル電流予測値i
L〜(チルダ)(k)とは、数式(8)のように表すことができる。また、数式(7)に基づいて、誤差デューティ比の推定値である誤差デューティ比推定値Δd〜(チルダ)(k)と、コンデンサ電圧検出誤差の推定値であるコンデンサ電圧誤差推定値Δv
c〜(チルダ)(k)とは数式(8)のように表すことができる。ここで、Tは制御周期であり、h
1〜h
4はオブザーバゲインである。以下では推定値を表すチルダの〜(波線)を省略する場合がある。
【数8】
【0050】
オブザーバ33は、入力された処理後のコンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを数式(8)に代入することによって、リアクトル電流i
L(=i
L(k))の推定値を算出する。また、オブザーバ33は、コンデンサ電圧検出誤差Δv
c(=Δv
c(k))の推定値も算出する。
【0051】
なお、推定されるコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)、誤差デューティ比Δd(チルダ)及びリアクトル電流推定値i
L(チルダ)は、数式(8)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出されたリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)は、減算器35に入力される。
【0052】
なお、kは、制御回数を示す。例えば、i
L(k)は、k回目の制御におけるリアクトル電流i
Lを表し、i
L(k+1)は、(k+1)回目の制御におけるリアクトル電流i
Lを表す。他の状態量についても同様である。
【0053】
ここで、本実施形態において、オブザーバ33は、数式(8)の4つのオブザーバゲインh
1、h
2、h
3、h
4を持つ。このうち、数式(8)の3行目と4行目とに対応するh
3、h
4は、第1スイッチング素子14の常時オン状態か否かに応じて、値が切り替わる。以下、h3は第1オブザーバゲインh
3と記載し、h
4は、第2オブザーバゲインh
4と記載する場合がある。オブザーバゲインh
1、h
2、h
3、h
4は、
図5のhに対応する。
【0054】
図6は、オブザーバゲインの切換部38の構成を示す図である。制御装置30aは、切換部38を持ち、その切換部38は、第1及び第2オブザーバゲインh
3、h
4の値を、第1スイッチング素子14の常時オン状態か否かに応じて切り換える。具体的には、第1オブザーバゲインh
3は、デッドタイムによる誤差でデューティ比を計算するためのオブザーバゲインである。第2オブザーバゲインh
4は、コンデンサ電圧検出誤差を計算するためのオブザーバゲインである。
【0055】
図6において、上アームオン信号として、第1スイッチング素子14の常時オン状態か否かが切換部38に入力される。
図6では、切換部38の内部において「1」は、第1スイッチング素子14が常時オンとなり、上アームが常時オンされたことを表す。このときには第2スイッチング素子16が常時オフされる。
図6の切換部38の内部において「0」は、第1スイッチング素子14が常時オフとなり、上アームの常時オンが解除されたことを表す。このときには第2スイッチング素子16がスイッチングを開始する。
【0056】
切換部38は、第1スイッチング素子14が常時オンされたときに、第1オブザーバゲインh
3を0とし、第2オブザーバゲインh
4に0以外の数値C4を持たせる。一方、切換部38は、第1スイッチング素子14が常時オンが解除された後に、第1オブザーバゲインh
3に0以外の数値を持たせ、第2オブザーバゲインh
4を0とする。
【0057】
また、数式(8)の1行目と2行目とに対応するオブザーバゲインh
1、h
2は、第1スイッチング素子14の常時オン状態に無関係に0以外の数値C1、C2を持っている。
【0058】
これにより、第1スイッチング素子14が常時オンされたときに、コンデンサ電圧検出誤差に対応する値が第2オブザーバゲインh
4に対応して出力されるので、コンデンサ電圧検出誤差を精度よく推定できる。また、第1スイッチング素子14が常時オンが解除されたときには、デッドタイムによる誤差デューティ比に対応する値が第1オブザーバゲインh
3に対応して出力される。これにより、誤差デューティ比を用いてデューティ比を精度よく計算することができる。このように数式(8)を用いたオブザーバ33では、コンデンサ電圧検出誤差を推定でき、その推定値が次の制御周期に用いられて、コンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
L、及び誤差デューティ比Δdの推定値が推定される。本実施形態では、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、及び誤差デューティ比Δdのうち、リアクトル電流i
Lのみをオブザーバ33で推定することもできる。
【0059】
デューティ比制御器34aには、減算器35からリアクトル電流指令値i
L*と、オブザーバ33から出力されたリアクトル電流推定値i
L(チルダ)との偏差が入力される。デューティ比制御器34aは、例えば入力された偏差を比例積分演算であるPI演算して、指令値となるデューティ比d(k+1)を求めるための演算が行われる。算出されたデューティ比d(k+1)は、三角波比較器36に入力される。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図3の第1の実施形態と同様である。
【0060】
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態における制御装置30bの構成を示す図である。第3の実施形態では、
図4から
図6の第2の実施形態と異なり、制御装置30bは、電流指令生成器32aに対し、コンデンサ電圧指令値及び処理後のコンデンサ電圧検出値の偏差を入力しない。その代わりに、第2の実施形態では、電流指令生成器32aには、コンデンサ電圧指令値v
c*及び処理後のコンデンサ電圧検出値v
cが入力される。また、電流指令生成器32aには、オブザーバ33から、リアクトル電流i
L、誤差デューティ比Δd、及びコンデンサ電圧検出誤差Δv
cの推定値が入力される。
【0061】
このために、オブザーバ33は、入力された処理後のコンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを上記の数式(8)に代入することによって、リアクトル電流i
L(=i
L(k))の推定値を算出する。また、オブザーバ33は、コンデンサ電圧検出誤差Δv
c(=Δv
c(k))及び誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値も算出する。
【0062】
算出されたリアクトル電流推定値i
L(チルダ)は、減算器35と電流指令生成器32aとに入力される。算出されたコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)及び誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)は電流指令生成器32aに入力される。
【0063】
電流指令生成器32aは、誤差デューティ比Δdと、コンデンサ電圧検出誤差Δv
cとを含む状態方程式からリアクトル電流指令値i
L*を算出する。
【0064】
電流指令生成器32aでは、DC/DCコンバータ11の状態方程式を離散化した数式、すなわち数式(7)を変形することによってリアクトル電流指令値i
L*を算出する。リアクトル電流指令値i
L*は、数式(7)において、左辺の1行目v
c(k+1)をv
c*(k)、右辺のi
L(k)をi
L*(k)に、Δd(k)をΔd(k)(チルダ)に、Δv
cをΔv
c(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(9)を用いて算出される。電流指令生成器32aで算出されたリアクトル電流指令値i
L*は、減算器35に入力される。減算器35は、リアクトル電流指令値i
L*と、オブザーバ33から入力されたリアクトル電流推定値i
L(チルダ)との偏差を演算して、その偏差をデューティ比制御器34aに出力する。
【数9】
【0065】
本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図3の第1の実施形態、または
図4から
図6の第2の実施形態と同様である。
【0066】
<第4の実施形態>
図8は、第4の実施形態における制御装置30cの構成を示す図である。第4の実施形態では、
図7の第3の実施形態と異なり、制御装置30cは、デューティ比制御器34aの代わりに、第1モデル予測制御器(MPC)50(
図9)を有するデューティ比制御器34bを含んでいる。以下、第1モデル予測制御器50は第1MPC50と記載する場合がある。
【0067】
制御装置30cは、オブザーバ33aを含んでいる。オブザーバ33aは、第3の実施形態と同様に、コンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを受けて、これらの値から現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))、リアクトル電流i
L、コンデンサ電圧検出誤差Δv
cの推定値を算出して出力する。算出された誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)、リアクトル電流推定値i
L(チルダ)、コンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)は、電流指令生成器32a及びデューティ比制御器34bの第1MPC50に入力される。
【0068】
電流指令生成器32aは、第3の実施形態と同様に、リアクトル電流指令値i
L*を算出する。算出されたリアクトル電流指令値i
L*は、第1MPC50に入力される。
【0069】
第1MPC50は、DC/DCコンバータ11の状態方程式を用いてデューティ比を制御する。このとき、第1MPC50は、第1及び第2スイッチング素子14、16のデューティ比dを複数の異なる値に変化させたときのDC/DCコンバータ11における所定の状態値(状態量)に対する予測値を算出する。そして、第1MPC50は、その状態値(状態量)の目標を示す指令値と予測値との差に応じてデューティ比dを制御する。
【0070】
本実施形態では、第1MPC50は、所定の状態値としてリアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出する。そして、第1MPC50は、リアクトル電流指令値i
L*に近づくようなリアクトル電流予測値i
L^(ハット)となるデューティ比dを求める処理を行う。
【0071】
図9は、第1MPC50の構成を示す図である。
図9に示すように、第1MPC50は、加算器60(60−2〜60−129)、予測演算器62(62−1〜62−129)、評価関数演算器64(64−1〜64−129)、最小値選択器66を含んで構成される。
【0072】
加算器60(60−2〜60−129)は、現在のデューティ比d(k)に所定値を加算することによりデューティ比d(k)に変化を与えて出力する。本実施の形態では、デューティ比d(k)は、0〜1023の値の範囲で表されるものとする。すなわち、下アームである第2スイッチング素子16が常時オンであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オフである状態のときのデューティ比dが0で表されるものとする。また、下アームである第2スイッチング素子16が常時オフであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オンである状態のときのデューティ比dが1023で表されるものとする。加算器60は、現在のデューティ比d(k)を中心値として、d(k)±64の範囲で変化を与えて出力する。変化の範囲は、DC/DCコンバータ11のデッドタイムの期間及びPWM周期に基づいて設定することが好適である。例えば、デッドタイム/PWM周期×デューティ比dの数値範囲で算出される値よりも大きな変換の範囲とすることが好適である。具体的には、デッドタイムが5μs、PWM周期が100μsである場合、デューティ比dを0〜1023の範囲で表した場合には5/100×1023=51よりも大きい数値範囲を変化の範囲とすることが好適である。一方、演算負荷をできるだけ小さくするために、変化の範囲はできるだけ狭い方が好適である。そこで、本実施の形態では、変化の範囲を±64とした例を示している。
【0073】
加算器60−2は、現在のデューティ比d(k)に1を加算してd(k)+1を出力する。加算器60−3は、現在のデューティ比d(k)に2を加算してd(k)+2を出力する。同様に、加算器60−4〜加算器60−65は、現在のデューティ比d(k)にそれぞれ3〜64を加算して出力する。また、加算器60−66は、現在のデューティ比d(k)から1を減算してd(k)−1を出力する。加算器60−67は、現在のデューティ比d(k)から2を減算してd(k)−2を出力する。同様に、加算器60−68〜加算器60−129は、現在のデューティ比d(k)からそれぞれ3〜64を減算して出力する。加算器60−2〜60−129からの出力は、それぞれ予測演算器62−2〜62−129へ入力される。
【0074】
予測演算器62は、加算器60からの出力、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流推定値i
L〜(=Δi
L〜(k)(チルダ))、電源電圧v
b、出力電流(負荷電流)i
m、誤差デューティ比推定値Δd〜(=Δd〜(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
C〜(=Δv
C〜(k)(チルダ))を用いてリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出して出力する。リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、リアクトル12を流れる電流の予測値である。
【0075】
リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、数式(7)において、左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd〜(k)(チルダ)、右辺のΔv
C(k)をΔv
C〜(k)(チルダ)に置き換えて展開したi
L^[d(k)+a](ハット)の演算式を用いて算出される。
【0076】
予測演算器62−1は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを0としてi
L^[d(k)](ハット)を算出して出力する。予測演算器62−2は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを1としてi
L^[d(k)+1](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器62−3〜予測演算器62−65は、それぞれaを2〜64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器62−66は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを−1としてi
L^[d(k)−1](ハット)を算出して出力する。予測演算器62−67は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを−2としてi
L^[d(k)−2](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器62−68〜予測演算器62−129は、それぞれaを−3〜−64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器62−1〜62−129の出力は、それぞれ評価関数演算器64−1〜64−129へ入力される。
【0077】
評価関数演算器64は、コンデンサ電圧指令値v
c*、予測演算器62から入力されたリアクトル電流予測値i
L^(ハット)、電流指令生成器32aから入力されたリアクトル電流指令値i
L*に基づいて評価関数Jの演算を行い、演算結果を出力する。評価関数Jは、数式(10)にて表される。
【数10】
【0078】
評価関数演算器64−1は、数式(9)のaを0としてJ[d(k)]を算出して出力する。評価関数演算器64−2は、数式(9)のaを1としてJ[d(k)+1]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器64−3〜評価関数演算器64−65は、それぞれaを2〜64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器64−66は、数式(9)のaを−1としてJ[d(k)−1]を算出して出力する。評価関数演算器64−67は、数式(9)のaを−2としてJ[d(k)−2]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器64−68〜評価関数演算器64−129は、それぞれaを−3〜−64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器64−1〜64−129の出力は、最小値選択器66へ入力される。
【0079】
なお、評価関数Jは、数式(11)としてもよい。この場合も、評価関数演算器64−1〜評価関数演算器64−129にてそれぞれJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]を算出して出力する。
【数11】
【0080】
最小値選択器66は、評価関数演算器64−1〜評価関数演算器64−129にて算出されたJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]のうち最小値を選択し、評価関数Jを最小値とするd(k)+aを次の制御の際のデューティ比d(k+1)として三角波比較器36に出力する。これにより、これにより、デューティ比制御器34bは、リアクトル電流推定値i
L(チルダ)がリアクトル電流指令値i
L*となるようにデューティ比d(k+1)を制御する。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4に示した第1の実施形態、または
図7に示した第3の実施形態と同様である。
【0081】
第4の実施形態の別例として、第4の実施形態における第1MPC50の構成を第2モデル予測制御器に変更してもよい。以下、
図1〜3、
図8を参照して説明する。第2モデル予測制御器は、第2MPCと記載する場合がある。第4の実施形態の別例では、第2MPCは、DC/DCコンバータ11の状態方程式を、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dに対する二次方程式に変形し、当該二次方程式にオブザーバ33a(
図8)で算出された誤差デューティ比推定値Δd〜(=Δd〜(k)(チルダ))とコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
C〜(=Δv
C〜(k)(チルダ))とリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を導入、すなわち適用することでデューティ比dを算出して制御する。制御装置は、算出されたデューティ比dを用いてDC/DCコンバータ11を制御する。
【0082】
数式(7)の左辺の2行目i
L(k+1)をi
L*(k)、右辺のΔd(k)をΔd〜(k)(チルダ)、右辺のΔv
C(k)をΔv
C〜(k)(チルダ)、右辺のi
L(k)をi
L〜(k)(チルダ)に置き換えて、デューティ比d(k)に対する二次方程式に変更すると数式(12)となる。
【数12】
【0083】
数式(12)の二次方程式をデューティ比d(k+1)に対して解くと、数式(13)で表される。
【数13】
【0084】
第2MPCは、数式(13)に、DC/DCコンバータ11の各状態量及びオブザーバ33aで算出された誤差デューティ比推定値Δd〜(=Δd〜(k)(チルダ))とコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
C〜(=Δv
C〜(k)(チルダ))とリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を代入することによって制御に用いるデューティ比d(k+1)を算出する。
【0085】
第2MPCは、算出したデューティ比d(k+1)を、リミッタを介してまたはリミッタを介さずに三角波比較器36に出力する。これにより、制御装置は、三角波比較器36に入力されるデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。このため、DC/DCコンバータ11は、指令値とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0086】
次に、本発明の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果を説明する。
図10は、比較例の制御装置において、インバータのキャリア周波数fci及びDC/DCコンバータのキャリア周波数fccについて、│2×fci−fcc│(絶対値)を変化させた場合におけるコンデンサ電圧及びその検出波形を示す図である。
図10及び後述の
図11のシミュレーション結果では、デューティ比を固定している。
【0087】
比較例は、
図1から
図3の第1の実施形態において、振動除去器を設けず、電圧センサ21からのコンデンサ電圧検出値を減算器37(
図2)に入力する制御装置である。
図10(a)は、インバータのキャリア周波数fciが5kHzでDC/DCコンバータのキャリア周波数fccが10kHzである。この場合、│2×fci−fcc│(絶対値)が0であり、
図10(a)に「検出値」を付した矢印で示す検出波形のように、コンデンサ電圧の検出値におけるリップルを抑制できる。
【0088】
一方、
図10(b)(c)(d)は、それぞれDC/DCコンバータのキャリア周波数fccを9.804kHz、9.615kHz,9.434kHzに変化させた場合のコンデンサ電圧とその検出波形である。これにより、│2×fci−fcc│(絶対値)は、
図10(b)(c)(d)でそれぞれ、196kHz、385kHz、566kHzと変化して0以外の値を持っている。この場合、
図10(b)(c)(d)でそれぞれコンデンサ電圧及びその検出波形が196kHz、385kHz、566kHzに対応する周期をもって変動する。また、
図10(b)(c)(d)のいずれにおいてもコンデンサ電圧の検出波形において、矩形波状に大きく変動するリップルが生じている。
【0089】
一方、
図11は、実施形態の制御装置において、インバータのキャリア周波数fci及びDC/DCコンバータのキャリア周波数fccについて、│2×fci−fcc│を変化させた場合におけるコンデンサ電圧及びその検出波形を示す図である。
図11は、
図1から
図3の第1の実施形態のシミュレーション結果を示している。
図11(a)(b)(c)(d)における、インバータ及びDC/DCコンバータのキャリア周波数fci、fccの関係は、
図10(a)(b)(c)(d)の場合とそれぞれ同じである。
【0090】
図11(b)(c)(d)の結果から分かるように、実施形態によれば、コンデンサ電圧の検出波形において、│2×fci−fcc│が0でない場合でも、コンデンサ電圧の検出波形におけるリップルを抑制できた。
[変形例]
DC/DCコンバータにおいて、リアクトル電流に応じてリアクトル12のインダクタンスLの値は変化する。そこで、上記の各実施形態における制御において、リアクトル12に流れるリアクトル電流i
L又は流れると予想されるリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)に応じてリアクトル12のインダクタンスLを変更するように設定することが好適である。
【0091】
図12は、電流値に対するリアクトル12のインダクタンスLの変化を示す図である。
図12において、横軸の電流値は最大電流を1として正規化し、縦軸のリアクトル12のインダクタンスLは電流値が0のときを1として正規化して示している。
【0092】
上記の各実施形態において、制御に用いられるリアクトル電流i
L又はリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)に応じたリアクトル12のインダクタンスLを各数式に適用することによって、DC/DCコンバータに対してより適切な制御を行うことができる。
【0093】
なお、上記実施の形態では、オブザーバを同一次元オブザーバとしたが、最小次元オブザーバを適用してもよい。また、双1次変換を利用して状態方程式を離散化したが、これに限定されるものではなく、0次ホールド、前進差分、後退差分を利用して離散化させてもよい。
【0094】
上記の各実施形態及びその変形例によれば、コンデンサ電圧の制御を安定化させることにより、コンデンサに流れるリップル電流を抑制できる。