(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発射装置では、ピストンの推力が効率よく得られないことが判明した。
【0007】
本発明の目的は、導水管内を移動可能に配置された可動子の推力を効率よく得ることができる水中航走体の発射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願の発明者は、磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗を低減することに着目して検討を進めた。そして、上記磁気回路として、並列に形成された3つの磁気回路を採用することで、磁気回路全体の磁気抵抗を小さくすることができ、その結果、可動子の推力を効率よく得ることができるという知見を得るに至った。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
本発明による発射装置は、水中航走体を水圧によって発射する発射装置であって、前記水中航走体が装填される発射管と、前記発射管に連通する連通部を含み、その内部に水が充填された導水管と、前記導水管内で前記導水管が延びる方向に移動可能な可動子と前記可動子を電磁力によって移動させる固定子とを含み、前記可動子を前記連通部に向かって移動させることにより、前記連通部を通じて前記発射管内の前記水中航走体に伝達される水圧を上昇させる直動電動機とを備え、前記可動子は、前記可動子が移動可能な方向に延びるヨーク軸と、前記ヨーク軸を囲むように、前記ヨーク軸の周方向及び軸方向の各々に並んで配置された複数のヨーク部材と、前記複数のヨーク部材の各々の表面のうち前記ヨーク軸の径方向において外側に位置する外側面が磁極面として露出するように、前記複数のヨーク部材の各々に接して配置され、前記ヨーク部材に接する領域が同じ磁極に着磁されている複数の永久磁石とを備え、前記複数の永久磁石は、前記ヨーク軸の周方向において前記ヨーク部材の両側に位置し、各々が前記ヨーク部材に接触する一対の周方向磁石と、前記ヨーク軸の軸方向において前記ヨーク部材の両側に位置し、各々が前記ヨーク部材に接触する一対の軸方向磁石と、前記ヨーク軸の径方向において前記ヨーク部材の内側に位置し、前記ヨーク部材に接触する径方向磁石とを含み、前記固定子は、前記可動子を囲むように、前記ヨーク軸の周方向及び軸方向の各々に並んで配置され、前記複数のヨーク部材の各々が有する前記磁極面に対して前記ヨーク軸の径方向で対向可能なティースを含む複数の鉄心部と、前記複数の鉄心部の各々が有する前記ティースに巻き回された複数のコイルとを含み、前記可動子は、前記固定子とともに、前記複数の永久磁石によって生じる磁束が流れる複数の磁気回路を形成し、前記複数の磁気回路は、前記磁束が前記一対の周方向磁石の一方を流れる第1磁気回路と、前記磁束が前記一対の軸方向磁石の一方を流れ、前記第1磁気回路に対して並列に形成された第2磁気回路と、前記磁束が前記径方向磁石を流れ、前記第1磁気回路及び前記第2磁気回路の各々に対して並列に形成された第3磁気回路とを含む。
【0010】
このような発射装置においては、第1磁気回路、第2磁気回路及び第3磁気回路が並列に形成されているので、磁気回路全体での磁気抵抗を低減することができる。そのため、可動子と固定子との間に形成される空隙中の磁束密度を増加させることができる。つまり、鎖交磁束を増やすことができる。その結果、可動子の推力を効率よく得ることができる。
【0011】
上記発射装置において、好ましくは、前記直動電動機は、さらに、前記可動子が前記固定子に対して前記ヨーク軸の周方向に回転するのを規制するガイド機構を備える。
【0012】
この場合、可動子が導水管に対して周方向に回転するのを規制して、可動子を導水管が延びる方向に安定して移動させることができる。
【0013】
上記発射装置において、好ましくは、前記ガイド機構は、前記可動子及び前記固定子の一方に形成され、前記ヨーク軸の軸方向に延びるガイド溝と、前記可動子及び前記固定子の他方に形成され、前記可動子が前記固定子に対して前記ヨーク軸の周方向に回転するときに前記ガイド溝の内面に接触するように、前記ガイド溝内に位置し、前記ガイド溝内を前記ガイド溝が延びる方向に移動可能なガイド突起とを備える。
【0014】
この場合、ガイド突起がガイド溝の内面に接触することによって、可動子が固定子に対して周方向に回転するのを規制することができる。
【0015】
上記発射装置において、好ましくは、前記直動電動機は、さらに、前記導水管が延びる方向における前記可動子の位置を検出する位置検出装置を備える。
【0016】
この場合、可動子の位置を的確に把握することができる。そのため、例えば、可動子の位置に基づいて固定子コイルへの通電を制御する場合には、可動子の動きをより適切に制御することができる。
【0017】
上記発射装置において、好ましくは、前記位置検出装置は、前記可動子に配置された検出器と、前記固定子に形成されて前記軸方向に延びる溝内に配置され、前記溝が延びる方向に延びて、前記検出器によって検出される被検出部材とを含む。
【0018】
この場合、検出器を被検出部材に近づけて配置することができるので、可動子の位置をより適切に検出することができる。
【0019】
上記発射装置において、好ましくは、前記導水管は、さらに、前記連通部を通じて前記発射管内の前記水中航走体に伝達される水圧を上昇させるときの前記可動子の移動方向において前記連通部よりも下流側に位置し、前記連通部を通じて前記発射管内の前記水中航走体に伝達される水圧を上昇させるように前記導水管内を移動してきた前記可動子の進入を許容し、その内部に充填された水が前記可動子の進入に伴って圧縮されるように、前記可動子が進入する方向における下流端が閉鎖されている収容部を含む。
【0020】
この場合、収容部内の水が可動子を押し戻すことにより、可動子が減速されるので、係合フック等の機械的な手段を用いなくても、可動子を停止させることができる。そのため、可動子を機械的に停止させる際の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0021】
上記発射装置は、好ましくは、さらに、前記収容部内に配置され、前記収容部内に進入してきた前記可動子が有する前記複数の永久磁石に作用する電磁力を発生させ、それによって前記可動子を減速させる減速固定子を備える。
【0022】
この場合、可動子が収容部内の水を圧縮するときの衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発射装置によれば、導水管内を移動可能に配置された可動子の推力を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳述する。
【0026】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態としての発射装置10について説明する。
図1は、発射装置10を示す模式図である。
【0027】
発射装置10は、水中航走体20を水圧によって発射する。発射装置10は、発射管30と、導水管40と、直動電動機50とを備える。
【0028】
発射管30には、水中航走体20が装填される。
【0029】
導水管40には、水(例えば、海水)が充填される。なお、水中航走体20が発射されるときには、発射管30も水で満たされる。
【0030】
導水管40は、本体管41と、連通部としての連通管42を含む。連通管42は、本体管41と発射管30とを連通する。連通管42は、例えば、円柱状又は円板状のタンクであり、その軸方向が本体管41の軸方向に一致しており、その直径が本体管41の直径よりも大きい。なお、連通管42は、例えば、本体管41の径方向に延びる筒形状を有するものであってもよい。
【0031】
直動電動機50は、導水管40内の水圧を上昇させて、水中航走体20を発射するための水圧を発生させる。直動電動機50は、可動子50Aと、固定子50Bとを含む。可動子50Aは、本体管41が延びる方向に移動可能な状態で、本体管41内に配置される。固定子50Bは、可動子50Aを電磁力によって移動させる。固定子50Bは、本体管41に配置されている。本体管41内で可動子50Aを連通管42に向かって移動させることにより、連通管42を通じて発射管30内の水中航走体20に伝達される水圧を上昇させる。なお、直動電動機50の詳細については、後述する。
【0032】
ここで、
図1に示す例では、導水管40は、本体管41に連通する収容部としての収容管43をさらに含む。収容管43は、連通管42を通じて発射管30内の水中航走体20に伝達される水圧を上昇させるように本体管41内を移動してきた可動子50Aの進入を許容する。収容管43は、連通管42を通じて発射管30内の水中航走体20に伝達される水圧を上昇させるときの可動子50Aの移動方向において連通管42よりも下流側に位置している。収容管43は、その内部に充填された水が可動子50Aの進入に伴って圧縮されるように、可動子50Aが進入する方向における下流端が閉鎖されている。収容管43内の水が可動子50Aを押し戻すことによって、可動子50Aが減速されるので、係合フック等の機械的な手段を用いなくても、可動子50Aを停止させることができる。その結果、可動子50Aを機械的に停止させる際の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0033】
また、
図1に示す例では、発射装置10は、減速固定子70をさらに備える。減速固定子70は、収容管43内に配置される。減速固定子70は、収容管43内に進入してきた可動子50Aを電磁力によって減速させる。そのため、可動子50Aが収容管43内の水を圧縮するときの衝撃を緩和することができる。
【0034】
図2を参照しながら、直動電動機50について説明する。
図2は、直動電動機50の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、軸方向、径方向及び周方向を、可動子50Aの軸方向、径方向及び周方向とする。
【0035】
可動子50Aは、円柱形状を呈している。固定子50Bは、可動子50Aを囲むような筒形状を呈している。なお、
図2では、可動子50Aの軸方向長さが固定子50Bの軸方向長さよりも大きく示されているが、実際には、
図1に示すように、固定子50Bの軸方向長さが可動子50Aの軸方向長さよりも十分に大きくなっている。
【0036】
図3及び
図4を参照しながら、可動子50Aについて説明する。
図3は、可動子50Aの縦断面図である。
図4は、可動子50Aの横断面図である。
【0037】
可動子50Aは、ヨーク軸51と、第1端板52と、第2端板53と、複数のヨーク部材54と、複数の永久磁石55、56、57とを含む。以下、これらについて説明する。
【0038】
ヨーク軸51は、可動子50Aが移動可能な方向に延びる円柱形状を有している。ヨーク軸51の材料は、圧粉鉄心である。
【0039】
第1端板52は、ヨーク軸51の軸方向の一端に固定されている。第2端板53は、ヨーク軸51の軸方向の他端に固定されている。第1端板52及び第2端板53は、何れも、円板形状を有しており、その直径はヨーク軸51の直径よりも大きい。
【0040】
複数のヨーク部材54は、ヨーク軸51を囲むように配置されている。複数のヨーク部材54は、ヨーク軸51の周方向及び軸方向の各々に並んでいる。複数のヨーク部材54は、それぞれ、圧粉鉄心からなる。
【0041】
複数の永久磁石55、56、57は、複数のヨーク部材54の各々の表面のうちヨーク軸51の径方向において外側に位置する外側面が磁極面54Aとして露出するように、複数のヨーク部材54の各々に接して配置されている。複数の永久磁石55、56、57は、ヨーク部材54に接する領域が同じ磁極に着磁されている。
【0042】
ここで、周方向で隣り合う2つのヨーク部材54のうち、一方のヨーク部材54に接する永久磁石55、56、57の領域は、他方のヨーク部材54に接触する永久磁石55、56、57の領域とは異なる磁極に着磁されている。そのため、周方向で隣り合う2つのヨーク部材54の一方が有する磁極面54Aは、他方が有する磁極面54Aとは異なる磁極に着磁されている。
【0043】
また、軸方向で隣り合う2つのヨーク部材54のうち、一方のヨーク部材54に接する永久磁石55、56、57の領域は、他方のヨーク部材54に接触する永久磁石55、56、57の領域とは異なる磁極に着磁されている。そのため、軸方向で隣り合う2つのヨーク部材54の一方が有する磁極面54Aは、他方が有する磁極面54Aとは異なる磁極に着磁されている。
【0044】
複数の永久磁石55、56、57は、一対の周方向磁石55と、一対の軸方向磁石56と、径方向磁石57とを含む。
【0045】
一対の周方向磁石55は、周方向においてヨーク部材54の両側に位置する。一対の周方向磁石55は、それぞれ、ヨーク部材54に接している。
【0046】
一対の軸方向磁石56は、軸方向においてヨーク部材54の両側に位置する。一対の軸方向磁石56は、それぞれ、ヨーク部材54に接している。
【0047】
径方向磁石57は、径方向においてヨーク部材54の内側に位置する。径方向磁石57は、ヨーク部材54に接している。
【0048】
図5及び
図6を参照しながら、固定子50Bについて説明する。
図5は、固定子50Bの縦断面図である。
図6は、固定子50Bの横断面図である。
【0049】
固定子50Bは、複数の鉄心部58と、複数のコイル59とを含む。
【0050】
複数の鉄心部58は、可動子50Aを囲むように、周方向及び軸方向の各々に並んで配置される。複数の鉄心部58は、それぞれ、ティース581を含む。ティース581は、複数のヨーク部材54の各々が有する磁極面54Aに対して径方向で対向可能な位置にある。
【0051】
複数のコイル59は、複数の鉄心部58の各々が有するティース581に巻き回されている。
【0052】
複数のコイル59の各々への通電を制御して、コイル59が巻き回されているティース581の端面に発現する磁極を変化させる。具体的には、周方向で隣り合う2つのティース581の一方の端面に発現する磁極は、他方の端面に発現する磁極とは異なるようにする。また、軸方向で隣り合う2つのティース581の一方の端面に発現する磁極は、他方の端面に発現する磁極とは異なるようにする。
【0053】
このようにして、固定子50Bのティース581の端面に発現する磁極を変化させることにより、可動子50Aの磁極面54Aの磁極との間で、磁力による吸引又は反発が発生する。これにより、可動子50Aが軸方向に移動する。
【0054】
複数のコイル59の各々への通電は、例えば、可動子50Aの位置(本体管41の軸方向での位置)によって制御される。可動子50Aの位置は、例えば、位置検出装置としての超音波センサを用いて検出される。
【0055】
可動子50Aは、固定子50Bとともに、複数の永久磁石55、56、57によって発生する磁束が通過する複数の磁気回路を形成する。
【0056】
図7、
図8、
図9及び
図10を参照しながら、可動子50Aが固定子50Bとともに形成する複数の磁気回路61、62、63について説明する。
図7は、直動電動機50の磁気回路全体を示す回路図である。
図8は、磁気回路61において磁束が流れる方向を示すモデル図である。
図9は、磁気回路62において磁束が流れる方向を示すモデル図である。
図10は、磁気回路63において磁束が流れる方向を示すモデル図である。
【0057】
ここで、
図8、
図9及び
図10は、複数のヨーク部材54及び各ヨーク部材54に接する複数の永久磁石55、56、57の配置を平面上に展開したものである。なお、
図8、
図9及び
図10では、隣り合う2つのヨーク部材54の間に2つの磁石が配置されている場合を示しているが、これら2つの磁石は最終的には1つの磁石とみなすことができる。また、図示はしていないが、
図8、
図9及び
図10では、ヨーク部材54とヨーク軸51との間に1つの磁石が配置されている。
【0058】
複数の磁気回路61、62、63は、磁気回路61と、磁気回路62と、磁気回路63とを含む。
【0059】
図7に示すように、磁気回路61、磁気回路62及び磁気回路63は、並列に形成されている。なお、
図7において、Φ´は磁束を示し、F
mφ及びR
mφは、それぞれ、第2磁気回路62における磁石の起磁力及び磁気抵抗を示し、F
mr及びR
mrは、それぞれ、第3磁気回路63における磁石の起磁力及び磁気抵抗を示し、F
mz及びR
mzは、それぞれ、第1磁気回路61における磁石の起磁力及び磁気抵抗を示し、R
gapは空隙の磁気抵抗を示す。
【0060】
図8に示すように、磁気回路61は、固定子50Bの鉄心部58が有するティース581から出てきた磁束がヨーク部材54(ヨーク部材541)に入り、軸方向でその隣に位置するヨーク部材54(ヨーク部材542)から固定子50Bの他の鉄心部58が有するティース581に戻る経路である。ヨーク部材541からヨーク部材542に流れる磁束は、ヨーク部材541とヨーク部材542の間に位置する永久磁石(軸方向磁石56)を通過する。
【0061】
図9に示すように、磁気回路62は、固定子50Bの鉄心部58が有するティース581から出てきた磁束がヨーク部材54(ヨーク部材541)に入り、軸方向でその隣に位置するヨーク部材54(ヨーク部材542)から固定子50Bの他の鉄心部58が有するティース581に戻る経路である。ヨーク部材541からヨーク部材542に流れる磁束は、周方向においてヨーク部材541の隣に位置するヨーク部材54(ヨーク部材543)と、軸方向においてヨーク部材543の隣に位置するヨーク部材54(ヨーク部材544)とを経由する。ヨーク部材541からヨーク部材543に流れる磁束は、ヨーク部材541とヨーク部材543の間に位置する永久磁石(周方向磁石55)を通過する。ヨーク部材543からヨーク部材544に流れる磁束は、ヨーク部材543とヨーク部材544の間に位置する永久磁石(軸方向磁石56)を通過する。ヨーク部材544からヨーク部材542に流れる磁束は、ヨーク部材544とヨーク部材542の間に位置する永久磁石(周方向磁石55)を通過する。
【0062】
図10に示すように、磁気回路63は、固定子50Bの鉄心部58が有するティース581から出てきた磁束がヨーク部材54(ヨーク部材541)に入り、軸方向でその隣に位置するヨーク部材54(ヨーク部材542)から固定子50Bの他の鉄心部58が有するティース581に戻る経路である。ヨーク部材541からヨーク部材542に流れる磁束は、ヨーク軸51を経由する。ヨーク部材541からヨーク軸51に流れる磁束は、ヨーク部材541とヨーク軸51の間に位置する永久磁石(径方向磁石57)を通過する。ヨーク軸51からヨーク部材542に流れる磁束は、ヨーク軸51とヨーク部材542の間に位置する永久磁石(径方向磁石57)を通過する。
【0063】
なお、
図8、
図9及び
図10では、便宜上、軸方向で隣り合う2つの鉄心部58を単一の部材として示しているが、磁束が出てくるティース581を有する鉄心部58と磁束が入るティース581を有する鉄心部58は異なる。また、
図8、
図9及び
図10では、磁束が入ってくる磁極面54Aと磁束が出てゆく磁極面54Aが軸方向に並んでいる場合を示しているが、磁束が入ってくる磁極面54Aと磁束が出てゆく磁極面54Aが周方向に並んでいてもよい。
【0064】
上記のように、磁気回路61、磁気回路62及び磁気回路63では、磁束が入ってくる磁極面54Aが同じであり、且つ、磁束が出てゆく磁極面54Aが同じである。そのため、磁気回路61、磁気回路62及び磁気回路63は並列に形成されている。
【0065】
このように、磁気回路61、磁気回路62及び磁気回路63が並列に形成されていることにより、直動電動機50の磁気回路全体での磁気抵抗を低減することができる。以下、その理由について、説明する。
【0066】
第1磁気回路61、第2磁気回路62及び第3磁気回路63では、アンペールの周回積分の法則により、以下の式が成立する。
第1磁気回路:2gH
g+l
zH
z=0 (1)
第2磁気回路:2gH
g+2l
φH
φ−l
zH
z=0 (2)
第3磁気回路:2gH
g+2l
raH
ra=0 (3)
【0067】
なお、上記の式において、gは空隙長であり、H
gは空隙中の磁場の強さであり、l
zは軸方向磁石56の厚みであり、H
zは軸方向磁石56中の磁場の強さであり、l
φは周方向磁石55の厚みであり、H
φは周方向磁石55中の磁場の強さであり、l
raは径方向磁石57の厚みであり、H
raは径方向磁石57中の磁場の強さである。
【0068】
飽和磁束密度B
rが同じであるとすると、第1磁気回路61、第2磁気回路62及び第3磁気回路63では、以下の式が成立する。
第1磁気回路:B
z=μ
0H
z+B
r (4)
第2磁気回路:B
φ=μ
0H
φ+B
r (5)
第3磁気回路:B
ra=μ
0H
ra+B
r (6)
【0069】
なお、上記の式において、B
zは軸方向磁石56中の磁束密度であり、B
φは周方向磁石55中の磁束密度であり、B
raは径方向磁石57中の磁束密度である。
【0070】
ヨーク部材542に流入する磁束及びヨーク部材542から流出する磁束は、保存しているので(divB=0)、以下の式が成立する。
B
raA
ra+B
φA
φ+B
zA
z=B
gapA
f (7)
【0071】
なお、上記の式において、A
fはヨーク部材54における磁極面54Aの表面積であり、A
raは径方向磁石57のうちヨーク部材54に接する部分の表面積であり、A
φは周方向磁石55のうちヨーク部材54に接する部分の表面積であり、A
zは軸方向磁石56のうちヨーク部材54に接する部分の表面積である。
【0072】
上記の式(1)、(2)及び(3)を変形して整理すると、以下の式が得られる。
H
z=−(2g/l
z)H
gap (8)
H
φ=−(2g/l
φ)H
gap (9)
H
ra=−(2g/l
ra)H
gap (10)
【0073】
上記の式(4)、(5)、(6)、(8)、(9)及び(10)を用いて、上記の式(7)を整理すると、以下の式が得られる。
【0074】
ここで、A
f、A
φ及びA
zを400[mm
2]とし、A
rを625[mm
2]とし、l
φ及びl
zを6[mm]とし、l
rを4[mm]とし、B
rを1.33〜1.25[T]とし、g/2を1.00±0.04[mm]とすると、上記式(11)より、B
gapは1.59〜1.76[T]となる。
【0075】
一方、
図11に示すように、比較例に係る直動電動機70は、直動電動機50と比べて、可動子71が異なる。比較例に係る直動電動機70の可動子71は、直動電動機50の可動子50Aと比べて、複数の永久磁石72が軸方向及び周方向に並んで配置されている。軸方向で隣り合う2つの永久磁石72は、固定子50Bのティース581に対向する磁極面72Aの磁極が互いに異なる。周方向で隣り合う2つの永久磁石72は、固定子50Bのティース581に対向する磁極面72Aの磁極が互いに異なる。
【0076】
比較例に係る直動電動機70では、
図12に示すような磁気回路73が形成される。なお、
図12において、Φは磁束を示し、F
m及びR
magは、それぞれ、
図12に示す磁気回路73における磁石の起磁力及び磁気抵抗を示し、R
gapは空隙の磁気抵抗を示す。
【0077】
図13に示すように、
図12に示す磁気回路73は、固定子50Bの鉄心部58が有するティース581から出てきた磁束が永久磁石72に入り、軸方向でその隣に位置する永久磁石72から固定子50Bの他の鉄心部58が有するティース581に戻る経路である。一方の永久磁石72から他方の永久磁石72に流れる磁束は、ヨーク軸51を通過する。なお、
図13では、磁束が通過する方向に2つの磁石が重なっているが、これらは最終的には1つの磁石とみなすことができる。
【0078】
磁気回路73では、アンペールの周回積分の法則により、以下の式が成立する。
H
magl+H
gapg=0 (12)
【0079】
なお、上記の式において、gは空隙長であり、H
gは空隙中の磁場の強さであり、lは永久磁石72の厚みであり、Hは永久磁石72中の磁場の強さである。
【0080】
また、磁気回路73では、以下の式が成立する。
B
mag=μ
0H
mag+B
r (13)
【0081】
なお、上記の式において、B
magは永久磁石72中の磁束密度であり、H
magは永久磁石72中の磁場の強さであり、B
rは飽和磁束密度である。
【0082】
上記の式(12)及び(13)を整理する。このとき、空隙中と磁石中とで磁束数が保存され、経路断面が一定であることを考慮すると、B
mag=B
gapであるから、以下の式が得られる。
【0083】
ここで、lを2×3.5[mm]とし、B
rを1.33〜1.25[T]とし、g/2を1.00±0.04[mm]とすると、上記式(14)より、B
gapは0.95〜1.01[T]となる。
【0084】
つまり、直動電動機50は、直動電動機70よりも、空隙中の磁束密度が大きくなる。
【0085】
ここで、電動機では、空隙中の磁束のほとんどが電流と鎖交し、相互作用に寄与する。そのため、直動電動機50は、直動電動機70よりも大きな推力を得ることができる。
【0086】
また、直動電動機50においては、可動子50Aが固定子50Bとともに磁気回路を形成するので、導水管40(本体管41)の外側に磁場が漏れ難くなっている。そのため、導水管40(本体管41)の周りに存在する電子機器への磁場による影響を抑えることができる。
【0087】
[実施の形態の応用例1]
例えば、
図14に示すように、直動電動機50は、可動子50Aが固定子50Bに対して周方向に回転するのを規制するガイド機構80を備えていてもよい。ガイド機構80は、ガイド溝82とガイド突起84とを含む。ガイド溝82は、固定子50Bに形成されて、軸方向に延びる。
図14に示す例では、周方向で隣り合う2つのコイル59の間にガイド溝82が形成されている。ガイド突起84は、可動子50Aに形成され、可動子50Aが固定子50Bに対して周方向に回転するのを規制するように、ガイド溝82内に位置している。
図14に示す例では、ガイド突起84が周方向磁石55に形成されている。ガイド突起84は、ガイド溝82内をガイド溝82が延びる方向に移動可能に配置されている。
【0088】
このような応用例1においては、可動子50Aが固定子50Bに対して周方向に回転するのを規制するため、可動子50Aの軸方向への移動を安定させることができる。
【0089】
[実施の形態の応用例2]
例えば、位置検出装置として、リニアエンコーダを採用してもよい。この場合、
図15に示すように、ガイド溝82内に被検出部材としてのスケール90を配置し、可動子50Aに配置された検出器によってスケール90の目盛を読み取ることにより、可動子50Aの位置を検出することができる。
【0090】
この場合、スケール90がガイド溝82に沿って配置されることになるので、可動子50Aの位置を適切に検出することができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、上述の実施の形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0092】
例えば、ガイド溝が可動子に形成され、ガイド突起が固定子に形成されていてもよい。