特許第6753896号(P6753896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6753896実質的に非刺痛性の噴霧可能な洗浄製品を含む食器を洗浄する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753896
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】実質的に非刺痛性の噴霧可能な洗浄製品を含む食器を洗浄する方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/43 20060101AFI20200831BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20200831BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   C11D3/43
   A47L15/44
   C11D17/04
   C11D17/08
   C11D1/75
   C11D1/29
   C11D3/10
   C11D3/26
   C11D3/34
   C11D3/37
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-119220(P2018-119220)
(22)【出願日】2018年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-6999(P2019-6999A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年7月20日
(31)【優先権主張番号】17177272.6
(32)【優先日】2017年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18152887.8
(32)【優先日】2018年1月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビー レニルデ フランソワ ケウラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロクサーヌ ロスマニーニョ
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第03118299(EP,A1)
【文献】 特開2004−043828(JP,A)
【文献】 特開2005−120258(JP,A)
【文献】 特開平01−221498(JP,A)
【文献】 米国特許第06627590(US,B1)
【文献】 特表2018−522116(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0105377(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0180100(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0121655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
A61Q 1/14
A61Q 5/02
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄製品を噴霧する際の接触による使用者の皮膚、目、鼻、喉又はそれらの組み合わせの刺激感及び/又は刺痛感を低減又は防止する方法であって、
a)スプレーディスペンサーと噴霧可能な洗浄組成物とを含む洗浄製品を用意する工程であって、前記組成物は前記スプレーディスペンサーに収容されており、前記組成物が、 (i)前記組成物の2重量%〜15重量%の界面活性剤系であって、前記界面活性剤系はアルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤と共界面活性剤とを含み、前記共界面活性剤が、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記アルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤が2〜5の平均エトキシ化度を有する、界面活性剤系と、
(ii)前記組成物の1重量%〜10重量%のグリコールエーテル溶媒であって、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択されるグリコールエーテル溶媒と、
を含むものである、工程と
b)前記スプレーディスペンサーから前記組成物を食器に噴霧する工程であって、前記噴霧する工程が、前記使用者の皮膚、目、鼻、喉又はこれらの組み合わせに対して刺激性をもたらさず、かつ/又は刺痛性をもたらさない工程と、
c)必要に応じて前記食器から前記組成物をすすぐ又は拭き取る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記界面活性剤系と前記グリコールエーテル溶媒とが、5:1〜1:5の重量比である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記両性界面活性剤が、直鎖又は分枝鎖アルキルアミンオキシド、直鎖又は分枝鎖アルキルアミドプロピルアミンオキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記組成物の0.5重量%〜10重量%のヒドロトロープであって、クメンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるヒドロトロープを更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物の0.01重量%〜5重量%の増粘剤を更に含み、前記増粘剤は、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、多糖類、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の0.01重量%〜5重量%の有機溶媒であって、C2〜C4アルコール、C2〜C4ポリオール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を更に含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、20℃で、1mPa・s〜50mPa・sのニュートン粘度を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、1,000s-1での高せん断粘度が、20℃で1mPa・s〜50mPa・sであり、かつ、0.1s-1での低せん断粘度が、20℃で100mPa・s〜1000mPa・sであるずり流動化レオロジープロファイルを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記組成物の20℃における未希釈pH範囲が8〜13であり、pH10における前記組成物100mL当たりのNaOHのグラム数で表される予備アルカリ度が、0.1〜1である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、前記組成物の1重量%〜15重量%の非イオン性界面活性剤をさらに含み、前記非イオン性界面活性剤はアルコールアルコキシレート、アルコールエトキシレート界面活性剤又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、重炭酸塩を更に含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、アルカノールアミンを更に含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
スプレーディスペンサーと噴霧可能な洗浄組成物とを含む洗浄製品の噴霧時の接触による使用者に対する刺激感及び/又は刺痛感を低減又は防止するための前記洗浄製品を配合するためのグリコールエーテル溶媒の使用であって、前記組成物が前記スプレーディスペンサーから噴霧されるものであり、前記組成物が、
a)前記組成物の2重量%〜15重量%の界面活性剤系であって、前記界面活性剤系はアニオン性界面活性剤と共界面活性剤とを含み、前記共界面活性剤が、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択される、界面活性剤系と、
b)前記組成物の1重量%〜10重量%の前記グリコールエーテル溶媒であって、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択されるグリコールエーテル溶媒と
を含むものである、使用。
【請求項14】
前記界面活性剤系と前記グリコールエーテル溶媒とが、5:1〜1:5の重量比である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記両性界面活性剤が、直鎖又は分枝鎖アルキルアミンオキシド、直鎖又は分枝鎖アルキルアミドプロピルアミンオキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記組成物が、前記組成物の0.5重量%〜10重量%のヒドロトロープであって、クメンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるヒドロトロープを更に含む、請求項13〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物の0.01重量%〜5重量%の増粘剤を更に含み、前記増粘剤は、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、多糖類、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、前記組成物の0.01重量%〜5重量%の有機溶媒であって、C2〜C4アルコール、C2〜C4ポリオール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を更に含む、請求項13〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記組成物が、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、20℃で、1mPa・s〜50mPa・sのニュートン粘度を有する、請求項13〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記組成物が、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、1,000s-1での高せん断粘度が、20℃で1mPa・s〜50mPa・sであり、かつ、0.1s-1での低せん断粘度が、20℃で100mPa・s〜1000mPa・sであるずり流動化レオロジープロファイルを有する、請求項13〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記組成物の20℃における未希釈pH範囲が8〜13であり、pH10における前記組成物100mL当たりのNaOHのグラム数で表される予備アルカリ度が、0.1〜1である、請求項13〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記組成物が、前記組成物の1重量%〜15重量%の非イオン性界面活性剤をさらに含み、前記非イオン性界面活性剤はアルコールアルコキシレート、アルコールエトキシレート界面活性剤又はこれらの混合物からなる群からから選択される、請求項13〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記組成物が、重炭酸塩を更に含む、請求項13〜22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が、アルカノールアミンを更に含む、請求項13〜23のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に非刺痛性の噴霧可能な洗浄製品を含む、食器を洗浄する方法に関する。製品は、スプレーディスペンサーと、特定のグリコールエーテル溶媒を含む噴霧可能な組成物とを含む。特定のグリコールエーテル溶媒は、製品が噴霧される際の使用者の皮膚、目、鼻及び/又は喉の望ましくない刺痛感を実質的に低減又は防止する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器手洗いは、満たされたシンク中の水浴に洗剤を加え、洗剤水浴中に食器を浸けて擦り洗いすることによって一般的に行われてきた。消費者によって望まれる、より効率的な食器手洗い方法は、食器が一杯になるまで待つよりもむしろ食器を使い終わったらすぐに食器を手洗いすることである。この方法で一度に洗われるのは、1つの物品又は少ない数の物品である。こうしたやり方の洗浄方法は、通常、洗浄器具(例えばスポンジ)を使用して水を流しながら行われる。洗浄は速やかに、かつ消費者の最小の労力で行われなければならない。
【0003】
この手法の課題の1つとして、食器についた汚れの程度及び種類が、食器の使用のされ方に応じて大きく異なるということがある。その結果、最も落ちにくい汚れ(例えば、焼け付き汚れ、調理汚れ、及び/又は焦げ付き汚れ)のついた食器を充分に洗浄するのに充分な量の製品を使用しなければならないために製品を使いすぎるリスクが高くなり、これにより、食器及び洗浄器具をすすぐためにより多くの時間が必要となる。この手法にともなう別の課題として、洗剤を水及びスポンジと適切に混合するのに時間を要するために洗浄プロセスが遅くなることがある。
【0004】
この手法によって食器を洗浄するためのより効率的な方法を見つけることが望ましい。速やかな洗浄を行うためのこうした手法の1つに、汚れた食器にスプレー式食器洗い洗剤を直接適用することがある。スプレー製品は、食器洗いプロセスの間に製品を直接かつ調節しながら適用できるために上記に述べた課題が軽減されることから消費者に大変好まれている。しかしながら、スプレー式食器洗い洗剤の大きな問題点として、噴霧の際に製品が表面から跳ね返ることがあり、消費者の皮膚、目、鼻及び/又は喉に刺激/刺痛感を生じさせることがある。スプレー式食器洗い洗剤の別の問題点は、製品の過剰噴霧である。「過剰噴霧」とは、噴霧の際に細かな粒子が周辺大気に広がることを意味する。したがって、このような跳ね返り又は過剰噴霧によって製品の無駄及び/又は消費者が製品を吸い込むリスクの可能性が生じる。また、現在のスプレー式食器洗い洗剤製品では、食器を効果的に洗浄できず、良好な表面積泡被覆率をもたらさず、かつ/又は効率的な洗浄が行えるような持続的な泡被覆率がもたらされない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、食器の洗浄効率を高めること、特に、噴霧された製品の跳ね返り及び/又は製品の過剰噴霧の際にも、使用者に対して実質的に非刺激性及び/又は実質的に非刺痛性の、汚れの良好な洗浄及び/又は油汚れ除去が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗浄製品を噴霧する際の接触による使用者の皮膚、目、鼻、喉又はそれらの組み合わせの刺激感及び/又は刺痛感を実質的に低減又は防止する方法であって、
a)スプレーディスペンサーと噴霧可能な洗浄組成物とを含む洗浄製品を用意する工程であって、組成物はスプレーディスペンサーに収容されており、組成物が、
(i)組成物の2重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜15重量%、より好ましくは7重量%〜12重量%の界面活性剤系であって、界面活性剤系はアニオン性界面活性剤と共界面活性剤とを含み、共界面活性剤が、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは界面活性剤系はアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を含み、より好ましくは界面活性剤系はアルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤及びアミンオキシド界面活性剤を含み、好ましくは、アルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤が2〜5の平均エトキシ化度を有する、界面活性剤系と、
(ii)組成物の1重量%〜10重量%、好ましくは組成物の3重量%〜7重量%のグリコールエーテル溶媒であって、式(I):RO(RO)(式中、Rはブチルであり、Rは、エチルであり、Rは、水素又はメチル、好ましくは水素であり、mは、1又は2、好ましくは1である);式(II):RO(RO)(式中、Rは、n−プロピル又はイソプロピル、好ましくはn−プロピルであり、Rは、イソプロピルであり、Rは、水素又はメチル、好ましくは水素であり、nは、1、2、又は3、好ましくは1又は2である);及びこれらの混合物、のグリコールエーテルからなる群から選択されるグリコールエーテル溶媒と、
を含むものである、工程と、
b)スプレーディスペンサーから組成物を食器に噴霧する工程と、
c)必要に応じて食器から組成物をすすぐ又は拭き取る工程と、
を含む、方法。
【0007】
本発明はまた、スプレーディスペンサー及び噴霧可能な洗浄組成物を含む洗浄製品の噴霧時の接触による使用者に対する刺激感及び/又は刺痛感を実質的に低減又は防止するための洗浄製品の使用であって、組成物がスプレーディスペンサーから噴霧され、組成物が本発明に基づくものである、使用も含む。
【0008】
本発明の目的の1つは、噴霧可能な洗浄組成物が噴霧される際に組成物にともなう刺激感及び/又は刺痛感を実質的に低減又は防止することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、洗浄効率、特に高い油汚れ洗浄性を大きく損ねることなく、噴霧可能な洗浄組成物の刺激感及び/又は刺痛感を実質的に低減又は防止することにある。好ましくは、本発明の組成物は、消費者に受け入れられる優れた相安定性を示す。
【0010】
本発明のこれらの特徴、態様及び利点、並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の詳細な説明より当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語の定義
本明細書で使用するとき、請求項において使用される「a」及び「an」等の冠詞は、特許請求される又は記載される1つ又は複数のものを意味すると理解される。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」とは、特に言及したもの以外の工程、及び成分を付加できることを意味する。この用語には、「〜からなる(consisting of)」及び「〜から本質的になる(consisting essentially of)」という用語が含まれる。本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加若しくは任意の成分、構成要素、工程、又は制限事項をも含み、これらからなり、あるいは、これらから本質的になることができる。
【0013】
本明細書で使用するところの「食器」なる用語には、非限定的な例として、セラミック、陶磁器、金属、ガラス、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)及び木材から製造された調理器具及び食卓用食器類が含まれる。
【0014】
本明細書で使用するところの「油汚れ」なる用語は、少なくとも一部(すなわち、油汚れの少なくとも0.5重量%)が、飽和及び不飽和の油脂、好ましくは牛肉、豚肉、及び/又は鶏肉のような動物性原料に由来する油脂で構成された物質を意味する。
【0015】
「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」なる用語は、非限定的なものであることを意味する。
【0016】
本明細書で使用するところの「スプレーディスペンサー」なる用語は、組成物を収容するためのハウジングと、組成物を噴霧するための手段とを備える容器を意味する。好ましい噴霧手段は、トリガースプレーである。発泡は消費者が効果的な洗浄性能と結び付ける性質であることから、組成物は、噴霧される際に発泡することが好ましい。
【0017】
本明細書で使用するところの「刺痛感」なる用語は、使用者が噴霧又は霧化された洗浄組成物と接触することによって生じる、皮膚、又は目、鼻若しくは喉の焼けるような、又は刺されるような感覚を意味する。
【0018】
本明細書で使用するところの「実質的に非刺激性の」なる用語は、噴霧又は霧化された組成物と接触した際に使用者の皮膚、又は目、鼻若しくは喉に顕著な痒み感を誘発しない洗浄組成物のことを指す。例えば、この用語は、比較的、非涙液分泌性(すなわち、涙が出ない(non-tearing, tear-free))洗浄組成物のことを指す。
【0019】
本明細書で使用するところの「実質的に非刺痛性の」なる用語は、噴霧又は霧化された組成物と接触した際に使用者に顕著な刺痛感を生じず、本明細書に述べられる方法によって測定される刺痛潜在値が最大2、好ましくは最大1であることを特徴とする洗浄組成物のことを指す。本明細書で使用するところの「大幅に低減又は防止する」なる用語は、洗浄組成物の成分が使用者の皮膚、又は目、鼻若しくは喉の刺痛感を(部分的に)緩和(例えば低減)することを意味する。
【0020】
本明細書に述べられ、かつ特許請求される、出願者らによる発明のパラメータのそれぞれの値を決定するには、本出願の試験方法の項に開示される試験方法が使用されなければならない点は理解されよう。
【0021】
本発明のすべての態様において、特にそうでない旨が具体的に述べられない限り、文脈より明らかであるように、すべての比率(%)は、全組成物の重量に基づくものである。特にそうでない旨が具体的に述べられない限り、すべての比は重量比であり、すべての測定は特に指定しない限りは25℃で行なわれる。
【0022】
洗浄製品
本発明の洗浄製品は、スプレーディスペンサーから噴霧される噴霧可能な洗浄組成物を含み、それが適用された食器の表面に直接適用洗浄組成物を形成する。好ましくは、組成物は、更なる物理的(例えば手で擦る)、化学的、又は同様の介入を行う必要なく、適用された表面に泡を形成する。好ましくは、スプレーディスペンサーは溶媒噴射剤で加圧されておらず、噴霧手段はトリガーによって吐出されるタイプのものである。スプレーディスペンサーは、プレコンプレッションスプレヤー又は圧力調節弁を備えたエアロゾルスプレーとすることができ、いずれも当該技術分野において市販のものである。最大圧力を調節するためのバッファ機構を追加することができる適当なプレコンプレッションスプレヤーとしては、Afa Dispensing Group(Netherlands)により製造販売されるFlairosol(登録商標)スプレーディスペンサー、及び米国特許出願公開第2013/0112766号及び同第2012/0048959号に記載されるプレコンプレッショントリガースプレヤーが挙げられる。
【0023】
本発明の実質的に非刺激性及び/又は非刺痛性の噴霧可能な洗浄組成物は、落ちやすい汚れ及び/又は落ちにくい汚れの良好な洗浄性、及び/又は油汚れの除去を含む高い洗浄性を与え、組成物を噴霧して食器を洗浄する場合に特に適している。詳細には、出願人らは、特定のグリコールエーテル溶媒を含有する噴霧可能な洗浄組成物が、噴霧又は霧化された製品による使用者の皮膚、目、鼻及び/又は喉の刺激感及び/又は刺痛感を実質的に低減又は防止することを見出したものである。グリコールエーテル溶媒が限界質量に達し、会合して、消費者の皮膚、目、鼻又は喉を刺激し、かつ/又は刺すような痛みを生じ得る溶媒和球を形成する場合に問題が生じる。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明のグリコールエーテル溶媒は充分な水溶性を有するため、相互結合して溶媒和球を形成する傾向が低いことが見出されている。したがって、本発明の噴霧可能な洗浄組成物に起因する、低減された刺激性及び/又は刺痛感を実現することができる。
【0024】
本発明の組成物は、組成物の1重量%〜10重量%、好ましくは組成物の3重量%〜7重量%のグリコールエーテル溶媒であって、式(I):RO(RO)mR(式中、Rはブチルであり、Rは、エチルであり、Rは、水素又はメチル、好ましくは水素であり、mは、1又は2、好ましくは1である);式(II):RO(RO)(式中、Rは、n−プロピル又はイソプロピル、好ましくはn−プロピルであり、Rは、イソプロピルであり、Rは、水素又はメチル、好ましくは水素であり、nは、1、2、又は3、好ましくは1又は2である)、及びこれらの混合物、のグリコールエーテルからなる群から選択されるグリコールエーテル溶媒を含む。このようなグリコールエーテルが、組成物の洗浄速度だけでなく、洗浄性、特に油汚れに対する洗浄性に寄与することが確認されている。本発明の組成物のグリコールエーテルは、発泡を増進することができる。
【0025】
好ましくは、グリコールエーテル溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。適当なグリコールエーテル溶媒は、Dow Chemical Companyより購入することができ、より詳細には、Eシリーズ(エチレングリコール系)のグリコールエーテル及びPシリーズ(プロピレングリコール系)のグリコールエーテルのラインナップから購入することができる。適当なグリコールエーテルとしては、Butyl Cellosolve(商標)、Dowanol(商標)DPnP、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物は、アニオン性界面活性剤と共界面活性剤とを含む界面活性剤系を有する。好ましくは、界面活性剤系とグリコールエーテル溶媒とは、5:1〜1:5、好ましくは5:1〜1:1、より好ましくは3:1〜1:1の重量比である。好ましくは、本発明の組成物は、組成物の2重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜15重量%、より好ましくは7重量%〜12重量%の界面活性剤系を含む。界面活性剤系:グリコールエーテル溶媒の重量比が1:5よりも低い組成物は、うまく発泡しないか、かつ/又は相分離が生じて製品が物理的に不安定となる傾向がある。界面活性剤系:グリコールエーテル溶媒の重量比が5:1よりも高い組成物は、噴霧が困難となり、本発明の製品が使用される場合に一般的に存在する低量の水の存在下で油汚れと接触してゲル化しやすい。ゲルの形成は組成物を広がりにくくし、洗浄性に悪影響を及ぼす。
【0027】
本発明の組成物は、組成物の2〜15重量%、好ましくは5重量%〜10重量%のアニオン性界面活性剤と、組成物の0.1重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%〜7重量%、より好ましくは1重量%〜3重量%の共界面活性剤系とを含む。こうした界面活性剤系及び共界面活性剤系は、洗浄性及び泡立ちの面で非常に有利であることが確認されている。また、それら組成物は、スプレーパターンの観点から非常に良好であることも判明している。本発明の組成物の界面活性剤系がアニオン性界面活性剤を含む場合、小液滴の存在(即ち吸引リスク)が最小限に抑えられる。本明細書において共界面活性剤とは、主界面活性剤と比較して少量で組成物中に含まれる界面活性剤である。本明細書において主界面活性剤とは、組成物中に最も多く含まれる界面活性剤である。界面活性剤系は、洗浄性及び/又は泡の発生を助けるものと考えられる。本発明の組成物を噴射した際に生じる泡は、洗浄対象の物品に接触した際の衝撃に耐えられる強度を有し、それでありながらすすぎやすい。
【0028】
好ましくは、アニオン性界面活性剤は、アルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤である。平均エトキシ化度が2〜5、好ましくは約3であるアルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤は、エトキシ化度がより低い他のエトキシ化アルキルサルフェートアニオン性界面活性剤と比較して、洗浄性及び/又は洗浄速度の点でより効果的に働くことが見出されている。アルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤が混合物である場合、平均アルコキシ化度は、混合物の全成分のモル平均アルコキシ化度(すなわち、モル平均アルコキシ化度)である。モル平均アルコキシ化度の計算には、アルコキシレート基を有さないサルフェートアニオン性界面活性剤成分のモル数も含めなければならない。
【0029】
モル平均アルコキシ化度=(x1界面活性剤1のアルコキシ化度+x2界面活性剤2のアルコキシ化度+...)/(x1+x2+...)
式中、x1、x2、...は、混合物の各サルフェートアニオン性界面活性剤のモル数であり、アルコキシ化度は、各サルフェートアニオン性界面活性剤中のアルコキシ基の数である。
【0030】
界面活性剤が分枝状である場合、好ましい分枝基は、アルキルである。典型的には、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、環状アルキル基、及びこれらの混合物から選択される。単一又は複数のアルキル分枝が、本発明の組成物で使用されるサルフェートアニオン性界面活性剤を作製するために使用される出発アルコールのヒドロカルビル主鎖に存在し得る。
【0031】
分枝状サルフェートアニオン性界面活性剤は、単一のアニオン性界面活性剤、又はアニオン性界面活性剤の混合物であり得る。単一の界面活性剤の場合、分枝の割合は、界面活性剤が誘導される元のアルコールにおいて分枝しているヒドロカルビル鎖の重量%を指す。
【0032】
界面活性剤混合物の場合、分枝の割合は重量平均であり、以下の式に従って定義される:
分岐の重量平均(%)=[(x1アルコール1中の分岐アルコール1の重量%+x2アルコール2中の分岐アルコール2の重量%+...)/(x1+x2+...)]100
(式中、xl、x2は、本発明の洗剤のアニオン性界面活性剤の出発原料として使用されたアルコールの全アルコール混合物中の各アルコールのグラム単位の重量である)。
【0033】
重量平均分枝化度の計算には、分枝基を有さないアニオン性界面活性剤成分の重量も含めなければならない。界面活性剤系が分枝状アニオン性界面活性剤を含むとき、界面活性剤系は、界面活性剤系の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%の分枝状アニオン性界面活性剤を含み、より好ましくは、分枝状アニオン性界面活性剤は、その50重量%超の、2〜5の平均エトキシ化度及び好ましくは5%〜40%の分枝レベルを有するアルキルエトキシ化サルフェートを含む。
【0034】
本明細書に用いるのに好適なサルフェート界面活性剤としては、C8〜C18アルキル、好ましくは、C8〜C18アルキルの50重量%超のC12〜C14アルキル又はヒドロキシアルキル、サルフェート及び/又はエーテルサルフェートを含むC8〜C18アルキルの水溶性塩が挙げられる。好適な対イオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アルカノールアンモニウム、又はアンモニウム若しくは置換アンモニウムが挙げられるが、好ましくはナトリウムである。
【0035】
サルフェート界面活性剤は、C8〜C18アルキルアルコキシサルフェート(AExS)(式中、好ましくは、xは1〜30であり、アルコキシ基は、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、又は更により高級なアルコキシ基、及びこれらの混合物から選択され得る)から選択することができる。本明細書での使用に特に好ましいものは、平均アルキル炭素鎖長がC12〜C14であり、かつ平均エトキシ化度が2〜5、好ましくは3であるアルキルエトキシサルフェートである。
【0036】
様々な鎖長、エトキシ化度、及び分枝度のアルキルアルコキシサルフェートが市販されている。市販されているサルフェートとしては、Shell社製のNeodol(登録商標)アルコール、Sasol社製のLial−Isalcheml(登録商標)及びSafol(登録商標)、Procter & Gamble Chemicals社製の天然アルコールをベースにしたものが挙げられる。
【0037】
好ましくは、共界面活性剤は、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、両性界面活性剤は、アミンオキシドである。好ましくは、アミンオキシドは、直鎖又は分枝鎖アルキルアミンオキシド、直鎖又は分枝鎖アルキルアミドプロピルアミンオキシド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはアミンオキシドは直鎖アルキルジメチルアミンオキシドからなる群から選択され、より好ましくはアミンオキシドは直鎖C10アルキルジメチルアミンオキシド、直鎖C12〜C14アルキルジメチルアミンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくはアミンオキシドは直鎖C12〜C14アルキルジメチルアミンオキシドからなる群から選択される。
【0038】
他の適当な共界面活性剤としては、好ましくはアルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン(INCIスルタイン)並びにホスホベタインなどのベタインのような双性イオン性界面活性剤が挙げられ、好ましくは次の式(V)を満たす:
R1−[CO−X(CH2)n]x−N+(R2)(R3)−(CH2)m−[CH(OH)−CH2]y−Y− (V)
(式中、
R1は飽和又は不飽和C6〜22アルキル残基であり、好ましくはC8〜18アルキル残基、特に飽和C10〜16アルキル残基、例えば、飽和C12〜14アルキル残基であり、
Xは、NH、NR4(C1〜4アルキル残基R4を有する)、O、又はSであり、
nは、1〜10の数、好ましくは2〜5、特に3であり、
xは、0又は1、好ましくは1であり、
R2、R3は独立して、ヒドロキシエチル、好ましくはメチルなどの、ヒドロキシ置換される可能性のあるC1〜4アルキル残基であり、
mは、1〜4の数、特に1、2又は3であり、
yは、0又は1であり、
Yは、COO、SO3、OPO(OR5)O又はP(O)(OR5)Oであり、R5は水素原子H又はC1〜4アルキル残基である)。
【0039】
好ましいベタインは、式(Va)のアルキルベタイン、式(Vb)のアルキルアミドプロピルベタイン、式(Vc)のスルホベタイン、及び式(Vd)のアミドスルホベタインである。
【0040】
【表1】
これにおいて、R1は、式(V)と同じ意味を有する。特に好ましいベタインは、カルボベタイン[式中、Y−=COO−]であり、特に式(Va)及び式(Vb)のカルボベタイン、より好ましくは、式(Vb)のアルキルアミドベタインである。
【0041】
好適なベタイン及びスルホベタインの例は、アーモンドアミドプロピルベタイン、アプリコットアミドプロピルベタイン、アボカドアミドプロピルベタイン、ババスアミドプロピルベタイン、ベヘナミドプロピルベタイン、ベヘニルベタイン、ベタイン、キャノーラミドプロピルベタイン、カプリル/カプラミドプロピルベタイン、カルニチン、セチルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココベタイン、ココヒドロキシスルタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、ココスルタイン、デシルベタイン、ジヒドロキシエチルオレイルグリシネート、ジヒドロキシエチル大豆グリシネート、ジヒドロキシエチルステアリルグリシネート、ジヒドロキシエチルタローグリシネート、PG−ベタインのプロピルジメチコーン、エルカミドプロピルヒドロキシスルタイン、水素添加タローベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルスルタイン、ミルクアミドプロピルベタイン、ミンクアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、ミリスチルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレイルベタイン、オリーブアミドプロピルベタイン、ヤシアミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、パルミトイルカルニチン、ヤシ仁アミドプロピルベタイン、ポリテトラフルオロエチレンアセトキシプロピルベタイン、リシノール酸アミドプロピルベタイン、セサミドプロピルベタイン、ソイアミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、タローアミドプロピルベタイン、タローアミドプロピルヒドロキシスルタイン、タローベタイン、タロージヒドロキシエチルベタイン、ウンデシレンアミドプロピルベタイン、及び小麦胚芽アミドプロピルベタインである[INCIに従って表記]。好ましいベタインは、例えば、ココアミドプロピルベタインである。
【0042】
共界面活性剤は、本発明の組成物の泡立ちを助けると考えられる。特に優れた性能を有する本発明の組成物は、アニオン性界面活性剤と共界面活性剤とが、4:1〜1:1の重量比、好ましくは3:1〜2:1の重量比、最も好ましくは2.8:1〜1.3:1の重量比で存在するものである。
【0043】
本発明の洗浄組成物における最も好ましい界面活性剤系は、以下を含む。(1)組成物の4重量%〜10重量%、より好ましくは5重量%〜8重量%の、アルキルエトキシ化サルフェートアニオン性界面活性剤、(2)組成物の1重量%〜5重量%、好ましくは、1重量%〜4重量%の、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤、好ましくは、アミンオキシド界面活性剤。このような界面活性剤系と、本発明のグリコールエーテルを組み合わせることで、良好な洗浄性、発泡性が実現されることが確認されている。
【0044】
本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤を更に含んでもよい。好ましくは、組成物の1重量%〜15重量%、好ましくは1.5重量%〜10重量%、より好ましくは2重量%〜8重量%、最も好ましくは3重量%〜7重量%の非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは非イオン性界面活性剤はアルコールアルコキシレート非イオン性界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤はアルコールエトキシレート界面活性剤又はこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤はローカット(low cut)〜ミッドカット(mid cut)のアルコールエトキシレート界面活性剤からなる群から選択され、より好ましくは非イオン性界面活性剤はローカットの非イオン性界面活性剤からなる群から選択され、より好ましくはC6アルコールエトキシレート界面活性剤からなる群から選択され、好ましくは平均で1〜10個、好ましくは3〜8個、好ましくは4〜6個、最も好ましくは約5個のEOを有する。ローカットのアルコールエトキシレート界面活性剤としては、平均のアルキル炭素鎖長がC10以下であるアルコールエトキシレート界面活性剤が挙げられる。ミッドカットのアルコールエトキシレート界面活性剤は、C10超〜C14以下の平均のアルキル炭素鎖長を有する。アルキル鎖は、直鎖状又は分枝鎖状であってよく、天然又は合成由来のアルコールに由来するものでよい。適当な非イオン性アルコールエトキシレート界面活性剤としては、Emulan(登録商標)HE50又はLutensol(登録商標)CS6250(BASF社より販売されるもの)などの市販の材料が挙げられる。
【0045】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.03重量%〜3重量%、より好ましくは0.05重量%〜1重量%、最も好ましくは0.07重量%〜0.5重量%の増粘剤を更に含み、好ましくは増粘剤は、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、多糖類、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは多糖類、好ましくはキサンタンガムである。理論によって束縛されることを望むものではないが、これらの増粘剤は、刺痛感を更に低減し、特に垂直に配置された表面に対して組成物がより強く付着することを可能とするものと考えられる。
【0046】
本発明の組成物は好ましくは、アルカノールアミン、好ましくはモノエタノールアミンを更に含む。本発明の組成物は好ましくは、組成物の0.01重量%〜5重量%の有機溶媒であって、C2〜C4アルコール、C2〜C4ポリオール、ポリアルキレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を更に含む。
【0047】
本発明の組成物は好ましくは、ビルダー、好ましくはクエン酸塩を更に含む。ビルダーは、存在する場合、好ましくは組成物の0.01重量%〜5重量%、より好ましくは0.05重量%〜1重量%の濃度で存在する。ビルダーもまた、予備アルカリ度に寄与する。
【0048】
本発明の組成物は好ましくは、キレート剤、好ましくはアミノカルボキシレートキレート剤、より好ましくはグルタミン−N,N−二酢酸(GLDA)の塩を更に含む。GLDA(その塩及び誘導体)は、本発明によれば特に好ましく、その四ナトリウム塩が特に好ましい。アミノカルボキシレートはキレート剤として作用するだけではなく、予備アルカリ度にも寄与し、これは、調理汚れ、焼け付き汚れ、及び焦げ付き汚れの洗浄に役立つものと考えられる。好ましくは、キレート剤は、組成物の0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.2重量%〜5重量%、より好ましくは0.2重量%〜3重量%、最も好ましくは0.5重量%〜1.5重量%の濃度で存在する。
【0049】
本発明の組成物は好ましくは重炭酸塩を更に含む。重炭酸塩は、存在する場合、組成物の好ましくは0.01重量%〜5重量%、より好ましくは0.025重量%〜1重量%、最も好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の濃度で存在する。
【0050】
本発明の組成物は好ましくは、アルカノールアミン、好ましくはモノエタノールアミンを更に含む。アルカノールアミンは、存在する場合、組成物の好ましくは0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.2重量%〜5重量%、最も好ましくは0.3重量%〜1重量%の濃度で存在する。
【0051】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%、より好ましくは1.5重量%〜3重量%のヒドロトロープであって、クメンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるヒドロトロープ、好ましくはクメンスルホン酸ナトリウムを更に含む。特許請求される濃度のヒドロトロープを有する組成物は、噴霧される際、過剰噴霧を最小限に抑えて食器を充分に覆うことができるため、製品の無駄又は吸引のリスクを防止することができる。ヒドロトロープは、組成物の刺激及び/又は刺痛的側面を実質的に低減するのに役立つと考えられる。詳細には、本発明の組成物を噴霧する際に発生する噴霧製品は、効果的な油汚れの洗浄を行ううえで充分に強力であると同時に、噴霧時の表面からの跳ね返り及び/又は製品の過剰噴霧が消費者に顕著な刺痛感を与えることがない。
【0052】
本明細書の組成物は、ニュートン流体又は非ニュートン流体であってよい。ニュートン流体である場合、組成物は、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、20℃で、1mPa・s〜50mPa・s、好ましくは1mPa・s〜20mPa・s、より好ましくは1mPa・s〜10mPa・sの粘度を有する。代替的に、本発明の組成物は、ずり流動化流体であってもよい。これは組成物が容易に噴霧できるために重要である。本発明の組成物の粘度もまた、表面、特に垂直な表面上に噴霧された液体が留まる助けとなることで洗浄性を与えると同時にすすぎが容易なものでなければならない。特に適当なものとしては、本明細書で定義される方法を使用して測定した場合に、1,000s−1で1mPa・s〜50mPa・s、好ましくは1mPa・s〜20mPa・s、より好ましくは5mPa・s〜15mPa・sの20℃での高せん断粘度、及び、0.1s−1で100mPa・s〜1000mPa・s、好ましくは200mPa・s〜500mPa・sの20℃での低せん断粘度を有する組成物である。
【0053】
好ましくは本発明の組成物は、20℃で8〜13、好ましくは10〜11.5の未希釈pHを有する。好ましくは、組成物は0.1〜0.3の予備アルカリ度を有する。予備アルカリ度は、pH10の試験組成物を試験組成物のpHとなるように滴定するのに要する、組成物100mL当たりのNaOHのグラム数として定義される。pH及び予備アルカリ度は、落ちにくい食品汚れの洗浄に寄与する。
【0054】
本発明の組成物は好ましくは水を含む。水は、組成物に直接添加してもよく、又は原材料とともに組成物に配合してもよい。いずれにしても、好ましくは、本明細書の組成物の総含水量は、全組成物の30重量%〜95重量%、好ましくは40重量%〜90重量%、より好ましくは50重量%〜85重量%を構成することができる。
【0055】
本発明の組成物は、コンディショニングポリマー、洗浄ポリマー、表面改質ポリマー、汚れ凝集ポリマー、皮膚軟化剤、湿潤剤、皮膚若返り有効成分、酵素、カルボン酸、スクラブ粒子、漂白剤及び漂白活性剤、香料、悪臭抑制剤、顔料、染料、乳白剤、ビーズ、真珠光沢粒子、マイクロカプセル、Ca/Mgイオンなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤(例えば、NaCl、並びに他の一価、二価、及び三価の塩)、並びにpH調整剤及び緩衝手段(例えば、クエン酸などのカルボン酸、HCl、NaOH、KOH、アルカノールアミン、リン酸及びスルホン酸、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾールなど)などの多くの他の補助成分を必要に応じて含むことができる。
【0056】
更に、本発明の洗浄製品は、調理汚れ、焼け汚れ、及び焦げ汚れなどの食品汚れの洗浄を含む良好な洗浄、並びに軽い油汚れの良好な洗浄を提供する。本発明の洗浄製品は、顕著な洗浄を提供するだけでなく、非常に速やかな洗浄も提供するので、消費者による擦り洗いに必要な労力が少なくなる。したがって、本発明の洗浄製品は、水道水で食器を洗浄するのに特に適している。食器が軽くしか汚れていないとき、本発明の洗浄製品は、少ない擦り洗いで又は擦り洗いなしに非常に良好な洗浄を提供する。単に洗浄製品の組成物を噴霧し、続いて、水ですすぎ、必要に応じて小さな力の拭き動作によって支援することによって食器を洗浄することができる。汚れのひどい食器の場合、本発明の洗浄製品は、洗浄製品を用いて食器を前処理すれば、汚れを除去し易くするのに非常に役に立つ。前処理は、通常、汚れた食器に洗浄製品の未希釈の組成物をつけて放置することを含む。
【0057】
試験方法
本明細書に記載され、特許請求される本発明をより完全に理解するためには、以下に記載するアッセイを用いなければならない。
【0058】
試験方法1:予備アルカリ度
溶液の予備アルカリ度は以下のようにして測定される。Ag/AgCl電極(例えば、OrionSure−Flow電極モデル9172BN)を備えたpH計(例えば、Thermo Scientificより販売されるOrion(登録商標)モデル720A)を、標準化されたpH7及びpH10の緩衝液を用いて較正する。試験する組成物の20℃の10%蒸留水溶液100gを調製する。10%溶液のpHを測定し、0.1NのHClの標準化溶液を用いて、溶液100gをpH10にまで滴定する。滴定に要した0.1N HClの体積をmL単位で記録する。予備アルカリ度は以下のように計算される。すなわち、
予備アルカリ度=mL(0.1N HCl)×0.1(当量/リットル)×当量NaOH(g/当量)×10
【0059】
試験方法2:粘度
レオロジープロファイルは、フラットスチールペルチェプレート及び60mmの2.026°コーンプレートの構成を有する「TA instruments DHR1」レオメータを使用して測定する(TA instruments、シリアル番号:SN960912)。フローカーブ法は、コンディショニングステップと20℃でのフロースイープステップを含む。コンディショニングステップは、20℃での10秒間の浸漬ステップ、続く20℃、10s−1での10秒間の予備せん断ステップ、続く20℃での30秒のゼロせん断平衡化ステップを含む。フロースイープステップは、20℃で0.01s−1〜3,000s−1までせん断速度を対数的に増大させ、10当たり10個の点の取得速度、最大平衡化時間200秒、サンプル時間15秒、及び公差3%で行う。
【0060】
ずり流動化する製品組成物を測定する場合、高ずり粘度は1,000s−1のせん断速度で定義され、低ずり粘度は0.1s−1のせん断速度で定義される。ニュートン流体の製品組成物は、1000s−1でのせん断速度を記録する。
【0061】
試験方法3:刺痛感試験
刺痛感試験の目的は、スプレー塗布後に試験組成物によって生じる被験者の刺痛感覚及び/又は刺激感覚のレベルを比較組成物と比較することである。汚れのない乾燥したステンレス製シンクの垂直な壁に試験組成物を噴霧した後、下記のスケールに従って刺痛感性能を評価するように訓練された人員から選ばれた官能試験員によって試験組成物の刺痛性能の評価を行う。比較組成物について試験を繰り返す。試験は、約20℃及び湿度約40%の標準条件に調整した実験室内で行う。
【0062】
スプレーボトルの準備:あらゆる種類のスプレーボトルが刺痛感評価で使用できる(例えばAFA Dispensing Group(オランダ)より市販されるFlairosol(登録商標)型のスプレーボトル)。ただし、試験組成物及び比較組成物で試験を行うのに同じ種類のスプレーボトルを使用しなければならない。
【0063】
試験シンクから少なくとも5m離れて配置された別のシンクの中で試験組成物を5回噴霧することによって、試験に先立ってスプレーボトルのノズルをプライミングする。このプライミング操作は、スプレーノズルの中に空気も液体汚染もないようにするために行う。また、このプライミング操作は、スプレーノズルが詰まっておらず、スプレーパターンが比較的一定で予想どおりであることを確認するうえでも役立つ。
【0064】
刺痛感試験:スプレーボトルを、試験シンク(40cm×40cmの設置面積、高さ24cm)の垂直な壁から約15cm離して垂直な姿勢で保持することによって、リザーバが垂直な姿勢に保たれ、スプレー機構を使用して試験組成物をすべて噴霧することができるようにする。毎秒1回噴霧するスプレー頻度で、噴霧物が互いの上に連続的に当たるようにして試験組成物を8回噴霧する。噴霧された組成物がすべて、垂直壁に当たるようにする。最後のスプレーの後、すぐに官能試験員にシンクの壁から約5cmの、スプレーした領域の上の辺りに鼻を近づけてもらい、5秒間普通に息を吸ってもらう。試験員に直立した姿勢に戻ってもらい、以下の分類スケールに従って、検出された感覚/匂いをすぐに評価してもらう。シンクを大量の水でよくすすいで、新たな組成物を試験する前に香料又は化学物質が残っていないようにする。異なる試験組成物の間で少なくとも15分を置き、鼻が飽和しないように、半日の期間で4種類よりも多い組成物を試験することは避ける。比較組成物について上記のステップを繰り返す。
【0065】
刺激及び/又は刺痛感覚を、以下のスケールに基づいて官能試験員に評価してもらう。
【0066】
【表2】
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明を更に例証するために与えられるものであり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の多くの変更が可能であることから、本発明を制限するものとして解釈すべきではない。
【0068】
実施例1:比較組成物と比較した、グリコールエーテル溶媒を含む洗浄組成物の刺痛感/刺激感及び安定性の評価
表2に示す各成分を標準的な方法で混合することによって下記の洗浄組成物を製造する。異なるグリコールエーテルを発明の組成物及び比較組成物に添加する。発明の組成物1及び2は、本発明の範囲内のグリコールエーテル溶媒を加えて調製した、本発明に基づく洗浄組成物の非限定的な例である。これと並行して、本発明の範囲外のグリコールエーテル溶媒を加えて比較組成物3〜5を調製する。得られた各組成物を、本明細書に述べた刺痛感の試験方法に従って評価する。刺痛感試験の結果を表3にまとめる。
【0069】
得られた各組成物を、極端な温度に組成物を曝した場合のそれらの物理的安定性(すなわち、相分離の有無)についても評価する。各組成物を50℃で1週間、保管し、試験期間の最後にそれらの視覚的な評価を行う。単一の均質な液相(すなわち明確な相分離がない)が視覚的に認められた場合、組成物は「安定である」と評価する。相分離が視覚的に認められた場合、組成物は「安定でない」と評価する。物理的安定性試験の結果を表3にまとめる。
【0070】
【表3】
組成物の総重量に対する有効成分の重量%
AE3Sは、平均エトキシ化度が3であるC12〜C13アルキルエトキシレートサルフェートである。
Akzo Nobel社より商品名Dissolvine(登録商標)47Sで市販されるもの
ポリプロピレングリコール(分子量2000)
The Dow Chemical Companyより市販されるもの
【0071】
結果:下記表に、発明の組成物及び比較組成物のそれぞれの刺痛感/刺激感性能及び物理的安定性を示す。これらの結果は、本発明の範囲外のグリコールエーテルを含まない比較組成物と比較して、本発明に基づくグリコールエーテルを含む発明組成物の低い刺痛感/刺激感及び向上した物理的安定性を明らかに示すものである。
【0072】
【表4】
【0073】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような各寸法は、記載された値とその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。