(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753903
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】外装部品または内装部品のクリップ取付座
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20200831BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20200831BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
F16B19/00 R
F16B19/00 J
B60R13/04 Z
B60R13/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-176755(P2018-176755)
(22)【出願日】2018年9月21日
(65)【公開番号】特開2020-46032(P2020-46032A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308031108
【氏名又は名称】内浜化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩志
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−156058(JP,U)
【文献】
特開2013−241971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00
B60R 13/02
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部品本体または内装部品本体に対して突出し、一部が開口するように形成されている周壁と、
前記周壁の先端を塞ぐ取付板と、を有しており、
前記取付板には、
クリップを装着可能な取付孔と、
前記開口と前記取付孔とを連通する導入通路と、が形成されており、
前記取付板には、前記取付孔に装着した前記クリップが前記導入通路から抜け落ちることを防止する抜け防止部が形成されている外装部品または内装部品のクリップ取付座であって、
前記取付板における少なくとも前記抜け防止部より前記開口側は、前記クリップの抜け落ち方向に向けて取付板本体部に対して前記取付板本体部を基準とする前記外装部品本体または前記内装部品本体の反対側を上向きとする上り傾斜するように形成されている外装部品または内装部品のクリップ取付座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部品または内装部品のクリップ取付座に関し、詳しくは、クリップを装着可能な外装部品または内装部品のクリップ取付座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロッカーモール等の外装部品(樹脂製の外装部品)を自動車のボデーパネル等の相手部材に組み付けるとき、クリップを使用して組み付ける技術が既に知られている。このようなクリップは、予め、外装部品のクリップ取付座の取付孔に装着されており、この装着されたクリップを相手部材(図示しない)に形成されている取付孔(図示しない)に取り付けることで、外装部品を相手部材に組み付けることができる。ここで、下記特許文献1には、クリップ取付座214の取付孔226と導入通路227との境界bの壁面に一対の突部228が形成されている樹脂部材201が開示されている(
図17〜20参照)。これにより、クリップ取付座214の取付孔226に装着されたクリップ204が導入通路227から抜け落ちることを防止できる。したがって、装着されたクリップ204の保持強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−241971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、取付孔226に対するクリップ204の装着性の良さを確保するために、一対の突部228間の幅長wを広く形成することがあった。その場合、取付孔226に装着したクリップ204に対して不意な外力fが作用すると(
図21参照)、この作用した不意な外力fによってクリップ204が導入通路227から抜け落ちてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クリップの装着性の良さを確保しつつ、装着したクリップに対して不意な外力が作用しても、この作用した不意な外力によってクリップが抜け落ちることを防止できるクリップ取付座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、外装部品本体または内装部品本体に対して突出し、一部が開口するように形成されている周壁と、周壁の先端を塞ぐ取付板とを有している外装部品または内装部品のクリップ取付座である。取付板には、クリップを装着可能な取付孔と、開口と取付孔とを連通する導入通路とが形成されている。取付板には、取付孔に装着したクリップが導入通路から抜け落ちることを防止する抜け防止部が形成されている。取付板における少なくとも抜け防止部より開口側は、前記クリップの抜け落ち方向に向けて
取付板本体部に対して取付板本体部を基準とする外装部品本体または内装部品本体の反対側を上向きとする上り傾斜するように形成されている。
【0007】
請求項1の発明によれば、クリップ取付座にクリップを装着するときには、例えば、クリップの取付体の基端の一方側(例えば、右側)およびスタビライザの一方側(例えば、右側)と、クリップ取付座の取付板とが干渉する。この干渉による片側摩擦となり、干渉部が1点存在することとなる。そのため、小さな摩擦力が存在することとなる。したがって、クリップの装着性の良さを確保できる。一方、クリップ取付座に装着したクリップに対して不意な外力が作用すると、例えば、クリップの取付体の基端の他方側(例えば、左側)およびスタビライザの他方側(例えば、左側)と、クリップ取付座の傾斜する部位とが干渉する。その後、直ぐに、例えば、クリップのアンカー体の一方側(例えば、右側)とクリップ取付座の取付板とが干渉する。これらの干渉による両側摩擦となり、干渉部が2点存在することとなる。そのため、大きな摩擦力が存在することとなる。したがって、クリップ取付座に装着したクリップに対して不意な外力が作用しても、この作用した不意な外力によってクリップがクリップ取付座から抜け落ちることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るロッカーモールの全体斜視図である。
【
図2】
図1のロッカーモールを自動車のボデーパネルに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1のロッカーモールのクリップ取付座の平面図である。
【
図6】
図3のクリップ取付座にクリップを装着する手順を説明する模式図である。
【
図14】
図12において、クリップに対して不意な外力が作用した状態を説明する模式図である。
【
図17】従来技術のクリップ取付座とクリップとの分解斜視図である。
【
図18】
図17のクリップ取付座にクリップを装着する手順を説明する縦断面の模式図である。
【
図21】
図20において、クリップに対して不意な外力が作用した状態を説明する縦断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜15を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「外装部品」の例として、「ロッカーモール1」を説明する。まず、ロッカーモール1およびクリップ4を個別に説明していく。
【0010】
はじめに、ロッカーモール1から説明する。このロッカーモール1は、自動車(図示しない)のドア3(例えば、運転席のドア)の下に位置し、ボデーパネル2の側面と底面とを跨ぐように取り付けられる加飾部材である(
図1〜2参照)。この
図2からも明らかなように、ロッカーモール1は、主として、ボデーパネル2の側面側に位置するアウタ部材11と、ボデーパネル2の底面側に位置するインナ部材12とを有するロッカーモール本体10から構成されている。これらアウタ部材11とインナ部材12とは、インテグラルヒンジ13を介して結合されている。
【0011】
このアウタ部材11の内面には、複数のクリップ取付座14が形成されている(
図1〜2参照)。このクリップ取付座14は、アウタ部材11の内面に対して突出し、一部が開口21するように形成された略U字状の周壁20と、この周壁20の先端を塞ぐ略U字状の取付板25とから構成されている(
図3〜5参照)。この取付板25には、後述するクリップ4を装着可能な長孔状の取付孔26と、開口21と取付孔26とを連通する導入通路27(ガイド溝)とが形成されている。
【0012】
この取付孔26と導入通路27との境界Bの壁面に一対の突部28が形成されている。この一対の突部28間の幅長Wは、後述するクリップ4の括れ部42の外径Dより僅かに小さくなるように設定されている。これにより、後述するように、取付孔26に装着したクリップ4が導入通路27から抜け落ちることを防止できる。この突部28が、特許請求の範囲に記載の「抜け防止部」に相当する。
【0013】
また、取付板25における境界Bより開口21側は、クリップ4の抜け落ち方向(挿入方向の反対方向)に向けて上り傾斜するように形成されている。すなわち、取付板25における境界Bより開口21側には、クリップ4の抜け落ち方向に向けて上り傾斜する傾斜部29が形成されている。ロッカーモール1は、このように構成されている。このように構成されているロッカーモール1は、剛性を有する合成樹脂によって一体的に成形されている。
【0014】
次に、クリップ4を説明する。このクリップ4は、公知のものであり、膨出形状の取付体40と、丸軸状の括れ部42を有するアンカー体41と、この取付体40とアンカー体41との間に位置するスタビライザ43とから構成されている(
図2参照)。この括れ部42の外径Dは、上述したクリップ取付座14の一対の突部28間の幅長Wより僅かに大きくなるように設定されている(
図6参照)。クリップ4は、このように構成されている。このように構成されているクリップ4は、剛性を有する合成樹脂によって一体的に成形されている。
【0015】
続いて、上述したロッカーモール1のクリップ取付座14の取付孔26にクリップ4を装着する手順を説明する(
図6〜13参照)。まず、クリップ取付座14の傾斜部29の略延長線C上にクリップ4の括れ部42が位置するように、クリップ4を傾ける作業を行う(
図6〜7参照)。次に、この傾け状態のまま、クリップ取付座14の導入通路27にクリップ4の括れ部42を挿し込んでいく作業を行う(
図8〜9参照)。
【0016】
すると、
図9における取付体40の基端の右側およびスタビライザ43の右側と、クリップ取付座14の取付板25とが干渉する。このように、片側摩擦となり、干渉部Aが1点存在することとなる。したがって、小さな摩擦力が存在することとなる。さらに、挿し込んでいく作業を行うと、クリップ4の括れ部42がクリップ取付座14の一対の突部28を押し当てるため、取付板25の両自由端側が互いに遠ざかる方向(
図10において、矢印方向)に向けて撓んでいく(
図10〜11参照)。
【0017】
これにより、このクリップ4の括れ部42がクリップ取付座14の一対の突部28を乗り越える(一対の突部28の押し当てを回避できる)ため、挿し込まれたクリップ4の括れ部42が取付孔26に到達する(
図12〜13参照)。このようにして、ロッカーモール1のクリップ取付座14の取付孔26にクリップ4を装着できる。なお、この一対の突部28により、従来技術と同様に、クリップ取付座14の取付孔26に装着したクリップ4が導入通路27から抜け落ちることを防止できる。したがって、装着されたクリップ4の保持強度を高めることができる。
【0018】
また、クリップ取付座14の取付孔26に装着したクリップ4に対して不意な外力Fが作用すると(
図14〜15参照)、
図15における取付体40の基端の左側およびスタビライザ43の左側と、クリップ取付座14の傾斜部29とが干渉する。その後、直ぐに、
図15におけるアンカー体41の右側とクリップ取付座14の取付板25とが干渉する。このように、両側摩擦となり、干渉部Aが2点存在することとなる。そのため、大きな摩擦力が存在することとなる。したがって、クリップ取付座14の取付孔26に装着したクリップ4に対して不意な外力Fが作用しても、この作用した不意な外力Fによってクリップ4が導入通路27から抜け落ちることを防止できる。
【0019】
これに対し、上述したように、クリップ取付座14の取付孔26にクリップ4を装着するときには、片側摩擦となり、干渉部Aが1点存在することとなる(
図8〜9参照)。そのため、小さな摩擦力が存在することとなる。したがって、クリップ4の装着性の良さを確保できる。
【0020】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0021】
実施形態では、「外装部品」の例として、「ロッカーモール1」を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、樹脂製であれば、「自動車の各種の外装部品」、「自動車の各種の内装部品」であっても構わない。
【0022】
また、実施形態において、
図16に示すようなロッカーモール101であっても構わない。例えば、取付板25における境界Bを起点に開口21側は、クリップ4の抜け落ち方向(挿入方向の反対方向)に向けて上り傾斜するように形成されていても構わない。すなわち、取付板25における境界Bを起点に開口21側には、クリップ4の抜け落ち方向に向けて上り傾斜する傾斜部29が形成されていても構わない。
【0023】
また、実施形態において、突部28が撓み可能な弾性片であっても構わない。
【符号の説明】
【0024】
1 ロッカーモール(外装部品)
4 クリップ
10 ロッカーモール本体(外装部品本体)
14 クリップ取付座
20 周壁
21 開口
25 取付板
26 取付孔
27 導入通路
28 突部(抜け防止部)