【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]赤・青混色系イムノクロマトグラフィー装置の作製
1.標識抗A型インフルエンザウイルス抗体(標識抗A型抗体)の作製
抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、赤色ポリスチレンラテックス粒子と混合し、反応させた。次に、EDAC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン)に浮遊し、超音波分散装置でラテックス粒子を分散させた。
【0044】
2.標識抗B型インフルエンザウイルス抗体(標識抗B型抗体)の作成
抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、青色ポリスチレンラテックス粒子と混合し、反応させた。次に、EDACを最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン)に浮遊し、超音波分散装置でラテックス粒子を分散させた。
【0045】
3.標識抗体パッドの作製
1および2で作製した標識抗A型抗体と標識抗B型抗体を、室温下にて150rpmで5分間撹拌して等量混合した。混合した標識抗体を陽圧噴霧装置を用いてリール状に巻いた幅10mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を10分間吹きつけて乾燥させ、標識抗体パッドを作製した。
【0046】
4.メンブレン固相用抗A型インフルエンザウイルス抗体(固相用抗A型抗体)の調製
1とは異なる精製抗A型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、固相液で希釈して固相用抗A型抗体を調製した。
【0047】
5.固相用抗B型インフルエンザウイルス抗体(固相用抗B型抗体)の調製
2とは異なる精製抗B型インフルエンザウイルスNPモノクローナル抗体を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、固相液で希釈して固相用抗B型抗体を調製した。
【0048】
6.抗体固相化メンブレンの作製
メンブレンは、幅3cm x 長さ10cmのニトロセルロースメンブレンシート(白色)を用いた。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から8mm離れた位置に固相用抗A型抗体、10mm離れた位置に固相用抗B型抗体、12mm離れた位置に抗マウスIgG抗体を陽圧噴霧装置を用いて線状に塗布して検出領域とした。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
【0049】
7.赤・青混色系の色素含浸パッドの作製
黄緑色となるよう調合した色素液(0.001%アリザリンシアニングリーンF、0.002%タートラジン)を調製し、陽圧噴霧装置を用いてリール状に巻いた幅20mmのポリエステル不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を10分間吹きつけて乾燥させ、色素含浸パッドを作製した。
【0050】
8.インフルエンザウイルス検出用イムノクロマトグラフィー装置の作製
インフルエンザウイルス検出用イムノクロマトグラフィー装置は、
図2に示すものと同様の構成のものを用いた。3で作製した標識抗体パッド2、6で作製した検出領域3を含む抗体固相化メンブレン1、7で作製した色素含浸パッド4と、他部材(バッキングシート6、吸収帯5)とを貼り合せて長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、
図2に示すイムノクロマトグラフィー装置を作製した。
【0051】
[実施例2]赤単色系イムノクロマトグラフィー装置の作製
1.標識抗肺炎マイコプラズマ抗体(標識抗Mp抗体)の作製
抗肺炎マイコプラズマモノクローナル抗体を緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、赤色ポリスチレンラテックス粒子と混合し、反応させた。次に、EDAC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン)に浮遊し、超音波分散装置でラテックス粒子を分散させた。
【0052】
2.標識抗体パッドの作製
1で作製した標識抗Mp抗体を陽圧噴霧装置を用いてリール状に巻いた幅10mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を10分間吹きつけて乾燥させ、標識抗体パッドを作製した。
【0053】
3.メンブレン固相用抗肺炎マイコプラズマ抗体(固相用抗Mp抗体)の調製
1とは異なる精製抗肺炎マイコプラズマモノクローナル抗体を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、固相液で希釈して固相用抗Mp抗体を調製した。
【0054】
4.抗体固相化メンブレンの作製
メンブレンは、幅3cm x 長さ10cmのニトロセルロースメンブレンシート(白色)を用いた。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から9mm離れた位置に固相用抗Mp抗体、12mm離れた位置に抗マウスIgG抗体を陽圧噴霧装置を用いて線状に塗布して検出領域とした。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
【0055】
5.赤単色系の色素含浸パッドの作製
青緑色を呈する色素液(0.001%ファストグリーンFCF)を調製し、陽圧噴霧装置を用いてリール状に巻いた幅20mmのポリエステル不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を10分間吹きつけて乾燥させ、色素含浸パッドを作製した。
【0056】
6.肺炎マイコプラズマ検出用イムノクロマトグラフィー装置の作製
肺炎マイコプラズマ検出用イムノクロマトグラフィー装置は、検出領域が1つであることを除き
図2に示すものと同様の構成のものを用いた。2で作製した標識抗体パッド、4で作製した抗体固相化メンブレン、5で作製した色素含浸パッドと、他部材(バッキングシート、吸収帯)とを貼り合せて長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、
図2に示すイムノクロマトグラフィー装置を作製した。
【0057】
[実施例3]色素の有無によるバックグラウンドノイズ低減の検証
1.赤・青混色系イムノクロマトグラフィー装置(赤・青混色検出系)での検証
実施例1のイムノクロマトグラフィー装置で予め黄緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置を用意した。
【0058】
黄緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置それぞれに、検体抽出液を滴下して、3分後のメンブレンのバックグラウンドを比較した。(
図3参照)
【0059】
図3および表1で示されるとおり、サンプルパッドに色素を含ませた装置(
図3下)は色素の無い装置と比較してメンブレンが白く見えることから、バックグランドノイズが低減され、検出領域の色が鮮明になった。
【0060】
2.赤単色系イムノクロマトグラフィー装置(赤単色検出系)での検証
実施例2のイムノクロマトグラフィー装置で予め青緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置を用意した。
【0061】
青緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置それぞれに、検体抽出液(不活化した薄い肺炎マイコプラズマ抗原を含む)を滴下して、3分後のメンブレンのバックグラウンドを比較した。(
図4参照)
【0062】
図4および表1で示されるとおり、サンプルパッドに色素を含ませた装置(
図4下)は色素の無い装置と比較してメンブレンが白く見えることから、バックグランドノイズが低減され、検出領域の色が鮮明になった。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例4]共通の検体抽出液を用いた場合のバックグラウンドノイズの検証
実施例1のイムノクロマトグラフィー装置(赤・青混色系イムノクロマトグラフィー装置、装置No.1〜4)で予め黄緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置(装置No.2)と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置(装置No.1、3および4)を用意した。実施例2のイムノクロマトグラフィー装置(赤単色系イムノクロマトグラフィー装置、装置No.5〜8)で予め青緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置(装置No.6)と、何も塗布していないサンプルパッドを用いた装置(装置No.5、7および8)を用意した。
【0065】
黄緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置(装置No.2)、および青緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッドを用いた装置(装置No.6)には無色の検体抽出液を滴下した。何も塗布していないサンプルパッドを用いた実施例1の装置(装置No.1、3および4)には、無色の検体抽出液(装置No.1(対照1))、黄緑色の色素を含む検体抽出液(装置No.3)または青緑色の色素を含む検体抽出液(装置No.4)を滴下した。何も塗布していないサンプルパッドを用いた実施例2の装置(装置No.5、7および8)には、無色の検体抽出液(装置No.5(対照2))、黄緑色の色素を含む検体抽出液(装置No.7)または青緑色の色素を含む検体抽出液(装置No.8)を滴下した。それぞれの装置の滴下3分後のメンブレンのバックグラウンドノイズを比較した。
【0066】
表2で示されるとおり、検体抽出液に青緑色の色素を含ませた検体抽出液を用いた装置では、赤単色系(赤単色検出系)イムノクロマトグラフィー装置(装置No.8)において対照2と比較して、バックグランドノイズが低減されたが、同じ検体抽出液を用いた赤・青混色系(赤・青混色検出系)イムノクロマトグラフィー装置(装置No.4)では対照1と比較してバックグラウンドの青みが増し、ノイズはより高くなった。
図5に装置No.4のバックグラウンドの様子を示す。
図5上が装置No.1(対照1)の結果を示し、
図5下が装置No.4の結果を示す。
図5は装置No.4のバックグラウンドの青みが増していることを示している。
【0067】
同様に、検体抽出液に黄緑色の色素を含ませた検体抽出液を用いた装置では、赤・青混色系(赤・青混色検出系)イムノクロマトグラフィー装置(装置No.3)において対照1と比較してバックグラウンドノイズは低減されたが、同じ検体抽出液を用いた赤単色系(赤単色検出系)イムノクロマトグラフィー装置(装置No.7)ではバックグラウンドノイズを改善する効果は得られなかった。
図6に装置No.7のバックグラウンドの様子を示す。
図6上が装置No.5(対照2)の結果を示し、
図6下が装置No.7の結果を示す。
図6は装置No.7のバックグラウンドの濃さが装置No.5(対照2)のバックグラウンドの濃さと変わらないことを示している。
【0068】
すなわち、いずれかの検出系に合わせて調製した色素入り検体抽出液では、他の検出系では期待通りの効果が得られないばかりか、本来の性能よりも悪化することがあり、共通の検体抽出液を用いることができないことが示された。
【0069】
本願方法では無色の検体抽出液を共通に用いて、どちらの検出系においても期待通りのバックグラウンドノイズ低減効果が得られた。
【0070】
【表2】
【0071】
[実施例5]検体採取量のばらつきがバックグラウンドノイズに与える影響の検証
1.従来法における検体採取量の影響
実施例2のイムノクロマトグラフィー装置で色素を塗布していないサンプルパッドを用いた装置を用意し、最適な色素量を添加した検体抽出液(色素設定量・相対量1)を対照として滴下した。また、検体採取量が多い場合を想定し、無色の疑似検体を所定量混ぜた前記の色素添加検体抽出液を滴下して試験した。それぞれの装置で3分後のメンブレンのバックグラウンドノイズを比較した。
【0072】
2.本発明方法における検体採取量の影響
実施例2のイムノクロマトグラフィー装置で予め青緑色の色素を塗布して乾燥させたサンプルパッド(色素設定量・相対量1)を用意し、無色の検体抽出液を滴下し対照とした。また、検体採取量が多い場合を想定し、無色の疑似検体を所定量混ぜた検体抽出液を滴下して試験した。それぞれの装置で3分後のメンブレンのバックグラウンドノイズを比較した。
【0073】
表3に示すとおり、従来法では採取検体量が多いほど滴下時に供給される色素量が減少し、標識抗体による赤いバックグラウンドノイズを改善する効果が減じられることを示している。一方本発明方法では検出系に展開される色素量がかわらず常に一定の効果を発揮することを示している。
【0074】
【表3】