(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753977
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】交通誘導員補助デバイス
(51)【国際特許分類】
G08G 1/0955 20060101AFI20200831BHJP
G09F 17/00 20060101ALI20200831BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20200831BHJP
【FI】
G08G1/0955 A
G09F17/00 E
G01P15/18
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-61804(P2019-61804)
(22)【出願日】2019年3月7日
(65)【公開番号】特開2020-144824(P2020-144824A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2019年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514072399
【氏名又は名称】藤田 鈴香
(73)【特許権者】
【識別番号】517317473
【氏名又は名称】國見 友亮
(73)【特許権者】
【識別番号】517317484
【氏名又は名称】徳武 詩穂
(73)【特許権者】
【識別番号】518101059
【氏名又は名称】小松 優花
(72)【発明者】
【氏名】藤田 鈴香
(72)【発明者】
【氏名】國見 友亮
(72)【発明者】
【氏名】徳武 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】小松 優花
【審査官】
秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−49797(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3192521(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3202142(JP,U)
【文献】
特開2015−40926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
G08F 17/00
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二人の誘導員がそれぞれ保持する赤旗及び白旗の対を二組備えた交通誘導員補助デバイスであって、
二組の赤旗及び白旗には、いずれも専用装置が内蔵されており、
専用装置は、
制御用マイコンと、通信専用モジュールと、加速度センサと、情報伝達装置とから構成され、
制御用マイコンが、
加速度センサが測定した加速度データから赤旗及び白旗の動作を判定する手段と、
「進行誘導動作A」を二人の誘導員が同時に行っていないかを判定する手段と、
二人の誘導員が「進行誘導動作A」を同時に行っていた場合に、その情報を二人の誘導員に伝達するための命令を情報伝達装置に送信し、「進行誘導動作A」を同時に行っていることを二人の誘導員に知らせる手段と、
を備える
ことを特徴とする交通誘導員補助デバイス。
【請求項2】
一人の誘導員がそれぞれ保持する赤旗及び白旗の対を一組備えた交通誘導員補助デバイスであって、
一組の赤旗及び白旗には、いずれも専用装置が内蔵されており、
専用装置は、
制御用マイコンと、通信専用モジュールと、加速度センサと、情報伝達装置とから構成され、
制御用マイコンが、
加速度センサが測定した加速度データから赤旗及び白旗の動作を判定する手段と、誘導員が想定される動作に当てはまらない誤った動作をした場合に、その情報を誘導員に伝達するための命令を情報伝達装置に送信し、誤った動作を行っていることを誘導員に知らせる手段と、
を備える
ことを特徴とする交通誘導員補助デバイス。
【請求項3】
二組の赤旗及び白旗のうち、一つの旗に全ての旗で測定された加速度データを送信し、この旗の専用装置の制御用マイコンが、
「進行誘導動作A」を二人の誘導員が同時に行っていないかを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の交通誘導員補助デバイス。
【請求項4】
専用装置を内蔵した赤旗及び白旗で構成される交通誘導員補助デバイスであって、
専用装置は、
制御用マイコンと、通信専用モジュールと、加速度センサと、情報伝達装置と、から構成され、
制御用マイコンが、
加速度センサが測定した加速度データから赤旗及び白旗の動作を判定する手段と、
想定される動作に対して誘導員が誤った動作をしたと動作を判定する手段が判定した場合に、その情報を誘導員に伝達するための命令を送信し、動作が誤っていることを誘導員に知らせる手段と、
を備える
ことを特徴とする交通誘導員補助デバイス。
【請求項5】
取得した加速度データから動作を判別する手段が、
加速度のしきい値に基づいて、誘導員の想定される動作「i.体の正面から体の横側の水平な高さまでの間で振る往復動作」、「ii.地面に平行な位置で停止させる動作」及び「iii.体の横の下部で停止させる動作」を判別し、
白旗が「動作i」、赤旗が「動作iii」の組み合わせを「進行誘導動作A」と判定することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の交通誘導員補助デバイス。
【請求項6】
誘導員派遣会社や工事会社等で事前に誘導の仕方を練習する際に使用する
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載の交通誘導員補助デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通誘導員の補助に関し、白旗と赤旗の識別を行い、複数人の誘導員が旗で誘導を行う際に、誤った旗の振り方をすることのないように補助を行うことを目的とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上の工事や車線規制の際に、通行車両や通行者の円滑な進行を促すために、他者に任意の協力を求める交通誘導が行われる。誘導では、表示用看板で知らせるとともに、自動交通信号機を用いる方法や交通誘導員が旗を用いて誘導する方法等が用いられている。時間制御による自動交通信号機は、誘導員が近くに立つ必要がなく、誘導員にとっては安全であるが、刻々と変化する道路状況においては、交通量に対して適した誘導を行うことができないため、時間の観点のみで誘導を行うことが必ずしも最良ではない。
【0003】
道路上の工事で片側の車線を塞ぎ、交互通行を行う場合には、離れた場所で複数人の誘導員が連携をとりながら、交互通行を誘導する必要がある。この際、一方の誘導員と離れた場所で反対車線に位置する誘導員が同時に「進行誘導動作」を行ってしまうと、同一車線内に車両が侵入してしまう可能性がある。過去にそれらが原因で、実際に事故が起こった事例が存在する。権限を持たない民間誘導員の指示によって事故を起こした場合には、誘導員に民事責任が生じる場合があるが、車両の運転手自身の民事責任が問われる例が多い。加えて、刑事責任については、誘導員の過失が認められた事例は少なく、運転手の過失割合が大きくなるため、運転手にとっては誘導員の誘導が正確であることが求められる。誘導員にとっても、適切な誘導を行えなければ自身が事故に遭う可能性があり、正確な誘導を行うことの重要性が高い。
【0004】
従来の発明として、肩を支点とし交通誘導の動作を行うことによって、交通誘導員と遜色なく車両の進路変更を行う交通誘導用ロボットがある。この発明を使用することによって、夜間や雨天等の悪条件下であっても長時間にわたり交通誘導を行うことが可能であるため、悪条件下での事故を未然に防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−83394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
道路状況は時々刻々と変化するため、特許文献1のロボットを用いた自動的な誘導より、誘導員がその時の道路状況に応じて判断した誘導の方が優れている場合もある。誘導員は、判断を正確に行えたとしても、旗の扱いに慣れていない場合があり、正しく誘導を行えていないといった問題点がある。
【0007】
本発明は、複数の交通誘導員が無線通信機器等を用いずに、目視で旗を用いた誘導を行う際に、誤った旗の振り方をすることのないように補助を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、3軸加速度センサを用いて想定される旗の誘導動作「i.体の正面から体の横側の水平な高さまでの間で振る往復動作」、「ii.地面に平行な位置で停止させる動作」、「iii.体の横の下部で停止させる動作」の加速度データを取得し、しきい値を設けることでそれぞれの動作を判別することが可能であると考えた。動作i、ii、iiiのしきい値は、実際の実験データに基づき加速度に関する特徴を得ることで、動作ごとにしきい値を設けることが可能である。
また、誘導員の動作と、想定される動作との正誤判定を行い、動作が誤っている場合に振動や警告音によって知らせることで誘導員はすぐに動作を修正することが可能であると考えた。誘導員が2人の場合でも、お互いの動作のデータを送受信することで、動作の誤りを知らせ、修正することができる。
【0009】
本発明の交通誘導員補助デバイスは、以下の技術手段から構成される。
[1]赤旗及び白旗の専用装置は、制御用マイコンと電源電池と、データの送受信を行う通信専用モジュールと、動作の加速度データを取得する3軸加速度センサと、誤った動作を誘導員に知らせる圧電ブザー及び振動モータを備え、
専用プログラムは、取得した加速度データから赤旗及び白旗の動作を想定される動作i、ii、iiiのうちから判定する手段と、
誤った動作をした誘導員の持つ赤旗から同じ誘導員が持つ白旗へ振動命令を送信する手段と、2人組の誘導員が同時に動作iを行った場合に鳴動命令を送信する手段と、を備える。
[1]の交通誘導補助デバイスが、[2]赤旗から白旗へ振動命令を送信する手段及び2人組の誘導員が同時に動作iを行った場合に鳴動命令を送信する手段が、誘導員の誤った動作を修正させる。
【発明の効果】
【0010】
本装置を用いることで、誘導員が誤った動作を行った場合に、振動モータによって振動をしたり、圧電ブザーから警告音を発したりすることにより、誘導員に誤った動作を行ったことを知らせ、誘導員が正しい誘導を行うことを補助することができる。これにより、誘導員の人為的な誤りによる事故を未然に防ぎ、減らすことができる。
【0011】
また、誘導員派遣会社や工事会社等で事前に誘導の仕方を練習する際に、本装置を用いることで練習者がリアルタイムで誤った動作に気付き修正することができるので、練習者に正しい誘導動作を練習させることができる。
【図面の簡単な説明】
【
図3】机上で静止させたときの加速度の値のグラフである。
【
図10】「動作ii」の加速度の値のグラフである。
【
図11】「動作iii」の加速度の値のグラフである。
【
図12】「動作iii」→「動作i」→「動作ii」→「動作iii」の連続的動作の加速度の値のグラフである。
【
図14】2人組での誘導における危険な誘導動作の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態図を、
図1に示す。
本発明の交通誘導員補助デバイスは誘導員の動作を判定する専用プログラムを備えた専用装置1が内蔵された赤旗及び白旗で構成される。
【0013】
[装置構成]
図2は、専用装置1の構成図である。
専用装置1は、制御用マイコン2(Arduino、Raspberry PI等)、通信専用モジュール3(ZigBee等)、3軸加速度センサ4、圧電ブザー5、振動モータ6、バッテリー7で構成される。通信専用モジュール3、3軸加速度センサ4、圧電ブザー5及び振動モータ6は制御用マイコン2に接続されており、バッテリー7から制御用マイコン2に電力が供給されている。
3軸加速度センサ4は、誘導員が振る旗の挙動を
図2に示したxyz軸の方向で加速度を取得する。
図3に今回使用した加速度センサを机上で静止させたときの加速度の値のグラフで示す。このとき、地面とz軸とが垂直となっており、z軸の値が常に9.8[m/s^2]を示した。x軸とy軸の値は常に0[m/s^2]であった。また、
図5に加速度データ取得例の図を示す。
図2中の3軸加速度センサ4は誘導員が旗を持ったときに、
図5のような軸を持つ。つまり、
図5において、白旗はy軸が鉛直方向を向き、x軸、z軸が水平方向と平行な軸を有し、赤旗はz軸が鉛直方向を向き、x軸、y軸が水平方向と平行な軸を有するようになる。
制御用マイコン2は、専用デバイスに接続されている各センサの値から、誘導員が正しく交通誘導を行えているか確認するための専用プログラムが実装されている。専用プログラムは、センサの値の変化に追従し、正しさを確かめる条件分岐プログラムを使用する。
圧電ブザー5は、警告音を鳴らして誘導動作の不備を伝達するものである。制御用マイコン2が専用プログラムを用いて3軸加速度センサ4の値から誘導員が正しく交通誘導を行えているか確認し、正しく誘導できていない場合、制御用マイコン2から圧電ブザー5に鳴動命令が送られてくるため、圧電ブザー5は警告音を鳴らして誘導員に誘導動作の不備を伝達する。二人以上の誘導員の場合には、一方または両方の誘導員が正しく誘導できていない場合、正しく誘導できていない誘導員の専用装置1の圧電ブザー5には制御用マイコン2から鳴動命令が送られてくるため、圧電ブザー5は警告音を鳴らして一方または両方の誘導員に誘導動作の不備を伝達する。
振動モータ6は、誘導員が持つ旗を振動させ誘導動作の不備を伝達するものである。制御用マイコン2が専用プログラムを用いて3軸加速度センサ4の値から誘導員が正しく交通誘導を行えているか確認し、正しく誘導できていない場合、制御用マイコン2から振動モータ6に振動命令が送られてくるため、振動モータ6は誘導員が持つ旗を振動させ誘導員に誘導動作の不備を伝達する。正しく誘導できていない誘導員の専用装置1の振動モータ6には制御用マイコン2から振動命令が送られてくるため、振動モータ6は旗を振動させ誘導員に誘導動作の不備を伝達する。
バッテリー7は、一般的なモバイルバッテリーや乾電池を想定しており、Arduinoの定格電圧の3.3V以上の電圧を供給する。
【0014】
図4は、専用装置間の通信方法の説明図である。本装置は赤旗と白旗の内部にそれぞれ通信専用モジュール3が内蔵されており、それぞれの旗の動作から正しい旗の動作が行われているかを判定するため、赤旗と白旗の通信専用モジュール3がデータの送受信を行う。1人の誘導員の動作判定を行う場合には、赤旗の制御用マイコン2において両方の旗の動作判定を行うため、白旗のデータが白旗から赤旗に送信される。
また、誘導員甲及び誘導員乙の2人の誘導員が誘導動作を行う場合には、甲、乙がそれぞれ白旗と赤旗を保持して誘導動作をするので、甲、乙それぞれの誘導動作に加えて、甲と乙の誘導動作が対応しているかについて動作判定を行う必要がある。この場合には、一方の誘導員が保持する赤旗、例えば、甲の保持する赤旗の制御用マイコン2で動作判定を行う。このため、乙が保持する白旗のデータも含めて、乙が保持する赤旗から、甲の保持する赤旗にデータが送信される。本発明では、甲側の赤旗で動作判定を行っているが、乙側にも判定機能を備えることも可能である。ここで、赤旗を用いる理由は、旗を振る動作など想定される動作のうちでも激しい動きが白旗に比べて少なく、部品の消耗等の影響がより少ないと考えられるからである。
【0015】
以下に想定される動作「i.体の正面から体の横側の水平な高さまでの間で旗を振る往復動作」、「ii.地面に平行な位置で旗を停止させる動作」、「iii.体の横の下部で旗を停止させる動作」の特徴及び判定方法を示す。動作の判定には、各旗に設けた専用装置の3軸加速度センサ4が検出する加速度のデータを使用できる。例えば、加速度の値が一定のしきい値を越えた場合(または下回った場合)に、各動作が生じたと判定することができる。各動作が生じたと判定する加速度のしきい値は、予め実施した実験データを使用できる。例えば、
図6、
図7及び
図8に示す各動作を判定するしきい値を求めるための実験データに基づき、動作判定を行うことができると考える。
動作判定するための加速度データ(
図9〜
図12参照)は、0.02[s]ごとに中央値を取得し、その加速度データについてプロットを行っている。
図9〜
図12では、中央値1回分ごとのデータについてプロットしたが、実際のプログラムではこの中央値データ100個が得られる毎、すなわち2[s]毎に動作の判定を行うことが望ましい。誘導員は、2[s]以内に正しい動作に修正ができ、安全性が高まると考える。なお、動作判定に使用する中央値データの個数は100個に限定されるものではなく、設定で増減することが可能である。
【0016】
誘導員の各動作を判定する際に使用する旗の動き、つまり、誘導員の腕の動作として、以下の3つの腕の動作を挙げることができる。
「i.体の正面から体の横側の水平な高さまでの間で振る往復動作」
「ii.地面に平行な位置で停止させる動作」
「iii.体の横の下部で停止させる動作」
以上の3つの腕の動作と旗の色を組み合わせることで、
図6、
図7及び
図8に示した「進行誘導動作A」、「停止誘導動作B」、「待機操作C」という交通誘導において必要な動作とした。
以下に、3軸加速度センサ4が検出する加速度のデータを使用して、専用装置の制御用マイコン2が「進行誘導動作A」、「停止誘導動作B」、「待機操作C」を判定する方法を説明する。
【0017】
図9に「動作i」の加速度の値のグラフを示す。「動作i」の判定には、y軸及びz軸の加速度の値を用いる。
図9に示すように、y軸の値が10[m/s^2]以上でz軸の値が2.5[m/s^2]以下の場合、及びy軸の値が5[m/s^2]以下でz軸の値が2.5[m/s^2]以上の場合、複数のピークを持つ。よって「進行誘導動作A」は上記のような特徴によって判別できる。
【0018】
図10に「動作ii」の加速度の値のグラフを示す。「動作ii」の判定には、y軸の加速度センサの値を用いる。
図10に示すように、加速度の高い順にz軸、y軸、x軸となっており、加速度のy軸の値が0[m/s^2]以下で一定の値を示すとき「動作ii」であると判定する。
【0019】
図11に「動作iii」の加速度の値のグラフを示す。「動作iii」の判定には、「動作ii」と同様にy軸の加速度センサの値を用いる。
図11に示すように、加速度の高い順にy軸、z軸、x軸となっているため「動作ii」との動作の区別が可能である。よって、加速度のy軸の値が4[m/s^2]以上で一定の値を示すとき「動作iii」であると判定する。
【0020】
「進行誘導動作A」(
図6参照)は「動作i」と「動作iii」を組み合わせた、赤旗を下部で停止した状態で、白旗を体の正面から右側に地面に平行な高さまでの間で振る往復動作であり、通行車両等に進行を指示する意味を有している。つまり、誘導員の持つ白旗の動作が「動作i」であると判別され、かつ赤旗の動作が「動作iii」であると判別されたときが、「進行誘導動作A」が正しく行われている場合といえる。
【0021】
「停止誘導動作B」(
図7参照)は「動作ii」と「動作iii」を組み合わせた、白旗を下部で停止させた状態で、赤旗を体の左側の地面に平行な位置で停止させる動作であり、通行車両等に停止を指示する意味を有している。つまり、誘導員の持つ白旗の動作が「動作iii」であると判別され、かつ赤旗の動作が「動作ii」であると判別されたときが、「停止誘導動作B」が正しく行われている場合といえる。
【0022】
「待機操作C」(
図8参照)は白旗と赤旗の両方をそれぞれ下部で停止させる動作であり、通行車両等が周辺に存在しない場合に行われる。誘導員の持つ白旗と赤旗の動作が同時に「動作iii」であると判別されたときが、「待機操作C」が正しく行われている場合といえる。
【0023】
図12に、これらの動作を連続的に行った場合の加速度の変化の図を示す。連続的に動作を行った場合においても、それぞれの加速度に関する特徴が確認できた。
[専用プログラムの構成]
【0024】
本プログラムは専用装置1に接続されているバッテリー7の電源をONにした時点で起動する。本プログラムは電源がOFFになるまで一連の情報処理をループする仕様となっている。電源がOFFになるまで動作判定を行い続けるため、誘導員が間違った誘導を行った場合には即座に警告を行い、誘導動作の修正を促すことができる。
【0025】
専用プログラムで用いるシリアル通信プログラムについて説明する。専用プログラムが3軸加速度センサ4からデータを取得した場合、センサデータをsplit関数等で区切れるよう、データとデータの間に特定の記号を挿入した文字列に変換し、シリアル通信を開始する。今回のシリアル通信ではスタートビット、文字列、ストップビットの順番で送信される。シリアル通信の受信側では、スタートビットを受信した場合、文字列を受信する。このシリアル通信はストップビットを受信すると待機状態に移り、スタートビットを再受信すると、もう一度シリアル通信が始まる。
【0026】
各誘導員の動作判定の場合は2[s]間隔、2人組の誘導員の動作判定を行う場合は動作判定を2回行うので、各誘導員の動作判定の0.3[s]後に動作判定用のシリアル通信を行う。動作判定のタイミングであるが、シリアル通信でデータを受信後、すぐに動作判定を行うものとする。専用プログラムでは条件分岐のみで動作判定を行うため、白旗から赤旗へ加速度センサのデータを送信したときと誤った動作をした場合に赤旗から白旗へ振動命令を送信するときの間で2回の動作判定を行うことができる。動作判定時に誤った動作であると判断した場合には、即座にシリアル通信を行い、誘導員に警告を行う。
2人組で使用した場合の、専用プログラムによる情報処理の詳細を、
図13に示す専用プログラムのフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
2本の交通誘導用の旗に内蔵された専用デバイスから、加速度データをそれぞれ取得する。加速度データは、0.004[s]ごとに取得し、その5回分のデータ(0.02[s])について中央値を求める。
白旗から赤旗に取得した中央値データを100回分ごとに、文字列に変換し送信する。これにより、2[s]ごとに100回分の中央値データが送信されるため、2[s]間隔のシリアル通信で送信できる。
【0028】
送信されてきた100回分のデータについて、連続的に値の変化を制御用マイコン2によって処理することによって、誘導員の赤旗や白旗を用いた誘導が誤っていないかを判定する。先に上げた想定される旗の動作に示した判定方法により、「動作i」「動作ii」「動作iii」「これ以外の動作」のうち、いずれの動作であるかを制御用マイコン2が判定する。判断された動作が、旗の色に対応しているか制御用マイコン2が判定する。
【0029】
想定される旗の動作に当てはまらなかった場合には、振動により誤った動作であることを誘導員に知らせる必要がある。誤った動作をした誘導員の持つ赤旗では、制御用マイコン2から振動モータ6に振動命令が送信され、白旗の専用装置でも赤旗の専用装置から送信される振動命令が振動モータ6に送信されることによって、赤旗白旗ともに振動をさせることができる。すると、誘導員の持つ旗が振動するので、誘導員は自身が誤った誘導動作をしてしまったことに気付き、修正することができる。
【0030】
2名の誘導員が誘導する場合には、4本の交通誘導用の旗に内蔵された専用装置において加速度データをそれぞれ取得する。加速度データは、0.004[s]ごとに取得し、その5回分のデータ(0.02[s])について中央値を求める。
測定された加速度データは、誘導員甲の保持する白旗(白旗甲)の専用装置から誘導員甲の保持する赤旗(赤旗甲)の専用装置に、また、誘導員乙の保持する白旗(白旗乙)の専用装置から誘導員乙の保持する赤旗(赤旗乙)の専用装置にそれぞれ取得した白旗甲と白旗乙の中央値データを100回分ごとに、文字列に変換し送信する。これにより、2[s]ごとに100回分の中央値データが送信されるため、2[s]間隔のシリアル通信で送信できる。
【0031】
送信されてきた100回分のデータについて、赤旗甲の専用装置では、連続的な値の変化を制御用マイコン2によって処理することによって、誘導員甲及び誘導員乙の個人の赤旗や白旗を用いた誘導が誤っていないかを判定する。先に上げた想定される旗の動作に示した判定方法により、「動作i」「動作ii」「動作iii」「これ以外の動作」のうち、いずれの動作であるかを赤旗甲の専用装置の制御用マイコン2が判定する。判断された動作が、旗の色に対応しているか赤旗甲の専用装置の制御用マイコン2が判定する。
【0032】
想定される旗の動作に当てはまらなかった場合には、振動をして誤った動作であることを誘導員に知らせる必要がある。誤った動作をした誘導員の持つ赤旗の専用装置から白旗の専用装置へ振動命令を送信することによって、赤旗白旗ともに振動をさせることができる。すると、誘導員の持つ旗が振動するので、これにより誘導員は自身が誤った誘導動作をしてしまったことに気付き、動作を修正することができる。
【0033】
動作判定で、3つの動作のうちのどれかの正しい動作ができていた場合でも、
図14に示すように、2人の誘導員が同時に「進行誘導動作A」をしてしまった場合は、同一車線に車両が侵入することとなり、大変危険である。そこで、「進行誘導動作A」に当てはまる動作を同時に行っていないかを判定する必要がある。そのため、赤旗乙から赤旗甲へセンサデータを送信することにより、赤旗甲がすべての旗のセンサデータを取得した状態にする。
【0034】
赤旗甲に集まったセンサデータをもとに、「進行誘導動作A」に当てはまる動作を誘導員甲と誘導員乙が同時に行っていないかを判定する。同時に当てはまる場合には、両方の誘導員の旗に警告音を鳴らす必要があるため、赤旗甲から赤旗乙へ鳴動命令を送信する。それぞれ赤旗から白旗へ鳴動命令を送信し、それぞれの誘導員の赤白旗の両方が鳴動できるようにする。
【0035】
鳴動命令を受け取ると、圧電ブザー5が動作し、誘導員の持つ旗が鳴動する。これにより誘導員は自身が誤った誘導動作をしてしまったことに気付き、修正することができる。このように振動及び鳴動で警告方法を分けることによって、個人の誘導動作の間違い、2人組の誘導動作の間違い、どちらの間違いであるかを即座に理解することが可能である。
【0036】
なお、上記例では、二人が同時に「進行誘導動作A」をした場合に旗が鳴動し、各誘導員の動作が誘導動作をした場合には旗が振動する場合を説明したが、二人が同時に「進行誘導動作A」をした場合に旗が振動し、各誘導員の動作が誘導動作をした場合には旗が鳴動するようにしてもよい。
【0037】
[使用方法]
使用者はまず初めに専用装置に接続されているバッテリーの電源をONにし、専用プログラムを起動させる。その後、使用者はあらかじめ想定される交通誘導の待機状態に移り、専用プログラムが待機状態と認識した場合、専用装置の圧電ブザー5からスタート音が鳴り、交通誘導の補助を始める。使用者が交通誘導を終了したり、途中休憩をはさんだりした場合には、バッテリー7の電源をOFFにすることで専用プログラムもOFFになり、警告音等も鳴らなくなる。
使用者1人に対しても、個人の誘導動作が誤っているかどうかを判定することができ、誘導員甲、誘導員乙のように使用者が2人いる場合には、同時に行うと危険な誘導となってしまう動作についても判定することが可能である。また、使用者同士の距離が長い時、中継器を設置することで、さらに広範囲で本デバイスを使用することが可能である。また、3人以上の場合でも、ZigBee通信の条件を変更することによって対応することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 専用装置内蔵の交通誘導旗
2 制御用マイコン
3 通信専用モジュール
4 3軸加速度センサ
5 圧電ブザー
6 振動モータ
7 バッテリー