特許第6754014号(P6754014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754014
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】駆動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/029 20120101AFI20200831BHJP
   F16J 15/14 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
   F16H57/029
   !F16J15/14 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-555279(P2019-555279)
(86)(22)【出願日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2018042213
(87)【国際公開番号】WO2019102921
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-225827(P2017-225827)
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 充洋
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−85395(JP,A)
【文献】 特開2016−64806(JP,A)
【文献】 特開平11−165548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/029
F16J 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース部材と、
コネクタ端子部を有する第2ケース部材と、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との合わせ面に設けられたフォームドインプレイスガスケットと、
を有し、
少なくとも前記コネクタ端子部に隣接する前記合わせ面の外周端部において、前記フォームドインプレイスガスケットの溜まり部が形成されており、
前記溜まり部は、前記コネクタ端子部に隣接する前記合わせ面の外周端部に局所的に設けられている、駆動力伝達装置。
【請求項2】
第1ケース部材と、
コネクタ端子部を有する第2ケース部材と、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との合わせ面に設けられたフォームドインプレイスガスケットと、
を有し、
少なくとも前記コネクタ端子部に隣接する前記合わせ面の外周端部において、前記フォームドインプレイスガスケットの溜まり部が形成されており、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材は、前記コネクタ端子部からの距離が最も小さい2つのボルト孔を有し、
前記溜まり部は、前記2つのボルト孔の間に局所的に設けられている、駆動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記溜まり部は、前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材の少なくとも一方に切欠きが設けられることにより形成されている、駆動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の自動変速機(駆動力伝達装置)の変速機ケースは、ハウジング、ケース、サイドカバーなどの複数の部材をボルトで螺合して組み立てられる。
【0003】
特許文献1には、ガスケットや液体パッキンを挟んで、これらハウジング、ケース、サイドカバーなどの複数の部材を接合した変速機ケースが開示されている。
【0004】
図5は、従来例にかかる車両用の自動変速機100(駆動力伝達装置)の変速機ケース10を説明する図である。
図5の(a)は、変速機ケース10の要部拡大図である。図5の(b)は、図5の(a)における面Aで、変速機ケース10を切断した切断面の模式図である。
なお、図5の(b)は、変速機ケース10の切断面を紙面下側から上側に向かって見た図である。
【0005】
図5の(a)に示すように、変速機ケース10は、ケース2とサイドカバー3とを、互いのフランジ部22、32同士を重ね合わせた状態で組み付けられている。
【0006】
図5の(b)に示すように、変速機ケース10は、重ね合わせたフランジ部22、32をボルトBで連結した接合構造110を採用している。
ケース2側のフランジ部22と、サイドカバー3側のフランジ部32との互いの接合面には、シール材4が介在している。このシール材4は、変速機ケース10内のオイルが、重ね合わせたフランジ部22、32の間から外部に漏出することを防止するために設けられている。
【0007】
ここで、シール材4として、液状ガスケットの一種であるFIPG(フォームドインプレイスガスケット(Formed In Place Gasket)/別称:現場成形ガスケット、流し込みガスケット)がある。
【0008】
FIPGは液状のガスケットであり、当該FIPGは硬化するまでに数時間を要する。
従って、変速機ケース10への他の部品(例えば、電装品など)の組付けは、ケース2とサイドカバー3の間にFIPGを塗布した後、当該変速機ケース10を放置して、FIPGが硬化するのを待って行う。そうすると、変速機ケース10を放置する場所の確保が必要になる他、放置する分だけ工程時間も長くなる。
【0009】
そこで、FIPGの硬化を待たずに他の部品の組付けを行い、当該他の部品の組み付け後に放置することにより、工程時間の短縮を図っている。
【0010】
ところが、FIPGを塗布した領域に隣接する箇所に、回転センサ5のコネクタ端子部52が位置している場合がある(図5の(b)参照)。かかる場合、従来の自動変速機100の接合構造110では、図示しないコネクタをコネクタ端子部52に接続するにあたり、接合面からはみ出した硬化前の液状のFIPGが当該コネクタに付着して、接続不良を引き起こす恐れがある。
【0011】
そこで、コネクタの接続不良の可能性を低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−213583
【発明の概要】
【0013】
本発明は、
第1ケース部材と、
コネクタ端子部を有する第2ケース部材と、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との合わせ面に設けられたフォームドインプレイスガスケットと、を有し、
少なくとも前記コネクタ端子部に隣接する前記合わせ面の外周端部において、前記フォームドインプレイスガスケットの溜まり部が形成されている構成とした。
【0014】
本発明によれば、コネクタの接続不良の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
図2】実施の形態にかかる変速機ケースを説明する図である。
図3】実施の形態にかかる接合構造を説明する図である。
図4】変形例にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
図5】従来例にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる実施の形態を、駆動力伝達装置が車両用の自動変速機1である場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1は、自動変速機1の変速機ケース10を説明する図である。
図1の(a)は、変速機ケース10の斜視図である。
図1の(b)は、サイドカバー3側からみた変速機ケース10の要部拡大図である。
図1の(c)は、図1の(b)におけるA−A矢視図である。
図2は、変速機ケース10のケース2とサイドカバー3を説明する図である。
図2の(a)は、ケース2をサイドカバー3側から見た平面図である。
図2の(b)は、サイドカバー3をケース2側から見た平面図である。
図3は、ケース2とサイドカバー3との接合構造11を説明する図である。
図3の(a)は、図1の(b)におけるC−C断面の模式図である。
図3の(b)は、図1の(b)におけるD−D断面の模式図である。
図3の(c)は、図3の(a)における領域Aの拡大図である。
なお、図2の(b)では、接合面と回転センサとの位置関係を分かりやすくするために、回転センサの一部を仮想線で記載してある。
【0018】
図1の(a)に示すように、自動変速機1の変速機ケース10は、ケース2と、サイドカバー3と、トルクコンバータ(図示せず)を収容するコンバータカバー6と、から構成される。
【0019】
図2の(a)に示すように、ケース2は、一対のプーリ(図示せず)を収容するプーリ収容室20を有している。このプーリ収容室20を囲む周壁部21の内側に、一対のプーリ(図示せず)が収容される。
【0020】
この周壁部21の開口は、プーリ収容室20へのプーリの設置後に、サイドカバー3により封止される。周壁部21のサイドカバー3側の端部には、サイドカバー3のフランジ部32と接合されるフランジ部22が設けられている。このフランジ部22は、周壁部21の周方向の全周に亘って設けられている。
【0021】
図3の(a)に示すように、フランジ部22は、周壁部21の厚み方向(図中、左右方向)で、周壁部21から外側に延出して設けられている。
サイドカバー3のフランジ部32は、当該サイドカバー3の周壁部31の厚み方向(図中、左右方向)で、周壁部31から外側に延出して設けられている。
なお、以下の説明では、周壁部21の厚み方向における周壁部21の内周からフランジ部22の外周までの距離を、フランジ部22の長さと表記する。また、周壁部31の厚み方向における周壁部31の内周からフランジ部32の外周までの距離を、フランジ部32の長さと表記する。
【0022】
これらフランジ部22、32の互いの対向面は、フランジ部22とフランジ部32とを重ね合わせる際に接合される接合面22a、32aとなっている(図2のハッチング部参照)。これら接合面22a、32aは、フランジ部22、32の重ね合わせ方向(図3の(a)における上下方向)に直交する平坦面となっている。
【0023】
また、フランジ部22、32には、それぞれボルトBを挿通させるボス部23、33が、周方向に所定間隔で複数設けられている(図1参照)。
【0024】
ケース2とサイドカバー3の接合は、以下の手順にて行われる。
(a)ケース2のフランジ部22とサイドカバー3のフランジ部32の互いの接合面22a、32aのうちの少なくとも一方に、シール材4を塗布する。
(b)ケース2とサイドカバー3とを、フランジ部22、33同士を重ね合わせて配置する。
(c)フランジ部22、32のボス部23、33を挿通させたボルトBを締め付けて、ケース2とサイドカバー3とを接合する。
【0025】
ここで、ケース2とサイドカバー3との接合構造11では、重ね合わせたフランジ部22、32の間にシール材4を介在させている。これにより、ケース2(プーリ収容室20)内のオイルが、重ね合わせたフランジ部22、32の互いの接合面22a、32aの間から、ケース2の外部に漏出しないようにされている。
【0026】
実施の形態では、フランジ部22、32の間に介在させるシール材4として、上記した液状のフォームドインプレイスガスケット(FIPG)を用いる。
「フォームドインプレイスガスケット」は、シールする面の両方に液状ガスケットを接着させた状態で硬化を行う液体硬化型ガスケットの一種である。
液体硬化型ガスケットには、FIPGの他にCIPG(キュアードインプレイスガスケット(Cured In Place Gasket)/別称:アッセンブリ成形ガスケット)がある。
CIPGは一方の対向面に液状ガスケットを塗布し、硬化が完了した後に他方の対向面を硬化後のガスケットに接触させる。
一方、FIPGは液状ガスケットを対向面の双方に挟んだ状態で硬化を行う。
よって、FIPGを用いると、接合面からの液状ガスケットのはみ出しの課題が生じ得ることになる。
なお、言い換えるのであれば、CIPGは「対向面の一方にのみ接着した液体硬化型ガスケット」といえるし、FIPGは「対向面の双方に接着した液体硬化型ガスケット」といえる。
【0027】
ケース2とサイドカバー3とをボルトBで接合する際には、フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aに介在するシール材4が、接合による圧接力(ボルトBの締結力)で、フランジ部22、32の接合面22a、32aの間で押し広げられる。
図3の(a)に示すように、この際にシール材4は、フランジ部22、32の内周側(図中、右側)と外周側(図中、左側)に移動する。
【0028】
そして、シール材4を、フランジ部22とフランジ部32の互いの接合面に行き渡らせたのちに硬化させることで、ケース2側のフランジ部22と、サイドカバー3のフランジ部32との間が、硬化したシール材4で封止されるようになっている。
【0029】
[回転センサ5]
ここで、図2の(b)に示すように、サイドカバー3には回転センサ5が取り付けられている。
回転センサ5は、プーリ(図示せず)の回転を検出する為に設けられている。回転センサ5は、サイドカバー3を貫通して設けられている。回転センサ5は、長手方向の一端側のセンサ部51が、プーリ収容室20内でプーリに対向している。他端側のコネクタ端子部52が、サイドカバー3の外部に位置している。
【0030】
図1の(b)、図2の(b)に示すように、コネクタ端子部52の先端面52aは、フランジ部32の近傍に位置している。
サイドカバー3の重ね合わせ方向から見て、フランジ部32においてコネクタ端子部52の先端面52aは、周方向で隣接するボス部33、33の間の領域330aに位置している(以下、これら隣接するボス部33、33を、ボス部33A、33Bと標記する)。
【0031】
図2の(b)に示すように、ボス部33A、33Bの間の領域330aでは、フランジ部32の外周面32bが、ボス部33A、33Bの中心を結ぶ直線Lnに対して略平行な外周面となっている。
回転センサ5は、当該回転センサ5の中心線Lmを、直線Lnに対して所定角度θだけ傾けた状態で、サイドカバー3に取り付けられている。
サイドカバー3の重ね合わせ方向から見て、コネクタ端子部52の先端面52aは、フランジ部32の外周面32bを内側から外側に横切っている。
【0032】
ここで、従来のケース2とサイドカバー3との接合構造110では、フランジ部22、32を互いに接合した際に、フランジ部22、32の間に介在させたシール材4が、フランジ部22、32の外周面22b、32bにはみ出していた(図5参照)。
【0033】
そのため、図示しないコネクタをコネクタ端子部52に接続する際に、コネクタが、フランジ部22、32の外周面22b、32bにはみ出したシール材4と接触して、コネクタにシール材4が付着することがあった。
ここで、コネクタにおけるシール材4が付着した部位が、コネクタ端子部52との接続部であると、コネクタとコネクタ端子部52との接触不良が生じてしまう。
【0034】
そのため、本実施形態にかかるケース2とサイドカバー3との接合構造11では、フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aに空隙部R1が設けられている(図3(c)参照)。そして、この空隙部R1に、シール材4を捕捉することで、シール材4が外周面22b、32bから外方に突出しないようにしている。
【0035】
[空隙部R1]
図1の(c)に示すように、フランジ部22の周方向に複数形成されたボス部23のうち、ボス部23A、23Bは、それぞれフランジ部32のボス部33A、33Bと対向している。
フランジ部22におけるボス部23A、23Bの間の領域230aは、フランジ部32におけるボス部33A、33Bの間の領域330aと対向する。
【0036】
図1の(c)に示すように、フランジ部22におけるボス部23A、23Bの間の領域230aには、フランジ部22の一部を切欠いた切欠き部25が形成されている(図中、網掛け部分参照)。
【0037】
図3の(c)に示すように、切欠き部25は、フランジ部22の長さ方向における接合面22aの途中位置P1からフランジ部22の外周面22b側に形成されている。
フランジ部22における切欠き部25の形成された部分は、接合面22aから所定角度傾斜した傾斜面22cとなっている。
本実施形態では、この傾斜面22cは、接合面22aの途中位置P1から外周面22bに向かうにつれて、サイドカバー3の接合面33aから離れる向き(図中、下側)に30°傾斜している。なお、傾斜面22cの傾斜角度は30°でなくてもよい。
【0038】
そのため、フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aを接合すると、フランジ部22の傾斜面22cとフランジ部32の接合面32aとの間に空隙部R1が形成される。この空隙部R1は、フランジ部22、32の重ね合わせ方向(図中、上下方向)における開口幅H1が、途中位置P1から外周面22bに向かうにつれて拡幅する形状となっている。
【0039】
そのため、フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aに介在させたシール材4は、空隙部R1内を満たしたあとでないと、フランジ部22、32の外周面22b、32bからはみ出さないようになっている。
そのため、従来においてフランジ部22、32の外周面22b、32bより外側にはみ出していた分のシール材4は、空隙部R1内に捕捉されるようになっている(図3の(a)参照)。
【0040】
よって、コネクタ取付時に、当該コネクタにはみ出したシール材4が付着する可能性を低減できるので、コネクタの接続不良が引き起こされる恐れを低減できる。
傾斜面22cと重力の作用によるはみ出しを最小限に抑えるために、シール材4の粘性(高めに設定)、傾斜面の角度(低めに設定)、シール材4の吐出量(少なめに設定)などを適宜調整することが好ましい。
【0041】
ここで、図3に示すように、フランジ部22、32の接合面22a、32aの間で押し広げられたシール材4は、フランジ部22の傾斜面22cと、接合面22a、32aとに跨がって接触する。
【0042】
シール材4のシール性は、接合方向に直交する平坦面である接合面22a、32aの合わせ面幅Wで決まる(図3)。切欠き部25が形成される領域230aのフランジ部22の長さが、他の切欠き部25が形成されない領域230b(図2(a))のフランジ部22の長さと同じ長さL1である場合、切欠き部25を設けた分だけ実効的な合わせ面幅Wが短くなり、シール性が低下する。
【0043】
本実施形態では、シール材4のシール性を確保するために、フランジ部22、32のうち、空隙部R1が設けられた領域の長さL2は、空隙部R1が設けられていない他の領域の長さL1よりも長い長さ(L2>L1)で形成されている。
そのため、フランジ部22、32のうち空隙部R1が設けられた領域の外周面22b、32bは、合わせ面幅Wを確保した分だけ、他の領域の外周面22b、32bよりも、変速機ケース10の外側に突出している(図3の(a)、(b)参照)。
好ましい一つの例では、切欠き部25を有する領域230aでの合わせ面幅Wは、他の切欠き部25を具備しない領域230bでの合わせ面幅Wに実質的に等しい。
【0044】
ここで、シール性の低下を防ぐ為に、フランジ部22、32の長さを全周に亘って長さL2にすると使用する材料が増えるのでコスト増加につながる。
そこで、本実施形態では、フランジ部22、32のうち、コネクタ端子部52周辺の領域(領域230a、330a)のみ局所的にフランジ部22、32の長さを長くした(幅を広くした)。
【0045】
これにより、接合面22a、32aの合わせ面幅Wも確保されるのでシール材4によるシール性が低下することを防止しつつ、コスト増加を必要最小限に抑制している(図3参照)。
【0046】
以上の通り、実施の形態では、
(1)ケース2(第1ケース部材)と、
コネクタ端子部52を有する回転センサ5が取り付けられたサイドカバー3(第2ケース部材)と、
ケース2とサイドカバー3との接合面22a、32a(合わせ面)に設けられたシール材4(フォームドインプレイスガスケット)と、を有し、
コネクタ端子部52に隣接する接合面22aの外周面22b側(外周端部)において、ケース2に切欠き部25が設けられた構成とした。
【0047】
このように構成すると、接合面22aの外周面22bに切欠き部25を設けることにより、シール材4(フォームドインプレイスガスケット)の溜まり形状(溜まり部、空隙部R1)が形成される。これにより、フランジ部22、32の外周面22b、32bより外側にはみ出すシール材4の量を抑制することができる。シール材4のはみ出し量が小さいほど、コネクタ取付時にコネクタにシール材4が付着する可能性を低減できるので、コネクタの接続不良が引き起こされる恐れを低減することができる。
【0048】
(2)切欠き部25は、コネクタ端子部52に隣接する接合面22aの外周面22b側に局所的に設けられている構成とした。
【0049】
切欠き部25を設ける場合、フランジ部22、32を肉厚化して合わせ面幅Wを確保する。これは、フランジ形状(厚み)を変えずに切欠きを設けると実行的なシール幅である合わせ面幅Wが短くなり、シール性が低下するからである。
【0050】
この場合、全周に亘ってフランジ部22、32の長さを長く(肉厚化)すると、使用する材料が増えるのでコスト増加につながる。
そこで、このように切欠き部25を局所的に設ける構成とすることにより、コスト増加を必要最小限に抑制することができる。
【0051】
(3)接合面22aは、切欠き部25が形成される領域230a(切欠きを有する第1合わせ面領域)と、切欠き部25が形成されない領域230b(切欠きを有さない第2合わせ面領域)と、を有し、
切欠き部25が形成される領域230aは、コネクタ端子部52に隣接して局所的に設けられており、
周壁部21の内部から外部に向かう方向において、切欠き部25が形成される領域230aのフランジ部22の延出長さL2は、切欠き部25が形成されない領域230bのフランジ部22の延出長さL1よりも長い。
【0052】
フランジ部22の長さを変えずに切欠き部25設けると実行的なシール幅である合わせ面幅Wが短くなり、シール性が低下する。
しかしながら、全周に亘ってフランジ部22、32の長さを長く(肉厚化)すると、使用する材料が増えるのでコスト増加につながる。
そこで、このように構成すると、切欠き部25を設けても所定の合わせ面幅Wを確保することができる。よって、シール性が低下することを防止しつつ、コスト増加を必要最小限に抑制している。
【0053】
(4)ケース2及びサイドカバー3は、コネクタ端子部52からの距離が最も小さいボス部23A、23B及びボス部33A、33B(2つのボルト孔)を有し、
切欠き部25は、ボス部23A、23Bの間に局所的に設けられている構成とした。
【0054】
このように構成すると、接合面22a、32aの合わせ面幅Wも確保されるので、シール材4によるシール性が低下することはない。
【0055】
本願発明は、自動変速機1(駆動力伝達装置)の製造方法としても特定できる。
すなわち、
(5)ケース2と、
コネクタ端子部52を有する回転センサ5が取り付けられたサイドカバー3と、
ケース2とサイドカバー3との接合面22a、32aに設けられたシール材4(フォームドインプレイスガスケット)と、を有し、
コネクタ端子部52に隣接する接合面22aの外周面22bにおいて、ケース2に切欠き部25が設けられている自動変速機1の製造方法であって、
液状のシール材4を接合面22a、32aに配置した状態でコネクタ端子部52にコネクタを接続した後に、シール材4を硬化させる構成とした。
【0056】
図1の(a)に示すように、ケース2には、当該ケース2を挟んだサイドカバー3の反対側にコンバータカバー6(第3ケース部材)が取り付けられる。
このように構成すると、コンバータカバー6を有し、当該コンバータカバー6側からコネクタをコネクタ端子部52に取り付ける場合に特に有効である。即ち、工場のライン上の制約でコンバータカバー6側から配線を取り回してコネクタを取り付けざるを得ない場合にこの発明は特に有効といえよう。もちろん第1ケース部材側からコネクタを取り付ける際にも本発明は有効である。
【0057】
[変形例]
図4は、変形例にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
図4の(a)は、第1の変形例にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
図4の(b)は、第2の変形例にかかる接合構造を適用した、駆動力伝達装置の変速機ケースを説明する図である。
【0058】
前記した実施の形態では、フランジ部22に切欠き部25が形成されている接合構造11を適用した自動変速機1を例示したが、本願発明は、この態様に限定されるものではない。
例えば、図4の(a)に示すように、フランジ部32に切欠き部35が形成されている構成の接合構造11Aを適用した自動変速機1Aとしても良い。
また、図4の(b)に示すように、フランジ部22とフランジ部32にそれぞれ切欠き部25、35が形成されている構成の接合構造11Bを適用した自動変速機1Bとしても良い。
なお、以下の説明では、実施の形態にかかる接合構造11を適用した自動変速機1との相違点のみ説明する。
【0059】
[変形例1]
変形例にかかる接合構造11Aでも、フランジ部32のボス部33A、33Bとの間の領域330aに、切欠き部35が設けられている。
図4の(a)に示すように、フランジ部22の接合面22aは、フランジ部22、32の重ね合わせ方向(図中、上下方向)に直交する平坦面となっている。
【0060】
切欠き部35は、フランジ部32の長さ方向における接合面32aの途中位置P2からフランジ部32の外周面32b側に形成されている。
フランジ部32における切欠き部35の形成された部分は、接合面32aから所定角度だけ傾斜した傾斜面32cとなっている。
この傾斜面32cは、接合面32aの途中位置P2から外周面32bに向かうにつれて、ケース2の接合面22aから離れる向きに傾斜している。
【0061】
そのため、フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aを接合すると、フランジ部22の接合面22aとフランジ部32の傾斜面32cとの間に空隙部R2が形成される。この空隙部R2は、フランジ部22、32の重ね合わせ方向(図中、上下方向)における開口幅H2が、途中位置P2から外周面32bに向かうにつれて拡幅する形状となっている。
【0062】
従って、従来においてフランジ部22、32の外周面22b、32bより外方にはみ出していた分のシール材4は、空隙部R2内に留まる(図4の(a)参照)。
【0063】
よって、コネクタ取付時に、当該コネクタにはみ出したシール材4が付着する可能性を低減できるので、コネクタの接続不良が引き起こされる恐れを低減できる。
【0064】
[変形例2]
変形例にかかる接合構造11Bでも、フランジ部32のボス部33A、33Bとの間の領域330aに、切欠き部35が設けられている。
図4の(b)に示すように、フランジ部22の接合面22aと、フランジ部32の接合面32aには、それぞれ切欠き部25、35が形成されている。
【0065】
フランジ部22、32の互いの接合面22a、32aを接合すると、フランジ部22の傾斜面22cとフランジ部32の傾斜面32cとの間に空隙部R3が形成される。この空隙部R3は、フランジ部22、32の重ね合わせ方向(図中、上下方向)における開口幅H3が、途中位置P1、P2から外周面22b、32bに向かうにつれて拡幅する形状となっている。
【0066】
従って、従来においてフランジ部22、32の外周面22b、32bより外方にはみ出していた分のシール材4は、空隙部R3内に留まる(図4の(a)参照)。
【0067】
よって、コネクタ取付時に、当該コネクタにはみ出したシール材4が付着する可能性を低減できるので、コネクタの接続不良が引き起こされる恐れを低減できる。
【0068】
前記した実施形態では、駆動力伝達装置が、車両用の自動変速機である場合を例示した。本願発明の駆動力伝達装置は、車両用の自動変速機のみに限定されない。
複数のギアから構成されるギア列であって、少なくとも1つのギアが、ギア列の収容ケース内のオイルを掻き上げ得るように構成された装置にも適用可能である。このような装置として、入力された回転を減速して出力する減速装置が例示される。
【0069】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
図1
図2
図3
図4
図5