(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6754018
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】スクリュー、押出機及び押出方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/66 20190101AFI20200831BHJP
B29B 7/42 20060101ALI20200831BHJP
B29C 48/685 20190101ALI20200831BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20200831BHJP
B29K 509/00 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
B29C48/66
B29B7/42
B29C48/685
B29K21:00
B29K509:00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-8850(P2020-8850)
(22)【出願日】2020年1月23日
【審査請求日】2020年1月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000212728
【氏名又は名称】中田エンヂニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠資
(72)【発明者】
【氏名】野田 誠
【審査官】
松田 成正
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−001738(JP,A)
【文献】
特開2019−119050(JP,A)
【文献】
特公平05−015369(JP,B2)
【文献】
特開昭63−122513(JP,A)
【文献】
特開平05−309720(JP,A)
【文献】
特開昭58−089341(JP,A)
【文献】
中国特許第104589618(CN,B)
【文献】
特開昭55−018180(JP,A)
【文献】
特開2017−136804(JP,A)
【文献】
特開2019−043043(JP,A)
【文献】
中国実用新案第206124181(CN,U)
【文献】
特開昭55−057443(JP,A)
【文献】
特開昭54−073856(JP,A)
【文献】
特開平08−267540(JP,A)
【文献】
特開平04−219221(JP,A)
【文献】
特開平02−171225(JP,A)
【文献】
特開昭52−065173(JP,A)
【文献】
特開平05−015369(JP,A)
【文献】
特開昭63−122515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
B29B 7/00− 7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカが100phr以上配合されたハイシリカ配合の可塑性のエラストマーを混練しながら押し出すための螺旋翼を有するスクリューであって、
最も押出方向下流側に配された第1領域を有し、
前記第1領域には、押出方向で隣り合う前記螺旋翼の間を、スクリュー軸方向に対して傾斜して延びるバリアが形成され、
前記バリアの長手方向の長さは、前記第1領域における前記螺旋翼のリード長さの1.5〜3.0倍であり、
前記バリアの高さは、前記螺旋翼の高さよりも小さく、かつ、前記螺旋翼の高さと前記バリアの高さとの差が2〜10mmであり、
前記バリアの厚さは、前記螺旋翼の高さと前記バリアの高さとの差の0.9〜3.0倍である、
スクリュー。
【請求項2】
前記第1領域には、1〜4枚の前記バリアが形成されている、請求項1に記載のスクリュー。
【請求項3】
前記第1領域の押出方向上流側に配された第2領域を有し、
前記第2領域には、前記螺旋翼にピン通過用の切欠部が形成されている、請求項1又は2に記載のスクリュー。
【請求項4】
前記第2領域の押出方向上流側に前記第2領域に連続して配された第3領域を有し、
前記第3領域は、前記螺旋翼の少なくとも一部が1条ねじで形成されている、請求項3に記載のスクリュー。
【請求項5】
前記第3領域の最も押出方向上流側の一部は、多条ねじで形成されている、請求項4に記載のスクリュー。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載のスクリューと、前記スクリューを内部に配するバレルとを含む押出機であって、
前記バレルは、前記第2領域の前記螺旋翼に形成された前記切欠部に挿入される複数のピンを含む、
押出機。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスクリューと、前記スクリューを内部に配するバレルとを含む、
押出機。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の押出機を用いて、前記エラストマーを押し出すための押出方法であって、
前記バレルの内部に、前記エラストマーを投入する投入工程と、
前記エラストマーを混練しながら押し出す押出工程とを含み、
前記押出工程は、前記バリアにより、前記エラストマーを薄膜状に変形させる変形工程を含む、
押出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性のエラストマーを混練しながら押し出すための螺旋翼を有するスクリュー、このスクリューを含む押出機及び押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可塑性のエラストマーを混練しながら押し出すための螺旋翼を有するスクリューが種々知られている。例えば、下記特許文献1は、混練促進領域を設けることで、可塑性のエラストマーの良好な品質を維持しつつ、その生産性を向上させ得るスクリューを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−043043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のスクリューは、バリアがスクリュー軸方向に沿っており、シリカが配合されたエラストマー等、混練されるエラストマーの種類によっては、生産性が低下することがあった。このため、特許文献1のスクリューにおいても、品質と生産性との両立に対し、更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、品質と生産性との両立可能なエラストマーの適用範囲を向上し得るスクリュー、押出機及び押出方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可塑性のエラストマーを混練しながら押し出すための螺旋翼を有するスクリューであって、押出方向下流側に配された第1領域を有し、前記第1領域には、押出方向で隣り合う前記螺旋翼の間を、スクリュー軸方向に対して傾斜して延びるバリアが形成され、前記バリアの長手方向の長さは、前記第1領域における前記螺旋翼のリード長さの1.5〜3.0倍であることを特徴とする。
【0007】
本発明のスクリューにおいて、前記第1領域には、1〜4枚の前記バリアが形成されているのが望ましい。
【0008】
本発明のスクリューにおいて、前記バリアの高さは、前記螺旋翼の高さよりも小さく、かつ、前記螺旋翼の高さと前記バリアの高さとの差が2〜10mmであるのが望ましい。
【0009】
本発明のスクリューにおいて、前記バリアの厚さは、前記螺旋翼の高さと前記バリアの高さとの差の0.9〜3.0倍であるのが望ましい。
【0010】
本発明のスクリューにおいて、前記第1領域の押出方向上流側に配された第2領域を有し、前記第2領域には、前記螺旋翼にピン通過用の切欠部が形成されているのが望ましい。
【0011】
本発明のスクリューにおいて、前記第2領域の押出方向上流側に配された第3領域を有し、前記第3領域は、前記螺旋翼の少なくとも一部が1条ねじで形成されているのが望ましい。
【0012】
本発明のスクリューにおいて、前記第3領域は、全ねじ長の20%〜40%の範囲であるのが望ましい。
【0013】
本発明のスクリューにおいて、前記第3領域の押出方向上流側の一部は、多条ねじで形成されているのが望ましい。
【0014】
本発明は、上述のスクリューと、前記スクリューを内部に配するバレルとを含む押出機であって、前記バレルは、前記第2領域の前記螺旋翼に形成された前記切欠部に挿入される複数のピンを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上述のスクリューと、前記スクリューを内部に配するバレルとを含む、押出機であることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上述の押出機を用いて、50phr以上のシリカを配合した前記エラストマーを押し出すための押出方法であって、前記バレルの内部に、前記エラストマーを投入する投入工程と、前記エラストマーを混練しながら押し出す押出工程とを含み、前記押出工程は、前記バリアにより、前記エラストマーを薄膜状に変形させる変形工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスクリューにおいて、第1領域には、押出方向で隣り合う螺旋翼の間を、スクリュー軸方向に対して傾斜して延びるバリアが形成され、前記バリアの長手方向の長さは、前記第1領域における前記螺旋翼のリード長さの1.5〜3.0倍である。このようなスクリューは、特定の長さで傾斜するバリアによりエラストマーを順に薄膜状に変形させつつ、エラストマーの通過量を確保することができる。このため、本発明のスクリューは、品質と生産性との両立可能なエラストマーの適用範囲を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の押出機の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の押出機1を示す側面図である。
図1に示されるように、本実施形態の押出機1は、可塑性のエラストマーGを混練しながら押出方向Aに押し出すためのスクリュー2と、スクリュー2を内部に配するバレル3とを含んでいる。
【0020】
可塑性のエラストマーGとしては、例えば、未加硫ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。エラストマーGは、特に限定されるものではないが、例えば、タイヤ用のゴムであれば、近年の低燃費化の要請により、シリカが、好ましくは、50phr以上、より好ましくは、100phr以上が配合されたハイシリカ配合であるのが望ましい。
【0021】
本実施形態のスクリュー2は、スクリュー軸4と、スクリュー軸4からスクリュー2の径方向外側に突出する螺旋翼5とを有している。本実施形態の螺旋翼5は、可塑性のエラストマーGを混練しながら押し出すためのものである。
【0022】
本実施形態のスクリュー2は、押出方向A下流側に配された第1領域6と、第1領域6の押出方向A上流側に配された第2領域7と、第2領域7の押出方向A上流側に配された第3領域8とを有している。第1領域6、第2領域7及び第3領域8は、例えば、押出方向Aに連続して設けられている。
【0023】
図2は、第1領域6の部分側面図である。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の第1領域6には、押出方向Aで隣り合う螺旋翼5の間を、スクリュー軸方向に対して傾斜して延びるバリア9が形成されている。バリア9の長手方向の長さwは、好ましくは、第1領域6における螺旋翼5のリード長さL1の1.5〜3.0倍である。ここで、バリア9がスクリュー軸方向に対して傾斜して延びるとは、バリア9の長手方向がスクリュー軸方向に対して、0°よりも大きく90°よりも小さい角度θを有することを意味する。
【0024】
このようなバリア9は、特定の長さで傾斜しているので、エラストマーGを順に薄膜状に変形させつつ、エラストマーGの通過量を確保することができる。このため、本実施形態のスクリュー2は、エラストマーGの過度な発熱を抑制しつつ、エラストマーGの吐出量を確保することができる。また、このようなバリア9は、ハイシリカ配合のエラストマーGであっても、その内部に気泡を発生させることなく、効率よく搬送及び変形させることができるので、エラストマーGの表面状態を向上させることができる。このため、本実施形態のスクリュー2は、品質と生産性との両立可能なエラストマーGの適用範囲を向上することができる。
【0025】
バリア9の長手方向の長さwは、より好ましくは、第1領域6における螺旋翼5のリード長さL1の2.0倍以上である。また、バリア9の長手方向の長さwは、より好ましくは、第1領域6における螺旋翼5のリード長さL1の2.5倍以下である。このようなバリア9は、ハイシリカ配合のエラストマーGを、効率よく搬送及び変形させることに好適であり、エラストマーGの品質と生産性とを両立させることに役立つ。
【0026】
バリア9のスクリュー軸方向に対する角度θは、好ましくは、10°以上、より好ましくは、20°以上であり、好ましくは80°以下、より好ましくは、70°以下である。このようなバリア9は、ハイシリカ配合のエラストマーGを、効率よく搬送及び変形させることに好適であり、エラストマーGの品質と生産性とを両立させることに役立つ。
【0027】
本実施形態の第1領域6は、螺旋翼5が2条ねじで形成されている。第1領域6の螺旋翼5は、2条ねじに限定されるものではなく、例えば、1条ねじであってもよく、3条以上の多条ねじであってもよい。また、第1領域6は、例えば、部分的に条数の異なるねじで形成されていてもよい。
【0028】
ここで、1条ねじとは、スクリュー軸4の軸方向の同一部分において、1つの螺旋翼5を有する態様である。また、2条ねじとは、スクリュー軸4の軸方向の同一部分において、2つの螺旋翼5を有する態様である。さらに、多条ねじとは、スクリュー軸4の軸方向の同一部分において、2つ以上の螺旋翼5を有する態様である。2条ねじは、多条ねじの一態様である。
【0029】
第1領域6には、好ましくは、1〜4枚のバリア9が形成されている。本実施形態では、第1領域6に1枚のバリア9が形成されたものが例示されている。このような第1領域6は、バリア9によりエラストマーGを薄膜状に変形させて押出方向A下流側に流すことができるので、エラストマーGの分子を一様に細かく切断することができる。このため、本実施形態の押出機1は、押し出されたエラストマーGの膨張率を低減させるとともに、エラストマーGの表面状態を向上させることができる。このため、本実施形態の押出機1は、押し出し後のエラストマーGの形状の安定化を図りつつ、エラストマーGの表面状態を向上させることができるので、高品質なエラストマーGを押し出すことができる。
【0030】
図3は、
図2のA−A線の部分断面図である。
図3に示されるように、本実施形態のバリア9の高さhは、螺旋翼5の高さHよりも小さい。螺旋翼5の高さHとバリア9の高さhとの差(H−h)は、好ましくは、2〜10mmである。差(H−h)が2mm以上であることで、エラストマーGの過度な発熱を抑制しつつ、エラストマーGの吐出量を確保することができ、品質と生産性とを両立させることができる。差(H−h)が10mm以下であることで、エラストマーGの変形を促進することができ、品質を向上させることができる。
【0031】
バリア9の厚さtは、好ましくは、螺旋翼5の高さHとバリア9の高さhとの差(H−h)の0.9〜3.0倍である。厚さtが差(H−h)の0.9倍以上であることで、エラストマーGの変形を促進することができ、品質を向上させることができる。厚さtが差(H−h)の3.0倍以下であることで、エラストマーGの過度な発熱を抑制しつつ、エラストマーGの吐出量を確保することができ、品質と生産性とを両立させることができる。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態の第2領域7は、螺旋翼5が2条ねじで形成されている。第2領域7の螺旋翼5は、2条ねじに限定されるものではなく、例えば、1条ねじであってもよく、3条以上の多条ねじであってもよい。また、第2領域7は、例えば、部分的に条数の異なるねじで形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態の第2領域7には、螺旋翼5にピン通過用の切欠部10が形成されている。バレル3は、第2領域7の螺旋翼5に形成された切欠部10に挿入される複数のピン11を含むのが望ましい。このような第2領域7は、ピン11によりスクリュー2とバレル3との間で混練されるエラストマーGをせん断してエラストマーGの混合分散効果を高め、エラストマーGの品質を向上させることができる。
【0034】
ピン11は、スクリュー軸4の軸方向に、複数列、例えば、2〜5列設けられている。本実施形態では、スクリュー軸4の軸方向にピン11が3列設けられたものが例示されている。ピン11は、スクリュー軸4の軸方向の同一部分に対して、複数個、例えば、4〜8個設けられている。このようなピン11は、エラストマーGの混合分散効果を高めて、エラストマーGの品質を向上させることに役立つ。
【0035】
複数のピン11は、バレル3の内部への突出量を、それぞれ、変更可能に構成されるのが望ましい。このようなピン11は、混練されるエラストマーGに応じて、突出量を個別に調整することができる。
【0036】
本実施形態の第3領域8は、螺旋翼5の少なくとも一部が1条ねじで形成されている。このような第3領域8は、投入されたエラストマーGの搬送性が良好であり、エラストマーGを効率よく第2領域7側へ送り出すことができるので、生産性を向上させることができる。
【0037】
第3領域8は、好ましくは、全ねじ長L0の20%〜40%の範囲である。第3領域8が全ねじ長L0の20%以上であることで、エラストマーGを効率よく搬送することができ、生産性を向上させることができる。第3領域8が全ねじ長L0の40%以下であることで、相対的に第1領域6及び第2領域7の範囲を広げることができ、エラストマーGの品質を向上させることに役立つ。
【0038】
本実施形態のバレル3は、エラストマーGを投入する投入口12と、混練されたエラストマーGを吐出する吐出口13とを含んでいる。投入口12は、スクリュー2の第3領域8に対応する部分に設けられるのが望ましい。吐出口13は、スクリュー2の第1領域6の押出方向A下流側に設けられるのが望ましい。このようなバレル3は、投入口12から吐出口13までの距離を大きくすることができ、エラストマーGの品質を向上させることに役立つ。
【0039】
スクリュー2は、バレル3の押出方向A上流側に配された駆動部14により、一方向に回転するのが望ましい。スクリュー2の回転速度は、駆動部14により、適宜調整され得る。このようなスクリュー2は、押出機1の運転状況に合わせて、回転速度を容易に変更することができる。
【0040】
次に、
図1ないし
図3を参酌しつつ、本実施形態の押出方法が説明される。
図4は、本実施形態の押出方法のフローチャートである。
図4に示されるように、本実施形態の押出方法は、押出機1を用いて、好ましくは、50phr以上、より好ましくは、100phr以上のシリカを配合したハイシリカ配合のエラストマーGを押し出すのに好適である。
【0041】
本実施形態の押出方法は、まず、バレル3の内部に、エラストマーGを投入する投入工程S1が行われる。投入工程S1は、例えば、エラストマーGが連続して投入される。エラストマーGの投入速度は、押出機1の運転状況に合わせて、適宜調整されるのが望ましい。このような投入工程S1は、ハイシリカ配合のエラストマーGであっても、バレル3の内部に適切な量のエラストマーGを投入することができる。
【0042】
本実施形態の押出方法は、投入工程S1の次に、エラストマーGを混練しながら押し出す押出工程S2が行われる。押出工程S2は、スクリュー2を回転させることで、押出方向Aに向けてエラストマーGを順次押し出すのが望ましい。このような押出工程S2は、ハイシリカ配合のエラストマーGの品質と生産性とを両立させるように、押し出すことができる。
【0043】
図5は、押出工程S2のフローチャートである。
図5に示されるように、本実施形態の押出工程S2は、まず、投入されたエラストマーGを押出方向A下流側に搬送する搬送工程S21が行われる。搬送工程S21は、スクリュー2の第3領域8で行われるのが望ましい。このような搬送工程S21は、ハイシリカ配合のエラストマーGを効率よく搬送することができ、生産性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態の押出工程S2は、搬送工程S21の次に、ピン11により、スクリュー2とバレル3との間で混練されるエラストマーGをせん断するせん断工程S22が行われる。せん断工程S22は、スクリュー2の第2領域7で行われるのが望ましい。このようなせん断工程S22は、ハイシリカ配合のエラストマーGの混合分散効果を高めて、品質を向上させることができる。
【0045】
本実施形態の押出工程S2は、せん断工程S22の次に、バリア9により、エラストマーGを薄膜状に変形させる変形工程S23が行われる。変形工程S23は、スクリュー2の第1領域6で行われるのが望ましい。このような変形工程S23は、エラストマーGの過度な発熱を抑制しつつ、エラストマーGの吐出量を確保することができ、品質と生産性とを両立させることができる。
【0046】
図6は、他の実施形態の押出機20の側面図である。上述の実施形態と同一の機能を有する要素は、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図6に示されるように、この実施形態の押出機20は、可塑性のエラストマーGを混練しながら押出方向Aに押し出すためのスクリュー21と、スクリュー21を内部に配するバレル22とを含んでいる。
【0047】
この実施形態のスクリュー21は、スクリュー軸4と、スクリュー軸4からスクリュー21の径方向外側に突出する螺旋翼23とを有している。スクリュー21は、上述のスクリュー2と同様に、押出方向A下流側に配された第1領域6と、第1領域6の押出方向A上流側に配された第2領域7と、第2領域7の押出方向A上流側に配された第3領域8とを有するのが望ましい。
【0048】
この実施形態では、第1領域6に3枚のバリア9が形成されたものが例示されている。このような第1領域6は、バリア9によりエラストマーGの分子をより細かく切断し、エラストマーGの品質をより向上させることができる。
【0049】
この実施形態では、第2領域7のスクリュー軸4の軸方向にピン11が4列設けられたものが例示されている。このようなピン11は、エラストマーGの混合分散効果をより高め、エラストマーGの品質をより向上させることができる。
【0050】
この実施形態の第3領域8の押出方向A上流側の一部は、多条ねじで形成されている。この実施形態では、第3領域8の押出方向A上流側の一部が2条ねじと6条ねじとで形成されるものが例示されている。このような第3領域8は、投入口12から投入されたエラストマーGの噛み込み性を維持しつつ混合分散を促進し、エラストマーGの品質と生産性とを両立させることに役立つ。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例】
【0052】
図1ないし
図3及び
図6に示される実施例のスクリューが、表1及び表2の仕様に基づき試作された。比較例として、第3領域が2条ねじで形成されかつバリアが設けられていない比較例1のスクリューと、第3領域が1条ねじで形成されかつバリアがスクリュー軸の軸方向に延びる比較例2のスクリューとが試作された。試作されたスクリューを含む押出機を用いて、
図4及び
図5に示される押出方法でエラストマーを押し出す試験が行われ、押し出されたエラストマーの品質と生産性とが評価された。試験の共通事項及び試験方法は、以下のとおりである。
【0053】
<共通事項>
エラストマー : シリカが100phr配合された未加硫ゴム
第1領域 : 2条ねじ
第2領域 : 2条ねじ
【0054】
<品質試験>
押し出されたエラストマーの表面状態が、算術平均高さで求められる表面粗さとして測定された。結果は、表面粗さの逆数が比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど、表面状態が良好であり、品質に優れていることを示す。
【0055】
<生産性試験>
押し出されたエラストマーの吐出量が測定された。結果は、比較例1を100とする指数で示され、数値が大きいほど、吐出量が大きく、生産性に優れていることを示す。
【0056】
試験の結果が表1及び表2に示される。
【表1】
【表2】
【0057】
試験の結果、実施例の押出機は、比較例の押出機に対して、品質試験及び生産性試験の評価の合計値が向上しており、ハイシリカ配合の未加硫ゴムに対しても品質と生産性とを両立していることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
2 スクリュー
5 螺旋翼
6 第1領域
9 バリア
【要約】
【課題】 品質と生産性との両立可能なエラストマーの適用範囲を向上し得るスクリュー、押出機及び押出方法を提供する。
【解決手段】 可塑性のエラストマーGを混練しながら押し出すための螺旋翼5を有するスクリュー2である。押出方向A下流側に配された第1領域6を有している。第1領域6には、押出方向Aで隣り合う螺旋翼5の間を、スクリュー軸方向に対して傾斜して延びるバリア9が形成されている。バリア9の長手方向の長さwは、第1領域6における螺旋翼5のリード長さL1の1.5〜3.0倍である。
【選択図】
図1