特許第6754095号(P6754095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754095
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】フレーム付車両のストッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   B62D21/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-178758(P2016-178758)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-43590(P2018-43590A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】宮前 惇
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−267132(JP,A)
【文献】 特開2016−78660(JP,A)
【文献】 特開平10−338162(JP,A)
【文献】 特開2003−26039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の下方を区画するフロア部材がフレームによって弾性支持されるフレーム付車両のストッパ装置であって、
前後方向と交叉する対向面を有し、前記フレーム又は前記フロア部材の一方側に固定される第1ストッパと、
前記第1ストッパの前記対向面から離間して対向する位置に配置されて前記フレーム又は前記フロア部材の他方側に固定される支持部と、前記支持部と前記第1ストッパの前記対向面との間に配置されて前記支持部に支持される可動部とを有し、前記可動部が、前記対向面から離間して前記対向面との間に可動空間を区画する第1規制位置と、前記第1規制位置よりも前記支持部側の第2規制位置との間で、前記支持部に対して前後方向に移動可能な第2ストッパと、
前記車両の通常走行時に、前記第2ストッパの前記支持部に対する前記可動部の位置を前記第1規制位置に保持する保持手段と、を備え、
前記第1ストッパまたは前記第2ストッパのうち前記フロア部材側のストッパは、前記フレーム側のストッパよりも後方に配置され、
前記可動空間は、前記第2ストッパと前記第1ストッパとの相対的な前後方向の移動を許容し、
前記保持手段による前記支持部に対する前記可動部の保持は、前記車両が前面衝突して前記フロア部材が前記フレームに対して前方へ移動し、前記第1規制位置の前記第2ストッパの前記可動部と前記第1ストッパの前記対向面とが当接した後の所定のタイミングで解除され、
前記第2規制位置の前記第2ストッパの前記可動部は、前記支持部に支持されて、前記支持部側への前記第1ストッパの移動を規制する
ことを特徴とするフレーム付車両のストッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム付車両のストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレームに支持ブラケットを固定し、支持ブラケットにストッパ装置を装備し、ストッパ装置に対向する突出部を車体の下面に設けたフレーム付車両の車体構造が記載されている。ストッパ装置は第1及び第2のストッパ部材を備え、第1のストッパ部材は突出部に対して間隔を有する位置に配設される。車体は、フレームに対してゴム部材等の弾性部材を介して搭載され、通常の走行状態にあっても、車体はフレームに対して水平方向にある程度の距離内で移動する。車両が前面衝突を起こすと、フレームに大きな負の加速度が作用し、車体は慣性力の作用により前方へ移動し、突起部が第1のストッパ部材に衝突する。第1のストッパ部材が車体の慣性力により変形して第2のストッパ部材に当接すると、第2のストッパ部材によって車体の前方への移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−338162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗員がシートベルトで着座シート側に拘束されている場合には、車両の前面衝突時に、慣性による乗員からの力がシートベルト及び着座シートを介して車体側に伝わり、乗員の運動エネルギーの一部が車体の破損エネルギーで消費される。このように、車両の前面衝突時に乗員の運動エネルギーを車体の破損エネルギーで消費させることによって、乗員の傷害値指標の一つである乗員の最大減速度を低減して、乗員の傷害を低減できることが知られている(ライドダウン効果)。
【0005】
上記特許文献1の構造では、車両が前面衝突時してフレームに対する車体の前方への移動が規制された際、乗員は、シートベルトが効き始めるまで着座シートに対して前方へ移動する。すなわち、シートベルトが効き始めるまでは、車体側の着座シートの速度よりも乗員側の速度の方が高い状態となり、車体と乗員とに速度差が生じている。この速度差が大きいほどシートベルトが効き始めた際のライドダウン効果の効率(ライドダウン効率)が低く、乗員の最大減速度が高くなってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両の前面衝突時にライドダウン効率を高めて乗員の最大減速度を低減することが可能なフレーム付車両のストッパ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、車室の下方を区画するフロア部材がフレームによって弾性支持されるフレーム付車両のストッパ装置であって、第1ストッパと第2ストッパと保持手段とを備える。第1ストッパは、前後方向と交叉する対向面を有し、フレーム又はフロア部材の一方側に固定される。第2ストッパは、第1ストッパの対向面から離間して対向する位置に配置されてフレーム又はフロア部材の他方側に固定される支持部と、支持部と第1ストッパの対向面との間に配置されて支持部に支持される可動部とを有し、可動部が、対向面から離間して対向面との間に可動空間を区画する第1規制位置と、第1規制位置よりも支持部側の第2規制位置との間で、支持部に対して前後方向に移動可能である。保持手段は、車両の通常走行時に、第2ストッパの支持部に対する可動部の位置を第1規制位置に保持する。第1ストッパまたは第2ストッパのうちフロア部材側のストッパは、フレーム側のストッパよりも後方に配置される。可動空間は、第2ストッパと第1ストッパとの相対的な前後方向の移動を許容する。保持手段による支持部に対する可動部の保持は、車両が前面衝突してフロア部材がフレームに対して前方へ移動し、第1規制位置の第2ストッパの可動部と第1ストッパの対向面とが当接した後の所定のタイミングで解除される。第2規制位置の第2ストッパの可動部は、支持部に支持されて、支持部側への第1ストッパの移動を規制する。
【0008】
上記構成では、第1ストッパが、フレーム又はフロア部材の一方側に固定され、第2ストッパの支持部が、他方側に固定され、第1ストッパまたは第2ストッパのうちフロア部材側のストッパが、フレーム側のストッパよりも後方に配置される。例えば、第1ストッパをフレーム側に固定した場合には、第2ストッパの支持部を、第1ストッパの後面(対向面)よりも後方に離間した位置に配置してフロア部材側に固定し、第1ストッパをフロア部材側に固定した場合には、第2ストッパの支持部を、第1ストッパの前面(対向面)よりも前方に離間した位置に配置してフレーム側に固定する。
【0009】
保持手段による支持部に対する可動部の保持は、車両が前面衝突してフロア部材がフレームに対して前方へ移動し、第1規制位置の第2ストッパの可動部と第1ストッパの対向面とが当接した後の所定のタイミングで解除される。すなわち、車両が前面衝突した際に、第1規制位置の第2ストッパの可動部と第1ストッパの対向面とが当接した後の所望のタイミングで、保持手段による支持部に対する可動部の保持を解除することができる。
【0010】
例えば、車室の座席シートに乗員が着座してシートベルトを締めた状態で車両が前面衝突してフレームの前端部が衝突物と衝突すると、フロア部材がフレームに対して前方へ慣性によって移動する。フロア部材がフレームに対して前方へ移動して第2ストッパの可動部と第1ストッパの対向面とが当接すると、フレームに対する前方へのフロア部材の移動が規制されてフロア部材の減速度が急激に増大し、乗員は、シートベルトが効き始めるまでフロア部材側の着座シートに対して前方へ慣性によって移動する。すなわち、乗員の速度が、フロア部材側の着座シートの速度よりも速くなる。ここで、第2ストッパの可動部と第1ストッパの対向面とが当接した後の所定のタイミングで、支持部に対する可動部の第1規制位置への保持を解除すると、可動部が第1規制位置から第2規制位置側へ移動し、この可動部の移動に伴って、フロア部材側(車体側)がフレームに対して前方へ移動する。このように、車体がフレームに対して前方へ移動することによって車体の減速度が減少して車体の速度低下が抑制される一方で、乗員はシートベルトによって減速度が増大して減速し始めるので、乗員と着座シートとの速度差を小さくすることができる。また、第2規制位置の第2ストッパの可動部は、支持部に支持されて、支持部側への第1ストッパの移動を規制するので、フレームに対する前方への車体の移動が再度規制される。すなわち、乗員と車体との速度差を小さくした状態で、シートベルトによって乗員を着座シートへ拘束して車体と乗員とを減速させることができるので、車両の前面衝突時に乗員の運動エネルギーを車体等(フレームを含む)の破損エネルギーで消費させる効率(ライドダウン効率)を高めることができ、乗員の傷害値指標の一つである乗員の最大減速度を低減して乗員の傷害を低減することができる。
【0011】
また、保持手段は、車両の通常走行時に、第2ストッパの支持部に対する可動部の位置を第1規制位置に保持する。第1規制位置の可動部は、第1ストッパの対向面から離間して対向面との間に可動空間を区画し、可動空間は、第2ストッパと第1ストッパとの相対的な前後方向の移動を許容する。このため、車両の通常走行時に、フレームに弾性支持されたフロア部材がフレームに対して前方へ移動した場合であっても、第1ストッパと第2ストッパとが干渉せず、フレームによるフロア部材の弾性支持が損なわれることがないので、車両の通常走行時の乗り心地の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の前面衝突時にライドダウン効率を高めて乗員の最大減速度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るフレーム付車両の概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)を矢印Ib方向から視た底面図である。
図2図1(b)のストッパ装置の要部の拡大図である。
図3図2のストッパ装置の第2ストッパの概略構成図である。
図4】第2ストッパの動きの説明図であり、(a)は第1状態を、(b)は第2状態を、(c)は第3状態を、(d)は第4状態をそれぞれ示す。
図5図1(a)のフレーム付車両が前面衝突したときの状態を示す概略図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るストッパ装置の第2ストッパの概略構成図であり、(a)は第1規制位置に、(b)は第2規制位置に可動部材が配置された状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態に係るフレーム付車両(以下、単に車両と称する)1のストッパ装置10について、図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、図2は、図1(b)の車両1の右側の要部の拡大図である。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、車両1は、ボディ5がラバー等のマウント機構(図示省略)を介してフレーム2に弾性支持されるフレーム付車両である。
【0016】
車両1のフレーム2は、車幅方向の両側で前後方向に延びる左右1対のサイドメンバ3(3L,3R)と、車幅方向に延びて左右のサイドメンバ3を連結する複数のクロスメンバ4とを有するはしご形フレーム(ラダーフレーム)である。複数のクロスメンバ4は、前後方向に相互に離間して配置される。
【0017】
車両1のボディ5は、車室11の下方を区画するフロア部材12を有し、フレーム2に弾性支持される。フロア部材12は、フロアパネル6と左右1対のサイドシル7(7L,7R)とを有する。フロアパネル6は、フレーム2の上方に配置されて車室11の底面を形成するパネル部材であって、その車幅方向の中央には、円弧状に上方へ膨出するトンネル部9が曲折形成されている。車室11には、乗員が着座する着座シート(座席)8が配置されてフロアパネル6に対して固定される。フロアパネル6は、着座シート8を下方から支持する。左右のサイドシル7は、左右のサイドメンバ3の車幅方向外側にそれぞれ配置されて前後方向に延び、フロアパネル6の車幅方向両側に固定される。左右のサイドメンバ3は、フロアパネル6及び左右のサイドシル7の前端よりも前方へ延び、左右のサイドメンバ3の前端が、フロアパネル6及び左右のサイドシル7の前端よりも前方に配置される。左右のサイドシル7は、ラバー等のマウント機構(図示省略)を介して左右のサイドメンバ3に弾性支持される。
【0018】
図2及び図3に示すように、ストッパ装置10は、加速度センサ13と、ECU(Electric Control Unit)14と、左右の第1ストッパ15(15L,15R)と、左右の第2ストッパ16(16L,16R)とを備える。なお、図2及び図3には、右側の第1ストッパ15Rと右側の第2ストッパ16Rとが図示されている。また、左右の第1ストッパ15と左右の第2ストッパ16とは、車両1の左右に対照的に設けられ、ほぼ同様の構成を有するため、以下では、一方について説明し、他方の説明を省略する。
【0019】
図1(a)及び図3に示すように、加速度センサ13は、車両1のボディ5側(例えば、フロア部材12)に設けられ、ボディ5の減速度(負の加速度)を逐次検出する。
【0020】
図1(b)及び図3に示すように、第1ストッパ15は、上下方向に延びる金属製の部材であって、サイドシル7の車幅方向内側に配置されてサイドシル7の車幅方向内側面17に固定され、サイドシル7よりも下方へ延びる。第1ストッパ15は、少なくともサイドメンバ3側の第2ストッパ16よりも下方まで延び、第1ストッパ15の前面(対向面)18は、第2ストッパ16から後方に離間した位置に配置される。第1ストッパ15の後面側には、ほぼ直角三角形状の補強部19が設けられる。補強部19は、その第1辺がサイドシル7の車幅方向内側面17に沿って前後方向に延びてサイドシル7の車幅方向内側面17に固定され、第2辺が第1ストッパ15の後面に沿って車幅方向に延びて第1ストッパ15の後面に固定される。なお、本実施形態では、第1ストッパ15をサイドシル7に固定したが、これに限定されるものではなく、第1ストッパ15は、車室11の下方を区画するフロア部材12に対して固定されていればよい。また、第1ストッパ15の素材や形状は、上記に限定されず、高い強度を有する様々な形状の部材を適用することができる。
【0021】
図2及び図3に示すように、第2ストッパ16は、支持部材(支持部)21と、可動部材(可動部)22と、カラー23と、ソケット24と、ヒューズボルト25とを有し、第1ストッパ15の前面18から前方へ離間した位置に配置され、サイドメンバ3の車幅方向外側面20に固定される。なお、本実施形態では、第2ストッパ16をサイドメンバ3に固定したが、これに限定されるものではなく、第2ストッパ16は、フレーム2に対して固定されていればよい。
【0022】
支持部材21は、金属製の部材であって、前後方向に延びる略円柱状の柱状部26を有する。柱状部26は、サイドメンバ3の車幅方向外側面20から車幅方向外側に離間し、且つ第1ストッパ15の前面18から前方へ離間した位置に配置される。柱状部26の後面は、第1ストッパ15の前面18に対向する。柱状部26の前端部の車幅方向内側面には、車幅方向内側へ延びる連結部27が一体的に設けられ、連結部27の車幅方向内端部がサイドメンバ3の車幅方向外側面20に固定される。すなわち、連結部27は、柱状部26とサイドメンバ3とを連結する。また、柱状部26及び連結部27の前端面と、サイドメンバ3の車幅方向外側面20との間には、ほぼ直角三角形状の補強部28が設けられる。補強部28は、柱状部26及び連結部27の前端面と、サイドメンバ3の車幅方向外側面20とに固定される。
【0023】
柱状部26は、大径部26aと、大径部26aよりも小径の小径部26bとを有する。小径部26bは、大径部26aと同軸に配置されて大径部26aの後面29から後方へ突出する。小径部26bの外周面には、その周方向に沿って延びる溝部32が形成される。柱状部26は、小径部26bの後面30から前方へ直線状に延びる開口部31を有する。開口部31は、小径部26bの後面30から連続して大径部26aの内部まで延びる。開口部31の内部には、インフレータ33が設けられる。インフレータ33は、ECU14からの信号によって作動して開口部31内にガスを発生させる。
【0024】
可動部材22は、金属製の部材であって、前方へ開口する有底の筒状に形成される。可動部材22の内周面は、前方の開口34から同径で後方へ延びる第1領域35と、第1領域35よりも小径に形成されて第1領域35の後端から連続して後方へ延びる第2領域36と、第2領域36よりも小径に形成されて第2領域36の後端から連続して後方へ延びる第3領域37とを有する。第1領域35と第2領域36との間には、第1段差部38が形成され、第2領域36と第3領域37との間には、第2段差部39が形成される。第2領域36の内径は、柱状部26の大径部26aの挿入を許容するように、柱状部26の大径部26aの外径よりも僅かに大きく形成される。第3領域37の内径は、柱状部26の大径部26aの外径よりも小さく、且つ小径部26b外径よりも大きく形成される。可動部材22は、支持部材21の柱状部26と第1ストッパ15の前面18との間に配置され、柱状部26の後端部側(小径部26b側)を開口34から挿入した状態で、カラー23、ソケット24及びヒューズボルト25を介して柱状部26に前後方向に移動可能に支持される。
【0025】
カラー23は、樹脂製の部材であって、前後方向と交叉する円板状のベース部40と、ベース部40の前面側の中央部から前方へ突出する円柱状の蓋部41と、ベース部40の前面側の外周縁部から前方へ突出する円環状の側壁部42とを有し、支持部材21の柱状部26の後方に配置されて、柱状部26の小径部26bに前後方向に移動可能に支持される。ベース部40の外径は、可動部材22の第3領域37の内径よりも僅かに小さく形成される。蓋部41は、その外径が柱状部26の開口部31の内径と略同じ大きさに形成され、柱状部26の開口部31に後方から圧入された状態で開口部31の開口を密閉して塞ぐ。側壁部42の外周面は、ベース部40の外径と同径でベース部40の外周縁から連続して前方へ延びる第1領域43と、第1領域43よりも小径に形成されて第1領域43の前端から連続して前方へ延びる第2領域44とを有する。側壁部42の外周面の第2領域44の外径は、柱状部26の小径部26bの外径よりも大きい。側壁部42の内径は、柱状部26の小径部26bの外径よりも僅かに大きく形成され、柱状部26の小径部26bの挿入を許容する。側壁部42の前端部には、側壁部42の内周面46から径方向の内側へ突出する円環状の突出部45が形成される。突出部45は、柱状部26の小径部26bの溝部32内に配置される。突出部45の前後方向の厚さは、柱状部26の溝部32の幅(前後方向の長さ)よりも短い。柱状部26の小径部26bをカラー23の側壁部42の内側に挿入し、蓋部41を柱状部26の開口部31に圧入し、突出部45を柱状部26の溝部32内に配置した状態で、カラー23は、柱状部26の小径部26bに支持される。
【0026】
ソケット24は、Cリング状に形成された金属製の板状部材であって、径方向に弾性変形可能であり、支持部材21の柱状部26の小径部26bの径方向外側で小径部26bの周方向に沿って延びる。ソケット24の外周面には、後端側の第1領域48と、第1領域48よりも大径に形成されて第1領域48の前方に配置される第2領域49とを有する。第1領域48と第2領域49との間には、段差部50が形成される。ソケット24が縮径してソケット24の内周面47と柱状部26の小径部26bの外周面とが当接した状態(図4(c)参照)でのソケット24の第2領域49の外径は、柱状部26の大径部26aの外径よりも小さい。
【0027】
ヒューズボルト25は、所定の大きさ以上の荷重が入力した際に破断可能なボルトであって、後述するように、可動部材22と支持部材21の柱状部26とを固定する。ヒューズボルト25の強度は、車両1の通常走行中の振動等によっては破断せず、且つ後述する車両1の前面衝突時に可動部材22から前方への荷重が入力した際に容易に破断する強度に設定される。
【0028】
図3に示すように、インフレータ33が作動していない通常時(以下、単に通常時という)には、柱状部26の小径部26bの後面30がカラー23のベース部40の前面に当接し、カラー23の突出部45の前面が柱状部26の溝部32の前壁に当接することによって、柱状部26の小径部26bに対するカラー23の前方への移動が規制される。また、カラー23の蓋部41が、柱状部26の開口部31に圧入されて開口部31の内周面を押圧する状態で開口部31の内周面に密接し、柱状部26の小径部26bに対するカラー23の後方への移動を規制する。ソケット24は、径方向外側に拡径された状態で、ソケット24の内周面47がカラー23の外周面の第2領域44に当接し、該当接によってソケット24の径方向内側への収縮(縮径)が規制される。ソケット24の前面51は、柱状部26の大径部26aの後面29に当接する。ソケット24の外周面の第1領域48が、可動部材22の内周面の第2領域36に当接し、ソケット24の外周面の第2領域49が、可動部材22の内周面の第1領域35に当接し、ソケット24の段差部50が、可動部材22の第1段差部38に前方から当接する。このように、可動部材22の第1段差部38がソケット24の段差部50に当接し、且つソケット24の前面51が柱状部26の大径部26aの後面29に当接することによって、ソケット24が可動部材22と支持部材21との間に挟まれて、支持部材21に対する前方への可動部材22の移動が規制される。可動部材22の前端22aが、柱状部26の大径部26aの後面29の位置よりも前方に配置され、可動部材22のうち柱状部26の大径部26aと重なる領域が、柱状部26の大径部26aの後端部に対してヒューズボルト25によって固定される。ヒューズボルト25は、支持部材21に対する前後方向の(主に後方への)可動部材22の移動を規制する。可動部材22は、カラー23、ソケット24、及びヒューズボルト25によって支持部材21に対する前後方向の移動が規制されて第1規制位置(図2中の実線で示す位置)に保持され、カラー23、ソケット24及びヒューズボルト25を介して柱状部26に支持される。すなわち、カラー23、ソケット24、及びヒューズボルト25は、支持部材21に対する可動部材22の位置を第1規制位置に保持する保持手段として機能する。図2に示すように、ボディ5のフロア部材12がフレーム2に対して前後方向に移動していない状態で、第1規制位置の可動部材22は、第1ストッパ15の前面18から前方に離間して、第1ストッパ15の前面18との間に可動空間52を区画する。可動空間52は、車両1の通常走行時に第1ストッパ15と第2ストッパ16との相対的な前後方向の移動を許容することにより、通常走行時にフレーム2に対する前方へのフロア部材12の移動を許容する。
【0029】
図3に示すように、ECU14は、CPU(Central Processing Unit)53や記憶部54を有する。記憶部54は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成される。記憶部54には、ボディ5の減速度の閾値Kが予め記憶される。また、記憶部54には、加速度センサ13からの情報や各種データなどが読み書き自在に記憶されるデータ記憶領域が予め設定されている。記憶部54は、上記データ記憶領域以外にも、CPU53の演算結果の一時記憶領域等として機能する。なお、記憶部54に予め記憶されるボディ5の減速度の閾値Kには、車両1が所定の速度で走行中に前面衝突して、第1ストッパ15の前面18と第2ストッパ16の第1規制位置の可動部材22とが当接した後にフロア部材12の減速度が増大する際の増大中の所定の値(減速度)が、実験やシミュレーション等によって求められて設定される。
【0030】
ECU14のCPU53は、加速度センサ13からの情報に基づいて、車両1のボディ5の減速度と予め記憶部54に記憶された閾値Kとを比較する。CPU53は、ボディ5の減速度が、閾値Kを超えた場合、インフレータ33に信号を出力してインフレータ33を作動させる。
【0031】
次に、第2ストッパ16の動きについて、図4(a)〜図4(d)に基づいて説明する。なお、図4(a)〜図4(d)には、右側の第1ストッパ15Rと右側の第2ストッパ16Rとが図示されている。図4(a)は、第2ストッパ16に第1ストッパ15が当接した第1状態を、図4(b)は、インフレータ33が作動した第2状態を、図4(c)は、ソケット24が収縮した第3状態を、図4(d)は、可動部材22が第1規制位置から第2規制位置へ移動した第4状態をそれぞれ示す。
【0032】
図4(a)に示す第1状態の第2ストッパ16は、上述した通常時(インフレータ33が作動していない時)の状態であり、可動部材22が、カラー23、ソケット24、及びヒューズボルト25によって支持部材21に対して第1規制位置に保持される。第2ストッパ16は、車両1の通常走行時、及び図4(a)に示すように車両1が前面衝突して第2ストッパ16に第1ストッパ15が当接した後、インフレータ33が作動するまで第1状態を維持する。第2ストッパ16は、インフレータ33が作動すると、第1状態から第2状態へ移行する。
【0033】
図4(b)に示すように、ECU14(図3参照)からの信号によってインフレータ33が作動すると、インフレータ33が発生したガスによって支持部材21の柱状部26の開口部31内の圧力が急激に上昇してカラー23の蓋部41が後方へ押し出され、カラー23が柱状部26の小径部26bに対して後方(図4(b)の矢印方向)へ移動し、第2ストッパ16が第2状態となる。第2状態では、カラー23の突出部45の後面が、柱状部26の小径部26bの溝部32の後壁に当接し、この当接によって小径部26bに対する後方へのカラー23の移動が規制される。カラー23の後端部は、可動部材22の内周面の第3領域37の内側に挿入され、カラー23の外周面の第1領域43が、可動部材22の内周面の第3領域37に沿って配置される。また、第2状態では、カラー23の外周面の第2領域44が、ソケット24の内周面47の後端よりも後方へ移動し、カラー23がソケット24の縮径の規制を解除する。第2ストッパ16は、ソケット24が縮径して、第2状態から第3状態へ移行する。
【0034】
図4(c)に示すように、第3状態の第2ストッパ16は、ソケット24が径方向内側(図4(c)の矢印方向)へ収縮(縮径)した状態である。第3状態では、ソケット24が縮径してソケット24の内周面47が柱状部26の小径部26bの外周面に当接する。縮径した状態のソケット24は、ソケット24の外周面の第1領域48の外径が、可動部材22の内周面の第3領域37の内径よりも小さく、ソケット24の外周面の第2領域49の外径が、可動部材22の内周面の第3領域37の内径よりも大きく、且つ可動部材22の内周面の第2領域36の内径よりも小さい。ソケット24の段差部50は、可動部材22の第1段差部38よりも径方向内側に移動して、ソケット24は、支持部材21に対する前方への可動部材22の移動の規制を解除する。第3状態で、ヒューズボルト25に対して可動部材22から前方への上記所定の大きさ以上の荷重が入力し、ヒューズボルト25が破断すると、可動部材22が支持部材21に対して前方(図4(d)の矢印方向)へ移動して、第2ストッパ16が第3状態から第4状態へ移行する。
【0035】
図4(d)に示すように、第4状態の第2ストッパ16は、可動部材22が第1規制位置よりも前方の第2規制位置に配置される。図2に示すように、第2規制位置(図2中の二点鎖線で示す位置)は、ボディ5がフレーム2に対して前後方向に移動していない状態における第1ストッパ15の前面18から、第1規制位置(図2中の実線で示す位置)よりもさらに前方の位置である。図4(d)に示すように、第4状態では、ソケット24の後端部が、可動部材22の内周面の第3領域37の内側に挿入され、ソケット24の外周面の第1領域48が、可動部材22の内周面の第3領域37に沿って配置される。また、可動部材22の第2段差部39がソケット24の段差部50に後方から当接し、且つソケット24の前面51が柱状部26の大径部26aの後面29に当接することによって、支持部材21に対する前方への可動部材22の移動が第2規制位置に規制される。すなわち、第2規制位置の可動部材22は、ソケット24を介して支持部材21に支持される。
【0036】
次に、車両1の着座シート8に乗員が着座してシートベルト90(図1(a)参照)を締めた状態で、車両1が通常走行中に前面衝突した場合について説明する。
【0037】
図5に示すように、車両1が衝突物100に前面衝突すると、先ずフレーム2(図1(a)参照)の前端部が衝突物100に衝突し、フレーム2の減速度が急激に増大し、ボディ5のフロア部材12(図1(a)参照)が慣性によってフレーム2に対して前方へ移動する。フロア部材12が前方へ移動すると、フロア部材12側の第1ストッパ15が、フレーム2側の第1状態(図4(a)参照)の第2ストッパ16の可動部材22に当接し、第2ストッパ16に対する前方への第1ストッパ15の移動が規制され、フレーム2に対する前方へのフロア部材12の移動が規制されてボディ5の減速度が急激に増大する。ボディ5の減速度が急激に増大すると、乗員は、シートベルト90が効き始めるまで着座シート8に対して前方へ慣性によって移動し、乗員の速度は、着座シート8側(フロア部材12側)の速度よりも速くなる。ボディ5の減速度が急激に増大して閾値Kを超えて、ECU14が、インフレータ33を作動させると、カラー23が支持部材21に対して後方へ移動して(図4(b)参照)、ソケット24が縮径し(図4(c)参照)、ヒューズボルト25が破断して、可動部材22が支持部材21に対して前方へ移動する。すなわち、カラー23、ソケット24、及びヒューズボルト25による支持部材21に対する可動部材22の第1規制位置への保持は、車両1が前面衝突して、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、ボディ5の減速度が閾値Kを超えたとき(所定のタイミング)に、ECU14によるインフレータ33の作動によって解除される。可動部材22が支持部材21に対して前方へ移動すると、この移動に伴ってボディ5側(車体側)がフレーム2に対して前方へ移動し、可動部材22が第2規制位置に到達すると(図4(d)参照)、フレーム2に対する前方へのボディ5の移動が再度規制される。
【0038】
上記のように構成されたストッパ装置10では、車両1が前面衝突して、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、ボディ5の減速度が閾値Kを超えるまでは、可動部材22が第1規制位置に保持されるので、その間、ボディ5側の運動エネルギーをフレーム2側で消費することができる。
【0039】
また、車両1が前面衝突して、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、ボディ5の減速度が閾値Kを超えた時に、支持部材21に対する可動部材22の第1規制位置への保持を解除する。このため、フレーム2に対する前方へのボディ5の移動が許容され、ボディ5の減速度が減少してボディ5の速度低下が抑制される。その一方で、シートベルト90が効き始めると、乗員が着座シート8側に拘束されるので、乗員の減速度が増大して減速し始める。このように、ボディ5の減速度が減少する一方で、乗員の減速度が増大するので、乗員と着座シート8との速度差を小さくすることができる。その後、第2規制位置に到達した可動部材22が、フレーム2に対する前方へのボディ5の移動を再度規制する。すなわち、乗員とボディ5側の着座シート8との速度差を小さくした状態で、乗員をシートベルト90によって着座シート8に拘束してボディ5を減速させることができるので、車両1の前面衝突時に乗員の運動エネルギーを車体等(フレーム2を含む)の破損エネルギーで消費させる効率(ライドダウン効率)を高めることができ、乗員の傷害値指標の一つである乗員の最大減速度を低減して乗員の傷害を低減することができる。
【0040】
また、車両1の通常走行時に、第1規制位置の可動部材22が、カラー23、ソケット24、及びヒューズボルト25によって第1規制位置に保持され、第1規制位置の可動部材22と第1ストッパ15の前面18との間の可動空間52が、第1ストッパ15と第2ストッパ16との相対的な前後方向の移動を許容し、通常走行時のフレーム2に対するボディ5の前方への移動が許容される。このため、車両1の通常走行時に、フレーム2に弾性支持されたフロア部材12がフレーム2に対して前方へ移動した場合であっても、第1ストッパ15と第2ストッパ16とが干渉せず、フレーム2によるフロア部材12の弾性支持が損なわれることがないので、車両1の通常走行時の乗り心地の低下を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、車両1が前面衝突して、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、ボディ5の減速度が閾値Kを超えたとき(所定のタイミング)に、支持部材21に対する可動部材22の第1規制位置への保持を解除したが、これに限定されるものではない。本発明における上記所定のタイミングとは、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後に、所定の条件を満たしたとき(本実施形態では、ボディ5の減速度が閾値Kを超えたとき)という意味である。例えば、第1規制位置の第2ストッパ16の可動部材22と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、所定の時間が経過したときであってもよい。また、上記所定の条件を満たすか否かを判定する所定の閾値(上記閾値Kや上記所定の時間など)は、車両1の車速に応じて変化する値であってもよい。例えば、車両1に車速検出手段(車速センサ等)を設け、車速に対応する様々な所定の閾値を記憶部54に予め記憶し、車両1の前面衝突時の車速に応じた上記所定の閾値を用いて、上記所定の条件を満たすか否かを判定してもよい。また、上記所定の閾値は、車両1の衝突状態(例えば、車両1の前面の略全域が衝突物100と衝突するフルラップ衝突や、車両1の前面のうちの車幅方向の一側が衝突物100と衝突するオフセット衝突)に応じて変化する値であってもよい。また、乗員とボディ5との速度差を小さくするために可動部材22の移動規制を解除する最適な上記所定のタイミングは、車両の諸元(シートベルト90の性能やボディ5のつぶれ構造等)によって異なるので、その車両に応じたタイミングを実験やシミュレーション等によって求めて、求めたタイミングに応じた上記所定の閾値を設定してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、インフレータ33を設け、インフレータ33が発生したガスによって支持部材21の柱状部26の開口部31内からカラー23の蓋部41を後方へ押し出したが、カラー23を後方へ移動させる方法は、これに限定されるものではない。例えば、柱状部26の開口部31内に、カラー23の蓋部41を直接的に後方へ押圧可能な押圧部材を設け、この押圧部材を後方へ移動させることによってカラー23を後方へ移動させてもよい。
【0043】
また、支持部材21の形状や構造は、上記に限定されるものではなく、第1ストッパ15の前面18から前方へ離間して対向する位置に配置されてサイドメンバ3に固定されるものであればよい。
【0044】
また、可動部材22の形状や構造は、上記に限定されるものではなく、支持部材21と第1ストッパ15の前面18との間に配置され、支持部材21に前後方向に移動可能に支持されるものであればよい。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、第2実施形態に係るストッパ装置60は、加速度センサ13とECU14とを備えない点、及び第2ストッパ61の構造が上記第1実施形態に係るストッパ装置10と異なる。また、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図6(a)及び図6(b)に示すように、第2ストッパ61は、支持部材(支持部)62と、可動部材(可動部)63と、ヒューズボルト(保持手段)64とを有する。
【0047】
支持部材62は、金属製の部材であって、サイドメンバ3の車幅方向外側面20から車幅方向外側に離間し、且つ第1ストッパ15の前面18から前方へ離間した位置に配置されて前後方向に延びる柱状部65を有する。柱状部65の前端部は、サイドメンバ3の車幅方向外側面20に対して固定される。
【0048】
可動部材63は、金属製の部材であって、前方へ開口する有底の筒状に形成される。可動部材63の内周面66は、可動部材63の前端の開口67から連続して後方へ直線状に延び、可動部材63の内径は、支持部材62の挿入を許容するように、支持部材62の外形よりも僅かに大きく形成される。可動部材63は、支持部材62の柱状部65と第1ストッパ15の前面18との間に配置される。図6(a)に示すように、可動部材63には、開口67から柱状部65の後端部が挿入され、可動部材63の底面69(内部の後壁の前面)と柱状部65の後面68との間に空間70を区画した状態で、可動部材63が、ヒューズボルト64によって柱状部26に固定され、柱状部26に支持される。可動部材63がヒューズボルト64によって柱状部26に固定されていない状態では、可動部材63は、柱状部26に前後方向にスライド移動自在に支持される。
【0049】
ヒューズボルト64は、所定の大きさ以上の荷重が入力した際に破断可能なボルトであって、支持部材62に対する可動部材63の位置を第1規制位置(図6(a)に示す可動部材63の位置)に保持する。第1規制位置の可動部材63は、第1ストッパ15の前面18から前方に離間して、第1ストッパ15の前面18との間に可動空間52を区画する。これにより、第2ストッパ61の可動部材63は、車両1の通常走行時、及び車両1が前面衝突してヒューズボルト64が破断するまで、支持部材62に対する位置がヒューズボルト64によって第1規制位置に保持される。
【0050】
車両1が前面衝突してフレーム2の前端部が衝突物100に衝突し、フレーム2に対してボディ5が前方へ移動すると、ボディ5側の第1ストッパ15が、フレーム2側の第2ストッパ61の第1規制位置の可動部材63に当接する(図6(a)の二点鎖線参照)。ヒューズボルト64は、可動部材63を介して入力する第1ストッパ15側からの荷重が上記所定の大きさ以上になるまで、支持部材62に対して可動部材63を第1規制位置に保持し、前記荷重が上記所定の大きさ以上になると破断する。ヒューズボルト64の破断によって、支持部材62に対する第1規制位置への可動部材63の保持が解除される。すなわち、ヒューズボルト64による支持部材62に対する可動部材63の第1規制位置への保持は、車両1が前面衝突した際に、第1規制位置の第2ストッパ61の可動部材63と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、第1ストッパ15側からの荷重が上記所定の大きさ以上になったとき(所定のタイミング)に解除される。支持部材62に対する第1規制位置への可動部材63の保持が解除されると、可動部材63が、第1ストッパ15に押されて支持部材62に対して前方へ移動し、可動部材63の底面69と柱状部65の後面68とが当接する(図6(b)参照)。これにより、支持部材62に対する前方への可動部材63の移動が第2規制位置(図6(b)に示す可動部材63の位置)に規制される。第2規制位置の可動部材63は、支持部材62に前方から支持されて、前方への第1ストッパ15の移動を規制する。
【0051】
上記のように構成されたストッパ装置60では、車両1が前面衝突した際に、第1規制位置の第2ストッパ61の可動部材63と第1ストッパ15の前面18とが当接した後、第1ストッパ15側からの荷重が上記所定の大きさ以上になったときにヒューズボルト64が破断して、支持部材62に対する第1規制位置への可動部材63の保持を解除する。このため、支持部材62に対する第1規制位置への可動部材63の保持を解除するインフレータや、該インフレータを制御するためのECU等を設ける必要がなく、ストッパ装置60を簡易な構造にすることができる。
【0052】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0053】
例えば、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、第1ストッパ15を、フロア部材12側(一方側)に固定し、第2ストッパ16,61の支持部材21,62を、第1ストッパ15の前面18よりも前方に配置してフレーム2側(他方側)に固定したが、これに限定されるものではなく、フレーム2側のストッパがフロア部材12側のストッパよりも前方に配置されていればよい。すなわち、第1ストッパ15を、フレーム2側(一方側)に固定し、第2ストッパ16,61の支持部材21,62を、第1ストッパ15の後面(対向面)よりも後方に配置してフロア部材12側(他方側)に固定してもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、支持部材21,62に対して可動部材22,63を第1規制位置に保持する保持手段を、第2ストッパ16,61に設けたが、第2ストッパとは別体の保持装置(保持手段)を設けてもよい。
【0055】
また、可動部材22,63を支持部材21,62に対して第1規制位置に保持する保持手段や、上記所定のタイミングで支持部材21,62に対する可動部材22,63の第1規制位置への保持を解除する方法は、上記第1実施形態及び上記第2実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0056】
1:車両
2:フレーム
10,60:ストッパ装置
11:車室
12:フロア部材
15:第1ストッパ
16,61:第2ストッパ
18:第1ストッパの前面(対向面)
21,62:支持部材(支持部)
22,63:可動部材(可動部)
23:カラー(保持手段)
24:ソケット(保持手段)
25,64:ヒューズボルト(保持手段)
52:可動空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6