特許第6754106号(P6754106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754106
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】視線誘導標および同期点滅システム
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/608 20160101AFI20200831BHJP
   E01F 9/615 20160101ALI20200831BHJP
   E01F 9/627 20160101ALI20200831BHJP
   E01F 9/685 20160101ALI20200831BHJP
【FI】
   E01F9/608
   E01F9/615
   E01F9/627
   E01F9/685
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-244694(P2015-244694)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-48667(P2017-48667A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-255501(P2014-255501)
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308023686
【氏名又は名称】株式会社大晃工業
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093470
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 富士雄
(74)【代理人】
【識別番号】100119747
【弁理士】
【氏名又は名称】能美 知康
(72)【発明者】
【氏名】高田 重利
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】村田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智一
(72)【発明者】
【氏名】楠本 雄裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 賢吾
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−136513(JP,A)
【文献】 特開2008−202393(JP,A)
【文献】 実開昭48−089115(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3007937(JP,U)
【文献】 特開平07−150527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/608
E01F 9/615
E01F 9/627
E01F 9/685
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に設置される台座と,前記台座に立設され交通表示部材が設けられた所定長さの視線誘導柱と,を備えた視線誘導標において,
前記視線誘導柱は,内部に中空孔および立設方向に複数の角部を有する多角形状の中空角柱体を備え,
前記中空角柱体は,前記台座に固定される所定長さの根元柱部と,前記根元柱部から上方へ所定長さ延設されて上記交通表示部材が装着される上方柱部とに区分されて,
前記根元柱部は,それぞれの角部に応力を軽減させ易屈曲される所定長さの長孔または溝からなる応力軽減屈曲付与部が設けられているとともに,前記中空孔内の隅角部を他の箇所より肉厚にした肉厚角壁で形成されていることを特徴とする視線誘導標。
【請求項2】
前記応力軽減屈曲付与部は,幅狭で長い長さの矩形状の孔であって,前記角部を貫通し,前記孔内の上下隅角部にそれぞれRが設けられている長孔からなることを特徴とする請求項に記載の視線誘導標。
【請求項3】
前記台座と前記視線誘導柱とは,交換可能な固定手段により結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の視線誘導標。
【請求項4】
前記中空角柱体は,前記上方柱部に,一対の対向する幅広の対向板壁を有し,これらの対向板壁には該対向板壁を貫通し前記中空孔に連通した窓穴がそれぞれ形成されて,前記窓穴が形成された箇所の中空孔内に,発光体および該発光体を点滅させる同期点滅回路が搭載された回路基板並びに蓄電池および太陽光パネルが挿入され,前記窓穴から前記発光体からの光が発せられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の自発光型の視線誘導標。
【請求項5】
前記回路基板および前記蓄電池は,有底で上方が開口した透明ケースに収納され,外周囲が透明なケースカバーで覆われ,前記開口は前記太陽光パネルを装着した蓋体で塞がれて,前記中空孔へ挿入されていることを特徴とする請求項に記載の自発光型の視線誘導標。
【請求項6】
前記同期点滅回路は,前記太陽光パネルで発生した電圧の変化で日没を判定する日没検出部と,前記日没検出部の出力により他の視線誘導標へ同期用データを送信または他からの同期用データを受信する無線通信部と,前記発光体を他の視線誘導標の発光体と同期させて同時に点灯させる同期用タイマーと,前記無線通信部および前記同期用タイマーを制御する制御部とを備え,
前記制御部は,前記日没検出部の日没判定出力により,前記無線通信部は他の視線誘導標へ同期用データを送信すると共に前記同期用タイマーをスタートさせ,その後,他の視線誘導標からの同期用データを受信したときに前記同期用タイマーをリセットして再スタートさせ,同期用タイマーの設定時間経過後に,他の視線誘導標と同期させて点灯開始させることを特徴とする請求項4または5に記載の自発光型の視線誘導標。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,視線誘導標および同期点滅システムに係り,さらに詳しくは,視線誘導施設に設置される視線誘導標および自発光型視線誘導標の同期点滅システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般道路や高速道路などには,センターライン,車線変更線,分離帯などに,交通の安全および円滑化を図るために,視線誘導標,道路標識柱,車線分離標,およびラバーポールなどと称される資材(以下,これらを総称して施設資材ともいう。)が設置されている。これらの施設資材は,車輌などが接触或いは衝突して損傷或いは折損などするので,それに耐える強靭性および耐久性,或いは雨天,夜間などでは視界が悪くなるので,このような状況下でも車輌ドライバーが容易に認識できる視認性,さらに経時変化に伴って劣化或いは故障などするので,簡単に補修ができる易メンテナンス性など,様々な仕様が要求されている。これらの要求に応えるべく,形状,構造などを工夫した様々な施設資材が提案されている。
【0003】
耐久性を工夫したものは,例えば下記特許文献1,2に紹介されている。特許文献1に記載の道路標識柱は,他物の接触或いは衝突によって曲り変形可能な中空ポール本体と,この中空ポール本体の下端部に内嵌可能な突出部分および路面への接地環状部分を有するベースと,中空ポール本体に外嵌可能な内孔およびベースの接地環状部分に対向する環状部分を有するリングとを備え,中空ポール本体は,その下半部分の周壁に補強用リブが形成されたものとなっている。この標識柱によれば,車輌などの他物が接触或いは衝突したときに,その上半部分の曲り変形により衝撃を吸収し,接触或いは衝突力の解除に伴い起立姿勢に弾性復元する。
特許文献2に記載の道路標識柱は,屈曲性や復元性に劣る合成樹脂で形成すると共にその所要部位にスリットなどの屈曲性付与部分を形成した標識柱本体と,その標識柱本体の内部に配設した復元性の高い弾性体からなる復元性付与部材とで構成されている。この標識柱によれば,高価なポリウレタン等の弾性体樹脂を使用することなく,安価でしかも屈曲性や復元性が劣る合成樹脂の使用が可能になる。
【0004】
また,視認性を工夫したものは,下記特許文献3,4に提案されている。特許文献3に記載の自発光式道路標示体は,支柱の上端部に太陽電池とコントローラと蓄電池とからなる太陽電池ユニットを取付けたものである。この標示体によれば,夜間や降雪時でも,必要な視認性を確保し,運転者の視線誘導が可能になる。また特許文献4に記載の自発光式デリネータは,縦長円筒形の透明パイプ内に組み込まれた発光部と,この発光部の発光体を点灯させる太陽電池部とを備えたものである。このデリネータによれば,着雪状態でも必要な視認性を確保し,運転者の視線誘導が可能になる。
【0005】
さらに,複数本の自発光視線誘導標を同期点滅させる同期点滅システムとして,以下のタイミングで点滅させる方式のものが知られている。まず,GPSから送られる電波を受信してタイミングを採る方式のいわゆるGPS同期システム,親機から基準となる電波を出力し,複数の子機は内蔵する受信器で受信してタイミングを採る方式いわゆる親子同期システム(下記特許文献5),マスター装置から発信される点滅制御信号を各視線誘導標がそれぞれ選別受信することで点滅動作させる方式いわゆるマスター方式(下記特許文献6),およびその他,標準電波利用をしたシステム(下記特許文献7),アドレス設定,発光同期補正する方式(下記特許文献8)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−168897号公報
【特許文献2】特開2000−136513号公報
【特許文献3】特開平6−108425号公報
【特許文献4】特開2009−275424号公報
【特許文献5】特開平10−311009号公報
【特許文献6】特開平9―88019号公報
【特許文献7】特開2005−42344号公報
【特許文献8】特許第5072783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2のうち,上記特許文献1に記載の道路標識柱は,周壁にリブを設けているので,周壁面が外部へ突出し,美観を損ないデザイン性に難があり,またリブ間に汚染物が付着し易く,クリーニングが難しいものとなっている。また,上記特許文献2に記載の道路標識柱は,高価なポリウレタン等の弾性体樹脂に代えて,屈曲性や復元性に劣る合成樹脂製の標識柱本体および復元性の高い弾性体の復元性付与部材を使用するもので,特性が異なる2種類の部材が必要となり,また金型も2種類が必要となるためコスト増となり,さらに異なる2つの材料特性のものを組み合わせることで特異点が発生し,強度的に特定の箇所のみ大きな応力が発生する可能性がある。
【0008】
また,上記特許文献3,4のうち,特許文献3に記載の自発光式道路標示体は,強い衝撃力が加わると,太陽電池ユニットおよびこのユニットを構成する太陽電池,コントローラ,蓄電池などが飛散する恐れがある。また,特許文献4に記載の自発光式デリネータは,透明パイプを使用しているので,パイプ材が透明なものに限定されて,材料選定の自由度が制限され,また,発光部と太陽電池部とを別々に配設しなければならない。
【0009】
さらに,上記の特許文献5〜8のうち,特許文献5〜7に記載の同期システムは,スイッチで起動するものは,その都度操作が必要となり,忘れると起動しない,また,1本の視線誘導標が故障すると他機との同期点滅ができなくなる。特許文献8の同期システムも動作スイッチを入れるタイプであり,さらに仕組み上,1本が壊れると同期関係が崩れる可能性がある。
【0010】
以上,上記特許文献に記載のものは,いずれも課題を抱えている。例えば上記特許文献3,4に記載の自発光式道路標示体などは,ポール孔内に回路基板或いは制御箱などの大型部材を挿入することができない。
そこで,本発明者は,この課題を解決するために,大判の回路基板および該基板を収容した箱体をポールへ収容するには,ポールを円筒形状から扁平角型にすればポール孔内スペースを効率よく有効に利用できること,一方で角型にすると角部に応力が集中して屈曲し難くなり大きく屈曲すると角部から折損する恐れがある新たな課題が出現すること,しかし,この課題は角部に応力軽減手段を設ければ解決できることなど,広い角度から検討し,出現した課題の解決を図り,本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
本発明の目的は,柔軟に屈曲する屈曲性および迅速に自己復元する復元性を有し,耐久性が優れた角型の視線誘導標を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は,夜間など視界が悪い状況下で発光体を点灯・点滅させてドライバーへの視認性を高めた自発光型の視線誘導標を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的は,車輌などが接触或いは衝突し,強い衝撃力が加わっても,
内部の回路基板などの部品の損傷を防止できる自発光型の視線誘導標を提供することにある。
【0014】
さらに本発明の他の目的は,複数個の自発光型視線誘導標を同期点滅させて視認性を高めた同期点滅システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は,以下の構成によって達成できる。すなわち,本発明の第1の態様の視線誘導標は,路面に設置される台座と,前記台座に立設され交通表示部材が設けられた所定長さの視線誘導柱と,を備えた視線誘導標において,前記視線誘導柱は,内部に中空孔および立設方向に複数の角部を有する多角形状の中空角柱体を備え,前記中空角柱体は,前記台座に固定される所定長さの根元柱部と,前記根元柱部から上方へ所定長さ延設されて上記交通表示部材が装着される上方柱部とに区分されて,前記根元柱部は,それぞれの角部に応力を軽減させ易屈曲される所定長さの長孔または溝からなる応力軽減屈曲付与部が設けられているとともに,前記中空孔内の隅角部を他の箇所より肉厚にした肉厚角壁で形成されていることを特徴とする。
【0017】
第2の態様の視線誘導標は第1の態様の視線誘導標において,前記応力軽減屈曲付与部は,幅狭で長い長さの矩形状の孔であって,前記角部を貫通し,前記孔内の上下隅角部にそれぞれRが設けられている長孔からなることを特徴とする。
【0019】
第3の態様の視線誘導標は第1または2の態様の視線誘導標において,前記台座と前記視線誘導柱とは,交換可能な固定手段により結合されていることを特徴とする。
【0020】
第4の態様の視線誘導標は第1〜3のいずれかの態様の視線誘導標において,前記上方柱部に,一対の対向する対向板壁を有し,これらの対向板壁には該対向板壁を貫通し前記中空孔に連通した窓穴がそれぞれ形成されて,前記窓穴が形成された箇所の中空孔内に,発光体および該発光体を点滅させる同期点滅回路が搭載された回路基板並びに蓄電池および太陽光パネルが挿入され,前記窓穴から前記発光体の光が発せられることを特徴とする。
【0021】
第5の態様の視線誘導標は第4の態様の視線誘導標において,前記回路基板および前記蓄電池は,有底で上方が開口した透明ケースに収納され,外周囲が透明なケースカバーで覆われ,前記開口は前記太陽光パネルを装着した蓋体で塞がれて,前記中空孔へ挿入されていることを特徴とする。
【0022】
第6の態様の視線誘導標は第4または5の態様の視線誘導標において,前記同期点滅回路は,前記太陽光パネルで発生した電圧の変化で日没を判定する日没検出部と,前記日没検出部の出力により他の視線誘導標へ同期用データを送信または他からの同期用データを受信する無線通信部と,前記発光体を他の視線誘導標の発光体と同期させて同時に点灯させる同期用タイマーと,前記無線通信部および前記同期用タイマーを制御する制御部とを備え,前記制御部は,前記日没検出部の日没判定出力により,前記無線通信部は他の視線誘導標へ同期用データを送信すると共に前記同期用タイマーをスタートさせ,その後,他の視線誘導標からの同期用データを受信したときに前記同期用タイマーをリセットして再スタートさせ,同期用タイマーの設定時間経過後に,他の視線誘導標と同期させて点灯開始させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
第1の態様の視線誘導標によれば,視線誘導標に車輌などが接触或いは衝突し,強い衝撃力が加わっても,応力軽減屈曲付与部により,根元柱部に掛かる応力が軽減され,容易に屈曲するので,視線誘導標の折損乃至座屈を防止できる。また,応力解除後は,角部が骨支柱となって自己復元力が働くので迅速に復元する。しかも、第1の態様の視線誘導標によれば,応力軽減屈曲付与部の長孔または溝は,成形加工により簡単に成形ができ,また,隅角部を肉厚にした肉厚角壁に形成することにより自己復元力を補強できる。特に,長孔を長くすると自己復元力が減少するが,この減少は肉厚角壁で補強できる。
【0026】
第2の態様の視線誘導標によれば,孔内の上下隅角部のRによって,長孔に掛かる応力を緩和できる。
【0028】
第3の態様の視線誘導標によれば,台座と視線誘導柱とが交換可能な固定手段で固定されているので,台座や視線誘導柱が破損したときに破損した部材を簡単に交換できて,経済的となり且つメンテナンス保守が容易になる。
【0029】
第4の態様の自発光型の視線誘導標によれば,夜間など視界が悪い状況下で発光体を点灯・点滅させてドライバーへの視認性を高めることができる。
【0030】
第5の態様の自発光型の視線誘導標によれば,回路基板および蓄電池などは透明ケースに収納され,蓋体に太陽光パネルが装着されているので,視線誘導標に車輌などが接触或いは衝突し,強い衝撃力が加わっても,回路基板および蓄電池などの部品は透明ケースおよびケースカバーで保護されるので破損を防止できる。
【0031】
第6の態様の自発光型の視線誘導標によれば,他の複数個の自発光型視線誘導標を同期点滅させて視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係る自発光型の視線誘導標の外観斜視図である。
図2図1の視線誘導標の分解斜視図である。
図3図1の視線誘導標を構成する台座の断面図である。
図4図4A図1の視線誘導標を構成する中空角柱体の斜視図,図4B図4Aの根元部分の拡大斜視図である。
図5図5A図4AのVA部分の拡大側面図,図5B図5D図5Aの隅角部のRを模試図示した側面図である。
図6図1の視線誘導標を構成する発光体制御箱の分解斜視図である。
図7】視線誘導標の屈曲性評価実験の斜視図である。
図8図7の実験結果を示した評価図である。
図9】複数本の視線誘導標をセンターラインに設置した状態の外観図である。
図10図1の自発光型視線誘導標を同期点滅させる同期点滅回路のブロックダイアグラム図である。
図11図10の同期点滅回路の日没検出部のフローチャート図である。
図12】同期通信時の概要図である。
図13】同期通信時のタイミングチャート図である。
図14図10の同期点滅回路の同期通信部のフローチャート図である。
図15図10の同期点滅回路のLED点滅終了のフローチャート図である。
図16】本発明の実施形態2に係る視線誘導標を示し,図16Aは斜視図,図16B図16Aの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下,図面を参照して本発明の実施形態に係る視線誘導標および同期点滅システムを説明する。但し,以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための視線誘導標,自発光型の視線誘導標並びに複数本の自発光型視線誘導標を同期点滅させる同期点滅システムを例示するものであって,本発明をこれらに特定するものではなく,特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。なお,これらの視線誘導標は視線誘導施設に使用されるものである。
【0035】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る自発光型の視線誘導標(以下,単に視線誘導標ともいう。)1は,図1図2に示したように,路面に設置される台座10と,この台座に立設され反射体などの交通標示体が装着された所定長さの視線誘導柱20とを備え,視線誘導柱20は,内部に所定大きさの中空孔21図4参照)を有し,この中空孔内に発光体および同期点滅回路などが搭載された回路基板32を収納した発光体制御箱30が挿入され,中空孔21の開口が太陽光パネル35を装着した蓋体34で塞がれ,頂部に透明材料からなる柱キャップ40が装着された構成を有している。以下,これら個々の構成を詳述する。
【0036】
まず,図3を参照して,台座を説明する。なお,図3は道路面に設置した状態の台座を垂直方向で切断した断面図である。
台座10は,路面2に設置される円形状で底面が平坦な設置面11と,この設置面と対向し設置面より小面積の円形状の頂部面12とを有し,所定高さの断面形状が台形状の台座本体からなり,合成樹脂成形体で形成されている。この台座本体は,熱可塑性樹脂で形成されている。この熱可塑性樹脂は特定のものに限定されるものでなく,既に公知のものでよい。具体的にはPET,PBT,ポリプロピレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート,ポリプロピレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート樹脂,ポリカーボネート樹脂などである。
【0037】
この台座10は,図3に示したように,頂部の中心部に,頂部面12から設置面11へ向けて貫通したボルトの挿通孔14と,この挿通孔14の外周囲に頂部面12から設置面11へ所定深さ凹ませて中空角柱体21の根元部分が差込み固定される環状凹み溝15とを有し,挿通孔14は,ボルト16の脚部16bが挿通される脚部挿通孔14aと,ボルト16の頭部16aが固定される凹み穴14bとで構成されている。また,対向する傾斜面13に,ボルト18(図2参照)が挿通される複数個の貫通孔13図1参照)が形成されている。なお,この台座10は,この形状のものに限定されるものでなく,後記する実施形態2の台座10Aを使用してもよい。なお,この台座10の高さHは例えば50mmである。
【0038】
次に,図1図2および図4図5を参照して,視線誘導柱を説明する。なお,図1は視線誘導標の斜視図,図2は視線誘導標の分解斜視図,図4Aは中空角柱体の斜視図,図4B図4Aの根元部分の拡大図,図5A図4AのVA部分を拡大した側面図,図5B図5D図5Aの隅角部のRを模試図示した側面図である。
視線誘導柱20は,図1図2に示したように,内部に中空孔21図4参照)を有し,所定の幅,長さおよび肉厚で長さ方向と直交する断面が略四角形状の中空角柱体21と,中空孔21内に装着されて光を外部へ発する発光体およびこの発光体を同期点滅させる同期点滅回路が配設された回路基板32が収納された発光体制御箱30と,中空角柱体21の頂部の開口を塞ぐ透明材料からなる柱キャップ40とで構成されている。なお,視線誘導標1の高さHは,例えば650mmである。
[0]
【0039】
中空角柱体21は,図4に示したように,所定の幅,長さおよび肉厚で幅広な平板状の一対の対向する対向板壁21a,21bと,これらの対向板壁の側縁端を繋ぎ対向板壁より幅狭で外方へ若干湾曲した一対の対向する側板壁21c,21dと,これら対向板壁および一対の側板壁で囲まれた中空孔21を有し,一対の対向板壁21a,21bと側板壁21c,21dとの4か所の繋ぎ目がそれぞれ角部21ac,21cb,21bd,21daとなった略四角形状の中空筒状体で形成されている。
【0040】
この構成により,中空筒状体の中空孔21は,長さ方向と直交する断面形状が略長方形乃至略楕円形状となるので,従来技術の円筒状ポールと比べて中空孔内のスペースを効率よく有効に使用できるようになり,後記する発光体制御箱30の装着が可能になる。また,一対の対向板壁21a,21bには,後記する一対の窓穴26aを設けるが,これらの対向板壁は各側板壁より幅広になっているので,従来技術の円筒状ポールの頂部に発光体を設けたものと比べて,発光面積が大きくなる。すなわち,窓穴26aを長さ方向に沿って縦長にして複数個の発光体32を縦列に間隔をあけて配設ができて,発光面積が大きくなる。なお,各対向板壁21a,21bの幅長は,例えば92mm,各側板壁21c,21dの幅長は例えば60mmである。
【0041】
対向する側板壁21c,21dは,それぞれ外部へ円弧状に湾曲し,また4か所の角部21ac,21cb,21bd,21daには所定のR(アール)が付けられている。これにより,車輌などが接触しても車輌などが傷つくことを防止できる。
【0042】
中空角柱体21は,熱可塑性エラストマーで構成されている。この熱可塑性エラストマー(TPE)は,例えば,ポリエステル系TPE,ポリウレタン系TPE,ポリオレフィン系TPE,ポリスチレン系TPE,ポリアミド系TPE,アイオノマー系TPE,ジエン系TPE,ポリ塩化ビニル系TPE,ポリ塩化ビニル/ポリウレタンポリマーアロイTPE,熱可塑性樹脂とゴムとの混合物等などである。これらの熱可塑性エラストマーの中でも,成形の容易さおよび車輌の接触乃至衝突などに対する復元性,耐久性などを考慮すると,熱可塑性ポリウレタン,軟質ポリオレフィンが好ましい。また,着色材を混入したものを使用するとカラー角柱体を作製できる。着色材の色は,例えばグリーンなどである。この中空角柱体21は,射出成形により形成される。さらに,成形体の表面に自浄性を発現させる合成樹脂塗料を塗布した被覆層を形成するのが好ましい。これにより,中空角柱体の表面の汚染を抑制できる。
【0043】
中空角柱体21は,図1に示したように,台座10に固定される根元柱部21Aと,この根元柱部から上方へ所定長さ延設されて反射体41a,41b(図2参照)が装着される中間柱部21Bと,この中間柱部からさらに所定長さ延設された上方柱部21Cとに区分されている。なお,これらの区分は,説明を容易にするために分けたもので,実際の中空角柱体にはこのような目印はない。なお,中間柱部の区分は必須でなく,また,根元柱部21Aの長さは例えば200mm,中間柱部21Bの長さは150mm,上方柱部21Cの長さは190mmである。また,図1のHは300mm,Hは190mm,Hは60mmである。
【0044】
これらの区分のうち,根元柱部21Aは,図2に示したように,根元端部の近傍にボルト挿通孔23a,23bが形成されている。
【0045】
また,4か所の角部21ac,21cb,21bd,21daは,中空孔21内の四つのコーナー部分に,この部分を面取りし肉厚にした角壁(以下,肉厚角壁ともいう。)22ac,22cb,22bd,22daが形成されている(図4B参照)。これらの肉厚角壁22ac〜22daは,図4Bに示す幅長をd,傾斜面の高さをd,肉厚角壁厚をtとしたとき,dは例えば8.8mm,dは3mm,tは4.0mmである。これらの寸法から,各肉厚角壁22ac〜22daは,対向板壁或いは側板壁(3.0mm)と比較して1.0mm増え肉厚が4.0mm(t)になる。根元柱部21Aは,それぞれの角部を肉厚に形成したことにより,この根元柱部分が他の部分と比べて曲がり難くなる一方で,自己復元力が補強される。
【0046】
また,4か所の角部21ac,21cb,21bd,21daの各肉厚角壁22ac,22cb,22bd,22daには,図4Aに示したように,所定長さの長孔24a,24b,24c,24dが形成されている。2本の長孔24b,24cは図2図4に記載されていないが,対向板壁21aの角部の肉厚角壁22ac,22daの対面の,対向板壁21bの角部の肉厚各壁22cb,22bdに形成されていて,対向板壁21aで隠れている。これらの長孔24b,24cは同じ形状になっている。これらの長孔24a,24b,24c,24dは,幅狭で長い長さの矩形状の開口を持った孔で各肉厚角壁22ac,22cb,22bd,22daを貫通している。これらの長孔は,根元柱部21Aの最下端から所定長さ,例えば50mm離れた箇所から中間柱部21Bへ向かって形成されている。これらの長孔24a〜4dによって,外部からの応力が軽減される一方で屈曲し易くなり,根元柱部21Aからの折損乃至座屈を防止できる。すなわち,これらの長孔24a〜24dは角部に掛かる最大応力の軽減を図って,屈曲が容易になり根元部分からの折損乃至座屈を防止できる。これらの長孔は応力軽減屈曲付与部となっている。
これらの長孔24a〜24dは,長孔の幅は例えば2.0mm,長孔の長さは例えば100mm或いは150mmである。なお,長孔は,その長さが長いと屈曲し易くなるが,一方で自己復元力が弱くなる。しかし,この自己復元力の低減は,角部を肉厚壁にすることにより補強される。
【0047】
また,図5に示したように,長孔は,孔内の隅角部24,24,24,24に,所定のRを付すのが好ましい。なお,図5図4のVA部分であり,図5Aでは符号24と24は省略されている。Rは,R1(半径1.0mm),R2(半径2.0mm)およびR4(半径4.0mm)(図5B図5D参照)である。なお,Rの最大は,半径R10まで可能である。このようなRを付すことによって,長孔部に掛かる応力を緩和できる。特に,長孔の長さを短くすると,根元部分の応力が増加する一方で,また,長孔部分に応力が集中するので,この対策として,Rは有効な作用を果たす。なお,この応力緩和については後記する。
【0048】
この実施形態では,それぞれの長孔24a〜24dは,各肉厚角壁22ac〜22daに形成したが,幅広の各対向板壁21a,21bにあって,各肉厚角壁に沿って形成してもよい。すなわち,各長孔24a〜24dは,それぞれの肉厚角壁22ac〜22da或いは一対の対向板壁21a,21bに形成する。なお,これらの箇所を含めて長孔を形成した箇所を角部に設けたともいう。また,この実施形態では,根元柱部21Aの角部を肉厚角壁にして,復元力の補強をしたが,角部で所望の自己復元力が得られる場合は必ずしも肉厚にする必要はない。さらに,長孔は肉厚角壁を貫通させたが,貫通させることなく所定長さ及び深さの溝で形成してもよい。この溝の長さは長孔と略同じであり,その形状は凹み或いはU字,V字状である。
長孔に代えて溝にすると,以下の効果を奏する。すなわち,上方柱部21Cには発光体制御箱30を装着するので,上方部が重くなることがある。このように上方部が重いと,車輛などが接触乃至衝突し強い応力が掛かると,柱体は屈曲するが過度の応力によっては屈曲乃至折曲で元に復元しなくなる恐れがある。しかし,溝にすると,長孔より復元力が増大し上記の不都合が回避される。なお,この長孔及び溝は,所望の屈曲および復元力を付与するものであるので,これらの長孔及び溝は上記のものに限定するものでなく他の同様の作用を奏する公知の手段,例えば複数の孔などにしてもよい。
【0049】
中間柱部21Bは,図1図2に示したように,その外周囲の2か所に反射体41a,41bが所定の間隔をあけて装着されている。これらの反射体は,再帰反射体或いはエレクトロルミネッセンス(EL)などとなっている。
【0050】
上方柱部21Cは,図2に示したように,一対の対向板壁21a,21bにそれぞれ窓穴26a,26bが形成され,また,中空孔21内に発光体制御箱30が挿入される。
【0051】
まず,一対の窓穴26a,26bは,対向する幅広の対向板壁21a,21bに,これらの対向板壁を貫通し中空孔21へ連通して形成されている。なお,一方の窓穴26bは図1図2図4に記載されていないが,対向板壁21aの反対側の対向板壁21bに形成されて,対向板壁21aで隠れている。これらの窓穴26a,26bは同じ形状になっている。一方の窓穴26aは,図2に示したように,対向板壁21aの長さ方向に設けた長方形の額縁状窓枠26と,この窓枠内に設けた長方形の開口26とからなり,この開口26は内部の中空孔21へ連通している。開口26が長方形になっているので複数個の発光体を縦列に配設できて,発光面積を拡大できる。また,窓穴26aは,図1図2に示したように,額縁状窓枠26を外周壁面から所定深さ窪ませ,開口26はこの深さの底部に形成されている。窓穴26aからは,発光体からの光が外部へ投光される。このとき複数個の発光体32は発光体制御箱30に収納され,外周壁面から引っ込んだ箇所にあるので,車輌などが直接発光体に直接当たる恐れがなく,防護される(図2図6参照)。さらに,頂部は柱キャップ40が装着され嵌め込み部となっている。
【0052】
次に,図2図6を参照して,発光体制御箱を説明する。なお,図6は発光体制御箱の分解斜視図である。
発光体制御箱30は,中空角柱体21の中空孔21に挿入される大きさの光透過性材料からなる透明ケース31と,この透明ケース内に収納される回路基板32と,この回路基板上に配設した発光体32を囲む2個の発光体カバー枠33a,33bと,透明ケース31の上方の開口を塞ぎ太陽光パネル35が装着される蓋体34と,透明ケース31の外周囲を覆う光透過性フィルムからなるケースカバー36との組立体で構成されている。
【0053】
これらの部材のうち,透明ケース31は,図6に示したように,内部に,回路基板32および2個の発光体カバー枠33a,33bを挿入,固定できる大きさの空間スペース31aを有し,有底31bで,上方端が開口31cし,この開口の外周囲に外方へ突出した鍔部31dが設けられた四角形状をした細長の箱状体からなり,光透過性材料からなる樹脂成形体で形成されている。この樹脂材は,ポリカーボネート,アクリル樹脂などである。この透明ケース31は,内部に回路基板32および2個の発光体カバー枠33a,33bが収納された後に,中空角柱体21の中空孔21へ挿入される。この挿入の際に,鍔部31dは中空孔21の開口端に当接されて,透明ケース31が中空孔21内に位置決め固定される。
【0054】
回路基板32は,所定の幅長,長さおよび厚さの縦長矩形状をなし,透明ケース31内へ収納できる大きさの絶縁基板上に,複数個の発光体32およびこれらの発光体を同期点滅させる同期点滅回路32A(図10参照)が配設された構成となっている。複数個の発光体32はそれぞれ発光ダイオード(以下,LEDという。)からなり,これらは,例えば6個の所定の発光色,例えば,オレンジ色を発光するLEDであって,絶縁基板の表裏面に,それぞれ所定の個数,例えば3個ずつ縦方向に所定の間隔をあけて配列されている(図6参照)。また,同期点滅回路32Aは,複数の制御部品からなり,これらは回路基板32上にあって,LED32の周辺に配置されている。この同期点滅回路32Aを構成する制御部品およびソフトウエアは,一般にモジュールとも称されおり,これらの説明は後記する。
【0055】
次に,発光体制御箱を構成する発光体カバー枠,蓋体,ケースカバーおよび発光体制御箱の組立を説明する。
【0056】
2個の発光体カバー枠33a,33bは,同じ形状を有し,回路基板32に配列された複数個の発光体の外側を囲む大きさの額縁状をした枠体からなり,合成樹脂成形体で形成されている。すなわち,この発光体カバー枠は複数個の発光体の外側を囲む大きさの開口と,この開口を形成し所定の幅長,高さの額縁とを有する枠体で形成されている。この枠体は,光を透過しない着色材で形成するのが好ましい。この発光体カバー枠33a,33bは,透明ケース31内にあって,発光体を外部衝撃から保護する緩衝材の働きをする。
【0057】
蓋体34は,透明ケース31の上方の開口31cに嵌め込み固定される嵌入部と,この嵌入部から上方へ突出し蒲鉾型に湾曲した頭部とからなり,樹脂成形体で形成されている。この頭部には,頭部の形状に沿って湾曲した太陽光パネル35が装着される。この蓋体は,光を透過しない着色材で形成するのが好ましい。
【0058】
ケースカバー36は,光透過性材料からなる樹脂フィルムを使用し,透明ケース31の外周囲を覆った構成となっている。このフィルムは公知のセルフクリーニングフィルムが好ましい。このフィルムをケースカバーに使用することによって,外周に付着した汚れを自己洗浄できると共に,透明ケース31および内部備品の飛散を防止できる。
【0059】
発光体制御箱30の組立ては,透明ケース31内に回路基板32を発光体カバー枠33a,33bを介在,すなわち,これらのカバー枠で回路基板32上のLED32を囲って挿入,固定する。次に,透明ケース31の開口31cを蓋体34で塞いで閉蓋し,この蓋体に太陽光パネル35を装着し,また,ケースの外周にケースカバー36を装着して,発光体制御箱30の組立てを終了する。この発光体制御箱30によれば,透明ケース31に複数個のLED32および同期点滅回路32Aを搭載した回路基板32が収納され,外周がケースカバー36で覆われるので,回路基板上のLEDおよび同期点滅回路を構成する制御部品が保護されて,視線誘導標に車輌などが衝突した際に,故障乃至飛散することが抑制される。
【0060】
以上,中空角柱体21は,長さ方向と直交する断面が略四角形状のもので説明したが,本発明は,これに限定されるものでなく,他の形状,すなわち,それ以上の多角形状の角柱を含むものである。なお,角柱は,国語辞書によれば,切り口が四角の柱,或いは平面上の多角形(底面)の周の各点からその平面上にない決まった長さの線分(母線)を引いたとき,それらの線分および上下の底面で囲まれた多面体,となっているが,本明細書の角柱は,これらの角柱だけでなく,一対の対向壁面を幅広にし,他の側壁面が平坦乃至外へ湾曲などしたものも含んでいる。
【0061】
図1図4図6を参照して,視線誘導標の組立および路面への設置,および屈曲性評価を説明する。
【0062】
視線誘導標1の組立ては,まず,前記した方法で発光体制御箱30を組立てる。組立てた発光体制御箱30は中空角柱体21の中空孔210に挿入,固定し,頂部に反射体41cを介在させて柱キャップ40を装着して視線誘導柱20の組立てを完了する。なお,中空角柱体21の中間柱部21Bには予め反射体41a,41bを装着して置く。
【0063】
視線誘導標1の道路への設置は,まず,図2,3に示したように,路面2にアンカー17より大きい穴を掘って,この穴へ接着剤を流し込み,ベース底面が路面と接する状態にてアンカー17を埋め込む。この際,アンカー上面は路面2より飛び出しているため,アンカー固定用の接着剤はアンカー内部には流れ込まず,また,中空角柱体21への衝突等によって中空角柱体或いは台座が破壊してそれらを交換時も,アンカーはそのまま使用でき,交換が容易になる。このアンカー17に,台座10を固定する。この固定はボルト16を台座10の挿通孔14に螺合して行う。次いで,この台座10に視線誘導柱20を固定する。この固定はボルト18を台座10の貫通孔13へ挿通して行う。
【0064】
道路に設置したこれらの視線誘導標A〜D(図9)に,車輛などが接触乃至衝突し強い応力が掛かって屈曲する。このような場合に備えて,以下の屈曲性の評価を行った。
【0065】
視線誘導標1は,以下の寸法および材料で作製し,屈曲性の評価を行った。
(寸法)
視線誘導標1の高さHは650mm,台座10の高さHは50mm,幅長Wは150mm,中空角柱体21の対向板壁21a,21bの横幅は92mm,側板壁の幅長は60mm,21A,21Bの対向板壁の肉厚は3mm,側板壁の肉厚は3mm,肉厚角壁の肉厚4mm,底端から頂部までの高さは560mm,底端から窓穴26aまでの高さは386mm,長孔の長さは100mm,中空角柱体21の材料はポリウレタン,孔内の上下端のRは,R0(半径0mm),R1(半径1.0mm),R4(半径4.0mm)である。
(評価方法)
視線誘導標1に図7の矢印方向から荷重を掛けて,根元柱部21Aに掛かる応力分布を評価した。
(評価結果)
その結果,図8に示したように,根元柱部21Aの根元端に近い箇所に掛かる最大主応力をL1および孔内の下端屈曲箇所の掛かる最大主応力をL2とすると,根元端に近い箇所に最も大きな応力が掛かり,この最大主応力L1は,孔内に設けたRの大きさによって変移し,すなわち,R0が最も大きく,R1,R2およびR4に従って減少することが判明した。一方,最大主応力L2はR0,R1およびR2で略同じく,R4で若干減少している。なお,長孔150mmでも実験したところ,最大主応力L1は100mmに比べて,小さく,また,L2も100mmより小さくなっていた。
以上から,長孔長さを100mmにする場合,孔内の上下両端にRを設けると応力緩和効果が発揮されることが検証された。
【0066】
図9図15を参照して,同期点滅システムを説明する。なお,図9は複数本の視線誘導標をセンターラインに設置した状態の外観図,図10は同期点滅させる同期点滅回路のブロックダイアグラム図,図11は同期点滅回路の日没検出部のフローチャート図,図12は同期通信時の概要図,図13は同期通信時のタイミングチャート図,図14は同期点滅回路の同期通信部のフローチャート図,図15は同期点滅回路のLED点滅終了のフローチャート図である。
同期点滅システムは,上記視線誘導標1を複数本,例えば4本の視線誘導標A〜Dを備え,これらの視線誘導標に同一グループのIDを予め設定して置く。これらのIDは視線誘導標A〜Dの各同期点滅回路32Aに設定する。これにより同一グループのIDを持つ視線誘導標は同期用データの送受信が可能になる。
4本の視線誘導標A〜Dは,図9に示したように,所定の間隔をあけて路面などに設置する。これらの視線誘導標A〜Dは,路面1のセンターライン2上に各視線誘導標A〜Dの各窓穴26a,26bがラインに沿う方向,すなわち,一対の対向板壁21a,21bがライン2と直交し,各側板壁21c,21dでライン2に沿う方向に,前記の設置方法で設置する。この設置により,各視線誘導標A〜Dの各窓穴26a,26bがラインに沿っており,これらの窓穴からLED32の光が発せられるので,車輛ドライバーへの視認性がアップする。
【0067】
これらの視線誘導標A〜Dの同期点滅は,それぞれの視線誘導標に装着された同期点滅回路32Aによって行われる。
同期点滅回路32Aは,図10に示したように,太陽光パネル35で起電された電力を蓄電する蓄電池32aと,この蓄電池からの電力で点灯する複数個のLED32と,太陽光パネル35で発生した電圧の変化で周囲の暗さを判定する日没検出部32bと,この日没検出部の出力により他の視線誘導標へ同期用データを送信または他の視線誘導標から同期用データを受信する無線通信部32gと,LED32を他の視線誘導標の発光体(LED)と同期させて点灯させる同期用タイマー32eと,無線通信部32gおよび同期用タイマー32eなどを制御する制御部32cと,所定のプログラムを記憶した記憶部32dと,蓄電池32aからの電力を制御しLED32,無線通信部32gおよび制御部32cなどへ電力を供給する電源制御部32fを備えている。記憶部32dには,所定のプログラム,例えば,図11〜15に示したプログラムなどがメモリーされている。
【0068】
4本の視線誘導標A〜Dは,それぞれ同期点滅回路32A(図10参照)を備えており,いずれかの視線誘導標,例えば視線誘導標Aが暗さ,すなわち日没を検出したとする。この日没検出は,同期点滅回路32Aの日没検出部32bにより検出する。この日没検出部32bは,図11に示したように,暗さ検出を開始し,太陽光パネル35からの充電電流量およびこの起電力の確認を所定時間(例えば10秒)掛けて検出し,これらの検出値から,充電電流量が例えば2mA以下,起電力が例えば1.2V以下になったか否かを検出し,この条件を満たした場合に動作管理用変数にプラス1(+1)をして,次ステップでこの動作管理変数が2か,それより大きいか(変数>=2?)を判定し,この条件を満たした場合に日没と判定して暗さ検出を終了する。なお,充電電流量および起電力が所定値に到達しないときは,動作管理用変数にマイナス1(−1)をしてフローを元に戻し,また,動作管理変数が上記条件を満たさない場合もフローを元に戻してやり直して暗さ検出を行う。
【0069】
視線誘導標Aが日没を検出すると,同期点滅回路32Aの無線通信部32g(基板に実装した無線モジュール)が起動され,同期用データが他の視線誘導標へ送信(例えば,100msec間隔で5回連続送信)する。このデータ送信後に同期用タイマー32eをスタートさせる。その後,視線誘導標Aは受信モードに入り,この間は例えば90msec受信状態,例えば150msecスリープ状態の間歇受信動作を繰り返して待機する(図13参照)。なお,この間歇受信動作時間は約18分程度であり,また,同期用タイマーのカウント終了時間は約19分後とする。
視線誘導標Aの待機中に,他の視線誘導標,例えば視線誘導標Bが日没を検知すると,この視線誘導標Bも視線誘導標Aと同様にデータを送信,このデータ送信後に同期用タイマーをスタートする。すると,先に起動していた視線誘導標Aは視線誘導標Bのデータを受信し,同期用タイマーをリセットして再スタートさせる(図12参照)。
【0070】
視線誘導標Aは,同期用タイマーのカウント終了(約19分経過)後,同期用データの受信回数を判定し,この回数によって自身が親機であるか子機であるかを判定する。例えば,同期用データの受信回数が0の場合,親機と判定し,受信回数が0以外の場合,子機と判定する。なお,親機と子機の間にわずかな時間のずれが発生するため,これを補正するために最後に一度だけ同期通信を行う。また,視線誘導標Aは子機となるために,所定時間(例えば8秒間)受信状態となる(図12参照)。そして,視線誘導標Aは同期用タイマー設定時間が経過するまで待機(例えば10秒)し,同期点滅を開始する。
【0071】
一方,視線誘導標Bは同期用タイマー設定時間が経過するまで待機,同様に,視線誘導標Bは親機となるため,判定から5秒後に1回だけ同期用データを送信する。そして,同期用タイマー設定時間が経過するまで待機(例えば10秒)し,同期点滅を開始する。
【0072】
LEDの点滅は,同期通信終了後に作動する。すなわち,図15に示したように,LED32は,所定時間例えば1秒間消灯,所定時間例えば55ミリ秒点灯を繰り返し継続して点滅する。これらの点滅により,所定時間例えば1分経過し,太陽光パネル35からの充電電流量および起電力を確認し,充電電流量が例えば2mA以上,起電力が例えば1.2V以上になったことを検出すると,LEDの点滅を終了する。
【0073】
この同期点滅システムによれば,同期用タイマーを用い,これらにそれぞれの設定時間を設定することによって,グループを構成する視線誘導標を同期点滅させることができる。また,これらの視線誘導標のうち,何本かの視線誘導標が故障などで起動しない場合も他の視線誘導標同士で同期点滅させることが可能になる。
【0074】
なお,この同期点滅システムは,上記の同期点滅回路に限定するものでなく,他の公知の同期点滅回路を用い他の方式,例えば,GPSから送られる電波を受信してタイミングを採る方式のいわゆるGPS同期システム,親機から基準となる電波を出力し,複数の子機は内蔵する受信器で受信してタイミングを採る方式いわゆる親子同期システム,マスター装置から発信される点滅制御信号を各視線誘導標がそれぞれ選別受信することで点滅動作させる方式いわゆるマスター方式,およびその他,標準電波利用をしたシステム,アドレス設定,発光同期補正する方式を採用してもよい。
【0075】
実施形態1の視線誘導標によれば,夜間など視界が悪い状況下で発光体を点灯・点滅させてドライバーへの視認性を高めることができる。また,車輌などが接触或いは衝突し,強い衝撃力が加わっても,応力軽減屈曲付与部により,根元柱部に掛かる応力が軽減され,容易に屈曲するので,視線誘導標の折損乃至座屈を防止できる。また,応力解除後は,角部が骨支柱となって自己復元力が働くので迅速に復元する。また,視線誘導標に過度な衝撃力が加わって破損しても,発光体制御箱および内部の部品は,透明ケースおよびケースカバーで覆われているので,部品の破損,飛散を防止できる。さらに,台座と視線誘導柱とが交換可能な固定手段で固定されているので,台座や視線誘導柱が破損したときに破損した部材を簡単に交換できて,経済的となり且つメンテナンス保守が容易になる。
また,この視線誘導標の同期点滅システムによれば,同期用タイマーを用い,これらにそれぞれの設定時間を設定することによって,グループを構成する視線誘導標を同期点滅させることができる。また,これらの視線誘導標のうち,何本かの視線誘導標が故障などで起動しない場合も他の視線誘導標同士で同期点滅させることが可能になる。
【0076】
[実施形態2]
図16を参照して,本発明の実施形態2に係る視線誘導標を説明する。なお,図16は本発明の実施形態2に係る視線誘導標を示し,図16Aは斜視図,図16B図16Aの分解斜視図である。実施形態2に係る視線誘導標1Aは,実施形態1の視線誘導標1の一部の構成,すなわち台座および中空角柱体を変更しただけで他は同じになっている。以下の説明は,この変更した構成を詳述し,共通する構成の説明は省略する。
【0077】
実施形態2に係る視線誘導標1Aは,図9に示したように,路面に設置される台座10Aと,この台座に立設され反射体などの交通標示体が装着された所定長さの視線誘導柱20Aとを備え,視線誘導柱20Aは,内部に所定大きさの中空孔を有し,この中空孔の開口が柱キャップで塞がれた構成を有している。すなわち,視線誘導柱20Aは,中空孔内が空洞となり,また,台座10Aは実施形態1の台座10の傾斜面を一部切除した形状にしたものである。実施形態1の視線誘導標1は自発光タイプのものであるのに対して,実施形態2の視線誘導標1Aは非発光タイプのものである。この視線誘導標1Aは,根元柱体に応力軽減屈曲与部24a〜24dが形成されており,その作用効果は実施形態1のものと同じである。
【符号の説明】
【0078】
1,1A 視線誘導標
10,10A 台座
20,20A 視線誘導柱
21 中空角柱体
21 中空孔
21A 根元柱部
21ac,21cb,21bd,21da 角部
22ac,22cb,22bd,22da 肉厚角壁
21B 中間柱部
21C 上方柱部
24a,24b,24c,24d 長孔(応力軽減屈曲付与部)
24,24 隅角部
30 発光体制御箱
31 透明ケース
32 発光体(LED)
32 回路基板
32A 同期点滅回路
32b 日没検出部
32c 制御部
32g 無線通信部
32e 同期用タイマー
32a 蓄電池
35 太陽光パネル
36 ケースカバー
40 柱キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16