(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態における膨張弁1について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0016】
(方向の定義)
本明細書において、弁体3から作動棒5に向かう方向を「上方向」と定義し、作動棒5から弁体3に向かう方向を「下方向」と定義する。よって、本明細書では、膨張弁1の姿勢に関わらず、弁体3から作動棒5に向かう方向を「上方向」と呼ぶ。
【0017】
(実施形態の概要)
図1を参照して、実施形態における膨張弁1の概要について説明する。
図1は、実施形態における膨張弁1の全体構造を模式的に示す図である。なお、
図1において、パワーエレメント8に対応する部分は側面図で示されており、その他の部分は断面図で示されている。
図2Aは、実施形態における膨張弁1の開弁時における作動棒5、弁体3、および、脚付ばね60の配置の一例を模式的に示す概念図である。
図2Bは、実施形態における膨張弁1の開弁時における作動棒5、弁体3、および、脚付ばね60の配置の他の一例を模式的に示す概念図である。
図3は、実施形態における膨張弁1の閉弁時における作動棒5、弁体3、および、脚付ばね60の配置を模式的に示す概念図である。
【0018】
膨張弁1は、弁室VSを備える弁本体2と、弁体3と、付勢部材4と、作動棒5と、防振ばね6とを具備する。
【0019】
弁本体2は、弁室VSに加え、第1流路21および第2流路22を備える。第1流路21は、例えば、供給側流路であり、弁室VSには、供給側流路を介して流体が供給される。第2流路22は、例えば、排出側流路であり、弁室VS内の流体は、排出側流路を介して膨張弁外に排出される。
【0020】
弁体3は、弁室VS内に配置される。弁体3が弁本体2の弁座20に着座しているとき、第1流路21と第2流路22とは非連通状態である。他方、弁体3が弁座20から離間しているとき、第1流路21と第2流路22とは連通状態である。
【0021】
付勢部材4は、弁体3を弁座20に向けて付勢する。付勢部材4は、例えば、コイルばねである。
【0022】
作動棒5の下端は、弁体3に接触している。また、作動棒5は、付勢部材4による付勢力に抗して弁体3を開弁方向に押圧する。作動棒5が下方向に移動するとき、弁体3は、弁座20から離間し、膨張弁1が開状態となる。作動棒5は、弁本体2に設けられた作動棒挿通孔27に挿通されている。
【0023】
防振ばね6は、弁体3の振動を抑制する防振部材である。防振ばね6は、脚付ばね60を含み、脚付ばね60は、基部61と、基部61から延在する複数の脚部63とを有する。
【0024】
図2Aおよび
図2Bに例示されるように、実施形態では、膨張弁1の開弁状態において、脚付ばね60は、脚付ばね60の中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2と不一致(non−coincident with)になるように弁室VS内に配置されている。なお、中心軸AX1が中心軸AX2と不一致であることには、(1)
図2Aに例示されるように、中心軸AX1が、中心軸AX2と平行であること(換言すれば、中心軸AX1が中心軸AX2から偏心していること)、および、(2)
図2Bに例示されるように、中心軸AX1が中心軸AX2に対して傾斜していること、が包含される。また、中心軸AX1が中心軸AX2に対して傾斜している場合において、中心軸AX1は、中心軸AX2と交差していてもよいし(
図2Bに記載の状態)、中心軸AX1は、中心軸AX2と交差していなくてもよい。本明細書において、中心軸AX1が中心軸AX2と不一致であることは、中心軸AX1が中心軸AX2から外れている(deviate)と表現される。
【0025】
なお、脚付ばね60の中心軸AX1とは、例えば、基部61の中心C(
図4の下側の図等を参照)をとおり上下方向に延在する軸である。あるいは、脚付ばね60は弁体3と一体的に移動するため、脚付ばねの中心軸AX1は、弁体3の中心軸と定義されてもよい。
【0026】
実施形態では、膨張弁1の開弁状態において、脚付ばね60の中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れている。このため、脚付ばね60によって防振される弁体3は、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から偏心する。その結果、
図2Aおよび
図2Bに例示されるように、弁体3に接触する作動棒5の一部が、作動棒挿通孔27を規定する内壁面27a(弁本体2の内壁面)に接触する。
【0027】
実施形態では、作動棒5の一部が、内壁面27aに接触するため、作動棒5の横方向(すなわち、作動棒5の長手方向に垂直な方向)の振動が抑制される。換言すれば、実施形態では、作動棒5が、内壁面27aに押し付けられることにより、作動棒5に横方向の拘束力が付与される。また、実施形態では、作動棒5の一部が、内壁面27aに接触するため、作動棒5の縦方向(すなわち、作動棒5の長手方向に沿う方向)の振動も抑制される。換言すれば、実施形態では、作動棒5が、内壁面27aに押し付けられることにより、作動棒5に縦方向の摺動抵抗が付与される。
【0028】
以上のとおり、実施形態では、作動棒5に、横方向の拘束力および縦方向の摺動抵抗が付与される。こうして、実施形態における膨張弁1では、作動棒5の振動が効果的に抑制される。
【0029】
弁開度が小さいとき、換言すれば、
図2Aおよび
図2Bに示されるように弁体3と弁座20との間の離間距離が小さいとき、弁体3の上流側の圧力P1と弁体3の下流側の圧力P2との圧力差は大きい。当該圧力差によって、弁体3は、横方向に振動する。しかし、実施形態では、作動棒5に横方向の拘束力が付与されるため、作動棒5に接触する弁体3にも横方向の拘束力が付与されることとなる。その結果、弁体3の横方向の振動が抑制される。また、実施形態では、作動棒5に縦方向(上下方向)の摺動抵抗が付与されるため、作動棒5に接触する弁体3も上下方向に移動しにくい。すなわち、実施形態では、弁体3の縦方向の振動も抑制される。
【0030】
なお、
図3に示されるように、実施形態において、膨張弁1の閉弁状態では、脚付ばね60の中心軸AX1は、作動棒挿通孔27の中心軸AX2と一致していてもよい。
【0031】
実施形態において、脚付ばね60は、3個以上の脚部63を含み、当該3個以上の脚部63は、脚付ばね60の中心軸AX1まわりに等間隔で配置されていることが好ましい。また、複数の脚部63の弾性部分63aの形状は、全て等しいことが好ましい。複数の脚部63が等間隔で配置され、かつ、複数の脚部63の弾性部分63aの形状が全て等しい場合には、弁体3は、複数の脚部63の各々から概ね同程度の付勢力を受ける。このため、所望の防振性能(設計値どおりの防振性能)が得られやすい。また、特定の脚部63に接触する脚部案内壁面25に偏摩耗が生じにくい。
【0032】
実施形態において、膨張弁1は、弁体支持部材7を備えていてもよい。弁体支持部材7は、弁体3を支持する。
図1に記載の例では、弁体支持部材7は、弁体3を下方から支持する。
【0033】
図1に記載の例では、脚付ばね60は、弁体支持部材7と脚部案内壁面25との間に配置されており、脚付ばね60の基部61は、弁体支持部材7と付勢部材4との間に配置されている。よって、
図1に記載の例では、脚付ばね60は、弁体支持部材7および弁体3と概ね一体的に上下方向および/または横方向に移動する。
【0034】
(第1の実施形態)
図4乃至
図6を参照して、第1の実施形態における膨張弁1Aについて説明する。
図4および
図5は、第1の実施形態における膨張弁1Aの脚付ばね60A周辺の領域の拡大図である。
図4は、膨張弁1Aの開弁状態を示し、
図5は、膨張弁1Aの閉弁状態を示す。なお、
図4において、一点鎖線で囲まれた領域には、脚付ばね60Aの展開図が記載されている。
図6は、脚付ばね60Aの一例を模式的に示す概略斜視図である。
【0035】
第1の実施形態における膨張弁1Aの全体構造は、
図1に例示される膨張弁1の全体構造と同様である。このため、膨張弁1Aの全体構造についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0036】
第1の実施形態における膨張弁1Aでは、脚部案内壁面25の中心軸AX3を、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から偏心させることにより、脚付ばね60Aの中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。
【0037】
第1の実施形態では、弁本体2は、複数の脚部63が接触する脚部案内壁面25を備える。
図5に記載の例では、脚部案内壁面25は、弁室VSを規定する壁面の一部であり、略円筒形状を有する壁面である。脚部案内壁面25が円筒形状を有する場合には、脚部案内壁面25の中心軸AX3は、当該円筒の中心軸に対応する。
【0038】
第1の実施形態では、脚部案内壁面25の中心軸AX3は、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から偏心している。このため、脚部案内壁面25に複数の脚部63が接触すると、脚付ばね60Aの中心軸AX1は作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。その結果、作動棒5の一部が、作動棒挿通孔27を規定する内壁面27aに接触するため、作動棒5および弁体3の振動が抑制される。
【0039】
第1の実施形態では、脚部案内壁面25の中心軸AX3を、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から偏心させるだけで、作動棒5および弁体3の防振特性が向上する。このため、脚付ばね60Aとしては、公知の脚付ばねをそのまま使用することができる。よって、脚付ばね60Aの設計コストおよび/または製造コストを抑制することができる。もちろん、第1の実施形態における脚付ばね60Aとして、新規に設計された脚付ばねが採用されてもよい。
【0040】
(脚付ばねの一例)
図6を参照して、第1の実施形態の膨張弁1Aにおいて採用可能な脚付ばね60Aの一例について説明する。
【0041】
脚付ばね60Aは、基部61と、基部61から下方に向けて延在する複数の脚部63とを備える。
図6に記載の例では、脚付ばね60Aは、8個の脚部、換言すれば、第1脚部63−1乃至第8脚部63−8を備える。しかし、脚付ばね60Aが備える脚部の数は、3個以上であればよい。
【0042】
脚部63は、脚付ばね60Aの中心軸AX1まわりに等間隔で配置されている。より具体的には、脚部63は、基部61の外縁に沿って等間隔で配置されている。
【0043】
図6に記載の例では、各脚部63は、弾性部分63aと、先端部において外向きに突出する先端側突出部63bとを備える。そして、
図4に示されるように、先端側突出部63bが、脚部案内壁面25に接触する。先端側突出部63bは、部分球殻形状を有していてもよい。なお、部分球殻形状とは、球殻の一部に一致または略一致する形状を意味する。先端側突出部63bが部分球殻形状を有する場合、脚部案内壁面25に接触する部分が、滑らかな曲面部分となるため、脚部案内壁面25が傷つきにくい。また、部分球殻形状は、構造的に強度の高い形状であるため、長期間にわたって、先端側突出部63bの形状が崩れにくい。
【0044】
なお、脚付ばね60Aが金属製である場合には、先端側突出部63bは、プレス加工によって脚部63の一部を塑性変形させることによって形成することができる。換言すれば、先端側突出部63bは、塑性変形部であってもよい。
【0045】
なお、
図6に記載の例では、基部61は、リング形状を有し、複数の脚部63が、リングの外縁部から下方に向けて延在している。しかし、基部61の形状は、リング形状に限定されない。
【0046】
図6に記載の脚付ばね60Aでは、複数の脚部63の弾性部分63aの形状は、全て等しい。換言すれば、脚付ばね60Aが有する脚部63の数がN個であり、KをN−1以下の任意の自然数と定義するとき、第K脚部63−Kの長さは、第K+1脚部の長さと等しく、第K脚部63−Kの幅は、第K+1脚部の幅と等しく、第K脚部63−Kの厚さは、第K+1脚部の厚さと等しい。また、
図6に記載の脚付ばね60Aでは、複数の脚部63の先端側突出部63bの形状も全て等しい。
【0047】
よって、膨張弁1Aにおいて、
図6に記載の脚付ばね60Aが採用される場合、弁体3が、複数の脚部63の各々から概ね同程度の付勢力を受けることとなる。このため、所望の防振性能(設計値どおりの防振性能)が得られやすい。また、特定の脚部63に接触する脚部案内壁面25に偏摩耗が生じにくい。更に、複数の脚部63の形状が全て等しいため、脚付ばね60Aの加工が容易であり、脚付ばね60Aの製造コストが抑制される。
【0048】
(第2の実施形態)
図7および
図8を参照して、第2の実施形態における膨張弁1Bについて説明する。
図7および
図8は、第2の実施形態における膨張弁1Bの脚付ばね60B周辺の領域の拡大図である。
図7は、膨張弁1Bの開弁状態を示し、
図8は、膨張弁1Aの閉弁状態を示す。なお、
図7において、一点鎖線で囲まれた領域には、脚付ばね60Bの展開図が記載されている。
【0049】
第2の実施形態における膨張弁1Bの全体構造は、
図1に例示される膨張弁1の全体構造と同様である。このため、膨張弁1Bの全体構造についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0050】
第2の実施形態における膨張弁1Bでは、第1脚部63−1の第1接触部64−1の形状または大きさが、第2脚部63−2の第2接触部64−2の形状または大きさと異なることにより、脚付ばね60Aの中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。
【0051】
第2の実施形態における膨張弁1Bの脚付ばね60Bは、基部61と、基部61から下方に向けて延在する複数の脚部63とを備える。脚部63は、脚付ばね60Aの中心軸AX1まわりに等間隔で配置されている。より具体的には、脚部63は、基部61の外縁に沿って等間隔で配置されている。
【0052】
図8に記載の例では、各脚部63は、弾性部分63aと、先端部において外向きに突出する先端側突出部63bとを備える。
図8に記載の例では、第1脚部63−1の先端側突出部63bが、第1接触部64−1に対応し、第2脚部63−2の先端側突出部63bが第2接触部64−2に対応する。第1接触部64−1および第2接触部64−2は、弁本体2(より具体的には、脚部案内壁面25)に接触する。
【0053】
図8に記載の例では、第1接触部64−1の大きさと、第2接触部64−2の大きさとが異なっている。代替的に、あるいは、付加的に、第1接触部64−1の形状(例えば、第1脚部63−1の先端側突出部63bの突出高さ)と、第2接触部64−2の形状(例えば、第2脚部63−2の先端側突出部63bの突出高さ)とが異なっていてもよい。
【0054】
第2の実施形態において、形状または大きさの異なる2つの接触部(すなわち、第1接触部64−1および第2接触部64−2)は、脚付ばね60の中心軸AX1に対して対向配置されていてもよい。なお、対向配置は厳密な意味での対向配置に限定されない。第1接触部64−1と中心軸AX1上の点Dとを結ぶ線分と、第2接触部64−2と点Dとを結ぶ線分との間のなす角度が、120度以上であれば、本明細書では、第1接触部64−1および第2接触部64−2は、脚付ばね60の中心軸AX1に対して対向配置されているとみなされる。対向配置される2つの接触部の形状または大きさを異ならせることにより、脚付ばね60の中心軸AX1が作動棒挿通孔27の中心軸AX2からより顕著に外れる。
【0055】
また、第2の実施形態において、大きさが相対的に大きな大型接触部が複数用意され、大きさが相対的に小さな小型接触部が複数用意されてもよい。
図6に記載の例では、第1接触部64−1、第3接触部64−3、第8接触部64−8が脚部63の先端部に設けられた大型接触部であり、第2接触部64−2、第4接触部64−4、第5接触部64−5、第6接触部64−6、第7接触部64−7が脚部63の先端部に設けられた小型接触部である。なお、複数の大型接触部は、互いに隣接配置され、複数の小型接触部は、互いに隣接配置されていることが好ましい。
【0056】
第2の実施形態では、第1接触部64−1の形状または大きさと、第2接触部64−2の形状または大きさとが異なっている。このため、第1接触部64−1および第2接触部64−2の両方が、弁本体2(より具体的には、脚部案内壁面25)に接触すると、脚付ばね60Bの中心軸AX1が作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。その結果、作動棒5の一部が、作動棒挿通孔27を規定する内壁面27aに接触するため、作動棒5および弁体3の振動が抑制される。
【0057】
第2の実施形態では、第1接触部64−1の形状または大きさと、第2接触部64−2の形状または大きさとを異ならせるだけで、作動棒5および弁体3の防振特性が向上する。このため、脚付ばね60Bとして、公知の脚付ばねにおいて接触部の形状または大きさが改良された脚付ばねが採用されてもよい。例えば、第1の実施形態における「脚付ばねの一例」において説明された脚付ばね60Aから、接触部の形状または大きさだけが変更された脚付ばねが、第2の実施形態における脚付ばね60Bとして採用されてもよい。もちろん、第2の実施形態における脚付ばね60Bとして、新規に設計された脚付ばねが採用されてもよい。
【0058】
なお、第2の実施形態における脚付ばね60Bにおいて、複数の脚部63の弾性部分63aの形状は、全て等しくてもよい。この場合、弁体3が、複数の脚部63の各々から概ね同程度の付勢力を受けることとなるため、所望の防振性能(設計値どおりの防振性能)が得られやすい。また、特定の脚部63に接触する脚部案内壁面25に偏摩耗が生じにくい。
【0059】
(第3の実施形態)
図9を参照して、第3の実施形態における膨張弁1Cについて説明する。
図9は、第3の実施形態における膨張弁1Cの脚付ばね60C周辺の領域の拡大図である。なお、
図9において、一点鎖線で囲まれた領域には、脚付ばね60Cの展開図が記載されている。
【0060】
第3の実施形態における膨張弁1Cの全体構造は、
図1に例示される膨張弁1の全体構造と同様である。このため、膨張弁1Cの全体構造についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0061】
第3の実施形態における膨張弁1Cでは、複数の脚部63を、脚付ばね60Cの中心軸AX1まわりに不等間隔で配置することにより、脚付ばね60Cの中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。
【0062】
第3の実施形態における膨張弁1Cの脚付ばね60Cは、基部61と、基部61から下方に向けて延在する複数の脚部63とを備える。脚部63は、脚付ばね60Cの中心軸AX1まわりに等間隔で配置されている。より具体的には、脚部63は、基部61の外縁に沿って等間隔で配置されている。
【0063】
図9に記載の例では、第1脚部63−1と第1脚部に隣接する脚部(第3脚部63−3)との間の間隔が、第1脚部63−1に対して対向配置される第2脚部63−2と第2脚部に隣接する脚部(第6脚部63−6)との間の間隔よりも小さい。このため、第1接触部64−1および第2接触部64−2の両方が、弁本体2(より具体的には、脚部案内壁面25)に接触すると、脚付ばね60Bの中心軸AX1が作動棒挿通孔27の中心軸AX2から外れる。その結果、作動棒5の一部が、作動棒挿通孔27を規定する内壁面27aに接触するため、作動棒5および弁体3の振動が抑制される。
【0064】
第3の実施形態では、複数の脚部63を、脚付ばね60Cの中心軸AX1まわりに不等間隔で配置するだけで、作動棒5および弁体3の防振特性が向上する。このため、脚付ばね60Cとして、公知の脚付ばねにおいて脚部配置を改良した脚付ばねが採用されてもよい。例えば、第1の実施形態における「脚付ばねの一例」において説明された脚付ばね60Aから、脚部63の配置だけが変更された脚付ばねが、第3の実施形態における脚付ばね60Cとして採用されてもよい。もちろん、第3の実施形態における脚付ばね60Cとして、新規に設計された脚付ばねが採用されてもよい。
【0065】
なお、第3の実施形態における脚付ばね60Cにおいて、複数の脚部63の弾性部分63aの形状(あるいは、複数の脚部63の全体形状)は、全て等しくてもよい。この場合、脚部の形状が共通化されているため、個々の脚部の寸法を別々に設計する必要がない。よって、脚付ばねの設計が複雑化しない。
【0066】
代替的に、第3の実施形態における脚付ばね60Cにおいて、複数の脚部63の弾性部分63aの形状は、互いに異なっていてもよい。例えば、第1脚部63−1の形状と、第2脚部63−2の形状とが互いに異なっていてもよい。この場合、第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とは互いに異なることとなる。第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とが互いに異なる場合、第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とが互いに等しい場合と比較して、偏摩耗が生じやすい。しかし、第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とを互いに異ならせることにより、脚付ばね60の中心軸AX1が、作動棒挿通孔27の中心軸AX2から、より顕著に外れる場合がある。よって、第3の実施形態において、第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とが互いに異なっていてもよい。
【0067】
第1脚部63−1の弾性定数と第2脚部63−2の弾性定数とを互いに異ならせるため、第1脚部63−1の幅と第2脚部63−2の幅とが互いに異なっていてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第1脚部63−1の長さと第2脚部63−2の長さとが互いに異なっていてもよい。1枚のシートから、脚付ばね60Cを作製する場合、複数の脚部間で、幅または長さを異ならせることは比較的容易である。代替的に、あるいは、付加的に、第1脚部63−1の厚さと第2脚部63−2の厚さとが互いに異なっていてもよい。
【0068】
(膨張弁1の適用例)
図10を参照して、膨張弁1の適用例について説明する。
図10は、実施形態における膨張弁1を冷媒循環システム100に適用した例を模式的に示す概略断面図である。
【0069】
図10に記載の例では、膨張弁1は、コンプレッサ101と、コンデンサ102と、エバポレータ104とに流体接続されている。
【0070】
また、膨張弁1は、弁本体2、弁体3、付勢部材4、作動棒5、防振ばね6、第1流路21、第2流路22に加え、パワーエレメント8と、戻り流路23とを備える。
【0071】
図10を参照して、コンプレッサ101で加圧された冷媒は、コンデンサ102で液化され、膨張弁1に送られる。また、膨張弁1で断熱膨張された冷媒はエバポレータ104に送り出され、エバポレータ104で、エバポレータの周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ104から戻る冷媒は、膨張弁1(より具体的には、戻り流路23)を通ってコンプレッサ101側へ戻される。
【0072】
膨張弁1には、コンデンサ102から高圧冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ102からの高圧冷媒は、第1流路21を介して、弁室VSに供給される。弁室VS内には、弁体3が、弁座20に対向して配置されている。また、弁体3は、弁体支持部材7によって支持されており、弁体支持部材7は、付勢部材4(例えば、コイルばね)によって、上向きに付勢されている。換言すれば、弁体3は、付勢部材4によって閉弁方向に付勢されている。付勢部材4は、弁体支持部材7と、付勢部材受け部材24との間に配置されている。
図10に記載の例では、付勢部材受け部材24は、弁本体2に装着されることにより弁室VSを封止するプラグである。
【0073】
弁体3が、弁座20に着座しているとき(換言すれば、膨張弁1が閉状態のとき)には、弁室VSの上流側の第1流路21と弁室VSの下流側の第2流路22とは、非連通状態である。他方、弁体3が、弁座20から離間しているとき(換言すれば、膨張弁1が開状態のとき)には、弁室VSに供給された冷媒は、第2流路22を通って、エバポレータ104へ送り出される。なお、膨張弁1の閉状態と開状態との間の切り換えは、パワーエレメント8に接続された作動棒5によって行われる。
【0074】
図10に記載の例では、パワーエレメント8は、膨張弁1の上端部に配置されている。パワーエレメント8は、上蓋部材81と、中央部に開口を有する受け部材82と、上蓋部材81と受け部材82との間に配置されたダイアフラムとを備える。上蓋部材81とダイアフラムとによって囲まれる第1空間には、作動ガスが充填される。
【0075】
ダイアフラムの下面は、ダイアフラム支持部材を介して作動棒に接続される。このため、第1空間内の作動ガスが液化されると、作動棒5は上方向に移動し、液化された作動ガスが気化されると、作動棒5は下方向に移動する。こうして、膨張弁1の開状態と閉状態との間の切り換えが行われる。
【0076】
ダイアフラムと受け部材82との間の第2空間は、戻り流路23と連通している。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度、圧力に応じて、第1空間内の作動ガスの相(気相、液相等)が変化し、作動棒5が駆動される。換言すれば、
図10に記載の膨張弁1では、エバポレータ104から膨張弁1に戻る冷媒の温度、圧力に応じて、膨張弁1からエバポレータ104に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0077】
なお、冷媒循環システム100に適用される膨張弁1は、第1の実施形態における膨張弁1Aであってもよいし、第2の実施形態における膨張弁1Bであってもよいし、第3の実施形態における膨張弁1Cであってもよい。
【0078】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の各実施の形態の自由な組み合わせが可能であり、各実施の形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、各実施の形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。