(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記棒状部材は、ボルトであり、前記パッドは、樹脂製であると共に接地面がゴム製であり、前記球体収容部の変形によっても前記外力を吸収することを特徴とする請求項1記載の測長装置。
前記アーム部は、前記スライド本体に固定される、前記スライド部のスライド方向に延在するアーム支持軸と、前記アーム支持軸に前記スライド方向にスライド可能に軸支されるワーク当接アームと、前記ワーク当接アームを先端方向に付勢するスプリングとを備え、
前記測長装置の重量をW、前記スプリングの許容最大加重をFmax、前記脚部と設置面との静止摩擦係数をμとすると、W≧1.5Fmax/μであることを特徴とする請求項2記載の測長装置。
前記ベース本体は、前記スライド部のスライド方向に平行であって、平面視において前記ベース本体の重心付近を通る直線上に複数の吊り金具取付部が形成されており、前記吊り金具取付部に取り付けられる複数の吊り金具を備えることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の測長装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る測長装置について説明する。本実施形態では、切断装置の傍に自立して設置された状態で、切断装置により所定の長さに切断されるワークの長さを計測する自立型の測長装置について説明する。
図1は本実施形態に係る測長装置の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るベース台の斜視図である。
図3は、本実施形態に係る脚の斜視図である。
【0012】
図4及び
図5は、本実施形態に係るスライド部の主要部の拡大斜視図であり、
図5では、一部の部材を透明にして示している。
図6乃至
図9は、スライド部の構成を示す図である。
図6(A)は、スライド部の側面図であり、
図6(B)は、
図6(A)のA−A線による水平端面図である。
【0013】
図7(A)は、スライド部の平面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のB−B線による鉛直端面図である。
図8(A)は、スライド部の平面図であり、
図8(B)は、
図8(A)のC−C線による鉛直端面図である。
図9(A)は、スライド部の平面図であり、
図9(B)は、
図9(A)のD−D線による鉛直端面図である。なお、
図6乃至
図9の端面図は、一部構成を概略的に示している。
【0014】
測長装置1は、設置床面上に設置されるベース台2と、ベース台2に対してスライド自在に設置されたスライド部3とを備えている。ベース台2は、設置場所から容易に移動しないように構成されており、ベース本体11と、ベース本体11の下部に設置された4つの脚20と、ベース本体11の上部に設置されたスライドレール25とを備えている。
【0015】
ベース本体11は、切断時にワークが置かれるテーブル13と、測長装置1をクレーン等で吊り下げるための吊り金具15と、下部に形成された脚20が連結固定される脚連結部18とを備えている。本実施形態では、ベース本体11を構成する鋼板を厚くして重量を重くすることで、設置床面に対して測長装置1が移動し難いように構成しており、詳細については後述する。
【0016】
テーブル13の上面には、スライドレール25のスライド方向と平行な直線上の二箇所に吊り金具取付部14として、めねじ穴が形成されている。
図2に示すように、この吊り金具取付部14には、吊り金具15をねじ込んで取り付け固定することができる。ここで、ベース台2の重心は、ベース本体11の平面視及び高さ方向の中心付近であり、吊り金具取付部14は、平面視においてベース台2の重心付近を通る直線上に設置されている。
【0017】
吊り金具14は、例えば、工場内で測長装置1を移動させる場合など、測長装置1をクレーンで吊り上げる際に使用され、クレーンに吊り下げられたベルトを吊り金具取付部14に取り付けられた吊り金具15に通すことで、測長装置1をクレーンで吊り上げることができる。
【0018】
本実施形態では、吊り金具取付部14が平面視においてベース台2の重心付近を通ると共にスライド方向に平行な直線上に設置されており、測長装置1を吊り上げる際に、測長装置1を安定した姿勢で吊り上げることができ、移動作業を安全且つ確実に行うことができる。なお、平面視において重心付近を通過する直線上に設置される吊り金具取付部14は、複数設置されていれば良く、三箇所以上に設置されていても良い。
【0019】
脚20は、いわゆる、アジャスターボルト(レベルアジャスター)であり、ベース本体11に連結される、下端に球体22が形成されたボルト21と、球体22を内部に収容する球体収容部24aを備えるパッド24とを備えている。ボルト21は、長尺のおねじであり、ベース本体11の脚連結部18に鉛直方向にねじ込まれている。
【0020】
ボルト21が鉛直軸回りに回転すると、ボルト21と脚連結部18のめねじ穴との螺合により、脚20とベース本体11とが鉛直方向においてねじ送りにより相対的に移動する。すなわち、ベース本体11の床からの高さを調整することができる。ボルト21及び球体22は金属製(ステンレス鋼製)であり、一体に形成されている。
【0021】
パッド24は樹脂(例えば、ガラス繊維強化ナイロン樹脂)製の略円板状であり、その中心部には上方に突出した球体収容部24aが形成されると共に、接地面である下面にはゴム(例えば、ニトリルゴム)製シート(図示せず)が貼付されている。ゴムの静止摩擦係数は大きいため、脚20の接地面がゴム製であれば、ベース本体11が床面に対して動きにくい。
【0022】
球体収容部24aは、上端が開口された中空の略円筒形状であり、内部の収容空間は、略球状である。球体収容部24aに球体が収容された場合、球体22の下から4分の3程度が球体収容部24aにより覆われる。
【0023】
球体収容部24aの開口部24bの直径は、球体22の直径よりも小さく、球体22を球体収容部24a内に収容する際には、樹脂製のパッド24の開口部24bを広げながら収容する。球体収容部24aの内部空間が略球状であり、球体22と球体収容部24aの内面との間には遊びもあるため、収容された球体22は、内部で回動可能である。
【0024】
よって、球体22を球体収容部24a内に収容してボルト21とパッド24とを連結した状態では、パッド24に対して鉛直状態のボルト21を傾斜させることが可能であり、ボルト21が開口部24bの縁に衝突しない範囲内で自由に傾斜させることができる。
【0025】
測長装置1を設置する工場床面は、通常、多少の凹凸や傾斜がある場合も多く、ベース台2を床に対してしっかりと固定設置するためには、ベース本体11の四隅に設置された4つの脚20において、ボルト21を回動させて適宜高さ調整を行う必要がある。何れかの脚20において高さ調整を行うと、ベース本体11が傾き、ボルト21とパッド24との傾斜角度も変わってくるため、アジャスターボルトを採用することで、脚20において、ベース本体11の傾きの変化を吸収することができる。
【0026】
また、脚20においては、ベース本体11に横方向(水平方向)の力が作用すると、球体収容部24a内に収容された球体22が若干中心位置からずれて移動するが、力が作用しなくなった後に元の中心位置に戻るため、測長時にワーク当接アーム65がワークや切断刃に衝突し、ベース本体11に外力が作用した場合でも、ベース本体11が脚20に対して一時的に移動するだけであり、元の位置に戻れば正確な測長が可能となる。
【0027】
より詳細には、ベース本体11に横方向の力が作用した場合には、ベース本体11に固定されたボルト21が横方向に動こうとするのに対して、床面に設置されたパッド24が静止摩擦力によりその場所に留まろうとする。
【0028】
このとき、球体22は、パッド24に対して、樹脂製の球体収容部24aの部分を若干変形させつつ、球体収容部24aの内側斜面(球面)に沿って上昇しながら横方向に相対的に移動する。その後、横方向の力が作用しなくなると、自重と球体収容部24aの復元力により球体22は球体収容部24aの中心位置に戻る。
【0029】
スライドレール25は、テーブル13の一方の長尺縁部に長尺方向に延在するように固定設置されている。スライドレール25のスライド方向の両側面には、スライド方向に伸びる一対のスライド溝27が形成されている。スライドレール25のスライド方向端部には、スライド部3がスライドレール25の末端から離脱するのを防ぐためのスライドストッパー28が設置されている。
【0030】
スライド部3は、スライド本体30と、仮固定体40と、スライド本体30と仮固定体40とのスライド方向の相対位置を微調整する微調整機構50と、アーム部60と、デジタル測長器80とを備え、スライド本体30を介してスライドレール25上にスライド可能に設置されている。
【0031】
スライド本体30は、筺体31と、筐体31をスライドレール25に対して固定するための第一クランプ35と、筐体31の下面に固定されたリニアガイド39とを備える。筺体31は、仮固定体40を収容するための囲み空間341が形成されている。
図6(B)は、囲み空間341の部分の水平断面図である。筐体31の囲み空間341に面する部分には、後述する微調整機構50の送りねじ51が貫通するおねじ挿通穴32が形成されている。おねじ挿通穴32の内径は、後述する送りねじ51の軸外径よりも大きい。
【0032】
また、筐体31は、おねじ挿通穴32の囲み空間341と逆側の外側入口部分に、送りねじ51に形成されたフランジ53を嵌め込むためのフランジ溝321が形成されている。筐体31は、送りねじ51のフランジ53をフランジ溝321に嵌め込んだ状態で外側から押さえ付けて固定するためのフランジ固定板33を備えている。筐体31は、後述するアーム部60を保持するためのアーム保持部342を備えている。
【0033】
第一クランプ35は、クランプレバー36と、挟持体37と、クランプ軸38とを備え、筐体31に固定されて設置されている。
図7(B)は、第一クランプ35が設置された部分のスライド方向、すなわち測長方向に垂直な鉛直断面図である。クランプ軸38は、スライド方向と直交する方向に配置されている。クランプレバー36は、クランプ軸38の一端に固定設置されており、クランプレバー36をクランプ軸38の軸周りに回転させることで、クランプ軸38をその軸周りに回転させることができる。
【0034】
挟持体37は、クランプ軸38に軸支され、スライドレール25を挟み込むように配置された一対のブロックから構成されている。クランプ軸38にはネジ溝が刻まれており、回動させることで挟持体37を構成する一対のブロックの間隔を調整することができる。
【0035】
よって、第一クランプ35は、クランプレバー36を操作することで、スライド本体30をスライドレール25に対して固定する固定状態と、スライド本体30をスライドレール25に対してスライド自在に解放する固定解除状態とを切り換えることができる。
図7(B)に示すように、固定状態では、挟持体37はスライドレール25を挟み込んで挟持しており、固定解除状態では、挟持体37はスライドレール25から退避して離れている。
【0036】
リニアガイド39は、筐体31の下面に固定されており、スライドレール25に対して滑らかにスライド可能に取り付けられている。
図8(B)は、リニアガイド39が設置された部分のスライド方向(測長方向)に垂直な鉛直断面図である。
【0037】
仮固定体40は、スライド本体30の囲み空間341に配置される仮固定ブロック41と、仮固定ブロック41をスライドレールに対して固定するための仮固定クランプ45とを備える。仮固定ブロック41は、囲み空間341内において、スライド本体30に対してスライド方向に相対的に移動可能な形状、サイズである。仮固定ブロック41には、後述する微調整機構50の送りねじ51がねじ込まれる、スライド方向に延在するめねじ穴42が形成されている。
【0038】
仮固定クランプ45は、クランプレバー46と、挟持体47と、クランプ軸48とを備え、仮固定ブロック41の下面に固定されて設置されている。
図9(B)は、仮固定クランプ45が設置された部分のスライド方向(測長方向)に垂直な鉛直断面図である。クランプ軸48は、スライド方向と直交する方向に配置されている。
【0039】
クランプレバー46は、クランプ軸48の一端に固定設置されており、クランプ軸48に対して略平行に寝かせて倒した状態と、略垂直に起こした状態とを切り換えることができる。クランプレバー46を倒したり起こしたりすることで、クランプ軸48をその軸方向に往復動させることができる。
【0040】
挟持体47は、クランプ軸48に軸支され、スライドレール25を挟み込むように配置された一対のブロックから構成されている。クランプ軸48をその軸方向にスライドさせることで、挟持体47を構成する一対のブロックの間隔を調整することができる。
【0041】
よって、仮固定クランプ45は、クランプレバー46を操作することで、仮固定体40をスライドレール25に対して固定する固定状態と、仮固定体40をスライドレール25に対してスライド自在に解放する固定解除状態とを切り換えることができる。
図9(B)に示すように、固定状態では、挟持体47はスライドレール25を挟み込んで挟持しており、固定解除状態では、挟持体47はスライドレール25から退避して離れている。なお、仮固定クランプ45は、第一固定クランプ35よりも締付力(固定力)の弱いものが使用されている。
【0042】
微調整機構50は、スライド本体30(筐体31)と仮固定体40(仮固定ブロック41)を相対的に移動可能に連結するねじ送り機構であり、おねじである送りねじ51を備えている。送りねじ51は、頭部に設置された取っ手52と、頭部近くに形成されたフランジ53と、先端側に形成されたおねじ部54とを備えている(
図6(B)等参照)。
【0043】
送りねじ51は、フランジ53が筐体31のおねじ挿通穴32の入口に形成されたフランジ溝321に嵌まった状態で、フランジ固定板33によりフランジ53がフランジ溝321から抜けないように押さえ付けられている。よって、送りねじ51は、筐体31に対して、スライド方向への移動が制限され、送りねじ51と筐体31とのスライド方向における相対位置は固定されている。
【0044】
送りねじ51のおねじ部54は、めねじ穴42にねじ込まれており、送りねじ51が軸周りに回転すると、おねじ部54とめねじ穴42との螺合により、送りねじ51と仮固定ブロック41とが、スライド方向においてねじ送りにより相対的に移動する。
【0045】
上述したように、スライド方向において、送りねじ51と筐体31とは相対的に固定されている。よって、送りねじ51が軸周りに回転すると、スライド方向において、スライド本体30と仮固定体40とが相対的に移動することになる。
【0046】
本実施形態では、送りねじ51が一回転すると、送りねじ51と筐体31とがスライド方向において0.8mm移動するように構成されており、送りねじ51を回転させることで、スライド本体30と仮固定体40との相対的な位置を微調整することができる。
【0047】
ここで、微調整機構50によりスライド位置を微調整しながら、スライド本体30をスライドレールの所望の位置に位置決め固定する手順について詳細に説明する。
【0048】
まず、仮固定工程として、スライド部3をスライドレール25の所望の位置の近傍に仮固定する。具体的には、デジタル測長器80の表示部82の測定値を確認しながら、リニアガイド39を介してスライド本体30をスライドレール25に対しておおよそ所望の長さとなる位置まで手作業でスライドさせる。
【0049】
所望の位置の近傍までスライド本体30を移動させると、仮固定体40の仮固定クランプ45を閉じて、仮固定体40をスライドレール25に対してしっかりと固定する。このとき、仮固定体40は、微調整機構50を介してスライド本体30と連結されているため、スライド本体30もスライドレール25に対して間接的に仮固定された状態となる。
【0050】
次に、微調整工程として、微調整機構50によりスライド本体30のスライドレール25に対するスライド位置を微調整し、所望のスライド位置に正確に位置決めする。具体的には、再度、表示部82の測定値を確認しながら、取っ手52を回すことで、ねじ送り機構によりスライドレール25に固定された仮固定体40に対して、スライド本体30をスライド方向、すなわち、測長方向に微少距離移動させる。
【0051】
そして、表示部82の測定値が所望の長さに一致した場所でネジ送りによる微調整を終了し、第一クランプ35を閉じて、スライド本体30をスライドレール25に対して固定させる。これにより、スライド本体30を所望の位置に正確にしっかりと固定することができる。
【0052】
このように、仮固定工程と微調整工程とを備える本実施形態によれば、仮固定工程では、手動でスライド部3を素早く移動させ、その後、微調整工程において、スライド位置の微調整を行うことで、全体として短時間で正確な位置決めをすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、仮固定体40は、スライド本体30の筺体31の中央付近に形成された囲み空間341内に配置されている(
図4、
図6(B)等参照)。このため、微調整機構50によって仮固定体40とスライド本体30とがスライド方向において相対位置を微調整される際、仮固定体40の相対的な移動範囲は、囲み空間341内に制限される。これにより、送りねじ51の回しすぎによって送りねじ51がめねじ穴42から外れてしまうのを防止することができる。
【0054】
もちろん、仮固定体40の設置場所は、微調整機構50によってスライド本体30とスライド可能に連結可能な位置であれば適宜変更可能であり、例えば、スライド本体30の筐体31と隣り合わせに設置してもよい。
【0055】
また、微調整機構50として、ねじ送り機構以外の構造を採用してもよく、スライド方向に沿ってスライド本体30と仮固定体40との相対的な位置関係を微調整できるものであれば、例えば、ラック&ピニオン式であるとか、押しネジ式の構造等を採ることができる。
【0056】
続いて、アーム部60は、スライド本体30のアーム保持部342に固定されるアーム支持軸61と、スプリング63と、ワーク当接アーム65とを備える。ワークを測長する際には、ワーク当接アーム65の先端部分が切断装置やワークに接触する。
【0057】
ワーク当接アーム65は、スライド方向に延在するアーム支持軸61によってスライド方向にスライド可能に軸支されている。スプリング63は、アーム支持軸61に同軸に設置され、ワーク当接アーム65をその先端方向に付勢している。
【0058】
よって、ワーク当接アーム65の先端がワーク等に衝突して、スライド方向において根元側に移動する方向の力を受けた際には、ワーク当接アーム65は、スプリング63の弾性力に抗して根元側に若干移動することが可能であり(本実施形態では、10mm程度)、この力が解除されると、スプリング63の弾性力によりワーク当接アーム65は元の位置に戻る。
【0059】
このように、ワーク当接アーム65がワーク等の他の部材に衝突する際の衝撃力や、ワークに接触している最中にワークを介して間接的にワーク当接アーム65に作用する力を、スプリング63の弾性力に抗してワーク当接アーム65をスライド方向に移動させて逃がすことができるので、ワーク当接アーム65が曲がって破損したり、ワーク当接アーム65が取り付けられるスライド本体30等が破損したりするのを防ぐことができる。
【0060】
なお、ワーク当接アーム65に作用する力をスプリング63によって吸収することで、スライド本体30を介してベース台2に反力が作用することになるが、本実施形態では、脚20にアジャスターボルトを採用すると共に、後述するように測長装置1の重量を重くすることで、ベース台2が設置床面に対して動いてしまうのを防止している。
【0061】
デジタル測長器80は、スライド本体30のスライドレール25に対するスライド距離を測定する測距部81(図示せず)と、測距部81が測定した測定値を表示する表示部82とを備える。測定値は、作業者がデジタル測長器80を操作することにより、スライド距離を0にリセットすることができる。
【0062】
測長装置1は、ワークの一端から測定対象であるワークの所定の部分までの距離を測定するためのものであり、測距部81は、スライド距離がリセットされた場所を原点として、この原点からの距離を測定値として出力するように構成されている。
【0063】
測距部81は、原点である加工位置から離れる方向(
図1において略右方向)を正方向として計測しており、原点からのスライド部3の総スライド距離ではなく、スライド部3が現在位置する場所の原点からの距離を表示するよう構成されている。
【0064】
ここで、本実施形態に係る測長装置1は、工場において切断機等の加工装置の傍の床上にいったん設置された後は、多少の力が外部から作用した程度では動いてしまうことのない自立型を実現するために、所定の重量を有するように構成されている。
【0065】
本実施形態では、ワーク当接アーム65がワーク等に当接し、スプリング63の弾性力に抗してスライド方向にスライドする際に、反力よってベース台2が動かないように設定している。具体的には、ワーク当接アーム65にスプリング63の最大許容荷重相当の力が作用した場合であっても、ベース台2が設置床に対して移動してしまわないように構成している。
【0066】
より詳細には、スプリング63の許容最大荷重をFmax、ベース台2の脚20と設置面(工場床面)との静止摩擦係数をμとし、測長装置1全体の質量をWとすると、W<Fmax/μであれば、許容最大荷重がスプリング63に作用した場合に、ベース台2が床面に対して移動してしまう。
【0067】
本実施形態では、安全マージンを考慮して、測長装置1の重量Wは、W≧1.5Fmax/μとするのが望ましい。具体的には、本実施形態では、Fmax=50kg、μ=0.53であり、Wを141kg以上としている。
【0068】
なお、本実施形態に係る静止摩擦係数μは、金属とゴム(潤滑油をつけた場合)との静止摩擦係数0.53を採用している。これは、脚20の接地面であるパッド24の下面がゴム製であると共に、工場床面は通常塗装済みのモルタル製床であり、両者の間の摩擦状態が金属−ゴム(潤滑油をつけた場合)の摩擦状態に類似しているという経験則からである。
【0069】
以上、測長装置1の構成について説明したが、続いて、測長装置1によりワークの長さを計測しながら、切断装置9によりワークを所定の長さに切り出す際の手順について説明する。
図10は、本実施形態に係る測長装置の使用状態を示す斜視図である。
【0070】
本実施形態では、
図10に示すように、測長装置1を切断装置9と組み合わせて使用しており、測長時には、測長装置1を切断装置9の傍に設置して使用する。測長装置1により測長することで、切断装置9は、所望の切断位置(加工位置)において所望の長さでワークを切り出すことができる。
【0071】
具体的には、ワークの設置前に、アーム部60のワークに当接する先端部分を加工位置である切断位置(切断装置9の切断刃91の側面に接触する位置)に位置させたうえで、デジタル測長器80の測定値を0にリセットする。
【0072】
続いて、ワークを所望の長さで切り出せるように、スライド部3を切断位置から所望の距離だけ離れるようにスライドさせる。このとき、スライド部3をスライドさせると、デジタル測長器80の表示部82にリセット位置(切断位置)からの移動距離が表示される。
【0073】
そして、表示部82の測定値が所望の長さの値となる位置でスライド部3を固定する。そうすると、切断位置からワーク当接アーム65の先端部分までの距離が所望の長さになるため、一端がワーク当接アーム65の先端に接するようにワークを切断位置に設置すると、ワークを所望の長さで切断することができる。
【0074】
以上、本実施形態に係る測長装置1について詳細に説明したが、測長装置1によれば、切断装置9等の加工装置に固定する必要がなく、加工装置の傍において床面上に自立して設置することができる。加工装置に固定する必要のない自立型の測長装置1であれば、加工装置の形状に制限されることなく、既に工場に設置されている様々なメーカーの加工装置に対しても後付けで組み合わせて使用することができる。
【0075】
また、測長装置1においては、アーム部60がワークに当接してスプリング63が接触による衝撃力を吸収する際に、ベース本体11に作用する反力を、脚20のパッド24の球体収容部24aが変形したり、ボルト21とパッド24との連結部分において球体22と球体収容部24aとが相対的に移動したりすることで吸収することができ、測長装置1が動いたりすることなく、安定して測長を行うことができる。
【0076】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施形態に係る測長装置を構成する各部材の形状やサイズは適宜変更可能である。
【0077】
また、本実施形態では、パッドの材料として樹脂を採用しているが、接地面が樹脂製であればパッド本体は金属製であっても良い。但し、金属製のパッドの場合には、球体収容部がほとんど変形しないため、ベース本体に外力が作用した場合には、球体と球体収容部の内面との間の遊びの範囲内で球体と球体収容部とが相対的に移動して外力を吸収する。
【0078】
また、本実施形態では、パッドの接地面の材料としてゴムを採用しているが、ある程度の静止摩擦係数を有する樹脂であれば、ゴム以外の樹脂を採用しても良い。
【0079】
また、本実施形態では、脚として、アジャスターボルトを採用しているが、ベース本体に対して高さ調整可能な下端に球体が形成された棒状部材と、球体を収容して受ける球体収容部が形成された、接地面が樹脂製のパッドとを備える脚であれば、適宜他の構造の脚を採用することができる。