特許第6754144号(P6754144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754144
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】手術支援ロボット用術具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20200831BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20200831BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B34/30
   B25J17/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-37652(P2019-37652)
(22)【出願日】2019年3月1日
(65)【公開番号】特開2020-137935(P2020-137935A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】滝川 恭平
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−332875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0079884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 34/30−34/37
B25J 17/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する状に形成された索状体と、
前記索状体の周囲を覆う形状を有するとともに導電性を有する外殻部と、
前記索状体および前記外殻部の間の一部に配置され、前記索状体および前記外殻部よりも絶縁性の高い材料から形成された第1絶縁部と、
前記索状体および前記外殻部の間における前記第1絶縁部に隣接する位置に配置され、前記索状体および前記外殻部よりも絶縁性の高い材料から形成された第2絶縁部と、
前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方から他方に向かって突出するとともに、内部に前記索状体が挿通される凸部と、
前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に形成され、前記凸部が挿入される凹部と、
前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に前記外殻部と離隔して配置される導電性を有するものであって、端部が接続された前記索状体の張力を用いて屈曲可能とされた先端部と、
前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の内部に配置された索状の部材であって、外部から前記先端部へ電力を供給する電力供給ケーブルと、
が設けられていることを特徴とする手術支援ロボット用術具。
【請求項2】
前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方には、前記凸部が挿入される凹状の挿入部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の手術支援ロボット用術具。
【請求項3】
前記凸部は、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方と一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の手術支援ロボット用術具。
【請求項4】
前記凹部は、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に設けられる孔であって、内部に前記索状体が配置される貫通孔であることを特徴とする請求項2または3に記載の手術支援ロボット用術具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援ロボット用術具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術などにおいて、電磁石を用いて術具を開閉させて、病変部を改変または粉砕させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。その他に、高周波電流を用いて切開や止血を行う器具として種々の形式のものが提案されている(例えば、特許文献2および3参照。)。切開および止血を行う器具として、例えば、電気メスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−540954号公報
【特許文献2】特表2017−516628号公報
【特許文献3】特表2007−537784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では電流が導通するリードが設けられ、リードを介して供給される電流により術具が開閉されている。特許文献2および3では、供給される高周波電流が切開箇所に流れることにより、当該箇所の細胞を加熱することにより切開が行われる。また、熱により切開箇所に隣接する箇所の止血も行われる。
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1から3に記載の技術は、手術支援ロボットに用いられる術具に用いることが難しいという問題があった。具体的には、術具に供給される高周波電流等が術具から手術支援ロボットに流れると、手術支援ロボットに搭載されているセンサ機器や制御機器の故障や誤作動の原因になる可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、故障や誤作動のリスク低減を図ることができる手術支援ロボット用術具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の手術支援ロボット用術具は、導電性を有する策状に形成された索状体と、前記索状体の周囲を覆う形状を有するとともに導電性を有する外殻部と、前記索状体および前記外殻部の間の一部に配置され、前記索状体および前記外殻部よりも絶縁性の高い材料から形成された第1絶縁部と、前記索状体および前記外殻部の間における前記第1絶縁部に隣接する位置に配置され、前記索状体および前記外殻部よりも絶縁性の高い材料から形成された第2絶縁部と、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方から他方に向かって突出するとともに、内部に索状体が挿通される凸部と、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に形成され、前記凸部が挿入される凹部と、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に前記外殻部と離隔して配置される導電性を有するものであって、端部が接続された前記索状体の張力を用いて屈曲可能とされた先端部と、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の内部に配置された索状の部材であって、外部から前記先端部へ電力を供給する電力供給ケーブルと、が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の手術支援ロボット用術具によれば、第1絶縁部および第2絶縁部の一方から他方に突出すると共に内部に索状体が挿通された凸部を、他方に形成された凹部に挿入し、絶縁に必要な沿面距離を設けることで、先端部に供給された電力が、索状体を経由して外殻部に流れることを抑制する。例えば、第1絶縁部および第2絶縁部の接触面が平面状である場合と比較して、索状体から外殻部までの沿面距離を長くすることができる。先端部に供給される高周波電流の電圧に基づいた沿面距離より長くすることで、他方と凸部との間を経路として電力が索状体から外殻部へ流れることを防ぐことができる。
【0009】
その結果、外殻部から手術支援ロボットへ電流が流れることを抑制でき、故障や誤作動のリスク低減を図ることが可能となる。ここで沿面距離とは、空気よりも絶縁性が高い絶縁部の面に沿った経路の長さ、言い換えると、絶縁部と比較して電力が流れやすい経路の長さである。
【0010】
上記発明においては、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方には、前記凸部が挿入される凹状の挿入部が設けられていることが好ましい。
このように、第1絶縁部および第2絶縁部の一方に凸部が挿入される挿入部を設けることにより、一方と凸部とを別体とすることができる。例えば、一方と凸部とを一体に形成する場合と比較して、一方および凸部の作成が容易となり、小型化や細径化を図りやすくなる。
【0011】
また、一方に設けられた挿入部に凸部を挿入することにより、一方に対して凸部を挿入させない場合と比較して、沿面距離を長くしやすくなる。そのため、一方と凸部との間を経路として電流が索状体から外殻部へ流れにくくなる。
【0012】
上記発明においては、前記凸部は、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の一方と一体に形成されていることが好ましい。
このように凸部と第1絶縁部および第2絶縁部の一方とを一体に形成することにより、凸部と一方とを別体に形成する場合と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0013】
上記発明においては、前記凹部は、前記第1絶縁部および前記第2絶縁部の他方に設けられる孔であって、内部に前記索状体が配置される貫通孔であることが好ましい。
このように第1絶縁部および第2絶縁部の他方に設けられた索状体が配置される貫通孔を凹部として用いることにより、貫通孔と凹部とを別々に形成する必要がなくなる。また、他方の小型化や細径化を図りやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の手術支援ロボット用術具によれば、第1絶縁部および第2絶縁部の一方から他方に突出すると共に内部に索状体が挿通された凸部を、他方に形成された凹部に挿入することにより、外殻部から手術支援ロボットへ電流が流れることを抑制でき、故障や誤作動のリスク低減を図りやすくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る術具の構成を説明する摸式断面図である。
図2図1の術具本体の構成を説明する摸式断面図である。
図3図1の第1絶縁部、第2絶縁部および絶縁パイプ部の構成を説明する摸式断面図である。
図4図1の駆動ワイヤの構成を説明する摸式断面図である。
図5図1の空気圧アクチュエータの構成を説明する摸式断面図である。
図6】術具本体とシャフトとの間の絶縁を説明する模式断面図である。
図7】駆動ワイヤにおける絶縁を説明する模式断面図である。
図8】駆動ワイヤとシャフトとの間の絶縁を説明する模式断面図である。
図9】従来の駆動ワイヤとシャフトとの間の絶縁を説明する模式断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る術具の構成を説明する模式断面図である。
図11図10の第1絶縁部および第2絶縁部の構成を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態に係る手術支援ロボット用術具(以下「術具」とも表記する。)について、図1から図9を参照しながら説明する。本実施形態の術具1は、内視鏡手術などの手術に用いられる手術支援ロボットに適用されるものである。
【0017】
術具1には、図1に示すように、術具1の外形を構成するシャフト(外殻部)10と、術具本体(先端部)20と、第1絶縁部30と、第2絶縁部40と、絶縁パイプ部(凸部)50と、術具本体20に高周波電流を供給する電力供給ケーブル60と、術具本体20を操作する駆動力を伝達する駆動ワイヤ(索状体)70と、が主に設けられている。
【0018】
なお、図1では、理解を容易にするために術具1における長さの比率を適宜変更して図示している。具体的には、図中のX軸方向の長さを実際の長さよりも短く、Y軸方向およびZ軸方向の長さを実際の長さよりも長く図示している。
【0019】
シャフト10は、術具本体20および第1絶縁部30とともに術具1の外形を構成するものである。シャフト10は、術具1の基部であるカートリッジ80と第1絶縁部30の間に配置されるとともに、駆動ワイヤ70の周囲を覆う筒状、より具体的には円筒状に形成された部材である。本実施形態ではシャフト10がX軸方向に延びて配置されている例に適用して説明する。
【0020】
また、シャフト10は導電性を有する材料から形成されたものである。シャフト10を形成する導電性を有する材料としては、クロムを含む鋼またはクロムとニッケルを含む鋼であるステンレス鋼(例えば、SUS304(JIS規格の記号))、アルミニウム、あるいは、アルミニウムを含む合金等の金属材料を例示することができる。
【0021】
術具本体20は術具1における先端(X軸方向の正側の端部)に配置されるものであり、内視鏡手術などの手術に用いられるものである。本実施形態では、高周波電流の給電が可能な鉗子である例に適用して説明する。
【0022】
術具本体20は、第1絶縁部30と隣接する位置に配置されるものである。言い換えると、術具本体20とシャフト10との間に第1絶縁部30が配置されているものであり、術具本体20はシャフト10と隔離して配置されるものである。
【0023】
術具本体20には、図1および図2に示すように、関節部21と、鉗子部24と、カバー26と、が主に設けられている。関節部21および鉗子部24は、導電性を有する材料から形成されたものである。術具本体20を形成する導電性を有する材料としては、クロムを含む鋼またはクロムとニッケルを含む鋼であるステンレス鋼(例えば、SUS304(JIS規格の記号))、アルミニウム、あるいは、アルミニウムを含む合金等の金属材料を例示することができる。
【0024】
関節部21は、第1絶縁部30に隣接して配置される柱状、より具体的には円柱状の外形を有する部材であり、鉗子部24を支持するものである。関節部21は、駆動ワイヤ(図示せず)の張力を用いて屈曲可能な公知の構成を有するものである。本実施形態では、Y軸方向に延びる回転軸線まわりの屈曲と、Z軸方向に延びる回転軸線まわりの屈曲が可能な例に適用して説明する。
【0025】
関節部21には、電力供給ケーブル60が挿通される関節ケーブル孔22と、駆動ワイヤ70が配置される関節ワイヤ配置孔23と、が少なくとも設けられている。関節ケーブル孔22は、柱状に延びる関節部21の中央にX軸方向に向かって延びて形成された貫通孔である。関節ケーブル孔22は、挿通される電力供給ケーブル60よりも径が大きく形成されている。
【0026】
関節ワイヤ配置孔23は、関節ケーブル孔22を中心とした仮想的な円周上に間隔をあけて設けられた貫通孔である。関節ワイヤ配置孔23は、後述する一対の把持部25の開閉に用いられる駆動ワイヤ70と、関節部21の屈曲に用いられる駆動ワイヤ(図示せず)が挿通されるものである。なお両者を総称する場合には「駆動ワイヤ70など」と表記する。
【0027】
また関節ワイヤ配置孔23のうち、関節部21の屈曲に用いられる駆動ワイヤ(図示せず)が挿通されるものは、当該駆動ワイヤの張力が関節部21に伝達可能な係止構造などの公知の構成を有している。
【0028】
鉗子部24は、関節部21により支持されるものであり、内視鏡手術などの手術に用いられるものである。鉗子部24は、電力供給ケーブル60と導電可能に接続され、電力供給ケーブル60を介して高周波電流が供給されるものである。本実施形態では、鉗子部24がモノポーラ(単極)タイプのものである例に適用して説明する。
【0029】
また、鉗子部24には、開閉する一対の把持部25が設けられている。一対の把持部25が駆動ワイヤ70により開閉する機構としては公知の機構を用いることができる。当該機構としては、一対の把持部25の一方に駆動ワイヤ70が巻かれ、他方が固定されている機構であってもよいし、一対の把持部25の一方および他方のそれぞれに駆動ワイヤ70が巻かれ、把持部25の一方および他方が開閉駆動される機構であってもよい。
【0030】
カバー26は、円筒状に形成された部材であり、関節部21および鉗子部24の周囲を囲う部材である。カバー26における先端側(X軸方向の正側)の開口は、一対の把持部25が突出可能とされている。カバー26は、第1絶縁部30は、シャフト10、電力供給ケーブル60および駆動ワイヤ70などよりも絶縁性の高い材料、例えば、内視鏡外科手術などで使用可能なゴムなどの柔軟性を有する材料から形成されている。
【0031】
第1絶縁部30は、図1および図3に示すように、術具本体20側の領域が術具1の外形を構成し、カートリッジ80側の領域はシャフト10の内部に配置されるものである。また、術具本体20とシャフト10とをX軸方向に間隔をあけて配置させるものである。第1絶縁部30は、シャフト10、電力供給ケーブル60および駆動ワイヤ70などよりも絶縁性の高い材料から形成された柱状、より具体的には円柱状の外形を有する部材である。絶縁性を有する材料としてはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂材料を例示することができる。
【0032】
第1絶縁部30には、電力供給ケーブル60が挿通される第1ケーブル孔31と、駆動ワイヤ70などが配置される第1ワイヤ配置孔32と、後述する絶縁パイプ部50が配置される挿入部33と、が少なくとも設けられている。
【0033】
第1ケーブル孔31は、柱状に延びる第1絶縁部30の中央にX軸方向に向かって延びて形成された貫通孔であり、関節ケーブル孔22と連通する貫通孔である。第1ケーブル孔31は、挿通される電力供給ケーブル60と同じ径、または、径が大きく形成されている。
【0034】
第1ワイヤ配置孔32は、第1絶縁部30における術具本体20側に、第1ケーブル孔31を中心とした仮想的な円周上に間隔をあけて設けられた貫通孔であり、関節ワイヤ配置孔23と連通する貫通孔である。
【0035】
挿入部33は、絶縁パイプ部50の一部が挿入される凹み、または、底面を有する穴である。挿入部33は、第1絶縁部30における第2絶縁部40側に、第1ケーブル孔31を中心とした仮想的な円周上に間隔をあけて設けられ、第1ワイヤ配置孔32と連通するものである。
【0036】
第2絶縁部40は、図1および図3に示すように、シャフト10の内部に配置される柱状、より具体的には円柱状の外形を有するものである。また第2絶縁部40は、術具本体20側の端部が第1絶縁部30と当接して配置されている。第2絶縁部40は、シャフト10、電力供給ケーブル60および駆動ワイヤ70などよりも絶縁性の高い材料から形成された柱状に形成された部材である。絶縁性を有する材料としてはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(ぺルフルオロアルコキシアルカン)などの樹脂材料を例示することができる。
【0037】
第2絶縁部40には、電力供給ケーブル60が挿通される第2ケーブル孔41と、駆動ワイヤ70などが配置される第2ワイヤ貫通孔(凹部)42と、が少なくとも設けられている。言い換えると、第2絶縁部40は、第2ケーブル孔41や第2ワイヤ貫通孔42などの貫通孔が複数設けられたルーメンチューブなどの多孔チューブである。
【0038】
第2ケーブル孔41は、柱状に延びる第2絶縁部40の中央にX軸方向に向かって延びて形成された貫通孔であり、第1ケーブル孔31と連通する貫通孔である。第2ケーブル孔41は、挿通される電力供給ケーブル60と同じ径、または、径が大きく形成されている。
【0039】
第2ワイヤ貫通孔42は、第2ケーブル孔41を中心とした仮想的な円周上に間隔をあけて設けられた貫通孔であり、挿入部33と連通する貫通孔である。第2ワイヤ貫通孔42は、内部に駆動ワイヤ70などが配置されるものである。また第2ワイヤ貫通孔42は、絶縁パイプ部50の他の一部が挿入される孔でもある。
【0040】
絶縁パイプ部50は、図1および図3に示すように、柱状に形成されると共に内部に駆動ワイヤ70が挿通される貫通孔51が形成されたものである。また、絶縁パイプ部50は、第1絶縁部30側が挿入部33に挿入され、第2絶縁部40側が第2ワイヤ貫通孔42に挿入されるものである。
【0041】
電力供給ケーブル60は、図1に示すように、電源65から術具本体20へ高周波電流を供給するものである。電力供給ケーブル60は索状に形成されたものであり、関節ケーブル孔22、第1ケーブル孔31、および、第2ケーブル孔41の内部をX軸方向に沿って延びて配置されたものである。電力供給ケーブル60としては、高周波電流を供給可能なものであればよく、その構造や材料について特に限定するものではない。
【0042】
電力供給ケーブル60における先端側(X軸方向の正側)の端部は、術具本体20の鉗子部24に高周波電流が導電可能に接続されている。電力供給ケーブル60における後端側(X軸方向の負側)の端部は、高周波電流を供給する電源65に接続されている。
【0043】
本実施形態では、術具1が取り付けられるカートリッジ80に電源65が配置される例に適用して説明するが、電源65が配置される位置を限定するものではなく、カートリッジ80以外の場所に電源65が配置されてもよい。また、電源65としては、高周波電流を供給できるものであればよく、その形式や構成などを限定するものではない。
【0044】
駆動ワイヤ70は、図1に示すように、術具本体20の一対の把持部25を開閉させる駆動力を伝達するものである。駆動ワイヤ70は索状に形成されたものであり、関節ワイヤ配置孔23、第1ワイヤ配置孔32、貫通孔51、および、第2ワイヤ貫通孔42の内部をX軸方向に沿って延びて配置されたものである。
【0045】
駆動ワイヤ70には、図4に示すように、撚り線ワイヤ71、第1伝達ロッド72、線状絶縁体73、および、第2伝達ロッド74が少なくとも設けられている。撚り線ワイヤ71は導電性を有する材料、例えば金属材料から形成された複数の細線を撚り合わせて形成されたものである。撚り線ワイヤ71は第1伝達ロッド72と術具本体20との間に配置され、伝達されてきた駆動力を把持部25に伝達するものである。
【0046】
具体的には撚り線ワイヤ71は、第2ワイヤ貫通孔42に配置された第1伝達ロッド72に端部が固定され、第2ワイヤ貫通孔42の内部を術具本体20に向かって延びて配置されている。さらに撚り線ワイヤ71は、貫通孔51、第1ワイヤ配置孔32、および、関節ワイヤ配置孔23の内部を延びて配置されるとともに、X軸方向に沿って移動可能に配置されている。
【0047】
第1伝達ロッド72は導電性を有する材料、例えば金属材料を用いて円筒状に形成された部材である。第1伝達ロッド72は、第2ワイヤ貫通孔42の内部であって、撚り線ワイヤ71と線状絶縁体73との間に配置された部材である。第1伝達ロッド72は、第2ワイヤ貫通孔42の内部をX軸方向に沿って移動可能に配置されている。第1伝達ロッド72の術具本体20側の端部には撚り線ワイヤ71の端部が固定され、第1伝達ロッド72のカートリッジ80側の端部には線状絶縁体73の端部が固定されている。
【0048】
線状絶縁体73は、絶縁性を有する材料から索状に形成されたものであり、言い換えると合成繊維を撚り合わせて形成されたものである。線状絶縁体73は、高周波電流が駆動ワイヤ70を介してカートリッジ80に流れることを防止または抑制するものである。絶縁性を有する材料としてはポリアリレートなどの材料を例示することができる。
【0049】
第2伝達ロッド74は導電性を有する材料、例えば金属材料を用いて円筒状に形成された部材である。第2伝達ロッド74は、第2ワイヤ貫通孔42の内部であって、線状絶縁体73と空気圧アクチュエータ81との間に配置された部材である。第2伝達ロッド74は、第2ワイヤ貫通孔42の内部をX軸方向に沿って移動可能に配置されている。第2伝達ロッド74の術具本体20側の端部には線状絶縁体73の端部が固定され、第2伝達ロッド74のカートリッジ80側の端部は空気圧アクチュエータ81と動力の伝達が可能に接続されている。
【0050】
駆動ワイヤ70における後端側(X軸方向の負側)の端部、言い換えると第2伝達ロッド74の端部は、図1および図5に示すように、駆動力を発生させる空気圧アクチュエータ81が接続されている。なお図1では、一対の空気圧アクチュエータ81のみが図示されているが、一対の把持部25の駆動に二対の空気圧アクチュエータ81が配置されていてもよいし、さらに関節部21を屈曲させる空気圧アクチュエータが更に配置されていてもよい。
【0051】
空気圧アクチュエータ81は、術具本体20の把持部25を開閉させる駆動力を発生させるものである。空気圧アクチュエータ81には、ピストン82と、シリンダ83と、が主に設けられている。
【0052】
ピストン82は、シリンダ83に対して相対的に直線移動可能に配置されるものである。ピストン82におけるシリンダ83から突出している部分には、第2伝達ロッド74の一端が配置されている。
【0053】
シリンダ83は、両端が閉じられた筒状に形成された部材である。シリンダ83の内部空間は、ピストン82により2つに区画されている。シリンダ83には、空気供給部84から供給される昇圧された空気を、2つの区画に供給する配管が配置されている。
【0054】
シリンダ83と空気供給部84との間には、昇圧された空気の供給先を制御するバルブ85が設けられている。バルブ85は、空気供給部84から昇圧された空気が供給される行き先を制御するものである。具体的には、昇圧された空気をシリンダ83の2つの区画のうちの一方へ供給する、または他方へ供給するかを選択するバルブである。バルブ85の形式としては公知の形式のものを用いることができる。
【0055】
本実施形態では、空気圧アクチュエータ81、バルブ85、空気の供給に用いられる配管などがカートリッジ80内に配置されている例に適用して説明する。なお、空気圧アクチュエータ81等は、カートリッジ80以外の場所に配置されていてもよい。
【0056】
次に、上記の構成からなる術具1における動作について説明する。まず、術具本体20における把持部25の開閉動作について図1および図5を参照しながら説明する。
術具本体20の把持部25を開閉させる場合には、図1に示すように、駆動ワイヤ50の一方をX軸の負方向に引くとともに、他方をX軸の正方向を繰り出すことにより開閉される。
【0057】
駆動ワイヤ70は、図5に示すように空気圧アクチュエータ81で発生される駆動力により引っ張られ、繰り出される。具体的には、空気供給部84から供給される昇圧された空気が、空気圧アクチュエータ81に供給されることにより駆動力が発生する。
【0058】
シリンダ83の内部空間はピストン82により2つに区画され、昇圧された空気が供給される区画を選択することにより、引っ張り方向に駆動力を発生するか、繰り出し方向に駆動力を発生するかが制御される。昇圧された空気を供給する区画の選択は、バルブ85により行われる。
【0059】
次に、術具本体20の把持部25への給電方法について、図1を参照しながら説明する。把持部25への給電が行われる場合には、電源65から術具本体20に高周波電流が供給される。高周波電流は、電力供給ケーブル60を介して術具本体20の鉗子部24に流される。高周波電流は、鉗子部24から把持部25にまで流れる。
【0060】
次に、術具1における絶縁について図6から図8を参照しながら説明する。まず図6を参照しながらシャフト10と術具本体20との間の絶縁について説明する。シャフト10と術具本体20の関節部21との間には、第1絶縁部30が配置されている。そのため、術具本体20に供給された高周波電流がシャフト10に流れる経路としては、第1絶縁部30の外表面に沿った経路A1、および、第1絶縁部30の内部を経由する経路A2が考えられる。
【0061】
経路A1は、シャフト10と関節部21との間の距離が絶縁に必要な長さに設定されているため、高周波電流が流れにくくされている。経路A2は、第1絶縁部30が絶縁性の高い材料から形成されているため、高周波電流が流れにくくされている。言い換えると、経路A1および経路A2ともに絶縁が図られている。
【0062】
次に図7を参照しながら駆動ワイヤ70における絶縁について説明する。具体的には、第1伝達ロッド72と第2伝達ロッド74との間の絶縁について説明する。第1伝達ロッド72と第2伝達ロッド74との間には、線状絶縁体73が配置されている。また、術具本体20、撚り線ワイヤ71および第1伝達ロッド72は電気的に導通可能に接続されている。
【0063】
そのため、術具本体20に供給された高周波電流が、撚り線ワイヤ71および第1伝達ロッド72を介して第2伝達ロッド74に流れる経路としては、線状絶縁体73に沿った経路B1と、第1伝達ロッド72および第2伝達ロッド74の間の空間を経由する経路B2と、が考えられる。
【0064】
経路B1は、線状絶縁体73が絶縁性の高い材料から形成されているため、高周波電流が流れにくくされている。経路B2は、第1伝達ロッド72および第2伝達ロッド74との間の距離が絶縁に必要な長さに設定されているため、高周波電流が流れにくくされている。言い換えると、経路B1および経路B2ともに絶縁が図られている。
【0065】
次に図8を参照しながらシャフト10と駆動ワイヤ70との間の絶縁について説明する。具体的にはシャフト10と駆動ワイヤ70の撚り線ワイヤ71との間の絶縁について説明する。
【0066】
術具本体20に供給された高周波電流が、撚り線ワイヤ71を介してシャフト10に流れる経路としては、第1絶縁部30と絶縁パイプ部50との境目、および、第1絶縁部30と第2絶縁部40との境目に沿った経路C1と、第2絶縁部40と絶縁パイプ部50との境目、および、第1絶縁部30と第2絶縁部40との境目に沿った経路C2と、が考えられる。
【0067】
経路C1および経路C2の長さ(以下「沿面距離」とも表記する。)は、例えば、図9に示すような絶縁パイプ部50を設けられていない場合の撚り線ワイヤ71とシャフト10との間の高周波電流が流れる経路Dの沿面距離と比較すると長い。ここで沿面距離とは、空気よりも絶縁性が高い絶縁部材の面に沿った経路の長さ、言い換えると、絶縁部材と比較して電力が流れやすい経路の長さである。
【0068】
また、経路C1および経路C2の沿面距離は、絶縁パイプ部50を長くすることにより長くすることができる。言い換えると、シャフト10の径を大きくすることなく、経路C1および経路C2の沿面距離を長くすることができる。
【0069】
このように経路C1および経路C2は、その沿面距離を絶縁に必要な長さに設定されているため、高周波電流が流れにくくされている。言い換えると、経路C1および経路C2ともに絶縁が図られている。なお、絶縁に必要な長さは、術具本体20に供給される高周波電流の電圧に基づいて定められる距離である。
【0070】
上記の構成の術具1によれば、第1絶縁部30の挿入部33、および、第2絶縁部40の第2ワイヤ貫通孔42に絶縁パイプ部50を挿入することにより、経路C1および経路C2について絶縁に必要な沿面距離を設けることができる。そのため、術具本体20に供給された電力が、駆動ワイヤ70を経由してシャフト10に流れることを抑制することができる。
【0071】
例えば、図9に示すような第1絶縁部30および第2絶縁部40の接触面が平面状である場合と比較して、駆動ワイヤ70からシャフト10までの沿面距離を長くすることができる。その結果、シャフト10からカートリッジ80を介して手術支援ロボットへ電流が流れることを抑制でき、手術支援ロボットに搭載されているセンサ機器や制御機器の故障や誤作動のリスク低減を図ることが可能となる。
【0072】
第1絶縁部30および第2絶縁部40と、絶縁パイプ部50とを別体に形成し、第1絶縁部30の挿入部33、および、第2絶縁部40の第2ワイヤ貫通孔42に絶縁パイプ部50を挿入する構成とすることにより、第1絶縁部30および第2絶縁部40の一方と絶縁パイプ部50とを一体に形成する構成とする場合と比較して、第1絶縁部30、第2絶縁部40、および、絶縁パイプ部50の作成が容易となる。また、第1絶縁部30、第2絶縁部40、および、絶縁パイプ部50の小型化や細径化を図りやすくなる。その結果として術具1の小型化や細径化も図りやすくなる。
【0073】
第2絶縁部40に設けられた駆動ワイヤ70が配置される第2ワイヤ貫通孔42に絶縁パイプ部50を挿入することにより、駆動ワイヤ70が配置される貫通孔と、絶縁パイプ部50を挿入する凹部とを別々に形成する必要がなくなる。また、第2絶縁部40の小型化や細径化を図りやすくなる。
【0074】
なお、上述の実施形態では第1絶縁部30および第2絶縁部40と、絶縁パイプ部50とを別体に形成した例に適用して説明したが、図10および図11に示すように、第1絶縁部30と絶縁パイプ部50とを一体とした第1絶縁部130を用いてもよい。または、第2絶縁部40と絶縁パイプ部50とを一体に形成してもよい。
【0075】
図10および図11に示す術具101は、術具1と比較して第1絶縁部130のみが異なり、その他の構成要素に変更はない。第1絶縁部130における第2絶縁部40と対向する面には、第2絶縁部40に向かって突出する凸部133が設けられている。
【0076】
より具体的には凸部133は、第2ワイヤ貫通孔42と対向する位置に設けられ、第2ワイヤ貫通孔42に挿入可能な外形に形成されている。本実施形態では、第2ワイヤ貫通孔42が円孔であり、凸部133が第2ワイヤ貫通孔42の内径よりと同等または小さな外径を有する円柱状に形成されたものである例に適用して説明する。また、凸部133には、内部に駆動ワイヤ70がX軸方向に相対移動可能に挿通される第1ワイヤ配置孔32が形成されている。
【0077】
上記の構成の術具101によれば、第1絶縁部130に、絶縁パイプ部50に対応する凸部133を一体に形成することにより、第1絶縁部30および第2絶縁部40と、絶縁パイプ部50とを別体に形成する場合と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、術具本体20が鉗子である例に適用して説明したが、鉗子の他に電気メスなどの内視鏡手術で用いられる他の術具に適用することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1,101…術具(手術支援ロボット用術具)、 10…シャフト(外殻部)、 20…術具本体(先端部)、 30,130…第1絶縁部、 33…挿入部、 40…第2絶縁部、 42…第2ワイヤ貫通孔(凹部)、 50…絶縁パイプ部(凸部)、 60…電力供給ケーブル、 70…駆動ワイヤ(索状体)、 133…凸部
図1
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