【課題を解決するための手段】
【0006】
(A)電子制御機器が接続された情報の伝送路に接続可能な第一接続手段と、前記電子制御機器の診断を行う診断機であって前記伝送路に接続可能に構成された診断機を接続可能な第二接続手段と、前記第一接続手段と第二接続手段との間で前記情報の中継をする第一中継手段と、前記情報を電子機器へ中継する第二中継手段とを備えた装置とするとよい。
【0007】
このようにすれば、電子機器で電子制御機器が接続された伝送路の情報を利用可能となるとともに、診断機も電子制御機器が接続された伝送路の情報を利用可能となる。
【0008】
例えば、電子制御機器が接続された伝送路の情報が第二中継手段によって電子機器へ中継され、その中継された情報を電子機器で利用することができるとともに、第一接続手段によって接続された伝送路から電子制御機器の情報が第一中継手段によって第二接続手段へ中継され、診断機は第二接続手段に接続可能であるから、その中継された情報を、第二接続手段を介して診断機で利用することもできる。
【0009】
電子制御機器としては、各種の制御を行う機器とすることができるが、特に、アクチュエータ等の機械的な位置や機械的な回転を制御する機器とするとよい。特に、電子制御機器は、車両のECU(電子制御ユニット)とするとよい。
【0010】
情報の伝送路としては、1対1の通信路することもできるが、複数の電子制御機器が接続されたネットワークとするとよい。このようにすれば、複数の電子制御機器の診断を診断機で行うことができるとともに、電子機器においても複数の電子制御機器からの情報を利用することが可能となる。特に、電子制御機器が、車両のECU(電子制御ユニット)である場合、情報の伝送路としては、車内LANとするとよく、例えば、CANとするとよい。
【0011】
また第一中継手段及び第二中継手段は、マイコン等の制御手段を備えて、情報の中継の制御を行うものとしてもよいが、単なる伝送路とするとよく、例えば電気的に接続するライン(線)とすると、故障を低減できるとともに低コストに実現できるため、特によい。
【0012】
また、第二中継手段は、例えば第一中継手段の中継する情報を中継する手段とするとよい。例えば第一中継手段としての第一中継ラインを設け、第二中継手段として第一中継ラインを分岐する分岐部とその分岐部によって分岐した第二中継ライン(第二中継ラインという)を備え、第二中継ラインを電子機器に接続する構成とするとよい。
【0013】
また、伝送路は無線の伝送路とすることもできるが、特に有線の伝送路とし、第一接続手段及び第二接続手段は物理的な形状を有するもの、例えばコネクタとするとよい。
【0014】
例えば車両のECUの診断用コネクタであるOBDIIコネクタのように、外部から1つの診断機を接続することを前提とした診断機の場合、複数の機器が診断用コネクタに接続されることを想定した構成となっていない。例えば元から複数の診断機等が接続されることが前提のシステムであれば、予めプログラムでそれを想定して構成するが、例えば接続する口がひとつしかない場合など、外部から1つの診断機を接続することを前提としたシステムに接続される診断機のプログラムは複数の診断機等が接続されることを前提としたプログラムとなっていない。例えば、診断機から電子制御機器に対して診断情報の送信指示を送信した場合、その送信指示を受けた電子制御機器からの応答は診断機宛のものとして処理する構成となっている。このとき診断用コネクタから分岐して診断機とともに別の電子機器(例えば別の診断機能を有する機器など)も接続されると、その電子機器から電子制御機器に対して送信した診断情報の送信指示に対する応答を診断機宛のものと誤認して診断機が処理してしまうなどバッティングが生じることがある。伝送路が、例えばCAN等の車内LANであり、電子制御機器が車両のECUである場合、一般的には診断機は通常の車両の走行時には接続されず、通常整備工場での整備時に接続される。そこで、電子機器は、例えば、走行時に電子制御機器から車内LANへ送信される情報を取得して利用する機器とするとよい。このように、電子機器は電子制御機器を搭載したシステムの通常の利用時に電子制御機器の情報を取得する構成であるのに対し、診断機は電子制御機器を搭載したシステムの通常の利用時ではない診断時に情報を取得する構成のものとすると、診断機への情報と電子機器への情報のバッティングを防止でき、特に優れた効果を発揮する。
【0015】
電子機器は、例えば、第二中継手段によって中継された伝送路の情報を読み取って利用する機器とするとよい。例えば読み取った情報に基づく処理を行う機器とするとよく、特に読み取った情報に基づく報知を行う機器とするとよい。特に伝送路の情報の読み取りを行うが、伝送路に対して情報の送出を行わない構成とすると、診断機からの情報と電子機器からの情報の伝送路上でのバッティングを防止できる。
【0016】
(B)前記第一接続手段として、前記伝送路に備えるコネクタ(以下伝送路側コネクタという)に前記診断機を接続するための前記診断機に備えるコネクタ(以下診断機側コネクタという)と同種の構成のコネクタ(以下第一コネクタという)を備え、前記第二接続手段として、前記伝送路側コネクタと同種の構成のコネクタ(以下第二コネクタという)を備える構成とするとよい。
【0017】
このようにすれば、電子機器で電子制御機器が接続された伝送路の情報を利用できるとともに、変換コネクタ等を使用せずに簡単に、診断機側コネクタを第二コネクタに接続することができ、診断機は本装置を介して容易に電子制御機器の診断を行うことができる。
【0018】
例えば、伝送路側コネクタが車両に取付けられているメス型のOBDコネクタであり、診断機側コネクタがそのメス型のコネクタに差し込まれるオス型のOBDコネクタである場合、前記第一接続手段は、オス型のOBDコネクタとし、前記第二接続手段は、メス型のOBDコネクタとするとよい。
【0019】
例えば、第一中継手段として、少なくとも前記伝送路に該当する第一コネクタのピンと第二コネクタのその対応するピンとを信号線で電気的に接続する構成とするとよい。望ましくは、電源ライン等も含めて対応するピン(例えば同一ピン番号のピン)同士を電気的に接続する構成とするとよい。第二中継手段は例えば第一コネクタのピンと第二コネクタのその対応するピンとを電気的に接続する信号線をそれぞれ分岐して電子機器へ接続する構成とするとよい。
【0020】
(C)前記第二コネクタは、前記伝送路側コネクタの固定位置に固定可能に構成されており、前記伝送路側コネクタをその固定位置から取り外した状態で、その伝送路側コネクタの固定位置にその伝送路側コネクタに替えて当該第二コネクタを固定した状態で、前記診断機側コネクタを前記第二コネクタへ接続可能に構成するとよい。
【0021】
このようにすれば、診断機での診断時には、第二コネクタの設置位置を探す必要がなく、診断機側コネクタを従来の診断時と同様の位置に持っていくだけで、第二コネクタに容易に接続できる。伝送路側コネクタは、その設置位置が決まっている場合が多く、診断機での診断時にはその伝送路側コネクタの設置位置をめがけて診断機側コネクタを接続しようとする。本構成によれば、第二コネクタが伝送路側コネクタの設置位置に存在するので、第二コネクタを改めて探す必要がなく、診断時と同様の位置のコネクタに接続するだけでよいこととなる。また、伝送路側コネクタをその固定されている位置のままにしておくと、伝送路側コネクタに第一コネクタが接続された状態になっている可能性があるが、この場合、第一コネクタの接続を解除して、診断機側コネクタに接続する可能性がある。このように第一コネクタの伝送路側コネクタへの接続が解除されると電子機器で伝送路の情報を利用できなくなってしまうという問題が発生するが、本構成によれば、伝送路側コネクタの替りに第二コネクタが設置されることとなるので、第一コネクタと伝送路側コネクタの接続が解除される可能性が小さくなり、電子機器で伝送路側の情報を利用できなくなる可能性を小さくすることができる。
【0022】
第二コネクタが、伝送路側コネクタの固定位置に固定可能な構成としては、例えば、第二コネクタの固定構造を伝送路側コネクタの固定構造と同一に構成するとよい。例えば、伝送路側コネクタが爪留めされるのであればこれと同一の爪留め構造を第二コネクタに設けるとよい。例えば、伝送路側コネクタがネジ止めされるのであれば同一のネジ止め構造を第二コネクタに設けるとよい。
【0023】
(D)前記第一接続手段、前記第二接続手段及び前記第一中継手段は、前記伝送路を格納した筐体(以下伝送路側筐体という)内に、格納可能に構成するとよい。
【0024】
このようにすれば、伝送路側筐体の外部から第一接続手段、前記第二接続手段及び第一中継手段を視認できなくすることが可能となる。特に(C)の構成を備える場合には(D)の構成を備えるとよい。
【0025】
伝送路側筐体としては、例えば、電子制御機器が車両のECU(電子制御ユニット)の場合、車体を構成する部分とするとよい。このようにすれば、車体の内部に、第一接続手段、第二接続手段及び前記第一中継手段が隠れることとなる。
(E)前記第二中継手段は、前記電子機器から送信された情報を前記伝送路側へ中継する機能を備える構成とするとよい。
【0026】
このようにすれば、例えば、電子機器から電子制御機器へ問い合わせ情報を送信して、その問い合わせ情報に対する応答情報を電子制御機器から取得したり、電子機器から電子制御機器へ制御情報を送信して電子制御機器の制御対象を制御させたりできるとともに、診断機を第一接続手段へ接続することができる。
【0027】
(F)前記伝送路側へ中継する情報として、前記電子制御機器の制御対象への制御指示を含む制御指示情報を備え、前記制御指示情報は前記診断機が前記電子制御機器を診断するために送信する情報の送信頻度よりも少ない頻度で送信する構成とするとよい。
【0028】
このようにすれば、診断機を第二接続手段へ接続した状態で、電子機器から電子制御機器への制御指示情報を送信した場合であっても、伝送路上で、診断機に関する情報とのバッティングを防止できる可能性が高まる。
【0029】
診断機が電子制御機器を診断するために送信する情報の送信頻度よりも少ない頻度で制御指示情報を送信する構成としては、例えば、診断機が電子制御機器を診断するために送信する情報の送信頻度は、所定時間間隔で連続的に送信するのに対し、制御指示情報は所定時間間隔で連続的に送信するのではなく、イベントの発生時に単発的に送信する構成とするとよい。
【0030】
(G)前記伝送路側へ中継する情報として、前記電子制御機器の制御対象への制御指示を含む制御指示情報を備え、当該制御指示情報は、前記診断機が前記電子制御機器を診断するために送信する情報とは区別可能な情報とするとよい。
【0031】
このようにすれば、診断機を第二接続手段へ接続した状態で、電子機器から電子制御機器への制御指示情報を送信した場合であっても、伝送路上で、診断機に関する情報とのバッティングを防止できる。
【0032】
区別可能な情報としては、例えば、診断機が電子制御機器へ問い合わせを実施するための診断用IDと、電子機器が電子制御機器へ送信する制御指示情報の制御指示用IDとを異なるものとして、区別するとよい。電子制御機器は、診断用IDと制御指示用IDを別のものとして処理する構成とするとよい。
【0033】
(H)前記伝送路側に中継する情報として、前記診断機の診断情報と同様の情報を有し、前記電子機器の電源がオフの場合または前記電子機器に対するユーザーからの送信停止指示があった場合の少なくともいずれか一方の場合において、前記電子機器から前記伝送路側への送信を抑制する送信抑制手段を備える構成とするとよい。
このようにすれば、例えば診断機を第二接続手段に接続して診断を行う際に、容易に伝送路上での情報のバッティングを抑制できる。
【0034】
送信を抑制する構成としては、送信を間引く構成としてもよいが、特に送信を停止する構成、あるいは、送信や中継をブロックする構成とするとよい。このようにすれば、完全にバッティングを防止できる。
送信抑制手段は、例えば電子機器に備える構成としてもよいが、特に(I)第二中継手段に備える構成とするとよい。
【0035】
(J)前記第二中継手段として、コネクタ(以下第三コネクタという)と、当該第三コネクタに接続可能なコネクタ(以下第四コネクタという)とを備え、前記第三コネクタを格納する筐体(以下第三筐体という)または前記第四コネクタを格納する筐体(以下第四筐体という)の少なくともいずれか一方に、前記情報を前記電子機器へ中継する機能を備える制御手段を備える構成とするとよい。
【0036】
このようにすれば、電子機器を取り外し可能にすることができる。特に(K)前記第三コネクタは、前記伝送路に備えるコネクタ(伝送路側コネクタという)と同等のコネクタとするとよい。同等のコネクタとしては、例えば、伝送路側コネクタと同等構造のコネクタあるいは同等形状のコネクタとするとよい。
【0037】
(L)前記第一中継手段または前記第二中継手段に、前記電子機器とは別に、前記電子制御機器の制御のための信号を伝送路側へ送出する送出手段を備え、前記送出手段は、前記電子制御機器の少なくとも一部がオフの場合、前記電子機器の電源がオフである信号を受信した場合、または、送信停止指示の信号を受信した場合の少なくともいずれか一の場合において、前記伝送路側への送出を抑制する機能を備える構成とするとよい。送信停止指示の信号は所定のイベントの発生時等に自動的に送信される構成とするとよいが、特にユーザーからの送信停止指示があった場合に送信される構成とするとよい。
このようにすれば、第二中継手段に備える送出手段によって送出される信号と、診断機からの信号とのバッティングを抑制できる。
(M)前記第一接続手段、前記第二接続手段及び前記第一中継手段は、同一の筐体に構成するようにしてもよい。
このようにすれば、信号線等が大きく露出して本装置が邪魔になる可能性を低減できる。
【0038】
(N)前記伝送路側へ中継する情報として、前記電子制御機器(以下第一電子制御機器という)が前記伝送路を介して他の前記電子制御機器(以下第二電子制御機器という)の制御対象を制御するための情報(以下第一情報という)と同様の制御対象を制御するために前記第二電子制御機器に与える情報(以下第二情報という)を備え、
前記第二情報は、前記第一情報の送信を確認した後に送信する構成とするとよい。このようにすれば、同一の制御対象の第一電子制御機器による制御と本装置による制御が不整合を起こす可能性を低減できる。例えば、第一情報がある制御対象をオフにするための情報であり、第二情報がその制御対象をオンにするための情報である場合、第二情報でオンにした後、すぐに第一情報によってオフになると制御が本装置で意図したオンという制御にならない可能性がある。このように同一の制御対象について制御の指示内容が第一情報と第二情報とで異なるものとなる場合に本構成は特に優れた効果を発揮する。
(O)前記伝送路側へ中継する情報として、前記電子制御機器(以下第一電子制御機器という)が前記伝送路を介して他の前記電子制御機器(以下第二電子制御機器という)の制御対象を制御するための情報(以下第一情報という)と同様の制御対象を制御するために前記第二電子制御機器に与える情報(以下第二情報という)を備え、
前記第一情報は制御対象の動作停止の情報であって所定の間隔で送信されるものであり、前記第二情報として前記所定の間隔の間に制御対象の動作開始の情報と動作停止の情報を前記所定の間隔よりも短い間隔で送信するとよい。
このようにすれば、制御対象の動作時間を所定の間隔の間に複数回確実に設けることができる。
(N)なお本装置における第一中継手段または第二中継手段の少なくともいずれか一方の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムとして構成するとよい。
【0039】
例えば、
図6(a)に示す車両500内に設けられたECU510a〜ECU510nが接続されたCANの車両500内の信号線520が接続される伝送路側コネクタ530に上述した(A)〜(N)の構成を備える本装置を接続する構成とするとよい。特に
図6(b)の実施例のように実施するとよい。すなわち、
図6(a)に示すように、診断機600の診断機側コネクタ610(OBDのオス型コネクタ)を接続するための伝送路側筐体である車両500の運転席周辺の所定の取付け位置に固定された伝送路側コネクタ530(OBDのメス型コネクタ)を取り外し、
図6(b)に示すように、その伝送路側コネクタ530の取付けられていた箇所に本装置の分岐ハーネスの第二コネクタ912を取り付ける。この取付けは、車両500の取付け位置に開けられている孔部に嵌り込んだ伝送路側コネクタ530のツメ部を押し出してその固定を解除して伝送路側コネクタ530を取付け位置から取り外し、伝送路側コネクタ500の替りに第二コネクタ912のツメ部をその孔部へ嵌め込むことで行う。第二コネクタ912の各ピンはそれぞれ対応する第一コネクタ911の各ピン(同一ピン番号のピン)に第一中継手段を構成する信号線群914で接続される。
【0040】
信号線群914の各線は途中で分岐され第三コネクタ913(OBDのメス型コネクタ)の対応する各ピン(同一ピン番号のピン)へ接続されている。第三コネクタ913には、OBDアダプタ920の備える第四コネクタ(OBDのオス型コネクタ)が接続される。OBDアダプタ920は、内部にマイコンとディップスイッチ(DipSW)を備え、第四コネクタのCANのラインがこのマイコンに接続されるとともに、マイコンの電源は第四コネクタから取得する構成としている。OBDアダプタ920は、電子機器であるレーダー探知機1000と接続するシリアルケーブル933のコネクタ931(第六コネクタという)を接続するためのコネクタ(第五コネクタという)を備える。シリアルケーブル933の他端にはコネクタ932(第七コネクタという)を備え、レーダー探知機1000には第七コネクタを接続するコネクタ(第八コネクタという)を備える。OBDアダプタ920のマイコンは、コネクタ931と接続されており、レーダー探知機1000へCANからの信号をプロトコル変換して中継するとともに、レーダー探知機1000からの指示に基づき第四コネクタのCANのラインに対して信号を送出する中継機能を備える。この中継機能は、CAN上を流れるパケットを読み取り、車速、エンジン回転数、燃料流量、スロットル開度等を算出し、これらの情報をレーダー探知機1000へ送信する機能を備える。レーダー探知機1000は、OBDアダプタ920から受け取った車速、エンジン回転数、燃料流量、スロットル開度等の情報をメータ表示等で表示する機能を備える。
【0041】
さらにOBDアダプタ920のマイコンは、CANのラインから車速信号を取得してその取得した車速が所定の速度を超えた場合にCANのラインを介してCANの車両内信号線520を介してドアロックを制御するECU510へ向けてドアロック指示信号を送出する車速感応ドアロック機能と、CANから取得した信号が急激なブレーキを認識した場合にハザードランプを制御するECU510へ向けてハザードランプの点滅指示信号を送出するストップシグナル機能とを備える。ドアロック指示信号や点滅指示信号は連続的なパケットの送出ではなく、単発のパケット送出で実施し、診断機600が用いる故障診断用のパケットとは異なる宛先IDのパケットとして送出することで行う。なお、ECU510に対して車両500の他のECU510から定期的に制御信号が送信される構成の場合は次のように構成するとよい。
図7(a)は車両に備える第二ECU510bのハザードランプの消灯指示信号の送信タイミング、
図7(b)はOBDアダプタ920のマイコンのハザードランプの点灯指示信号の送信タイミング、
図7(c)はOBDアダプタ920のマイコンのハザードランプの消灯指示信号の送信タイミング、
図7(d)はハザードランプの点滅タイミングのそれぞれの時間的関係を示すタイミングチャートである。
図7(a)は、ハザードランプを制御する第一ECU510aに対して、このECUとは別のハザードランプ用のスイッチ状態を検出する第二ECU510bから、現在のハザードランプの状態であるハザードランプの消灯指示信号が1秒間隔で出力している車両500の例である。このような車両500の場合、OBDアダプタ920のマイコンはCANのラインから取得した信号が急激なブレーキを示す信号を含むと判定した場合に、CANのラインを監視して
図7(a)の第二ECU510bからのハザードランプの消灯信号を受信するまで待ち、第二ECU510bからのハザードランプの消灯信号を受信した直後に
図7(b)に示すようにハザードランプの点灯指示信号を第一ECU510aに対して送信する。そしてこのハザードランプの点灯指示信号の送信から250ms後に
図7(c)に示すようにハザードランプの消灯指示信号を、さらにその250ms後に
図7(b)に示すようにハザードランプの点灯指示信号を、さらにその250ms後に
図7(c)に示すようにハザードランプの消灯指示信号を、さらにその250ms後に
図7(b)に示すようにハザードランプの点灯指示信号を、さらにその250ms後に
図7(c)に示すようにハザードランプの消灯指示信号を送信する。その結果、
図7(d)に示すように、ハザードランプはハザードランプを制御する第一ECU510aによって
図7(a)の第二ECU510bからのハザードランプの消灯信号が信号線520上に現れた直後から、OBDアダプタ920のマイコンからの指示信号によって250ms点灯、250ms消灯、250ms点灯、250ms消灯、約250ms点灯して第一ECU510aからの消灯指示信号によって消灯するという制御がなされ、ハザードランプの3回の点滅が発生することとなる。このように制御することで、第一ECU510aからの消灯指示信号がOBDアダプタ920のマイコンのハザードランプの点灯指示信号が出された直後に出されて、ハザードランプを点灯させたにもかかわらずすぐに消灯してしまうといった問題や、点滅の間隔がまばらになってしまうという問題が発生しないようにすることができる。なおこの車両500のハザードランプ用のスイッチ状態がオンのときの点滅間隔は350msであり、OBDアダプタ920のマイコンからの指示信号による点滅間隔は250msとしており、車両500内での制御によるものかOBDアダプタ920の制御によるものかハザードランプを見た者は区別して認識できる。
【0042】
また、このマイコンはディップスイッチの設定に基いて、中継機能、車速感応ドアロック機能、ストップシグナル機能のそれぞれを実行するか否かを判定し、実行すると判定された場合に、当該機能を実行する構成となっている。
【0043】
第六コネクタ931が接続されていない場合などレーダー探知機1000とOBDアダプタ920が接続されていない場合には、OBDアダプタ920の中継機能は停止し、単体で、ディップスイッチの設定にしたがって車速感応ドアロック機能、ストップシグナル機能を実現する。
【0044】
またレーダー探知機1000とOBDアダプタ920が接続されている場合には、ディップスイッチの設定にしたがって中継機能、車速感応ドアロック機能、ストップシグナル機能が実現できる。
【0045】
レーダー探知機1000には電源スイッチを備え、OBDアダプタ920のマイコンはレーダー探知機1000の電源スイッチの状態を監視し、電源スイッチがオフとなった場合には、中継機能を停止する。同様に、レーダー探知機1000に備えるボタン操作によってレーダー探知機1000から中継停止指示を受け取った場合には、中継機能を停止する。また、レーダー探知機1000に備えるボタン操作によってレーダー探知機1000から機能停止指示を受け取った場合には、中継機能、車速感応ドアロック機能、ストップシグナル機能のすべてを停止する。なお別例としてOBDアダプタ920のマイコンへの電源供給をレーダー探知機1000側から行う構成としてレーダー探知機1000の電源スイッチに連動してOBDアダプタ920のマイコンへの電源供給がなされる構成としてもよい。例えばレーダー探知機1000の電源がオンのときにはOBDアダプタ920へレーダー探知機1000側から行い、レーダー探知機1000の電源がオフのときにはOBDアダプタ920へのレーダー探知機1000側からの供給を遮断する。
なおこれらの機能は、OBDアダプタ920のマイコンに備えるROMに記憶したプログラムをマイコンに備えるコンピュータが実行することで実現される。
【0046】
なお、第一コネクタ911、第二コネクタ912、信号線群914は同一の筐体に備えるようにしてもよい。また、例えば、第一コネクタ911、第二コネクタ912、信号線群914、第三コネクタ913、OBDアダプタ920、コネクタ931、ケーブル933、コネクタ932、レーダー探知機1000のうち少なくとも接続された複数の箇所を一体で構成してもよい。例えば、OBDアダプタ920の機能をレーダー探知機1000に備えたマイコンで実現するようにしてもよい。
【0047】
なお、本発明は次の(1)から(21)に記載のように構成してもよい。この構成の場合、例えば、診断機用接続手段は上述した第二接続手段を備える構成とするとよく、接続手段は例えば上述した第三コネクタまたは第四コネクタのいずれか一方を備える構成とするとよい。
【0048】
(1)上記課題を解決するために、本発明は、複数の電子制御機器で構成されたネットワーク上の情報を用いて、電子制御機器の診断を行う故障診断機を接続するための診断機用接続手段と、前記ネットワークを介して情報要求を行い、要求先電子制御機器からの返答情報を取得する取得手段を有する接続手段と、を備え、この接続手段は、前記取得手段で取得した情報を利用する電子機器を接続するためのものであることを特徴とするようにした。
【0049】
この発明によれば、診断機用接続手段により故障診断機を接続し、更に、接続手段により電子機器を接続する。そうすると、ネットワーク上の情報が、例えばOBD情報である場合には、このOBD情報は、故障診断機以外に接続手段で接続した電子機器にも利用することが可能になる。なお、このネットワークとしては例えば、複数の電子制御機器を通信ケーブルに接続した構成として、CANを形成することで実現可能となる。
(2)また、前記取得手段が前記接続手段に内蔵される構成とすることもできる。これによれば、装置の小型化が可能となる。
【0050】
(3)そして、前記診断機用接続手段および前記接続手段がOBDコネクタでる構成とすれば、故障診断機と電子機器とがOBD情報を利用することが可能となる。
【0051】
(4)また、前記接続手段は、当該接続手段に前記電子機器が接続された場合において、前記取得手段が取得した情報を前記電子機器に送信する送信手段を更に備えた構成とすることができる。この構成によれば、電子機器が接続された場合にこの電子機器は、取得手段が取得した取得情報を利用した動作を行うことが可能となる。
【0052】
(5)また、前記電子機器が前記接続手段で接続された場合、この電子機器をユーザーが操作可能な位置に設けた構成とすれることができる。この構成によれば電子機器の操作性が増す。(6)より具体的には、例えば車両に設ける場合には操作性向上のためにダッシュボード上に設けるのが好ましい。
【0053】
(7)また、前記接続手段は、ユーザーが目視不能な位置に設ける構成とすることができる。この構成によれば、通常時には調整することがない接続手段を目視不能な位置に設けることができ、美観上も好ましい。(8)より具体的には、車両に設ける場合にあっては、接続手段はパネル内に設けることが好ましい。更に詳細にはフロントアンダーカバー内側に設けるのが好ましい。
【0054】
(9)また、前記故障診断機が故障を調べるために電子制御機器に割り当てられる識別子と、前記取得手段が情報を取得するために要求先電子制御機器に割り当てられる識別子とは、電子制御機器毎に同一である構成とすることができる。これによれば、故障診断機と取得手段とで同一体系の識別子を使用した装置を構成することができ、両者を区別して使用するためのプログラムの作成等は不要になる。なお、識別子の具体例としてはアドレス等が挙げられる。
【0055】
(10)また、前記接続手段は、前記電子機器の電源がオフ操作されたことを検出する検出手段を更に備え、前記電子機器の電源オフ状態時には電源オン状態時とは異なる動作を行うように構成されたものとすることができる。これによれば、ユーザーの電源オフ操作によって、電子機器のオフ時には特別な動作を行うようにすることができる。
【0056】
(11)また、前記オフ操作は、前記電子機器に設けられたスイッチ操作またはタッチパネル操作であるようにすることができる。これによれば、ユーザーがスイッチ等で容易に電子機器の電源をオフとすることができる。
【0057】
(12)また、前記接続手段は、前記電子機器が電源オフ状態になった場合には、前記取得手段の前記情報要求動作を停止する停止手段を更に備えた構成とすることができる。これによれば、取得手段による情報要求動作が停止され、故障診断機とのデータ衝突(データバッティング)が回避可能となる。
【0058】
(13)また、前記接続手段は、前記ネットワーク上の情報を監視し、この監視した情報が所定条件を満足したと判断した場合、前記ネットワークを介して、該当する電子制御機器に対して制御信号を送信する制御信号送信手段を更に備えた構成としても良い。このようにすれば、ネットワーク上の情報の監視のみによって例えば異常事態と判断した場合に、電子制御機器に対する制御動作を行うことができる。
【0059】
(14)また、前記制御信号は制御コマンドで成り、この制御コマンドの送信は1回のみであることを特徴とすることができる。この構成によれば、制御コマンド1回のみの送信(単発信号)であるので、プログラムの簡略化や故障診断装置からの信号とのデータ衝突回避を一層確実とすることができる。
【0060】
(15)また、前記ネットワーク上の情報には、車速度が含まれており、前記制御信号送信手段は、車速度が所定値以上であると判断した場合、前記ネットワークを介して、ドアロック制御部を有する電子制御機器に対してドアロック制御信号を送信するようにしても良い。これによれば、例えば、車速が所定値以上になった場合にドアを自動ロックする車速感応ドアロックを実現することが可能となる。また、ネットワーク上の情報に、更にシフトポジション情報(シフトレーバーの位置情報)が含まれていれば、前記制御信号送信手段は、更に、シフトポジションがパーキング位置であると判断した場合、前記ネットワークを介して、ドアロック制御部を有する電子制御機器に対してドアアンロック制御信号を送信するようにすればよい。これによって、車両が停車した際にドアのアンロックを行うことが可能となる。
【0061】
(16)また、前記ネットワーク上の情報には、車速度が含まれており、前記制御信号送信手段は、車速度に後続車に対し報知すべきような変化があると判断した場合、前記ネットワークを介して、ハザード点灯制御部を有する電子制御機器に対して点灯制御を行うことを指示する点灯制御信号を送信することとすることもできる。これによれば、例えば自車両が急ブレーキ時にハザードランプの点灯制御による報知によって後続車に知らせることが可能となる。なお、「車速度が後続車に報知すべきような変化があると判断する」とは、例えば、車速度が所定期間内に所定値以上の降下があると判断した場合である。なお、その後(例えば5秒以内)停止または低速(5km/h以下)になった場合、アンロック(脱出の為)をするのが好ましい。
【0062】
(17)また、前記接続手段は、前記電子機器の筺体外面に設けられた構成とすることができる。これによれば装置の一層の小型化を図ることができる。(18)また、前記接続手段は複数設けられている構成とすれば、複数の接続手段によって複数の電子機器を接続することが可能となる。(19)電子機器としては例えばレーダー装置が挙げられる。レーダー装置は、取得手段が取得したOBD情報を利用して各種の表示制御、警報動作等を行うことが可能となる。また、(20)前記接続手段は、一対のコネクタで成り、前記電子機器に接続する側のコネクタに、前記取得手段を内蔵したこと構成とすることができる。これによれば、電子機器側に繋がるコネクタに取得手段を内蔵するので、取得手段の変更等があっても容易に変更することが可能となる。
(21)そして、上記の装置の機能をコンピュータで実現可能なプログラムとして構成することができる。
以上のように、本発明によれば、OBD診断用情報を複数の製品で利用可能になるという効果が得られる。