特許第6754150号(P6754150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6754150
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】手術用ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20200831BHJP
【FI】
   A61B34/30
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-21630(P2020-21630)
(22)【出願日】2020年2月12日
【審査請求日】2020年4月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖志
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525845(JP,A)
【文献】 特開2002−253574(JP,A)
【文献】 特開2005−224528(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0187432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00−34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡下外科手術に用いられる手術用ロボットにおいて、
内視鏡下外科手術に用いられる処置具の先端位置に関する情報、及び内視鏡の先端位置に関する情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部の算出結果を利用して処置具の先端と内視鏡の先端との相対的な位置関係を表示する第1表示部と、
内視鏡により撮影された画像を表示する第2表示部とを備え
内視鏡の先端部の位置を基準とした全円分度器が、前記位置関係と共に前記第1表示部に表示される手術用ロボット。
【請求項2】
前記全円分度器の中心が前記第1表示部の表示画面の中心と一致した状態で、当該表示画面の中心に内視鏡の先端部を示す図柄が表示され、
さらに、前記位置関係の変化に応じて、前記処置具を示す図柄の表示形態又は当該図柄の表示位置が変化する請求項に記載の手術用ロボット。
【請求項3】
前記表示画面の上下方向は、鉛直方向と一致している請求項に記載の手術用ロボット。
【請求項4】
内視鏡の先端部を示す図柄をカメラアイコンとしたとき、
前記表示画面に対する前記カメラアイコンの表示角度は、当該内視鏡の回転角度に応じて変化する請求項又はに記載の手術用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡下外科手術に用いられる手術用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡手術等の内視鏡下外科手術は、次のような手順で施術される。
【0003】
すなわち、施術者(医師)は、被手術者に対して2つ以上の小さな穴を切開し、当該穴それぞれに筒状のトロッカー(トラカールともいう。)を挿入する。
【0004】
次に、施術者は、各トロッカーに内視鏡及び鉗子や電気メス等を挿入し、内視鏡で撮影された画像を見ながら手術を行う。なお、鉗子は、臓器等を把持したり牽引したりする道具であって、遠隔操作可能である。以下、鉗子及び電気メス等の手術時に行われる処置に用いられる道具を処置具という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4999012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内視鏡下外科手術では、施術者(医師)は、内視鏡で撮影された画像を見ながら手術を行うので、処置具の先端位置が撮影範囲から外れると、施術者が処置具を見失ってしまい、手術が滞ってしまう。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、処置具の先端位置が撮影範囲から外れた場合であっても、施術者が容易に対処可能な手術用ロボットの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
内視鏡下外科手術に用いられる手術用ロボットは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0009】
すなわち、当該構成要件は、内視鏡下外科手術に用いられる処置具(7)の先端位置に関する情報、及び内視鏡(27)の先端位置に関する情報を算出する位置情報算出部(29)と、位置情報算出部(29)の算出結果を利用して処置具(7)の先端と内視鏡(27)の先端との相対的な位置関係を表示する第1表示部(19)と、内視鏡(27)により撮影された画像を表示する第2表示部(25)とである。
【0010】
これにより、当該手術用ロボットでは、処置具の先端位置が撮影範囲から外れた場合であっても、施術者が容易に対処可能となり得る。
【0011】
なお、当該手術用ロボットは、例えば、以下の構成であってもよい。
【0012】
すなわち、内視鏡(27)の先端部の位置を基準とした全円分度器(29C)が、上記位置関係と共に第1表示部(19)に表示されることが望ましい。これにより、施術者は容易に処置具(7)の先端位置を把握でき得る。
【0013】
全円分度器(29C)の中心が第1表示部(19)の表示画面の中心と一致した状態で、当該表示画面の中心に内視鏡(27)の先端部を示す図柄が表示され、さらに、位置関係の変化に応じて、処置具(7)を示す図柄の表示形態又は当該図柄の表示位置が変化することが望ましい。これにより、施術者は容易に処置具(7)の先端位置を把握でき得る。
【0014】
表示画面の上下方向は、鉛直方向と一致していることが望ましい。これにより、施術者は容易に処置具(7)の先端位置を把握でき得る。
【0015】
内視鏡(27)の先端部を示す図柄をカメラアイコンとしたとき、表示画面に対するカメラアイコンの表示角度は、当該内視鏡(27)の回転角度に応じて変化することが望ましい。
【0016】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る手術用ロボットの外観図である。
図2】第1実施形態に係る手術用ロボットのブロック図である。
図3】第1実施形態に係る手術用ロボットの不動点設定モードの制御を示すフローチャートである。
図4図4A図4Cは、第1の状態表示の表示例を示す図である。
図5図5A図5Bは、第1の状態表示の表示例を示す図である。
図6】第2の状態表示の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0019】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0020】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された手術用ロボットは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0021】
(第1実施形態)
<1.手術用ロボットの構成>
本実施形態は、内視鏡下外科手術に用いられる手術用ロボットの一例である。
【0022】
手術用ロボット1は、ロボットアーム3(図1参照)に加えて、図2に示されるように、制御装置5、アーム駆動装置9、第1表示部19及び第2表示部25等を少なくとも備える。
【0023】
<ロボットアーム>
ロボットアーム3は、図1に示されるように、処置具7を保持するアーム装置の一例である。具体的には、ロボットアーム3は、複数の関節(ジョイント)を有するリンク機構であって、ピボットの位置を変更可能なリンク機構にて構成されている。
【0024】
ピボットは、ロボットアーム3が稼働した際に、ロボットアーム3の状態によらず、不動点となる位置である。処置具7は、鉗子及び電気メス等の手術時に行われる処置に用いられる道具である。
【0025】
図1に示された処置具7は、鉗子である。当該鉗子の先端には、臓器等を把持したり牽引したりするためのハンド部が設けられている。ロボットアーム3は、管状のドレープ20により覆われている。ドレープ20は、可撓性を有する不織布状の覆い部材である。
【0026】
なお、内視鏡27(図2参照)は、第2のロボットアーム(図示せず。)により把持されている。以下、処置具7及び内視鏡27を総称して術具という。つまり、術具とは、内視鏡、鉗子及び電気メス等の内視鏡下外科手術に用いられる道具である。
【0027】
<アーム駆動装置>
アーム駆動装置9は、ロボットアーム3を駆動する駆動装置の一例である。本実施形態に係るアーム駆動装置9は、複数の電動モータ(図示せず。)、空気圧シリンダー(図示せず。)、及び圧力発生装置(図示せず。)等を有して構成されている。
【0028】
各電動モータは、各関節部(リンク部)を駆動する。空気圧シリンダーは、処置具7(例えば、鉗子のハンド部)を駆動するワイヤー(図示せず。)に張力を作用させる。圧力発生装置は、当該空気圧シリンダーに圧搾空気を供給する。
【0029】
なお、第2のロボットアームは、第2のアーム駆動装置(図示せず。)により駆動される。第2のアーム駆動装置は、アーム駆動装置9と同一な構成である。当該第2のアーム駆動装置の作動は、アーム駆動装置9と同様な手法により制御される。
【0030】
<制御装置>
制御装置5は、図2に示されるように、不動点設定装置11、駆動制御装置13、第1
表示処理部21A、第2表示処理部21B、第3表示処理部29及び撮影画像処理部25A等を少なくとも有して構成されている。
【0031】
不動点設定装置11は、手術時にトロッカー15(図1参照)が挿入される部位の位置(以下、切開位置ともいう。)を認識するとともに、当該認識した位置をピボットP1として記憶する。
【0032】
以下、不動点設定装置11による切開位置の認識から当該位置の記憶等に至る一連の作動を不動点設定という。不動点設定が実行可能な状態を不動点設定モードという。
【0033】
トロッカー15は、被手術者に切開された穴に挿入される筒状の部材である。つまり、鉗子(処置具7)や内視鏡27等の術具は、切開箇所に挿入されたトロッカー15を通して被手術者の身体内に挿入される。
【0034】
<駆動制御装置(図2参照)>
駆動制御装置13は、ピボットP1の位置を利用してアーム駆動装置9の作動を制御する。具体的には、駆動制御装置13は、マスター側の入力操作装置(図示せず。)から出力される指令信号を受信し、指令信号に従ってアーム駆動装置9を作動させる。
【0035】
このとき、駆動制御装置13は、処置具7のうちピボットP1に対応する部位が不動となるように、アーム駆動装置9を作動させる。マスター側の入力操作装置とは、施術者(医師)が直接的に操作する入力デバイスの一例である。
【0036】
なお、第2のアーム駆動装置の作動は、第2の駆動制御装置(図示せず。)により制御される。第2の駆動制御装置は、内視鏡27が挿入される切開箇所をピボットして第2のロボットアームを作動させる。
【0037】
当該ピボットは、第2の不動点設定装置(図示せず。)により設定された不動点である。第2の不動点設定装置は、不動点設定装置11と同一であるので、本明細書では、第2の不動点設定装置の詳細説明は省略されている。
【0038】
因みに、本実施形態に係る手術用ロボットは、ロボットアーム3(アーム駆動装置9)用の入力操作装置を利用して第2のアーム駆動装置に指令信号を送信する。具体的には、手術用ロボットには、切替スイッチ(図示せず。)が設けられている。
【0039】
切替スイッチは、上記指令信号の出力先をアーム駆動装置9とする場合と第2のアーム駆動装置とする場合とを切り替えることができる。施術者は、当該切替スイッチを操作することにより、ロボットアーム3を作動させる場合と第2のロボットアームを作動させる場合とを切り替える。
【0040】
<2.不動点設定装置の詳細>
本実施形態に係る不動点設定装置11は、位置認識機能及び記憶機能を発揮可能である。そして、不動点設定装置11は、位置認識機能及び記憶機能を利用してピボットP1の位置を不動点として記憶する。
【0041】
位置認識機能は、ロボットアーム3により保持された処置具7の先端位置を認識する機能である。記憶機能は、位置認識機能により認識された当該先端位置をピボットP1として記憶する。
【0042】
本実施形態に係る位置認識機能は、ロボットアーム3の姿勢から処置具7の先端位置を示す座標等を取得(演算)することにより、処置具7の先端位置を認識する。記憶機能は、当該座標をピボットP1として記憶する。
【0043】
なお、不動点設定を行う際には、処置具7に代えて術具相当品を用いてもよい。術具相当品とは、処置具7と同様な形状の部材である。具体的には、例えば、棒状又はパイプ状の部材等が術具相当品に該当する。因みに、第2の不動点設定装置の場合は、内視鏡27が術具相当品に該当する。
【0044】
本実施形態に係る位置認識機能及び記憶機能は、ソフトウェア(プログラム)及びマイクロコンピュータにより実現されている。マイクロコンピュータは、当該ソフトウェアを実行するためのCPU、ROM及びRAM等を少なくとも有する。なお、当該ソフトウェアは、不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0045】
手術用ロボット1は、図2に示されるように、設定ボタン17A及び自在変位可能ボタン17B等を有している。設定ボタン17A及び自在変位可能ボタン17Bは、ロボット
アーム3(スレーブ装置)及び制御装置5(マスター側装置)のうち少なくとも一方に設けられている。
【0046】
設定ボタン17Aは、利用者により操作される設定操作部の一例である。なお、利用者とは、不動点設定の作業を行う者である。具体的には、施術者又は手術の補助を行う者である。そして、設定ボタン17Aが操作されると、不動点設定モードが開始又は終了する。
【0047】
つまり、不動点設定モード時ではないときに設定ボタン17Aが操作されると、不動点設定モードが開始される。不動点設定モード時に設定ボタン17Aが操作されると、不動点設定モードが終了する。
【0048】
具体的には、設定ボタン17Aが予め決められた時間(例えば、3秒)を越えて押下された場合には、不動点設定モード開始される。不動点設定モードが開始されると、位置認識機能が実行可能な状態となる。
【0049】
そして、設定ボタン17Aが予め決められた時間(例えば、2秒)未満だけ押下された時に、位置認識機能が実行された後、記憶機能が実行される。その後、ピボットP1が不動点として記憶された後、不動点設定モードが終了する。
【0050】
自在変位可能ボタン17Bは、利用者により操作される操作部の一例である。自在変位可能ボタン17Bが操作されると、アーム駆動装置9は自在変位モード状態となる。自在変位モードは、ロボットアーム3に作用する外力に応じて当該ロボットアーム3が自在変位可能となるモードである。
【0051】
このため、自在変位モード時においては、利用者は、ロボットアーム3を押し引きすることにより、当該ロボットアーム3を自在に変位させることができる。つまり、自在変位モード時においては、利用者は、マスター側の入力操作装置を操作することなく、ロボットアーム3を押し引きすることにより、処置具7の先端を切開位置に合致させることができる。
【0052】
なお、自在変位モードは、「自在変位モード時に自在変位可能ボタン17Bが操作された時」、又は「不動点設定モードが終了した時」に終了する。自在変位モードが実行されていない状態では、ロボットアーム3に外力が作用しても当該ロボットアーム3は変位しない。
【0053】
<不動点設定モード時の制御>
図3は、不動点設定モード時に実行される制御装置5の制御例を示している。制御装置5は、設定ボタン17Aが予め決められた時間(例えば、3秒)を越えて連続押下されたか否かを判断する(S1)。なお、「(S1)」等は、図3に示された制御ステップ番号を示す。
【0054】
制御装置5は、設定ボタン17Aが予め決められた時間を越えて連続押下されたと判断した場合には(S1:YES)、アーム駆動装置9が自在変位モードになっているか否かを判断する(S3)。
【0055】
制御装置5は、アーム駆動装置9が自在変位モードになっていないと判断した場合には(S3:NO)、音声(例えば、ブザー)又は警告灯等の報知手段を用いて利用者に対して自在変位可能ボタン17Bの操作を促す(S5)。
【0056】
制御装置5は、アーム駆動装置9が自在変位モードになっていると判断した場合には(S3:YES)、設定ボタン17Aが予め決められた時間(例えば、2秒)未満だけ押下されたか否かを判断する(S7)。
【0057】
制御装置5は、設定ボタン17Aが予め決められた時間未満だけ押下されたと判断した場合には(S7:YES)、位置認識機能を実行した後(S9)、記憶機能を実行する(S11)。
【0058】
つまり、本実施形態では、アーム駆動装置9が自在変位モードになっていない場合には(S3:NO)、位置認識機能及び記憶機能は、実質的に作動不可な状態となる。
【0059】
そして、制御装置5は、ピボットP1を不動点として記憶した後、不動点設定モード及び自在変位モードを終了させるとともに、ピボットP1が不動点として記憶された旨を利用者に報知する。
【0060】
<3.情報の報知>
図2に示された第1表示部19及び第2表示部25は、文字情報や画像情報等の情報を利用者に伝達するモニターである。第1表示部19には、主に手術用ロボット1に関する情報(以下、状態情報という。)が表示される。第2表示部25には、内視鏡27により撮影された画像が表示される。
【0061】
なお、本実施形態に係る内視鏡27は、ステレオカメラ等の三次元的に対象物を撮影可能なカメラにて構成されている。撮影画像処理部25Aは、第2表示部25に立体的な画像を表示するための処理部である。
【0062】
<第1の状態情報の表示>
第1表示処理部21A及び第2表示処理部21Bは、第1表示部19に情報を表示させる。第1表示処理部21Aは、切開位置、つまりピボットP1と処置具7の先端位置との相対位置関係を第1表示部19に表示させる。
【0063】
本実施形態に係る第1表示処理部21Aは、図柄(アイコン)等の画像情報にて当該相対位置関係を表示させる。なお、各アイコンは、ピボットP1及び処置具7の先端位置それぞれを示す図柄である。
【0064】
すなわち、例えば、図4Aは、ピボットP1に対して処置具7の先端位置Stが体内に位置している場合を示す。図4Bは、ピボットP1に対して処置具7の先端位置Stが体外に位置している場合を示す。図4Cは、不動点設定が未だされていない状態を示す。
【0065】
第2表示処理部21Bは、ドレープ検出部23(図2参照)の検出結果を第1表示部19に表示させる。ドレープ検出部23は、ドレープ20がロボットアーム3に装着されているか否かを検出する。なお、ドレープ検出部23は、ロボットアーム3に設けられている。
【0066】
そして、第2表示処理部21Bは、ドレープ20が装着されている場合には、その旨の情報(例えば、図5A参照)を表示する。第2表示処理部21Bは、ドレープ20が装着されていない場合には、その旨の情報(例えば、図5B参照)を表示する。
【0067】
<第2の状態情報の表示>
第3表示処理部29は、処置具7の先端位置と内視鏡27の先端位置との相対的な位置関係を第1表示部19に表示させる。つまり、第3表示処理部29は、少なくとも3つの機能を発揮可能である。
【0068】
すなわち、第1の機能は、処置具7の先端位置に関する情報の取得機能である。第2の機能は、内視鏡27の先端位置に関する情報を算出する位置情報算出機能である。第3の機能は、それらの情報を第1表示部19に表示させる機能である。なお、本実施形態に係る第3表示処理部29は、上記の位置認識機能を利用して第1の機能及び第2の機能を実現する。
【0069】
そして、第3表示処理部29は、位置情報算出機能の算出結果を利用して処置具7の先端と内視鏡27の先端との相対的な位置関係を表示する。具体的には、図6に示されるように、第1表示部19には、処置具7の先端を示す図柄(アイコン)29B及び内視鏡27の先端を示す図柄(アイコン)29Aが少なくとも表示される。
【0070】
さらに、第1表示部19には、2種類のアイコン29A、29Bと共に、内視鏡27の先端部の位置を基準とした全円分度器29Cが表示される。全円分度器29Cは、当該全円分度器29Cの中心が第1表示部19の表示画面の中心と一致した状態で表示される。
【0071】
第1表示部19の表示画面の中心とは、第1表示部19に第2の状態情報のみが表示されているときには、物理的な表示画面(ディスプレイ)の中心(図心)を意味し、第1表示部19に第2の状態情報に加えて他の情報(例えば、第1の状態情報)も表示されているときには、第2の状態情報の表示領域の中心(図心)を意味する。
【0072】
なお、本実施形態に係る手術用ロボット1では、第2の状態情報の表示領域の中心が物理的な表示画面の中心と一致している。このため、複数種類の状態情報表示されている場合であっても、全円分度器29Cの中心が物理的な表示画面の中心と一致する。
【0073】
内視鏡27の先端部を示すアイコン(以下、カメラアイコンという。)29Aは、当該表示画面の中心に表示されている。処置具7を示すアイコン29Bの表示形態又は当該ア
インコン29Bの表示位置は、処置具7の先端位置と内視鏡27の先端位置との相対的な位置関係の変化に応じて変化する。
【0074】
アイコン29Bの表示形態とは、例えば、アイコン29Bの具体的な意匠、つまりアイコン29Bの形状、模様、色彩若しくはこれらの組み合わせ、又はそれら具体的な意匠の表示の仕方(例えば、点滅表示と常時点灯表示)等をいう。
【0075】
なお、表示画面又は表示領域の上下方向は、鉛直方向と一致している。表示画面に対するカメラアイコン29Aの表示角度は、内視鏡27の回転角度に応じて変化する。つまり、内視鏡27が回転すると、これに連動してカメラアイコン29Aも回転する。なお、カメラアイコン29Aの中心位置は、内視鏡27の物理的な位置によらず、常に、表示画面の中心(全円分度器29Cの中心)と一致する。
【0076】
<4.本実施形態に係る手術用ロボットの特徴>
本実施形態に係る手術用ロボット1では、処置具7の先端と内視鏡27の先端との相対的な位置関係が第1表示部19に表示される。これにより、当該手術用ロボット1では、処置具7の先端位置が撮影範囲から外れた場合であっても、施術者が容易に対処可能となり得る。
【0077】
本実施形態では、状態情報が表示されるモニター(第1表示部19)と、内視鏡27により撮影された画像を表示するモニター(第2表示部25)とが別々に設けられている。これにより、施術者は手術をし易くなる。
【0078】
なお仮に、内視鏡27により撮影された画像(以下、撮影画像という。)に加えて状態情報も第2表示部25に表示される構成であると、状態情報の表示が撮影画像の一部を隠すので、施術者は手術をし難くなる。
【0079】
本実施形態では、2種類のアイコン29A、29Bの位置関係と共に、内視鏡27の先端部の位置を基準とした全円分度器29Cが第1表示部19に表示される。これにより、施術者は容易に処置具7の先端位置を把握でき得る。
【0080】
本実施形態では、全円分度器29Cの中心が第1表示部19の表示画面の中心と一致した状態で、当該表示画面の中心に内視鏡27の先端部を示すアイコン29Aが表示され、当該位置関係の変化に応じて、処置具7を示すアイコン29Bの表示形態又は当該アイコン29Bの表示位置が変化する。これにより、施術者は容易に処置具7の先端位置を把握でき得る。
【0081】
本実施形態では、表示画面の上下方向は、鉛直方向と一致している。これにより、施術者は容易に処置具7の先端位置を把握でき得る。
【0082】
本実施形態に係る手術用ロボット1では、手術時にトロッカー15が挿入される部位と処置具7の先端位置との相対位置関係を第1表示部19に表示させる。これにより、「処置具7のうち切開箇所に対応する部位が不動となるように当該処置具7が移動しているか否か」を施術者が確認可能となり得る。
【0083】
つまり、手術用ロボット1が「トロッカー15が挿入される部位を不動点として認識したか否か」、つまり、手術用ロボット1による手術が実行可能な状態になったか否かを施術者が容易、かつ、確実に認識でき得る。
【0084】
第1表示処理部21Aは、不動点設定装置11に記憶された位置をトロッカー15が挿入される部位として利用する。これにより、不動点設定装置11が切開位置を不動点として記憶されているか否かを施術者が容易、かつ、確実に認識でき得る。
【0085】
本実施形態に係る手術用ロボット1では、ドレープ検出部23の検出結果を第1表示部19に表示させる。これにより、施術者は、手術用ロボット1による手術が実行可能な状態になったか否かを容易、かつ、確実に認識でき得る。
【0086】
本実施形態に係る手術用ロボット1は、手術時にトロッカー15が挿入される部位の位置、つまり切開位置を認識するとともに、当該認識した位置をピボットP1として記憶する。これにより、当該手術用ロボット1では、ピボットP1の位置と切開箇所との位置合わせ作業を容易に実施することが可能となり得る。
【0087】
アーム駆動装置9は自在変位モードを実行可能である。これにより、当該手術用ロボット1では、利用者が処置具7の先端を切開箇所に合わせた後、位置認識機能及び記憶機能
を実行させることが可能となる。したがって、ピボットP1の位置と切開箇所との位置合わせ作業が確実に行われ得る。
【0088】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、処置具7を保持するためのロボットアーム3及び内視鏡27を保持するための第2のロボットアームを備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0089】
すなわち、当該開示は、例えば、第2のロボットアームが廃止され、内視鏡27が補助者により保持される構成、又は複数の処置具7を保持する複数のロボットアーム3を備える構成であってもよい。
【0090】
上述の実施形態では、内視鏡27の先端部の位置を基準とした全円分度器29Cが第1表示部19に表示された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、全円分度器29Cが表示されない構成であってもよい。
【0091】
上述の実施形態では、表示画面の上下方向は、鉛直方向と一致し、かつ、位置関係の変化に応じて、処置具7を示すアイコン29Bの表示形態又は当該アイコン29Bの表示位置が変化する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0092】
上述の実施形態に係るロボットアーム3は、ピボットの位置を変更可能なリンク機構にて構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ピボット(不動点)がロボット本体に対して不動な構成であってもよい。
【0093】
上述の実施形態では、第2表示処理部21Bを備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2表示処理部21Bが廃止された構成等であってもよい。
【0094】
上述の実施形態では、アーム駆動装置9が自在変位モードになっていない場合には(S7:NO)、制御装置5は、位置認識機能及び記憶機能を実行不可な状態とした。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0095】
すなわち、当該開示は、例えば、自在変位モードになっていない場合にも位置認識機能及び記憶機能を実行不可な状態となる構成であってもよい。なお、この場合には、マスター側の入力操作装置を用いて処置具7の先端を切開位置に合致させてもよい。
【0096】
上述の実施形態に係る不動点設定装置11は、ロボットアーム3の姿勢から処置具7の先端位置を示す座標を取得して当該先端位置を認識した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ステレオカメラや深度カメラ等の3Dカメラを用いた画像解析技術にて当該先端位置を認識する構成であってもよい。
【0097】
上述の実施形態では、利用者が処置具7又は術具相当品の先端を切開位置に合致させた状態で当該先端を認識することにより、切開位置を認識する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、切開位置にレーザ光を照射し、当該照射位置を画像解析技術にて認識する構成であってもよい。
【0098】
上述の実施形態では、自在変位可能ボタン17Bが操作されたときに自在変位モードに移行する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、不動点設定モードに移行すると同時に自動的に自在変位モードに移行する構成であってもよい。
【0099】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0100】
1… 手術用ロボット
3… ロボットアーム
5… 制御装置
7… 処置具
9… アーム駆動装置
11… 不動点設定装置
13… 駆動制御装置
15… トロッカー
17A… 設定ボタン
17B… 自在変位可能ボタン
19… 第1表示部
20… ドレープ
21A… 第1表示処理部
21B… 第2表示処理部
23… ドレープ検出部
25… 第2表示部
25A… 撮影画像処理部
27… 内視鏡
29… 第3表示処理部
【要約】      (修正有)
【課題】処置具の先端位置が撮影範囲から外れた場合であっても、施術者が容易に対処可能な手術用ロボットの一例を提供する。
【解決手段】手術用ロボットは、処置具の先端と内視鏡の先端との相対的な位置関係を第1表示部に表示する。具体的には、全円分度器29Cと処置具の先端を示す図柄(アイコン)29B及び内視鏡の先端を示す図柄(アイコン)29Aが少なくとも表示される。これにより、手術用ロボットでは、処置具の先端位置が撮影範囲から外れた場合であっても、施術者が容易に対処可能となり得る。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6