特許第6754151号(P6754151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6754151
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】めっき積層体
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/52 20060101AFI20200831BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20200831BHJP
   C23C 18/42 20060101ALI20200831BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   C23C18/52 B
   C23C18/34
   C23C18/42
   B32B15/01 K
   B32B15/01 D
   B32B15/01 E
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-25108(P2020-25108)
(22)【出願日】2020年2月18日
【審査請求日】2020年2月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399133947
【氏名又は名称】日本高純度化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉羽健児
(72)【発明者】
【氏名】矢口雄介
(72)【発明者】
【氏名】簑輪寛
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
H05K 3/10− 3/26
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅である第一金属を主成分とする被めっき体の上に金、白金又は銀である第二金属を主成分とするめっき層Aを析出させた後、該めっき層Aの上にパラジウムである第三金属を主成分とするめっき層Bを析出させ、その後更に、該めっき層Bの上に、該第三金属を主成分とするめっき層Cを析出させるめっき積層体の製造方法であって、
該めっき層Bが、置換めっき液中に含有される該第三金属のイオンと、該被めっき体に含有される該第一金属又は該めっき層Aに含有される該第二金属との間の置換反応によって形成される置換めっき層であり、
該めっき層Cが、還元めっき液中に含有される還元剤と該第三金属イオンとの酸化還元反応によって形成される還元めっき層であることを特徴とするめっき積層体の製造方法。
【請求項2】
上記めっき層Aが、置換めっき液中に含有される上記第二金属のイオンと、上記被めっき体に含有される上記第一金属との間の置換反応によって形成される置換めっき層である請求項1に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項3】
上記めっき層Cを析出させた後、該めっき層Cの上に、該めっき層Cの主成分の金属とは異なる金属を主成分とするめっき層Dを析出させる請求項1又は請求項に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項4】
上記めっき層Dの主成分の金属が金である請求項に記載のめっき積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき積層体の製造方法に関し、更に詳しくは、導体回路等の上に形成するめっき積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体装置は、銅や銀等の電気抵抗の低い金属からなる導体回路を有している。また、ほぼ全ての導体回路に対して、はんだ接合又はワイヤ接合が行われる。
しかし、これら導体回路表面が酸化した場合、はんだ接合やワイヤ接合が困難となる。
このため、導体回路を形成する被めっき体の表面にめっき皮膜を形成し、そのめっき皮膜に対してはんだ接合やワイヤ接合を行うことが行われている。
【0003】
特に、近年の配線の微細化や高密度化に伴い、電解めっき用配線を必要としない無電解めっき技術の適用が一般に行われている。
中でも、はんだ接合性、ワイヤ接合性に優れた導体回路の表面に形成する皮膜として、無電解ニッケル、パラジウム及び金からなる3層皮膜(ENEPIG皮膜)や、無電解パラジウム及び金からなる2層皮膜(EPIG皮膜)等が知られている。
【0004】
これらの無電解めっきによる皮膜の形成方法には、大別して置換反応を主とするめっき(以下、「置換めっき」という場合がある。)、還元反応を主とするめっき(以下、「還元めっき」という場合がある。)の二種類が知られている。
【0005】
置換めっきは、めっき皮膜を形成する金属のイオンを含む液(以下、「めっき液」という場合がある。)中に被めっき体を浸漬した際に、被めっき体の構成金属が金属イオンとなってめっき液中に溶出し、同時に放出される電子がめっき皮膜を形成する金属のイオンに与えられ、電子を与えられたイオンが被めっき体表面に金属として析出する反応を主とするものである。
【0006】
還元めっきは、還元剤を含むめっき液中に被めっき体を浸漬した際に、還元剤の酸化反応が進行し、同時に放出される電子がめっき皮膜を形成する金属のイオンに与えられ、電子を与えられたイオンが被めっき体表面に金属として析出する反応を主とするものである。
【0007】
置換めっきには、被めっき体の構成金属とめっき皮膜を形成する金属の組み合わせにイオン化傾向に基づく制約がある、析出するめっき皮膜の膜厚を厚くしにくい、被めっき体が局所的に腐食する場合がある、等の問題が存在する。
このため、これらの問題を回避する必要がある場合には、還元めっきが使用される傾向にある。
【0008】
しかし、めっき皮膜形成を目的として還元めっきを行おうとする際に、被めっき体表面で還元剤の酸化反応が必ず進行するとは限らない。そして、還元剤の酸化反応が進行しなければ還元めっきは進行しない。
このため、還元めっきが進行しない又は進行しにくい被めっき体に還元めっきを行う際には、その表面で還元剤の酸化反応が進行しやすいパラジウムやその合金等を、置換めっきにより触媒として被めっき体に付加した後に、還元めっきが行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
しかし、これらの公知の表面処理方法により皮膜を形成した際には、触媒の付加時に被めっき体が局所的に腐食される、被めっき体表面上に酸化層が形成される、等の現象が発生する場合がある。その結果として、形成された還元めっき皮膜の膜厚が薄い場合には、はんだ接合時に接合部近傍のはんだ内にボイドが発生しやすいという問題点があった。はんだ接合部内にボイドが存在すると、十分なはんだ接合強度が得られない場合がある。
【0010】
被めっき体の局所的な腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を防止しながら触媒を付加し、はんだ接合時にボイドが発生しないめっきを安定して行えるようにすることも検討されている(例えば、特許文献2〜3を参照)。
【0011】
しかしながら、これらの方法で付加可能な触媒の金属種類は金等の一部に限られており、従来のパラジウムやその合金等を触媒として用いた場合と比較し、還元めっきが進行しにくい。
このため、還元めっき液に汚染物質等が混入し、めっき液が劣化した際に、還元めっきのスキップ(所定のめっき処理を行った場合に、めっき皮膜の析出が起こらない現象)が発生する場合がある。
【0012】
近年、導体回路の配線の微細化や高密度化はますます進行していることから、かかる導体回路のはんだ接合やワイヤ接合を信頼性高く施すことのできる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−317729号公報
【特許文献2】特開2013−108180号公報
【特許文献3】特開2017−222891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、導体回路等の表面に付与するめっき積層体(めっき皮膜の積層体)であって、該めっき積層体の上にはんだ接合した際に高い接合強度を維持することができ、また、安定的に製造できるようなめっき積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、その表面で還元剤の酸化反応(すなわち、還元めっき液による新たな層(めっき層C)の積層)が進行しやすいパラジウムやその合金等の層(めっき層B)を、直接被めっき体の上に設けるのではなく、被めっき体とめっき層Bとの間に、めっき層B積層時の被めっき体の局所的な腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を防止するための層(めっき層A)を設けることにより、被めっき体、めっき層A、めっき層B、めっき層Cという順序で積層されためっき積層体のはんだ接合性が良好となることを見出した。また、本発明者は、かかる層構成の場合、還元めっきによるめっき層Cのスキップも発生しにくくなることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、第一金属を主成分とする被めっき体の上に第二金属を主成分とするめっき層Aを析出させた後、該めっき層Aの上に第三金属を主成分とするめっき層Bを析出させ、その後更に、該めっき層Bの上に、該第二金属、該第三金属又は第四金属を主成分とするめっき層Cを析出させるめっき積層体の製造方法であって、
該めっき層Bが、置換めっき液中に含有される該第三金属のイオンと、該被めっき体に含有される該第一金属又は該めっき層Aに含有される該第二金属との間の置換反応によって形成される置換めっき層であり、
該めっき層Cが、還元めっき液中に含有される還元剤と金属イオンとの酸化還元反応によって形成される金及び/又はニッケルを主成分としない還元めっき層であることを特徴とするめっき積層体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導体回路等の表面に付与するめっき積層体(めっき皮膜の積層体)であって、該めっき積層体の上にはんだ接合した際に高い接合強度を維持することができ、また、安定的に製造できるようなめっき積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明により製造されるめっき積層体の構造を示す模式図である。
図2】本発明により製造されるめっき積層体(めっき層Dを有する場合)の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0020】
本発明は、第一金属を主成分とする被めっき体Sの上に第二金属を主成分とするめっき層Aを析出させた後、該めっき層Aの上に第三金属を主成分とするめっき層Bを析出させ、その後更に、該めっき層Bの上に、該第二金属、該第三金属又は第四金属を主成分とするめっき層Cを析出させるめっき積層体の製造方法に関する。図1に、本発明により製造されるめっき積層体の構造を示す。
【0021】
本明細書において、「めっき層」とは、めっきによって形成される金属の層である。「めっき層」は、孔の無い皮膜状の物に限られるわけではなく、孔のある皮膜状の物や、核状の物も「めっき層」に含まれる。
【0022】
本発明におけるめっき層を構成する「第一金属」、「第二金属」、「第三金属」及び「第四金属」は、全て互いに異なる金属である。
本発明におけるめっき層を構成する「金属」は、純金属には限られず、合金であってもよい。また、本発明におけるめっき層には、金属以外の元素(例えば、リン(P)、硫黄(S)、ホウ素(B)、炭素(C)等)が含まれていてもよい。
【0023】
「金属Xを主成分とする」とは、そのめっき層を構成する「金属」のうち、モル基準で最も量の多い金属が金属Xであることを意味する。
【0024】
本発明におけるめっき層としては、置換反応によって形成される置換めっき層や、酸化還元反応によって形成される還元めっき層、等が挙げられる。
【0025】
「置換反応によって形成される」とは、置換反応のみによってめっき層が形成される場合のみならず、置換反応と酸化還元反応が同時に起こってめっき層が形成される場合も含まれる。置換反応と還元反応が同時に起こる場合、めっき層中の金属のうち、60%以上が置換反応によって形成されるのが好ましく、80%以上が置換反応によって形成されるのがより好ましく、90%以上が置換反応によって形成されるのが特に好ましい。
【0026】
「酸化還元反応によって形成される」とは、酸化還元反応のみによってめっき層が形成される場合のみならず、酸化還元反応と置換反応が同時に起こってめっき層が形成される場合も含まれる。酸化還元反応と置換反応が同時に起こる場合、めっき層中の金属のうち、60%以上が酸化還元反応によって形成されるのが好ましく、80%以上が酸化還元反応によって形成されるのがより好ましく、90%以上が酸化還元反応によって形成されるのが特に好ましい。
【0027】
<被めっき体S>
被めっき体Sは、その上にめっき層を形成されるための基体をいう。被めっき体Sは、第一金属を主成分とする。第一金属は、導体回路を形成する金属であり、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)等が例示できる。
【0028】
<めっき層A>
めっき層Aは、被めっき体Sの上に析出するめっき層である。めっき層Aは、第二金属を主成分とする。
【0029】
第二金属は、被めっき体Sの局所的な腐食や被めっき体Sの表面への酸化層の形成を伴わずに、めっき液から被めっき体Sに析出可能な金属である。第二金属は、水溶液中で安定に存在できるものであれば特に限定は無い。
第二金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が挙げられる。
金、銀又は白金は、めっき層Aとして被めっき体表面に形成するのが容易であり、被めっき体Sの局所的な腐食や被めっき体Sの表面への酸化層の形成の防止効果が大きいため、第二金属として使用するのが特に好ましい。
【0030】
めっき層Aを形成するためのめっき液は、めっき層Aの形成時に被めっき体を局所的に腐食せず、被めっき体上に酸化膜を形成しないものであれば特に限定はない。めっき層Aを形成するためのめっき液は、置換めっき液でもよいし、還元めっき液でもよい。
【0031】
めっき層Aを形成するための置換めっき液は、第一金属と置換可能なイオン化傾向を有する金属の水溶性の金属塩(第二金属の塩)を含有するものである。言い換えれば、めっき層Aを置換めっき液により形成する場合、第二金属は、第一金属よりもイオン化傾向が小さい。
【0032】
めっき層Aを形成するための還元めっき液は、水溶性の金属塩(第二金属の塩)及び還元剤を含有する。
還元剤としては、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、等が例示される。還元剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
めっき層Aを形成するためのめっき液が含有する水溶性の金属塩(第二金属の塩)に特に限定は無い。
第二金属が金の場合、シアン化金塩、塩化金塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩等が挙げられる。
第二金属が銀の場合、シアン化銀塩、硝酸銀塩、メタンスルホン酸銀塩等が挙げられる。
第二金属が白金の場合、塩化白金酸塩、ジニトロジアンミン白金、ヘキサヒドロキソ白金酸塩等が挙げられる。
【0034】
めっき層Aを形成するためのめっき液中における水溶性の金属塩(第二金属の塩)の濃度は、特に限定は無いが、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることが特に好ましい。また、5000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、めっき層Aの形成速度が十分な大きさとなる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0035】
めっき層Aを形成するためのめっき液のpHは、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、9.5以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、被めっき体の局所腐食や被めっき体表面上での酸化層の形成を引き起こしにくく、めっき積層体を高品質に保ちやすい。
【0036】
めっき層Aの膜厚は、特に限定は無いが、0.0003μm以上であることが好ましく、0.0005μm以上であることがより好ましく、0.001μm以上であることが特に好ましい。また、0.05μm以下であることが好ましく、0.04μm以下であることがより好ましく、0.02μm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、次工程のめっき層Bの形成時に、被めっき体の局所腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を引き起こしにくく、めっき積層体を高品質に保ちやすい。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0037】
なお、めっき層Aは、最外層ではないので、平坦な皮膜である必要はなく、孔のある皮膜であってもよいし、核状であってもよい。
上記「膜厚」とは、「平均膜厚」をいう(本明細書において、以下同じ)。
【0038】
めっき層Aを形成する際のめっき液の温度は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが特に好ましい。
また、めっき層Aを形成する時間(めっき時間)は、0.5分以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることが特に好ましい。また、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分以下であることが特に好ましい。
めっき液の温度やめっき時間が上記範囲内であると、膜厚を前記した範囲にしやすい。
【0039】
上記のように、めっき層Aは、厚さを必要とするものではないので、コストの面や、還元剤による影響を避けるために、めっき層Aは、置換めっき液で形成するのが好ましい。すなわち、めっき層Aは、置換めっき液中に含有される第二金属のイオンと、上記被めっき体に含有される第一金属との間の置換反応によって形成される置換めっき層であることが好ましい。
【0040】
<めっき層B>
めっき層Bは、めっき層Aの上に析出するめっき層である。めっき層Bは、第三金属を主成分とする。
【0041】
めっき層Bは、置換めっき液中に含有される第三金属のイオンと、被めっき体Sに含有される第一金属又はめっき層Aに含有される第二金属との間の置換反応によって形成される置換めっき層である。
【0042】
上記のように、めっき層Aは、孔のある皮膜や核状の層であってもよい。このため、めっき層Bを形成するための置換反応は、第三金属のイオンと、被めっき体Sに含有される第一金属との間で起こることがある。
【0043】
第三金属は、めっき液から析出可能な金属であり、その金属表面でめっき層Cを形成するための還元めっきが安定して進行し、水溶液中で安定に存在できるものであれば特に限定は無い。
第三金属としては、例えば、パラジウム(Pd)、レニウム(Re)等が挙げられる。パラジウムは、その表面で還元反応が容易に進行し、好適にめっき層Cを還元めっきによって形成できることから、めっき層Bに含有される第三金属として特に好ましい。
【0044】
めっき層Bを形成するためのめっき液は、置換めっき液である。該めっき液は、第一金属又は第二金属と置換可能なイオン化傾向を有する金属の水溶性の金属塩(第三金属の塩)を含有する。すなわち、第三金属は、第一金属又は第二金属よりもイオン化傾向が小さい。
【0045】
めっき層Bを形成するためのめっき液(置換めっき液)は、めっき層A上でのめっき層Bの形成時に被めっき体を局所的に腐食せず、被めっき体上に酸化膜を形成しないものであれば特に限定はない。
【0046】
めっき層Bを形成するためのめっき液が含有する水溶性の金属塩(第三金属の塩)に特に限定は無い。
第三金属がパラジウムの場合、塩化パラジウム、ジクロロテトラアンミンパラジウム塩、ジニトロテトラアンミンパラジウム塩等が挙げられる。
【0047】
めっき層Bを形成するためのめっき液中における水溶性の金属塩(第三金属の塩)の濃度は、特に限定は無いが、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることが特に好ましい。また、5000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、めっき層Bの形成速度が十分な大きさとなる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0048】
めっき層Bを形成するためのめっき液のpHは、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、9.5以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、被めっき体の局所腐食や被めっき体表面上での酸化層の形成を引き起こしにくく、めっき積層体を高品質に保ちやすい。
【0049】
めっき層Bの膜厚は、特に限定は無いが、0.0003μm以上であることが好ましく、0.0005μm以上であることがより好ましく、0.001μm以上であることが特に好ましい。また、0.05μm以下であることが好ましく、0.04μm以下であることがより好ましく、0.02μm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、次工程のめっき層Cの形成が安定して進行しやすい。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0050】
めっき層Bを形成する際のめっき液の温度は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが特に好ましい。
また、めっき層Bを形成する時間(めっき時間)は、0.5分以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることが特に好ましい。また、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分以下であることが特に好ましい。
めっき液の温度やめっき時間が上記範囲内であると、膜厚を前記した範囲にしやすい。
【0051】
<めっき層C>
めっき層Cは、めっき層Bの上に析出するめっき層である。めっき層Cは、第二金属、第三金属又は第四金属を主成分とする。
ただし、金及び/又はニッケルは、めっき層Cの主成分からは除外される。
【0052】
めっき層Cは、還元めっき液中に含有される還元剤と金属イオン(第二金属、第三金属又は第四金属のイオン)との酸化還元反応によって形成される還元めっき層である。
【0053】
めっき層Cの主成分の金属(第二金属、第三金属又は第四金属)は、還元めっき液から析出可能な金属であり、水溶液中で安定に存在できるものであれば特に限定は無く、めっき積層体の形成目的に応じて選択することができる。
例えば、第一金属の皮膜表面への熱拡散の防止を目的とする場合には、めっき層Cの主成分として、パラジウム等を使用することができる。
【0054】
めっき層Cを形成するためのめっき液(還元めっき液)は、水溶性の金属塩(第二金属、第三金属又は第四金属の塩)及び還元剤を含有する。
還元剤としては、次亜リン酸やその塩、ギ酸やその塩、ヒドラジン、等が例示される。還元剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
めっき層Cを形成するためのめっき液が含有する水溶性の金属塩としては、前記した第二金属の塩や第三金属の塩等が例示できる。
【0056】
めっき層Cを形成するためのめっき液中における水溶性の金属塩の濃度は、特に限定は無いが、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることが特に好ましい。また、5000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、めっき層Cの形成速度が十分な大きさとなる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0057】
めっき層Cを形成するためのめっき液のpHは、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、9.5以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、金属塩の沈殿やめっき液中での異常反応によるめっき槽内への金属の析出を起こしにくい。
【0058】
めっき層Cは、皮膜表面への熱拡散の防止等の目的で形成される層であるので、その膜厚は、めっき層Aやめっき層Bよりも厚い。めっき層Cは、厚い皮膜を形成可能な還元めっきにより形成される。
【0059】
具体的には、めっき層Cの膜厚は、特に限定は無いが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが特に好ましい。また、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、皮膜としての性能を十分に発揮することができる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0060】
めっき層Cを形成する際のめっき液の温度は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが特に好ましい。
また、めっき層Cを形成する時間(めっき時間)は、0.5分以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることが特に好ましい。また、240分以下であることが好ましく、120分以下であることがより好ましく、60分以下であることが特に好ましい。
めっき液の温度やめっき時間が上記範囲内であると、膜厚を前記した範囲にしやすい。
【0061】
めっき層Cの主成分の金属は第三金属とすることができる。この場合、めっき層Bとめっき層Cの主成分が同一、ということになる。
例えば、めっき層Bの主成分とめっき層Cの主成分の金属を、ともにパラジウムとすることができる。すなわち、パラジウムめっき層を、置換パラジウムめっき層と還元パラジウムめっき層の2層とすることができる。
このようにすることで、還元めっきのスキップが発生しにくくなり、比較的厚いパラジウム層を安定して形成することができる。
【0062】
<めっき層D>
本発明では、めっき層Cを析出させた後、めっき層Cの上に、めっき層Cの主成分の金属とは異なる金属を主成分とするめっき層Dを析出させてもよい。図2に、そのようにして製造されるめっき積層体の構造を示す。
【0063】
めっき層Dは、めっき層Cの上に析出するめっき層である。めっき層Dの主成分の金属は、めっき層Cの主成分の金属とは異なる。
めっき層Dを構成する金属は、単体金属であってもよいし、合金であってもよい。
【0064】
めっき層Dの主成分の金属はめっき液から析出可能な金属であり、水溶液中で安定に存在できるものであれば特に限定は無く、めっき積層体の形成目的に応じて選択することができる。
例えば、皮膜表面の酸化の防止を目的とする場合には、金等を使用することができる。
【0065】
めっき層Dを形成するためのめっき液は、置換めっき液でもよいし、還元めっき液でもよい。
【0066】
めっき層Dを形成するためのめっき液は、水溶性の金属塩を含有する。かかる水溶性の金属塩に特に限定は無い。
例えば、めっき層Dの主成分の金属が金の場合、シアン化金塩、塩化金塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩等が挙げられる。
【0067】
めっき層Dを形成するためのめっき液中における水溶性の金属塩の濃度は、特に限定は無いが、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることが特に好ましい。また、5000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、めっき層Dの形成速度が十分な大きさとなる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0068】
めっき層Dを形成するためのめっき液のpHは、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、9.5以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましい。
上記範囲内であると、金属塩の沈殿やめっき液中での異常反応によるめっき槽内への金属の析出を起こしにくい。
【0069】
めっき層Dの膜厚は、特に限定は無いが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが特に好ましい。また、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。
上記下限以上であると、皮膜としての性能を十分に発揮することができる。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0070】
めっき層Dを形成する際のめっき液の温度は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。また、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが特に好ましい。
また、めっき層Dを形成する時間(めっき時間)は、0.5分以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましく、2分以上であることが特に好ましい。また、240分以下であることが好ましく、120分以下であることがより好ましく、60分以下であることが特に好ましい。
めっき液の温度やめっき時間が上記範囲内であると、膜厚を前記した範囲にしやすい。
【0071】
本発明の製造方法で製造しためっき積層体が、その上にはんだ接合した際に高い接合強度を維持することができ、また、安定的に製造できる作用・原理は明らかではないが、以下のことが考えられる。ただし本発明は、以下の作用・原理の範囲に限定されるわけではない。
【0072】
特許文献1等のように、パラジウムやその合金等の層を直接被めっき体に付加した場合には、被めっき体の局所的な腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を生じてしまう。これに対して、めっき層Aを被めっき体表面に形成した後に、パラジウムやその合金等をめっき層Bとして形成することで、めっき層Aが被めっき体の保護層となり、被めっき体の局所的な腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を防止しながらめっき層Bを形成することができる。
そして、めっき層B表面では、還元反応がめっき層A表面と比較して進行しやすいため、めっき層Bの形成後に還元めっきによってめっき層Cを安定して形成することができる。
これにより、本発明では、被めっき体の局所的な腐食や被めっき体表面への酸化層の形成を防止しながら、必要とする性能を持つめっき皮膜を安定的に製造することができ、このようにして製造された皮膜は高いはんだ接合強度を維持している。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例1
[めっき積層体の作製]
ガラスクロスエポキシ材(FR−4)に銅箔を張り付け、ソルダーレジストにてφ0.5mm径の開口系を設けた基板(40mm×40mm×1mmt)を被めっき体として、以下のようにして、被めっき体、めっき層A、めっき層B、めっき層Cの順で積層されためっき積層体を作製した。
【0075】
被めっき体に対し、脱脂、ソフトエッチング及び酸洗を行った。脱脂は、市販の洗浄液(PAC−200、(株)ムラタ製)を用い50℃で10分間行った。ソフトエッチングは、市販のソフトエッチング剤(MEOX、(株)ムラタ製)を用い30℃で5分間行った。酸洗は、10v/v%硫酸を用い、室温で1分間行った。
【0076】
めっき層Aの形成のためのめっき液として、置換金めっき液(IM−GOLD PC、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき層Aを形成した。めっき層Aの形成のためのめっき液の温度は80℃とし、めっき時間は5分とした。
【0077】
次に、めっき層Bの形成のためのめっき液として、置換パラジウムめっき液(IM−Pd NCA、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき層Bを形成した。めっき層Bの形成のためのめっき液の温度は55℃とし、めっき時間は5分とした。
【0078】
次に、めっき層Cの形成のためのめっき液として、還元パラジウムめっき液(ネオパラブライト DP、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき層Cを形成した。該還元パラジウムめっき液には、実用時に想定される汚染物質として、硫酸銅五水和物(和光純薬(株)製)0.1g/Lを添加した。めっき層Cの形成のためのめっき液の温度は50℃とし、めっき時間は5分とした。
【0079】
[めっき層膜厚の測定]
形成した各めっき層の厚さを、蛍光X線分光分析装置(FT−150、(株)日立ハイテクサイエンス製)により測定した。
実施例1で得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
【0080】
[めっき層Cのスキップの評価]
光学顕微鏡で10倍の倍率で、開口部の付近を観測し、銀白色だった場合、めっき層Cのスキップは「なし」、橙色や茶色だった場合、めっき層Cのスキップは「あり」と判定した。
実施例1で得られためっき積層体では、めっき層Cのスキップは見られなかった。
【0081】
[はんだ接合性の評価]
被めっき体にめっき層を積層することで作製した前記めっき積層体に対して、前加熱を行い、その後、SR開口部にはんだボール(千住金属工業(株)製、SAC405、φ0.6mm)をリフロー装置((株)日本パルス技術研究所製、RF−430−M2)を用いて実装し、ボンドテスタ(Dage社製、ボンドテスタSERIES4000 OPTIMA)を用いてボールプル試験を行い、破断モードを評価した。
ボールプル試験は、各めっき積層体につき20点で実施した。はんだ内での破壊を「良好」とし、はんだ−下地界面での破壊を「不良」とし、「良好」である割合を算出し、はんだ接合良品率(%)を計算した。
【0082】
はんだ実装等の条件については、以下の通りである。
・リフロー環境:窒素雰囲気下
・リフロー前加熱:175℃、4時間
・実装前リフロー回数:3回
・フラックス:KESTER製、TSF6502
・テストスピード:5000μm/秒
・はんだマウント後エージング:1時間
【0083】
実施例1で得られためっき積層体では、得られためっき積層体のはんだ接合性は良好であった。
【0084】
実施例2
めっき層Aの形成のためのめっき時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.01μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0085】
実施例3
めっき層Bの形成のためのめっき時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.01μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0086】
実施例4
めっき層Cの形成のためのめっき時間を10分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.1μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0087】
実施例5
めっき層Aの形成のためのめっき液として、置換銀めっき液(IM−SILVER、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき液の温度は45℃とし、めっき時間を1分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0088】
実施例6
めっき層Aの形成のためのめっき液として、市販の置換白金めっき液(弱酸性塩化白金酸系めっき液)を使用し、めっき液の温度は45℃とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0089】
実施例7
めっき層Aの形成のためのめっき液として、還元金めっき液(HY−GOLD CN、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき時間を1分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0090】
実施例8
めっき層Aの形成のためのめっき液として、市販の還元銀めっき液(弱アルカリ性硝酸銀系めっき液)を使用し、めっき液の温度は50℃とし、めっき時間を1分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0091】
実施例9
めっき層Aの形成のためのめっき液として、還元白金めっき液(OT−1、日本高純度化学(株)製)を使用し、めっき液の温度は30℃とし、めっき時間を1分とした以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0092】
実施例10
実施例1において、めっき層Cの形成後に、めっき層Dの形成のためのめっき液として還元金めっき液(HY−GOLD CN、日本高純度化学(株)製)を用い、めっき層Dを形成した。めっき層Dの形成のためのめっき液の温度は80℃とし、めっき時間は10分とした。作製しためっき積層体を、実施例1と同様に評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μm、めっき層Dの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られず、得られためっき積層体のはんだ接合性も良好であった。
【0093】
比較例1
めっき層Aを形成せず、被めっき体に直接めっき層Bを形成した以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Bの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップは見られなかったが、得られためっき積層体のはんだ接合性は不良だった。
【0094】
比較例2
めっき層Bを形成せず、めっき層Aの形成後にめっき層Cを形成した以外は、実施例1と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップが見られた。スキップの発生していない箇所のはんだ接合性は良好だった。
【0095】
比較例3
めっき層Bを形成せず、めっき層Aの形成後にめっき層Cを形成した以外は、実施例5と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μmだったが、めっき層Cの形成は進行しなかった。
【0096】
比較例4
めっき層Bを形成せず、めっき層Aの形成後にめっき層Cを形成した以外は、実施例6と同様にして、めっき積層体を作製し、評価した。
得られためっき層Aの膜厚は0.005μm、めっき層Cの膜厚は0.05μmであった。
めっき層Cのスキップが見られた。スキップの発生していない箇所のはんだ接合性は良好だった。
【0097】
各実施例・比較例の結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1において、括弧で囲った部分は、以下を意味する。
a:めっき層Cのスキップが発生していない箇所のみで測定した場合の膜厚。
b:全測定点でスキップが発生。
c:めっき層Cのスキップが発生していない箇所のみで測定した場合の良品率。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のめっき積層体の製造方法は、導体回路等の表面に必要とする性能を持つめっき積層体を高いはんだ接合強度を維持しながら安定的に製造できるので、本発明は、電気電子部品製造等の分野で広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0101】
S 被めっき体
A めっき層A
B めっき層B
C めっき層C
D めっき層D
【要約】
【課題】導体回路等の表面に付与するめっき積層体(めっき皮膜の積層体)であって、該めっき積層体の上にはんだ接合した際に高い接合強度を維持することができ、また、安定的に製造できるようなめっき積層体を提供する。
【解決手段】第一金属を主成分とする被めっき体Sの上に第二金属を主成分とするめっき層Aを析出させた後、めっき層Aの上に第三金属を主成分とするめっき層Bを置換反応により析出させ、その後更に、めっき層Bの上に、該第二金属、該第三金属又は第四金属を主成分とするめっき層Cを酸化還元反応により析出させる。具体的なめっき層の構成としては、例えば、めっき層Aが金、白金又は銀、めっき層Bがパラジウム、めっき層Cがパラジウムである。
【選択図】図1
図1
図2