【文献】
NATIONAL CENTRAL UNIVERSITY,METHOD FOR PREPARING PEROVSKITE THIN FILM AND SOLAR CELL,台湾特許第I474992号公報,TW,2015年 3月 1日
【文献】
Yi Wei,外4名,Photostability of 2D Organic-Inorganic Hybrid Perovskites,Materials,スイス,MDPI AG,2014年,Vol. 7,p. 4789-4802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<本技術を適用した固体撮像素子の実施の形態の構成例>
図1は、本技術を適用した光電変換膜を用いた縦分光型の固体撮像素子の一実施の形態の構成例を示した図である。
【0029】
光電変換膜を用いた縦分光型の固体撮像素子の構成例は、
図1の左から示される第1乃至第3の固体撮像素子11からなる3種類の構成とされる。3種類のいずれの構成においても
図1中の上部となる光源から図中の下部に向かって光電変換膜およびフォトダイオードのいずれかからなる光電変換素子が積層された構造とされる。
【0030】
より詳細には、第1の固体撮像素子11は、
図1の左上部で示されるように、最上層にG(緑)色の光を光電変換する光電変換膜よりなる光電変換素子21が設けられ、その下に、上から、B(青)色、およびR(赤)色のシリコン製のフォトダイオードからなる光電変換素子31,32が積層されている。
【0031】
このような構成により、
図1の左下部で示されるように、光電変換素子21によりG(緑)色(一点鎖線)の波長帯の光により光電変換がなされ、その後、順次、波長帯が短い順に光電変換素子31,32によりB(青)色(破線)、およびR(赤)色(実線)の光により光電変換がなされることで、RGB(赤色、緑色、青色)が縦方向に分光されて光電変換される。
【0032】
また、第2の固体撮像素子11は、
図1の中央上部で示されるように、最上層から順にB(青)色およびG(緑)色の光を光電変換する光電変換膜よりなる光電変換素子22,21が設けられ、その下に、R(赤)色のシリコン製のフォトダイオードからなる光電変換素子32が積層されている。
【0033】
このような構成により、
図1の中央下部で示されるように、光電変換素子22,21により順次波長帯が短い順に、B(青)色およびG(緑)色の波長帯の光により光電変換がなされ、その後、光電変換素子32によりR(赤)色の光により光電変換がなされることで、RGB(赤色、緑色、青色)が縦方向に分光されて光電変換される。
【0034】
さらに、第3の固体撮像素子11は、
図1の右上部で示されるように、最上層から順にB(青)色、G(緑)色、およR(赤)色の光を光電変換する光電変換膜よりなる光電変換素子22,21,23が積層されている。
【0035】
このような構成により、
図1の中央下部で示されるように、光電変換素子22,21,23により順次波長帯が短い順に、B(青)色、G(緑)色、R(赤)色の波長帯の光により光電変換がなされることで、RGB(赤色、緑色、青色)が縦方向に分光されて画素信号が生成される。
【0036】
ここで、光電変換膜より構成される光電変換素子21乃至23は、層状(2D:2 Dimension)有機ペロブスカイト材料の薄膜より構成されている。
【0037】
層状有機ペロブスカイト材料とは、有機-無機ぺロブスカイト型化合物の一つの材料群であり、例えば、有機-無機層状ペロブスカイト型化合物(RNH3)2-Metal-X4で記載される。有機層(RNH3+)と無機半導体層(PbX64-)が交互に積層した構造の自己組織的な構造を持つ。Rがメチル等の小さい官能基である場合、3D型構造を取り、ブロードな吸収スペクトルを持つようになる。
【0038】
しかしながら、Rが、例えば、フェニル基以上の大きな官能基を持つと、3D構造ではなく、層状の2D構造を持つようになる。2D構造になると、特定の波長において急峻な分光特性を持つようになることが知られている。
【0039】
光電変換素子21乃至23において使用される光電変換膜を構成する層状有機ペロブスカイト材料は、以下の一般式(1)で表される材料とされる。
【0040】
(RNH3)n-Metal-X(2n)
一般式(1)
【0041】
ここで、一般式(1)において、Rは、一級アミンを持つ芳香族または複素環化合物のうちの少なくとも1種類以上である。また、Metalは、Pb、Sn、およびMnの少なくと1種類以上を含む金属である。さらに、Xは、F、Cl、Br、およびIより少なくとも1種類以上を含むハロゲンである。また、nは、自然数である。
【0042】
層状有機ペロブスカイト材料は、以下のように合成する。すなわち、まず、以下の反応式(1)で示されるように、フェネチルアミン(MA)と、ヨウ化水素(HI)と反応させて、フェネチルアミンのヨウ化水素塩(MAH
+I
-)を合成する。次に、以下の反応式(2)で示されるように、ジメチルホルムアミドの有機溶媒に、ハロゲン化アミンであるフェネチルアミンのヨウ化水素塩(MAH
+I
-)と、ヨウ化鉛(PbI2)とを2:1で溶解させ、層状有機ペロブスカイト((MAH)2PbI4)が溶解したインクを作成する。
【0043】
【化1】
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【0044】
さらに、層状有機ペロブスカイトを溶解させたインクが、洗浄したガラスに、スピンコートされることにより層状有機ペロブスカイト材料が光電変換層として形成される。ここで、コート条件は、例えば、回転数が2000rpmであり、回転時間が60sであり、この条件において、作成された層状有機ペロブスカイト材料の膜厚は、200nm程度となる。
【0045】
このようにして生成された層状有機ペロブスカイト材料は、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察すると、
図2で示されるように良好な平坦性が示される。
【0046】
また、紫外可視分光評価装置を用いて、層状有機ペロブスカイト材料の分光特性を測定すると、例えば、
図3で示されるように522nmn付近で吸収率がピークとなる。
図3で示されるように、吸収率がピークとなる522nmについて、厚みあたりの光吸収係数αは約80000であり、高い吸収係数を持つことが確認されており、分光特性の観点から、例えば、G(緑)色の光電変換素子21に好適な材質であることが示されている。
【0047】
さらに、IPCE(Incident Photon to Current Conversion Efficiency)スペクトル装置を用いて、波長に対する外部量子効率を取得すると、
図4で示されるように、522nm付近において、光電変換効率(=外部量子効率EQE)が、約30%になることが示され、良好な光電変換効率が得られることが示される。この結果、層状有機ペロブスカイト材料は、光電変換効率の観点からも、G(緑)色の光電変換素子21に好適な材質であることが示されている。
【0048】
尚、
図4は、固体撮像素子11における光電変換素子21の負バイアス-0.2V IPCEの光電変換特性を示している。
図4のIPCEの光電変換特性は、
図3の層状有機ペロブスカイト材料の分光特性を反映したものであり、500乃至520nmの可視光が選択的に光電変換されていることを示している。
【0049】
このような特徴を持つ層状有機ペロブスカイト材料を用いた光電変換素子が、例えば、
図1に左上部で示される縦分光型の第1の固体撮像素子11の最上部の光電変換素子21として設けられると、500乃至520nmの波長の光のみを選択的に吸収し、450乃至500nm及び540nm以上の光は透過させることになるので、好適なG(緑)色の光電変換素子として機能する。
【0050】
同様に、
図1の中央上部の第2の固体撮像素子11、または、右上部の第3の固体撮像素子11で示されるように、光電変換素子21は、縦分光型の固体撮像素子を形成する他の光電変換素子22,32の間、または、22,23の間に挿入することも可能となる。
【0051】
また、層状有機ペロブスカイト材料に対する電圧-電流特性について、暗電流と明電流とを測定したところ、
図5で示されるような結果が得られた。すなわち、
図5で示されるように、遮光した状態における暗電流については良好なダイオード特性を示し、光を照射した状態における明電流については、電流が増大していることが示されており、光電変換素子として機能していることが示されている。
【0052】
尚、
図5は、固体撮像素子11における光電変換素子21の負バイアス-0.2V IPCEの暗電流と明電流の電圧-電流特性を示しており、点線が暗電流であり、実線が明電流を表している。
【0053】
<層状有機ペロブスカイト材料を用いた光電変換素子の構成例>
次に、
図6を参照して、層状有機ペロブスカイト材料を用いた光電変換素子21乃至23の構成例について説明する。尚、ここでは、光電変換素子21乃至23のうち、代表してG(緑)色の光を選択的に光電変換する光電変換素子21について説明するが、光電変換素子22,23についても同様である。
【0054】
図中の最下層にガラス層51が設けられており、その上部に透明導電材料であるATO(アンチモンドープ酸化錫)/ITO(酸化インジウム錫)からなる電極層52が形成されている。
【0055】
電極層52の上には、電子輸送層として、Compact TiO2層53が形成されている。尚、Compact TiO2層53は、電子輸送層が形成されれば他の材質からなる層でもよく、例えば、NiO、WO3、またはTA2O5により形成される層でもよい。
【0056】
Compact TiO2層53の上には、ポーラスTiO2層54が形成されている。ポーラス(Porous)TiO2層54の上には、光電変換素子層となる2D Perovskite(層状有機ペロブスカイト材質)層55が形成されている。2D Perovskite層55の上には、正孔輸送層となるSpiro-OMeTAD層56が形成されている。ここで、Spiro-OMeTADは、以下の化学式(1)で表される化合物1である。
【0057】
【化2】
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【0058】
Spiro-OMeTAD層56は、正孔輸送層が形成できれば他の材質からなる層でもよく、例えば、TiO2、ZnO、またはSnO2により形成される層でもよい。Spiro-OMeTAD層56の上には、MoOx層57が形成されており、さらに、その上には、Au層58が形成されている。
【0059】
<層状有機ペロブスカイト材料を用いた光電変換素子の製造方法>
次に、
図7のフローチャートを参照して、層状有機ペロブスカイト材料を用いた光電変換素子の製造方法について説明する。
【0060】
ステップS11において、ITO/ATO層52およびガラス層51が積層された材質25mmの片側5mmの幅で、エッチングが行われ、ITO/ATO層52が部分的に除去される。さらに、ガラス層51が超音波洗浄され(中性洗剤洗浄され、蒸留水洗浄され、イソプロピルアルコール洗浄され、アセトン洗浄され、蒸留水洗浄され)、さらに、UVオゾン処理前処理が行われる。
【0061】
ステップS12において、上述のITO/ATO層52が積層された側に、Tiイソプロポキシドを溶解させたエタノール溶液(2.5%)が、スプレー法が用いられて、塗布され、その後、電気炉において、500℃で、かつ、20分間加熱され、電子輸送層となるCompact TiO2層53が形成される。Compact TiO2層53の膜厚は、例えば、30nm程度である。
【0062】
より詳細には、電子輸送層は、例えば、多孔質電子輸送材料からなる層とすることが好ましい。多孔質電子輸送材料としては、例えば、TiO2、WO3、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、SrTiO3、また、有機電子輸送材料等の一種又は二種以上を採用できる。なお、無機半導体を使用する場合には、ドナーがドープされていてもよい。さらに、有機の電子輸送材料を用いる場合、電子輸送層の厚さは、10乃至2000nm程度が好ましく、20乃至1500nm程度がより好ましい。電子輸送層の厚さを上記範囲内とすることにより、より確実にリーク電流を抑制し、且つ、光吸収層からの電子を収集することができる。
【0063】
ステップS13において、Compact TiO2層53上に、TIO2ペーストがスピンコートされ、その後、500℃で、かつ、20分間加熱され、ポーラスTiO2層54が形成される。ポーラスTiO2層54は、例えば、160nm程度である。
【0064】
ステップS14において、ポーラスTiO2層54上に、層状有機ペロブスカイト材料が溶解されたインクがスピンコートされ、その後、100℃で、かつ、5分間加熱され、層状有機ペロブスカイト薄膜からなる2D Perovskite層55が形成される。その後、ステップS11の処理で、エッチングされた部分の2D Perovskite層55が、ふき取り除去される。
【0065】
ステップS15において、2D Perovskite層55上に、クロロベンゼン1.82ml、Spiro-OMeTAD 14.7mg、Li-TFSI 17mg、および4-tert-ブチルピリジン49mgが混合されたインクが、スピンコート塗布されることにより、正孔輸送層となるSpiro-OMeTAD層56が形成される。
【0066】
ステップS16において、Spiro-OMeTAD層56上に、真空蒸着機により、MoOx層57およびAu層58が蒸着成膜されて形成される。ここで、MoOx層57の膜厚は、例えば、30nm程度であり、Au層58の膜厚は、例えば、100nm程度の厚みで蒸着成膜される。
【0067】
すなわち、本技術の固体撮像素子に適用される光電変換膜においては、光吸収層の片側に正孔輸送層が設けられている。正孔輸送層に使用される材料としては、spiro-MeO-TADの他に、例えば、セレン、ヨウ化銅(CuI)等のヨウ化物、層状コバルト酸化物等のコバルト錯体、CuSCN、MoO3、NiO、WO3、有機ホール輸送材等が挙げられる。
【0068】
より詳細には、ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化銅(CuI)等が挙げられる。層状コバルト酸化物としては、例えば、AxCoO2(A=Li、Na、K、Ca、Sr、Ba;0≦x≦1)等が挙げられる。また、有機ホール輸送材としては、例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(spiro-MeO-TAD)等のフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ジフェニルアミン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアニリン誘導体等が挙げられる。正孔輸送層の厚さは、特に制限されないが、0.01乃至10μm程度が好ましい。
【0069】
また、上記した正孔輸送層は、塗布法だけでなく、メッキ法、スプレー法等の非真空プロセスにより形成することができ、さらに、蒸着プロセスでも形成することが可能である。さらに、正孔輸送層は、電子ブロッキング能力を持つことが望ましい。また正孔輸送層が電子ブロッキング性を持たない場合、もう一層の電子ブロッキング性を有する第2の正孔輸送層を持ち合わせても良い。
【0070】
さらに、以上においては、Compact TiO2層53、ポーラスTiO2層54、2D Perovskite層55、およびSpiro-OMeTAD層56のいずれの層が形成される際にも、塗布プロセスによる処理である例について説明してきた。しかしながら、これらの層が形成可能な手法であれば、その他の手法でもよく、例えば、蒸着プロセス、転写プロセス、ALD(Atomic Layer Deposition)法、スパッタ法、およびPLD(Pulsed Laser Deposition)法などでもよい。
【0071】
また、上述した各層の膜厚は一例であり、所定の範囲内であればよいものであり、例えば、Compact TiO2層53の好ましい膜厚の範囲は、2nm乃至100nmの範囲である。また、ポーラスTiO2層54の好ましい膜厚の範囲は、50nm乃至300nmの範囲である。さらに、光電変換層である2D Perovskite層55の好ましい膜厚の範囲は、300nm乃至1000nmの範囲である。また、正孔輸送層であるSpiro-OMeTAD層56の好ましい膜厚の範囲は、50nm乃至300nmの範囲である。
【0072】
以上の処理により、特定の波長の光に対して、高い選択性と、高い光電変換特性を有する光電変換膜材料を用いた光電変換素子21を生成することが可能となる。
【0073】
<層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料の特性の制御>
層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料は、Rである一級アミンを持つ芳香族または複素環化合物のうちの少なくとも1種類以上のものの組み合わせにより吸収波長最大ピーク及び吸収波長の形状を制御することができる。また、同様に、層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料は、Xである、F、Cl、Br、およびIより少なくとも1種類以上を含むハロゲンの組み合わせにより吸収波長最大ピーク及び吸収波長の形状を制御することができる。
【0074】
Rについては、例えば、以下の化学式(2)乃至化学式(25)で表現される化合物2乃至25のいずれか、または、それらの組み合わせにより層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料の吸収波長最大ピーク及び吸収波長の分布形状を制御することができる。
【化3】
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【化4】
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【化5】
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【化6】
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【化7】
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【化8】
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【化9】
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【化10】
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【化11】
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【化12】
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【化13】
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【化14】
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【化15】
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【化16】
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【化17】
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【化18】
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【化19】
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【化20】
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【化21】
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【化22】
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【化23】
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【化24】
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【化25】
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【化26】
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【0075】
従って、この一級アミンを持つ芳香族または複素環化合物であるRおよびハロゲンXの様々な組み合わせにより特性を制御することができるので、例えば、G(緑)色の光を選択的に光電変換する光電変換素子21のみならず、B(青)色、またはR(赤)色の光に対して高い選択性と、高い光電変換特性を備えた光電変換素子22,23を生成することが可能となる。
【0076】
また、
図1の第1乃至第3の固体撮像素子11については、光源をRGB(赤色、緑色、青色)の3色からなる固体撮像素子の例を示したものであるが、これ以外の色を用いて配色するようにする場合にでも、対応する色の光(対応する波長の光)を選択的に光電変換する層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料からなる光電変換膜を生成することで、対応する光を選択的に光電変換する光電変換素子を生成することが可能となる。例えば、光源として、黄色の波長に対応する光を選択的に光電変換する層状有機ペロブスカイト((RNH3)n-Metal-X(2n))材料を生成して、光電変換素子を生成することで、RGB(赤色、緑色、青色)の3色に加えて、Y(黄色)の4色を光源とする画像を撮像することも可能となる。
【0077】
<固体撮像素子の構成>
次に、
図8および
図9を参照して、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子の構成について説明する。
図8は、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子の構造を示す概略図である。
【0078】
ここで、
図8において、画素領域201、211、231は、本技術に係る光電変換膜を含む光電変換素子が配置される領域である。また、制御回路202、212、242は、固体撮像素子の各構成を制御する演算処理回路であり、ロジック回路203、223、243は、画素領域において光電変換素子が光電変換した信号を処理するための信号処理回路である。
【0079】
例えば、
図9の構成Aで示されるように、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子は、1つの半導体チップ200内に、画素領域201と、制御回路202と、ロジック回路203とが形成されてもよい。
【0080】
また、
図9の構成Bで示されるように、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子は、第1半導体チップ210内に、画素領域211と、制御回路212とが形成され、第2半導体チップ220内にロジック回路223が形成された積層型固体撮像素子であってもよい。
【0081】
さらに、
図9の構成Cで示されるように、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子は、第1半導体チップ230内に、画素領域231が形成され、第2半導体チップ240内に制御回路242と、ロジック回路243とが形成された積層型固体撮像素子であってもよい。
【0082】
図9の構成Bおよび構成Cにて示した固体撮像素子は、制御回路およびロジック回路の少なくともいずれか一方が、画素領域が形成された半導体チップとは別の半導体チップ内に形成される。したがって、
図9の構成Bおよび構成Cで示した固体撮像素子は、構成Aで示した固体撮像素子よりも画素領域を拡大することができるため、画素領域に搭載される画素を増加させ、平面分解能を向上させることができる。そのため、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子は、
図9の構成Bおよび構成Cで示した積層型固体撮像素子であることがより好ましい。
【0083】
続いて、
図9を参照して、本技術に係る光電変換素子が適用された固体撮像素子の具体的な構造について説明する。
図9は、本技術に係る光電変換素子が適用された固体撮像素子の単位画素における概略を示した断面図である。なお、
図9で示す固体撮像素子300は、画素トランジスタ等が形成された面とは反対側の面から光が入射する裏面照射型の固体撮像素子である。また、
図9では、図面に対して上側が受光面となり、下側が画素トランジスタおよび周辺回路が形成される回路形成面となる。
【0084】
図9に示すように、固体撮像素子300は、光電変換領域320において、半導体基板330に形成された第1フォトダイオードPD1を含む光電変換素子、半導体基板330に形成された第2フォトダイオードPD2を含む光電変換素子、および半導体基板330の裏面側に形成された有機光電変換膜310を含む光電変換素子が光の入射方向に積層された構成を有する。
【0085】
第1フォトダイオードPD1および、第2フォトダイオードPD2は、シリコンからなる半導体基板330の第1導電型(例えば、p型)半導体領域であるウェル領域331に形成される。
【0086】
第1フォトダイオードPD1は、半導体基板330の受光面側に形成された第2導電型(例えば、n型)不純物によるn型半導体領域332と、その一部が半導体基板330の表面側に達するように延長して形成された延長部332aとを有する。延長部332aの表面には、電荷蓄積層となる高濃度のp型半導体領域334が形成される。また、延長部332aは、第1フォトダイオードPD1のn型半導体領域332に蓄積された信号電荷を半導体基板330の表面側に抜き出すための抜出層として形成される。
【0087】
第2フォトダイオードPD2は、半導体基板330の受光面側に形成されたn型半導体領域336と、半導体基板330の表面側に形成され、電荷蓄積層となる高濃度のp型半導体領域338と、にて構成される。
【0088】
第1フォトダイオードPD1および第2フォトダイオードPD2において、半導体基板330の界面にp型半導体領域が形成されることにより、半導体基板330界面で発生する暗電流を抑制することができる。
【0089】
ここで、受光面から最も離れた領域に形成された第2フォトダイオードPD2は、例えば、赤色光を吸収し、光電変換する赤色光電変換素子である。また、第2フォトダイオードPD2よりも受光面側に形成された第1フォトダイオードPD1は、例えば、青色光を吸収し、光電変換する青色光電変換素子である。
【0090】
有機光電変換膜310は、反射防止膜302および絶縁膜306を介して半導体基板330の裏面上に形成される。また、有機光電変換膜310は、上部電極312および下部電極308にて挟持されることで光電変換素子を形成する。ここで、有機光電変換膜310は、例えば、緑色光を吸収し、光電変換する有機膜であり、上記で説明した本技術に係る光電変換膜で形成される。また、上部電極312および下部電極308は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電性材料で形成される。
【0091】
また、下部電極308は、反射防止膜302を貫通するコンタクトプラグ304を介して、半導体基板330の裏面側から表面側にかけて形成された縦型転送路348に接続される。縦型転送路348は、半導体基板330の裏面側から接続部340、電位障壁層342、電荷蓄積層344、p型半導体領域346の積層構造にて形成される。
【0092】
接続部340は、半導体基板330の裏面側に形成された高不純物濃度のn型不純物領域からなり、コンタクトプラグ304とオーミックコンタクトのために形成される。電位障壁層342は、低濃度のp型不純物領域からなり、接続部340と電荷蓄積層344との間においてポテンシャルバリアを形成する。電荷蓄積層344は、有機光電変換膜310から転送された信号電荷を蓄積し、接続部340よりも低濃度のn型不純物領域で形成される。なお、半導体基板330の表面には、高濃度のp型半導体領域346が形成される。かかるp型半導体領域346により、半導体基板330界面で発生する暗電流が抑制される。
【0093】
ここで、半導体基板330の表面側には、層間絶縁層351を介して複数層に積層された配線358を含む多層配線層350が形成される。また、半導体基板330表面近傍には、第1フォトダイオードPD1、第2フォトダイオードPD2、および有機光電変換膜310に対応する読出回路352、354、356が形成される。読出回路352、354、356は、それぞれの光電変換素子から出力信号を読み出し、ロジック回路(図示せず)に転送する。さらに、多層配線層350の表面には、支持基板360が形成される。
【0094】
一方、上部電極312の受光面側には、第1フォトダイオードPD1の延長部332aおよび縦型転送路348を遮光するように遮光膜316が形成される。ここで、遮光膜316同士によって区切られた領域が光電変換領域320となる。また、遮光膜316上には、平坦化膜314を介してオンチップレンズ318が形成される。
【0095】
以上にて、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子300について説明した。なお、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子300は、単位画素において縦方向に色分離が行われるため、カラーフィルタ等が形成されていない。
【0096】
<電子機器の構成>
続いて、
図10を参照して、本技術に係る光電変換素子が適用される電子機器の構成について説明する。
図10は、本技術に係る光電変換素子が適用される電子機器の構成を説明するブロック図である。
【0097】
図10に示すように、電子機器400は、光学系402と、固体撮像素子404と、DSP(Digital Signal Processor)回路406と、制御部408と、出力部412と、入力部414と、フレームメモリ416と、記録部418と、電源部420とを備える。
【0098】
ここで、DSP回路406、制御部408、出力部412、入力部414、フレームメモリ416、記録部418および電源部420は、バスライン410を介して相互に接続されている。
【0099】
光学系402は、被写体からの入射光を取り込み、固体撮像素子404の撮像面上に結像させる。また、固体撮像素子404は、本技術に係る光電変換素子を含み、光学系402によって撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0100】
DSP回路406は、固体撮像素子404から転送された画素信号を処理し、出力部412、フレームメモリ416、および記録部418等に出力する。また、制御部408は、例えば、演算処理回路等で構成され、電子機器400の各構成の動作を制御する。
【0101】
出力部412は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のパネル型表示装置であり、固体撮像素子404にて撮像された動画または静止画を表示する。なお、出力部412は、スピーカおよびヘッドフォン等の音声出力装置を含んでもよい。また、入力部414は、例えば、タッチパネル、ボタン等のユーザが操作を入力するための装置であり、ユーザの操作に従い、電子機器400が有する様々な機能について操作指令を発する。
【0102】
フレームメモリ416は、固体撮像素子404にて撮像された動画または静止画等を一時的に記憶する。また、記録部418は、固体撮像素子404にて撮像された動画または静止画等を磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記録する。
【0103】
電源部420は、DSP回路406、制御部408、出力部412、入力部414、フレームメモリ416、および記録部418の動作電源となる各種電源をこれらの供給対象に対して適宜供給する。
【0104】
以上にて、本技術に係る光電変換素子が適用される電子機器400について説明した。本技術に係る光電変換素子が適用される電子機器400は、例えば、撮像装置などであってもよい。
【0105】
また、以上においては、本技術に係る光電変換素子が適用される固体撮像素子、および電子機器について説明してきたが、それ以外の技術にも適用することが可能であり、例えば、太陽電池や光を利用したセンサとして適用することも可能である。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本技術の一実施の形態について詳細に説明したが、本技術にける技術的範囲はかかる例に限定されない。本技術の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本技術の技術的範囲に属するものと了解される。
【0107】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0108】
尚、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
<1> 入射光を光電変換する光電変換層と、
前記光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層と、
一対の電極とを含み、
前記光電変換層、前記正孔輸送層、および前記電子輸送層は、前記一対の電極の間に積層され、
前記光電変換層は、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる
固体撮像素子。
<2> 前記層状有機ペロブスカイト材料は、
(RNH3)n-Metal-X(2+n)
であり、
前記Rは、一級アミンを持つ芳香族または複素環化合物のうちの少なくとも1種類以上であり、
前記Metalは、Pb、Sn、およびMnのうちの少なくとも1種類以上を含む金属であり、
前記Xは、F、Cl、Br、およびIのうちの少なくとも1種類以上を含むハロゲンであり、
前記nは、自然数である
<1>に記載の固体撮像素子。
<3> 前記Rの構造により、前記層状有機ペロブスカイト材料において選択的に吸収される、特定の波長領域の光の、吸収波長最大ピーク、および吸収波長の分布形状が制御される
<2>に記載の固体撮像素子。
<4> 前記電子輸送層は、TiO2、NiO、WO3、およびTA2O5のいずれかを含む
<1>乃至<3>のいずれかに記載の固体撮像素子。
<5> 前記正孔輸送層は、Spiro-OMeTAD、TiO2、ZnO、およびSnO2のいずれかを含む
<1>乃至<4>のいずれかに記載の固体撮像素子。
<6> 第1の電極を形成する第1の工程と、
前記第1の電極の上層に、前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層を形成する第2の工程と、
前記電子輸送層の上層に、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる前記光電変換層を形成する第3の工程と、
前記光電変換層の上層に、入射光を光電変換する光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層を形成する第4の工程と、
前記正孔輸送層の上層に、第2の電極を形成する第5の工程と
を含む固体撮像素子の製造方法。
<7> 入射光を光電変換する光電変換層と、
前記光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層と、
一対の電極とを含み、
前記光電変換層、前記正孔輸送層、および前記電子輸送層は、前記一対の電極の間に積層され、
前記光電変換層は、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる
光電変換素子。
<8> 入射光を光電変換する光電変換層と、
前記光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層と、
一対の電極とを含み、
前記光電変換層、前記正孔輸送層、および前記電子輸送層は、前記一対の電極の間に積層され、
前記光電変換層は、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる
撮像装置。
<9> 入射光を光電変換する光電変換層と、
前記光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層と、
一対の電極とを含み、
前記光電変換層、前記正孔輸送層、および前記電子輸送層は、前記一対の電極の間に積層され、
前記光電変換層は、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる
電子機器。
<10> 入射光を光電変換する光電変換層と、
前記光電変換層に対して正孔を輸送する正孔輸送層と、
前記光電変換層に対して電子を輸送する電子輸送層と、
一対の電極とを含み、
前記光電変換層、前記正孔輸送層、および前記電子輸送層は、前記一対の電極の間に積層され、
前記光電変換層は、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる
光電変換素子。