特許第6754179号(P6754179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754179
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】薬剤包装装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20200831BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20200831BHJP
   B65B 1/30 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B65B51/10 P
   A61J3/00 310F
   A61J3/00 310E
   B65B51/10 300
   B65B1/30 A
   B65B1/30 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-194611(P2015-194611)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65755(P2017-65755A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】392022064
【氏名又は名称】キヤノンライフケアソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川野辺 元
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235172(JP,A)
【文献】 特開2010−083538(JP,A)
【文献】 実開昭55−074615(JP,U)
【文献】 米国特許第04961302(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を包装するための包装袋に薬剤を投入する投入部と、
熱を発し、前記投入部により前記薬剤が投入される前記包装袋と接することにより、発した熱を前記包装袋に加える加熱部と、
前記包装袋を介して前記加熱部と対向する位置に配置され、前記加熱部により前記包装袋を挟むために設けられた受け部と、
前記包装袋を搬送する搬送部と、
を備え、
前記受け部は、前記搬送部による前記包装袋の搬送方向に対して流側の一端で前記包装袋と接触する第1の接触部と、前記搬送方向に対して前記第1の接触部よりも流側の他端で前記包装袋と接触する第2の接触部を有し、
前記第の接触部が、前記包装袋の方向に、前記包装袋を介して前記加熱部と重なる前記受け部の面、及び、前記第の接触部と比べて突出していることを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】
前記第の接触部は、前記包装袋の方向に凸となるように湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記第の接触部は、前記包装袋が前記加熱部と前記受け部とでシールされる際に前記包装袋を介して前記加熱部と重ならない位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薬剤包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤包装装置に関し、特に、加熱部により包装袋を挟むために設けられた受け部に包装袋との接触部を設けることにより、包装袋を搬送する際に包装袋にかかる負荷を軽減する仕組みに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤を分包紙(包装袋ともいう)に包装する包装装置では、薬剤が落下する経路まで搬送ローラーにより分包紙を搬送し、分包紙に薬剤が投入された後、薬剤が分包紙に落下する経路付近に設けられたヒータ(シールコテや加熱部とも言う)の熱を分包紙に加えることにより、分包紙を包装することが行われている。
【0003】
特許文献1には、薬剤を投入した分包紙を、ヒータによる熱を加えることにより熱溶着する包装装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、分包紙の材料として、グラシンやセロポリが使用されていたが、最近では、PET(polyethylene terephthalate)が分包紙の材料として使われ始めている(以下PET分包紙と呼ぶ)。PET分包紙は、グラシンやセロポリに比べて柔らかいという特性を持っている。
【0006】
上記PET分包紙の特性上、分包紙を搬送ローラーにより搬送する際に、分包紙の搬送方向に皺が発生しやすい。
【0007】
また、包装装置の構造上、分包紙を搬送ローラーにより搬送する際に、分包紙を介してヒータと対向する位置に配置され、ヒータにより分包紙を挟むために設けられた受け部(シール受けや受け部とも言う)に分包紙が擦れながら搬送されるため、分包紙と受け部の間に摩擦が生じ、分包紙に負荷がかかっていた。
【0008】
ヒータにより分包紙に熱を加えた後、分包紙が冷え切る前に、上述したような負荷が分包紙にかかると、分包紙が柔らかい状態のまま負荷がかかることになるため、こちらも分包紙に皺が入る原因となっていた。
【0009】
本発明は、加熱部により包装袋を挟むために設けられた受け部に包装袋との接触部を設けることにより、包装袋を搬送する際に包装袋にかかる負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る薬剤包装装置は、薬剤を包装するための包装袋に薬剤を投入する投入部と、熱を発し、前記投入部により前記薬剤が投入される前記包装袋と接することにより、発した熱を前記包装袋に加える加熱部と、前記包装袋を介して前記加熱部と対向する位置に配置され、前記加熱部により前記包装袋を挟むために設けられた受け部と、前記包装袋を搬送する搬送部と、を備え、前記受け部は、前記搬送部による前記包装袋の搬送方向に対して流側の一端で前記包装袋と接触する第1の接触部と、前記搬送方向に対して前記第1の接触部よりも流側の他端で前記包装袋と接触する第2の接触部を有し、前記第の接触部が、前記包装袋の方向に、前記包装袋を介して前記加熱部と重なる前記受け部の面、及び、前記第の接触部と比べて突出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱部により包装袋を挟むために設けられた受け部に包装袋との接触部を設けることにより、包装袋を搬送する際に包装袋にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】包装装置の全体図を示した図である。
図2】分包紙圧着部の内部構造を示した斜視図である。
図3】分包紙圧着部の内部構造を示した上面図である。
図4】分包紙圧着部の内部構造を示した斜視図である。
図5】分包紙圧着部の内部構造を示した上面図である。
図6】分包紙の横圧着部に皺が入る様子を示した図である。
図7】分包紙圧着部の内部構造を示した上面図である。
図8】包装ユニットの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の包装装置(薬剤包装装置とも言う)について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態における包装装置を示す図である。101は、散薬および錠剤を包装することのできる包装装置である。102は、散薬投入部であり、包装装置101により包装する総量の散薬を投入する部分である。
【0015】
103は、錠剤投入部であり、包装装置101により包装する錠剤を1包分の錠剤=1マスに対応させて投入する部分である。104は、操作パネルであり、分包の条件設定や分包の開始、停止等の操作をユーザから受け付ける部分である。105は、前扉である。前扉105は、左端を軸として開閉する。
【0016】
106は、包装シートが連なるロール紙(分包紙がロール状になっている紙)を包装機構に送り出す分包紙送出機構である。ロール状に巻かれた分包紙を分包紙送出機構106にセットすることで、薬剤の包装を行うことができる。
【0017】
201は、分包紙圧着部である。分包紙圧着部201は、分包紙を圧着して、1包化する。
【0018】
次に、図2を用いて、従来の包装装置の分包紙圧着部について説明する。
【0019】
図2は従来の分包紙圧着部201の内部構造を示した斜視図である。
【0020】
分包紙203は二つ折となっており、ロール状に巻かれた状態から引き出して使用する。
【0021】
散薬投入部102及び錠剤投入部103から落下した薬剤は、ホッパー202を通過して分包紙203まで到達する。
【0022】
ホッパー202は、本発明における、薬剤を包装するための包装袋に薬剤を投入する投入部の一例である。
【0023】
分包紙圧着部201内には分包紙203を熱溶着する機構が位置しており、安全のため分包紙圧着部201はカバーによっておおわれている。
【0024】
204はシールコテである。分包紙203を熱溶着するため、予め設定された設定温度を保持するよう制御されている。
【0025】
シールコテ204の形状は、T字の形成部分が前方(正面)方向に凸状になっており、シールコテ204が前方(正面)方向に移動することによって、分包紙203をT字状に熱溶着する。
【0026】
シールコテ204は、本発明における、熱を発し、前記投入部により前記薬剤が投入される前記包装袋と接することにより、発した熱を当該包装袋に加える加熱部の一例である。
【0027】
ホッパー202内を落下した薬剤は分包紙203の内側底辺に到達する。
【0028】
206は搬送ローラーである。両側の搬送ローラー206によって分包紙203を挟み込んでいる。搬送ローラー206を回転させて一定量の分包紙203を搬送した後、シールコテ204を前方(正面)方向へ移動することにより、分包紙203を包装することができる。
【0029】
搬送ローラー206は、本発明における、包装袋を搬送する搬送部の一例である。
【0030】
次に、図8を用いて、包装ユニット801の内部構造について説明する。
【0031】
図8は、包装ユニット801の内部構造を示す図である。
【0032】
包装ユニット801は、包装装置101内のユニットである。802は、連なるロール紙を1包毎の包装シートに分断するための分断用ミシン目を包装シートに形成する分断機構である。
【0033】
803はプリンタであり、包装シートに、日付、患者データ、エラー情報を印字することができる(印字機構)。
【0034】
このような図8に示す包装ユニットにより、投薬1回分の錠剤または散薬を包装シートに分包することができる。なお包装シートとしては、表面に熱溶着可能な樹脂材をコーティングした紙のみならず、中身を視認することができる透明なフィルム材を用いることもできる。
【0035】
次に、本発明が解決しようとしている従来の分包紙圧着部201の課題について、図3図6を用いて説明する。
【0036】
まず、図3について説明する。
【0037】
図3は、従来の分包紙圧着部201の内部構造を示した上面図である。
【0038】
図2で説明したように、搬送ローラー206を回転させて一定量の分包紙203を搬送するが、その際に、分包紙203は、シール受け205のシリコンゴム207に擦れながら搬送される。
【0039】
シール受け205は、本発明における、当該包装袋を介して前記加熱部と対向する位置に配置され、当該加熱部により当該包装袋を挟むために設けられた受け部の一例である。
【0040】
分包紙203は、シリコンゴム207に擦れながら搬送されるため、搬送ローラー206にて分包紙203が搬送される際に、シリコンゴム207との摩擦による分包紙203への負荷が増大する。
【0041】
分包紙203への摩擦による負荷が増大すると、例えば、図6のように皺605が横シール面601に入ってしまう場合がある。
【0042】
なお、分包紙203の横シール面601に皺が入る原因としては、分包紙203への摩擦による負荷の他に、分包紙203の材質がPETであること、シールコテ204により熱が加えられた後に分包紙203の溶着部が冷え切る前に分包紙203への摩擦による負荷がかけられることが挙げられる。
【0043】
尚、分包紙203への負荷増大を軽減するために、シリコンゴム207に常に接しないようにシール受け205をシールコテ204同様、分包紙203を搬送ローラー206により搬送するときに、シール受け205を分包紙203から離れた位置にすることが考えられる。
【0044】
しかしながら、シールコテ204と同様に前方(正面)方向や後方方向に移動可能にするためには、シール受け205に駆動部を新たに設けなければならず、コストがかかる。また、駆動部を設けるため、包装装置101の構造が複雑になり、駆動部が正常に動作しない等の事象が発生する割合が向上する恐れがある。
【0045】
そのため、コスト及び品質を考慮すると、シール受け205を固定しておくことが最善となる。
【0046】
ここで、分包紙203に皺が入った様子について、図6を用いて説明する。
【0047】
図6は、分包紙203に皺605が入った様子を示した図である。
【0048】
分包紙203を搬送する際の搬送負荷が大きいと、横シール面601に横方向に皺605が発生する。
【0049】
これは、熱溶着直後に分包紙203を搬送させた場合、溶着部が冷え切らないため、分包紙203が柔らかい状態のまま分包紙203が搬送されることになる。
【0050】
その状態で、シール受け205と擦れることによって、分包紙203に負荷をかけながら搬送すると、分包紙203の横シール面601に皺605が入ってしまう。以上が、分包紙203に皺が入る原因である。
【0051】
では、ここから分包紙203に皺が入る原因となっている、分包紙を搬送する際に分包紙にかかる負荷を軽減する仕組みについて、図4図5図7を用いて説明する。
【0052】
まず、図4図5について説明する。
【0053】
図4は、本発明の実施形態における分包紙圧着部201の内部構造を示した斜視図であり、図5は、本発明の実施形態における分包紙圧着部201の内部構造を示した上面図である。
【0054】
図3にて、分包紙203の横シール面601に皺が入ることを説明したが、図4図5で、その回避方法を説明する。
【0055】
皺605を抑制するためには、分包紙203を搬送する際のシール受け205(より具体的には、シール受け205上のシリコンゴム207)と擦れることによる分包紙203への負荷軽減が最も有効である。この分包紙203への負荷を軽減するためには、分包紙203の搬送時にシリコンゴム207に接する面積を減らすようにすることが有効である。
【0056】
では、以下、シリコンゴム207に分包紙が接する面積を減らす具体的な構造を用いて詳細に説明する。
【0057】
401はシリコンゴムガードブロックである。シリコンゴムガードブロック401は、分包紙203を搬送する際にホッパー202部を通過した分包紙203がシリコンゴム207のエッジ部に触れないようにするためのものであり、分包紙の方向に凸となるように湾曲している。
【0058】
また、図4、および図5からも分かるように、シリコンゴムガードブロック401は、後述する分包紙浮上板402よりも先に分包紙と接触する。
【0059】
シリコンゴムガードブロック401を取り付けることにより、シリコンゴムガードブロック401と分包紙203が触れることになり、シリコンゴム207のエッジに触れないようになるため、シリコンゴム207のエッジに分包紙203が触れるよりも、分包紙203と接触する角度が緩やかになり、分包紙203への負荷が軽減される。
【0060】
なお、シリコンゴムガードブロック401、および後述する分包紙浮上板402の材質はPOM(polyoxymethylene)、テフロン(登録商標)、フッ素等の摺動性高い材質が好ましい。
シリコンゴムガードブロック401は、本発明における、第2の接触部の一例である。
【0061】
402は分包紙浮上板である。シリコンゴムガードブロック401にてホッパー202通過直後の分包紙203への負荷軽減は達成したが、それだけだと、その後(分包紙203の搬送方向の下流側)のシリコンゴム207には分包紙203が接してしまうため、この部分(分包紙203の搬送方向の下流側の部分)においても、シリコンゴム207と擦れることによる分包紙203への負荷軽減を行うこと望ましい。
【0062】
この部分(分包紙203の搬送方向の下流側)の負荷軽減を行うために、分包紙浮上板402をシール受け205の最後尾(分包紙203の搬送方向に対して最も下流側となる部分)に取り付け、シリコンゴム207より1mm程度、分包紙203の搬送方向と交差する方向に突出させる。
【0063】
これにより、分包紙203がシリコンゴム207に接する面積を減らせるため、分包紙203を搬送時の、シリコンゴム207と擦れることによる分包紙203への負荷がさらに軽減する。
【0064】
分包紙浮上板402は、本発明における、包装袋の搬送方向に対して交差する方向に突出した形状で構成されている、包装袋が前記搬送部により搬送されるときに、当該包装袋と接触する第1の接触部の一例である。
【0065】
図5の501は、図5中の点線で描いた円内を拡大した図である。
【0066】
以上で図5の説明を終了する。
【0067】
次に、本発明の実施形態における、分包紙圧着部201の他の実施例について図7を用いて説明する。
【0068】
図7は、本発明の実施形態における分包紙圧着部201の内部構造を示した斜視図である。図4や、図5と異なる部分は、図7の分包紙圧着部201は、分包紙浮上板402を備えていない点である。
【0069】
その代わりに、図7の分包紙圧着部201は、シール受け205、および、シリコンゴム207を包装装置101の前方(正面)方向に傾斜させている(受け部は、包装袋の搬送方向下流側に向かって、当該受け部の包装袋側の面から包装袋までの距離が遠くなるように構成されている)。
【0070】
これにより、分包紙203の搬送方向の下流側のシリコンゴム207に、分包紙203が接しないようにし、分包紙浮上板402と同様の効果を得ることを可能としている。
【0071】
なお、図7の分包紙圧着部201では、シール受け205、および、シリコンゴム207を包装装置101の前方(正面)方向に傾斜させるのに併せて、シールコテ204も包装装置101の前方(正面)方向に傾斜させている。
【0072】
以上で、図7の説明を終了する。以上で実施例の説明を終了する。
【0073】
以上、本発明によると、加熱部により包装袋を挟むために設けられた受け部に包装袋との接触部を設けることにより、包装袋を搬送する際に包装袋にかかる負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0074】
101 包装装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8