特許第6754181号(P6754181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754181
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ウエブ巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 19/28 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   B65H19/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-223188(P2015-223188)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-88363(P2017-88363A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】西村 高博
(72)【発明者】
【氏名】沖廣 誠志
(72)【発明者】
【氏名】久留 洋行
(72)【発明者】
【氏名】児玉 真哉
【審査官】 松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−281594(JP,A)
【文献】 特開平01−167144(JP,A)
【文献】 特開2006−225160(JP,A)
【文献】 特開2006−290621(JP,A)
【文献】 実開昭59−088052(JP,U)
【文献】 特開昭56−108650(JP,A)
【文献】 特開昭62−285859(JP,A)
【文献】 特開2009−073669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H19/00−19/30
B65H21/00−21/02
B65H18/00−18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が粘着しない巻芯を交互に切り替えながら、100m/分以上の高速で走行するウエブを連続してロール状に巻き取り可能なウエブ巻取装置であって、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレットと、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラと、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッターと、
前記新巻芯の近傍で静電気を発生させるチャージングバーと、
を備え、
前記チャージングバーは、
前記新巻芯に沿って延びるように配置されるバー本体と、
前記バー本体に横並びに配置され、電圧の印加によって放電する複数の放電針と、
を有し、
前記放電針が、前記新巻芯に前記ウエブが最初に接するウエブ受入位置の方に向けられた状態で、前記ウエブ受入位置に向かう前記新巻芯と前記ウエブとの間の隙間に放電することにより、当該新巻芯および当該ウエブの双方を帯電させるウエブ巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウエブ巻取装置において、
前記チャージングバーが、新巻芯の近傍に進出可能な第1支持部材に取り付けられており、切り替え時に、前記ウエブ受入位置に向かって変位するウエブ巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウエブ巻取装置において、
静電気を除去する除電装置、を更に備え、
放電が行われる前記隙間に向かう前記新巻芯の表面が、前記除電装置によって除電されるウエブ巻取装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載のウエブ巻取装置において、
前記チャージングバーと協働して前記ウエブを帯電させる帯電補助部材、を更に備え、
切り替え時には、前記帯電補助部材が、放電が行われる前記隙間に面した前記ウエブの表面の反対側に沿って配置されるウエブ巻取装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウエブ巻取装置において、
前記帯電補助部材が、前記ニップローラを変位可能に支持している第2支持部材に取り付けられているウエブ巻取装置。
【請求項6】
請求項1に記載のウエブ巻取装置において、
前記カッターは、基端部が回動可能に支持されて先端部に切刃が取り付けられた回動腕を有し、前記回動腕が回動することによって、前記切刃が前記ウエブの表面を突き切るように構成され、
前記回動腕の先端部に取り付けられる押付装置、を更に備え、
前記新巻芯の表面の周速度よりも速い周速度で前記切刃が前記ウエブを切断し、前記押付装置で、前記切刃で切断された前記ウエブの端部を、前記新巻芯に押し付けるウエブ巻取装置。
【請求項7】
請求項1に記載のウエブ巻取装置において、
切り替え時に、前記新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯の一部に巻き付ける巻付ローラ、を更に備え、
前記ニップローラは、切り替え時に、前記新巻芯に巻き付いている前記ウエブの下流側の部位を前記新巻芯とで挟持し、
前記カッターは、前記新巻芯に沿って切刃をスライドさせるアクチュエータを有し、前記ウエブを、前記切刃によって一方の側縁から切り裂いて切断するように構成されているウエブ巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機や塗工機などの製造ラインに組み込まれ、巻芯を交互に切り替えながら長尺のウエブを連続して巻き取る巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような巻取装置では、巻芯の切替時に、自動的にウエブを切断してその切断端を巻芯に巻き付ける必要があるため、粘着テープを外周面に備えた巻芯(テープ付き巻芯)が一般に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、テープ付き巻芯に押えローラでウエブを押し付けて、走行するウエブを挟持し、その挟持位置の下流側の位置で、カッタ刃を回動させることにより、表面を突き切るようにウエブを切断することで、その切断端を巻芯に巻き付ける巻取装置が開示されている。
【0004】
その巻取装置では、ウエブを切断する際、切断端の先端部分はテープ付き巻芯から浮き上がるが、その浮いた先端部分を、シワを発生させることなくテープ付き巻芯に巻き取れるように、カッタ刃の周速度をテープ付き巻芯の表面の周速度よりも速く設定するとともに、切断端の先端部分を刷毛でテープ付き巻芯に押し付けるようにしている。それにより、100m/分程度の比較的速い巻取速度で、安定した切り替えを実現している。
【0005】
しかし、テープ付き巻芯は、表面が粘着するため、扱い辛い。そのため、粘着テープの無い、テープレスの巻芯(以下、単に巻芯ともいう)が使用できる巻取装置が要望されており、これまでも様々な巻取装置が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2には、粘着の代わりに静電気を利用してウエブを巻芯に巻き付ける巻取装置が提案されている。その巻取装置では、特許文献1の巻取装置と同様に、巻芯と押付ローラとで走行するウエブを挟持し、カッタ刃でウエブを切断してその切断端を巻芯に巻き付けているが、その際、静電気を発生させる非接触の帯電用電極(チャージングバー)を用いて、巻芯やウエブを帯電し、静電気の吸着によってウエブを巻芯に付着させている。
【0007】
図1に示すように、特許文献2では、そのチャージングバーの設置箇所として3箇所が示されている。第1の設置箇所は、挟持位置に向かう巻芯Cの外周面の近傍であり、巻芯Cが帯電されるようにチャージングバー301が設置されている。第2の設置箇所は、挟持位置に向かうウエブWの表面の近傍であり、ウエブWが帯電されるように、ウエブWの内面(巻芯Cに巻き付けられる面)側にチャージングバー302が設置されている。第3の設置箇所は、挟持位置から切断位置に向かうウエブWの表面の近傍であり、ウエブWが帯電されるように、ウエブWの外面側にチャージングバー303が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−281594号公報
【特許文献2】特開昭58−220038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
印刷機等のライン速度は益々高速になってきており、それに伴って、巻取装置も、高速走行するウエブを安定して巻き取ることが必要になってきている。例えば、従来であれば、20m/分程度の速度で走行するウエブを巻き取ることができればよかったのが、近年では、200m/分以上で高速走行するウエブを安定して巻き取ることが求められるようになってきている。
【0010】
そのため、本出願人は、テープレスの巻芯を用いて、少なくとも100m/分程度、好ましくはそれ以上での比較的速い巻取速度で、安定した切り替えが実現できる巻取装置を開発している。
【0011】
そのような状況の下、本発明者が、静電気の利用を検討したところ、走行するウエブや回転する巻芯を帯電させるのは難しく、特に、巻取速度が速くなると、特許文献2のようなチャージングバーの設置箇所では、静電気の吸着でウエブを巻芯に巻き付けられないことがわかった。
【0012】
そこで本発明の目的は、高速の巻取速度であっても、テープレスの巻芯を用いて安定した切り替えが実現できるウエブ巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、表面が粘着しない巻芯を交互に切り替えながら、100m/分以上の高速で走行するウエブを連続してロール状に巻き取り可能なウエブ巻取装置に関する。
【0014】
前記巻取装置は、
前記巻芯を個別に装着して回転制御する一対の軸支部を有し、前記ウエブの巻き取りが行われる巻取位置と、前記巻芯の入れ替えが行われる待機位置とに、前記巻芯の位置を交換するターレット、
切り替え時に、前記巻取位置に位置する巻取前の前記巻芯である新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯とで挟持するニップローラ、
前記ニップローラと前記新巻芯とが前記ウエブを挟持する挟持位置から下流側に離れた位置で前記ウエブを切断するカッター、
前記新巻芯の近傍で静電気を発生させるチャージングバー、
を備える。
【0015】
前記チャージングバーは、前記新巻芯に沿って延びるように配置されるバー本体と、前記バー本体に横並びに配置され、電圧の印加によって放電する複数の放電針と、を有している。そして、前記放電針が、前記新巻芯に前記ウエブが最初に接するウエブ受入位置の方に向けられた状態で、前記ウエブ受入位置に向かう前記新巻芯と前記ウエブとの間の隙間に放電することにより、当該新巻芯および当該ウエブの双方を帯電させるように構成されている。
【0016】
すなわち、このウエブ巻取装置によれば、詳細は後述するが、空気層による阻害を受けることなく走行するウエブや回転する新巻芯を帯電させることができ、巻取速度が高速でも静電気による吸着力が得られるので、テープレスの巻芯を用いて安定した切り替えが実現できるようになる。
【0017】
特に、前記チャージングバーが、新巻芯の近傍に進出可能な第1支持部材に取り付けられており、切り替え時に、前記ウエブ受入位置に向かって変位するように構成するのが好ましい。
【0018】
そうすれば、放電針をウエブ受入位置の近くに位置させることができるので、より効果的に放電させることができる。
【0019】
更には、静電気を除去する除電装置を備え、放電が行われる前記隙間に向かう前記新巻芯の表面が、前記除電装置によって除電されるようにするのが好ましい。
【0020】
ウエブ受入位置においてウエブ及び新巻芯の双方が同時に帯電されるため、新巻芯が再度帯電される際に、新巻芯に電位が残存し、ウエブとの電位差が小さくなるおそれがあるが、その前に除電装置によって新巻芯が除電されるので、ウエブとの大きな電位差を安定して確保できる。放電を行わなければ、新巻芯や新巻芯に巻き付けられたウエブを除電できるので、本来は好ましくないロールの帯電も抑制できる。
【0021】
更には、前記チャージングバーと協働して前記ウエブを帯電させる帯電補助部材、を備え、切り替え時には、前記帯電補助部材が、放電が行われる前記隙間に面した前記ウエブの表面の反対側に沿って配置されるように構成するのが好ましい。
【0022】
そうすれば、ウエブを効率よく帯電させることができ、より強い吸着力を得ることができる。
【0023】
この場合、前記帯電補助部材が、前記ニップローラを変位可能に支持している第2支持部材に取り付けられているようにするとよい。
【0024】
そうすれば、ニップローラに対して帯電補助部材を位置決めできるので、簡単な構成で、帯電補助部材をウエブの直ぐ近くに位置させることができる。
【0025】
前記ウエブ巻取装置は、例えば、前記カッターは、基端部が回動可能に支持されて先端部に切刃が取り付けられた回動腕を有し、前記回動腕が回動することによって、前記切刃が前記ウエブの表面を突き切るように構成され、前記回動腕の先端部に取り付けられる押付装置、を更に備え、前記新巻芯の表面の周速度よりも速い周速度で前記切刃が前記ウエブを切断し、前記押付装置で、前記切刃で切断された前記ウエブの端部を、前記新巻芯に押し付けるように構成するとよい。
【0026】
そうした場合、押付装置によるウエブの押し付け作用と、切断速度の制御による作用と、静電気による吸着作用との組み合わせにより、高速な巻取速度での安定した切り替えが実現できる。
【0027】
また、前記ウエブ巻取装置は、切り替え時に、前記新巻芯の近傍に進出することにより、前記待機位置に位置する前記巻芯に巻き取られて走行する前記ウエブを、前記新巻芯の一部に巻き付ける巻付ローラ、を更に備え、前記ニップローラは、切り替え時に、前記新巻芯に巻き付いている前記ウエブの下流側の部位を前記新巻芯とで挟持し、前記カッターは、前記新巻芯に沿って切刃をスライドさせるアクチュエータを有し、前記ウエブを、前記切刃によって一方の側縁から切り裂いて切断するように構成してもよい。
【0028】
この場合も、新巻芯の一部へのウエブの巻き付け作用と、ウエブの切り裂きによる作用と、静電気による吸着作用との組み合わせにより、高速な巻取速度での安定した切り替えが実現できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のウエブ巻取装置によれば、高速の巻取速度であっても、テープレスの巻芯を用いて安定した切り替えができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来のチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図2】検討を行ったチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図3A】検討を行ったチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図3B】検討を行ったチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図3C】検討を行ったチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図4】本発明でのチャージングバーの設置箇所を示す図である。
図5】本実施形態のウエブ巻取装置を示す概略図である。
図6】切り替え時におけるウエブ巻取装置の要部を示す概略拡大図である。
図7】切り替え時におけるウエブ巻取装置の要部を示す概略拡大図である。
図8】巻き取り時におけるウエブ巻取装置の状態を示す概略図である。
図9】移行時におけるウエブ巻取装置の状態を示す概略図である。
図10】切り替え時におけるウエブ巻取装置の状態を示す概略図である。
図11】別の実施形態のウエブ巻取装置を示す概略図である。
図12】別の実施形態のウエブ巻取装置の切り替え時における状態を示す概略図である。
図13】切り替え試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0032】
(チャージングバーの設置箇所)
図2に、検討を行ったチャージングバー9の設置箇所について具体的に示す。検討を行ったウエブ巻取装置の基本的構成は、特許文献1の装置と同様である。ただし、巻芯Cはテープレスである。
【0033】
すなわち、テープレスの巻芯Cにニップローラ5で押し付けることにより、走行するウエブWを挟持し、その挟持位置NPの下流側の位置で、巻芯Cの表面の周速度よりも速い周速度でカッター6の切刃63を回動させ、表面を突き切るようにウエブWを切断する。そして、その切断端の先端部分をブラシ体70で巻芯Cに押し付け、その切断端の先端部分を巻芯Cに巻き付けるようにして、巻芯Cの切り替えが行われる。
【0034】
このようなウエブ巻取装置の各箇所に1つのチャージングバー9を設置し、50〜100m/分の高速でウエブWが安定して巻き取れるか否かを確認した。
【0035】
その結果、巻芯Cの表面に放電針9bを向けた状態で、挟持位置NPに向かう巻芯Cの近傍にチャージングバー9を設置した場合には、挟持位置NPから離れた位置(ポイントA、引用文献2の第1の設置箇所に相当)や、挟持位置NPの近傍の位置(ポイントB)のいずれの場合であってもウエブWを安定して巻き取ることができなかった。
【0036】
また、ウエブWの表面に放電針9bを向けた状態で、挟持位置NPに向かうウエブWの内面の近傍にチャージングバー9を設置した場合(ポイントC、引用文献2の第2の設置箇所に相当)や、挟持位置NPに向かうウエブWの外面の近傍にチャージングバー9を設置した場合(ポイントD)のいずれの場合であっても、ウエブWを安定して巻き取ることができなかった。
【0037】
更に、図3A図3Cに示すように、2つのチャージングバー9を設置し、チャージングバー9の設置数を増やすことで、高速でウエブWが安定して巻き取れるか否かも確認した。
【0038】
具体的には、図3Aに示すように、先のポイントA及びポイントCの双方に設置した場合や、図3Bに示すように、先のポイントCに並べて設置した場合、図3Cに示すように、先のポイントC及びポイントDの双方に設置した場合について確認した結果、いずれの場合もウエブWを安定して巻き取ることができなかった。
【0039】
その主たる原因は、ウエブWや巻芯Cの表面に伴って移動する空気層が、ウエブWや巻芯Cの帯電を阻害していることにあると推定された。
【0040】
すなわち、チャージングバー9では、その放電針9bに高電圧が印加されることにより、放電針9bの近傍にプラスやマイナスのイオンを発生する。ウエブWや巻芯Cに吸着力が発生するのは、そのイオンがウエブWや巻芯Cの表面に作用してウエブWや巻芯Cが帯電するからである。
【0041】
走行するウエブWや回転する巻芯Cの場合、周辺から空気を巻き込みながら、ウエブWや巻芯Cとともにその表面上の空気層も移動する。そのため、巻芯CやウエブWの表面に放電針9bを向けて放電した場合、流動する空気層にイオンが阻まれてウエブWや巻芯Cの表面にイオンがほとんど作用しなくなり、ウエブWや巻芯Cを帯電できないことが原因と推定された。
【0042】
特に、巻取速度が速くなると、ウエブWや巻芯Cの表面上の空気層の流動も大きくなるため、更に帯電が困難になる。電圧を高めてイオン量を増加することも考えられるが、電圧を高めるとスパークが発生するため、印加できる電圧には上限があり、また、スパークが発生し得る電圧まで高めても、満足のいく吸着力は得られなかった。
【0043】
このような様々な検討を行った結果、巻取速度が高速でも、満足のいく吸着力が得られるピンポイントの設置条件を見出した。すなわち、図4に示すように、チャージングバー9を、巻芯CにウエブWが最初に接する位置(ウエブ受入位置)である、挟持位置NPの上流側の近傍に設置し、放電針9bを挟持位置NPの方に向けた状態で、挟持位置NPに向かう巻芯CとウエブWとの間の隙間に放電させた場合には、巻取速度が高速でも、満足のいく吸着力が得られることを見出した。
【0044】
このようにチャージングバー9を設置した場合、イオンは、ウエブW及び巻芯Cの双方の表面上の空気層の流れに乗って挟持位置NPに運ばれ、そこで密着するウエブWと巻芯Cの双方に挟み込まれるため、直接これらに作用する。従って、空気層による阻害を受けることなく、ウエブW及び巻芯Cを帯電させることができるので、満足のいく吸着力が得られると考えられる。
【0045】
詳しくは、図4に示す巻芯Cの回転軸が延びる方向から見て、巻芯Cの回転方向を挟持位置NPから90度戻った位置での巻芯Cの表面に対する接線TとウエブWと巻芯Cの表面とで区画される、横断面V字状の隙間で放電されるように、チャージングバー9を設置するのが好ましい。そうすれば、挟持位置NPに真っ直ぐ向かうウエブWの表面の空気層の流れと、挟持位置NPに巻き込まれる巻芯Cの表面の空気層の流れとにより、挟持位置NPに効率よくイオンを送り込むことができる。
【0046】
特に、チャージングバー9は、ウエブWと略平行な状態で、ウエブWの近傍に設置するのが好ましい。挟持位置NPに真っ直ぐ向かうウエブWの表面に伴う空気層に多くのイオンを乗せることができるので、よりいっそう効率的にイオンを挟持位置NPに送り込むことができる。
【0047】
(ウエブ巻取装置)
図5に、本実施形態のウエブ巻取装置1を示す。このウエブ巻取装置1は、ロール状の原反から、例えば、PETやOP、CP等、合成樹脂製のウエブWを連続的に巻き出しながら、そのウエブWに印刷や塗工を行って、再度、ロール状に巻き取っていく、いわゆるロールツーロール方式の印刷機や塗工機の製造ライン(図示せず)の最終工程に使用される。ウエブ巻取装置1は、製造ラインを止めることなく、巻芯Cを自動的に交互に切り替えながら、連続してウエブWをロール状に巻き取るように構成されている。
【0048】
このウエブ巻取装置1は、外周面に粘着テープの無い、長さ1〜2m程度の円筒形状をした厚紙製の巻芯Cが使用できるように構成されている。すなわち、このウエブ巻取装置1では、一般的なテープレスの巻芯Cがそのまま使用できる。特に、このウエブ巻取装置1の場合、直径が6インチ以下の比較的小径な巻芯Cが使用可能であり、そのような小径の巻芯Cに対し、100m/分以上の高速で走行するウエブWを、安定して切り替えできるように工夫されている。
【0049】
ウエブ巻取装置1には、ターレット3、ニップローラ5、カッター6、ニアローラ8、チャージングバー9、除電プレート10(除電装置の一例)、ダンサローラ11、各種ガイドローラRなどが備えられていて、これら装置が、フレーム15aやベース15bなどからなる支持体15に組み付けられている。ニップローラ5等はアーチ形状のフレーム15aに設置されていて、そのフレーム15aに隣接するように、ベース15bの上にターレット3が設置されている。なお、ターレット3やニップローラ5等、回動する各装置の中心軸は、互いに平行に配置されていて、ウエブWの走行方向と直交する方向(軸方向)に延びている。
【0050】
ターレット3は、一対の支持プレート31,31、主軸32、一対の軸支部36,36、一対の主軸受部34,34、一対の補助ローラ33a,33aなどで構成されている(2軸ターレット方式)。各支持プレート31は、十字状の同一部材からなり、軸方向に離れて互いに対向している。主軸32は、これら支持プレート31の中心を貫通した状態でこれら支持プレート31に固定されている。
【0051】
両支持プレート31,31の間には一対の横リブ33,33が架設されている。主軸32の両端は、ベース15bに設置された一対の主軸受部34,34によって回転自在に支持されており、一方の主軸受部34には、ターレット3を制御可能に回転させる駆動モータ(図示せず)が連結されている。各横リブ33の外周側には、支持プレート31の中心に対して対称状に、巻芯Cの切り替え時に使用される補助ローラ33aが、回転自在な状態で設置されている。
【0052】
一対の軸支部36,36は、これら一対の補助ローラ33a,33aと直交するように、支持プレート31の中心から離れた位置に対称状に配置されている。各軸支部36は、両支持プレート31,31の対向面に対向して配置された一対の突軸を有しており、これら一対の突軸に、巻芯Cの両端部が着脱可能に装着される。各軸支部36の突軸の一方には巻取モータが連結されており、軸支部36に装着される巻芯Cは、回転制御可能となっている(中心駆動巻取方式)。
【0053】
ターレット3は、ウエブWの巻き取りが行われる巻取位置と、巻芯Cの入れ替えが行われる待機位置とに、両軸支部36,36に装着された巻芯Cの位置が交換されるように回転制御される。図5において、フレーム15aに近い左側の軸支部36のある位置が巻取位置であり、右側の軸支部36のある位置が待機位置である。
【0054】
主軸32の周囲には、一対の軸支部36,36に対応した一対の補助アーム構造体37,37が点対称状に設置されている。各補助アーム構造体37は、各支持プレート31の近傍に配置された2つの補助アーム37aを有し、両補助アーム37a,37aの一端の間には、ウエブWの巻き取り時に使用されるタッチローラ37bが回転自在に軸支されている。各補助アーム構造体37は、各補助アーム37aの他端側に位置する軸部を中心に揺動し、巻取位置に位置する巻芯CにウエブWを巻き取って形成されるロールの外周面に、所定の荷重でタッチローラ37bが接するように、制御可能に構成されている。
【0055】
ニップローラ5は、フレーム15aに設置されたローラ支持体51(第2支持部材)に取り付けられている。ローラ支持体51は、軸方向に離れて対向するとともに、一方の端部がフレーム15aに回動自在に軸支された一対のローラ支持アーム51a,51aと、これらローラ支持アーム51aを揺動させるシリンダ51bと、を有している。ニップローラ5は、これらローラ支持アーム51a,51aの他方の端部に回転自在に軸支されている。
【0056】
ローラ支持アーム51aが揺動することにより、ニップローラ5は、巻取位置に位置する巻取前の巻芯C(新巻芯Cn)の近傍に進出し、新巻芯Cnの下部にその表面を押し付ける切替位置と、新巻芯Cnから下方に大きく離れて位置する非切替位置と、に切替制御可能に構成されている。ニップローラ5が切替位置に位置することにより、待機位置に位置する巻芯Cに巻き取られて走行するウエブWは、ニップローラ5の外周面と新巻芯Cnの外周面とで挟持される。このウエブ巻取装置1では、この挟持位置が新巻芯CnにウエブWが最初に接するウエブ受入位置となっている(挟持位置NPともいう)。
【0057】
カッター6は、切断補助ローラ61とともに、フレーム15aに設置されたカッター支持体62に設置されている。カッター支持体62は、軸方向に離れて対向するとともに、上側の端部が巻取位置よりも下方でフレーム15aに回動自在に軸支された一対のカッター支持アーム62a,62aと、これらカッター支持アーム62a,62aを揺動させるシリンダ62bと、を有している。
【0058】
各カッター支持アーム62aは、ターレット3の側に向かって下端部がJ字状に屈曲した形状を有し、これらカッター支持アーム62aの下端部の突端間に、カッター6と切断補助ローラ61とが取り付けられている。両カッター支持アーム62a,62aが揺動することにより、カッター6及び補助ローラ33aは、新巻芯Cnの側に進出する切替位置と、新巻芯Cnから下方に大きく離れて位置する非切替位置と、に切替制御可能に構成されている。
【0059】
図6に詳しく示すように、カッター6は、切刃63、一対の回動腕64,64などで構成されている。各回動腕64の基端部は、各カッター支持アーム62aに回動可能に支持されており、各回動腕64の先端部に、横長な切刃63が架け渡すように取り付けられている。切刃63は、これら回動腕64が、跳ね上げられるように揺動することにより、挟持位置NPから下流側に離れた位置を通って、ウエブWの表面を突き切ってウエブWを切断するように構成されている。
【0060】
カッター6は、両カッター支持アーム62a,62aの間に収容されており、切断時に回動腕64が揺動するように制御される。切刃63で切断されて浮き上がるウエブWの端部を新巻芯Cnに適切に巻き付けるため、回動腕64の揺動速度は、切刃63が、新巻芯Cnの表面の周速度よりも速い周速度でウエブWを切断するように設定されている。
【0061】
切刃63の外周側には、切刃63に沿って2列に延びる一対のブラシ体70,70(押付装置の一例)が取り付けられている。これらブラシ体70は、切刃63が新巻芯Cnの側方を通過する際に、新巻芯Cnの表面に接触し、切刃63で切断されたウエブWの端部を新巻芯Cnに押し付けるように構成されている。
【0062】
チャージングバー9は、フレーム15aに設置されたバー支持体91(第1支持部材)に設置されている。バー支持体91は、軸方向に離れて位置するフレーム15aの両側壁に設けられた一対のスイング板91a,91aと、これらスイング板91a,91aを揺動させるシリンダ91bと、各スイング板91aの先端部の間に架設され、スイング板91aから突出可能なスライド部91cと、そのスライド部91cをスライドさせるサブシリンダ91dと、を有している。
【0063】
図7に詳しく示すように、チャージングバー9は、静電気を除去する除電ブラシ92(除電装置の一例)とともに、スライド部91cに、金属導体であるブラケット93を介して取り付けられている。
【0064】
チャージングバー9は、軸方向に延びる横長なバー本体9aと、バー本体9aに等間隔で横並びに配置された複数の放電針9bと、を有している。これら放電針9bは、直流高電圧発生装置94に接続されており、例えば、10〜30kVの正又は負の電圧が印加できるように構成されている。このチャージングバー9では、負の電圧が放電針9bに印加されるようになっており、放電針9bの周辺にマイナスのイオンが発生する。
【0065】
除電ブラシ92は、電気伝導性に優れた素材で構成されており、巻芯Cよりも横長に形成されていて、軸方向に延びるように配置されている。除電ブラシ92は、電気電導性に優れたブラシ支持部92aを介して、チャージングバー9の上側でブラケット93に支持されており、バー支持体91やフレーム15aを通じてアース(接地)されている。
【0066】
切り替え時には、巻取位置から離れた待機位置からスイング板91aが揺動し、その先端部が巻取位置の近傍に進出した後、スライド部91cが突出する。それにより、チャージングバー9及び除電ブラシ92は、ウエブWや新巻芯Cnに接触すること無く挟持位置NPに接近し、適切な位置に配置される。具体的には、チャージングバー9は、挟持位置NPの上流側の近傍に変位し、放電針9bを挟持位置NPの方に向けた状態で、その先端部が、挟持位置NPに向かう新巻芯CnとウエブWとの間の横断面V字状の隙間(放電隙間ともいう)に入り込み、放電隙間に放電できる位置に配置される。
【0067】
除電ブラシ92は、放電隙間に向かう新巻芯Cnの表面に、その先端が接する位置(除電位置)に配置される。除電位置は、新巻芯Cnにおいて挟持位置NPから回転方向を、少なくとも半周以上進んだ位置にするのが好ましい。そうすることで、静電気の吸着力で、ウエブWの切断した端部を確りと安定して新巻芯Cnに巻き付けることができる。
【0068】
除電プレート10は、電気伝導性に優れた横長なプレートであり、ブラケット10aを介してローラ支持アーム51aに取り付けられている。除電プレート10は、これらブラケット10aやローラ支持アーム51aを通じてアース(接地)されている。切り替え時には、除電プレート10は、放電隙間に面したウエブWの表面の反対側に沿って位置するように、ローラ支持アーム51aに取り付けられている。
【0069】
ニアローラ8は、フレーム15aに設置されたスライド機構81に設置されている。スライド機構81は、軸方向に離れて位置するフレーム15aの両側壁に設けられた一対のスライダー81a,81aを有している。両スライダー81a,81aは、巻取位置と略同じ高さを略水平にスライドし、その突端部がターレット3の側に向かって進退するように構成されている。両スライダー81a,81aの突端部の間に、ニアローラ8と、ニアローラ8を補助するサポートローラ81bとが回転自在に軸支されている。ニアローラ8は、サポートローラ81bよりもターレット3の側に配置されている。
【0070】
両スライダー81aは、巻き取り時にはロールに対して、ニアローラ8が一定の隙間を保持するように制御される。切り替え時には、両スライダー81aは後退し、ニアローラ8が新巻芯Cnから離れて位置するように制御される。
【0071】
各種ガイドローラR及びダンサローラ11は、ウエブWが巻き掛けられて、その走行方向を所定の方向に誘導するようにフレーム15aの側壁間に回転自在に軸支されている。ダンサローラ11は、ウエブWの走行距離を一時的に増減できるように、フレーム15aに変位可能な状態で支持されている。
【0072】
<ウエブ巻取装置の動作>
図8に、巻き取り時におけるウエブ巻取装置1の状態の一例を示す。巻き取り時には、ニップローラ5、カッター6、チャージングバー9は、巻取位置から離れた非切替位置に待機している。各軸支部36には、直径が6インチの巻芯Cが装着されており、巻取位置に位置する巻芯Cに、各種ガイドローラR、ダンサローラ11、サポートローラ81b、ニアローラ8に誘導されて、100m/分以上の高速で走行するウエブWが巻き取られている。ロールの直径が所定の大きさになるまで、連続してウエブWの巻き取りが行われる。
【0073】
巻き取り時には、ウエブWの張力やタッチローラ37bの荷重は適正に調整される。また、ニアローラ8は、直径が次第に大きくなるロールとの間に一定の隙間を保持するように後退する。ニアローラ8とロールとの間を、ウエブWの走行距離の短い一定の隙間に保つことで、ウエブWの長手方向に発生する縦シワ(トラフ)を抑制することが可能になり、空気の巻き込み量を減少させることができる。これらの結果、直径の小さい巻芯Cに高速で巻き取っても、シワやスリップなどのウエブWの巻き取り時に発生する不具合を効果的に抑制することができる。
【0074】
そうして、ロールの直径が所定の大きさになると、切り替え処理が行われる。具体的には、補助アーム構造体37の一方が揺動制御されることにより、ロールに接していたタッチローラ37bが離脱する。そして、ターレット3が回転し(図8において半時計回り)、両軸支部36,36の位置が交換される。それにより、図9に示すように、待機位置に有った巻取前の巻芯Cは巻取位置に移動し、次にウエブWを巻き取る新巻芯Cnが構成される。巻取位置に有ったロールは待機位置に移動し、走行するウエブWは、一方の補助ローラ33aに巻き掛けられてV字状に誘導され、継続して待機位置で巻き取られる。なお、切り替え時の新巻芯Cnは、走行するウエブWに対して適切な速度で回転するように制御される。
【0075】
続いて、図10に示すように、スイング板91aが揺動して、その先端部が巻取位置の近傍に進出した後、スライド部91cが突出し、チャージングバー9及び除電ブラシ92は、適切な位置に配置される。それにより、除電ブラシ92が新巻芯Cnの表面に接触し、その接触位置より回転方向の進行側に位置する新巻芯Cnの表面は、除電ブラシ92によって除電される。
【0076】
そうして、ローラ支持アーム51a及びカッター支持アーム62aが揺動されることにより、ニップローラ5及びカッター6が、巻取位置の近傍に進出する。それにより、ウエブWは、切断補助ローラ61によって支持された状態で、ニップローラ5が新巻芯Cnの下部に押し付けられ、新巻芯Cnとニップローラ5とで挟持される。新巻芯Cnとニップローラ5とでウエブWが挟持された状態になると、軸支部36の回転制御の主体は、待機位置に位置する軸支部36から、巻取位置に位置する軸支部36に切り替わる。
【0077】
新巻芯Cnとニップローラ5とによるウエブWの挟持動作に連動して放電針9bに電圧が印加され、放電が行われる。それにより、放電隙間で静電気が発生し、ウエブWと新巻芯Cnの双方が帯電する。その結果、ウエブWと新巻芯Cnとの間で吸着力が作用するようになる。しかも、このウエブ巻取装置1では、放電隙間に面するウエブWの反対側には、除電プレート10がウエブWに沿って配置されているため、ウエブWを効率よく帯電させることができ、強い吸着力が得られるようになっている。
【0078】
また、新巻芯Cnとニップローラ5とによるウエブWの挟持動作に連動してウエブWがカッター6で切断される。具体的には、回動腕64が揺動し、切刃63が新巻芯Cnの表面の周速度よりも速い周速度で跳ね上げられることによって、ウエブWが切断される。新巻芯Cnから浮き上がっている切断端の先端部分は、ブラシ体70によって新巻芯Cnに押し付けられるとともに、静電気によって新巻芯Cnに吸着されるので、シワ等の不具合を生じることなく安定して新巻芯Cnに巻き付けることができる。ウエブWと新巻芯Cnとの間には、静電気の吸着力が作用しているので、粘着テープが無くても、剥がれることなく、確りと新巻芯Cnに巻き付けることができる。
【0079】
また、切断時には、ダンサローラ11の作動により、新巻芯Cnより上流側を走行するウエブWの走行距離が増大するように設定されている。それにより、新巻芯Cnを通過するウエブWの走行速度が一時的に低下し、より適切にウエブWが切断できるようになっている。
【0080】
ウエブWが切断されて新巻芯CnにウエブWが巻き付けられると、ニップローラ5は、新巻芯Cnから離れ、放電針9bへの電圧の印加は停止される。その後、ニップローラ5、カッター6、チャージングバー9は、非切替位置に移動し、対応する補助アーム37a構造体37が揺動制御されることにより、新巻芯Cnに巻き取られて形成されるロールの外周面にタッチローラ37bが接触する。
【0081】
ニアローラ8は、ロールに対して一定の隙間を保持するように進出し、その後、その一定の隙間を保持しながら、徐々に後退するように制御される。ウエブWは、タッチローラ37bの荷重や巻取張力を変化させながら新巻芯Cnに巻取られていき、ロールの直径が所定の大きさになれば、待機位置に装着された新たな巻芯Cと切り替えられる。
【0082】
<別の実施形態>
図11及び図12に、他のウエブ巻取装置1’に適用した例を示す。このウエブ巻取装置1’には、ターレット3、巻付ローラ104、ニップローラ5、カッター6、カウンタローラ107、ニアローラ8、チャージングバー9、鉄棒108(除電装置の一例)、ダンサローラ11、各種ガイドローラRなどが備えられている。このウエブ巻取装置1’の基本的構造は、上述した実施形態のウエブ巻取装置1と同じであるため、同じ機能の部材には同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0083】
ターレット3の各支持プレート31は、円板状の同一部材からなり、副軸受部135で支持された状態で回転するように構成されている。
【0084】
巻付ローラ104、ニップローラ5、カッター6は、フレーム15aに設置されたウエブ押上機構141に設置されている。ウエブ押上機構141は、軸方向に離れて対向するとともに、上側の端部が巻取位置よりも下方でフレーム15aに回動自在に軸支された一対の押上アーム141a,141aと、これら押上アーム141a,141aを揺動させる押上シリンダ141bと、を有している。
【0085】
各押上アーム141aは、ターレット3の側に向かって下端部がJ字状に屈曲した形状を有し、これら押上アーム141a,141aの下端部の突端間に、巻付ローラ104が回転自在に軸支されている。両押上アーム141a,141aが揺動することにより、巻付ローラ104は、新巻芯Cnの近傍に進出する切替位置と、新巻芯Cnから下方に大きく離れて位置する非切替位置と、に切替制御可能に構成されている。
【0086】
ニップローラ5は、巻付ローラ104に隣接した位置に回転自在に軸支されており、カッター6は、ニップローラ5の近傍に配置されている。
【0087】
カウンタローラ107は、フレーム15aに設置されたローラ変位機構171に設置されている。ローラ変位機構171は、軸方向に離れて対向するとともに、下端部が巻取位置よりも上方でフレーム15aに回動自在に軸支された一対の支持アーム171a,171aと、これら支持アーム171a,171aを揺動させることによってターレット3の側に押し下げる押下シリンダ171bとを有している。カウンタローラ107は、両支持アーム171a,171aの上端部の突端間に回転自在に軸支されている。両支持アーム171a,171aが揺動することにより、カウンタローラ107は、新巻芯Cnの上部に押し付けられる切替位置と、新巻芯Cnから上方に大きく離れて位置する非切替位置と、に切替制御可能に構成されている。
【0088】
チャージングバー9、鉄棒108は、ニアローラ8とともにスライド機構81に設置されている。チャージングバー9及び鉄棒108は、ニアローラ8の上下に位置するように、両スライダー81aの突端部の間に架設されている。
【0089】
<ウエブ巻取装置の動作>
図11に示すように、巻き取り時の巻付ローラ104及びカウンタローラ107は、いずれも非切替位置に位置している。そうして、ロールの直径が所定の大きさになると、切り替え処理が行われる。まず、ターレット3が回転し、巻取位置に有ったロールは待機位置に移動し、走行するウエブWは継続して待機位置で巻き取られる。
【0090】
図12に示すように、ニアローラ8は、走行するウエブWに対して新巻芯Cnの上流側の近傍に進出した状態となる。巻付ローラ104は、押上アーム141aが揺動されることにより、切替位置に移動し、走行するウエブWに対して新巻芯Cnの下流側の近傍に進出した状態となる。そうすることにより、待機位置に位置する巻芯Cに巻き取られて高速で走行するウエブWのうち、新巻芯Cnの下流側の近傍部位が巻付ローラ104によって押し上げられ、新巻芯Cnの下側の部分にウエブWが巻き付けられた状態となる。
【0091】
すなわち、ニアローラ8と巻付ローラ104とにより、新巻芯Cnの略半分の範囲にウエブWが巻き付けられた状態となり、高速で走行するウエブWであっても、テープレスの巻芯Cに過度な負荷を与えずに巻き付けることができる。ニアローラ8は新巻芯Cnの近傍に位置しているため、ニアローラ8から新巻芯Cnに向かうウエブWの走行経路が新巻芯Cnに近接し、空気の巻き込みが抑制される。それにより、高速で走行するウエブWでも安定して新巻芯Cnに巻き付けが行える。
【0092】
この時、チャージングバー9は、放電針9bを下方に向けた状態で、ニアローラ8と新巻芯Cnとの間の隙間を走行するウエブWの直ぐ上側に位置しており、新巻心CnとウエブWとの間の横断面V字状の隙間に放電するようになっている。従って、このウエブ巻取装置1’の場合、ニアローラ8と新巻芯Cnとの間で、ウエブWが新巻芯Cnに最初に接するため、その接触位置がウエブ受入位置となっている。
【0093】
またこの時、鉄棒108は、ニアローラ8と新巻芯Cnとの間の隙間を走行するウエブWの直ぐ下側に位置している。そのため、ウエブWや新巻芯Cnを効率よく帯電させることができ、強い吸着力が得られる。
【0094】
巻付ローラ104が切替位置に位置している時には、ニップローラ5は、新巻芯Cnに巻き付いているウエブWの下流側の部位(ウエブWが新巻芯Cnから離れる直前の部位)と隙間を隔てて位置している。ニップローラ5は、所定のタイミングで新巻芯Cnの側に進出し、新巻芯Cnに巻き付いているウエブWの下流側の部位を新巻芯Cnに押し付けるように設定されている。
【0095】
その時、新巻芯Cnの偏心を防ぐために、ニップローラ5の押し付け動作に連動して、カウンタローラ107が、切替位置に移動して新巻芯Cnの上部に押し付けられる。そうすることにより、新巻芯Cnの偏心を効果的に抑制することができる。ニップローラ5がウエブWを新巻芯Cnに押し付けるタイミングに連動して、チャージングバー9で静電気が発生される。
【0096】
ニップローラ5で押し付けられているウエブWがカッター6で切断される。このウエブ巻取装置1’のカッター6は、切刃161、空圧で駆動するロッドレスシリンダ162(アクチュエータの一例)などで構成されている。ロッドレスシリンダ162は、押上アーム141aの下端部の突端間に架設されている。切刃161は、ロッドレスシリンダ162のスライドブロックに固定されていて、切断時には、新巻芯Cnに沿ってスライドするように設定されている。
【0097】
切刃161は、新巻芯Cnから離れていくウエブWに新巻芯Cnの近傍で接触し、一方の側縁から切り裂くようにしてウエブWを切断する。それにより、ウエブWの切断端が新巻芯Cnに向かって付勢され、静電気の吸引作用と合わさって、ウエブWの切断端が新巻芯Cnに瞬時に巻き付くようになっている。しかも、切断された部分から順次新巻芯Cnに巻き付いていくので、幅方向に発生するシワ等が防止され、安定してウエブWの切断端を新巻芯Cnに巻き付けることができる。
【0098】
<検証結果>
実施形態のウエブ巻取装置1(第1の巻取装置)及び別の実施形態のウエブ巻取装置1’(第2の巻取装置)の各々において、切り替え試験を行い、高速の巻取速度で安定した切り替えができるか否かを確認した。
【0099】
切り替え試験では、材質や厚み、構成が異なるウエブWを用い、6インチの巻芯Cに対し、100N/mの切断張力で切り替え処理を行った。その結果、テープ付き巻芯を用いた場合と同等のレベルで安定したウエブWの切り換えが確認できた巻取速度を図13に示す。
【0100】
第1及び第2の巻取装置のいずれにおいても、100m/分程度、あるいはそれ以上の巻取速度で安定した切り替えが可能であった。このように、本実施形態のウエブ巻取装置1,1’によれば、高速の巻取速度であっても、テープレスの巻芯Cを用いて安定した切り替えが実現できるようになる。
【符号の説明】
【0101】
1、1’ ウエブ巻取装置
3 ターレット
5 ニップローラ
6 カッター
8 ニアローラ
9 チャージングバー
9a バー本体
9b 放電針
10 除電プレート(除電装置)
70 ブラシ体(押付装置)
91 バー支持体(第1支持部材)
92 除電ブラシ(除電装置)
C 巻芯
Cn 新巻芯
W ウエブ
NP 挟持位置(ウエブ受入位置)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13