特許第6754183号(P6754183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754183電子デバイス封止用シート、及び、電子デバイスパッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754183
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】電子デバイス封止用シート、及び、電子デバイスパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/08 20060101AFI20200831BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01L23/08 A
   H01L23/00 A
   H01L23/30 R
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-227419(P2015-227419)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-98353(P2017-98353A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月21日
【審判番号】不服2019-17123(P2019-17123/J1)
【審判請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】砂原 肇
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
【合議体】
【審判長】 山田 正文
【審判官】 井上 信一
【審判官】 山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−32660(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/071731(WO,A1)
【文献】 特開2014−203971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H01L 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さRaが0.3μm以上である第1の面と、
表面粗さRaが0.1μm以下である第2の面とを有することを特徴とする電子デバイス封止用シート。
【請求項2】
前記第1の面は、熱硬化後の表面粗さRaが0.3μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス封止用シート。
【請求項3】
電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
請求項1に記載の電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記電子デバイス封止用シートの前記第2の面と前記電子デバイスとが接触するように、前記電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程とを含むことを特徴とする電子デバイスパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記封止体を得る工程の後、前記第1の面は、表面粗さRaが0.3μm以上であることを特徴とする請求項3に記載の電子デバイスパッケージの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の電子デバイス封止用シートと、
前記電子デバイス封止用シートの前記第1の面に積層されたセパレータとを備え、
前記セパレータが前記第1の面に積層された状態で熱硬化をおこなってから測定される前記第1の面の表面粗さRaが0.3μm以上である、
セパレータ付き電子デバイス封止用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の電子デバイス封止用シートと、
前記電子デバイス封止用シートの前記第1の面に積層されたセパレータとを備え、
前記セパレータをはく離した後に、150℃、1時間で熱硬化をおこなってから測定される前記第1の面の表面粗さRaが0.3μm以上である、
セパレータ付き電子デバイス封止用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス封止用シート、及び、電子デバイスパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイスパッケージの製造方法としては、基板などに固定された1又は複数の電子デバイス(例えば、半導体チップ)を封止樹脂にて封止した後、封止体を電子デバイス単位のパッケージとなるようにダイシングするという方法が知られている。このような封止樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−19714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような電子デバイスパッケージの製造方法で電子デバイスパッケージを製造する場合、封止樹脂にレーザーマーキングを行い、封止体や電子デバイスパッケージを互いに識別できるようにしておくことが好ましい。しかしながら、封止樹脂は、封止を行なうためのものであるため、レーザーマーキングされた部分の視認性に乏しい場合がある。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れた電子デバイス封止用シート、及び、当該封止用シートを用いた電子デバイスパッケージの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者等は、下記の構成を採用することにより、前記の課題を解決できることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る電子デバイス封止用シートは、
表面粗さRaが0.3μm以上である第1の面と、
表面粗さRaが0.1μm以下である第2の面とを有することを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、表面粗さRaが0.3μm以上である第1の面を有するため、第1の面にレーザーマーキングを行えば、レーザーマーキングを行った部分と行っていない部分との間でコントラストがつき易い。その結果、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れる。
なお、レーザーマーキングは、熱硬化後に行われる場合がある。しかしながら、熱硬化前の表面粗さRaが0.3μm以上であれば、熱硬化後においても一定以上の表面粗さを有することになる。従って、熱硬化前の表面粗さRaが0.3μm以上であれば、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れることになる。
また、表面粗さRaが0.1μm以下である第2の面を有するため、第2の面を被着体に貼り付ければ、貼付面にボイドが発生することを抑制することができる。
【0009】
前記構成において、前記第1の面は、熱硬化後の表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましい。
【0010】
前記第1の面の熱硬化後の表面粗さRaが0.3μm以上であると、レーザーマーキングされた部分の視認性は、より優れる。
【0011】
また、本発明に係る電子デバイスパッケージの製造方法は、
電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
前記電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
前記電子デバイス封止用シートの前記第2の面と前記電子デバイスとが接触するように、前記電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、前記電子デバイス封止用シートを用いているため、第1の面にレーザーマーキングを行えば、レーザーマーキングを行った部分と行っていない部分との間でコントラストがつき易い。その結果、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れる。
また、表面粗さRaが0.1μm以下である第2の面が電子デバイスや被着体に貼り付くため、貼付面にボイドが発生することを抑制することができる。
【0013】
前記構成においては、前記封止体を得る工程の後、前記第1の面は、表面粗さRaが0.3μm以上であることが好ましい。
【0014】
前記封止体を得る工程の後、前記第1の面の表面粗さRaが0.3μm以上であると、レーザーマーキングされた部分の視認性は、より優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電子デバイス封止用シートの断面模式図である。
図2】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
図3】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
図4】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
図5】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
図6】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
図7】本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る電子デバイス封止用シートの断面模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る電子デバイス封止用シート11(以下、「封止用シート11」ともいう)は、第1の面11aと第2の面11bとを有する。第2の面11bは第1の面11aとは反対側の面である。詳しくは、電子デバイスパッケージの製造方法の項で説明するが、第1の面11aは、レーザーマーキングされる側の面である。第2の面11bは、電子デバイスを埋め込む側の面であり、被着体に貼り付けられる面である。
【0018】
第1の面11aは、表面粗さRaが0.3μm以上であり、好ましくは0.8μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上である。第1の面11aの表面粗さRaが0.5μm以上であるため、第1の面11aにレーザーマーキングを行えば、レーザーマーキングを行った部分と行っていない部分との間でコントラストがつき易い。その結果、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れる。
なお、レーザーマーキングは、熱硬化後に行われる場合がある。しかしながら、熱硬化前の表面粗さRaが0.3μm以上であれば、熱硬化後においても一定以上の表面粗さを有することになる。従って、熱硬化前の表面粗さRaが0.3μm以上であれば、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れることになる。
また、第1の面11aは、外観性の観点から、表面粗さRaが3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。
【0019】
第2の面11bは、表面粗さRaが0.1μm以下であり、好ましくは0.08μm以下であり、より好ましくは、0.05μm以下である。第2の面11bの表面粗さRaが0.1μm以下であるため、第2の面11bを被着体に貼り付ければ、貼付面にボイドが発生することを抑制することができる。
また、第2の面11bの表面粗さRaは、小さいほど好ましいが、例えば、0.01μm以上である。
【0020】
表面粗さRaの測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0021】
第1の面11aの表面粗さRaは、例えば、第1の面11aにセパレータ11cを積層する場合には、セパレータ11cの表面粗さによりコントロールすることができる。また、封止用シート11に無機充填剤を含有させる場合には、無機充填剤の含有量や粒径(平均粒径)によりコントロールすることができる。
同様に、第2の面11bの表面粗さRaは、例えば、第2の面11bにセパレータ11dを積層する場合には、セパレータ11dの表面粗さによりコントロールすることができる。また、封止用シート11に無機充填剤を含有させる場合には、無機充填剤の含有量や粒径(平均粒径)によりコントロールすることができる。
【0022】
第1の面11aには、セパレータ11cが積層されている。セパレータ11cの第1の面11a側の表面粗さRaは、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上である。セパレータ11cの表面形状は、ある程度、第1の面11aに転写される。従って、セパレータ11cの第1の面11a側の表面粗さRaが0.5μm以上であると、封止用シート11の製造時に、第1の面11aの表面粗さを0.3μm以上とし易い。セパレータ11cの第1の面11a側の表面粗さRaは、製造される封止用シート11の外観の観点から3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。
【0023】
第2の面11bには、セパレータ11dが積層されている。セパレータ11dの第2の面11b側の表面粗さRaは、好ましくは0.1μm以下であり、より好ましくは0.05μm以下である。セパレータ11dの表面形状は、ある程度、第2の面11bに転写される。従って、セパレータ11dの第2の面11b側の表面粗さRaが0.1μm以下であると、封止用シート11の製造時に、第2の面11bの表面粗さを0.1μm以下とし易い。セパレータ11dの第2の面11b側の表面粗さRaは、小さいほど好ましいが、例えば、0.01μm以上である。
【0024】
セパレータ11c、及び、セパレータ11dの材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0025】
セパレータ11c、及び、セパレータ11dは、剥離を容易に行うために、封止用シート11と接触する側の面が、離型処理されていてもよい。例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキルアクリレート系離型剤などの剥離剤により表面コートされていてもよい。
【0026】
本実施形態では、電子デバイス封止用シートの両側の面にセパレータが積層されている場合について説明するが、本発明の電子デバイス封止用シートは、表面粗さRaが0.3μm以上である第1の面と、表面粗さRaが0.1μm以下である第2の面とを有していれば、この例に限定されない。例えば、第1の面にも第2の面にもセパレータが積層されていなくてもよい。また、第1の面にのみセパレータが積層され、第2の面にはセパレータが積層されていなくてもよい。また、第2の面にのみセパレータが積層され、第1の面にはセパレータが積層されていなくてもよい。
【0027】
封止用シート11は、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な熱硬化性が得られる。
【0028】
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0029】
エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、なかでも、成型性および信頼性の観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などがより好ましい。
【0030】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂などが用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、なかでも硬化反応性が高く安価であるという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0032】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0033】
封止用シート11中のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計含有量の下限は、5.0重量%以上が好ましく、7.0重量%以上がより好ましい。5.0重量%以上であると、電子デバイス、被着体に対する接着力が良好に得られる。一方、上記合計含有量の上限は、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。25重量%以下であると、封止用シートの吸湿性を低減させることができる。
【0034】
封止用シート11は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。これにより、得られる封止用シートの耐熱性、可撓性、強度を向上させることができる。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBTなどの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、可とう性が得やすく、エポキシ樹脂との分散性が良好であるという観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0036】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0037】
前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以下が好ましく、−70〜20℃がより好ましく、−50〜0℃がさらに好ましい。50℃以下とすることにより、シートに可とう性を持たせることができる。
【0038】
前記アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が5万以上のものが好ましく、10万〜200万のものがより好ましく、30万〜160万のものがさらに好ましい。上記数値範囲内であると、封止用シート11の粘度と可とう性をより高くすることができる。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0039】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂と反応して、封止用シート11の粘度を高くできる観点から、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基(エポキシ基)含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0040】
封止用シート11中の熱可塑性樹脂の含有量は、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。上記含有量が0.5重量%以上であると、封止用シートの柔軟性、可撓性が得られる。封止用シート11中の熱可塑性樹脂の含有量は、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。10重量%以下であると、電子デバイスや基板に対する封止用シートの接着性が良好である。
【0041】
封止用シート11は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤を含有していると、無機充填剤の含有量や粒径(平均粒径)に応じて、封止用シート11の第1の面11aや第2の面11bの表面粗さRaをコントロールすることができる。特に、封止用シート11の第1の面11aにセパレータ11cが積層されている場合、第1の面11aの表面粗さRaは、セパレータ11cの表面粗さRaと無機充填剤の含有量及び粒径との選択によりコントロールすることができる。また、封止用シート11の第2の面11bにセパレータ11dが積層されている場合、第2の面11bの表面粗さRaは、セパレータ11dの表面粗さRaと無機充填剤の含有量及び粒径との選択によりコントロールすることができる。
【0042】
前記無機充填剤は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカなど)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なかでも、線膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。
【0043】
シリカとしては、シリカ粉末が好ましく、溶融シリカ粉末がより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末が好ましい。
【0044】
封止用シート11は、無機充填剤を69〜86体積%の範囲内で含有することが好ましい。上記含有量は、75体積%以上がより好ましく、78体積%以上がさらに好ましい。無機充填剤を69〜86体積%の範囲内で含有すると、熱膨張係数を電子デバイス(例えば、後述するSAWチップ13)に近づけることができる。その結果、パッケージの反りを抑制することができる。さらに、無機充填剤を69〜86体積%の範囲内で含有すると、吸水率を低くすることができる。
【0045】
前記無機充填剤がシリカである場合、前記無機充填剤の含有量は、「重量%」を単位としても説明できる。封止用シート11中のシリカの含有量は、80〜92重量%であることが好ましく、85〜92重量%であることがより好ましい。
【0046】
無機充填剤の平均粒径は50μm以下の範囲のものを用いることが好ましく、0.1〜20μmの範囲のものを用いることがより好ましく、0.5〜10μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。
また、前記無機充填剤としては、平均粒子径の異なる2種以上の無機充填剤を用いてもよい。平均粒径の異なる2種以上の無機充填剤を用いる場合、前記の「無機充填剤の平均粒径は50μm以下」とは、無機充填剤全体の平均粒径が50μm以下のことをいう。
平均粒径50μm以下の範囲のものを用いると、第1の面11aの表面粗さRaを0.3μm以上とし、且つ、第2の面11bの表面粗さRaを0.1μm以下とし易くなる。
【0047】
前記無機充填剤の形状は特に限定されず、球状(楕円体状を含む。)、多面体状、多角柱状、扁平形状、不定形状等の任意の形状であってもよいが、高充填状態の達成や適度な流動性の観点から、球状が好ましい。
【0048】
封止用シート11に含有される前記無機充填剤は、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、2つのピークを有していることが好ましい。このような無機充填剤は、例えば、平均粒径の異なる2種類の無機充填剤を混合することにより得ることができる。粒度分布において2つのピークを有する無機充填剤を用いると、無機充填剤を高密度で充填することができる。その結果、無機充填剤の含有量をより多くすることが可能となる。
前記2つのピークは、特に限定されないが、粒径の大きい側のピークが、3〜30μmの範囲内にあり、粒径の小さい側のピークが0.1〜1μmの範囲内にあることが好ましい。前記2つのピークが前記数値範囲内にあると、無機充填剤の含有量をさらに多くすることが可能となる。
上記粒度分布は、具体的には、以下の方法により得られる。
(a)封止用シート11をるつぼに入れ、大気雰囲気下、700℃で2時間強熱して灰化させる。
(b)得られた灰分を純水中に分散させて10分間超音波処理し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「LS 13 320」;湿式法)を用いて粒度分布(体積基準)を求める。
なお、封止用シート11の組成として無機充填剤以外は有機成分であり、上記の強熱処理により実質的に全ての有機成分が焼失することから、得られる灰分を無機充填剤とみなして測定を行う。なお、平均粒径の算出も粒度分布と同時に行うことができる。
【0049】
封止用シート11は、無機充填剤がシランカップリング剤で予め表面処理されていることが好ましい。
【0050】
前記シランカップリング剤としては、メタクリロキシ基、又は、アクリロキシ基を有しており、無機充填剤の表面処理をすることが可能なものであれば特に限定されない。前記シランカップリング剤の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリエトキシシランを挙げることができる。なかでも、反応性とコストの観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0051】
無機充填剤の表面をシランカップリング剤で処理する場合、アウトガス(例えば、メタノール)が発生する。そこで、封止用シート11を作成する前段階で、予め無機充填剤をシランカップリング剤で表面処理しておけば、この段階である程度のアウトガスを排除することができる。その結果、封止用シート11の作成時にシート内に閉じ込められるアウトガスの量を抑制することができ、ボイドの発生が低減できる。
【0052】
封止用シート11が、シランカップリング剤としてのメタクリロキシ基、又は、アクリロキシ基を有する化合物で予め表面処理された無機充填剤を含有する場合、前記無機充填剤は、無機充填剤100重量部に対して0.5〜2重量部のシランカップリング剤により予め表面処理されていることが好ましい。
シランカップリング剤により無機充填剤の表面処理をすれば、封止用シート11の粘度が大きくなりすぎるのを抑制することができるが、シランカップリング剤の量が多いとアウトガス発生量も増加する。そのため、無機充填剤を予め表面処理したとしても、封止用シート11の作成時に発生するアウトガスにより、封止用シート11の性能が低下することとなる。一方、シランカップリング剤の量が少ないと粘度が大きくなりすぎる場合がある。そこで、無機充填剤100重量部に対して0.5〜2重量部のシランカップリング剤により無機充填剤を予め表面処理すれば、好適に粘度を低下させることができるとともに、アウトガスによる性能低下を抑制することができる。
【0053】
封止用シート11が、シランカップリング剤としてのメタクリロキシ基、又は、アクリロキシ基を有する化合物で予め予め表面処理された無機充填剤を含有する場合であり、且つ、前記無機充填剤として、平均粒径の異なる2種類の無機充填剤を混合したものを用いる場合、少なくとも、平均粒径の小さい方の無機充填剤を予めシランカップリング剤で表面処理しておくことが好ましい。平均粒径の小さい方の無機充填剤の方が、比表面積は大きいため、粘度の上昇をより抑制することが可能となる。
また、前記無機充填剤として、平均粒径の異なる2種類の無機充填剤を混合したものを用いる場合、平均粒径の小さい方の無機充填剤と大きい方の無機充填剤との両方を予めシランカップリング剤で表面処理しておくことがより好ましい。この場合、粘度の上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0054】
封止用シート11は、硬化促進剤を含むことが好ましい。
【0055】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されず、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどの有機リン系化合物;2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物;などが挙げられる。なかでも、反応性が良好で硬化物のTgが高め易いという理由から、イミダゾール系化合物が好ましい。イミダゾール系化合物のなかでも、熱硬化時の粘度上昇を早めることができる点で、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。
【0056】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましい。
【0057】
封止用シート11は、必要に応じ、難燃剤成分を含んでもよい。これにより、部品ショートや発熱などにより発火した際の、燃焼拡大を低減できる。難燃剤組成分としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物などの各種金属水酸化物;ホスファゼン系難燃剤などを用いることができる。
【0058】
封止用シート11は、顔料を含むことが好ましい。顔料としては特に限定されず、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0059】
封止用シート11中の顔料の含有量は、0.1〜2重量%が好ましい。0.1重量%以上であると、良好なマーキング性が得られる。2重量%以下であると、硬化後の封止用シートの強度を確保することができる。
【0060】
なお、樹脂組成物には、上記の各成分以外に必要に応じて、他の添加剤を適宜配合できる。
【0061】
封止用シート11の厚さは特に限定されないが、例えば、100〜2000μmである。上記範囲内であると、良好に電子デバイスを封止することができる。
【0062】
封止用シート11は、単層構造であってもよいし、組成の異なる複数の層を積層させた多層構造であってもよい。
【0063】
[電子デバイス封止用シートの製造方法]
封止用シート11は、適当な溶剤に封止用シート11を形成するための樹脂等を溶解、分散させてワニスを調整し、このワニスをセパレータ11c又はセパレータ11d上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させて形成することができる。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜30分間の範囲内で行われる。その後、もう一方のセパレータを貼り付ける。
また、他の方法として、支持体上に前記ワニスを塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて封止用シート11を形成してもよい。その後、セパレータ11c又はセパレータ11d上に封止用シート11を支持体と共に貼り合わせる。その後、支持体を剥離し、もう一方のセパレータを貼り付ける。封止用シート11が、特に、熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を含む場合、これらすべてを溶剤に溶解させた上で、塗布、乾燥させる。溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができる。
また、封止用シート11は、混練押出により製造してもよい。混練押出により製造する方法としては、例えば、封止用シート11を形成するための各成分をミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機で溶融混練することにより混練物を調製し、得られた混練物を可塑加工してシート状に形成する方法などが挙げられる。
具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、封止用シートを形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。押出温度としては、上述の各成分の軟化点以上が好ましく、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。以上により、封止用シート11を形成することができる。
【0064】
[電子デバイスパッケージの製造方法]
本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法は、
電子デバイスがバンプを介して被着体上に固定された積層体を準備する工程と、
電子デバイス封止用シートを準備する工程と、
電子デバイス封止用シートの第2の面と前記電子デバイスとが接触するように、前記電子デバイス封止用シートを、前記積層体の前記電子デバイス上に配置する工程と、
熱プレスにより、前記電子デバイスを前記電子デバイス封止用シートに埋め込む工程と、
前記埋め込む工程の後、前記電子デバイス封止用シートを熱硬化させて封止体を得る工程と
を少なくとも含む。
【0065】
前記被着体としては特に限定されず、例えば、プリント配線基板、セラミック基板、シリコン基板、金属基板等が挙げられる。
前記電子デバイスとしては、センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタなどの中空構造を有する電子デバイス(中空型電子デバイス);半導体チップ、IC(集積回路)、トランジスタなどの半導体素子;コンデンサ;抵抗などが挙げられる。
【0066】
以下では、本発明の電子デバイスパッケージが中空型電子デバイスパッケージである場合について説明する。中空型電子デバイスパッケージとは、電子デバイスと被着体との間に中空部が存在する電子デバイスパッケージのことをいう。しかしながら、本発明の電子デバイスパッケージは、中空型電子デバイスパッケージに限定されない。本発明の電子デバイスパッケージは、電子デバイスと被着体との間に樹脂等が充填されており、中空部が存在しない電子デバイスパッケージであってもよい。
具体的に、以下で説明する実施形態では、プリント配線基板12上に搭載されたSAWチップ13を封止用シート11により中空封止して中空パッケージを作製する場合について説明する。なお、SAWチップ13とは、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタを有するチップである。すなわち、本実施形態では、本発明の電子デバイスが、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタを有するチップである場合について説明する。
【0067】
図2図7は、本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法を説明するための断面模式図である。
【0068】
(積層体を準備する工程)
本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法では、まず、複数のSAWチップ13(SAWフィルタ13)がプリント配線基板12上に搭載された積層体15を準備する(図2参照)。SAWチップ13は、所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することにより形成できる。SAWチップ13のプリント配線基板12への搭載には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。SAWチップ13とプリント配線基板12とはバンプ13aを介して電気的に接続されている。また、SAWチップ13とプリント配線基板12との間は、SAWフィルタ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部14を維持するようになっている。SAWチップ13とプリント配線基板12との間の距離(中空部の幅)は適宜設定でき、一般的には10〜100μm程度である。
【0069】
(電子デバイス封止用シートを準備する工程)
また、本実施形態に係る電子デバイスパッケージの製造方法では、封止用シート11(図1参照)を準備する。
【0070】
(電子デバイス封止用シートを配置する工程)
次に、図3に示すように、下側加熱板22上に、積層体15を、SAWチップ13が固定された面を上にして配置するとともに、SAWチップ13面上に封止用シート11を配置する。この際、封止用シート11の第2の面11bにセパレータ11dが積層されている場合には、セパレータ11dを剥離した後、封止用シート11の第2の面11bがSAWチップ13に接触するように配置する。この工程においては、下側加熱板22上にまず積層体15を配置し、その後、積層体15上に封止用シート11を配置してもよく、積層体15上に封止用シート11を先に積層し、その後、積層体15と封止用シート11とが積層された積層物を下側加熱板22上に配置してもよい。
【0071】
(電子デバイスを電子デバイス封止用シートに埋め込む工程)
次に、図4に示すように、下側加熱板22と上側加熱板24とにより熱プレスして、SAWチップ13を封止用シート11に埋め込む。下側加熱板22、及び、上側加熱板24は、平板プレスが備えるものであってよい。封止用シート11は、SAWチップ13及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能することとなる。
【0072】
具体的に、SAWチップ13を封止用シート11に埋め込む際の熱プレス条件としては、封止用シート11の粘度等に応じて異なるが、温度が、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜120℃であり、圧力が、例えば、0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜5MPaであり、時間が、例えば0.3〜10分間、好ましくは0.5〜5分間である。熱プレス方法としては、平行平板プレスやロールプレスが挙げられる。なかでも、平行平板プレスが好ましい。熱プレス条件を上記数値範囲内とすることにより、より好適にSAWチップ13を封止用シート11に埋め込むことができる。封止用シート11の第2の面11dの表面粗さRaが0.1μm以下であるため、SAWチップ13やプリント配線基板12との界面にボイドが発生することを抑制することができる。
【0073】
また、封止用シート11のSAWチップ13及びプリント配線基板12への密着性および追従性の向上を考慮すると、減圧条件下においてプレスすることが好ましい。
前記減圧条件としては、圧力が、例えば、0.1〜5kPa、好ましくは、0.1〜100Paであり、減圧保持時間(減圧開始からプレス開始までの時間)が、例えば、5〜600秒であり、好ましくは、10〜300秒である。
【0074】
(セパレータ剥離工程)
次に、封止用シート11の第1の面11aにセパレータ11cが積層されている場合には、セパレータ11cを剥離する(図5参照)。
【0075】
(熱硬化させて封止体を得る工程)
次に、封止用シート11を熱硬化させて封止体25を得る。封止用シート11の第1の面11aは、熱硬化前の表面粗さRaが0.3μm以上であるので、熱硬化後においても一定以上の表面粗さを有している。具体的には、例えば、熱硬化後の表面粗さRaは、0.3μm以上である。
特に、本実施形態では、セパレータ11cを剥離した後に、熱硬化を行っている。熱硬化時、有機成分は、僅かに収縮し、封止用シート11の厚さ(有機成分に依存する厚さ)は、僅かに薄くなる。従って、有機成分中に分散されている無機充填剤の表面形状が僅かに第1の面11aに現れる。その結果、熱硬化後の第1の面11aの表面粗さRaは、無機充填剤の存在にも影響を受けることとなる。そのため、より好適に第1の面11aの表面を荒らすことができ、レーザーマーキング工程によりレーザーマーキングされる部分の視認性をより高めることができる。
【0076】
具体的に、熱硬化処理の条件として、封止用シート11の粘度や構成材料等に応じて異なるが、加熱温度が好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方、加熱温度の上限が、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱時間が、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。一方、加熱時間の上限が、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。また、必要に応じて加圧してもよく、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。一方、上限は好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。熱硬化処理の条件を上記数値範囲内とすることにより、第1の面11aの熱硬化後の表面粗さRaを一定以上とすることができる。
【0077】
(レーザーマーキング工程)
次に、図6に示すように、レーザーマーキング用のレーザー30を用いて、封止用シート11にレーザーマーキングを行なう。第1の面11aは、一定以上の表面粗さRaを有しているので、レーザーマーキングされた部分の視認性に優れる。なお、レーザーマーキングを行う前に、シリコン−ニッケルをターゲットとしたスパッタリングにより、第1の面11aに薄膜を形成してもよい。前記薄膜を形成しておくと、よりレーザーマーキング部分の視認性が向上する。
【0078】
レーザーマーキングの条件としては、特に限定されないが、封止用シート11に、レーザー[波長:532nm]を、強度:0.3W〜2.0Wの条件で照射することができる。また、一例として、この際の加工深さ(深度)が2μm以上となるように照射する方法が挙げられる。前記加工深さの上限は特に制限されないが、例えば、2μm〜25μmの範囲から選択することができ、好ましくは3μm以上(3μm〜20μm)であり、より好ましくは5μm以上(5μm〜15μm)である。レーザーマーキングの条件を前記数値範囲内とすることにより、レーザーマーキングされた部分の視認性をより良好とすることができる。
【0079】
なお、封止用シート11のレーザー加工性は、構成樹脂成分の種類やその含有量、着色剤の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量、充填材の種類やその含有量などによってもコントロールすることができる。
【0080】
封止用シート11におけるレーザーマーキングを行なう箇所としては、特に限定されず、SAWチップ13の直上であってもよく、SAWチップ13が配置されていない箇所の上側(例えば、封止用シート11の外周部分)であってもよい。また、レーザーマーキングによってマーキングされる情報としては、封止体単位での区別を可能とするための文字情報や図形情報等であってもよく、同一の封止体25内において互いの電子デバイスを区別可能とするための文字情報や図形情報等であってもよい。これにより、封止体25や封止体25内の複数のSAWチップ13(電子デバイス)の相互識別性を持たせることができる。
【0081】
電子デバイスとしてのSAWフィルタ13を1つのみ封止した場合は、封止体25を1つの電子デバイスパッケージとすることができる。また、複数のSAWフィルタ13を一括して封止した場合は、SAWフィルタごとに分割することにより、それぞれ1つの電子デバイスパッケージとすることができる。すなわち、本実施形態のように、複数のSAWフィルタ13を一括して封止した場合、さらに、下記の構成を行ってもよい。
【0082】
(ダイシング工程)
レーザーマーキング工程の後、封止体25のダイシングを行ってもよい(図6参照)。これにより、SAWチップ13単位での電子デバイスパッケージ18(中空型電子デバイスパッケージ)を得ることができる。
【0083】
(基板実装工程)
必要に応じて、電子デバイスパッケージ18に対してバンプを形成し、これを別途の基板(図示せず)に実装する基板実装工程を行うことができる。電子デバイスパッケージ18の基板への実装には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。
【0084】
上述した実施形態では、セパレータ11cを剥離した後、熱硬化を行う場合について説明した。しかしながら、本発明においてはこの例に限定されず、熱硬化後に、第1の面に積層されたセパレータを剥離することとしてもよい。
この場合、熱硬化時に第1の面にセパレータが積層された状態である。そのため、セパレータと封止用シートの有機成分との間で界面張力が働いており、セパレータ近辺の有機成分が収縮すると、その分、他の部分から有機成分がセパレータ側に引き寄せられる。その結果、上述した実施形態の場合(セパレータ11cを剥離した後、熱硬化を行う場合)ほどは、有機成分中に分散されている無機充填剤の表面形状が第1の面11aに現れない。つまり、この場合、よりセパレータの形状に依存した表面粗さとすることができる点で優れる。
【0085】
上述した実施形態では、電子デバイス封止用シートを用いて、電子デバイスを平行平板プレスで埋め込む場合について説明したが、本発明は、この例に限定されず、真空状態の真空チェンバー内において、離型フィルムで、電子デバイスと中空型電子デバイス封止用シートとの積層物を密閉した後、チャンバー内に大気圧以上のガスを導入して、電子デバイスを電子デバイス封止用シートに埋め込むこととしてもよい。具体的には、特開2013−52424号公報に記載されている方法により、電子デバイスを電子デバイス封止用シートに埋め込むことしてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、電子デバイス封止用シートの熱硬化後にレーザーマーキングを行う場合について説明した。しかしながら、本発明はこの例に限定されず、レーザーマーキングを行った後に熱硬化を行ってもよい。具体的には、第1の面側のセパレータを剥離した後、第1の面にレーザーマーキングを行い、その後、熱硬化させてもよい。また、第1の面側のセパレータを積層させたままの状態で第1の面にレーザーマーキングを行い、次に、第1の面側のセパレータを剥離し、その後、熱硬化させてもよい。また、第1の面側のセパレータを積層させたままの状態で第1の面にレーザーマーキングを行い、次に、熱硬化させ、その後、第1の面側のセパレータを剥離してもよい。これらの場合、熱硬化前の第1の面の表面粗さRaが0.3μm以上であるため、レーザーマーキングされた部分の視認性は良好となる。
【実施例】
【0087】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0088】
実施例で使用した封止用シートの成分、及び、セパレータの種類について説明する。
【0089】
(封止用シートの成分)
エポキシ樹脂:新日鐵化学(株)製のYSLV−80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキン当量200g/eq.、軟化点80℃)
フェノール樹脂:群栄化学製のLVR8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量104g/eq.、軟化点60℃)
熱可塑性樹脂:根上工業社製のHME−2006M(カルボキシル基含有のアクリル酸エステル共重合体、重量平均分子量:約60万、ガラス転移温度(Tg):−35℃)
無機充填剤A:電気化学工業社製のFB−5SDC(平均粒径5μm、表面処理ナシ)
無機充填剤B:アドマテックス社製のSO−25R(平均粒径0.5μm)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM−503)で表面処理したもの。無機充填剤Bの100重量部に対して1重量部のシランカップリング剤で表面処理。
無機充填剤C:電気化学工業社製のFB−9454F(平均粒径20μm、表面処理ナシ)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20
硬化促進剤:四国化成工業社製の2P4MHZ−PW(2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール)
【0090】
(セパレータの種類)
TPX A:三井化学東セロ(株)製:X−88BMT4 両面エンボスタイプ(凹凸小面)
TPX B:三井化学東セロ(株)製:X−88BMT4 両面エンボスタイプ(凹凸大面)
PET A:(株)フジコー社製:50−X42
PET B:帝人社製:U70
PET C:三菱樹脂(株)社製:MRA38
【0091】
[実施例、及び、比較例に係る両面セパレータ付き封止用シートの作成]
表1に記載の封止用シートの配合比に従い、各成分を溶剤としてのメチルエチルケトンに溶解、分散させ、濃度85重量%のワニスを得た。このワニスを、第1の面側のセパレータ上に塗布した後、110℃で5分間乾燥させた。これをシートXとした。
また、前記ワニスを、第2の面側のセパレータとするセパレータ上に塗布した後、110℃で5分間乾燥させた。これをシートYとした。シートYは、同じものを3つ作製した。第1の面側のセパレータとするセパレータ、及び、第2の面側のセパレータとするセパレータは、表1に示した通りである。これにより、厚さ55μmのシート(シートX、シートY)を得た。この4つのシートを積層させて、厚さ220μmのシートを作製した。具体的な4層の積層方法としては、以下の通りである。
(1)第1の面側のセパレータに積層されたシートXと、第2の面側のセパレータに積層されたシートYとを貼り合わせて、積層体Z1とする。
(2)2つの、第2の面側のセパレータに積層されたシートYを貼り合わせて、積層体Z2とする。
(3)積層体Z1から、第2の面側のセパレータを剥離するとともに、積層体Z2から、一方の第2の面側のセパレータを剥離する。
(4)上記(3)の操作で露出したシート面同士を貼り合わせて、両面にセパレータを有する4層構造の封止用シートを得た。
【0092】
(セパレータの表面粗さの測定)
実施例、比較例にて使用したセパレータの表面粗さ(Ra)を、JIS B 0601に基づき、Lasertec社製の共焦点顕微鏡(OPTELICS H300)を用いて測定した。測定条件は、50倍とし、測定値は、測定データにMedian filterをかけて求めた。測定は、各封止用シートについて、測定箇所を変更しながら5回行い、その平均値を表面粗さ(Ra)とした。これを各セパレータ表面粗さRaとした。結果を下記表1に示す。
【0093】
(熱硬化前の封止用シートの表面粗さの測定)
実施例、及び、比較例に係る封止用シートの熱硬化前の第1の面、及び、第2の面の表面粗さ(Ra)を、JIS B 0601に基づき、Lasertec社製の共焦点顕微鏡(OPTELICS H300)を用いて測定した。測定条件は、セパレータの表面粗さの測定時と同様とした。具体的には、上記にて作製した両面セパレータ付き封止用シートから、第1の面側のセパレータを剥離した後、第1の面の表面粗さ(Ra)を測定した。また、上記にて作製した両面セパレータ付き封止用シートから、第2の面側のセパレータを剥離した後、第2の面の表面粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(熱硬化後の封止用シートの第1の面の表面粗さの測定)
実施例、及び、比較例に係る封止用シートの熱硬化後の表面粗さ(Ra)を、JIS B 0601に基づき、Lasertec社製の共焦点顕微鏡(OPTELICS H300)を用いて測定した。測定条件は、セパレータの表面粗さの測定時と同様とした。
具体的には、以下の2通りの場合について測定した。
測定方法A:両面セパレータ付き封止用シートの状態で封止用シートを熱硬化させた後、第1の面側のセパレータを剥離し、封止用シートの第1の面の表面粗さRaを測定した。
測定方法B:両面セパレータ付き封止用シートから、第1の面側のセパレータを剥離した後、封止用シートを熱硬化させた。その後、封止用シートの第1の面の表面粗さRaを測定した。
なお、熱硬化条件は、測定方法A、測定方法Bのいずれの場合にも、150℃、1時間とした。結果を表1に示す。
【0095】
(レーザーマーキング性評価)
実施例、及び、比較例に係る封止用シートの熱硬化後のレーザーマーキング性について、以下のようにして評価した。
・評価方法A
実施例、比較例にて作成した両面セパレータ付き封止用シートの状態で封止用シートを熱硬化させた後、第1の面側のセパレータを剥離した。次に、第1の面に、レーザー印字装置(商品名「MD−S9900」、KEYENCE社製)を用いて、下記の照射条件にて、レーザー印字した。
<レーザー印字の照射条件>
レーザー波長:532nm
レーザーパワー:1.2W
周波数:32kHz
レーザー印字された第1の面に、KEYENCE社の装置名:CA−DDW8を用いて、第1の面に対し全方位方向から斜光照明を照射し、CCDカメラ(装置名:CV−0350)(KEYENCE社製)で反射光を取り込んだ。取り込んだ反射光の明度をKEYENCE社の装置名:CV−5000を用いて測定した。明度測定は、レーザー印字部と非印字部との両方に対して行なった。なお、明度とは、白色を100%と黒色を0%とした値であり、本明細書においては、上述したKEYENCE社の装置名、CV−5000を用いて測定した値とする。レーザー印字部の明度と非印字部の明度の差をコントラスト[%]とし、40%以上の場合を○、40%未満の場合を×としてレーザーマーキング性を評価した。結果を表1に示す。
・評価方法B
実施例、比較例にて作成した両面セパレータ付き封止用シートから、第1の面側のセパレータを剥離した後、封止用シートを熱硬化させた。次に、第1の面に、レーザー印字した。レーザー印字の照射条件は、評価方法Aと同様とした。また、評価方法Aと同様にしてレーザーマーキング性を評価した。結果を下記表1に示す。
なお、熱硬化条件は、評価方法A、評価方法Bのいずれの場合にも、150℃、1時間とした。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【符号の説明】
【0097】
11 電子デバイス封止用シート(封止用シート)
13 SAWフィルタ(電子デバイス)
14 中空部
15 積層体
18 電子デバイスパッケージ
25 封止体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7