(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754189
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】飲料容器の蓋体ロック構造
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20200831BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20200831BHJP
A47J 41/02 20060101ALI20200831BHJP
A47J 41/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
B65D47/06 110
B65D47/08 120
A47J41/02 104B
A47J41/00 304B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-251368(P2015-251368)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-114513(P2017-114513A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515358377
【氏名又は名称】片岡 紅子
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】片岡 紅子
【審査官】
蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−93544(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3173973(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3178393(JP,U)
【文献】
特開2014−101128(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203290722(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
A47J 41/00
A47J 41/02
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器本体の上部開口に取り付けられる口栓部材(1)、該口栓部材(1)の上部一端にヒンジ(3)により取り付けられ、該ヒンジ(3)を中心に、該口栓部材(1)を覆うように開閉される片開きの蓋体(2)、及び、該口栓部材(1)に取り付けられ、該蓋体(2)を閉状態に保持し得る蓋体ロック部材(4)を備え、該蓋体ロック部材(4)には係止凸部(4−1)が備えられ、一方、該蓋体(2)には、該係止凸部(4−1)と係合する係止凹部(2−2)が備えられ、該係止凸部(4−1)と該係止凹部(2−2)とが一体となって該蓋体(2)を閉状態に保持し、かつ、該係止凸部(4−1)は、口栓部材(1)に取り付けられた、蓋体ロック部材(4)の支軸(4−3)を中心として、該蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)に回転移動することができ、それにより、該係止凸部(4−1)を該係止凹部(2−2)から解放して該蓋体(2)を開状態にすることができる、飲料容器の蓋体ロック構造(A)であって、上記の蓋体ロック部材(4)が、少なくとも、上記係止凸部(4−1)を備えた板状体(4−2)、蓋体ロック部材(4)を回転移動せしめる上記支軸(4−3)、並びに、該板状体(4−2)面から略垂直に伸びかつその先端において該係止凸部(4−1)側に該板状体(4−2)に対して略平行に屈曲した突出部(4−4)から構成され、一方、蓋体(2)は、板状体(4−2)に備えられた係止凸部(4−1)の回転移動を阻止する作動阻止部材(5)を備え、該作動阻止部材(5)は、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されることができる作動阻止片(5−1)を備え、該作動阻止片(5−1)は、蓋体(2)の略前面であって、該蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)の上方、かつ、作動阻止片(5−1)の蓋体(2)側の端部上面にヒンジ(3)の方向に向かって設けられた、作動阻止部材(5)の操作部(5−2)により、該突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる面(4−7)に沿って、該板状体(4−2)に略平行にスライドされることができて、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されて、蓋体ロック部材(4)の回転移動を阻止し、かつ、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間から取り除かれて、蓋体ロック部材(4)の回転移動を可能にすることを特徴とする飲料容器の蓋体ロック構造。
【請求項2】
作動阻止部材(5)の操作部(5−2)及び作動阻止片(5−1)が、いずれも片開きの蓋体(2)とは異なる色彩を有する、請求項1記載の飲料容器の蓋体ロック構造。
【請求項3】
上記蓋体ロック部材(4)が、係止凸部(4−1)を備えた板状体(4−2)、及び、突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる面(4−7)の両方に略垂直な板状部分(4−5)を更に備え、該板状部分(4−5)に、蓋体ロック部材(4)を回転移動せしめる支軸(4−3)を備える、請求項1又は2記載の飲料容器の蓋体ロック構造。
【請求項4】
上記蓋体ロック部材(4)が、上記支軸(4−3)の両端のみで口栓部材(1)に取り付けられており、それにより、上記係止凸部(4−1)を、上記蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)に回転移動する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造。
【請求項5】
上記板状体(4−2)が、一の端部に係止凸部(4−1)を備え、かつ、他の端部は、飲料容器本体の底面に対して略垂直方向に該底面方向に伸びている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器の蓋体ロック構造に関し、更に詳しくは、各種飲料容器、例えば、水筒、携帯用魔法瓶等に有用な蓋体ロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料容器の蓋体が予期せずに開いてしまうことを防止するために種々の蓋体ロック構造が提案されている。例えば、容器本体の上部開口に装着される口栓部材と、該口栓部材にヒンジにて開閉可能に連結され、口栓部材の天板に開口する抽出口を液密に覆う蓋部材とを備え、前記ヒンジと反対側に、前記蓋部材の閉状態の保持と解除とを行うロック機構を備えた飲料容器の栓体において、前記ロック機構は、前記蓋部材の回動端に設けられた係合片と、前記口栓部材の外面部に設けた軸部材により軸支されて口栓部材の内外方向に回動可能に取り付けられたロックボタンと、口栓部材の外周壁にスライド可能に設けられたスライド式ストッパとを備え、前記ロックボタンは、上部に前記係合片が係脱可能な係合部を有するとともに、該係合部を前記係止片との係合方向に付勢する付勢手段を有し、前記スライド式ストッパは、前記ロックボタンの下部と口栓部材の外周壁との間に挿入されたときに前記ロックボタンのロック解除方向への動きを規制するストッパ片と、該ストッパ片の挿入位置と非挿入位置とに該スライド式ストッパをそれぞれ保持する係止部とを有していることを特徴とする飲料用容器の栓体が知られている(特許文献1)。該発明は、スライド式ストッパを、飲料用容器の口栓部材に対して上下方向にスライドさせて、ストッパ片を、ロックボタンの下部と口栓部材の外周壁との間に挿入することによりロックボタンのロック解除を規制するものである。しかし、該発明においては、スライド式ストッパを下げた時にロックボタンとスライド式ストッパとの間に隙間ができることから、その隙間に異物が入り込んでしまうことがあった。そして、それを知らずにスライド式ストッパを上げると、スライド式ストッパの動作を阻害してしまうことがあった。また、蓋部材を開けた状態で誤ってスライド式ストッパを、ロックボタン動作を規制する位置に上げてしまい、その状態で蓋体を閉めようとすると、ロックボタン及びその軸部分に過大な負荷がかかって破損してしまうという問題もあった。
【0003】
かかる問題を解決すべく、例えば、本体部の上に枢着された蓋体を、本体部に枢着された係止部材の係止爪による係止で閉状態に保持する蓋体ロック構造であって、上記係止部材の内側に、係止部材に沿ってその長さ方向に摺動する摺動ロック部材と、該摺動ロック部材および/ または上記係止部材を外側に向けて付勢する付勢手段とを有するとともに、上記摺動ロック部材には、係止部材の外側面より外側の位置に突出する操作部と、該操作部を内側へ押圧して回転させた時に係止部材をその係止爪の係止が外れる方向に回転させる回転力伝達部と、当該摺動ロック部材を摺動して係止部材の長さ方向における一方側に摺動させたときに本体部材の一部に当接または近接して摺動ロック部材の上記回転を阻止する回転規制部が形成された蓋体ロック構造が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−193944号公報
【特許文献2】特開2007−126186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蓋体の開閉を容易に行うことができ、かつ、蓋体が意図せず開いてしまうことを防止し得るばかりではなく、蓋体ロック部材の作動阻止を確実に実施することができ、かつ、蓋体ロック部材を損傷することが殆どない構造を有することに加えて、著しく安価に製造可能な、飲料容器の蓋体ロック構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記特許文献2記載の発明によれば、上記特許文献1記載の発明における種々の問題点を解決することができる。しかし、特許文献2記載の蓋体ロック構造においては、その構造が複雑であることから、製造コストの増大を避けることができない。そこで、本発明者は、如何にすれば、製造コストを増大せしめることなく、上記課題を解決することができるかについて種々の検討を試みた。特許文献1記載の発明において、スライド式ストッパを上下する時にロックボタンとスライド式ストッパとの間の隙間に異物が入り込んでスライド式ストッパの動作を阻害してしまうのは、スライド式ストッパの操作部分が外側に突出し、かつ、上下にスライドさせるために、操作部分近傍に異物が付着等して、これを巻き込んでしまうことがあるためと考えた。加えて、スライド式ストッパの操作部分が、ロック機構下部であって口栓部材に取り付けられているため、蓋部材を開状態から閉状態にする際に、一見して異物の存在を認識し難いためであると考えた。そこで、スライド式ストッパの操作部分をより見やすい位置に設置すれば、このような異物の巻き込みという問題を解消し得るばかりではなく、かつ、ストッパの位置をも容易に確認し得て、ロック部分を破損してしまうような事故をも極力低減し得るのではないかと考えて、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)飲料容器本体の上部開口に取り付けられる口栓部材(1)、該口栓部材(1)の上部一端にヒンジ(3)により取り付けられ、該ヒンジ(3)を中心に、該口栓部材(1)を覆うように開閉される片開きの蓋体(2)、及び、該口栓部材(1)に取り付けられ、該蓋体(2)を閉状態に保持し得る蓋体ロック部材(4)を備え、該蓋体ロック部材(4)には係止凸部(4−1)が備えられ、一方、該蓋体(2)には、該係止凸部(4−1)と係合する係止凹部(2−2)が備えられ、該係止凸部(4−1)と該係止凹部(2−2)とが一体となって該蓋体(2)を閉状態に保持し、かつ、該係止凸部(4−1)は、口栓部材(1)に取り付けられた、蓋体ロック部材(4)の支軸(4−3)を中心として、該蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)に回転移動することができ、それにより、該係止凸部(4−1)を該係止凹部(2−2)から解放して該蓋体(2)を開状態にすることができる、飲料容器の蓋体ロック構造(A)であって、上記の蓋体ロック部材(4)が、少なくとも、上記係止凸部(4−1)を備えた板状体(4−2)、蓋体ロック部材(4)を回転移動せしめる上記支軸(4−3)、並びに、該板状体(4−2)面から略垂直に伸びかつその先端において該係止凸部(4−1)側に該板状体(4−2)に対して略平行に屈曲した突出部(4−4)から構成され、一方、蓋体(2)は、板状体(4−2)に備えられた係止凸部(4−1)の回転移動を阻止する作動阻止部材(5)を備え、該作動阻止部材(5)は、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されることができる作動阻止片(5−1)を備え、該作動阻止片(5−1)は、蓋体(2)の略前面であって、該蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)の上方
、かつ、作動阻止片(5−1)の蓋体(2)側の端部上面にヒンジ(3)の方向に向かって設けられた、作動阻止部材(5)の操作部(5−2)により、該突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる面(4−7)に沿って、該板状体(4−2)に略平行にスライドされることができて、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されて、蓋体ロック部材(4)の回転移動を阻止し、かつ、該板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、該板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間から取り除かれて、蓋体ロック部材(4)の回転移動を可能にすることを特徴とする飲料容器の蓋体ロック構造である。
【0008】
好ましい態様として、
(2)作動阻止部材(5)の操作部(5−2)及び作動阻止片(5−1)が、いずれも片開きの蓋体(2)とは異なる色彩を有する、上記(1)記載の飲料容器の蓋体ロック構造、
(3)上記蓋体ロック部材(4)が、係止凸部(4−1)を備えた板状体(4−2)、及び、突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸び
る面(4−7)の両方に略垂直な板状部分(4−5)を更に備え、該板状部分(4−5)に、蓋体ロック部材(4)を回転移動せしめる支軸(4−3)を備える、上記(1)又は(2)記載の飲料容器の蓋体ロック構造、
(4)上記蓋体ロック部材(4)が、上記支軸(4−3)の両端のみで口栓部材(1)に取り付けられており、それにより、上記係止凸部(4−1)を、上記蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)に回転移動することができる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造、
(5)上記板状体(4−2)が、一の端部に係止凸部(4−1)を備え、かつ、他の端部は、飲料容器本体の底面に対して略垂直方向に該底面方向に伸びている、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造、
(6)上記板状体(4−2)が、口栓部材(1)の側面に略平行に取り付けられている、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造、
(7)上記作動阻止片(5−1)が、作動阻止部材(5)の操作部(5−2)を、蓋体(2)に沿って左右にスライドさせることにより、上記突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる面(4−7)に沿って、該板状体(4−2)に略平行にスライドされることができる、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の飲料容器の蓋体ロック構造
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲料容器の蓋体ロック構造は、蓋体の開閉を容易に行うことができ、かつ、蓋体が意図せず開いてしまうことを防止し得るばかりではなく、蓋体ロック部材の作動阻止を確実に実施することができる構造を有する。従って、蓋体の開閉を片手で容易に行うことができ、また、持ち運び中に蓋体が開いて容器から飲料がこぼれ出すことを防止し得る。また、蓋体ロック部材の作動阻止部材を操作する操作部を見やすい位置に設けたことから、蓋体ロック部材の作動阻止を忘れることがなく、かつ、蓋体の開閉時に、作動阻止部材の作動阻止片の位置を一見して把握し得ることから、作動阻止部材の作動阻止片が蓋体ロック部材の回転移動を阻止し得る位置に存在するときに誤って蓋体を閉めてしまうことが殆どない。加えて、構造がきわめて簡単であることから、著しく安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様の要部断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様おける蓋体ロック部材の外観図(a)及び該蓋体ロック部材を方向(I)から見たときの概略側面図(b)である。
【
図3】
図3は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様において、片開きの蓋体が開いた状態(a)及び閉じた状態(b)を示した外観図である。
【
図4】
図4は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様において、蓋体ロック部材の回転移動が阻止されていない状態(a)及び阻止されている状態(b)における作動阻止片の位置を示した要部断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様において、蓋体ロック部材の回転移動が阻止されていない状態(a)及び阻止されている状態(b)における作動阻止部材の操作部の位置を示した外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様の要部断面図であり、
図2は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様における蓋体ロック部材の外観図(a)及び該蓋体ロック部材を方向(I)から見たときの概略側面図(b)であり、
図3は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様において、蓋体が開いた状態(a)及び閉じた状態(b)を示した外観図である。本発明の飲料容器の蓋体ロック構造(A)は、飲料容器本体(図示せず)の上部開口に取り付けられる口栓部材(1)、該口栓部材(1)の上部一端にヒンジ(3)により取り付けられ、該ヒンジ(3)を中心に、該口栓部材(1)を覆うように開閉される片開きの蓋体(2)、及び、該口栓部材(1)に取り付けられ、該蓋体(2)を閉状態に保持し得る蓋体ロック部材(4)を備える。飲料容器本体の上部開口は、好ましくは円形であり、飲料容器の底部に向かって円筒をなしている。該開口に取り付けられる口栓部材(1)は、該円筒に適合するものであればよく、好ましくは、その内面に雄ネジ(1−2)が形成されており、同様に雌ネジが形成された、飲料容器本体の上部開口を備える円筒部分と嵌合し得るように形成されている。また、口栓部材(1)には、その上部表面(天板)(1−3)に飲料容器内部の飲料を飲むための飲み口(1−1)が設けられている。片開きの蓋体(2)は、
図1に示すように、口栓部材(1)の上部一端にヒンジ(3)により取り付けられている。ヒンジ(3)は、例えば、略円柱状又は多角柱状のヒンジ軸部材(3−1)とねじりコイルばね(3−2)により、常法に従って構成されており、ねじりコイルばね(3−2)により、片開きの蓋体(2)は、常時、開方向(ロ)に付勢されている。もちろん、片開きの蓋体(2)は、人の力により容易に開閉され得るものである。片開きの蓋体(2)は、口栓部材(1)の上部表面(1−3)のほぼ全面を覆うことができるような形状であれば特に制限はない。例えば、飲み口(1−1)の位置や形状、下記において述べる蓋体ロック部材(4)との関係、作動阻止部材(5)及びその操作部(5−2)の位置や形状等との関係で適宜効果的な形状に定められる。片開きの蓋体(2)の形状としては、通常、
図1及び3に示したような、浅い逆椀状のものが用いられる。また、片開きの蓋体(2)には、その内部であって、口栓部材(1)の飲み口(1−1)に対応する箇所に飲み口シール材(2−1)が取り付けられており、片開きの蓋体(2)を閉状態にしたとき、それにより、飲み口(1−1)がシールされて飲料が容器外に流出することを防止している。飲み口シール材(2−1)は、例えば、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等の合成樹脂で形成されている。
【0012】
口栓部材(1)には、片開きの蓋体(2)を閉状態に保持し得る蓋体ロック部材(4)が備えられており、該蓋体ロック部材(4)には係止凸部(4−1)が備えられている。一方、片開きの蓋体(2)には、蓋体ロック部材(4)に備えられている係止凸部(4−1)と係合する係止凹部(2−2)が備えられ、係止凸部(4−1)と係止凹部(2−2)とが一体となって片開きの蓋体(2)を閉状態に保持することができる。蓋体ロック部材(4)に備えられた係止凸部(4−1)と、蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)とは、片開きの蓋体(2)に常時存在する開方向(ロ)に付勢された力に対抗して、両者がしっかりと噛み合って片開きの蓋体(2)を閉状態に維持し得るものであれば、その形状等に特に制限はない。通常、蓋体ロック部材(4)に備えられている係止凸部(4−1)及び片開きの蓋体(2)に備えられている係止凹部(2−2)は、
図1及び2に示すように、その長手方向に垂直な断面において、係止凸部(4−1)と係止凹部(2−2)との接触面は平面であればよく、かつ、係止凸部(4−1)の外側上部面(4−8)及び係止凹部(2−2)の外側下部面(2−3)は、片開きの蓋体(2)を開閉させる際、とりわけ、閉める際に両者がスムーズに係合し、かつ、係合をスムーズに解放し得るように、互いに反対方向の傾斜が設けられている。また、係止凸部(4−1)は、片開きの蓋体(2)の開閉を妨げない程度に、その凸部の先端が下方に向かって僅かに鉤状になっていてもよい。それにより、片開きの蓋体(2)の閉状態をより強固に保持することができる。
【0013】
蓋体ロック部材(4)に備えられている係止凸部(4−1)は、蓋体ロック部材(4)の支軸(4−3)を中心として、片開きの蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)、即ち、係止凸部(4−1)の背面方向に回転移動することができ、それにより、係止凸部(4−1)を係止凹部(2−2)から解放して片開きの蓋体(2)を開状態にすることができる。このように、係止凸部(4−1)を係止凹部(2−2)から解放すると、片開きの蓋体(2)は、上記のように、常時、開方向(ロ)に付勢されているので自動的に開状態にされる。片開きの蓋体(2)の係止凹部(2−2)から遠ざかる方向(イ)への回転移動は、支軸(4−3)より下側(飲料容器本体の底面側)の蓋体ロック部材(4)の面(下記の板状体(4−2)面)を、口栓部材(1)の中心方向(ハ)に押圧することにより容易に実施することができる。
【0014】
本発明の飲料容器の蓋体ロック構造において、蓋体ロック部材(4)に備えられている係止凸部(4−1)及び片開きの蓋体(2)に備えられている係止凹部(2−2)は、口栓部材(1)の上部一端に取り付けられたヒンジ(3)の反対側に備えられている。好ましくは、係止凸部(4−1)及び係止凹部(2−2)は、その長手方向がヒンジ(3)を構成するヒンジ軸部材(3−1)の長手方向に略平行であって、ヒンジ軸部材(3−1)の長手方向の略中心を通り、かつ、該長手方向に略垂直な平面が、係止凸部(4−1)及び係止凹部(2−2)の長手方向の略中心を通るように備えられている。
図1〜3に示すように、係止凸部(4−1)及び係止凹部(2−2)は、ヒンジ(3)を構成するヒンジ軸部材(3−1)及びねじりコイルばね(3−2)と略平行な方向に長手方向を有し、係止凸部(4−1)及び係止凹部(2−2)の長手方向に垂直な断面は、両者がしっかりと噛み合うように構成されている。
【0015】
蓋体ロック部材(4)は、少なくとも、係止凸部(4−1)を備えた板状体(4−2)、蓋体ロック部材(4−1)を回転移動せしめる支軸(4−3)、並びに、板状体(4−2)面(口栓部材(1)に近い面)、好ましくは、支軸(4−3)乃至それより係止凸部(4−1)に近い側の板状体(4−2)面(口栓部材(1)に近い面)から略垂直に伸びかつその先端において係止凸部(4−1)側に板状体(4−2)に対して略平行に屈曲した突出部(4−4)から構成されている。ここで、係止凸部(4−1)は板状体(4−2)の一の端部に備えられており、上記のように係止凸部(4−1)は、片開きの蓋体(2)に備えられている係止凹部(2−2)と係合し得るように配置されている。板状体(4−2)の他の端部は、下部方向、即ち、飲料容器本体の底面に対して略垂直下部方向に伸びている。支軸(4−3)は、その両端が口栓部材(1)に取り付けられており(
図3及び4参照)、かつ、蓋体ロック部材(4)の係止凸部(4−1)を上記のように回転移動することができる箇所であれば、蓋体ロック部材(4)のいずれの箇所、例えば、板状体(4−2)、突出部(4−4)の板状体に垂直な部分(4−7)等に設置されていてよい。好ましくは、板状体(4−2)、及び、突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びた部分(4−7)の両方に略垂直な板状部分(4−5)を設けて、該板状部分(4−5)に支軸(4−3)を挿通して設けることができる。該板状部分(4−5)は、少なくとも1個、好ましくは2個設けられる。これにより、支軸(4−3)の取付けが容易にできるばかりではなく、蓋体ロック部材(4)の回転移動を円滑かつ安定して行うことができるため有利である。
図3及び4に示されているように、該蓋体ロック部材(4)は支軸(4−3)の両端のみを口栓部材(1)に固定して取り付けることにより、該支軸(4−3)を中心に回転移動し得るようになっている。好ましくは、口栓部材(1)には蓋体ロック部材(4)の全体がピタリと収まるような部分(凹部)が設けられており、該部分に蓋体ロック部材(4)を収めることにより、操作のみならず外観上にも優れた構造となり得る。支軸(4−3)は、例えば、支軸(4−3)となる略円柱状又は多角柱の軸部材に加えて、ねじりコイルばねを設けて常法に従って構成することにより、ねじりコイルばねにより、蓋体ロック部材(4)に備えられた係止凸部(4−1)が、常時、片開きの蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)と係合し得る方向(イと反対方向)に付勢されている。それにより、片開きの蓋体(2)を開状態から閉状態にすると、蓋体ロック部材(4)に備えられた係止凸部(4−1)が、片開きの蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)としっかりと係合して片開きの蓋体(2)の閉状態を確保することができる。一方、片開きの蓋体(2)を閉状態から開状態にする際には、蓋体ロック部材(4)の支軸(4−3)より下側(飲料容器本体の底面側)の板状体(4−2)の部分を口栓部材(1)の中心方向(ハ)に押圧することにより、蓋体ロック部材(4)を係止凸部(4−1)の背面方向(イ)に回転移動して、係止凸部(4−1)と、片開きの蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)との係合状態を解除することができる。
【0016】
片開きの蓋体(2)には、板状体(4−2)に備えられた係止凸部(4−1)の回転移動を阻止する作動阻止部材(5)を備えている。作動阻止部材(5)は、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されることができる作動阻止片(5−1)を備えている。作動阻止片(5−1)は、片開きの蓋体(2)の前面であって蓋体(2)に備えられた係止凹部(2−2)の上方に設けられた、作動阻止部材(5)の操作部(5−2)により操作されることができる。そして、操作部(5−2)により、突出部(4−4)の、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる面(4−7)に沿って、板状体(4−2)に略平行に、作動阻止片(5−1)をスライドさせることができる。このようにして、作動阻止片(5−1)をスライドすることにより、板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間に挿入されて、蓋体ロック部材(4)、即ち、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)に備えられた係止凸部(4−1)の回転移動を阻止し、かつ、板状体(4−1)と、突出部(4−4)の、板状体(4−1)と略平行に屈曲した部分(4−6)との間から取り除かれて、蓋体ロック部材(4)、即ち、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)に備えられた係止凸部(4−1)の回転移動を可能にすることができる。好ましくは、突出部(4−4)は、板状体(4−2)の幅、即ち、係止凸部(4−1)の長手方向と同一方向における板状体(4−2)の寸法と同一の寸法で、板状体(4−2)面から略垂直に伸び、かつ、係止凸部(4−1)側に板状体(4−2)に対して略平行に屈曲した部分(4−6)の同方向の寸法が、板状体(4−2)面から略垂直に伸びる部分の寸法の好ましくは1/4〜3/4、より好ましくは1/3〜2/3、更に好ましくは1/3〜1/2である。これにより、作動阻止部材(5)の作動阻止片(5−1)のスライドにより、係止凸部(4−1)の回転移動の阻止を効率的に行うことができる。
【0017】
次いで、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様の操作方法を図面に基づいて説明する。
図3は、本発明の飲料容器の蓋体ロック構造の一実施態様において、片開きの蓋体(2)が開いた状態(a)及び閉じた状態(b)を示した外観図である。また、
図4は、蓋体ロック部材(4)の回転移動が阻止されていない状態(a)及び阻止されている状態(b)における作動阻止片(5−1)の位置を示した要部断面図であり、
図5は、蓋体ロック部材の回転移動が阻止されていない状態(a)及び阻止されている状態(b)における作動阻止部材の操作部の位置を示した外観図である。
図3(a)は、片開きの蓋体(2)が開状態になっており、かつ、作動阻止部材(5)の作動阻止片(5−1)が、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)に平行な部分(4−6)との間に存在しない位置にある状態である。該状態における作動阻止片(5−1)の位置は、
図4(a)に示されている。一方、
図3(b)は、片開きの蓋体(2)が閉状態になっており、かつ、作動阻止部材(5)の作動阻止片(5−1)が、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)に平行な部分(4−6)との間に存在している状態であり、それにより、蓋体ロック部材(4)が、係止凸部(4−1)の背面方向へ回転移動することが阻止されている。該状態における作動阻止片(5−1)の位置は、
図4(b)に示されている。片開きの蓋体(2)を閉状態(
図3(b))から開状態(
図3(a))にするに際しては、まず、作動阻止部材(5)の操作部(5−2)に備えられた操作つまみ(5−3)を
図3(b)の左方向に移動して、作動阻止片(5−1)を、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)に平行な部分(4−6)との間から、その外側にスライドさせる。該操作により、作動阻止片(5−1)は、
図4(b)の状態から
図4(a)の状態へと移行する。このようにして、蓋体ロック部材(4)の回転移動が阻止されていない状態とした後、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)の下部を、口栓部材(1)の中心方向(ハ)に押圧する。これにより、蓋体ロック部材(4)の係止凸部(4−1)がその背面方向(イ)に回転移動して、蓋体ロック部材(4)の係止凸部(4−1)と片開きの蓋体(2)の係止凹部(2−2)の係合が解放される。片開きの蓋体(2)は、ヒンジ(3)のねじりコイルばね(3−2)により常時開方向(ロ)に付勢されていることから、上記のように係合が解除されると自動的に片開きの蓋体(2)は開状態へと移行する。また、作動阻止部材(5)は、蓋体ロック部材(4)の上方直近に存在することから、操作者が片手で作動阻止部材(5)及び蓋体ロック部材(4)の両者を容易に操作することができるばかりではなく、何よりも、片開きの蓋体(2)の開閉時、とりわけ、閉める際に、操作部(5−2)に備えられた操作つまみ(5−3)の位置、及び、作動阻止片(5−1)の位置を明確に認識し得る。好ましくは、操作部(5−2)、好ましくは、操作つまみ(5−3)、及び作動阻止片(5−1)を、片開きの蓋体(2)とは異なる色彩、例えば、補色の関係にすればより明確に認識し得る。これにより、作動阻止片(5−1)が、
図4(b)の位置、即ち、蓋体ロック部材(4)の板状体(4−2)と、突出部(4−4)の、板状体(4−2)に平行な部分(4−6)との間に存在し得る位置にあるときに、誤って、片開きの蓋体(2)を閉めてしまい、蓋体ロック部材(4)を破損してしまうという誤操作を確実に回避し得る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の飲料容器の蓋体ロック構造は、蓋体の開閉を容易に行うことができ、かつ、蓋体が意図せず開いてしまうことを防止し得るばかりではなく、蓋体ロック部材の作動阻止を確実に実施することができ、かつ、蓋体ロック部材を損傷することが殆どない構造を有することに加えて、著しく安価に製造可能である。従って、飲料容器、例えば、水筒、携帯用魔法瓶等の蓋体ロック構造として、今後、大いに利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0019】
A 蓋体ロック構造
1 口栓部材
1−1 飲み口
1−2 雄ネジ
1−3 上部表面(天板)
2 片開きの蓋体
2−1 飲み口シール材
2−2 係止凹部
2−3 係止凹部の外側下部面
3 ヒンジ
3−1 ヒンジ軸部材
3−2 ねじりコイルばね
4 蓋体ロック部材
4−1 係止凸部
4−2 板状体
4−3 支軸
4−4 突出部
4−5 板状部分
4−6 突出部の、板状体と略平行に屈曲した部分
4−7 突出部の、板状体面から略垂直に伸びる面
4−8 係止凸部の外側上部面
5 作動阻止部材
5−1 作動阻止片
5−2 操作部
5−3 操作つまみ
イ 蓋体ロック部材の回転移動方向
ロ 片開きの蓋体に付勢された力の方向(開方向)
ハ 蓋体ロック部材押圧方向