特許第6754204号(P6754204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754204
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】溶接トーチの芯ずれ検出装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/127 20060101AFI20200831BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20200831BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B23K9/127 501D
   B23K9/12 310D
   B23K9/12 331J
   B23K9/173
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-56961(P2016-56961)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-170460(P2017-170460A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 登
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1487164(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0144835(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1496637(KR,B1)
【文献】 米国特許第05013887(US,A)
【文献】 特開昭59−113982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
B23K 9/12
B23K 9/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めティーチングされた自動溶接設備のロボットに取り付けられ、先端部から溶接ワイヤを供給するように構成された溶接トーチの芯ずれ検出装置において、
上記溶接トーチの先端部から突出する溶接ワイヤの先端部が押し当てられる溶接ワイヤ押し当て部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材を、上記溶接ワイヤの押し当て方向に変位可能に支持する支持部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材を、上記溶接ワイヤの押し当て方向とは反対方向へ付勢する付勢部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位したか否かを検出する検出部と、
上記検出部により、上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位したことが検出された場合には上記溶接トーチの芯ずれが起こっていないと判定する一方、上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位していない場合には上記溶接トーチの芯ずれが起こっていると判定する判定部とを備え
上記溶接ワイヤ押し当て部材の側面には、側方へ突出する突出部が形成され、
上記検出部は、上記押し当て方向に所定量した上記突出部に接触することで上記溶接ワイヤ押し当て部材が押し当て方向に所定量変位したことを検出するように構成され、
上記突出部は、上記押し当て方向への変位量が所定量よりも少ない場合と多い場合の両方で上記検出部から外れるように配置されることを特徴とする溶接トーチの芯ずれ検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接トーチの芯ずれ検出装置において、
上記溶接ワイヤ押し当て部材は、上記支持部材から突出する棒状部材で構成され、該棒状部材の先端面に上記溶接ワイヤの先端部が押し当てられることを特徴とする溶接トーチの芯ずれ検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の溶接トーチの芯ずれ検出装置において、
上記溶接ワイヤ押し当て部材には、上記溶接ワイヤの先端部が挿入される溶接ワイヤ挿入孔が形成され、
上記溶接ワイヤの先端部は、上記溶接ワイヤ挿入孔に挿入された状態で上記溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てられることを特徴とする溶接トーチの芯ずれ検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の溶接トーチの芯ずれ検出装置において、
上記溶接トーチから突出する上記溶接ワイヤを所定長さ残した状態で切除する切除刃と、該切除刃を駆動する駆動部とを有する溶接ワイヤ切除装置を備えていることを特徴とする溶接トーチの芯ずれ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを使用した自動溶接設備に設置する溶接トーチの芯ずれ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動溶接設備ではロボットのアームに溶接トーチを取り付けておき、このロボットの動作手順をティーチングによってプログラムし、プログラム通りにロボットが動作することで複雑な溶接経路であっても人手を介すことなく、自動で溶接することができるようになっている。
【0003】
この種の自動溶接設備では、省力化のため、原則として作業者は点検や異常時の対応のみ行っている。異常時として想定されるケースとしては、例えば、溶接トーチのノズル端部から突出する溶接ワイヤが納品状態で付いた巻きグセにより曲がっていたり他の何らかの原因で曲がったり、あるいは溶接トーチが他の部材に接触して取付位置にずれが発生することや溶接トーチ自体が変形すること等が考えられる。これらの場合、溶接ワイヤの中心線が正規の位置からずれてしまう、いわゆる芯ずれが起こる。この状態でロボットが溶接を行おうとすると、ロボットのティーチングは溶接ワイヤが正規の位置にあると仮定してなされているので、溶接ワイヤが所定の溶接位置から外れてしまい、溶接不良を招く結果となる。
【0004】
特許文献1には、上述した溶接トーチの芯ずれを検出する検出方法が開示されている。特許文献1に開示されている検出方法では、ロボットの溶接トーチに接触子を取り付けておき、溶接作業前と溶接作業後とで接触子を基準ブロックに接触させ、この接触動作によって得られる電気的短絡信号を検出し、この短絡信号に基づいて溶接作業の前後における接触子の位置情報の差を検出してずれ量を算出し、算出されたずれ量と予め設定されたずれ量とを比較して溶接作業の継続可否を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の検出方法では、接触子の位置を、芯ずれ検出位置と、通常の溶接作業時に邪魔にならない位置とに切り替えなければならず、接触子の駆動機構が必要になる。また、電気的短絡信号を得るためには、接触子と基準ブロックとの間に電圧を印加するための電源装置も必要になる。さらに、接触子のずれ量を算出するとともに、算出されたずれ量と予め設定されたずれ量とを比較する手段もコンピュータで構成しなければならない。つまり、特許文献1の検出方法の場合、検出装置が大がかりになるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1では、溶接トーチ及び溶接ワイヤとは別に取り付けられている接触子だけが基準ブロックに接触していて、溶接トーチ及び溶接ワイヤは基準ブロックに接触する位置関係にない。したがって、溶接トーチ及び溶接ワイヤの位置や状態を直接的に得ることができないので、例えば、接触子は正規の位置にあるが、溶接トーチの先端だけが変形していたり、溶接ワイヤだけが曲がっていることによって芯ずれが起こっている場合には、そのことを検出することができないことも考えられる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大がかりな装置を不要にしながら溶接トーチの芯ずれを確実に検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
予めティーチングされた自動溶接設備のロボットに取り付けられ、先端部から溶接ワイヤを供給するように構成された溶接トーチの芯ずれ検出装置において、
上記溶接トーチの先端部から突出する溶接ワイヤの先端部が押し当てられる溶接ワイヤ押し当て部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材を、上記溶接ワイヤの押し当て方向に変位可能に支持する支持部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材を、上記溶接ワイヤの押し当て方向とは反対方向へ付勢する付勢部材と、
上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位したか否かを検出する検出部と、
上記検出部により、上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位したことが検出された場合には上記溶接トーチの芯ずれが起こっていないと判定する一方、上記溶接ワイヤ押し当て部材が上記溶接ワイヤの押し当て方向に所定量変位していない場合には上記溶接トーチの芯ずれが起こっていると判定する判定部とを備え
上記溶接ワイヤ押し当て部材の側面には、側方へ突出する突出部が形成され、
上記検出部は、上記押し当て方向に所定量した上記突出部に接触することで上記溶接ワイヤ押し当て部材が押し当て方向に所定量変位したことを検出するように構成され、
上記突出部は、上記押し当て方向への変位量が所定量よりも少ない場合と多い場合の両方で上記検出部から外れるように配置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、自動溶接設備のロボットによって溶接トーチを移動させる際、溶接ワイヤの先端部が溶接ワイヤ押し当て部材に対して該溶接トーチの中心線方向から当たるように移動させる。この溶接トーチの移動経路は予めティーチングされているものなので、溶接トーチの芯ずれが起こっていない場合には、溶接ワイヤの先端部が溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てられて溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位する。一方、溶接トーチの取付位置がずれていたり、溶接ワイヤが曲がっていると、溶接ワイヤ押し当て部材の変位量が所定量とはならないので、判定部は芯ずれが起こっていると判定する。また、仮に、溶接トーチの取付位置がずれていたり、溶接ワイヤが曲がっていると、上記した経路で溶接トーチを移動させた場合に、溶接ワイヤの先端部が溶接ワイヤ押し当て部材に当たらず、溶接ワイヤ押し当て部材が溶接ワイヤの押し当て方向に変位しない。この場合も、溶接ワイヤ押し当て部材の変位量が所定量とはならないので、判定部は芯ずれが起こっていると判定する。
【0011】
つまり、溶接ワイヤ押し当て部材の変位量を検出することによって溶接ワイヤの状態が直接得られるので、大がかりな装置が不要になるとともに、溶接トーチの芯ずれが確実に検出される。
【0012】
尚、本発明において、溶接トーチの芯ずれとは、溶接トーチのロボットへの取付位置がずれることで溶接トーチの中心線が所定位置からずれていること、及び、溶接ワイヤが曲がっていることによって溶接ワイヤの中心線が所定位置からずれていることの両方を含んでいる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
上記溶接ワイヤ押し当て部材は、上記支持部材から突出する棒状部材で構成され、該棒状部材の先端面に上記溶接ワイヤの先端部が押し当てられることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、溶接ワイヤ押し当て部材の構造がシンプルになる。また、棒状部材の先端面に溶接ワイヤの先端部を押し当てるようにしたので、例えば、溶接ワイヤが曲がっていて先端部が所定位置から外れたところにある場合には、溶接ワイヤの先端部が棒状部材の先端面から外れることになり、棒状部材を溶接ワイヤによって押すことができなくなる。これにより、溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位しなくなるので、溶接トーチの芯ずれが起こっていることが確実に検出される。溶接トーチの取付位置がずれている場合も同様である。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、
上記溶接ワイヤ押し当て部材には、上記溶接ワイヤの先端部が挿入される溶接ワイヤ挿入孔が形成され、
上記溶接ワイヤの先端部は、上記溶接ワイヤ挿入孔に挿入された状態で上記溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てられることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、溶接ワイヤ押し当て部材に形成した溶接ワイヤ挿入孔に溶接ワイヤの先端部を挿入して該溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てるようにしたので、例えば、溶接ワイヤが曲がっていて先端部が所定位置から外れたところにある場合には、溶接ワイヤの先端部が溶接ワイヤ挿入孔の開口から外れることになり、溶接ワイヤ押し当て部材を溶接ワイヤによって所定量変位させることができなくなる。これにより、溶接トーチの芯ずれが起こっていることが確実に検出される。溶接トーチの取付位置がずれている場合も同様である。
【0017】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記溶接トーチから突出する上記溶接ワイヤを所定長さ残した状態で切除する切除刃と、該切除刃を駆動する駆動部とを有する溶接ワイヤ切除装置を備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、溶接トーチから突出する溶接ワイヤの長さを所定長さに揃えることが可能になる。これにより、溶接ワイヤの先端部を溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てて溶接ワイヤ押し当て部材を変位させる際に、溶接ワイヤの長さが異なることによる誤判定が無くなり、溶接トーチの芯ずれの検出精度が向上する。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、自動溶接設備のロボットによって溶接ワイヤの先端部が押し当てられる溶接ワイヤ押し当て部材を、溶接ワイヤの押し当て方向に変位可能に支持し、溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位した場合には溶接トーチの芯ずれが起こっていないと判定する一方、溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位していない場合には溶接トーチの芯ずれが起こっていると判定することができる。これにより、溶接ワイヤの状態を直接得ることができるので、従来例のような大がかりな装置を不要としながら、溶接トーチの芯ずれを確実に検出できる。
【0020】
第2の発明によれば、溶接ワイヤ押し当て部材を棒状部材で構成し、該棒状部材の先端面に溶接ワイヤの先端部を押し当てるようにしたので、溶接ワイヤ押し当て部材の構造をシンプルにしながら、溶接トーチの芯ずれが起こっていることを確実に検出できる。
【0021】
第3の発明によれば、溶接ワイヤ押し当て部材に、溶接ワイヤの先端部が挿入される溶接ワイヤ挿入孔を形成し、溶接ワイヤの先端部を溶接ワイヤ挿入孔に挿入した状態で溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てるようにしたので、溶接ワイヤ押し当て部材の構造をシンプルにしながら、溶接トーチの芯ずれが起こっていることを確実に検出できる。
【0022】
第4の発明によれば、溶接ワイヤ切除装置により、溶接ワイヤを所定長さ残した状態で切除することができる。これにより、溶接ワイヤの先端部を溶接ワイヤ押し当て部材に押し当てて溶接ワイヤ押し当て部材を変位させる際に、溶接ワイヤの長さが異なることによる誤判定が無くなり、溶接トーチの芯ずれの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1に係る溶接トーチの芯ずれ検出装置の側面図である。
図2】溶接トーチの芯ずれ検出装置の平面図である。
図3】溶接トーチの芯ずれ検出装置のブロック図である。
図4】溶接ワイヤの先端部を溶接ワイヤ押し当て部材に接触させた状態を示す芯ずれ検出装置の部分断面図である。
図5】溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位した状態を示す図4相当図である。
図6】溶接トーチの芯ずれが起こっていない状態を説明する図である。
図7】溶接ワイヤが曲がっていることにより溶接トーチの芯ずれが起こっている状態を説明する図である。
図8】実施形態2に係る溶接トーチの芯ずれ検出装置の部分断面図であり、溶接ワイヤの先端部を溶接ワイヤ押し当て部材に接触させた状態を示す。
図9】溶接ワイヤ押し当て部材が所定量変位した状態を示す図8相当図である。
図10】溶接トーチの芯ずれが起こっていない状態を説明する図である。
図11】溶接ワイヤが曲がっていることにより溶接トーチの芯ずれが起こっている状態を説明する図である。
図12】溶接トーチの芯ずれが起こっている場合に溶接ワイヤ押し当て部材が変位した状態を示す芯ずれ検出装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る溶接トーチの芯ずれ検出装置1の側面図であり、図2は、溶接トーチの芯ずれ検出装置1の平面図である。この溶接トーチの芯ずれ検出装置1は、例えば自動溶接設備が導入された工場等に設置されて使用される。そして、予めティーチングされた自動溶接設備のロボット100(図3に示す)に取り付けられた溶接トーチTの先端部から溶接ワイヤWを供給する場合に、当該溶接トーチTに芯ずれが起こっているか否かを検出するための装置である。自動溶接設備で溶接する部材としては、例えば自動車用部品等を挙げることができるが、これに限られるものではなく、各種部材を挙げることができる。また、溶接トーチTは、MIG溶接等を行う場合に用いられるものであり、溶接トーチTのノズル端部から溶接ワイヤWを送り出し、この溶接ワイヤWの先端部と母材との間でアークを発生させることにより、溶接ワイヤWを先端部から順に溶融させて母材の溶接を行う。
【0026】
図3に示すロボット100は、いわゆる汎用の産業用ロボットであり、多関節アーム(図示せず)を備えている。ロボット100は、従来から周知のロボット制御装置101によって制御される。ロボット制御装置101には、ロボット100の動作手順を記憶させる記憶装置(図示せず)が設けられている。記憶装置には、ティーチングによってロボット100の動作手順を記憶させることができるようになっている。ティーチングについては従来から知られた手法であることから詳細な説明は省略する。ティーチングによって溶接ワイヤWの先端部を溶接箇所に沿って移動させるとともに、後述するように、溶接トーチTの芯ずれ検出装置1による芯ずれの検出工程、及び、溶接ワイヤ切除装置30による切除工程も行わせることが可能になっている。
【0027】
尚、溶接トーチTの芯ずれとは、溶接トーチTのロボット100のアームへの取付位置がずれることで溶接トーチTの中心線T1(図6及び図7に示す)が所定位置からずれていること、及び、図7に示すように溶接ワイヤWが曲がっていることによって溶接ワイヤWの中心線が所定位置からずれていることの両方を含んでいる。尚、溶接ワイヤWの径Bは例えば1.2mm程度であるが、溶接ワイヤWの種類はこれに限られるものではなく、一般に使用されている溶接ワイヤWであればよい。
【0028】
図1及び図2に示すように、溶接トーチの芯ずれ検出装置1は、箱状の装置本体10と、装置本体10の左側に設けられる溶接チップ交換装置20と、装置本体10の右側に設けられる溶接ワイヤ切除装置30と、装置本体10の右側に設けられる芯ずれ検出器40と、制御部50(図3に示す)とを備えている。この実施形態では、溶接チップ交換装置20と、溶接ワイヤ切除装置30とを備えている場合について説明するが、溶接チップ交換装置20と溶接ワイヤ切除装置30のいずれか一方または両方を省略してもよい。
【0029】
尚、装置本体10の左側及び右側は、図1及び図2に示すように定義し、また、装置本体10の手前側及び奥側は、図2に示すように定義するが、これは芯ずれ検出装置1の設置方向等によって変わることがある。
【0030】
(溶接チップ交換装置の構成)
溶接チップ交換装置20は、上記溶接トーチTや、または別のアーク溶接に用いられる溶接チップ付きの溶接トーチ(図示せず)の該溶接チップを交換するためのものであり、図2に示す複数のチップ脱ソケット21、21、…及びチップ着ソケット22、22、…と、これらソケット21、22を回転駆動するための溶接チップ交換用モータ23(図3に示す)とを備えている。チップ脱ソケット21及びチップ着ソケット22は、装置本体10の上下方向に延びる軸周りに回転可能に該装置本体10に支持されている。チップ脱ソケット21及びチップ着ソケット22の上部は装置本体10の上面から突出しており、この装置本体10の上面から突出した部分には、溶接チップが係合状態で嵌まるようになっている。
【0031】
装置本体10の内部には、上記溶接チップ交換用モータ23が収容されており、溶接チップ交換用モータ23は図3に示すように制御部50によって制御される。溶接チップ交換用モータ23の出力軸には歯車(共に図示せず)が固定されており、この出力軸の回転力は、他の歯車を介してチップ脱ソケット21及びチップ着ソケット22に伝達される。このときのチップ脱ソケット21の回転方向とチップ着ソケット22の回転方向とは、歯車の組み合わせによって別々に設定することができ、この実施形態では、溶接トーチに螺合されている溶接チップを取り外す方向にチップ脱ソケット21を回転させる一方、溶接チップを溶接トーチに螺合させる方向にチップ着ソケット22を回転させる。図示しないが、チップ着ソケット22には、新品の溶接チップが予め嵌まっている。そして、例えば、図示しないロボットによって溶接トーチを移動させて溶接チップをチップ脱ソケット21に嵌めた状態で溶接チップ交換用モータ23を作動させると、溶接チップが緩み方向に回転して溶接トーチから外れる。その後、ロボットによって溶接トーチを移動させてチップ着ソケット22に嵌まっている新品の溶接チップに押し当てた状態で溶接チップ交換用モータ23を作動させると、新品の溶接チップが螺合方向に回転して溶接トーチに装着される。
【0032】
(溶接ワイヤ切除装置の構成)
溶接ワイヤ切除装置30は、溶接トーチTから突出する溶接ワイヤWの先端部を所定長さ残した状態で切除するための装置である。すなわち、MIG溶接等では、溶接トーチTの先端部から送り出される溶接ワイヤWを溶融させて母材の溶接を行うのであるが、このようにして行われる溶接作業を一旦終えると、溶接ワイヤWの先端部の形状は、該溶接ワイヤWの溶融した部分が凝固する過程で球状に変化する。この溶接ワイヤWの球状部分の大きさは一定ではないため、溶接ワイヤWのノズル端部からの突出寸法が所期の寸法と異なることになる。こうなると、溶接現場においては、次の溶接を開始する位置が狙いの位置とずれて溶接不良を招くことになる。また、溶接ワイヤWの球状部分の表面は不純物で覆われているので、次の溶接を開始するときに母材との間にアークが発生しない場合が多い。このことを防止するために、溶接ワイヤWの主に球状部分を溶接ワイヤ切除装置30によって切除する。
【0033】
図2に示すように、溶接ワイヤ切除装置30は、固定側切除刃31と、可動側切除刃32と、可動側切除刃32を駆動する切除刃駆動シリンダ(駆動部)33とを有しており、固定側切除刃31、可動側切除刃32及び切除刃駆動シリンダ33は、装置本体10の上面に設けられている。
【0034】
固定側切除刃31は、装置本体10の上面に固定されており、V字状に切り欠かれた切欠部31aを有している。また、可動側切除刃32は、装置本体10の上面に対して手前側から奥側及びその反対側に向けてスライド可能に支持されており、固定側切除刃31の上面に重なっている。可動側切除刃32には、固定側切除刃31の切欠部31aと対向するように、V字状に切り欠かれた切欠部32aが設けられている。切除刃駆動シリンダ33は、例えば流体圧シリンダで構成することができ、図3に示すように制御部50によって制御される。切除刃駆動シリンダ33のロッド(図示せず)には、可動側切除刃32における切欠部32aとは反対側が連結されている。
【0035】
切除刃駆動シリンダ33のロッドが伸縮動作することにより、可動側切除刃32がスライドし、図2に示すように手前側に移動した状態では、固定側切除刃31の切欠部31aと、可動側切除刃32の切欠部32aとによって溶接ワイヤWの球状部分を上方から挿入することが可能な隙間が形成される。一方、図示しないが、可動側切除刃32が切除刃駆動シリンダ33のロッドによって奥側へ向けて駆動されると、固定側切除刃31の切欠部31aと、可動側切除刃32の切欠部32aとが接近していき、これにより、溶接ワイヤWの球状部分が切除される。
【0036】
(芯ずれ検出器の構成)
図4等に示すように、芯ずれ検出器40は、溶接ワイヤ押し当て部材41と、溶接ワイヤ押し当て部材41を支持する支持部材42と、溶接ワイヤ押し当て部材41の変位を検出する検出部としてのリミットスイッチ43と、溶接トーチTの芯ずれが起こっているか否かを判定する判定部44(図3に示す)とを備えている。溶接ワイヤ押し当て部材41は、溶接トーチTの先端部から突出する溶接ワイヤWの先端部が押し当てられる部材である。
【0037】
溶接ワイヤ押し当て部材41は、上下方向に延びる棒状部材で構成されている。溶接ワイヤ押し当て部材41の上下方向中間部よりも下側部分は円形断面を有する大径部41aで構成され、溶接ワイヤ押し当て部材41の上下方向中間部よりも上側部分は大径部41aよりも小さな円形断面を有するピン部41bで構成されている。ピン部41bは、支持部材42から上方へ突出しており、該ピン部41bの中心線A(図6に示す)は上下方向に延びている。ピン部41bの上端面(先端面)41cは、中心線Aと略直交する方向に延びる円形の平坦面で構成されている。ピン部41bの上端面41cの径Cは、溶接ワイヤWの径Bよりも大きく設定されており、例えば、溶接ワイヤWの径Bが1.2mmである場合には、上端面41cの径Cは2.0mmに設定することができる。
【0038】
詳細は後述するが、芯ずれの検出工程では、溶接ワイヤWの先端部が上方から下方に移動するように、ロボット100が溶接トーチTを移動させて溶接ワイヤWの先端部をピン部41bの上端面41cに押し付けるようにする。
【0039】
図4に示すように、装置本体10の上板部11には、溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aが挿通する挿通孔11aが該上板部11を上下方向に貫通するように形成されている。
【0040】
支持部材42は、上下方向に延びる円筒状に形成され、上下両端面が開放されている。支持部材42の下部は装置本体10の上板部11に固定されており、固定状態で支持部材42の下端開放部分と、上板部11の挿通孔11aとが一致している、支持部材42の内径は、溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aの外径よりも若干大きめに設定され、支持部材42の内周面を溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aの外周面が摺動するようになっている。溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aの長さは、支持部材42の長さよりも十分に長く設定されており、大径部41aが支持部材42の上下両側からそれぞれ突出可能とされている。溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aが支持部材42によって上下方向に案内される。
【0041】
リミットスイッチ43は、装置本体10の内部に収容されて上板部11等に固定されており、本体部43aと、本体部43aから突出する揺動レバー43bと、揺動レバー43bの先端部に設けられたローラー43cとを備えている。揺動レバー43bは、水平方向に延びる軸周りに揺動可能に本体部43aに支持されている。
【0042】
リミットスイッチ43は、揺動レバー43bの突出方向が略水平方向となる姿勢で固定され、この揺動レバー43bは本体部43aに内蔵された付勢部材(図示せず)によって上方へ付勢されていてOFF状態となっている。上方から所定以上の力が作用することによって揺動レバー43bが押されると下方へ揺動してスイッチがONになる。リミットスイッチ43は、制御部50に接続されており、スイッチがOFFであるかONであるかは制御部50で検出される。尚、リミットスイッチ43の取付状態における姿勢は上記した姿勢に限られるものではない。
【0043】
ローラー43cは略水平方向に延びる軸周りに回動可能に揺動レバー43bに支持されている。溶接ワイヤ押し当て部材41の大径部41aの下端面にローラー43cが接触するように、リミットスイッチ43が配置されている。溶接ワイヤ押し当て部材41の重量によって揺動レバー43bがONとならないように、揺動レバー43bの付勢力が設定されている。また、揺動レバー43bがOFF状態にあるときには、溶接ワイヤ押し当て部材41のピン部41bが支持部材42の上端から突出するようになっている。
【0044】
芯ずれ検出工程で、ロボット100が溶接ワイヤWの先端部をピン部41bの上端面41cに押し付けると、リミットスイッチ43の揺動レバー43bが溶接ワイヤ押し当て部材41の下端面によって下方へ押されて揺動し、OFFからONに切り替わる。つまり、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向(下方)に所定量変位すると、リミットスイッチ43がONになるので、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位したか否かをリミットスイッチ43により検出することができる。尚、リミットスイッチ43以外にも、溶接ワイヤ押し当て部材41の変位量を検出することが可能な各種センサ等を使用することもできる。
【0045】
図3に示す制御部50は、従来から周知のマイクロコンピュータ等で構成することができ、中央演算処理装置や記憶装置等を備えている。制御部50は、溶接チップ交換用モータ23及び切除刃駆動シリンダ33を制御するように構成されるとともに、リミットスイッチ43のON及びOFF信号が入力されるようになっている。また、制御部50には、ロボット制御装置101が接続されており、ロボット100がどのような状態にあるかを得ることができるようになっている。例えば、ロボット100が溶接トーチTの芯ずれの検出工程を行っている場合には、芯ずれの検出工程を行っていることが制御部50に入力される。
【0046】
制御部50には判定部44が設けられている。判定部44は、リミットスイッチ43により、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位したことが検出された場合(リミットスイッチ43がONである場合)には溶接トーチTの芯ずれが起こっていないと判定する一方、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位していない場合(リミットスイッチ43がOFFである場合)には溶接トーチTの芯ずれが起こっていると判定する。
【0047】
(芯ずれ検出方法)
次に、上記のように構成された溶接トーチの芯ずれ検出装置1によって溶接トーチTの芯ずれを検出する方法について説明する。ロボット制御装置101は、ロボット100によって溶接作業が終わった後と、溶接作業を開始する前との少なくとも一方で、溶接ワイヤWの球状部分を切除する切除工程と、芯ずれの検出工程とを行う。切除工程の後に芯ずれの検出工程を行うのが好ましい。
【0048】
すなわち、切除工程では、制御部50が切除刃駆動シリンダ33を制御して可動側切除刃32を手前側に移動させておき、固定側切除刃31の切欠部31aと、可動側切除刃32の切欠部32aとの間に、溶接ワイヤWの球状部分を上方から挿入することが可能な隙間を形成しておく。そして、溶接ワイヤWの球状部分を上記隙間に挿入するように、ロボット100が溶接トーチTを移動させる。移動が完了したことを、ロボット制御装置101からの出力によって制御部50が検出すると、制御部50が切除刃駆動シリンダ33を制御して可動側切除刃32を奥側に移動させていき、固定側切除刃31の切欠部31aと、可動側切除刃32の切欠部32aとにより、溶接ワイヤWの球状部分を切除する。これにより、溶接トーチTの先端から突出する溶接ワイヤWの突出長さが所定長さとなる。つまり、溶接トーチTから突出する溶接ワイヤWを所定長さ残した状態で切除することができる。
【0049】
その後、芯ずれの検出工程に移り、溶接ワイヤWの先端部が溶接ワイヤ押し当て部材41のピン部41bの上端面41cに上方から当たるように、ロボット100が溶接トーチTを下方へ移動させる。移動が完了したことを、ロボット制御装置101からの出力によって制御部50が検出する。このとき、図6に示すように、溶接ワイヤWの先端部が、溶接トーチTの中心線T1の延長線上に位置している場合には、溶接ワイヤWの先端部がピン部41bの上端面41cに当たるので、溶接トーチTの下方への移動によって溶接ワイヤ押し当て部材41が下方へ変位していく。このときの溶接ワイヤ押し当て部材41の変位力は、リミットスイッチ43の揺動レバー43bの付勢力に抗するのに十分な力であることから、揺動レバー43bが下方へ揺動していき、リミットスイッチ43がOFFからONに切り替わる。このことを制御部50が検出するので、判定部44は、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位したとして溶接トーチTの芯ずれが起こっていないと判定する。このとき、ピン部41bの上端面41cの径Cは、溶接ワイヤWの径Bよりも大きく設定されているので、溶接ワイヤWの多少のずれやロボット100による位置制御の多少のずれが許容される。
【0050】
一方、図7に示すように、溶接ワイヤWが例えば曲がっているために溶接ワイヤWの先端部が、溶接トーチTの中心線T1の延長線上から外れていている場合には、溶接ワイヤWの先端部がピン部41bの上端面41cから外れてしまう。この場合も、ロボット100が上記した場合と同じ軌跡となるように溶接トーチTを下方へ移動させるが、溶接ワイヤWの先端部は溶接ワイヤ押し当て部材41を押さないので、溶接ワイヤ押し当て部材41が下方に変位しない。よって、リミットスイッチ43がOFFのままであることから、判定部44は、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位しないとして溶接トーチTの芯ずれが起こっていると判定する。
【0051】
尚、例えば溶接トーチTのロボット100に対する取付位置が何らかの原因によってずれた場合も、溶接ワイヤWの先端部がピン部41bの上端面41cから外れてしまうので、リミットスイッチ43がOFFのままになり、判定部44は溶接トーチTの芯ずれが起こっていると判定する。
【0052】
判定部44による判定結果は、ロボット制御装置101に出力される。ロボット制御装置101は、溶接トーチTの芯ずれが起こっていない場合には、次の溶接作業に移る一方、溶接トーチTの芯ずれが起こっている場合には、次の溶接作業に移ることなく、周囲の作業者に報知する。
【0053】
以上説明したように、この実施形態1によれば、自動溶接設備のロボット100によって溶接ワイヤWの先端部が押し当てられる溶接ワイヤ押し当て部材41を、溶接ワイヤWの押し当て方向に変位可能に装置本体10に支持し、溶接ワイヤ押し当て部材41が所定量変位した場合には溶接トーチTの芯ずれが起こっていないと判定する一方、溶接ワイヤ押し当て部材41が所定量変位していない場合には溶接トーチTの芯ずれが起こっていると判定することができる。これにより、溶接ワイヤWの状態を直接得ることができるので、従来例のような大がかりな装置を不要としながら、溶接トーチTの芯ずれを確実に検出できる。
【0054】
また、溶接ワイヤ押し当て部材41を棒状部材で構成し、その上端面41cに溶接ワイヤWの先端部を押し当てるようにしたので、溶接ワイヤ押し当て部材41の構造をシンプルにしながら、溶接トーチTの芯ずれが起こっていることを確実に検出できる。
【0055】
(実施形態2)
図8図12は、本発明の実施形態2に係る溶接トーチの芯ずれ検出装置1を示すものである。この実施形態2は、実施形態1に対して溶接ワイヤ押し当て部材の構造が異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0056】
実施形態2の溶接ワイヤ押し当て部材46は、上下方向に延びる棒状に形成されている。図10に示すように、溶接ワイヤ押し当て部材46の上側には、溶接ワイヤWの先端部が挿入される溶接ワイヤ挿入孔46bが形成されている。溶接ワイヤ挿入孔46bは、溶接ワイヤ押し当て部材46の上端面46aに開口して下方へ延びている。また、溶接ワイヤ押し当て部材46の上側には、横穴46cが形成されている。横穴46cは、溶接ワイヤ押し当て部材46の外周面に開口し、溶接ワイヤ挿入孔46bの下部に連通している。溶接ワイヤ挿入孔46bの内径Dは、実施形態1におけるピン部41bの上端面41cの径Cと同様に設定されている。
【0057】
溶接ワイヤ押し当て部材46の下部には、側方へ突出する突出部46d、46dが形成されている。また、装置本体10の内部には、溶接ワイヤ押し当て部材46を下方から付勢するための付勢部材47と、付勢部材47を下方から支持する支持台48とが設けられている。付勢部材47は例えば上下方向に伸縮するコイルスプリング等で構成することができる。
【0058】
そして、溶接ワイヤ押し当て部材46に溶接ワイヤWが押し当てられていない場合には、図8に示すように、溶接ワイヤ押し当て部材46が上昇端位置に配置される。溶接ワイヤ押し当て部材46が上昇端位置に配置された状態では、突出部46dがリミットスイッチ43のローラー43cの上方に位置している。
【0059】
芯ずれ検出工程で、図10に示すように、溶接ワイヤWの先端部が、溶接トーチTの中心線T1の延長線上に位置している場合には、溶接ワイヤWの先端部が溶接ワイヤ押し当て部材46の溶接ワイヤ挿入孔46bに挿入されて溶接ワイヤ挿入孔46bの底面に当たるので、溶接トーチTの下方への移動によって溶接ワイヤ押し当て部材41が下方へ変位していく。このときの溶接ワイヤ押し当て部材41の変位力は、リミットスイッチ43の揺動レバー43bの付勢力及び付勢部材47の付勢力に抗するのに十分な力であることから、揺動レバー43bが下方へ揺動していき、リミットスイッチ43がOFFからONに切り替わる。このことを制御部50が検出するので、判定部44は、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位したとして溶接トーチTの芯ずれが起こっていないと判定する。このとき、溶接ワイヤ挿入孔46bの内径Dは、溶接ワイヤWの径Bよりも大きく設定されているので、溶接ワイヤWの多少のずれやロボット100による位置制御の多少のずれが許容される。
【0060】
一方、図11に示すように、溶接ワイヤWが例えば曲がっているために溶接ワイヤWの先端部が、溶接トーチTの中心線T1の延長線上から外れていている場合には、溶接ワイヤWの先端部が溶接ワイヤ挿入孔46bから外れて、溶接ワイヤ押し当て部材46の上端面46aに当たる。この場合も、ロボット100が上記した場合と同じ軌跡となるように溶接トーチTを下方へ移動させるが、図12に示すように、溶接ワイヤWの先端部は溶接ワイヤ挿入孔46bに挿入されていない分、溶接ワイヤ押し当て部材41の変位量が所定量よりも大きくなり、突出部46dが図9に示す場合よりも下方まで変位することになる。この突出部46dの変位により、リミットスイッチ43の揺動レバー43bが突出部46dから外れて元の位置に戻る。よって、リミットスイッチ43が一旦にONに切り替わった後、すぐにOFFになるので、判定部44は、溶接ワイヤ押し当て部材41が溶接ワイヤWの押し当て方向に所定量変位していないとして溶接トーチTの芯ずれが起こっていると判定する。つまり、溶接ワイヤ押し当て部材46の変位が所定量である場合には、リミットスイッチ43がONになり、所定量よりも少ない変位量である場合、及び所定量よりも多い変位量である場合には、リミットスイッチ43がOFFになる。
【0061】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、溶接ワイヤWの状態を直接得ることができるので、従来例のような大がかりな装置を不要としながら、溶接トーチTの芯ずれを確実に検出できる。
【0062】
また、溶接ワイヤWの先端部は、溶接ワイヤ挿入孔46bに挿入された状態で溶接ワイヤ押し当て部材46に押し当てられるので、溶接ワイヤ押し当て部材46の構造をシンプルにしながら、溶接トーチTの芯ずれが起こっていることを確実に検出できる。
【0063】
尚、溶接トーチの芯ずれ検出装置1を設置する際の向きはどのような向きであってもよく、溶接トーチTを水平方向に移動させることによって芯ずれの検出を行うようにすることもできる。
【0064】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明に係る溶接トーチの芯ずれ検出装置は、例えば自動車部品等を自動溶接する現場で使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 溶接トーチの芯ずれ検出装置
30 溶接ワイヤ切除装置
31 固定側切除刃
32 可動側切除刃
33 切除刃駆動シリンダ(駆動部)
41、46 溶接ワイヤ押し当て部材
42 支持部材
43 リミットスイッチ(検出部)
44 判定部
46b ワイヤ挿入孔
100 ロボット
T 溶接トーチ
W 溶接ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12