特許第6754237号(P6754237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754237超音波送信制御装置、超音波送信制御プログラム及び超音波送信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754237
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】超音波送信制御装置、超音波送信制御プログラム及び超音波送信制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/524 20060101AFI20200831BHJP
   G01S 15/96 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01S7/524 R
   G01S7/524 S
   G01S15/96
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-139870(P2016-139870)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-9907(P2018-9907A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 秀樹
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−258334(JP,A)
【文献】 特開平5−333147(JP,A)
【文献】 特開昭58−94300(JP,A)
【文献】 特開2015−166698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0097891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御装置であって、
前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定部と、
前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成部へ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増部と、
を備えることを特徴とする超音波送信制御装置。
【請求項2】
前記送信信号パワー漸増部は、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定以上の高周波成分を含まないように、前記送信信号のパルスの立ち上がりの速度を調整するための前記制御信号を生成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の超音波送信制御装置。
【請求項3】
前記送信信号パワー漸増部は、前記送信信号のパルスの立ち上がりの速度に等しくなるように、前記送信信号のパルスの立ち下がりの速度を調整するための前記制御信号を生成する
ことを特徴とする、請求項2に記載の超音波送信制御装置。
【請求項4】
前記送信信号パワー漸増部は、前記超音波振動子に固有の最大定格に基づいて、前記送信信号のパワーを高くなり過ぎないように漸増するための前記制御信号を生成する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の超音波送信制御装置。
【請求項5】
超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御プログラムであって、
前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成ステップと、
前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定ステップと、
前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成ステップへ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増ステップと、
をコンピュータに実行させるための超音波送信制御プログラム。
【請求項6】
超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御方法であって、
前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成ステップと、
前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定ステップと、
前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成ステップへ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増ステップと、
を備えることを特徴とする超音波送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物標を高い精度で検出する超音波計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波計測技術を用いて、物標を高い精度で検出することができる(例えば、特許文献1を参照。)。例えば、プランクトン等からの反射信号のドップラーシフトに基づいて、船舶の対水速度や潮流の速度を検出することができる。そして、魚群や海底からの反射信号の伝搬遅延時間に基づいて、魚群や深度を探知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−166698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波振動子に高電圧が印加されたときには、セラミック等の振動素子が破損することがあり、振動素子の電極が剥離することがある。そこで、物標を高い精度で検出するために、超音波振動子の照射パワーを最大限に設定しつつも、超音波振動子の最大定格に基づいて、超音波振動子に高電圧が印加されないようにすることが考えられる。
【0005】
しかし、超音波振動子の最大定格は、超音波振動子毎にばらつきを含むことがあるため、超音波振動子に高電圧が印加されないようにすることが難しい。そして、超音波振動子とその制御装置を接続するケーブルの長さや、超音波振動子に対する印加電圧における使用周波数は、超音波振動子の設置状況や使用状況に応じてばらつきを含むことがあるため、印加電圧の進行波と印加電圧の反射波が強め合って合成されて超音波振動子に印加されることがあり、超音波振動子に高電圧が印加されないようにすることが難しい。
【0006】
例えば、船舶の船底に配置される超音波振動子については、セラミック等の振動素子が破損したり、振動素子の電極が剥離すると、超音波振動子を交換するための、ダイバーによる潜水作業やドライドックへの上架等、大規模でかつ高コストな作業が必要となる。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、物標を高い精度で検出するために、超音波振動子の照射パワーを最大限に設定しつつも、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子に高電圧が印加されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、超音波振動子の起動時において、超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から超音波振動子へ送信される送信信号について、自装置から超音波振動子への進行波に対する、超音波振動子から自装置への反射波のパワーを測定することとした。すると、反射波のパワーが低いときには、送信信号のパワーが超音波のパワーに有効に変換されていることから、送信信号のパワーをより高く設定してもよいことが分かる。一方で、反射波のパワーが高いときには、送信信号のパワーが超音波のパワーに有効に変換されていないことから、送信信号のパワーをより高く設定すべきでないことが分かる。
【0009】
具体的には、本開示は、超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御装置であって、前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成部と、前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定部と、前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成部へ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増部と、を備えることを特徴とする超音波送信制御装置である。
【0010】
また、本開示は、超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御プログラムであって、前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成ステップと、前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定ステップと、前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成ステップへ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増ステップと、をコンピュータに実行させるための超音波送信制御プログラムである。
【0011】
また、本開示は、超音波振動子から物標への超音波送信を制御する超音波送信制御方法であって、前記超音波振動子から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置から前記超音波振動子へ送信される送信信号を生成する送信信号生成ステップと、前記送信信号について、自装置から前記超音波振動子への進行波と、前記超音波振動子から自装置への反射波と、の合成波のパワーを測定する合成波パワー測定ステップと、前記超音波振動子の起動時において前記送信信号のパワーの漸増を実行するにあたり、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、前記送信信号のパワーの漸増を停止するための、前記送信信号生成ステップへ出力される制御信号を生成する送信信号パワー漸増ステップと、を備えることを特徴とする超音波送信制御方法である。
【0012】
この構成によれば、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子に高電圧が印加されることが確実に回避され、超音波振動子の破損が確実に防止される。
【0013】
また、本開示は、前記送信信号パワー漸増部は、前記合成波のパワーから導いた前記反射波のパワーが所定以上の高周波成分を含まないように、前記送信信号のパルスの立ち上がりの速度を調整するための前記制御信号を生成することを特徴とする超音波送信制御装置である。
【0014】
この構成によれば、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子に高電圧が印加されることが確実に回避され、超音波振動子の発熱が確実に防止される。
【0015】
また、本開示は、前記送信信号パワー漸増部は、前記送信信号のパルスの立ち上がりの速度に等しくなるように、前記送信信号のパルスの立ち下がりの速度を調整するための前記制御信号を生成することを特徴とする超音波送信制御装置である。
【0016】
この構成によれば、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子の残留自己共振が確実に抑圧され、超音波振動子の送受切替が確実に速くなる。
【0017】
また、本開示は、前記送信信号パワー漸増部は、前記超音波振動子に固有の最大定格に基づいて、前記送信信号のパワーを高くなり過ぎないように漸増するための前記制御信号を生成することを特徴とする超音波送信制御装置である。
【0018】
この構成によれば、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子に高電圧が印加されることがより確実に回避され、超音波振動子の破損がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0019】
このように、本開示によれば、物標を高い精度で検出するために、超音波振動子の照射パワーを最大限に設定しつつも、超音波振動子の設置状況や使用状況によらず、超音波振動子に高電圧が印加されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の超音波計測システムの構成を示す図である。
図2】本開示の超音波送信制御処理の流れを示す図である。
図3】本開示の超音波送信制御処理の概念を示す図である。
図4】本開示の超音波送信制御処理の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0022】
本開示の超音波計測システムの構成を図1に示す。本開示の超音波計測システムは、超音波振動子1、超音波計測装置2及び物標表示装置3から構成される。超音波計測装置2は、超音波送信制御装置21及び物標検出装置22から構成される。超音波送信制御装置21は、送信信号生成部211、合成波パワー測定部212及び送信信号パワー漸増部213から構成される。
【0023】
超音波振動子1は、照射信号を送信し、反射信号を受信し、例えば、船舶Sの船首の船底に配置される。超音波計測装置2が備える物標検出装置22は、反射信号に基づいて、物標を検出し、例えば、船舶Sの船首の甲板下に配置される。物標表示装置3は、物標の位置や速度を表示し、例えば、船舶Sの操舵室に配置される。
【0024】
例えば、プランクトンP等からの反射信号のドップラーシフトに基づいて、船舶Sの対水速度や潮流の速度を検出することができる。そして、魚群Fや海底Uからの反射信号の伝搬遅延時間に基づいて、魚群Fや深度を探知することができる。
【0025】
超音波計測装置2が備える超音波送信制御装置21は、超音波振動子1から物標への超音波送信を制御する。送信信号生成部211は、超音波振動子1から物標へ照射される超音波を生成するための、自装置21から超音波振動子1へ送信される送信信号を生成する。送信信号パワー漸増部213は、超音波振動子1の起動時において、送信信号のパワーの漸増を実行するための、送信信号生成部211へ出力される制御信号を生成する。
【0026】
合成波パワー測定部212は、送信信号について、自装置21から超音波振動子1への進行波と、超音波振動子1から自装置21への反射波と、の合成波のパワーを測定する。送信信号パワー漸増部213は、合成波のパワーから進行波のパワーを差し引いて導いた反射波のパワーが所定の値より高くなったときに、送信信号のパワーの漸増を停止するための、送信信号生成部211へ出力される制御信号を生成する。
【0027】
送信信号パワー漸増部213は、合成波のパワーから進行波のパワーを差し引いて導いた反射波のパワーが所定以上の高周波成分を含まないように、送信信号のパルスの立ち上がりの速度を調整するための制御信号を生成する。また、送信信号のパルスの立ち上がりの速度に等しくなるように、送信信号のパルスの立ち下がりの速度を調整するための制御信号を生成する。また、超音波振動子1に固有の最大定格に基づいて、送信信号のパワーを高くなり過ぎないように漸増するための制御信号を生成する。
【0028】
本開示の超音波送信制御処理の流れ、概念及び内容を、図2から図4までに示す。本開示の超音波送信制御処理は、超音波送信制御装置21にインストールされたプログラムにより、又は、超音波送信制御装置21に搭載されたFPGA(Field Programmable Gate Array)等により、実現することができる。
【0029】
送信信号パワー漸増部213は、超音波振動子1の起動時に、送信信号のパワーを所定の低い値に設定し(ステップS1)、送信信号の立ち上がり/立ち下がりの速度を所定の値に設定する(ステップS2)。具体的には、図4の左側に示したように、キャリア波形に対するマスク波形のパワーを最低限に設定し、キャリア波形に対するマスク波形の立ち上がり/立ち下がりの速度を高めに等しく設定する。
【0030】
送信信号生成部211は、今回設定された送信信号を送信する(ステップS3)。具体的には、図4の左側に示したように、キャリア波形に対するマスク波形とキャリア波形を合成して送信信号を生成する。合成波パワー測定部212は、進行波と反射波の合成波のパワーを測定し、合成波のパワーから進行波のパワーを差し引いて反射波のパワーを導く(ステップS4)。
【0031】
今回の送信信号のパワーが最低限に設定されており、反射波のパワーが所定の値より高くないため(ステップS5においてNO)、送信信号パワー漸増部213は、最大定格を満たしたうえで、次回の送信信号のパワーを、今回より高い値に設定する(ステップS6)。
【0032】
つまり、今回の送信信号のパワーが低く、振動素子に高電圧が印加されず、今回の送信信号のパワーが超音波のパワーに有効に変換されるため、反射波のパワーが低い。
【0033】
今回の送信信号の立ち上がりの速度が高めに設定されており、反射波のパワーが所定以上の高周波を含むため(ステップS8においてYES)、送信信号パワー漸増部213は、次回の送信信号の立ち上がりの速度を、今回より低い値に設定し、次回の送信信号の立ち下がりの速度を、次回の送信信号の立ち上がりの速度に等しく設定する(ステップS9)。
【0034】
つまり、今回の送信信号の立ち上がりの速度が高く、振動素子に高周波が印加され、今回の送信信号の高周波成分が超音波のパワーに有効に変換されないため、反射波のパワーが高周波を含み、振動素子の発熱も生じる。なお、今回の送信信号の立ち下がりの速度が高く、振動素子の残留自己共振が生じ、超音波振動子1の送受切替が遅くなる。
【0035】
送信信号パワー漸増部213は、送信信号のパワー及び立ち上がり/立ち下がり速度の調整を続行するために(ステップS11においてNO)、ステップS3〜S10を繰り返す。
【0036】
反射波のパワーが所定の値より高くなったときには(ステップS5においてYES)、送信信号パワー漸増部213は、最大定格を満たしたうえで、次回以降の送信信号のパワーを、今回より低い前回と同じ値に設定する(ステップS7)。
【0037】
つまり、今回の送信信号のパワーが高く、振動素子に高電圧が印加され、今回の送信信号のパワーが超音波のパワーに有効に変換されないため、反射波のパワーが高い。または、今回の送信信号のパワーが低くても、ケーブル23の長さやキャリア波形の周波数によっては、進行波と反射波の合成波のパワーが高く、振動素子に高電圧が印加され、今回の送信信号のパワーが超音波のパワーに有効に変換されないため、反射波のパワーが高い。
【0038】
反射波のパワーが所定以上の高周波を含まなくなったときには(ステップS8においてNO)、送信信号パワー漸増部213は、次回以降の送信信号の立ち上がりの速度を、条件を満たす今回と同じ値に設定し、次回以降の送信信号の立ち下がりの速度を、次回以降の送信信号の立ち上がりの速度に等しく設定する(ステップS10)。
【0039】
つまり、今回の送信信号の立ち上がりの速度が低く、振動素子に高周波が印加されず、今回の送信信号の全周波成分が超音波のパワーに有効に変換されるため、反射波のパワーが高周波を含まず、振動素子の発熱も生じない。なお、今回の送信信号の立ち下がりの速度が低く、振動素子の残留自己共振が生じず、超音波振動子1の送受切替が速くなる。
【0040】
このように、送信信号パワー漸増部213は、超音波振動子1の定常時に、送信信号のパワーを最大限に設定し(ステップS7)、送信信号の立ち上がり/立ち下がりの速度を低めに等しく設定する(ステップS10)。具体的には、図4の右側に示したように、キャリア波形に対するマスク波形のパワーを最大限に設定し、キャリア波形に対するマスク波形の立ち上がり/立ち下がりの速度を低めに等しく設定する。
【0041】
送信信号生成部211は、最適設定された送信信号を送信する(ステップS3)。具体的には、図4の右側に示したように、キャリア波形に対するマスク波形とキャリア波形を合成して送信信号を生成する。送信信号パワー漸増部213は、送信信号のパワー及び立ち上がり/立ち下がり速度を最適化したときに(ステップS11においてYES)、処理を終了する。なお、送信信号パワー漸増部213は、送信信号のパワー及び立ち上がり/立ち下がり速度を最適化した後でも、ステップS3〜S10を繰り返してもよい。また、送信信号パワー漸増部213は、超音波計測が終了されるときも、処理を終了することになる(ステップS11においてYES)。
【0042】
このように、本開示では、超音波振動子1の最大定格が、超音波振動子1毎にばらつきを含むことがあっても、超音波振動子1に高電圧や高周波が印加されないようにすることができる。そして、本開示では、超音波振動子1と超音波送信制御装置21を接続するケーブル23の長さや、超音波振動子1に対する送信信号における使用周波数が、超音波振動子1の設置状況や使用状況に応じてばらつきを含むことがあるため、送信信号の進行波と送信信号の反射波が強め合って合成されて超音波振動子1に印加されることがあっても、超音波振動子1に高電圧や高周波が印加されないようにすることができる。
【0043】
よって、本開示では、超音波振動子1に高電圧や高周波が印加されないため、セラミック等の振動素子が破損することがなく、振動素子の電極が剥離することがない。例えば、船舶Sの船底に配置される超音波振動子1については、セラミック等の振動素子が破損せず、振動素子の電極が剥離せず、超音波振動子1を交換するための、ダイバーによる潜水作業やドライドックへの上架等、大規模でかつ高コストな作業が不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の超音波送信制御装置、超音波送信制御プログラム及び超音波送信制御方法は、超音波振動子の設置状況や使用状況がばらつきを含む場合であれば、船舶の船底や車両の側面に配置される超音波振動子に対して有利に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:超音波振動子
2:超音波計測装置
3:物標表示装置
21:超音波送信制御装置
22:物標検出装置
23:ケーブル
211:送信信号生成部
212:合成波パワー測定部
213:送信信号パワー漸増部
S:船舶
P:プランクトン
F:魚群
U:海底

図1
図2
図3
図4