特許第6754239号(P6754239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754239配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754239
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20200831BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20200831BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20200831BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20200831BHJP
【FI】
   G06F17/50 650C
   G06Q50/08
   G06F17/50 606D
   G06F17/50 602B
   G06F17/50 608Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-143935(P2016-143935)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-14011(P2018-14011A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】香川 崇哲
(72)【発明者】
【氏名】小丸 維斗
【審査官】 堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−075927(JP,A)
【文献】 特開2012−123589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0286750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00−30/398
G06Q50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて情報処理装置により配管施工図を作成する配管施工図作成方法であって、
布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得して前記情報処理装置に入力する管情報取得ステップと、
前記管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を前記情報処理装置に入力する管布設情報入力ステップと、
前記情報処理装置により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成ステップと、
前記管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成ステップと、
前記配管施工図生成ステップで生成された配管施工図を表示する配管施工図表示ステップと、
を含み、
少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、前記管情報取得ステップと前記管布設情報入力ステップと前記接合関係情報生成ステップが繰り返されるように構成されている配管施工図作成方法。
【請求項2】
少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を前記情報処理装置に入力する管端部種別入力ステップをさらに含む請求項1記載の配管施工図作成方法。
【請求項3】
前記管形状に基づいて布設対象管が曲管と判断される場合に左曲り、右曲りまたは垂直曲りの何れかが布設対象管の向きとして入力され、布設対象管が分岐を有する管と判断される場合に分岐管の布設方向が布設対象管の向きとして入力されるとともに接合対象口の接合順が入力される請求項1または2記載の配管施工図作成方法。
【請求項4】
前記情報処理装置が施工現場に設置される情報処理端末と、前記情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバとで構成され、
前記管情報取得ステップと前記管布設情報入力ステップと前記接合関係情報生成ステップが前記情報処理端末で実行され、前記配管施工図生成ステップが前記情報処理サーバで実行されるとともに、前記情報処理サーバで生成された配管施工図が前記情報処理端末に送信されるように構成されている請求項1から3の何れかに記載の配管施工図作成方法。
【請求項5】
前記情報処理装置が施工現場に設置される情報処理端末で構成され、配管施工図生成ステップで生成された配管施工図が、前記情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバに送信されるように構成されている請求項1から3の何れかに記載の配管施工図作成方法。
【請求項6】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成装置であって、
布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得する管情報取得部と、
前記管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を入力する管布設情報入力部と、
前記情報処理装置により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成部と、
前記管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成部と、
前記配管施工図生成部で生成された配管施工図を表示する配管施工図表示部と、
を含み、
少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、前記管情報取得部を介して前記管情報が取得され、前記管布設情報入力部を介して布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が入力され、前記接合関係情報生成部を介して前記接合関係情報が生成されるように構成されている配管施工図作成装置。
【請求項7】
少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を前記情報処理装置に入力する管端部種別入力部をさらに含む請求項6記載の配管施工図作成装置。
【請求項8】
前記管布設情報入力部は、前記管形状に基づいて布設対象管が曲管と判断される場合に左曲り、右曲りまたは垂直曲りの何れかが布設対象管の向きとして入力され、布設対象管が分岐を有する管と判断される場合に分岐管の布設方向が布設対象管の向きとして入力されるとともに接合対象口の接合順が入力されるように構成されている請求項6または7記載の配管施工図作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて情報処理装置により配管施工図を作成する配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道管路網等の配管布設工事の施工に付帯して、施工業者は当日の作業終了時に配管の使用材料や工事内容を特定する図面を工事日報に書き込み、工事の終了後に管路の埋設位置を表す竣工図や、竣工図よりも管路の正確な埋設位置を表すオフセット図を工事管理者に提出する必要がある。
【0003】
しかし、施工業者にとってこのような書類の作成作業は非常に煩雑であるため、正確な情報の記入が保証され難いという問題があった。例えば、工事に用いられる多品種の管材料や各管の埋設位置を手帳にメモしておき、後にそのメモを参照して上述の書類をまとめて作成する場合が多いのであるが、その際に転記ミスも多く、また、配管の埋設後に位置を計測するような場合も多いため、正確さに欠けるのである。
【0004】
また、管接合部(管継手部)の接合作業が適切に行なわれたか否かを工事の後に検証可能な形態で記録する手立てが求められていた。
【0005】
そこで、特許文献1には、このような煩雑さを軽減するために、施工現場に配置された管に貼付された管情報ラベルの撮影情報に基づいて管情報を取得する管情報取得装置と、施工現場の位置情報を取得するGPS受信装置と、配管の継手部の画像を取得する画像取得装置とを介して得られた管情報、位置情報、及び画像情報を送信装置により施工管理情報サーバにアップロードし、前記施工管理情報サーバから情報処理端末にダウンロードした管情報、位置情報、及び画像情報に基づいて、前記情報処理端末に備えたマッピング処理部で管理される地図上に竣工図を生成する管路竣工図作成方法が提案されている。
【0006】
当該管路竣工図作成方法によれば、作業者が管情報を手帳にメモしたり、測量装置で位置を測量したり、撮影作業を行なうような労力を伴わずに、管情報、位置情報、及び画像情報が施工現場で収集されて施工管理情報サーバにアップロードされるので正確な情報が確実に得られるようになる。そのような正確な情報に基づいて接合状態を適切に検証することが可能になるとともに工事日報を自動生成することが可能になり、施工管理情報サーバと接続すれば場所を問わずに情報処理端末上で正確な竣工図が生成できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−75927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来の管路竣工図作成方法では、GPS位置情報システムを利用して管の接合部(継手部)の位置を取得する必要があり、そのためには高価な精度の高いGPS受信装置が不可欠となり、設備費が嵩むという問題があった。
【0009】
また、精度良くGPS受信ができない場合には、竣工図が上手く生成できないという問題もあった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、簡易的に配管施工図を自動生成できる配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による配管施工図作成方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて情報処理装置により配管施工図を作成する配管施工図作成方法であって、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得して前記情報処理装置に入力する管情報取得ステップと、前記管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を前記情報処理装置に入力する管布設情報入力ステップと、前記情報処理装置により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成ステップと、前記管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成ステップと、前記配管施工図生成ステップで生成された配管施工図を表示する配管施工図表示ステップと、を含み、少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、前記管情報取得ステップと前記管布設情報入力ステップと前記接合関係情報生成ステップが繰り返されるように構成されている点にある。
【0012】
先ず、管情報取得ステップでは、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報が取得され、当該管情報が情報処理装置に入力される。管情報には、例えば直管であるか異形管であるかの識別、異形管であれば曲管であるか分岐部を有する管であるかの識別といった管形状を特定するための情報が含まれる。管布設情報入力ステップでは、当該管情報に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が情報処理装置に入力される。布設対象管の向きとは、例えば曲管であればその曲がり方向、分岐管であればその分岐方向を特定する情報をいい、接合対象口の接合順とは、例えば分岐部を備えた管のように接合対象管端部が複数ある場合に、各管端部への接合順を特定する情報をいう。
【0013】
接合関係情報生成ステップでは、情報処理装置によって上述の管情報と管布設情報に基づいて各布設対象管の接合関係情報が生成される。接合関係情報とは例えば管の接合部を特定するための情報で、接合部を構成する各管の識別情報と接合された管端部が受口であるか挿口であるかといった情報をいう。
【0014】
配管施工図生成ステップでは、管形状と管布設情報と接合関係情報があれば、。管の布設位置や接合位置を特定する情報が無くても、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図が生成され、配管施工図表示ステップでは、管施工図生成ステップで生成された配管施工図が表示される。少なくとも施工現場で管接合処理が行なわれる度に、管情報取得ステップと管布設情報入力ステップと接合関係情報生成ステップが繰り返されることで、配管施工図に必要な情報が洩れなく収集されるようになる。
【0015】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を前記情報処理装置に入力する管端部種別入力ステップをさらに含む点にある。
【0016】
最初の管の接合部が受口か挿口の何れであるかが特定されると、以後の管の接合部は自動的に決定できるようになる。例えば、最初の管の接合部が受口であれば、次の管の挿口が当該最初の管の受口に挿入され、当該次の管の受口にさらに次の管の挿口が挿入されることになる。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記管形状に基づいて布設対象管が曲管と判断される場合に左曲り、右曲りまたは垂直曲りの何れかが布設対象管の向きとして入力され、布設対象管が分岐を有する管と判断される場合に分岐管の布設方向が布設対象管の向きとして入力されるとともに接合対象口の接合順が入力される点にある。
【0018】
管布設情報入力ステップで入力される布設対象管の向きとは、例えば曲管であればその曲がり方向、分岐管であればその分岐方向を特定する情報をいい、接合対象口の接合順とは、例えば分岐部を備えた管のように接合対象管端部が複数ある場合に、各管端部への接合順を特定する情報をいう、これらの情報に基づいて、布設された複数の管の相対的な位置関係が特定可能になる。
【0019】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記情報処理装置が施工現場に設置される情報処理端末と、前記情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバとで構成され、前記管情報取得ステップと前記管布設情報入力ステップと前記接合関係情報生成ステップが前記情報処理端末で実行され、前記配管施工図生成ステップが前記情報処理サーバで実行されるとともに、前記情報処理サーバで生成された配管施工図が前記情報処理端末に送信されるように構成されている点にある。
【0020】
演算処理部の処理能力に制限がある情報処理端末では、施工現場でしか得られない情報が適切に処理され、演算処理部の処理能力が高い情報処理サーバでは施工現場で得られた情報に基づいて配管施工図を生成する負荷の重いマッピング処理が実行され、その結果が施工現場にある情報処理端末に表示されるといった負荷分散が図られる。つまり、情報処理端末での演算負荷の軽減を図りつつ、情報処理サーバを活用した高速処理が実現できるようになる。
【0021】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記情報処理装置が施工現場に設置される情報処理端末で構成され、配管施工図生成ステップで生成された配管施工図が、前記情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバに送信されるように構成されている点にある。
【0022】
施工現場に設置される情報処理端末で各ステップが実行され、得られた配管施工図が情報処理サーバに送信されて管理されるので、紙を用いた工事日報を作成するという煩雑な業務から開放されるようになる。
【0023】
本発明による配管施工図作成装置の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成装置であって、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得する管情報取得部と、前記管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を入力する管布設情報入力部と、前記情報処理装置により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成部と、前記管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成部と、前記配管施工図生成部で生成された配管施工図を表示する配管施工図表示部と、を含み、少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、前記管情報取得部を介して前記管情報が取得され、前記管布設情報入力部を介して布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が入力され、前記接合関係情報生成部を介して前記接合関係情報が生成されるように構成されている点にある。
【0024】
同第二の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を前記情報処理装置に入力する管端部種別入力部をさらに含む点にある。
【0025】
同第三の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記管布設情報入力部は、前記管形状に基づいて布設対象管が曲管と判断される場合に左曲り、右曲りまたは垂直曲りの何れかが布設対象管の向きとして入力され、布設対象管が分岐を有する管と判断される場合に分岐管の布設方向が布設対象管の向きとして入力されるとともに接合対象口の接合順が入力されるように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した通り、本発明によれば、簡易的に配管施工図を自動生成できる配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】直管の接合作業の説明図
図2】配管施工図作成装置の機能ブロック構成図
図3】配管施工図作成装置で生成された配管施工図の説明図
図4】工事日報の説明図
図5】(a),(b)は管布設情報入力部の入力画面の説明図
図6】情報処理端末で実行される配管施工図作成方法のフローチャート
図7】情報処理サーバで実行される配管施工図作成方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、ダクタイル鋳鉄管(以下、「鉄管」と記す。)を用いた上水道管に対する配管の接合作業を例に、本発明による配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置を説明する。
【0029】
図1には、所謂プッシュオンタイプの管継手構造を備えた直管の接合作業が示されている。一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具200を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具201を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト202,203を装着して手動操作で巻き上げるという接合作業が行なわれる。
【0030】
布設対象管として直管以外の異形管では、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入した後に、押輪を用いて挿口と受口の隙間にシール部材を挿入するように、押輪と受口のフランジ部との間がT頭ボルト及びナットで締め付けられる。異形管には、曲り角度が90°,45°,22.5°,11.25°等の各曲管、乙字管、三受十字管や二受T字管等の分岐管が含まれる。
【0031】
配管施工現場では、工事終了後に竣工図等を作成するための配管施工情報を工事日毎に記録する必要がある。本発明による配管施工図作成装置は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて、布設された各管の種類、呼び径、長さ、及び、各管の接合関係が識別できる簡易的な配管施工図を自動生成可能にする装置である。
【0032】
図2に示すように、配管施工図作成装置100は、施工現場に設置される情報処理端末110と、情報処理端末110と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバ120とで構成されている。両者間でWiFiによるインターネットを利用した接続や専用回線を利用した接続が可能になるように、情報処理端末110及び情報処理サーバ120のそれぞれに通信処理部15,24が設けられている。
【0033】
情報処理端末110としてモバイルコンピュータ(ラップトップコンピュータやタブレット型コンピュータやスマートフォン等を含む。)が用いられる。情報処理端末110にインストールされたアプリケーションソフトウェアが実行され、或いはクラウドに準備されたアプリケーションソフトウェアが情報処理端末110を介して実行されることにより、管情報取得部11と、管布設情報入力部12と、接合関係情報生成部13と、配管施工図表示部14としての機能ブロックが具現化される。
【0034】
また、施工現場毎に用いられる複数の情報処理端末110と通信処理部15,24を介して接続される情報処理サーバ120には、予めインストールされたアプリケーションソフトウェアが実行されることにより配管図面を自動生成可能なマッピング処理部21が設けられ、情報処理端末110から送信された簡易施工管理情報に基づいて配管施工図を自動生成する配管施工図生成部23や、詳細施工管理情報に基づいて竣工図を自動生成する竣工図生成部22がマッピング処理部21に構築されている。
【0035】
管情報取得部11は、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得する機能ブロックである。本実施形態では、管の受口側の表面に貼付されたQRコード(登録商標)のような情報ラベルが管情報表示として用いられ、情報処理端末110に接続されたコードリーダ20を介して情報ラベルを読み取るように構成されている。
【0036】
管情報には、製造年月日、製造工場、型式、管種、呼び径、管の個体番号等が含まれる。上述の情報ラベルの下部にはシリアルナンバーが付されており、作業者が当該シリアルナンバーを読み取って情報処理端末110のタッチパネル12aから入力することによって管情報が取得されるように構成してもよい。例えば、情報処理端末110からインターネットを介して管情報データベースにアクセスして当該シリアルナンバーに対応する管情報を取得することができる。
【0037】
管布設情報入力部12は、管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を入力する機能ブロックである。
【0038】
図5(a)には、布設対象管が45°の曲管である場合の向きを管布設情報として入力する例が示されている。情報処理端末110のタッチパネル12aの画面に、曲管の布設方向に沿って左曲りと、垂直曲りと、右曲りの選択肢が表示され、何れかを選択することにより、曲管の向きが左曲りか、垂直曲りか、右曲りかが特定される。
【0039】
図5(b)には、分岐管の例として二受T字管が布設対象管となる場合の向き及び接合対象口の接合順を管布設情報として入力する例が示されている。情報処理端末110のタッチパネル12aの画面に、曲管の布設方向に沿って分岐部が左側に位置するか、右側に位置するか、そして2か所の受口の何れを先に接合するかの選択枝が表示され、何れかを選択することにより、二受T字管の分岐部の方向と接合順が特定される。同図で左上の選択肢を選択すると、先ず鎖線で示す方向に沿った受口に接合され、次に分岐部の受口に接合されることになる。
【0040】
図5(a),(b)は例示であり、具体的な管布設情報を入力する手法はこの様な例に限定されるものではないが、タッチパネル12aの画面に選択肢を表示することが好ましい。
【0041】
つまり、管布設情報入力部12は、管形状に基づいて布設対象管が曲管と判断される場合に左曲り、右曲りまたは垂直曲りの何れかが布設対象管の向きとして入力され、布設対象管が分岐を有する管と判断される場合に分岐管の布設方向が布設対象管の向きとして入力されるとともに接合対象口の接合順が入力されるように構成されている。
【0042】
接合関係情報生成部13は、管情報取得部11で取得された管の順番に、管布設情報入力部12で入力された管布設情報に従って、接合順に管接合部を特定する継手番号と、管接合部を構成する管を特定する管番号及び管端部の種別(受口か挿し口かの種別)を特定する管端部情報を含む各布設対象管の接合関係情報を生成する機能ブロックである。
【0043】
図3には、配管施工図が例示されている。括弧書きの番号が継手番号を示し、括弧の無い番号が管番号を示している。接合関係情報とは、継手番号の若い順に接合処理が行なわれること、各継手番号の接合部を構成する管が管番号で特定されること、各管番号の受口と挿し口の何れが当該接合部となるのかが特定されることを示す情報である。例えば、継手番号(3)の継手は三番目の接合作業で接合された継手であり、管番号3の受口に管番号4の挿し口が接合された継手であることが特定される情報である。
【0044】
情報処理端末110は、管が接合されて、上述の管情報、管布設情報、接合関係情報が入力され或いは生成される度に、これらの情報を配管施工情報として情報処理サーバ120に送信するように構成されている。
【0045】
情報処理サーバ120のマッピング処理部21は、情報処理端末110から送信された配管施工情報を記憶部に記憶して配管施工図生成部23を起動する。配管施工図生成部23は、管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する機能ブロックである。
【0046】
配管施工図生成部23は、配管施工図として図3に示したような線図を自動生成して記憶部に格納するとともに、通信処理部24,15を介して情報処理端末110に送信するように構成されている。
【0047】
具体的に説明する。接合部の位置情報は不明であるため、最初の管の接合部を描画レイヤの任意の位置に設定し、当該接合部を起点に管情報から得られる管の形状及び長さと、管布設情報から得られる管の布設情報、つまり管が何れに曲がるのか、何れに分岐するのかといった情報に基づいて管の平面視での長さに相当する線を描画する処理が、情報処理端末110から配管施工情報が送信される度に繰り返される。例えば曲管が垂直曲りである場合には、平面視での長さに変換されて描画される。このような配管施工図によって、どのように管が布設されたのであるか、管同士の相対接合関係が把握できる。
【0048】
尚、施工現場では、接合部の位置情報、例えば基準となる建物からどの程度の距離に接合部が位置するのかといった情報が測量によって求められるので、そのような情報を加味することにより、最終的に竣工図に加工することができる。
【0049】
また、配管施工図生成部23は、同時に工事日報を自動生成して記憶部に格納するとともに、通信処理部24,15を介して情報処理端末110に送信するように構成されている。
【0050】
図4には、工事日報が例示されている。工事日報は、工事名称、工事現場、受注者の各識別名称欄と、工事が行なわれた日時、天候、工程、出来高延長、使用材料合計、使用材料詳細、残管という各項目欄を備え、各項目欄に管情報を含む施工管理情報が示された帳票である。
【0051】
尚、配管施工図及び工事日報は、情報処理端末110から上述の管情報、管布設情報、接合関係情報が送信される度に更新処理されて、その結果が情報処理端末110に送信される。
【0052】
配管施工図表示部14は、情報処理サーバ120から配管施工図及び工事日報が送信される度にタッチパネル14aにそれらを表示する機能ブロックである。
【0053】
少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、管情報取得部11を介して管情報が取得され、管布設情報入力部12を介して布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が入力され、接合関係情報生成部13を介して接合関係情報が生成される。
【0054】
管布設情報入力部12には、少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を入力するための入力画面を表示する管端部種別入力部を備えている。最初の管の接合部が受口か挿口の何れであるかが特定されると、以後の管の接合部は自動的に決定できるようになる。例えば、最初の管の接合部が受口であれば、次の管の挿口が当該最初の管の受口に挿入され、当該次の管の受口にさらに次の管の挿口が挿入されることになる。
【0055】
図6,7には、上述の配管施工図作成装置100で実行される配管施工図作成手順が示されている。破線で示された処理は作業者が行なう実作業であり、配管施工図作成装置100が主体的に行なう処理でないことを示している。
【0056】
情報処理端末110は、管布設作業が行なわれ(S1)、一つの接合作業が終わると(S2)、管情報取得部11によってコードリーダ20を介して管に貼付された管情報表示が読み取られる(S3)。
【0057】
接合された管が異形管であれば、続いて管敷設情報入力部12によって、タッチパネルに図5(a),(b)に示したような選択画面が表示され、布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が入力される(S4)。
【0058】
さらに、接合関係情報生成部13によって、各布設対象管の接合関係情報が生成され(S5)、得られた管情報、管布設情報、接合関係情報が情報処理サーバ120に送信される(S6)。
【0059】
情報処理サーバ120から配管施工図が送信されると(S7)、配管施工図表示部により配管施工図が表示される(S8)。ステップS3からステップS8までの処理が、作業当日の予定されていた接合作業が終了するまでの間繰り返される(S9)。
【0060】
図7に示すように、情報処理サーバ120の配管施工図生成部23は、管情報、管布設情報、接合関係情報を含む施工管理情報が送信されると(S11)、施工管理情報を記憶部に記憶し(S12)、上述した配管施工図を生成して(S13)、当該配管施工図を記憶部に記憶するとともに(S14)、配管施工図を情報処理端末110に送信する(S15)。ステップS11からステップS15の処理が、作業当日の予定されていた接合作業が終了するまでの間繰り返される(S16)。
【0061】
即ち、本発明による配管施工図作成方法は、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得して情報処理端末に入力する管情報取得ステップと、管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を情報処理端末に入力する管布設情報入力ステップと、情報処理端末により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成ステップと、管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理サーバにより各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成ステップと、配管施工図生成ステップで生成された配管施工図を表示する配管施工図表示ステップと、を含み、少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、管情報取得ステップと管布設情報入力ステップと接合関係情報生成ステップが繰り返されるように構成されている。
【0062】
少なくとも最初の布設対象管の接合対象管端部の種別を情報処理装置に入力する管端部種別入力ステップを備えていることが好ましい。
【0063】
上述した実施形態では、情報処理装置が施工現場に設置される情報処理端末と、情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバとで構成され、管情報取得ステップと管布設情報入力ステップと接合関係情報生成ステップが情報処理端末で実行され、配管施工図生成ステップが情報処理サーバで実行されるとともに、情報処理サーバで生成された配管施工図が情報処理端末に送信されるように構成された例を説明したが、配管施工図作成装置の構成はこの例にかぎるものではない。
【0064】
例えば、配管施工図生成部を情報処理端末に備えて、情報処理端末で配管施工図生成ステップが実行されるように構成してもよい。この場合、情報処理端末で生成された配管施工図は、管情報、管布設情報、接合関係情報とともに、情報処理端末と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバに送信されるように構成してもよい。
【0065】
施工現場に設置される情報処理端末で各ステップが実行され、得られた配管施工図が情報処理サーバに送信されて管理されるので、紙を用いた工事日報を作成するという煩雑な業務から開放されるようになる。
【0066】
上述した実施形態では、GPS受信装置を用いないで配管施工図を作成する方法を説明したが、例えば、情報処理端末110に内蔵されたGPS受信装置で得られた位置情報を併用することも可能であり、その場合には接合部の位置情報として緯度及び経度情報を付加して配管施工図を生成することができる。
【0067】
上述した実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的な構成処理ステップ等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0068】
11:管情報取得部
12:管敷設情報入力部
13:接合関係情報生成部
14:配管施工図表示部
23:配管施工図生成部
100:配管施工図作成装置
110:情報処理端末
120:情報処理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7