特許第6754248号(P6754248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754248
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】浴室監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20200831BHJP
   F24D 15/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G08B21/02
   F24D15/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-169835(P2016-169835)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-36883(P2018-36883A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 しほり
【審査官】 石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−238964(JP,A)
【文献】 特開2005−349904(JP,A)
【文献】 特開2016−030108(JP,A)
【文献】 特開2002−298246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 13/00−15/04
G08B 19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に入室している生体の生理量を検出する生理量検出部と、
前記生理量検出部で検出された前記生理量が予め設定された判定範囲内である場合に報知を行う入室報知部と、
前記判定範囲を設定する判定範囲設定部と、を備え、
前記判定範囲設定部は、前記報知の対象である生体が前記浴室に入室している状態で、前記生理量検出部により検出された前記生理量に基づいて前記生体の種類又は前記生体の年齢を特定して、前記判定範囲を設定することを特徴とする浴室監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室監視システムにおいて、
記生理量検出部は、前記浴室に設置された浴室暖房機に設けられ、
前記判定範囲設定部は、前記生体とは異なる使用者による前記浴室暖房機の操作部の操作に応じて前記判定範囲を設定する処理を実行することを特徴とする浴室監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浴室監視システムにおいて、
前記生理量検出部は、前記生理量として、生体の心拍、脈拍、呼吸、血圧のうちの何れか1つの状態を検出することを特徴とする浴室監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内に進入した幼児や動物を検出することができる浴室監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室の壁面や天井に電波等で人を検知する人感センサを設置して、浴室に入ってきた幼児や屋外から浴室に侵入しようとする不審者を発見し、警報で知らせる浴室監視システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の異常検知装置は、第1のセンサと第2のセンサとで構成されている。第1のセンサは浴室の壁面に設置され、浴室内全域の人の動きを検知する。また、第2のセンサは脱衣室に設置され、身長が1m以上の人の動きを検知する。
【0004】
そして、第2のセンサが脱衣室で人の動きを検知せず、第1のセンサが浴室で人の動きを検知した場合に、浴室内に幼児が進入した可能性があるとして異常を通報するようになっている(特許文献1/段落0013〜0015,図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−065367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の異常検知装置では、幼児が手を挙げた状態で脱衣室に入ってきた場合等には、まず第2のセンサがオンし、続いて幼児が浴室に入ると第1のセンサがオンするので、異常と判定されなかった。このため、幼児の浴室への進入を確実に検知して通報することができなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、浴室に進入した幼児等の特定の生体をより確実に検知して、報知することができる浴室監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の浴室監視システムは、浴室に入室している生体の生理量を検出する生理量検出部と、前記生理量検出部で検出された前記生理量が予め設定された判定範囲内である場合に報知を行う入室報知部と、前記判定範囲を設定する判定範囲設定部と、を備え、前記判定範囲設定部は、前記報知の対象である生体が前記浴室に入室している状態で、前記生理量検出部により検出された前記生理量に基づいて前記生体の種類又は前記生体の年齢を特定して、前記判定範囲を設定することを特徴とする。
【0009】
この浴室監視システムにおいて、生理量検出部は、報知の対象となる生体が浴室に入室している状態で、生理量検出部がその生理量(心拍数、呼吸数等)を検出する。そして、判定範囲設定部は、検出された生理量に基づいて生体の種類又は生体の年齢を特定して、判定範囲を設定する。例えば、子供の心拍数は、大人と比較して高い数値範囲内にあるので、浴室内の生体の生理量が予め設定された判定範囲内である場合に、入室報知部報知を行う。これにより、浴室に進入した幼児等の特定の生体をより確実に検知して、報知することができる浴室監視システムを実現することができる。
【0012】
また、本発明の浴室監視システムにおいて、記生理量検出部は、前記浴室に設置された浴室暖房機に設けられ、前記判定範囲設定部は、前記生体とは異なる使用者による前記浴室暖房機の操作部の操作に応じて前記判定範囲を設定する処理を実行することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、使用者が、例えば、浴室の外にある浴室暖房機の操作部(リモコン)を操作することで、判定範囲設定部は、報知の対象となる生体(浴室が設置された家屋に住んでいる幼児等)の生理量の判定範囲を設定する処理を実行させることができる。
【0014】
また、本発明の浴室監視システムにおいて、前記生理量検出部は、前記生理量として、生体の心拍、脈拍、呼吸、血圧のうちの何れか1つの状態を検出することが好ましい。
【0015】
心拍、脈拍、呼吸、血圧は、人間の年齢によって、又は人間か動物かによってその数値範囲が異なる。このため、浴室監視システムで検出する生理量として、その状態を検出することで、浴室に進入してきた生体を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】生理量センサを備えた浴室の説明図。
図2】本発明の浴室監視システムの全体構成図。
図3】生理量検出処理のフローチャート。
図4A】人間の年齢に応じた心拍数表。
図4B】生体の種類に応じた心拍数表。
図5】初期設定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図1図5を参照して説明する。浴室監視システム1は、後述する浴室暖房機10の機能の一部として構成されている。まず、図1を参照して、本発明の浴室監視システム1の監視エリアである浴室BRについて説明する。
【0018】
浴室BRには、浴槽2と、浴室リモコン3と、浴室暖房機10とが設置されている。浴室リモコン3は、浴室BRの壁面に設置され、屋外に設置された給湯器30を遠隔操作することができる。
【0019】
また、浴室暖房機10は、浴室BRの壁面に設置されている。浴室暖房機10は、浴室BRの空調(暖房、換気、乾燥、送風等)を行う機能を有し、浴室BRに隣接する脱衣室DRの壁面に設置された浴暖リモコン20により遠隔操作される。浴室暖房機10の設置場所は、浴室の天井であってもよい。
【0020】
浴室暖房機10は、給湯器30と通信可能に接続されており、浴室リモコン3と、台所に設置されて、給湯器30を遠隔操作する台所リモコン40によっても遠隔操作される。浴室リモコン3及び台所リモコン40には、給湯器30の運転状態等を報知するディスプレイ及びスピーカが備えられている。
【0021】
また、浴室暖房機10は、生理量センサ12(本発明の「生理量検出部」に相当する)を備えている。生理量センサ12は、例えば、マイクロ波を人体に照射して、照射波と反射波との差でセンシングするドップラーセンサであって、浴室BR内に入ってきた進入者Pの心拍数を非接触で検出することができる。なお、生理量センサ12は、浴室暖房機10の外部に設けられ、浴室暖房機10と有線接続されている構成であってもよい。
【0022】
心拍数は、人間の年齢によりその平均値が異なっているので、生理量センサ12で検出された心拍数に基づいて、進入者P又は入浴者が家族のうち誰であるかを判定することができる。心拍数は、人間と動物(犬や猫等のペット)との間でも数値に差異があるので、それらを区別することもできる。
【0023】
通常、進入者Pは、脱衣室DRから浴室ドア4を通って浴室BRに入室する。浴室監視システム1は、幼児が1人で浴室BRに進入して、浴槽2に転落する等の事故を防止するため、進入者Pの心拍数を検知して、心拍数が予め設定された判定範囲内であった場合に、台所リモコン40及び浴室リモコン3のスピーカから警告音等を出力すると共に、ディスプレイに警告画面を表示して報知するようになっている。
【0024】
なお、浴室リモコン3による報知は、浴室BRの近くにいる大人に知らせるだけでなく、浴室BR内に進入した幼児に直接警告できるという効果がある。警告は、浴室リモコン3や台所リモコン40に限らず、浴暖リモコン20によって行うこともできる。
【0025】
次に、図2を参照して、浴室監視システム1の全体構成について説明する。
【0026】
まず、浴室暖房機10は、浴暖リモコン20との間でリモコンケーブルを介して通信を行うリモコン通信回路11、浴室BRにいる人の心拍数を検出する生理量センサ12、浴室暖房機10の全体的な作動を制御する浴室暖房制御部13、給湯器30との間で通信を行う給湯器通信回路14、及び屋外に設置された無線ルータ50を介して、通信ネットワーク60に接続された通信端末70(スマートフォン、携帯電話、タブレット端末等)との間で通信を行う外部通信回路15を備えている。なお、通信ネットワーク60に接続される機器は、インターネット接続されたテレビであってもよい。
【0027】
浴室暖房制御部13は、CPU、メモリ、各種インタフェース回路等により構成された電子ユニットであり、メモリに保持された浴室暖房機10の制御用プログラムをCPUにより実行することによって、浴室暖房機10の作動を制御する機能を果たす。また、浴室暖房制御部13は、浴室BR内で特定の生体が検出されたとき警告等を行うための入室報知部131と、生理量の閾値や範囲を設定する判定範囲設定部132とを備えている。
【0028】
次に、浴暖リモコン20は、浴室暖房機10との間でリモコンケーブルを介して通信を行うリモコン通信回路21、浴暖リモコン20の全体的な作動を制御する浴暖リモコン制御部22、及び後述する処理(図5参照)により、浴室BR内の特定の生体から警告のための閾値となる生理量を取得する処理の開始を指示する初期設定スイッチ23を備えている。また、図示していないが、閾値となる生理量を、例えば、心拍数「100(回/分)」のように直接的に設定する操作スイッチも備えている。
【0029】
次に、給湯器30は、浴室暖房機10との間で通信を行う浴室暖房機通信回路31、給湯器30の全体的な作動を制御する給湯器制御部32、及び浴室リモコン3又は台所リモコン40の間でリモコンケーブルを介して通信を行うリモコン通信回路33を備えている。
【0030】
例えば、浴室BRに幼児が進入した場合、浴室暖房機10の生理量センサ12によりその幼児の心拍数が検出される。そして、心拍数の数値から浴室暖房制御部13で警告を行う判定範囲内か否かが判定される。警告を行うと判定された場合、その旨の信号が給湯器通信回路14から給湯器30の浴室暖房機通信回路31、リモコン通信回路33を経て、台所リモコン40に送信される。これにより、大人は、浴室BRから離れている状況でも、台所リモコン40のスピーカから発せられる警告により、浴室BR内での異常に気付くようになる。
【0031】
浴室暖房制御部13で警告を行うと判定された場合、浴室暖房機10の外部通信回路15から無線ルータ50、通信ネットワーク60を介して、通信端末70にメール等で警告メッセージを送信するようにしてもよい。
【0032】
次に、図3を参照して、浴室監視システム1の生理量検出処理のフローチャートを説明する。また、図4A図4Bの心拍数表を適宜参照して、説明を補足する。
【0033】
まず、STEP1において、生理量センサ12は、浴室BR内で生体を検出したか否かを判定する。生理量センサ12は常時オンしておいてもよいし、浴室BRを使用しない時間帯のみ浴暖リモコン20や台所リモコン40からオンしてもよい。浴室BR内で生体を検出した場合にはSTEP2に進み、検出していない場合には検出するまでループする。
【0034】
STEP2では、生理量センサ12により、浴室BR内の生体の心拍数を計測する。生体は、主に人間を想定しているが、犬や猫等のペットでもよく、水分を有する生体であれば心拍数を計測することができる。その後、STEP3に進む。
【0035】
STEP3では、計測された心拍数が閾値となる100(回/分)以上か否かを判定する。図4Aの心拍数表によれば、心拍数(平均値)が警告範囲の100〜120(回/分)の場合には、人間の4歳以下に相当し、1人で浴室BRに近づくと危険な年齢である。従って、浴室監視システム1では、心拍数100(回/分)を閾値に設定している。
【0036】
また、図4Bの心拍数表によれば、犬(小型犬)と猫の心拍数が、それぞれ180(回/分)、145(回/分)であるから、心拍数100(回/分)を閾値に設定することで、ペットが浴室BRに進入した場合についても、後述する報知の対象とすることができる。心拍数が100(回/分)以上の場合にはSTEP4に進み、100(回/分)未満の場合にはSTEP1に戻る。
【0037】
STEP4では、特定の生体が検出されたことの報知を開始する。例えば、台所リモコン40のスピーカからブザーを鳴らしたり、「浴室に幼児が入りました。」等の警告が発せられる。その後、STEP5に進む。
【0038】
最後に、STEP5では、報知が解除されたか否かが判定される。例えば、大人が浴室BRに進入した幼児やペットを浴室BRの外に連れ出して、浴暖リモコン20等で報知を解除する。この処理により、一連の生理量検出処理が終了する。
【0039】
今回、閾値を心拍数100(回/分)としたが、家族構成によって閾値を適宜変更することができる。また、浴室BRに1人で進入すると危険な、その家庭の幼児の心拍数を閾値として設定することもできる。
【0040】
次に、図5を参照して、上述の閾値を、家庭内の幼児の心拍数に設定する初期設定処理のフローチャートを説明する。
【0041】
まず、STEP11において、報知する対象となる幼児を浴室BRに入室させた状態で、大人が浴暖リモコン20の初期設定スイッチ23(本発明の「操作部」に相当する)をオンする。判定範囲設定部132(図2参照)は、この操作により、報知する心拍数の範囲又は閾値の設定処理を開始する。
【0042】
なお、初期設定スイッチ23がオンされた後、生理量センサ12によるセンシングが安定して行われるようになるまで、所定の時間を必要とする。その後、STEP12に進む。
【0043】
STEP12では、生理量センサ12により、浴室BR内での生体の検出が開始される。その後、STEP13に進む。
【0044】
STEP13では、生理量センサ12により、生体の検出時間tが10秒を超えたか否かが判定される。検出時間tが10秒を超えた場合には、その生体について心拍数の計測が可能と判断してSTEP14に進み、10秒以下である場合には10秒を超えるまでループする。
【0045】
STEP14では、生理量センサ12により、浴室BR内の生体の心拍数を計測する。これにより、浴室BRにいる幼児の心拍数を計測することができる。その後、STEP15に進む。
【0046】
最後に、STEP15では、STEP14で計測された心拍数(例えば、105(回/分)とする)−αを閾値として設定する。ここで、「α」は、生体の状態による心拍数の変化を考慮して決定した調整値である。次回より、生理量検出処理(図3参照)にて、心拍数が105(−α)以上であった場合に報知が行われるようになる。この処理により、一連の初期設定処理が終了する。
【0047】
生理量は、脈拍数、呼吸数又は血圧であってもよい。脈拍数や呼吸数も人間の年齢に応じた傾向があるため、閾値を設定することで警告するか否かの判定に用いることができる。また、呼吸の波形を確認して、大人か子供かを判定し、警告するようにしてもよい。
【0048】
測定する生理量は、その絶対値に限られない。例えば、生理量を所定時間測定して、生理量の変化の傾き(変化度合)を取得する。そして、その傾きの傾向が子供のものである場合に、警告するようにしてもよい。
【0049】
また、生理量センサ12の設置場所は、浴室BRに限られない。脱衣室DR内(例えば、浴室ドア4の開放時に浴室BR内が見える位置)に設けられた生理量センサによる検出エリアを浴室BR内に設定して、浴室BRに入室している生体の生理量を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…浴室監視システム、2…浴槽、3…浴室リモコン、4…浴室ドア、10…浴室暖房機、11…リモコン通信回路、12…生理量センサ、13…浴室暖房制御部、14…給湯器通信回路、15…外部通信回路、20…浴暖リモコン、21…リモコン通信回路、22…浴暖リモコン制御部、23…初期設定スイッチ、30…給湯器、31…浴室暖房機通信回路、32…給湯器制御部、33…リモコン通信回路、40…台所リモコン、50…無線ルータ、60…通信ネットワーク、70…通信端末、131…入室報知部、132…判定範囲設定部。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5