特許第6754259号(P6754259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754259
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】バイオセンサ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20200831BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01N27/327 353A
   G01N27/327 353F
   G01N27/416 338
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-191802(P2016-191802)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-75939(P2017-75939A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-204036(P2015-204036)
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503195850
【氏名又は名称】有限会社アルティザイム・インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(72)【発明者】
【氏名】兼田 悠
(72)【発明者】
【氏名】奥田 順子
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/020149(WO,A1)
【文献】 特開2009−014485(JP,A)
【文献】 特表2012−522226(JP,A)
【文献】 特開平01−144562(JP,A)
【文献】 特開昭64−028556(JP,A)
【文献】 特開昭63−133053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0321277(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27−49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用極を含む複数の電極と、
前記作用極との間で電子授受を行う酵素と架橋剤と導電性ポリマーとを含むとともに、前記作用極との接触面積が所定面積で規定されている検知層と、
前記作用極が露出する開口部を残して前記作用極を被覆した絶縁層と、を含み、
前記検知層は、前記開口部に充填されている
バイオセンサ。
【請求項2】
前記所定面積で前記作用極に塗布された前記検知層の材料が前記作用極上で固化している
請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記検知層が前記酵素の比活性に基づく反応速度に応じて予め決定した接触面積で前記作用極上に固定されている
請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のバイオセンサを複数備えたバイオセンサユニットであって、各バイオセンサにおける前記酵素が同じ反応速度を有するともに、前記接触面積が略同一である、バイオセンサユニット。
【請求項5】
絶縁性基板上に作用極を含む複数の電極を形成する工程と、
前記作用極との間で電子授受を行う酵素と架橋剤と導電性ポリマーを含み、且つ前記作用極との接触面積が所定面積で規定されている検知層を前記作用極上に形成する工程と
を含み、
前記検知層を前記作用極上に形成する工程は、前記作用極が露出する開口部を残して前記作用極の上部を絶縁層で被覆し、前記開口部に前記検知層の材料を充填することを含むバイオセンサの製造方法。
【請求項6】
前記検知層を前記作用極上に形成する工程は、前記検知層の材料を前記作用極上に塗布することを含む
請求項に記載のバイオセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基板上に形成した2以上の電極上に、少なくとも酸化還元酵素と電子伝達メディエータ(「電子伝達物質」,「電子伝達体」とも呼ばれる)とを含む試薬層が配置されたバイオセンサが知られている。このタイプのバイオセンサでは、まず測定対象物質と酸化還元酵素との間で電子の授受が行われ、さらに電子が電子伝達メディエータを介して電極へ移動することで生じる電流値が測定される。
【0003】
上記のような電子伝達メディエータを含む試薬層を用いるバイオセンサとしては、例えば、対電極、測定電極および検知電極上に、酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼ、電子伝達体としてフェリシアン化カリウム等を含有する試薬層を形成したバイオセンサがある(例えば、特許文献1参照)。このバイオセンサでは、酵素と電子伝達体が含まれる試薬層が検体供給路に吸引された血液に溶解し、血液中の基質であるグルコースとの間で酵素反応が進行し電子伝達体が還元されて還元型電子伝達体が形成される。この還元型電子伝達体を電気化学的に酸化し、このとき得られる電流値から血液中のグルコース濃度が測定される。
【0004】
電子伝達メディエータを含む試薬層を用いるバイオセンサの感度は、試薬層が溶解した試料と、該試料との間で電子授受を行う作用極との接触面積に依存する。このため、試料と作用極との接触面積にばらつきがあると、バイオセンサの感度がばらつく。一方で、試薬層が該試料によって溶解し、試薬が拡散され、結果として試料と作用極との接触面積を一定にすることが困難である。これらの問題に鑑み、例えば、酵素と電子伝達物質(例えばルテニウム錯体や鉄錯体)を含む試薬層を備えるバイオセンサであって、作用極における試料との接触面積を規制するための第1の規制要素と、作用極及び対極のうちの少なくとも一方における電子授受を行う有効面積を規制するための第2の規制要素とを含むバイオセンサがある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたようなバイオセンサでは、作用極の有効面積が一定にされることで、感度のばらつきが抑えられる。
【0005】
さらに、本願に関連する先行技術としては、以下のような電極片がある。電極片は、基部層よりも小さく形成されると共に、第一の片端と通気口との間に少なくとも3つの収容切取部を有し、第二の片端において、少なくとも3つの電極を含む基部層の一部分が露出されると共に、少なくとも3つの電極が少なくとも3つの収容切取部にて露出されるように基部層上に載せられた試薬形成層を含む。また、電極片は、少なくとも3つの収容切取部のうち、少なくとも3つの電極のうちの参照極が露出された収容切取部内に置かれ、少なくとも3つの電極のうちの第一の作用電極及び第二の作用電極を機能させる第一の試薬と、少なくとも3つの収容切取部のうち、第二の作用電極が露出された収容切取部内に置かれ、検体を基質とする酵素を含有している第二の試薬と、少なくとも3つの収容切取部のうち、第一の作用電極が露出された収容切取部内に置かれ、酵素を含有しない第三の試薬と、を含んでいる(例えば、特許文献3参照)。なお、特許文献3に記載のバイオセンサも、電子伝達メディエータを含む試薬層を用いるタイプのバイオセンサであり、電子伝達メディエータ(レドックス媒介物)として、フェロセン、フェリシアン化カリウム、その他のフェロセン誘導体のうちの少なくとも一つが用いられることが記載されている。
【0006】
近年、絶縁性基板上に形成した2以上の電極の少なくとも1つの電極上に、少なくとも酸化還元酵素を含む試薬層が配置された、電気化学測定セル内に試料を導入し、電極に電
圧を印加し、試料内の測定対象物質に由来する電子の電極への移動に基づく電荷移動律速電流を検出し、前記電荷移動律速電流に基づき試料中に含まれる測定対象物質の濃度を決定するバイオセンサを用いた物質の測定方法が見出された。このような測定方法では、電子伝達メディエータを含んでいない試薬層が用いられる(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−147990号公報
【特許文献2】国際公開第2009/057791号
【特許文献3】特許第4060078号公報
【特許文献4】国際公開第2015/020149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1にて開示されたような、電荷移動律速電流を測定する酵素電極(「電荷移動律速酵素電極」と呼ぶ)では、試薬層と電極との接触面積に依存して応答電流値が変化する。このため、例えば、電荷移動律速酵素電極の製造工程において、単に電極上に試薬を滴下するような試薬層の形成がなされると、試薬層と電極との接触面積にばらつきが生じる。この結果として、応答電流値が酵素電極(バイオセンサ)間でばらつく、即ち、良好な測定精度(同時再現性と呼ばれることもある)が得られないおそれがあった。
【0009】
なお、特許文献3に開示された技術では、電荷移動律速酵素電極は用いられておらず、応答電流の測定方法が異なる。特許文献3に開示された技術は、測定方法の相違に起因して、参照極,第一作用極,及び第二作用極のそれぞれに第一の試薬,第二の試薬,第三の試薬を載せている。そして、アスコルビン酸、尿酸、またはアセトアミノフェンのような干渉物質による影響を補正することを目的として、少なくとも3つの収容切取部は、収容切取部にて露出する第一作用極及び第二作用極の面積を同じにするために設けられている。従って、電荷移動律速酵素電極を用いた測定対象物質そのものの測定方法についてはなんら示唆されていない。
【0010】
本発明は、測定対象物質の測定精度を向上させることが可能なバイオセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、作用極を含む複数の電極と、前記作用極との間で電子授受を行う酵素と架橋剤と導電性ポリマーとを含むとともに、前記作用極との接触面積が所定面積で規定されている検知層と、を含むバイオセンサである。
【0012】
本発明に係るバイオセンサでは、前記所定面積で前記作用極に塗布された前記検知層の材料が前記作用極上で固化しているようにしても良い。
【0013】
また、本発明に係るバイオセンサでは、前記作用極が露出する開口部を残して前記作用極を被覆した絶縁層をさらに含み、前記検知層は、前記開口部に充填されているようにしても良い。
【0014】
また、本発明に係るバイオセンサでは、前記検知層が前記酵素の反応速度に応じた接触面積で前記作用極上に固定されているようにしても良い。また、本発明の他の側面は、上記バイオセンサを複数備えたバイオセンサユニットであって、各バイオセンサにおける前記酵素が同じ反応速度を有するともに、前記接触面積が略同一である、バイオセンサユニットである。
【0015】
また、本発明の他の側面は、絶縁性基板上に作用極を含む複数の電極を形成する工程と、前記作用極との間で電子授受を行う酵素と架橋剤と導電性ポリマーを含み、且つ前記作用極との接触面積が所定面積で規定されている検知層を前記作用極上に形成する工程とを含むバイオセンサの製造方法である。
【0016】
本発明に係るバイオセンサの製造方法では、前記検知層を前記作用極上に形成する工程は、前記検知層の材料を前記作用極上に塗布することを含むようにしても良い。
【0017】
また、本発明に係るバイオセンサの製造方法では、前記検知層を前記作用極上に形成する工程は、前記作用極が露出する開口部を残して前記作用極の上部を絶縁層で被覆し、前記開口部に前記検知層の材料を充填することを含むようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定対象物質の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係るバイオセンサの構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示したバイオセンサのA−A断面図である。
図3図3は、測定装置の構成例を示す図である。
図4図4は、測定装置の処理例を示すフローチャートである。
図5図5は、比較例1に係るバイオセンサの構成例を示す図である。
図6図6は、実施例1のバイオセンサを用いてクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示すグラフである。
図7図7は、比較例1のバイオセンサを用いてクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示すグラフである。
図8図8は、実施例2のバイオセンサを用いてクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示すグラフである。
図9図9は、比較例2のバイオセンサを用いてクロノアンペロメトリー測定を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に挙げる実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0021】
実施形態に係るバイオセンサは、作用極を含む複数の電極と、作用極との間で電子授受を行う酵素と架橋剤と導電性ポリマーを含むとともに、前記作用極との接触面積が制御された状態で作用極上に固定された検知層とを含む。
【0022】
実施形態のバイオセンサによる測定対象物質は、当該バイオセンサを用いて測定可能な物質である限り特に制限されない。もっとも、測定対象物質は、生体由来の物質であって疾患や健康状態の指標となり得る物質であることが好ましい。測定対象物質は、例えば、グルコースやコレステロールなどである。試料は、測定対象物質を含む試料であれば特に制限されない。試料は、生体試料が好ましい。生体試料は、例えば、血液、尿などである。
【0023】
実施形態のバイオセンサの測定対象は、測定対象物質に由来する電子の電極への移動に基づく電荷移動律速電流である。電荷移動律速電流は、酵素と測定対象物質との反応によって該酵素から電極へ電子が移動する際に生じる電流である。電荷移動律速電流は、時間に依存しない定常電流であり、好ましくは電気二重層の充電による過渡電流発生後の定常
電流である。
【0024】
電荷移動律速電流は、以下の式(1)で表される。式(1)から、電流は基質の濃度と酵素反応速度定数に比例することがわかる。式(1)は、定数項をXとすると式(2)に展開できる。なお、式(1)、(2)には示していないが、定数項Xに補正係数などが含まれても良い。
【数1】



【数2】
【0025】
式(1)は、酵素反応の初速度式と酵素から電極への電子移動速度の式を考慮し、これらが等価にある状態で式展開を行うことで導出されたものである。実施形態に係るバイオセンサは、例えば、上記式(1)、(2)を用いて測定対象物質(基質)の濃度を測定する。
【0026】
式(1)は、酵素反応の初速度式におけるコットレル電流に含まれる拡散係数を含まない電荷移動律速による電流式である。式(1)からも分かるように、電流は酵素反応速度定数に比例する。実施形態に係る測定対象物質の測定方法では、電子受容物質などのメディエータによる酸化還元反応を介することなく、電極へ電子が移動する。このため、電荷移動律速電流は、物質の拡散の影響を受けず、時間の依存性もないことがわかる。
【0027】
なお、電極系が、電荷移動律速であることは、サイクリックボルタンメトリーなどによってピークの有無や電圧の掃印方向による電流の増加傾向を調べることにより確認することができる。
【0028】
実施形態に係るバイオセンサの検知層は、酵素と、架橋剤と、導電性ポリマーとを含んでおり、電子伝達メディエータを含んでいない。電荷移動律速電流を測定するためには、作用電極を“直接電子移動型の酵素電極”とすることが好ましい。ここで、“直接電子移動型の酵素電極”とは、検知層(試薬層)での酵素反応により生じた電子が、電子伝達メディエータのような酸化還元物質が関与することなく直接(導電性ポリマーを介する場合もある)に電極に伝達されることによって、酵素と電極間の電子授受が行われるタイプの酵素電極である。
【0029】
検知層内において、酵素の分子は、架橋剤によって架橋され、さらに、導電性ポリマーによって複雑に絡み合った構造を有する。酵素反応により生じた電子は、直接的に、または、導電性を有する導電性ポリマーを伝って電極に移動することができる。このように、実施形態に係るバイオセンサでは、検知層における直接電子移動によって酵素と電極との間で電子授受が行われる。
【0030】
なお、生理学的反応系において直接電子移動が起こる限界距離は1〜2nmと云われている。電極と酵素とで形成される電気化学的な反応系における電子授受においても、電極と酵素との距離が上記限界距離より長い場合には、メディエータの移動(例えば拡散による移動)を伴わない限り、電極上での電子授受の検知が困難となる。よって、検知層内では、酵素の活性部位(酵素反応により電子を生じる部位)と、導電性ポリマーの導電性部位とが電子移動に好適な距離関係を有している。すなわち、好適な電子移動が起こる程度に導電性部位が活性部位と近い状態となっている。
【0031】
実施形態に係るバイオセンサでは、作用極との接触面積が所定面積で規定されている検知層が作用極上に形成される。すなわち、作用極と検知層との接触面積が規定される。単なる液体の検知層材料の滴下ではなく、複数の電極のうち作用極のみに検知層材料を塗布する(塗る)ことで、検知層と作用極との接触面積を規定することができる。これによって、式(1)中の「A:電極面積」と、「n:反応電子数」とを一定にすることができる。従って、バイオセンサの固体間での応答電流のばらつきを抑え、同時再現性の向上を図ることができる。
【0032】
また、検知層と作用極との接触面積を規定するために、電極が形成された絶縁性基材上に絶縁層を形成することが例示できる。絶縁層は、その底面で作用極が露出するように形成され、検知層材料が充填される開口部を有する。開口部は、一繋がりの内壁面を有し、開口部に充填される検知層の材料の拡散範囲が開口部内に規制される。充填された検知層の材料が乾燥等により固化することで、開口部に充填された(開口部を埋める)検知層が形成される。当該開口部の底面積は、検知層と作用極との接触面積に合致するサイズを有し、少なくとも開口部の底を埋め尽くす量の検知層材料が開口部に充填される。これによって、作用極との接触面積が規定された(所定面積で作用極と接する)検知層を作用極上に容易に形成することができる。絶縁層は、例えば、不導体インク(レジストインクともいう)のスクリーン印刷によって形成することができる。また、絶縁層は、作用極と検知層との接触面積を規定し得る開口部が形成できる限り、スクリーン印刷以外に、フォトレジストなどの種々のレジスト及び絶縁テープによる加工等を用いて形成し得る。
【0033】
別の利用方法として、検知層と作用極との接触面積は、酵素の反応速度に応じて決定することができる。酵素の反応速度は、比活性が異なるロット間で異なる場合がある。このため、酵素の反応速度に応じた検知層と作用極との面積を予め実験等で求めておき、酵素のロット毎にその反応速度に応じた接触面積で検知層を形成する。これによって、ロット間における同時再現性のばらつきを抑えることができる。
【0034】
以下、実施形態におけるバイオセンサの一例について説明する。
<バイオセンサの構成>
図1は、実施形態に係る酵素電極を含んだバイオセンサの構成を模式的に示す図であり、図2は、図1に示したバイオセンサの積層状態をA−A線で切断したときの断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、バイオセンサ1は、絶縁製基板2,絶縁性基板2上に形成された複数の電極3(作用極3A,対極3B,参照極3C),及び複数の電極3の一部を被覆する絶縁層4(図1中、破線で示す)とを含む酵素電極と、スペーサ5と、カバー6
とを含む。バイオセンサ1は、酵素電極と、スペーサ5と、カバー6とが積層されて一体化することで形成される。絶縁性基板2と電極3の組み合わせは「基材」と呼ばれる。
【0036】
<<酵素電極>>
酵素電極は、上記のように、絶縁性基板2と、電極3と、絶縁層4とから形成されている。
(絶縁性基板)
絶縁性基板2は、長手方向と幅方向とを有する平板状に形成されている。絶縁性基板2は、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)のような熱可塑性樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂のような各種の樹脂(プラスチック)、ガラス、セラミック、紙のような絶縁性材料で形成される。
【0037】
(電極)
電極3は、絶縁性基板2の片面上に形成されている。電極3は、絶縁性基板2の幅方向にそれぞれ延びる帯状の作用極3Aと、対極3Bと、参照極3Cとからなる。作用極3A,対極3B,及び参照極3Cは、絶縁性基板2の長手方向の一端(図1中の下端)から他端(図1中の上端)に向かって対極3B,作用極3A,参照極3Cの順に配置されている。
【0038】
作用極3A及び対極3Bは、絶縁性基板2の長手方向に延びるリード部3a,リード部3bとそれぞれ一体に形成されている。参照極3Cは、絶縁性基板2の長手方向に延びるリード部3cの一端部(図1中の下端)上に形成されている。
【0039】
作用極3A,対極3B,各リード部3a,3b,3cは、例えば、金(Au),白金(Pt),銀(Ag),パラジウムのような金属材料、或いはカーボンのような炭素材料を用いて形成することができる。参照極3Cは、例えば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)を用いて形成さ
れる。もっとも、参照極3Cは、作用極3A,対極3Bと同様の材料を用いて形成し得る。
【0040】
なお、電極3をなす電極材料及び絶縁性基板2の材料は、公知のあらゆる材料を適用することができる。電極3及び絶縁性基板2の大きさ、厚さは適宜設定可能である。
【0041】
(絶縁層)
図1に示すように、電極3が設けられた絶縁性基板2の片面は、絶縁層4で被覆される。絶縁層4は、開口部4a,開口部4b,開口部4cを有する。開口部4aは、作用極3A上に形成され、作用極3Aの一部が露出するように形成される。
【0042】
開口部4aは、図2に示すように、検知層8を形成するための空間であり、開口部4a内に検知層8が形成される。図2の例では、開口部4aは、平面形状が円形で、一繋がりの内壁面(円柱の側面)を有する形状に形成されている。開口部4aの底面積は、作用極3A上に形成され、作用極3Aと接触する検知層8の接触面積に合わせて形成される。底面積が規定された開口部4aを用いて検知層8を形成することで、作用極3Aと検知層8との接触面積が規定される。検知層8の構成要素の詳細は後述する。
【0043】
開口部4aの平面形状は、図1に示す例では円形であり、内壁面が円柱の側面である。但し、開口部4aがテーパ状に形成され、内壁面が円錐台の側面形状に形成されていても良い。充填される検知層材料の拡散範囲を規制する一繋がりの内壁面を形成できる限り、開口部4aの平面形状や内壁面の形状は、適宜設定可能である。例えば、開口部4aの平面形状は、楕円形,三角形,四角形,5以上の辺からなる多角形であっても良い。また、開口部4aの内壁面の形状は、平面形状に対応する柱の側面形状であっても、平面形状に
対応しない柱の側面形状であっても良い。すなわち、開口部4aの形状は検知層8と作用極3Aとの接触面積を所定面積に規定することができる限り適宜設定可能である。
【0044】
開口部4bは、参照極3Cの一部と絶縁性基板2の一部とが露出するように形成されている。また、開口部4cは、対極3Bの一部と絶縁性基板2の一部とが露出するように形成されている。開口部4b及び開口部4cの面積は特に規定することを要しない。なお、絶縁性基板2の長手方向の他端部は、絶縁層4で被覆されておらず、露出したリード部3a,3b,3cのそれぞれは、電極取り出し部として使用される。
【0045】
絶縁層4は、例えば、レジストインク(不導体イング)を用いたスクリーン印刷,或いは、絶縁膜を用いて形成される。レジストインクとしては、例えば、絶縁性樹脂ポリエステルインク(アサヒ化学研究所製 UVFシリーズ)を適用できる。絶縁膜としては、例えば、ZEOCOAT CP1010(日本ゼオン株式会社)を適用できる。或いは、例えば、樹脂製の板に開口部4a,4b,4cに対応する切り欠きを形成した樹脂製の板をスペーサ5と電極3との間に配置することも考えられる。
【0046】
<<スペーサ>>
スペーサ5は、長手方向と幅方向とを有する平板状に形成されており、その一端部(図1中の下端部)にスリット5aが形成されている。スペーサ5は、絶縁層4上に積層されて固定される。このとき、スリット5a内において、対極3B,参照極3Cが露出し、且つ開口部4a内に形成(固定化)された検知層8が露出する。
【0047】
<<カバー>>
カバー6は、長手方向と幅方向とを有する平板状に形成されており、スペーサ5のスリット5aに対応する空気孔6aが形成されている。カバー6は、スペーサ5上に積層されて固定される。これにより、スペーサ5やカバー6で囲まれた空間がキャピラリとして機能する。スリット5aにて形成された開口部(図2のバイオセンサ1の一端(図2中の左側の端部))から導入される試料は、毛管現象により空気孔6aへ向かってキャピラリ内に導入される。
【0048】
<<検知層>>
検知層8は、図2に示すように、開口部4a内に形成(固定化)される。検知層8は、少なくとも酵素と、架橋剤と、導電性ポリマーとを含む。さらに、検知層8は、糖及び導電性粒子の少なくとも一方を含むことができる。
【0049】
(酵素)
酵素としては、例えば、酸化還元酵素が挙げられる。酸化還元酵素は、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ガラクトースオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、D−又はL−アミノ酸オキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、L−乳酸オキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、チトクロムオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、17Bヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、エストラジオール17Bデヒドロゲナーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、チトクロムオキシドレダクターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルタチオンレダクターゼ等である。中でも、糖類の酸化還元酵素であることが好ましい。糖類の酸化還元酵素の例としては、例えば、グルコースオキシダーゼ(
GOD)、ガラクトースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼを挙げることができる。
【0050】
また、酸化還元酵素は、触媒サブユニット及び触媒ドメインとして、ピロロキノリンキノン(PQQ)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)のうち少なくとも一方を含むことができる。例えば、PQQを含む酸化還元酵素として、PQQグルコースデヒドロゲナーゼ(PQQGDH)が例示できる。FADを含む酸化還元酵素として、FADを含んだαサブユニットを持つシトクロムグルコースデヒドロゲナーゼ(Cy−GDH)、グルコースオキシダーゼ(GOD)を例示することができる。
【0051】
また、酸化還元酵素は、電子伝達サブユニット若しくは、電子伝達ドメインを含むことができる。電子伝達サブユニットとしては、例えば、電子授受の機能を持つヘムを有するサブユニットが挙げられる。このヘムを有するサブユニットを含む酸化還元酵素としては、シトクロムを含むものが挙げられ、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼや、PQQGDHとシトクロムとの融合蛋白質を適用することができる。
【0052】
また、電子伝達ドメインを含む酵素としては、コレステロールオキシダーゼ、キノヘムエタノールデヒドロゲナーゼ(QHEDH (PQQ Ethanol dh)が挙げられる。さらに、電子伝達ドメインは、電子授受の機能を持つヘムを有するシトクロムを含むドメインを適用するのが好ましい。例えば、"QHGDH" (fusion enzyme; GDH with heme domain of QHGDH)、ソルビトールデヒドロゲナーゼ(Sorbitol DH)、D-フルクトースデヒドロゲナーゼ(Fructose DH)、Agrobacterium tumefasience由来のグルコース-3-デヒドロゲナーゼ(Glucose-3-Dehydrogenase)(G3DH from Agrobacterium tumefasience)、セロビオースデヒドロゲナーゼが挙げられる。
【0053】
なお、上述したシトクロムを含むサブユニットの例示であるPQQGDHとシトクロムとの融合蛋白質、及びシトクロムを含むドメインの例示であるPQQGDHのシトクロムドメインは、例えば、国際公開WO2005/030807号公報に開示されている。
【0054】
また、酸化還元酵素は、少なくとも触媒サブユニットおよび電子受容体の機能を持つヘムを有するシトクロムを含むサブユニットから構成されているオリゴマー酵素を適用することができる。
【0055】
なお、測定対象物質は、酸化還元酵素の基質であればよい。例えば、セロビオースデヒドロゲナーゼは、セロビオースを酸化するが、グルコースも酸化するため、グルコースを測定対象物質として用いることもできる。
【0056】
(導電性ポリマー)
導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリスチレンスルホネート、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリエチレンジオキシチオフェン(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート))、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。これらの市販品として、例えば、ポリピロールとして、例えば、「SSPY」(3−メチル−4−ピロールカルボン酸エチル)(化研産業株式会社製)等がある。また、ポリアニリンとして、例えば「AquaPASS01−x」(ティーエーケミカル社製)等がある。また、ポリスチレンスルホネートとして、例えば「ポリナス」(東ソー有機化学株式会社製)等がある。ポリチオフェンとして、例えば「エスペイサー100」(ティーエーケミカル社製)等がある。ポリイソチアナフテンとして、例えば「エスペイサー300」(ティーエーケミカル社製)等がある。ポリエチレンジオキシチオフェン(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート))として、例えば、「PEDOT−PSS」(Polyscience,Inc.)等があ
る。また、様々な属性(例えば、水溶性)を有する導電性ポリマーを適用することができる。導電性ポリマーの官能基は、水酸基又はスルホ基を有することが好ましい。
【0057】
(架橋剤)
架橋剤(バインダー)の種類として、具体的には、アルデヒド基含有化合物として、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、マロンアルデヒド、テレフタルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、シンナムアルデヒド、ニコチアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリコアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジプアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。カルボジイミド基含有化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ジイソシアネートドデカン、ノルボルナンジイソシアネート、2,4−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
また、カルボジイミド基含有化合物は、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトV−06、カルボジライトE−02、カルボジライトV−01、カルボジライトV−03、カルボジライトV−05、カルボジライトV−07、カルボジライトV−09(何れも商品名、日清紡績株式会社製)などとして市販されている。
【0059】
マレイミド基含有化合物として、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート、m−マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル、N−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン1−カルボキシレート、N−スクシニミジル−2−マレイミド酢酸、N−スクシニジル−4−マレイミド酪酸、N−スクシニジル−6−マレイミドヘキサン酸、N-スク
シニジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スルホスクシニジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スクシニジル−4−マレイミドメチル安息香酸、N−スクシニジル−3−マレイミド安息香酸、N-スクシニ
ジル−4−マレイミドフェニル−4−酪酸、N−スルホスクシニジル−4−マレイミドフェニル−4−酪酸、N,N’−オキシジメチレン−ジマレイミド、N,N’−o−フェニレン-ジマレイミド、N,N’−m−フェニレン−ジマレイミド、N,N’−p−フェニレン-ジマレイミド、N,N’−ヘキサメチレン−ジマレイミド、N−スクシニジルマレイミド
カルボン酸などが挙げられる。また、サンフェルBM−G(三新化学工業株式会社製)などの市販品も挙げられる。
【0060】
オキサゾリン基含有化合物として、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン− ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサ
ゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィドなどのオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0061】
また、付加重合性オキサゾリン化合物として2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニ
ル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上の化合物を重合または共重合したものを使用可能である。
【0062】
また、オキサゾリン基含有化合物は、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−1010E、エポクロスK−1020E、エポクロスK−1030E、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスRPS−1005、エポクロスRAS−1005 (いずれも株式会社日本触媒社製)、NKリンカーFX(新中村化学工業株式会社製)などとして市販されている。
【0063】
エポキシ基含有化合物として、具体的には、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、などが挙げられ、これらの化合物を2種以上併用して用いることもできる。またエポキシ基含有化合物は、デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−512、デナコールEX−521、デナコールEX−421、デナコールEX−313、デナコールEX−314、デナコールEX−321、デナコールEX−810、デナコールEX−811、デナコールEX−850、デナコールEX−851、デナコールEX−821、デナコールEX−830、デナコールEX−832、デナコールEX−841、デナコールEX−861、デナコールEX−911、デナコールEX−941、デナコールEX−920、デナコールEX−145、デナコールEX−171(いずれも商品名、ナガセケムテックス株式会社製)、SR−PG、SR−2EG、SR−8EG、SR−8EGS、SR−GLG、SR−DGE、SR−4GL、SR−4GLS、SR−SEP(いずれも商品名、阪本薬品工業株式会社製)、エポライト200E、エポライト400E、エポライト400P(いずれも共栄社化学株式会社製)、などとして市販されている。
【0064】
架橋剤の種類は、上記化合物、市販品に限定されず、アルデヒド基、マレイミド基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基の少なくとも1つの官能基を含む化合物であってもよい。また架橋剤の形態も限定されず、モノマー、ポリマーの何れの形態であっても良い。
【0065】
(糖)
糖は酵素の基質とならない糖であり、糖の構成糖の数は、例えば、1〜6であり、好ましくは2〜6である。これらはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であっても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。ただし、グルコースなどの糖を測定対象とするときは、糖として、測定対象の糖とは異なる糖であって、酵素の基質とならない糖を用いる。
【0066】
二糖類としては、キシロビオース、アガロビオース、カラビオース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、セロビオース、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、イヌロビオース、ビシアノース、イソプリメベロース、サンブビオース、プリメベロース、ソラビオース、メリビオース、ラクトース、リコビオース、エピセロビオース、スクロース、ツラノース、マルツロース、ラクツロース、エピゲンチビオース、ロビノビオース、シラノビオース、ルチノース等が挙げられる。
【0067】
三糖類としては、グルコシルトレハロース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチ
アノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレンジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロースなどが挙げられる。
【0068】
四糖類としては、マルトシルトレハロース、マルトテトラオース、スタキオースなどが挙げられる。五糖類としては、マルトトリオシルトレハロース、マルトペンタオース、ベルバスコースなどが挙げられる。六糖類としてはマルトヘキサオースなどが挙げられる。
【0069】
(導電性粒子)
検知層8はさらに導電性粒子を含むことができる。導電性粒子は、金、白金、銀、パラジウムのような金属製粒子、或いは、炭素を材料とした高次構造体を適用することができる。高次構造体は、例えば、導電性カーボンブラック,カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンから選択される微粒子(炭素微粒子)の1種以上を含有することができる。導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック(デグザ製)、ブラックパール(キャボット)などが挙げられる。
【0070】
また、作用極3A上の検知層8は、導電性高分子を含み得る。導電性高分子としては、水溶性のものが好ましく、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、代表例として、三菱レイヨン製スルホン化ポリアニリン水溶液(商品名アクアパス)が挙げられる。
【0071】
<バイオセンサの作製方法>
上記したバイオセンサ1は、例えば、以下のようにして作製される。すなわち、絶縁性基板2の片面に、電極3として機能するカーボン層を形成する。例えば、所定の厚さ(例えば100μm程度)のフィルム状の絶縁性基板2の片面に、カーボンインクをスクリーン印刷する。これにより、所望の厚さ(例えば10μm程度)を有するカーボン膜が形成される。カーボン層の代わりに、金属材料を物理蒸着(PVD,例えばスパッタリング)、或いは化学蒸着(CVD)によって成膜することによって、所望の厚さ(例えば30nm程度)を有する金属層を形成することもできる。
【0072】
次に、電極3上に絶縁層4が形成される。絶縁層4は、例えば、レジストインクを用いたスクリーン印刷により、絶縁層4のパターンニングを行うことで形成される。
【0073】
次に、電極3上に検知層8が形成される。すなわち、酵素、導電性ポリマー、架橋剤などを含有する溶液(試薬)が調製される。試薬は、糖及び導電性粒子の少なくとも一方を含んでも良い。糖を含める場合には、糖の濃度は0.1〜2重量%が好ましく、0.2〜2重量%がより好ましい。溶液(試薬)は、絶縁層4の開口部4aに滴下され、開口部4a内に充填される。開口部4a内の溶液(試薬)が作用極3A上で乾燥により固化することで、作用極3A上に検知層8が形成される。
【0074】
なお、開口部4aにペースト状或いはゲル状の試薬を充填し、固化させることで検知層8を形成しても良い。また、絶縁層4を形成することなく、作用極3A上にペースト状或いはゲル状の検知層8を、作用極3Aと検知層8との接触面積が所定面積となるようにスクリーン印刷し、乾燥により固化させることで検知層8を形成しても良い。
【0075】
検知層8の形成後、基材上にスペーサ5を重ねて接着し、さらに、スペーサ5上にカバー6を重ねて接着することで、バイオセンサ1を得ることができる。
【0076】
上述した構成を有するバイオセンサ1を複数備えたバイオセンサユニットが形成されても良い。この場合、各バイオセンサにおける酵素が同じ反応速度を有するともに、検知層
8が作用極3Aと接する面積が略同一であるように、バイオセンサユニットは形成される。「略同一」とは、例えば、各バイオセンサにおける検知層と作用極との接触面積が、指定された所定面積(指定値(理論値ともいう))に対して誤差8%以内の範囲にあることをいう。但し、誤差の範囲は4%以内としても良く、或いは2%以内としても良い。
【0077】
<測定装置>
図3は、バイオセンサ1を用いて測定対象物質の濃度を測定する測定装置の構成例を示す図である。図3に示すグルコースセンサ17は、バイオセンサ1の一例であり、図1及び図2を用いて説明した構成を有する。測定装置Bは、当該グルコースセンサ17を使用してグルコース(血糖)濃度を測定するグルコース測定装置である。但し、以下に説明する測定装置Bの構成は例示であり、本発明の測定装置は以下の態様には限定されない。
【0078】
図3は、測定装置B内に収容された主な電子部品の構成例を示す。図3において、制御コンピュータ18,ポテンショスタット19,電力供給装置11が、筐体内に収容された基板20上に設けられている。
【0079】
制御コンピュータ18は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit:
中央演算処理装置)のようなプロセッサと、メモリ(例えばRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory))のような記録媒体と、通信ユニットを含んでいる。プロセッサが記録媒体(例えばROM)に記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することによって、制御コンピュータ18は、出力部10、制御部12、演算部13及び検出部14を備えた装置として機能する。なお、制御コンピュータ18は、半導体メモリ(EEPROM,フラッシュメモリ)やハードディスクのような、補助記憶装置を含んでいても良い。
【0080】
制御部12は、電圧印加のタイミング,印加電圧値などを制御する。電力供給装置11は、バッテリ16を有しており、制御コンピュータ18やポテンショスタット19に動作用の電力を供給する。なお、電力供給装置11は、筐体の外部に置くこともできる。
【0081】
ポテンショスタット19は、作用極3Aの電位を参照極3Cに対して一定にする装置であり、制御部12によって制御される。ポテンショスタット19は、対極3B,参照極3C,作用極3Aにそれぞれ対応する端子C,R,Wを用いて、グルコースセンサ17の対極3Bと作用極3Aとの間に所定の電圧を印加し、端子Wで得られる作用極3Aの応答電流を測定し、応答電流の測定結果を検出部14に送る。
【0082】
演算部13は検出された電流値から測定対象物質(グルコース)の濃度の演算を行い、記憶する。出力部10は、表示部ユニット15との間でデータ通信を行い、演算部13による測定対象物質(グルコース)の濃度の演算結果を表示部ユニット15に送信する。表示部ユニット15は、例えば、測定装置Bから受信されたグルコース濃度の演算結果を所定のフォーマットで表示画面に表示することができる。
【0083】
図4は、制御コンピュータ18によるグルコース濃度測定処理の例を示すフローチャートである。制御コンピュータ18のCPU(制御部12)は、グルコース濃度測定の開始指示を受け付ける。制御部12は、ポテンショスタット19を制御して、作用極3Aへ所定の電圧を印加し、作用極3Aからの応答電流の測定を開始する(ステップS01)。なお、測定装置Bへのグルコースセンサ17の装着の検知が濃度測定開始指示として使用されても良い。
【0084】
電極への電圧の印加の仕方は特に制限されない。もっとも、電荷移動律速電流を効率よく測定するにはステップ印加が好ましい。印加する電圧は600mV以下であることが好ま
しく、より好ましくは100mV以下である。下限は特に制限されないが、例えば10mV以上である。
【0085】
次に、ポテンショスタット19は、電圧印加によって得られる応答電流、すなわち、試料内の測定対象物質(ここではグルコース)に由来する電子の電極への移動に基づく電荷移動律速電流を測定し、検出部14へ送る(ステップS02)。電荷移動律速電流として、電気二重層の充電による過渡電流発生後、例えば、電圧印加から1〜20秒後の定常電流が測定される。
【0086】
演算部13は、電流値に基づいて演算処理を行い、グルコース濃度を算出する(ステップS03)。例えば、制御コンピュータ3の演算部13は、作用極3A上に配置された検知層8に含まれる酵素(例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ)に対応する、グルコース濃度の計算式またはグルコース濃度の検量線データを予め保持している。演算部13は、計算式または検量線を用いてグルコース濃度を算出する。
【0087】
演算部13は、例えば、測定対象物質(グルコース)の濃度を式(1)に基づいて測定電流値から算出することができる。また、濃度既知の試料を用いて検量線を予め作成しておき、その検量線に基づいて測定電流値より算出することも可能である。また、試験により見出した補正係数を式(1)に乗じること等により、検体の濃度を算出することも可能である。この場合、式(2)の定数項Xに補正係数も含まれることとなる。応答電流の測
定として、連続的な測定を行っても良く、断続的な測定を行っても良い。
【0088】
出力部10は、グルコース濃度の算出結果を、表示部ユニット15との間に形成された通信リンクを通じて表示部ユニット15へ送信する(ステップS04)。その後、制御部12は、測定エラーの有無を検知し(ステップS05)、エラーがなければ測定を終了し、グルコース濃度を表示部に表示する。エラーがあればエラー表示をした後に、図4のフローによる処理を終了する。
【0089】
〔試験1〕
〔実施例1〕
電極3の材料として、導電性カーボンインク(アサヒ化学研究所製FTUシリーズ)を用
いた。この導電性カーボンインクをスクリーン印刷にて、絶縁性基板2としてのポリエチレンテレフタレート性シート(東レ製E-22)(長さ50mm、幅5mm、厚み250μm)の一方の表面にパターンニング印刷を行い、3電極パターンを形成した。さらに、実施例1においては、3電極パターンの一つに、銀塩化銀インク(BAS社製)を塗布し、80
℃で20分乾燥させ、銀塩化銀電極を形成し、参照極3Cとした。
【0090】
つぎに、絶縁性樹脂ポリエステルインク(アサヒ化学研究所製 UVFシリーズ)を、前記電極3上に開口部4a,4b,4cが形成されるようにスクリーン印刷することで、絶縁層4を形成した。開口部4aの底面積は、0.5mm2に設定した。
【0091】
シトクロム含有グルコースデヒドロゲナーゼ(CyGDH)、導電性粒子(ケッチェンブラ
ック)、導電助剤としての導電性高分子(ポリアニリン)およびバインダー(オキサゾリン基含有水溶性ポリマー)含む酵素試薬を調製し、開口部4a内に0.04μL滴下し、10
0℃で120分乾燥することで、検知層8を形成した。酵素試薬の最終濃度は以下の通りである。
(酵素試薬の処方)
・KJB:0.60wt%
・酵素(Cy−GDH):7mg/mL
・リン酸Na緩衝液:5mM (pH5.8)
・架橋剤(バインダー)(EPOCROS WS-700、日本触媒製)3.00%(w/v)
・ポリアニリン(アクアパス、三菱レイヨン製)0.20%(w/v)
・トレハロース0.25wt%(酵素の保護材として使用)
【0092】
〔比較例1〕
図5に比較例1に係るバイオセンサの構成例を示す。図5には、バイオセンサの一部をなす酵素電極の構成(絶縁性基板2,電極3,絶縁層4)が示されている。絶縁層4は、実施例(図1)と印刷パターンが異なり、開口部4dによって、作用極3A,対極3B及び参照極3Cが露出している。作用極3A上に、上記処方の液体試薬を0.04μL滴下し、
100℃で120分乾燥することで、検知層を形成した。上記を除く比較例1の材料、構成、サイズは実施例1と同じである。比較例1では、作用極と検知層との接触面積は制御されていない。
【0093】
<クロノアンペロメトリー測定>
実施例1及び比較例1について、クロノアンペロメトリー測定によりグルコースセンサの電極応答特性を評価した。クロノアンペロメトリー測定は、グルコースセンサの試料導入部にグルコース濃度が100mg/dL,300mg/dL,600mg/dLの全血を導入した後に
、作用極に200mVをステップ印加し、応答電流を測定することにより調べた。
【0094】
電圧印加開始から5秒後のCV値(同時再現性)を表1に示し、電圧印加開始から30秒後のCV値を表2に示す。
【表1】

【表2】
【0095】
いずれの濃度においても、実施例1のCV値は、比較例1のCV値よりも良好な値が得られた。このように、作用極上の検知層(試薬層)の面積を制御することで、CV値が向上する、すなわちバイオセンサ間の誤差が少なくなり、正確度が安定することが分かる。
【0096】
また、実施例1及び比較例1のセンサの試料導入部にそれぞれグルコース濃度が0,100mg/dL,300mg/dL,600mg/dL,800mg/dLの全血を導入した後に、作用極に200mVをステップ印加し、応答電流を測定することにより調べた。実施例1のクロノアンペロメトリー測定を行った結果(サンプル数n=5〜6)を図6に、比較例1のクロノアンペロメトリー測定を行った結果(サンプル数n=5)を図7に示す。
【0097】
図6及び図7から明らかなように、比較例1では、応答電流波形がサンプル間でばらつ
くのに対し、実施例1では、比較例1に比べて波形が揃う(纏まる)ことが分かる。これより、実施例1では、検知層8の面積制御によって、サンプル間での応答電流のばらつきが抑えられていることが分かる。
【0098】
〔試験2〕
〔実施例2〕
実施例2として、比較例1として説明した酵素電極の作用極上に、実施例1で示した処方の液体試薬を滴下(分注)し、実施例2のバイオセンサを得た。実施例2のバイオセンサとして、試薬の面積が作用極(W極)の全面を占めるバイオセンサと、作用極の面積の1/2を試薬が占めるバイオセンサと、作用極の面積の1/4を試薬が占めるバイオセンサとを用意した。
【0099】
〔比較例2〕
比較例2として、比較例1として説明した酵素電極の作用極上に、実施例1で示した処方から架橋剤を除いた液体試薬を滴下(分注)し、比較例2のバイオセンサを得た。比較例2のバイオセンサとして、試薬の面積が作用極(W極)の全面を占めるバイオセンサと、作用極の面積の1/2を試薬が占めるバイオセンサと、作用極の面積の1/4を試薬が占めるバイオセンサとを用意した。実施例2及び比較例2のいずれも、試薬が作用極からはみ出さないように分注した。
【0100】
実施例2及び比較例2の各バイオセンサについて、センサの試料導入部にそれぞれグルコース濃度が300mg/dL,600mg/dLの全血を導入した後に、作用極に200mVをステップ印加し、20秒経過後の応答電流を測定した。
【0101】
図8は、実施例2のバイオセンサに電圧を印加してから20秒後の応答電流値の測定結果の比率を示し、図9は、比較例2のバイオセンサに電圧を印加してから20秒後の応答電流値の測定結果の比率を示す。
【0102】
図8及び図9に示すように、実施例2では、比較例2と比べグルコースの濃度に関わらず、作用極上を試薬の面積が占める割合に比例して応答電流値が低下することが確認できた。すなわち、実施例2では、架橋剤を含む試薬(検知層)を用いることで、応答電流値が好適に試薬の面積に依存するバイオセンサを得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0103】
1・・・バイオセンサ
2・・・絶縁性基板
3・・・電極
3A・・・作用極
3B・・・対極
3C・・・参照極
4・・・絶縁層
5・・・スペーサ
6・・・カバー
B・・・測定装置
10・・・出力部
11・・・電力供給装置
12・・・制御部
13・・・演算部
14・・・検出部
15・・・表示部ユニット
16・・・バッテリ
17・・・グルコースセンサ
18・・・制御コンピュータ
19・・・ポテンショスタット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9