特許第6754262号(P6754262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754262ラボラトリオートメーションシステムを構成する方法、ラボラトリ試料分配システム、および、ラボラトリオートメーションシステム
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  • 特許6754262-ラボラトリオートメーションシステムを構成する方法、ラボラトリ試料分配システム、および、ラボラトリオートメーションシステム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754262
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ラボラトリオートメーションシステムを構成する方法、ラボラトリ試料分配システム、および、ラボラトリオートメーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20200831BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01N35/04 Z
   B65G54/02
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-195464(P2016-195464)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2017-72591(P2017-72591A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2019年8月2日
(31)【優先権主張番号】15188661.1
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】モハンマドレザ・マムディマネーシュ
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ジンツ
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0276776(US,A1)
【文献】 特許第6005229(JP,B2)
【文献】 特表2015−517675(JP,A)
【文献】 特表2015−502525(JP,A)
【文献】 特許第6629439(JP,B2)
【文献】 国際公開第2014/138530(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラボラトリオートメーションシステム(10)を構成する方法であって、
前記ラボラトリオートメーションシステム(10)がラボラトリ試料分配システム(100)および少なくとも1つのラボラトリステーション(20)を備え、前記ラボラトリステーション(20)が受け渡し位置を有し、
前記ラボラトリ試料分配システム(100)が、
1つまたは複数の試料容器(145)を運搬するように適合される複数の試料容器キャリア(140)であって、各試料容器キャリア(140)が少なくとも1つの磁気的に活性なデバイスを備える、複数の試料容器キャリア(140)と、
前記試料容器キャリア(140)を支持するように適合される移送面(110)と、
前記移送面(110)の下方に固定されて配置される複数の電磁アクチュエータ(120)であって、試料容器キャリア(140)に対して磁力を加えることにより前記移送面(110)の上で試料容器キャリア(140)を移動させるように適合される、複数の電磁アクチュエータ(120)と、
前記移送面(110)の上に分配されて前記磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界を感知するように適合される複数の位置センサ(130)と、
対応する移送経路に沿わせて前記試料容器キャリア(140)を移動させるために前記電磁アクチュエータ(120)を駆動することにより、前記移送面(110)の上での前記試料容器キャリア(140)の移動を制御するように構成される制御デバイス(150)と、
を備え、
前記ラボラトリステーション(20)が前記移送面(110)に隣接するように配置され、
ラボラトリーオートメーションシステム(10)を構成する方法は、
前記ラボラトリステーション(20)の前記受け渡し位置と特定の位置関係で基準磁石を前記移送面(110)の上に配置するステップと、
前記位置センサ(130)を使用して前記移送面(110)上での前記基準磁石の位置を検出するステップと、
前記検出される位置に基づいて前記電磁アクチュエータ(120)のうちの1つの電磁アクチュエータを受け渡し用電磁アクチュエータ(122)として決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記基準磁石の位置が前記試料容器キャリア(140)の位置と同様の手法で決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準磁石の前記位置が前記制御デバイス(150)によって決定される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準磁石が前記ラボラトリステーション(20)の一部である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準磁石が、前記ラボラトリステーション(20)の把持デバイス(22)によって保持される位置決定デバイス(24)の一部である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置を検出するステップの前に実施される、前記把持デバイス(22)を使用して特定の位置関係で前記位置決定デバイス(24)を配置するステップをさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記位置を検出するステップが、前記制御デバイス(150)に対する前記ラボラトリステーション(20)の最終的な配置を示す入力の後に実施される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記受け渡し位置が、前記ラボラトリステーション(20)と前記移送面(110)との間で試料または試料容器(145)を移送するように構成される位置である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記受け渡し用電磁アクチュエータ(122)が、前記ラボラトリステーション(20)と前記移送面(110)との間で試料または試料容器(145)を移送するために、試料容器(145)または試料容器キャリア(140)を前記受け渡し用電磁アクチュエータ(122)まで移動させるように構成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ラボラトリ試料分配システム(100)であって、
1つまたは複数の試料容器(145)を運搬するように適合される複数の試料容器キャリア(140)であって、各試料容器キャリア(140)が少なくとも1つの磁気的に活性なデバイスを備える、複数の試料容器キャリア(140)と、
前記試料容器キャリア(140)を支持するように適合される移送面(110)と、
前記移送面(110)の下方に固定されて配置される複数の電磁アクチュエータ(120)であって、試料容器キャリア(140)に対して磁力を加えることにより前記移送面(110)の上で試料容器キャリア(140)を移動させるように適合される、複数の電磁アクチュエータ(120)と、
前記移送面(110)の上に分配されて前記磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界を感知するように適合される複数の位置センサ(130)と、
対応する移送経路に沿わせて前記試料容器キャリア(140)を移動させるために前記電磁アクチュエータ(120)を駆動することにより、前記移送面(110)の上での前記試料容器キャリア(140)の移動を制御するように構成される制御デバイス(150)と、
を備え、
前記制御デバイス(150)が請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されることを特徴とする、
ラボラトリ試料分配システム(100)。
【請求項11】
請求項10に記載のラボラトリ試料分配システム(100)と、少なくとも1つのラボラトリステーション(20)とを備えるラボラトリオートメーションシステム(10)。
【請求項12】
ラボラトリオートメーションシステム(10)が請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法を使用して構成されることを特徴とするラボラトリオートメーションシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラボラトリオートメーションシステムを構成する方法に関し、このラボラトリオートメーションシステムがラボラトリ試料分配システムおよび少なくとも1つのラボラトリステーション(laboratory station)を備える。本発明はさらに、ラボラトリ試料分配システムおよびラボラトリオートメーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のラボラトリ試料分配システムは、通常、ラボラトリオートメーションシステム内で、試料容器の中に含まれる試料を、異なるラボラトリステーションの間で搬送するのに使用される。
【0003】
典型的なラボラトリ試料分配システムが文献WO2013/064656A1で開示されている。このようなラボラトリ試料分配システムは、高いスループットと、高い信頼性の動作とを可能にする。
【0004】
ラボラトリ試料分配システムを使用してラボラトリステーションまで試料または試料容器を送達するのを可能にするために、ラボラトリステーションは、通常、ラボラトリ試料分配システムの移送面に隣接するように配置される。しかし、試料または試料容器を高い信頼性で移送するためにラボラトリステーションを移送面に隣接する特定の位置に正確に配置することが必要であることが認識されている。試料分配システムの移送面は非常に大きい寸法を有しうることから、これには、ラボラトリステーションを正確に配置するために大きい距離を正確に測定することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2013/064656A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、より容易に構成するのを可能にする、ラボラトリオートメーションシステムを構成する方法を提供することである。本発明の別の目的は、このような方法を実施するように構成されるラボラトリ試料分配システムを提供することである。本発明の別の目的は、このようなラボラトリ試料分配システムを備えるまたは本発明の方法に従って構成されるラボラトリオートメーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題が、請求項1による方法、請求項10によるラボラトリ試料分配システム、請求項11によるラボラトリオートメーションシステム、および、請求項12によるラボラトリオートメーションシステムによって解決される。好適な実施形態が例えば従属請求項から得られる。
【0008】
本発明はラボラトリオートメーションシステムを構成する方法に関連する。
ラボラトリオートメーションシステムがラボラトリ試料分配システムおよび少なくとも1つのラボラトリステーションを備え、ここでは、ラボラトリステーションが1つまたは複数の受け渡し位置を有する。
【0009】
受け渡し位置は、通常、ラボラトリステーションと、ラボラトリステーションの横に位置するかまたはラボラトリステーションに隣接して位置する移送面との間で、試料または試料容器を移送するように構成される位置である。したがって、受け渡し位置は、ラボラトリ試料分配システムとの相互作用に関連する、ラボラトリステーションに固有の位置である。
【0010】
ラボラトリ試料分配システムが、1つまたは複数の試料容器を運搬するように適合される複数の試料容器キャリアを備え、ここでは、各試料容器キャリアが少なくとも1つの磁気的に活性なデバイスを備える。ラボラトリ試料分配システムが、試料容器キャリアを支持するように適合される移送面と、複数の電磁アクチュエータとをさらに備える。電磁アクチュエータが、移送面の下方に、通常は行および列をなすように、固定されて配置(stationary arranged)され、試料容器キャリアに対して磁力を加えることにより移送面の上で試料容器キャリアを移動させるように適合される。
【0011】
ラボラトリ試料分配システムが、移送面の上に通常一様に分配されて磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界を感知するように適合される複数の位置センサをさらに備える。ラボラトリ試料分配システムが、電磁アクチュエータを駆動することにより移送面の上での試料容器キャリアの移動を制御するように構成される制御デバイスをさらに備え、その結果、試料容器キャリアが対応する移送経路に沿って移動するようになる。
【0012】
ラボラトリステーションが移送面に隣接して配置される。
本方法は以下のステップを含む:
− ラボラトリステーションの受け渡し位置と特定の位置関係で基準磁石(reference magnet)を移送面の上に配置する(例えば、基準磁石をラボラトリステーションの受け渡し位置に正確に配置する)ステップ、このように配置することはオペレータによって手動でまたは専用のデバイスによって自動で実施され得、
− 位置センサを使用して移送面上での基準磁石の位置を検出するステップ、および、
− 検出される位置に基づいて、電磁アクチュエータのうちの1つの電磁アクチュエータを受け渡し用電磁アクチュエータ(handover electromagnetic actuator)として定義するかまたは決定するステップ。
【0013】
ラボラトリステーションが複数の受け渡し位置を有する場合、複数の受け渡し位置の各々に対して上記ステップが繰り返され得る。
基準磁石は例えば永久磁石として具体化されてよい。別法としてまたは加えて、電磁石が使用されてもよい。電磁石を使用することにより、電磁石を起動および停止することで、あるビットパターンがラボラトリオートメーションシステムに送信され得る。
【0014】
定義されるかまたは決定される受け渡し用電磁アクチュエータは光学的に視覚化され得る。例えば、LEDが光を透過する移送面の下に配置されて電磁アクチュエータに割り当てられる場合、受け渡し用電磁アクチュエータに割り当てられるLEDが起動され得る。
【0015】
検出される位置に基づいて電磁アクチュエータのうちの1つの電磁アクチュエータを受け渡し用電磁アクチュエータとして決定することは、以下のステップを含むことができる:(各々の)電磁アクチュエータと検出される位置との間の距離を計算するステップ、および、受け渡し用電磁アクチュエータとして、検出される位置に対して最短の距離を有する電磁アクチュエータを決定するステップ。
【0016】
本発明の方法により、基本的に手動による介入なしに、ラボラトリステーションの実際に位置に基づいて受け渡し用電磁アクチュエータが決定され得る。したがって、移送面に隣接する所定の位置にラボラトリステーションを配置することの必要性がもはや存在しない。言い換えると、構成の考え方が逆となる。ラボラトリ試料分配システムに対してラボラトリステーションを位置合わせする代わりに、ラボラトリ試料分配システムの受け渡し用電磁アクチュエータがラボラトリステーションに対して位置合わせされる。ラボラトリステーションは基本的に任意の位置で移送面に隣接するように配置され、ここでは、関連する受け渡し位置が自動で決定され、それに応じて受け渡し用電磁アクチュエータが選択される。これにより、ラボラトリオートメーションシステムをセットアップして構成するのに必要となる時間が大幅に短縮される。
【0017】
受け渡し用電磁アクチュエータは、通常、ラボラトリステーションと移送面との間で試料または試料容器を移送するために試料容器または試料容器キャリアが受け渡し用電磁アクチュエータまで移動されるように構成または決定される。言い換えると、受け渡し用電磁アクチュエータは、その実際の位置におけるラボラトリステーションの受け渡し位置に基づいて複数の電磁アクチュエータの中から選択される電磁アクチュエータである。
【0018】
試料容器は、通常、ガラスまたは透明プラスチックで作られるチューブとして設計され、通常、上側端部に開口部を有する。試料容器は、血液試料または化学試料などの試料を包含、保管および移送するのに使用され得る。
【0019】
移送面は移送表面と称されてもよい。移送面が試料容器キャリアを支持し、これは試料容器キャリアを運搬すると表されてもよい。
電磁アクチュエータは、通常、強磁性コアを囲むソレノイドを有する電磁石として構築される。これらの電磁アクチュエータは、試料容器キャリアを移動させるかまたは駆動するのに使用され得る磁界を提供するために励磁され得る。この目的のため、各試料容器キャリア内にある少なくとも1つの磁気的に活性なデバイスが永久磁石であってよい。別法としてまたは加えて、電磁石が使用されてもよい。
【0020】
制御装置は、通常、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、標準的なコンピュータ、または、同様のデバイスである。典型的な実施形態では、制御デバイスがプロセッサ手段および記憶手段を備え、ここでは、プロセッサ手段上でストレージコードが実行されるときにプロセッサ手段の挙動を制御するように、プログラムコードが記憶手段内に記憶される。
【0021】
試料容器キャリアは、通常、移送面上で二次元的に移動するように適合される。この目的のため、電磁アクチュエータが移送面の下方に二次元的に配置され得る。電磁アクチュエータは行および列を有するグリッドまたはマトリックス内に配置され得、これらの行および列に沿うように電磁アクチュエータが配置される。
【0022】
実施形態によれば、試料容器キャリアの位置と同じように、基準磁石の位置が決定される。これにより、例えば、基準磁石および試料容器キャリアの位置を決定するのに、同一のアルゴリズムを使用することが可能となる。試料容器キャリアの位置を検出することが従来技術によるラボラトリ試料分配システムの一般的な機能であることを理解されたい。
【0023】
実施形態によれば、基準磁石の位置が制御デバイスによって決定される。これにより、位置を決定することを単純な形で統合することが可能となる。
実施形態によれば、基準磁石がラボラトリステーションの一部である。これにより精度を向上させることおよび動作を単純化することが可能となる。
【0024】
実施形態によれば、基準磁石がラボラトリステーションの把持デバイスによって保持される位置決定デバイスの一部である。位置決定デバイスは、例えば、永久磁石を有するペン形状の物体であってよい。特には、位置決定デバイスは試料容器と同様であるかまたは同一の形状であってよい。これにより、位置の決定のため、把持デバイスが、位置決定デバイスを試料容器と同様または同一に取り扱うことが可能になる。
【0025】
実施形態によれば、本方法が、位置を検出するステップの前に実施される、把持デバイスを使用して特定の位置関係で位置決定デバイスを配置するステップをさらに含む。例えば、位置決定デバイスはラボラトリステーション内に保管され得るか、または、ラボラトリオートメーションシステムを構成することがエンジニアに任されている場合には受け渡し位置を定義する場合にのみ使用され得る。
【0026】
実施形態によれば、制御デバイスに対するラボラトリステーションの最終的な配置を示す入力(例として手動入力)の後、位置を検出するステップが実施される。これは、制御デバイスに対して、ラボラトリステーションおよび対応する基準磁石がそれらの最終かつ正確な位置にあるという高い確度をもたらすことができる。
【0027】
本発明はさらに、ラボラトリ試料分配システムに関連する。
ラボラトリ試料分配システムが1つまたは複数の試料容器を運搬するように適合される複数の試料容器キャリアを備え、ここでは、各試料容器キャリアが少なくとも1つの磁気的に活性なデバイスを備える。
【0028】
ラボラトリ試料分配システムが、試料容器キャリアを支持するように適合される移送面をさらに備える。
ラボラトリ試料分配システムが、移送面の下方に固定されて配置される複数の電磁アクチュエータをさらに備え、これらの電磁アクチュエータが、試料容器キャリアに対して磁気的駆動力(magnetic drive force)または磁気的移動力(magnetic move force)を加えることにより移送面の上で試料容器キャリアを移動させるように適合される。
【0029】
ラボラトリ試料分配システムが、移送面の上に分配されて磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界を感知するように適合される例えばHallセンサである複数の位置センサをさらに備える。
【0030】
ラボラトリ試料分配システムが、電磁アクチュエータを駆動することにより移送面の上での試料容器キャリアの移動を制御するように構成される制御デバイスをさらに備え、その結果、試料容器キャリアが対応する移送経路に沿って移動するようになる。
【0031】
ラボラトリ試料分配システムの制御デバイスが、さらに、本発明による方法を実施するように構成される。
制御デバイスは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ、または、他のプログラム可能なデバイスとして具体化され得る。制御デバイスが例えばプロセッサ手段および記憶手段を備えることができ、ここでは、プロセッサ手段によって実行されるときに本明細書で説明される方法を制御デバイスが実施するために、プログラムコードが記憶手段内に記憶される。
【0032】
制御デバイスは、予め計算されたルートに沿わせて試料容器キャリアを互いに同時にかつ独立させて移動させるように、電磁アクチュエータを起動するように適合され得る。
本発明はさらに、ラボラトリオートメーションシステムに関連する。ラボラトリオートメーションシステムが、本発明によるラボラトリ試料分配システムと、少なくとも1つのラボラトリステーションとを備える。ラボラトリ試料分配システムに関しては、本明細書で考察されるすべての実施形態および変形形態が適用され得る。
【0033】
本発明はさらにラボラトリオートメーションシステムに関連し、ここでは、ラボラトリオートメーションシステムが本発明による方法を使用して構成される。本発明による方法に関しては、本明細書で考察されるすべての実施形態および変形形態が適用され得る。
【0034】
ラボラトリステーションは、分析前(ラボラトリ)ステーション、分析(ラボラトリ)ステーション、および/または、分析後(ラボラトリ)ステーションであってよい。ラボラトリ試料分配システムが、ラボラトリステーションの間で試料容器キャリアおよび/または試料容器を搬送するように適合され得る。ラボラトリステーションはラボラトリ試料分配システムに隣接して配置され得る。
【0035】
分析前ステーションが、試料、試料容器および/または試料容器キャリアの任意の種類の前処理を実施するように適合され得る。
分析ステーションが、試料または試料の一部および試薬を使用して測定信号を生じさせるように適合され得、測定信号が分析物が存在するかどうかを示し、また、存在する場合にはその濃度を示す。
【0036】
分析後ステーションが、試料、試料容器および/または試料容器キャリアの任意の種類の後処理を実施するように適合され得る。
分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションは、デキャッピングステーション、リキャッピングステーション、アリコートステーション、遠心分離ステーション、保管ステーション、ピペット操作ステーション、分類ステーション、チューブタイプ識別ステーション、試料品質決定ステーション、アドオンバッファステーション(add−on buffer station)、液面レベル検出ステーション、および、封止/封止解除(desealing)ステーション、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0037】
受け渡し用電磁アクチュエータが識別された後、有意に高い空間分解能で受け渡し位置をさらに決定することが実施され得る。
把持デバイスが、移送面と、移送面の下方に配置される複数の電磁アクチュエータとを有するラボラトリ試料分配システムに割り当てられ得る。受け渡し位置が受け渡し用電磁アクチュエータに割り当てられ得る。把持デバイスの受け渡し位置を決定することが、以下のステップを含む方法によって実施され得る:
把持デバイスを用いて位置決定デバイスを掴むステップであって、その結果、位置決定デバイスが把持デバイスによって固定的に保持されるようになり、ここでは、位置決定デバイスが、磁気的に活性なデバイスを備えるステップ、
把持デバイスによって保持されている状態の位置決定デバイスを移送面の上(上方)で位置決めするステップ、
受け渡し用電磁アクチュエータを起動するステップであって、その結果、受け渡し用電磁アクチュエータが、磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界と相互作用する磁界を発生させ、その結果、位置決定デバイスに対して引力が加えられるようになるステップ、
把持デバイスによって保持されている状態の位置決定デバイスを引力により第1の位置まで移動させるステップ、
第1の位置を検出するステップ、および、
少なくとも部分的に第1の位置に基づいて受け渡し位置を決定するステップ。
【0038】
実施形態によれば、受け渡し位置が第1の位置と同一のものとして決定される。
実施形態によれば、受け渡し位置を決定することが以下のステップを含む:
毎回第1の位置から開始して、把持デバイスを用いて移送面上で位置決定デバイスを各方向グループに所与の変位量でそれぞれの中間位置まで移動させるステップ、
一方向の各移動ステップの後で、把持デバイスによって保持されている状態の位置決定デバイスを引力によりそれぞれの別の位置まで移動させるステップ、
それぞれの別の位置を検出するステップ、および、
少なくとも部分的にそれぞれの別の位置に基づいて受け渡し位置を決定するステップ。
【0039】
実施形態によれば、方向グループが、2つ、3つまたは4つの方向を含む。
実施形態によれば、方向グループに含まれるすべての方向が、円方向において隣り合う各々2つの方向の間の角度が等しくなるように構成される。
【0040】
実施形態によれば、所与の変位量が、10mm未満、好適には5mm未満、さらに好適には3mm未満である。
実施形態によれば、受け渡し位置が、別の位置によって画定される多角形の中心として決定される。
【0041】
実施形態によれば、受け渡し用電磁アクチュエータが、位置決定デバイスを方向のうちの1つの方向に移動させる各ステップの前に停止され、そのステップの後で再び起動される。
【0042】
実施形態によれば、第1の位置および/または別の位置が、検出された後に移送面上の平面座標によって表される。
実施形態によれば、把持デバイスを用いて移送面上で位置決定デバイスを位置決めするステップが、把持デバイスを受け渡し用電磁アクチュエータの上方かまたはすぐ隣に配置するように、実施される。
【0043】
実施形態によれば、把持デバイスによって保持されている状態の位置決定デバイスを移送面上で位置決めするステップが手動で実施される。
実施形態によれば、受け渡し用電磁アクチュエータを囲む電磁アクチュエータが、磁気的に活性なデバイスによって発生する磁界と相互作用するそれぞれの磁界を発生させるように起動され、その結果、少なくとも引力により位置決定デバイスを移動させる各ステップ中に、位置決定デバイスに対して斥力が加えられるようになる。
【0044】
実施形態によれば、位置決定デバイスが、移送面に接触するための複数のロールまたはボール軸受を備える。
本発明の実施形態を概略的に描く図面に関連させて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明によるラボラトリオートメーションシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1が本発明によるラボラトリオートメーションシステム10を示す。
ラボラトリオートメーションシステム10が、ラボラトリステーション20と、ラボラトリ試料分配システム100とを備える。ラボラトリステーション20が単に例示的に示されていること、および、一般的なラボラトリオートメーションシステムが複数のラボラトリステーション20を備えることに留意されたい。
【0047】
ラボラトリ試料分配システム100が移送面110を備える。移送面110上で、試料容器キャリア140が移動することができる。試料容器キャリア140が、一般的なラボラトリ試料チューブとして具体化される試料容器145を運搬する。一般的なラボラトリ試料分配システム100が複数の試料容器キャリア140を備えること、および、図1では例示的に1つの試料容器キャリア140のみが示されていることに留意されたい。
【0048】
各試料容器キャリア140が永久磁石の形態の磁気的に活性なデバイスを備える。永久磁石は試料容器キャリア140内部に位置することを理由として図1では見ることができない。
【0049】
移送面110の下に複数の電磁アクチュエータ120が配置される。電磁アクチュエータ120がソレノイドとして具体化される。各電磁アクチュエータ120が付随する強磁性コア125を備える。電磁アクチュエータ120が、移送面110上で試料容器キャリア140を移動させるのに使用される磁界を発生させるように適合される。
【0050】
ラボラトリ試料分配システム100が複数の位置センサ130を備える。位置センサ130が移送面110の上に分配されている。位置センサ130がHallセンサとして具体化され、試料容器キャリア140の永久磁石によって発生する磁界を測定することができる。
【0051】
電磁アクチュエータ120および位置センサ130の両方が制御デバイス150に電気的に接続される。制御デバイス150が、対応する移送経路に沿わせて移送面上で試料容器キャリア140を移動させるために適切な磁界を発生させるように、電磁アクチュエータ120を駆動するように構成される。位置センサ130により、制御デバイス150が試料容器キャリア140の実際の位置を監視する。
【0052】
ラボラトリステーション20が移送面110に隣接するように配置される。ラボラトリステーション20が把持デバイス22を備える。把持デバイス22は、通常、ラボラトリステーション20と移送面110との間で試料容器145を移送するのに使用される。図1に示される状態では、把持デバイス22が位置決定デバイス24を保持する。位置決定デバイス24の最新の位置がラボラトリステーション20の受け渡し位置を画定する。
【0053】
位置決定デバイス24が永久磁石の形態の磁気的に活性なデバイスを備える。永久磁石が基準磁石として機能し、試料容器キャリア140の永久磁石と同じように、位置センサ130によって感知され得る。したがって、制御デバイス150は、位置決定デバイス24に含まれる基準磁石の位置をも認識する。
【0054】
ラボラトリステーション20が移送面110に隣接するように配置された後、ラボラトリオートメーションシステム10が以下のように構成され得る。
基準磁石を備える位置決定デバイス24を保持する把持デバイス22が、移送面110上でのラボラトリステーション20の所望される受け渡し位置に配置される。
【0055】
制御デバイス150がボタン152を備える。ラボラトリステーション20が移送面110に隣接するその最終の位置に到達するときに、オペレータによってボタン152が押される。
【0056】
ボタン152が押されたことを制御デバイス150が検出した後、制御デバイス150がラボラトリオートメーションシステム10の較正を開始する。基準磁石が電磁石として具体化される場合、ボタン152が押されるときに電磁石が励磁され得る。
【0057】
最初に、制御デバイス150が位置センサ130を使用して基準磁石の位置を検出する。描かれる実施形態では、制御デバイス150が、電磁アクチュエータ120のうちの特定の1つの電磁アクチュエータの上に位置決定デバイス24(または、位置決定デバイス24の基準磁石)が配置されたことを検出する。このようにして、制御デバイス150が、受け渡し用電磁アクチュエータ122としてこの特定の電磁アクチュエータを決定する。電磁アクチュエータ120の1つの電磁アクチュエータの上に基準磁石が正確に配置されていない場合、受け渡し用電磁アクチュエータ122は、基準磁石に対して最短の距離を有する電磁アクチュエータとして定義され得る。
【0058】
ラボラトリステーション20が移送面110に隣接する別の位置に配置される場合、制御デバイス150がそれに応じて別の受け渡し用電磁アクチュエータを決定することになる。これにより、ラボラトリステーション20を所定の位置に配置することの必要性が排除される。
【0059】
試料容器キャリア140によって運搬される試料または試料容器145がラボラトリステーション20にまで移送されることになる場合、制御デバイス150がその受け渡し用電磁アクチュエータ122まで試料容器キャリア140を移動させる。このようにして、受け渡し用電磁アクチュエータ122を使用して、試料または試料容器145がラボラトリステーション20から移送される。
【符号の説明】
【0060】
10 ラボラトリオートメーションシステム
20 ラボラトリステーション
22 把持デバイス
24 位置決定デバイス
100 ラボラトリ試料分配システム
110 移送面
120 電磁アクチュエータ
122 受け渡し用電磁アクチュエータ
125 強磁性コア
130 位置センサ
140 試料容器キャリア
145 試料容器
150 制御デバイス
152 ボタン
図1