特許第6754263号(P6754263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754263
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20200831BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   C09J153/02
   C09J11/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-195483(P2016-195483)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-58940(P2018-58940A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和洋
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−070099(JP,A)
【文献】 特開2011−118102(JP,A)
【文献】 特開2015−091917(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125546(WO,A1)
【文献】 特開2000−198973(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020750(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102775955(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、プロセスオイル(B)と、水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)と、酸価200〜400mgKOH/gの酸変性ロジン樹脂(D)と、から成り、酸変性ロジン樹脂(D)はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して5〜25重量部であることを特徴とするホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
酸変性ロジン樹脂(D)はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して5〜15重量部であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや生理用品等の衛生材に用いられるホットメルト接着剤組成物に関し、特には湿潤状態でも接着性が良好なホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつなどの使い捨て製品を製造するために好適に用いられるホットメルト接着剤として、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物のうち少なくとも一種を含んでいる熱可塑性ブロック共重合体(A)100重量部、不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されてなる酸変性石油樹脂(B)、及び、不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されていない未変性石油樹脂(C)100〜300重量部を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5539599号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるホットメルト接着剤は、接着後に湿潤状態となる場合に接着性が不十分となる場合があるという課題がある。。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接着後に被着体が湿潤状態となっても接着性が良好なホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、プロセスオイル(B)と、水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)と、酸価200〜400mgKOH/gの酸変性ロジン樹脂(D)と、から成り、酸変性ロジン樹脂(D)はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して5〜25重量部であることを特徴とするホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0007】
また請求項2記載の発明は、酸変性ロジン樹脂(D)はスチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して5〜15重量部であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、紙おむつや生理用品等の衛生材等を構成する材料を接着後、該衛生材等が湿潤状態となっても接着性が良好であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、プロセスオイル(B)と、水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)と、酸価200〜400mgKOH/gの酸変性ロジン樹脂(D)と、から成り、この他に必要により、老化防止剤、充填材、着色剤、ポリエチレンワックス、補強材等を配合することが出来る。
【0012】
[スチレン系熱可塑性エラストマー(A)]
本発明に使用されるスチレン系熱可塑性エラストマー(A)は、本発明であるホットメルト接着剤組成物のベースポリマーとして使用され、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などのブロック共重合体の未水素添加物;スチレン−ブタジエン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などの水素添加物等を使用することが出来る。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーは単独で用いても二種以上を併用しても良い。
【0013】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)の重量平均分子量は、50,000〜300,000が好ましく、より好ましくは70,000〜250,000である。さらに好ましくは100,000〜200,000である。重量平均分子量(Mw)が50,000未満ではホットメルト接着剤組成物としての凝集力が低下し結果として接着性が低下し、300,000超では塗付作業性が低下する。なお、ここで言う重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置により標準ポリスチレン換算で得られる測定値である。
【0014】
[プロセスオイル(B)]
本発明に使用されるプロセスオイル(B)は、本発明であるホットメルト接着剤組成物の軟化、粘度調整、良好な塗付作業性を得ることを目的として使用され、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイルなどを使用することが出来る。特にはパラフィン系プロセスオイル又はナフテン系プロセスオイルが好ましいが、これらのプロセスオイルは単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0015】
パラフィン系プロセスオイルは、脂肪族鎖状炭化水素であって40℃における動粘度が30〜400mm/secのものが好ましい。より好ましくは50〜150mm/secである。動粘度が30mm/sec未満ではホットメルト接着剤組成物の凝集力が低下し結果として接着性が低下し、400mm/sec超ではホットメルト接着剤組成物の塗布作業性が低下する。市販のパラフィン系プロセスオイルとしてはダイアナプロセスオイルPW−90(商品名、出光石油化学社製、動粘度90mm/sec)がある。
【0016】
ナフテン系プロセスオイルは、脂肪族系環状炭化水素であって40℃における動粘度が30〜400mm/secのものが適合している。より好ましくは50〜150mm/secである。動粘度が30mm/sec未満ではホットメルト接着剤組成物の凝集力が低下し結果として接着性が低下し、400mm/sec超ではホットメルト接着剤組成物の塗布作業性が低下する。市販のナフテン系プロセスオイルとしてはナイフレックス222B(商品名、ナイナス社製、動粘度94.6mm/sec)がある。
【0017】
ホットメルト接着剤組成物中におけるプロセスオイル(B)の重量配合部数は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、25〜250重量部が好ましく、より好ましくは50〜150重量部である。25重量部未満及び250重量部超では接着性が低下する場合がある。
【0018】
[水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)]
本発明に使用される水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)には、水添テルペン樹脂やC〜C水添脂環族系炭化水素樹脂やC〜C水添変性脂環族系炭化水素樹脂を使用することが出来る。配合量としては上記スチレン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、50〜350重量部配合することが好ましい。50重量部未満では粘着性が不足し、350重量部超では組成物の弾性が不十分となる。該粘着付与剤(C)の軟化点は80〜120℃が好ましく、80℃未満では接着性が不足し、120℃超では接着剤組成物の塗布作業性、低温接着性が低下する。
【0019】
[酸価200〜400mgKOH/gの酸変性ロジン樹脂(D)]
本発明に使用され酸変性ロジン樹脂(D)は、ホットメルト接着剤組成物によって接着された被着体である紙おむつや生理用品が、その後湿潤状態に成った際にも良好な接着状態を保持することを目的として配合され、ロジン樹脂を不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性したもので、その酸価は200〜400mgKOH/gである。酸価が200mgKOH/g未満では湿潤接着性が不十分となるか、湿潤接着性を良好とするために配合量を増やすとホットメルト接着剤組成物としての180℃程度の高温での貯蔵安定性が不良と成る。
【0020】
該酸変性ロジン樹脂(D)の軟化点は110〜140℃が好ましい。軟化点が110℃未満、140℃超では接着性が不十分となる場合がある。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤組成物には上記材料が必須の成分であるが、この他に熱による劣化を防止するために亜リン酸塩系、ナフチルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系などの老化防止剤を配合することが出来る。これら老化防止剤は、単独もしくは併用することができる。
【0022】
以下,実施例及び比較例にて本出願に係るホットメルト接着剤組成物について具体的に説明する。
【実施例】
【0023】
<実施例及び比較例>
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)として、タイポール3206(商品名、デキシコ社製、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン含有量29重量%、ジブロック含有量18重量%、重量平均分子量(Mw):100,000)(スチレン系熱可塑性エラストマー(A−1))、クインタック3270(商品名、日本ゼオン社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン含有量24%、ジブロック含有量67%、重量平均分子量(Mw):約150,000)(スチレン系熱可塑性エラストマー(A−2))、を、プロセルオイル(B)として、ナイフレックス222B(ナフテン系プロセスオイル、ナイナス社製、40℃における動粘度94.6mm/sec)(プロセルオイル(B−1))、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名、出光社製、40℃における動粘度90mm/sec)(プロセスオイル(B−2))を、水添石油樹脂からなる粘着付与樹脂(C)として、フークリアFM100(商品名、ユナイテッドパフォーマンスマテリアルズ社製、C9系水添石油樹脂、軟化点100℃、酸価:0mgKOH/g)(粘着付与樹脂(C−1))、フークリアFC100(商品名、ユナイテッドパフォーマンスマテリアルズ社製、C5/C9共重合系水添石油樹脂、軟化点100℃、酸価:0mgKOH/g)(粘着付与樹脂(C−2))を、酸価200〜400mgKOH/gの酸変性ロジン樹脂(D)として、パインクリスタルKE−604(商品名、荒川化学工業社製、酸変性超淡色ロジン樹脂、酸価:230〜245mgKOH/g、軟化点:130℃)(酸変性ロジン樹脂(D−1))、パインクリスタルKR−120(商品名、荒川化学工業社製、酸変性超淡色ロジン樹脂、酸価:300〜345mgKOH/g、軟化点:120℃)(酸変性ロジン樹脂(D−2))を、比較例に使用する酸変性樹脂として、パインクリスタルKR−140(商品名、荒川化学工業社製、酸変性超淡色ロジン樹脂、酸価:130〜160、軟化点:140℃)(酸価200mgKOH/g未満の酸変性樹脂(d−1))、クインタックCX495(商品名、日本ゼオン社製、酸変性石油樹脂、酸価:1.8、軟化点:100℃)(酸価200mgKOH/g未満の酸変性樹脂(d−2))を、酸化防止剤としてイルガノックス1010(商品名、BASF社製、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル-4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])を、使用して、表1に示す配合にて、1Lセパラブルフラスコにて180℃で十分に混練し、実施例1乃至実施例7及び比較例1乃至比較例10のホットメルト接着剤組成物を得た。なお、表1中の数字は重量配合部数を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
<評価項目及び評価方法>
評価項目及び評価方法を以下に示すと共に、表2に評価結果を示す。
【0026】
<接着強度試験 浸水不織布/PEフィルム(常態)>
150℃にて加熱溶融したホットメルト接着剤組成物をスパイラルスプレーで幅25mm×長さ200mmのPE(ポリエチレン)フィルムに3g/mの塗布量で塗布する。塗布後、直ちに親水不織布(ELTAS AQUA、旭化学社製、スパンボンド不織布、目付量20g/m)を貼り合わせ、5kgローラーを1往復させて圧締することで試験片を得た。得られた試験片を23℃・50%RHに調温された恒温恒湿器内で24時間養生した後、引張速度100mm/分でT字型に剥離した際の強度を測定し、25mmあたりの強度を接着強度(N/25mm)とした。0.5N/25mm以上を○と評価し、0.5N/25mm未満を×とした。
【0027】
<接着強度試験 撥水不織布/PEフィルム(常態)>
150℃にて加熱溶融したホットメルト接着剤組成物をスパイラルスプレーで幅25mm×長さ200mmのPEフィルムに3g/mの塗布量で塗布した。塗布後、直ちに撥水不織布(ELTAS、旭化学社製、スパンボンド不織布、目付量20g/m)を貼り合わせ、5kgローラーを1往復させて圧締することで試験片を得た。 得られた試験片を23℃・50%RHに調温された恒温恒湿器内で24時間養生した後、引張速度100mm/分でT字型に剥離した際の強度を測定し、25mmあたりの強度を接着強度(N/25mm)とした。0.5N/25mm以上を○と評価し、0.5N/25mm未満を×とした。
【0028】
<接着強度試験 ティッシュ/ティッシュ(常態)>
150℃にて加熱溶融したホットメルト接着剤組成物をスパイラルスプレーで幅25mm×長さ200mmのティッシュ(目付量15g/m)に3g/mの塗布量で塗布した。塗布後、直ちにもう1枚のティッシュを貼り合わせ、5kgローラーを1往復させて圧締することで試験片を得た。 得られた試験片を23℃・50%RHに調温された恒温恒湿器内で24時間養生した後、引張速度100mm/分でT字型に剥離した際に基材破壊となる試験片を○と評価し、界面破壊となる試験片を×と評価した。
【0029】
<接着強度試験 ティッシュ/ティッシュ(湿潤条件)>
150℃にて加熱溶融したホットメルト接着剤をスパイラルスプレーで幅25mm×長さ200mmのティッシュ(目付量15g/m)に3g/mの塗布量で塗布した。塗布後、直ちにもう1枚のティッシュを貼り合わせ、5kgローラーを1往復させて圧締することで試験片を得た。
得られた試験片を23℃・50%RHに調温された恒温恒湿器内で24時間養生した後、23℃の生理食塩水中に5分間浸漬した。その後試験片を取り出し、試験片に付着した水分を拭き取った。引張速度100mm/分でT字型に剥離した際に接着剤凝集破壊となる試験片を○と評価し、界面破壊となる試験片を×と評価した。
【0030】
<臭気>
ホットメルト接着剤組成物を100mlの金属缶に50g採り、金属の蓋をした。次に、金属缶を180℃に加熱された恒温器に投入し、1時間加熱した。その後、恒温器から金属缶を取り出し、蓋を外した際の臭気の発生の有無を以下に従って評価した。
○:刺激臭殆ど無し
△:刺激臭が若干感じられる
×:刺激臭を感じる
【0031】
<加熱安定性>
ホットメルト接着剤組成物を30mlのガラス瓶に10g採り、異物の混入を防ぐためアルミニウム箔で蓋をした。次にガラス瓶を180℃に加熱された恒温器に投入し72時間加熱した。その後恒温器からガラス瓶を取り出し、ホットメルト接着剤組成物の状態を目視にて以下に従い評価した。
○:色の変化が非常に少ない、ゲル・炭化物の発生無し
△:色の変化が少ない、ゲル・炭化物が僅かに発生
×:色の変化が激しい、ゲル・炭化物が発生
【0032】
【表2】