特許第6754268号(P6754268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754268
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/08 20060101AFI20200831BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20200831BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B60C19/08
   B60C5/00 H
   B60C11/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-204622(P2016-204622)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-65438(P2018-65438A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−095323(JP,A)
【文献】 特開2013−023200(JP,A)
【文献】 特開2012−166604(JP,A)
【文献】 特開2000−016010(JP,A)
【文献】 特開2000−289411(JP,A)
【文献】 特開平10−175403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップゴムと、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に設けられるベースゴムと、車両に対する装着方向が表示されるタイヤ外表面と、を有し、
前記キャップゴムは、タイヤ赤道においてタイヤ周方向に延びるリブと、前記リブにおいて前記キャップゴムの厚み方向に延びて接地面から前記ベースゴムの底面に至る導電ゴムと、を有し、
前記導電ゴムは、前記キャップゴムよりもゴム硬度が低く、前記接地面での幅は前記底面での幅よりも大きく、
平面視において接地面における前記導電ゴムは、前記リブの中心に対して装着内側にオフセットしており、
タイヤ子午線断面において、前記導電ゴムの上部と前記キャップゴムとの界面は、径方向外側に向かうにつれて拡がっており且つ径方向外側に湾曲する曲面であり、
装着内側の平均曲率よりも装着外側の平均曲率の方が小さい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記導電ゴムは、径方向外側に向けて先太り形状であり且つ接地面に露出する曲面部と、曲面部からベースゴムの底面まで直線状に延びる延伸部と、を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記曲面部と前記延伸部との接続部分における幅中心が、前記リブの中心に対して装着内側へオフセットする量は2〜20mmであり、
前記曲面部における装着内側の平均曲率は、3〜7mmであり、
前記曲面部における装着外側の平均曲率は、1〜5mmである、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記導電ゴムの下部は、径方向内側に延びて前記リブの中心よりも装着内側にオフセットしている、請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記導電ゴムの下部は、径方向内側に向かうにつれて前記リブの中心に近づくように延びている、請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体やタイヤに生じた静電気を路面に放出可能な空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費性能と関係が深いタイヤの転がり抵抗の低減を目的として、トレッドゴムなどのゴム部材を、シリカを高比率で配合した非導電性ゴムで形成した空気入りタイヤが提案されている。ところが、かかるゴム部材は、カーボンブラックを高比率で配合した従来品に比べて電気抵抗が高く、車体やタイヤで発生した静電気の路面への放出を阻害するため、ラジオノイズなどの不具合を生じやすいという問題がある。
【0003】
特許文献1には、タイヤ赤道に、径方向に延びる導電ゴムが配置されたタイヤが開示されている。タイヤには、直進性能と旋回性能があり、両立することが好ましい。しかし、特許文献1には、これらについて何ら記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6302173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、このような事情に着目してなされたものであって、その目的は、直進性能と旋回性能とを両立した空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0007】
すなわち、本開示の空気入りタイヤは、非導電性ゴムで形成され且つ接地面を構成するキャップゴムと、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に設けられるベースゴムと、車両に対する装着方向が表示されるタイヤ外表面と、を有し、前記キャップゴムは、タイヤ赤道においてタイヤ周方向に延びるリブと、前記リブにおいて前記キャップゴムの厚み方向に延びて接地面から前記ベースゴムの底面に至る導電ゴムと、を有し、前記導電ゴムは、前記キャップゴムよりもゴム硬度が低く、前記接地面での幅は前記底面での幅よりも大きく、平面視において接地面における前記導電ゴムは、前記リブの中心に対して装着内側にオフセットしており、タイヤ子午線断面において、前記導電ゴムの上部と前記キャップゴムとの界面は、径方向外側に向かうにつれて拡がっており且つ径方向外側に湾曲する曲面であり、装着内側の平均曲率よりも装着外側の平均曲率の方が小さい。
【0008】
このように、導電ゴムはキャップゴムよりもゴム硬度が低く、導電ゴムの上部とキャップゴムとの界面は、径方向外側に向かうにつれて拡がっている曲面であるので、柔らかいゴムにより接地長が長くなり、直進性能が向上する。
さらに、導電ゴムは装着内側へオフセットしており、曲面は、径方向外側に湾曲し、装着内側の平均曲率よりも装着外側の平均曲率の方が小さいので、装着外側のキャップゴムの領域を確保し、剛性低下を抑制することで、旋回性能を確保可能となる。
さらに、導電ゴムの上部である先太り部分が曲面のみで形成されているので、先太り部分が直線状である場合に比べて、旋回時の力が分散し、発熱が抑えられる。
また、導電ゴムは、接地面での幅が底面での幅よりも大きいので、全体を同一幅で構成する場合に比べて、柔らかいゴムである導電ゴムの量を抑え、旋回性能の悪化を抑制している。
よって、直進性能と旋回性能とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図。
図2】導電ゴム及びその周囲の構造を示す断面図。
図3】変形例を示す断面図。
図4】比較例1を示す断面図。
図5】比較例2を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向RD外側に延びるサイドウォール部2と、両サイドウォール部2のタイヤ径方向RD外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0012】
また、このタイヤTは、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、一対のビード部同士1の間に設けられ、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカスプライは、タイヤ赤道CLに対して略直角に延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層4の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム4aが配置されている。
【0013】
さらに、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外側には、サイドウォールゴム6が設けられている。また、ビード部1におけるカーカス層4の外側には、リム装着時にリム(図示しない)と接するリムストリップゴム7が設けられている。本実施形態では、カーカス層4のトッピングゴム及びリムストリップゴム7が導電性ゴムで形成されており、サイドウォールゴム6は非導電性ゴムで形成されている。
【0014】
トレッド部3におけるカーカス層4の外側には、カーカス層4を補強するためのベルト4bと、ベルト補強材4cと、トレッドゴム5とが内側から外側に向けて順に設けられている。ベルト4bは、複数枚のベルトプライにより構成されている。ベルト補強材4bは、タイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆して構成されている。ベルト補強材4bは、必要に応じて省略しても構わない。
【0015】
図1及び図2に示すように、トレッドゴム5は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面Eを構成するキャップゴム50と、キャップゴム50のタイヤ径方向内側に設けられるベースゴム51と、を有する。キャップゴム50の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の主溝5aが形成されている。キャップゴム50は、タイヤ赤道CLにおいてタイヤ周方向CDに延びるリブRbと、リブRbにおいてキャップゴム50の厚み方向に延びて接地面Eからベースゴム51の底面に至る導電ゴム52と、を有する。リブRbは、主溝5aにより区画されており、タイヤ周方向CDに連続している。図示していないが、タイヤ外表面(本実施形態ではサイドウォールゴム6)には、車両に対する装着方向が表示されている。
【0016】
上記において接地面Eは、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地する面であり、そのタイヤ幅方向WDの最外位置が接地端となる。なお、正規荷重及び正規内圧とは、JISD4202(自動車タイヤの諸元)等に規定されている最大荷重(乗用車用タイヤの場合は設計常用荷重)及びこれに見合った空気圧とし、正規リムとは、原則としてJISD4202等に定められている標準リムとする。
【0017】
本実施形態では、トレッドゴム5の両側端部にサイドウォールゴム6を載せてなるサイドウォールオントレッド(SWOT;side wall on tread)構造を採用しているが、この構造に限られるものではなく、トレッドゴムの両側端部をサイドウォールゴムのタイヤ径方向RD外側端に載せてなるトレッドオンサイド(TOS;tread on side)構造を採用することも可能である。
【0018】
ここで、導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm未満を示すゴムが例示され、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。
【0019】
また、非導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm以上を示すゴムが例示され、原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合したものが例示される。該シリカは、例えば原料ゴム成分100重量部に対して30〜100重量部で配合される。シリカとしては、湿式シリカを好ましく用いるが、補強材として汎用されているものは制限なく使用できる。非導電性ゴムは、沈降シリカや無水ケイ酸などのシリカ類以外にも、焼成クレーやハードクレー、炭酸カルシウムなどを配合して作製してもよい。
【0020】
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
【0021】
導電性ゴムは、耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着非表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが望ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
【0022】
図2Aは、導電ゴム52を示す断面図である。導電ゴム52は、キャップゴム50よりもゴム硬度が低く、導電ゴム52はキャップゴム50よりも柔らかい。ここでいうゴム硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度を意味する。本実施形態では、導電ゴム52は、径方向外側RD1に向けて先太り形状であり且つ接地面Eに露出する曲面部53と、曲面部53からベースゴム51の底面まで直線状に延びる延伸部54と、を有する。
【0023】
タイヤ子午線断面において、導電ゴム52の接地面Eでの幅D3は底面での幅D2よりも大きい。平面視において接地面Eにおける導電ゴム52は、リブRbの中心CLに対して装着内側INにオフセットしている。本実施形態では、リブRbの中心CLとタイヤ赤道CLとが一致しているが、両者が一致していなくてもよい。
【0024】
同図に示すように、導電ゴム52の上部である曲面部53とキャップゴム50との界面は、径方向外側RD1に向かうにつれて拡がっており且つ径方向外側RD1に湾曲する曲面である。装着内側INの平均曲率R1よりも装着外側OUTの平均曲率R2の方が小さい。平均曲率は、曲面が単一である場合にはその曲率を意味し、曲面が複数ある場合にはそれらの曲率の平均値を意味する。
【0025】
本実施形態では、曲面部53と延伸部54との接続部分における幅中心C1が、リブRbの中心CLに対して装着内側INへオフセットする量D1は、5.0mmである。勿論、これに限定されず、オフセット量D1は、2.0mm〜20.0mmが好ましい。
【0026】
本実施形態では、曲面部53における装着内側INの平均曲率R1は、5.0mmである。勿論、これに限定されず、装着内側INの平均曲率R1は、3mm〜7mmが好ましい。
【0027】
本実施形態では、曲面部53における装着外側OUTの平均曲率R2は、3.0mmである。勿論、これに限定されず、装着外側OUTの平均曲率R2は、1mm〜5mmが好ましい。ただし、装着内側INの平均曲率R1>装着外側OUTの平均曲率R2が好ましい。
【0028】
本実施形態では、延伸部54の幅D2は、2.0mmである。勿論、これに限定されず、延伸部54の幅D2は、0.2mm〜3mmが好ましい。
【0029】
図2の例では、導電ゴム52の下部である延伸部54は、径方向内側RD2に延びてリブRbの中心CLよりも装着内側INにオフセットしている。この構成によれば、装着外側OUTのキャップゴム50の量が大きくなるので、旋回性能の低下を抑制できる。
【0030】
一方、図3のように、導電ゴム52を形成してもよい。図3の例では、導電ゴム52の下部である54は、径方向内側RD2に向かうにつれてリブRbの中心CLに近づくように延びている。一般的に、空気入りタイヤはネガティブキャンバで車両に装着されることが多く、荷重が斜めに入力される。この構成であれば、荷重の作用する方向と、導電ゴム52の下部である延伸部54が延びる方向とが一致または近くなるので、荷重を適切に受けることができる。
【実施例】
【0031】
本開示の構成と効果を具体的に示すために、下記実施例について下記の評価を行った。
【0032】
(1)直進性能(ドライ&ウェット)
日本産セダン車(2000cc)の車両に各タイヤを装着し、内圧は車両指定とした。二名乗車にて、60〜140km/hで直進走行し、制動試験を行い、ドライバーの官能試験により評価した。比較例1のタイヤの結果を100とする指数で表現した。数値が大きいほど、直進性能が優れていることを示す。ウェット路面では、1mmの水膜路面を走行した。
【0033】
(2)旋回性能(ドライ&ウェット)
日本産セダン車(2000cc)の車両に各タイヤを装着し、内圧は車両指定とした。二名乗車にて、60〜140km/hでスラローム走行し、ドライバーの官能試験により評価した。比較例1のタイヤの結果を100とする指数で表現した。数値が大きいほど、旋回性能が優れていることを示す。ウェット路面では、1mmの水膜路面を走行した。
【0034】
実施例1
図2に示す実施形態を実施例1とした。
【0035】
比較例1
図4に示すように、リブRbにおいて接地面Eからベースゴム51の底面に至る導電ゴム151を設けた。導電ゴム151は、接地面Eからベースゴム51の底面に至るまでタイヤ径方向RDに平行な直線部のみで構成されている。導電ゴム151のオフセット量D1は、実施例1と同じとした。その他は、実施例1と同じである。
【0036】
比較例2
図5に示すように、導電ゴム252を構成する曲面部253の曲面を、装着内側INと装着外側OUTとで同じにした。両方とも平均曲率R1=5.0mmとしている。それ以外は、実施例1と同じとした。
【0037】
【表1】
【0038】
表1より、比較例2は比較例1に対し、直進性能が向上しているが、旋回性能が低下している。直進性能が向上したのは、接地面に露出する導電ゴム(柔らかいゴム)の量が増えたため、内圧により柔らかいゴムが膨出することで、接地長が長くなり、接地面積が大きくなり(すなわちグリップ面積が大きくなり)、その結果、直進性能(駆動性能、制動性能)が向上したと考えられる。一方、柔らかいゴムが増加することで、旋回時に踏ん張りが効きにくく、旋回性能が低下したと考えられる。
【0039】
実施例1は、比較例1に対して、旋回性能を維持しつつ、直進性能も向上している。これは、装着外側OUTの平均曲率を装着内側INよりも小さくすることで、装着外側OUTのキャップゴム50の領域が多くなり、剛性が低下しにくくなったためと考えられる。また、導電ゴム52の上部である先太り部分が曲面のみで形成されているので、先太り部分が直線状である場合に比べて、旋回時の力が分散し、発熱が抑えられると考えられる。
【0040】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、一対のビード部1と、ビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3と、一対のビード部1の間に設けられたトロイド状のカーカス層4と、トレッド部3のカーカス層4の外側に設けられたトレッドゴム5と、を備える。トレッドゴム5は、非導電性ゴムで形成され且つ接地面Eを構成するキャップゴム50と、キャップゴム50のタイヤ径方向内側RD2に設けられるベースゴム51と、車両に対する装着方向が表示されるタイヤ外表面と、を有する。キャップゴム50は、タイヤ赤道CLにおいてタイヤ周方向CDに延びるリブRbと、リブRbにおいてキャップゴム50の厚み方向に延びて接地面Eからベースゴム51の底面に至る導電ゴム52と、を有する。導電ゴム52は、キャップゴム50よりもゴム硬度が低く、接地面Eでの幅D3は底面での幅D2よりも大きい。平面視において接地面Eにおける導電ゴム52は、リブRbの中心CLに対して装着内側にオフセットしている。タイヤ子午線断面において、導電ゴム52の上部とキャップゴム50との界面は、径方向外側RD1に向かうにつれて拡がっており且つ径方向外側RD1に湾曲する曲面である。装着内側INの平均曲率R1よりも装着外側OUTの平均曲率R2の方が小さい。
【0041】
このように、導電ゴム52はキャップゴム50よりもゴム硬度が低く、導電ゴム52の上部とキャップゴム50との界面は、径方向外側RD1に向かうにつれて拡がっている曲面であるので、柔らかいゴムにより接地長が長くなり、直進性能が向上する。
さらに、導電ゴム52は装着内側INへオフセットしており、曲面は、径方向外側RD1に湾曲し、装着内側INの平均曲率R1よりも装着外側OUTの平均曲率R2の方が小さいので、装着外側OUTのキャップゴム50の領域を確保し、剛性低下を抑制することで、旋回性能を確保可能となる。
さらに、導電ゴム52の上部である先太り部分が曲面のみで形成されているので、先太り部分が直線状である場合に比べて、旋回時の力が分散し、発熱が抑えられる。
また、導電ゴム52は、接地面Eでの幅D3が底面での幅D2よりも大きいので、全体を同一幅で構成する場合に比べて、柔らかいゴムである導電ゴムの量を抑え、旋回性能の悪化を抑制している。
よって、直進性能と旋回性能とを両立することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、導電ゴム52は、径方向外側RD1に向けて先太り形状であり且つ接地面Eに露出する曲面部53と、曲面部53からベースゴム51の底面まで直線状に延びる延伸部54と、を有する。
【0043】
この構成によれば、直線状の延伸部54により、柔らかい導電ゴムの量を抑制できるので、旋回性能の低下を抑制できる。
【0044】
本実施形態では、曲面部53と延伸部54との接続部分における幅中心C1が、リブRbの中心CLに対して装着内側INへオフセットする量D1は2〜20mmであり、曲面部53における装着内側INの平均曲率R1は、3〜7mmであり、曲面部53における装着外側OUTの平均曲率R2は、1〜5mmである。ただし、装着内側INの平均曲率R1>装着外側OUTの平均曲率R2である。
【0045】
この構成が、好適な例である。
【0046】
本実施形態では、導電ゴム52の下部である延伸部54は、径方向内側RD2に延びてリブRbの中心CLよりも装着内側INにオフセットしている。
【0047】
この構成によれば、装着外側OUTのキャップゴム50の量が大きくなるので、旋回性能の低下を抑制できる。
【0048】
本実施形態では、導電ゴム52の下部である延伸部54は、径方向内側RD2に向かうにつれてリブRbの中心CLに近づくように延びている。
【0049】
この構成であれば、荷重の作用する方向と、導電ゴム52の下部である延伸部54が延びる方向とが一致または近くなるので、荷重を適切に受けることができる。
【0050】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
50…キャップゴム
51…ベースゴム
52…導電ゴム
53…曲面部
54…延伸部
Rb…リブ
E…接地面
図1
図2
図3
図4
図5