(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
保存対象物、及び当該保存対象物の冷却に用いられる液体窒素を収容する収容室を内部に有し、収容室内の下方に窒素の液相が形成され、収容室内の上方に窒素の気相が形成され、保存対象物が前記気相に配置される保存容器と、
前記気相に配置されて気体窒素を凝縮させる冷却部を有する冷凍機と、
前記冷却部の鉛直方向下方に配置される液滴受部、及び当該液滴受部と前記液相とをつなぐ流路部を有し、前記冷却部により凝縮された液体窒素を前記液相に誘導する誘導部と、
を備えることを特徴とする保存装置。
前記液滴受部は、前記蓋部が前記開口部を閉塞した状態で前記開口部の鉛直方向下方に位置する第1姿勢と、前記蓋部が前記開口部を開放した状態で前記開口部の鉛直方向下方から退避する第2姿勢との間で切り替え可能である請求項7に記載の保存装置。
保存対象物、及び当該保存対象物の冷却に用いられる液体窒素を収容する収容室を内部に有し、収容室内の下方に窒素の液相が形成され、収容室内の上方に窒素の気相が形成され、保存対象物が前記気相に配置される保存容器と、
前記収容室における保存対象物の収容スペースに対して水平方向位置がオフセットするように配置され且つ前記気相に配置されて気体窒素を凝縮させる冷却部を有する冷凍機と、
前記冷却部の鉛直方向下方で且つ前記液相の液面より上方に配置され、鉛直方向に対して傾斜した面を有し、前記冷却部により凝縮されて落下する液体窒素を前記傾斜した面で受けて液体窒素の液跳ね方向を制御する液跳ね制御部と、
前記液跳ね制御部の鉛直方向上方に配置される開口、及び前記液跳ね制御部の周囲を覆う側壁を有し、前記液跳ね制御部に当たった液滴の飛散を抑制する飛散防止部と、
を備えることを特徴とする保存装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る保存装置の内部構造を示す正面図である。
図2は、実施の形態1に係る保存装置の内部構造を示す斜視図である。
図3(A)及び
図3(B)は、実施の形態1に係る保存装置の冷凍機近傍の内部構造を拡大して示す斜視図である。本実施の形態に係る保存装置100は、保存容器102と、冷凍機104と、誘導部106とを備える。
【0012】
保存容器102は、有底状の内筒108と、有底状の外筒110とを有する。内筒108の内部には、収容室112が配置される。収容室112は、保存対象物及び液体窒素を収容する密閉空間である。収容室112に収容される保存対象物としては、様々な組織や細胞、精子、卵子等の生物学的検体が例示される。なお、保存装置100の保存対象物は生物学的検体に限定されず、液体窒素によって凍結保存すべき全てのものが含まれる。
【0013】
保存容器102は、保存対象物を収容するトレイ114を有する。トレイ114は、水平方向で収容室112の略中心に配置されて鉛直方向に延在する支持軸116と、支持軸116に固定され保存対象物の収容スペースを区画する隔壁118とを有する。収容室112内には、隔壁118によって複数の収容スペースが形成されている。
【0014】
内筒108と外筒110との間の空間は真空である。これにより、収容室112内が保存装置100の外部に対して断熱されている。保存容器102の上面には、収容室112と保存容器102の外部とを連通する開口部120が設けられる。開口部120は、保存対象物を収容室112に収容する際又は収容室112から取り出す際に使用される。内筒108と開口部120との接続部分、及び外筒110と開口部120との接続部分は、気密に封止される。開口部120には、開口部120を開閉可能に塞ぐ蓋部122が設けられる。蓋部122は、断熱構造を有する。
【0015】
蓋部122は、保存容器102の中心に対して水平方向の位置がオフセットするように配置される。また、トレイ114は、支持軸116を回動中心として回動させることができる。保存装置100の使用者は、トレイ114を回動させることで所望の収容スペースを蓋部122の鉛直方向直下に移動させることができる。トレイ114に回転構造を採用することで、保存対象物の出し入れのし易さを犠牲にすることなく、開口部120及び蓋部122の寸法を小さくすることができる。開口部120及び蓋部122を小さくすることで、収容室112の保温性を高めることができ、よって液体窒素の蒸発を抑制することができる。特に蓋部122が一般的な断熱材で構成される場合、蓋部122の小型化は収容室112の保温性を高める上で重要である。これは、断熱材の熱伝導率が真空断熱の熱伝導率に比べて大きいためである。
【0016】
液体窒素は、保存対象物の冷却に用いられる。液体窒素により、収容室112内は約−196℃以上約−150℃以下の低温状態に維持される。これにより、保存対象物を凍結状態のまま保存することができる。収容室112内の下方には窒素の液相124が形成され、収容室112内の上方には窒素の気相126が形成(配置)される。液相124の液体窒素が蒸発して、気相126が形成(配置)される。保存対象物は、気相126に配置される。保存対象物を気相126に配置することで、保存対象物と液体窒素との接触によって起こる、マイコプラズマ等による汚染やコンタミネーションを防ぐことができる。特に、保存対象物が生物学的検体である場合、マイコプラズマ汚染やコンタミネーションの防止が重要である。
【0017】
冷凍機104は、収容室112内の気体窒素を凝縮して液体窒素を生成する。生成される液体窒素は、保存対象物の冷却に再利用される。冷凍機104は、窒素を凝縮できる温度まで冷却可能なものであれば特に限定されず、例えばスターリング冷凍機、ギフォード・マクマホン式(GM)冷凍機、パルスチューブ冷凍機等を使用することができる。冷凍機104は、保存容器102の上面に蓋部122とは別に設けられる。冷凍機104は、保存容器102を貫通するように設置される。
【0018】
冷凍機104は、冷却部128と、放熱部130とを有する。冷却部128は、気相126に配置されて気体窒素を凝縮させる。本明細書における「冷却部」には、冷凍機の吸熱部本体に接続されるフィンやチューブ等の熱交換部材も含まれる。熱交換部材は、例えば熱伝導性の高い銅やアルミニウムで構成される。熱交換部材を設けることで冷凍機104と気体窒素との接触面積を増大させることができる。本実施の形態の冷凍機104は、冷却部128として伝熱チューブを有する。伝熱チューブは、冷凍機本体の下端部から収容室112の内壁112a(言い換えれば内筒108の内壁)に向かって延伸し、水平方向で内壁112aに沿って周回した後に再び冷凍機104の下端部に戻るように敷設されている。これにより、効率的に気体窒素を凝縮させることができる。なお、
図1〜
図3(B)では伝熱チューブの一部の図示を省略している。
【0019】
冷却部128は、気相126中の気体窒素から熱を奪って気体窒素を凝縮させる。これにより、冷却部128の表面に液体窒素の液滴が生じる。放熱部130は、冷却部128が気体窒素から奪った熱を放出する。放熱部130は、保存容器102の外部に配置される。したがって、気体窒素から奪った熱は、放熱部130によって保存容器102の外部に放熱される。これにより、より効率よく気体窒素を凝縮させることができる。
【0020】
誘導部106は、冷却部128により凝縮された液体窒素を液相124に誘導する機能を有する。誘導部106は、液滴受部132と、流路部134とを有する。液滴受部132は、冷却部128の鉛直方向下方に配置される。本実施の形態の液滴受部132は、冷却部128を構成する伝熱チューブにおける、冷凍機104の下端部から収容室112の内壁112aに向かって延伸する部分、及び内壁112aから冷凍機104の下端部に向かって延伸する部分、言い換えれば保存対象物の収容スペースの鉛直方向上方に延在する部分の鉛直方向下方に配置される。冷却部128の表面に生じる液体窒素の液滴は、液滴受部132に落下する。これにより、液体窒素の液滴がトレイ114に収容されている保存対象物に付着することを抑制することができる。
【0021】
液滴受部132は樋状部材であり、一端(基端部)が収容室112の中心近傍に配置され、他端(先端部)が収容室112の内壁112a近傍に配置される。液滴受部132は、その延在方向に対して直交する断面の形状がV字状あるいはU字状である。また、液滴受部132は、基端部側から先端部側に向かって下方に傾斜する。したがって、液滴受部132に滴下した液体窒素は、液滴受部132の幅方向の中心に集まりながら内壁112aに向かって移動する。
【0022】
流路部134は、液滴受部132と液相124とをつなぐ部分である。本実施の形態の流路部134は、収容室112の内壁112aを含む。内壁112aは、鉛直壁面112a1と、鉛直壁面112a1から突出する庇部136を含む。したがって、流路部134は、鉛直壁面112a1と庇部136とで構成される。庇部136は、鉛直壁面112a1から収容室112の中心且つ上方に向かって突出するとともに、鉛直壁面112a1に沿って周回するように設けられる。したがって、庇部136は、収容室112の中心側から鉛直壁面112a1側に向かって下方に傾斜する。
【0023】
庇部136は、周回方向に間隔をあけて鉛直壁面112a1に溶接等により固定される。隣接する固定部136aと固定部136aとの間の領域において、鉛直壁面112a1と庇部136とは非接触となっている。すなわち、鉛直壁面112a1と庇部136との接続部には、鉛直方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0024】
液滴受部132の先端部は、収容室112の内壁112aに当接する。本実施の形態の液滴受部132は、内壁112aのうちの庇部136に当接する。液滴受部132上を内壁112aに向かって移動する液体窒素は庇部136に到達すると、庇部136上を鉛直壁面112a1に向かって移動する。そして、液体窒素は、隣接する固定部136aの間に位置する貫通孔を通過し、鉛直壁面112a1を伝って下降して液相124に到達する。なお、本実施の形態の庇部136は、冷却部128のうち鉛直壁面112a1に沿って周回する部分の鉛直方向下方に配置される。このため、庇部136は、冷却部128の周回部分に発生する液体窒素の液滴を受けることができる。したがって、庇部136は、液滴受部132としても機能する。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態に係る保存装置100は、収容室112の上方に形成される窒素の気相126に、冷凍機104の冷却部128が配置されている。上述した従来の保存装置では、保存容器に外付けされた凝縮室に気体窒素を移送し、凝縮室で生成された液体窒素を保存容器内に送り返していた。このため、凝縮室から保存容器へ液体窒素を移送する際に熱損失が生じやすかった。これに対し、本実施の形態の保存装置100では、保存容器102の内部と外部との間での液体窒素の移送がないため、液体窒素の移送による熱損失の発生を回避することができる。このため、液体窒素の利用効率を向上させることができる。
【0026】
収容室112の上方に形成される気相126に冷凍機104の冷却部128を設けた場合、冷却部128で生じる液体窒素の液滴が落下して、保存対象物に付着するおそれがある。これに対し、保存装置100は、冷却部128で生じた液体窒素を収容室112下方の液相124に誘導する誘導部106を備える。誘導部106は、冷却部128の鉛直方向下方に配置される液滴受部132と、液滴受部132と液相224とをつなぐ流路部134とを有する。冷却部128により生成された液体窒素は、液滴受部132及び流路部134を経由して液相124に到達する。このため、保存対象物が液体窒素で汚染されるおそれを低減することができる。また、液体窒素は自重により誘導部106を経由して液相224に至る。このため、液体窒素を液相224に誘導する際に、液体窒素に衝撃が加わって気化するおそれを低減することができる。
【0027】
本実施の形態の流路部134は、収容室112の内壁112aを含む。すなわち、保存装置が本来備える構造体である収容室112の内壁112aを、流路部134の一部に利用している。このため、保存装置100を構成する部品点数の増加を抑制することができる。また、内壁112aは庇部136を含み、液滴受部132は庇部136に当接する。これにより、液滴受部132上の液体窒素をより確実に内壁112aに移すことができる。なお、液滴受部132の端部が直に液相124に接してもよい。すなわち、液滴受部132が流路部134の機能を兼ね備えてもよい。言い換えれば、液滴受部132と流路部134とが一体的に構成されてもよい。
【0028】
保存装置100は、気相126中の窒素を凝縮させて液体窒素を生成し、この液体窒素を液相124に戻して再利用している。これにより、保存装置100への液体窒素の充填回数を減らすことができるため、充填の手間を軽減することができる。また、保存装置100への液体窒素の補充を怠ったことで保存対象物の保存状態が悪化するリスクを軽減することができる。また、液体窒素の消費量を抑制することができるため、保存対象物の保存に要する経済的な負担を軽減することができる。
【0029】
また、一般に気相中は、上方が下方よりも温度が高くなる傾向にある。このため、気相中で保存対象物を保存する場合、保存対象物の保存温度にばらつきが生じる可能性がある。保存対象物の保存温度を一定にするためには、保存対象物の収容スペースを収容室内の一部に限定する必要がある。この場合、保存装置における保存対象物の収納効率が低下してしまう。これに対し、本実施の形態の保存装置100は、収容室112の上部に冷却部128を有する。これにより、気相126中に対流を誘発して、気相126の温度分布を均一化することができる。このため、保存対象物の収容スペースを収容室112の広範囲に拡大することができる。よって、保存対象物の収容効率を向上させることができる。
【0030】
また、冷凍機104を挿通するための新たな開口部を保存容器に形成し、また収容室の内壁に庇部136を固定する、という簡単な加工だけで、冷凍機を備えない従来の保存装置から本実施の形態に係る保存装置100を製造することができる。このため、冷凍機付きの凝集室を外部に設けて液体窒素の再利用を図る場合に比べて、より簡単に、また改造に起因する収容室からの熱リークの増大を抑制しながら、液体窒素の再利用を実現することができる。
【0031】
(変形例1)
上述した実施の形態1に係る保存装置100には、変形例1を挙げることができる。変形例1に係る保存装置100は、内壁112aに代えてトレイ114を流路部134として利用している点と、冷却部128及び液滴受部132の形状が異なる点とを除き、実施の形態1に係る保存装置100と同様の構成を備える。以下、変形例1に係る保存装置について、実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図4(A)及び
図4(B)は、変形例1に係る保存装置の冷凍機近傍の内部構造を拡大して示す斜視図である。
【0032】
本変形例に係る保存装置100は、冷却部128として、冷凍機104の下端部において下方に突出する複数のフィンを有する。また、液滴受部132は、有底筒138と連結部140とを有する。有底筒138は、冷却部128を被覆するようにして冷凍機104に固定される。有底筒138の側面には複数の貫通孔が設けられ、貫通孔を介して冷却部128と気相126とが連通される。連結部140は樋状部材もしくは筒状部材であり、有底筒138の下端部から収容室112の中心に向かって延伸する。有底筒138は、連結部140との接続部分に貫通孔を有する。有底筒138の底面は、連結部140との接続部分に向かって下方に傾斜している。
【0033】
流路部134は、トレイ114の支持軸116を含む。また、支持軸116は、軸本体116aと、軸本体116aの表面から突出する庇部136を含む。したがって、流路部134は、軸本体116aと庇部136とで構成される。軸本体116aは鉛直方向に延在する管状部材であり、上端部は気相126に配置され、下端部は液相124に配置される。庇部136は、軸本体116aの上端部に設けられる。庇部136は、軸本体116aの上端部の表面から上方、且つ水平方向で収容室112の外側に向かって広がっている。
【0034】
液滴受部132の連結部140は、支持軸116に当接する。本変形例では、液滴受部132は支持軸116のうちの庇部136に当接する。この状態で連結部140は、有底筒138から庇部136に向かって下方に傾斜する。冷却部128の表面に生じた液体窒素の液滴は、有底筒138の底面に落下する。有底筒138の底面に落下した液体窒素は、連結部140を経由して庇部136に到達する。その後、液体窒素は庇部136から軸本体116aの内壁を伝って液相124に到達する。
【0035】
本変形例に係る保存装置100によっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、庇部136は、軸本体116aの上端面ではなく、軸本体116aの外側面に設けられてもよい。この場合、一例として、軸本体116aの外側面に貫通孔が設けられる。庇部136から軸本体116aに到達した液体窒素は、この貫通孔を通って軸本体116aの内部に進入し、軸本体116aの内壁を伝って液相124に到達する。また他の例として、庇部136における軸本体116aの近傍に貫通孔が設けられ、液体窒素が貫通孔を経て軸本体116aの外側面を伝って液相124に到達する構成であってもよい。また、流路部134は、支持軸116に代えて隔壁118を含んでもよい。この場合、液滴受部132の連結部140は、隔壁118に当接する。また、隔壁118は好ましくは庇部136を有し、連結部140は庇部136に当接する。また、冷却部128をフィン形状とし、液滴受部132を有底筒138及び連結部140で構成し、連結部140を内壁112aに当接させる構造であってもよい。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る保存装置は、冷凍機を蓋部に設けた点を除き、実施の形態1に係る保存装置100と同様の構成を備える。以下、実施の形態2に係る保存装置について、実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図5は、実施の形態2に係る保存装置の内部構造を示す斜視図である。
図6(A)は、実施の形態2に係る保存装置の冷凍機近傍の内部構造を拡大して示す斜視図であり、
図6(B)は、実施の形態2に係る保存装置の冷凍機近傍の内部構造を拡大して示す正面図である。
【0037】
本実施の形態に係る保存装置200は、保存容器202と、冷凍機204と、誘導部206とを備える。保存容器202は、有底状の内筒208と、有底状の外筒210とを有する。内筒208の内部には収容室212が配置される。収容室212には、保存対象物及び液体窒素が収容される。保存容器202は、保存対象物を収容するトレイ214を有する。トレイ214は、鉛直方向に延在する支持軸216と、保存対象物の収容スペースを区画する隔壁218とを有する。
【0038】
内筒208と外筒210との間の空間は真空である。保存容器202の上面には、収容室112と保存容器102の外部とを連通する開口部220が設けられる。開口部220は、保存対象物を収容室212に収容する際又は収容室212から取り出す際に使用される。開口部220には、蓋部222が設けられる。収容室212に収容される液体窒素は、保存対象物の冷却に用いられる。収容室212内の下方には窒素の液相224が形成(配置)され、収容室212内の上方には窒素の気相226が形成(配置)される。保存対象物は気相226に配置される。
【0039】
冷凍機204は、収容室212内の気体窒素を凝縮して液体窒素を生成する。冷凍機204は、蓋部222に設けられる。冷凍機204は、蓋部222を貫通するように設置される。冷凍機204は、冷却部228と、放熱部230とを有する。冷却部228は気相226に配置され、気体窒素から熱を奪って凝縮させる。本実施の形態の冷凍機204は、冷却部228として冷凍機204の下端部において下方に突出する複数のフィンを有する。各フィンの下端面は中心が尖った形状を有する。このため、各フィンの表面に生じる液体窒素の液滴は、フィンの先端部に集まる。放熱部230は、冷却部228が気体窒素から奪った熱を放出する。放熱部230は、保存容器202の外部に配置される。
【0040】
保存装置200は、冷却部228を被覆して外気から遮断するカバー部242を備える。カバー部242は、蓋部222が開口部220を閉塞した状態で、すなわち蓋部222が開口部220に挿し込まれた状態で冷却部228を露出させる第1姿勢と、蓋部222が開口部220を開放した状態で、すなわち蓋部222が開口部220から取り外された状態で冷却部228を被覆する第2姿勢との間で切り替え可能である。カバー部242を設けることで、蓋部222を開口部220から取り外した際に、冷却部228が外気に曝露されることを防ぐことができる。
【0041】
カバー部242は、蓋部222の挿抜に連動して第1姿勢と第2姿勢とを切り替えることができる。
図7(A)、
図7(B)、
図8(A)及び
図8(B)を参照しながら、カバー部242の開閉動作について詳細に説明する。
図7(A)、
図7(B)、
図8(A)及び
図8(B)は、蓋部の挿抜に連動してカバー部が変位する様子を示す模式図である。保存装置200は、カバー部242の開閉機構として可動部材244を備える。本実施の形態の可動部材244は、蓋部222が挿入されるスリーブ形状を有し、蓋部222のおよそ下半分が可動部材244に挿入される。可動部材244は、外周方向に突出する係止部244aを上端部に有する。係止部244aは、水平方向で開口部220の外側まで突出している。可動部材244の下面には開口部244bが設けられ、開口部244bから冷却部228が突出する。
【0042】
また、可動部材244の下面には、開口部244bから突出する冷却部228を覆うようにカバー部242が設けられる。カバー部242は可動部材244に対して、ヒンジ機構248を介して回動可能に連結される。ヒンジ機構248は水平方向に延びる回動軸を有する。本実施の形態では、カバー部242は2つの部材に分割されており、下方に観音開きできるように可動部材244に連結されている。また、カバー部242は、ヒンジ機構248に設けられるばね等の付勢部材によって、カバー部242が閉まる方向、すなわち冷却部228を覆う方向に付勢されている。
【0043】
可動部材244は、蓋部222に対して変位可能に設けられる。具体的には、可動部材244は、蓋部222に対して、蓋部222の開口部220への挿抜方向、言い換えれば保存容器202の内−外方向に変位可能である。また、可動部材244は、蓋部222が開口部220に挿入された状態で、蓋部222の外周面と開口部220の内周面との間に配置される。
【0044】
図7(A)に示すように、蓋部222が開口部220から取り外されている状態で、可動部材244は可動範囲の下端、すなわち最も保存容器内方向(収容室212の中心寄り)に位置する。可動部材244は、ばね等の付勢部材246によって蓋部222に対して保存容器内方向、すなわち蓋部222から離間する方向に付勢される。この状態では、カバー部242は第2姿勢をとり、冷却部228はカバー部242で覆われる。
【0045】
図7(B)に示すように、蓋部222は開口部220に挿入されると、主に自重により開口部220内へ進入していく。そして、可動部材244の係止部244aが、開口部220の上縁部に突き当たる。係止部244aと開口部220の上縁部との係合により、可動部材244がこれ以上保存容器内側方向へ変位することが規制される。
【0046】
その結果、
図8(A)に示すように、蓋部222のみが保存容器内方向へ変位する。可動部材244は、蓋部222の開口部220への挿入にともなって開口部220の縁部により付勢部材246の付勢方向とは逆の方向に押圧される。これにより、可動部材244は、蓋部222に対して保存容器外方向に変位する。一方、蓋部222は、可動部材244に対して保存容器内方向に変位する。そして、蓋部222の下端部が開口部244bから突出して、ヒンジ機構248が有する付勢部材の付勢方向とは逆の方向にカバー部242を押圧する。これにより、カバー部242が開き始める。
【0047】
図8(B)に示すように、蓋部222がさらに開口部220に進入すると、カバー部242は蓋部222によってさらに押圧されて、押し広げられる。これにより、カバー部242が第2姿勢から第1姿勢に切り替わり、冷却部228が気相226に露出する。
【0048】
すなわち、可動部材244は、開口部220への蓋部222の挿抜にともなう開口部220の縁部との係合と、付勢部材246の付勢力とによって、蓋部222に対して保存容器外方向又は保存容器内方向に変位する。可動部材244に連結されたカバー部242は、可動部材244が蓋部222に対して保存容器外方向に変位すると第1姿勢となり(
図8(B))、可動部材244が蓋部222に対して保存容器内方向に変位すると第2姿勢となる(
図7(A))。
【0049】
図5、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、誘導部206は、冷却部228により凝縮された液体窒素を液相224に誘導する機能を有する。誘導部206は、液滴受部232と、流路部234とを有する。液滴受部232は、冷却部228の鉛直方向下方に配置される。冷却部228の表面に生じる液体窒素の液滴は、液滴受部232に落下する。
【0050】
液滴受部232は樋状部材であり、一端(基端部)が収容室212の中心近傍に配置され、他端(先端部)が収容室212の内壁212a近傍に配置される。液滴受部232は、その延在方向に対して直交する断面の形状がV字状あるいはU字状である。また、液滴受部232は、基端部側から先端部側に向かって下方に傾斜する。したがって、液滴受部232に滴下した液体窒素は、液滴受部232の幅方向の中心に集まりながら内壁212aに向かって移動する。
【0051】
流路部234は、液滴受部232と液相224とをつなぐ部分である。本実施の形態の流路部234は、収容室212の内壁212aを含む。内壁212aは、鉛直壁面212a1と、鉛直壁面212a1から突出する庇部236を含む。庇部236は、鉛直壁面212a1から収容室212の中心且つ上方に向かって突出するように設けられる。庇部236は、鉛直壁面212a1に溶接等により固定される。庇部236と鉛直壁面212a1との接続部には、鉛直方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0052】
液滴受部232の先端部は、収容室212の内壁212aに当接する。本実施の形態の液滴受部232は、内壁212aのうちの庇部236に当接する。液滴受部232上を内壁212aに向かって移動する液体窒素は庇部236に到達すると、庇部236上を鉛直壁面212a1に向かって移動する。そして、液体窒素は、貫通孔を通過して鉛直壁面212a1を伝って下降し、液相224に到達する。
【0053】
液滴受部232は、保存容器202に対してヒンジ機構250を介して回動可能に連結される。ヒンジ機構250は水平方向に延びる回動軸を有する。本実施の形態では、液滴受部232の基端部が開口部220の下端部にヒンジ機構250を介して回動可能に連結されている。液滴受部232は、基端部を支点として、蓋部222が開口部220を閉塞した状態で開口部220の鉛直方向下方に位置する第1姿勢と、蓋部222が開口部220を開放した状態で開口部220の鉛直方向下方から退避する第2姿勢との間で切り替え可能である。
【0054】
図5〜
図6(B)には、液滴受部232が第1姿勢にある状態が図示されている。第1姿勢の状態で、液滴受部232は略水平方向に延在し、冷却部228の鉛直方向下方に配置される。一方、
図9には、液滴受部232が第2姿勢にある状態が図示されている。
図9は、実施の形態2に係る保存装置200において液滴受部232が第2姿勢にある状態を示す斜視図である。第2姿勢の状態で、液滴受部232は開口部220内に配置されて略鉛直方向に延在する。液滴受部232の先端部は、開口部220から保存容器202の外部に突出する。液滴受部232は第2姿勢に変位すると、少なくとも開口部220の中心の鉛直方向下方から退避する。すなわち、鉛直方向上方から見て、第1姿勢にある液滴受部232は開口部220の中心と重なり、第2姿勢にある液滴受部232は開口部220の中心から外れる。
【0055】
液滴受部232は、ヒンジ機構250に設けられるばね等の付勢部材によって、第1姿勢をとるように付勢されている。庇部236は液滴受部232のストッパとして機能し、液滴受部232の先端部が庇部236に当接することで第1姿勢が維持される。保存装置200の使用者は、蓋部222を開口部220から引き抜いた後、ヒンジ機構250の付勢部材の付勢力に逆らって液滴受部232を引き起こすことで、液滴受部232を第2姿勢に切り替えることができる。
【0056】
液滴受部232の先端部近傍には、図示しない係止フックが設けられている。使用者は、液滴受部232を第2姿勢に切り替えた後、係止フックを開口部220の上縁部に引っ掛けることで、液滴受部232の第2姿勢を維持させることができる。また、液滴受部232の基端部近傍には、液滴ポケット252が設けられている。液滴ポケット252は、液滴受部232を第2姿勢に切り替えた際に基端部側に移動する液体窒素の液滴を捕集する。これにより、液滴受部232が第2姿勢にある状態で、液体窒素の液滴が保存対象物に付着することを抑制することができる。
【0057】
第2姿勢にある液滴受部232は、開口部220内に延在する。このため、液滴受部232が第2姿勢の状態のままでは蓋部222を開口部220に挿入することができない。これにより、蓋部222を開口部220に挿入する際に、液滴受部232を第1姿勢に戻すよう使用者に注意喚起することができる。
【0058】
図10(A)、
図10(B)及び
図10(C)を参照しながら、蓋部222の開閉機構について説明する。
図10(A)、
図10(B)及び
図10(C)は、実施の形態2に係る保存装置の蓋部近傍を拡大して示す斜視図である。保存装置200は、蓋部222の開閉機構254を備える。開閉機構254は、保存装置200の使用者が操作するハンドル256と、ハンドル256と蓋部222とに連結されるリンク機構258とを有する。ハンドル256は、鉛直方向上下に変位させることができる。
【0059】
図10(A)に示すように、ハンドル256が可動範囲の上端位置にある状態で、蓋部222は開口部220に挿入されている。
図10(B)に示すように、ハンドル256が下方に変位すると、ハンドル256にかかる力がリンク機構258によって蓋部222を上方に変位させる力に変換されて蓋部222に伝達される。これにより、蓋部222が鉛直方向上方に迫り上がる。ハンドル256が所定位置まで下げられると、蓋部222の全体が開口部220から引き抜かれる。
図10(C)に示すように、ハンドル256がさらに下方に変位すると、ハンドル256にかかる力がリンク機構258によって蓋部222を略水平方向に変位させる力に変換されて蓋部222に伝達される。これにより、蓋部222は開口部220の鉛直方向上方から退避する。
【0060】
本実施の形態の保存装置200では、蓋部222に冷凍機204が設けられている。このため、蓋部222の質量が比較的大きく、蓋部222の開閉に労力を要する。これに対し、開閉機構254を設けることで、蓋部222を容易且つ安全に開閉することができる。リンク機構258は、ダンパー259を備える。これにより、蓋部222の急激な変位を抑制することができ、保存装置200の安全性を高めることができる。なお、ハンドル256は、可動範囲の下端位置にある状態で保存容器202の側方、すなわち保存容器202の上面よりも下方に位置するよう設計される。これにより、ハンドル256が保存対象物の出し入れ作業の妨げとなることを回避することができる。
【0061】
以上説明した本実施の形態に係る保存装置200によっても、実施の形態1に係る保存装置100と同様の効果を奏することができる。また、本実施の形態では、蓋部222に冷凍機204が設けられている。このため、冷凍機を設置するための開口部を保存容器に別途設ける必要がない。よって、冷凍機付きの凝集室を外部に設けて液体窒素の再利用を図る場合に比べて、より一層簡単に、また改造に起因する収容室からの熱リークの増大を抑制しながら、液体窒素の再利用を実現することができる。
【0062】
また、保存装置200はカバー部242を備える。このため、蓋部222を取り外した際に冷却部228が外気に曝露されることを防ぐことができる。これにより、冷却部228への霜付きや結露を抑制することができ、また、冷却部228の熱損失を抑制することができる。さらに、カバー部242は、蓋部222の開閉に連動して自動的に開閉するように構成されている。このため、保存装置200の使用者の作業量が増えることがなく、また、冷却部228が外気に曝露されることをより確実に防ぐことができる。
【0063】
また、液滴受部232は、蓋部222が閉じた状態で開口部220の鉛直方向下方に位置する第1姿勢と、蓋部222が開いた状態で開口部220の鉛直方向下方から退避する第2姿勢との間で切り替え可能である。これにより、保存対象物を出し入れする際の作業性が低下することを抑制することができる。
【0064】
(変形例2)
上述した実施の形態2に係る保存装置200には、変形例2を挙げることができる。変形例2に係る保存装置200は、液滴受部232を水平方向に回動させて第1姿勢と第2姿勢とを切り替える点を除き、実施の形態2に係る保存装置200と同様の構成を備える。以下、変形例2に係る保存装置について、実施の形態2と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図11(A)及び
図11(B)は、変形例2に係る保存装置の開口部近傍の内部構造を拡大して示す斜視図である。
【0065】
本変形例に係る保存装置200において、液滴受部232は、基端部がヒンジ機構260を介して開口部220の下端に連結されている。ヒンジ機構260は、鉛直方向に延びる回動軸を有する。
図11(A)には、液滴受部232が第1姿勢にある状態が図示されている。第1姿勢の状態で、液滴受部232は冷却部228の鉛直方向下方に配置される。
図11(B)には、液滴受部232が第2姿勢にある状態が図示されている。液滴受部232は、基端部を支点として先端部が水平方向に回動することで、開口部220の鉛直方向下方から退避する。
【0066】
液滴受部232の上面には、所定位置に上方に突出する回動ストッパ262が設けられる。回動ストッパ262は、液滴受部232が第2姿勢となったときに開口部220の下端部に当接するように位置が定められている。液滴受部232は、回動ストッパ262が開口部220の下端部に当接するまで回動することで、第2姿勢となる。なお、庇部236は、液滴受部232が第2姿勢の状態で液滴受部232の先端部が到達する位置まで、鉛直壁面212a1に沿って延在してもよい。この場合、庇部236を液滴受部232が回動する際のガイドレールとして利用することができる。また、庇部236を液滴受部232の第1姿勢を定める位置決め機構として利用してもよい。
【0067】
本変形例に係る保存装置200によっても、実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【0068】
(変形例3)
また、上述した実施の形態2に係る保存装置200には、変形例3を挙げることができる。変形例3に係る保存装置200は、液滴受部232を蓋部222に設ける点、内壁212aに代えてトレイ214を流路部234として利用している点、及び、液滴受部232の機能とカバー部242の機能を兼ね備えた2重筒部を備える点を除き、実施の形態2に係る保存装置200と同様の構成を備える。以下、変形例3に係る保存装置について、実施の形態2と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
図12(A)、
図12(B)、
図13(A)及び
図13(B)は、変形例3に係る保存装置の冷凍機近傍の内部構造を拡大して示す斜視図である。
図12(A)、
図12(B)、
図13(A)、
図13(B)の順に、蓋部222が開口部220内に徐々に進入していく様子が図示されている。
【0069】
本変形例に係る保存装置200は、冷却部228として、蓋部222の下端部において下方に突出する複数のフィンを有する。また、保存装置200は2重筒部264を備える。2重筒部264は、第1筒部266と、第2筒部268とを有する。第1筒部266は有底筒状の部材であり、蓋部222に固定されて冷却部228を被覆する。第2筒部268は有底筒状の部材であり、可動部材244に固定されて第1筒部266を被覆する。
【0070】
第1筒部266と第2筒部268とは、第1筒部266の外側面と第2筒部268の内側面とが摺動可能に当接する。また、
図12(A)に示すように可動部材244がその可動範囲の下端に位置する状態では、第1筒部266の底面と第2筒部268の底面とは離間している。
【0071】
第1筒部266及び第2筒部268は、それぞれの側面に貫通孔266a,268aを有する。第1筒部266の貫通孔266aと第2筒部268の貫通孔268aとは、可動部材244が蓋部222に対して保存容器外方向に変位すると互いに重なって2重筒部264の内部と外部とが連通し(
図13(B)参照)、可動部材244が蓋部222に対して保存容器内方向に変位すると互いにずれて2重筒部264の内部と外部との連通が遮断される(
図12(A)参照)ように、互いの位置関係が定められている。したがって、可動部材244がその可動範囲の下端に位置する状態では、貫通孔266aと貫通孔268aとは互いにずれ、冷却部228と気相226との連通が遮断される。
【0072】
第2筒部268の下端部には、ヒンジ機構270を介して連結部240が回動可能に連結される。ヒンジ機構270は水平方向に延びる回動軸を有する。連結部240は樋状部材もしくは筒状部材であり、一端(基端部)の近傍がヒンジ機構270を介して第2筒部268に連結される。連結部240は、ヒンジ機構270が備えるねじ等の付勢部材によって他端(先端部)が鉛直方向上方に変位するように付勢される。可動部材244がその可動範囲の下端に位置する状態で、鉛直方向から見て連結部240は開口部220の延在範囲の内側に位置する。これにより、連結部240が蓋部222の取り外しを阻害することを回避することができる。
【0073】
第1筒部266の下端部には、連結部240に向けて突出する突起部272が設けられる。また、第1筒部266は、突起部272との接続部分に貫通孔266bを有する。第1筒部266の底面は、貫通孔266bに向かって下方に傾斜している。
【0074】
図12(B)に示すように、蓋部222が開口部220内に進入していくと、実施の形態2で説明したように可動部材244の係止部244aが開口部220の縁部に突き当たり(
図7(B))、可動部材244の変位が規制される。したがって、可動部材244に固定される第2筒部268の変位が停止する。蓋部222が開口部220内にさらに進入すると、蓋部222が保存容器内方向へ変位する。このため、蓋部222に固定される第1筒部266は、第2筒部268に対して保存容器内方向に変位する。そして、第1筒部266の底面が第2筒部268の底面に近づいていく。この第1筒部266の変位により、突起部272は、ヒンジ機構270が有する付勢部材の付勢方向とは逆の方向に連結部240を押圧する。これにより、連結部240が倒れ始める。また、貫通孔266aと貫通孔268aとが重なり始める。
【0075】
図13(A)に示すように、蓋部222がさらに開口部220に進入すると、第1筒部266の底面が第2筒部268の底面にさらに近づく。そして、突起部272が連結部240をさらに押圧し、連結部240がより一層倒れる。また、貫通孔266aと貫通孔268aとが重なる領域の面積が増加する。
【0076】
図13(B)に示すように、蓋部222がさらに開口部220に進入して可動部材244がその可動範囲の上端に到達すると、第1筒部266の底面と第2筒部268の底面とが当接する。連結部240は、先端部が流路部234に当接する。この状態で、連結部240は、基端部から先端部に向けて下方に傾斜する。また、貫通孔266aと貫通孔268aとが完全に重なり、冷却部228と気相226とが連通する。すなわち、2重筒部264は、開口部220への蓋部222の挿抜にともなって、冷却部228の気相226への露出と気相226からの遮蔽とを切り替えることができる。
【0077】
冷却部228が気相226に露出すると、冷却部228の表面には液体窒素の液滴が生じる。この液滴は、第1筒部266に落下する。第1筒部266に落下した液滴は、第1筒部266の底面、貫通孔266b及び連結部240を経て、流路部234に至る。したがって、第1筒部266は液滴受部232として機能する。また、蓋部222が開口部220に挿入されていない状態では、貫通孔266aと貫通孔268aとが互いにずれることで、冷却部228が外気に対して遮断される。したがって、第1筒部266と第2筒部268とはカバー部242として機能する。以上より、2重筒部264は、液滴受部232及びカバー部242を構成する。なお、第1筒部266が液滴受部232を構成し、第2筒部268がカバー部242を構成すると見ることもできる。この場合、液滴受部232が冷却部228とともにカバー部242に覆われることになる。これにより、液滴受部232が外気に曝されることを回避することができる。
【0078】
流路部234は、トレイ214の支持軸216を含む。支持軸216は、軸本体216aと、軸本体216aの表面から突出する庇部236を含む。したがって、流路部234は、軸本体216aと庇部236とで構成される。軸本体216aは鉛直方向に延在する管状部材であり、上端部は気相226に配置され、下端部は液相224に配置される。庇部236は、軸本体216aの上端部に設けられる。庇部236は、軸本体216aの上端部の表面から上方、且つ水平方向で収容室212の外側に向かって広がっている。
【0079】
連結部240は、支持軸216に当接する。本変形例では、連結部240は支持軸216のうちの庇部236に当接する。連結部240から庇部236に到達した液体窒素は、庇部236から軸本体216aの内壁を伝って液相224に到達する。
【0080】
連結部240の基端部には、液滴ポケット274が設けられている。液滴ポケット274は、連結部240の先端部が鉛直方向上方に変位している状態で基端部側に移動する液体窒素の液滴を捕集する。これにより、液体窒素の液滴が保存対象物に付着することを抑制することができる。
【0081】
本変形例に係る保存装置200によっても、実施の形態2と同様の効果を奏することができる。また、本変形例では、液滴受部232として機能する2重筒部264が蓋部222に設けられる。このため、液滴受部232を開口部220の鉛直方向下方から退避させるための機構を省略することができる。なお、庇部236は、軸本体216aの上端面ではなく、軸本体216aの外側面に設けられてもよい。この場合、軸本体216aの外側面に貫通孔が設けられる。庇部236から軸本体216aに到達した液体窒素は、この貫通孔を通って軸本体216aの内部に進入し、軸本体216aの内壁を伝って液相224に到達する。また、流路部234は、支持軸216に代えて隔壁218を含んでもよい。この場合、連結部240は、隔壁218に当接する。また、隔壁218は好ましくは庇部236を有し、連結部240は庇部236に当接する。また、2重筒部264を用いるとともに連結部240を内壁212aに当接させる構造であってもよい。
【0082】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係る保存装置の内部構造を模式的に示す正面図である。本実施の形態に係る保存装置300は、保存容器302と、冷凍機304と、液跳ね制御部376と、飛散防止部378とを備える。保存装置300は、実施の形態1,2に係る保存装置100,200に比べて小型の保存装置である。
【0083】
保存容器302は、有底状の内筒308と、有底状の外筒310とを有する。内筒308の内部には、収容室312が配置される。収容室312は、保存対象物及び液体窒素を収容する密閉空間である。内筒308と外筒310との間の空間は真空である。保存容器302の上面には、収容室312と保存容器302の外部とを連通する開口部320が設けられる。開口部320は、保存対象物を収容室312に収容する際又は収容室312から取り出す際に使用される。開口部320は、保存容器302の略中心に配置される。開口部320には、開口部320を開閉可能に塞ぐ蓋部322が設けられる。
【0084】
保存容器302は、保存対象物を収容する複数のラック380を有する。ラック380は上方に延伸するフック380aを有する。ラック380は、フック380aが開口部320の上縁部に引っ掛けられることで、保存容器202に対して固定される。ラック380は、保存容器302の中心に対して水平方向位置がオフセットするように配置される。したがって、開口部320とラック380とは水平方向位置がずれる。
【0085】
収容室312に収容される液体窒素は、保存対象物の冷却に用いられる。収容室312内の下方には窒素の液相324が形成(配置)され、収容室312内の上方には窒素の気相326が形成(配置)される。保存対象物は気相326に配置される。
【0086】
冷凍機304は、収容室312内の気体窒素を凝縮して液体窒素を生成する。生成される液体窒素は、保存対象物の冷却に再利用される。冷凍機304としては、窒素を凝縮できる温度まで冷却可能なものであれば特に限定されない。冷凍機304は、蓋部322に設けられる。冷凍機304は、蓋部322を貫通するように設置される。
【0087】
冷凍機304は、冷却部328と、放熱部330とを有する。冷却部328は、気相326に配置されて、気相326中の気体窒素から熱を奪って気体窒素を凝縮させる。これにより、冷却部328の表面に液体窒素の液滴が生じる。放熱部330は、冷却部328が気体窒素から奪った熱を放出する。放熱部330は、保存容器302の外部に配置される。したがって、気体窒素から奪った熱は、放熱部330によって保存容器302の外部に放熱される。
【0088】
冷凍機304は蓋部322に設けられる。このため、冷凍機304は、収容室312における保存対象物の収容スペース、すなわちラック380の存在位置に対して水平方向位置がオフセットする。この場合、冷却部328の表面に生じる液体窒素の液滴は、落下しても保存対象物に付着することなく液相324に到達することができる。しかしながら、液滴が直に保存対象物に付着することはないが、落下した液滴が液相324の液面に衝突して液体窒素の飛沫が生じ、この飛沫が保存対象物に付着するおそれがある。
【0089】
これに対し、保存装置300は液跳ね防止機構として、液跳ね制御部376及び飛散防止部378を備える。液跳ね制御部376は、冷却部328の鉛直方向下方で且つ液相324の液面より上方に配置される。液跳ね制御部376は、鉛直方向に対して傾斜した傾斜面376aを有し、冷却部328により凝縮されて落下する液体窒素を傾斜面376aで受けて、液滴が跳ねる方向を制御する。本実施の形態の液跳ね制御部376は、上方に突出する頂点と、頂点から全周にわたって広がり且つ下方に傾斜する傾斜面376aとを有する傘状部材である。
【0090】
飛散防止部378は、液跳ね制御部376に当たった液滴の飛散を抑制する部材であり、液跳ね制御部376の鉛直方向上方に配置される開口378aと、液跳ね制御部376の周囲を覆う側壁378bとを有する。本実施の形態の飛散防止部378は、筒状部材であり、筒の下端は収容室312の底面に設置される。例えば、内筒308は底面における飛散防止部378が設けられる位置に凹部を有し、この凹部に筒の下端が嵌め込まれることで飛散防止部378の位置決めがなされる。あるいは、筒の下端を内筒308の底面と同径にすることで、飛散防止部378の位置決めがなされる。筒の上端は気相326に位置し、筒の内部であって且つ液相324よりも上方に液跳ね制御部376が配置される。側壁378bには貫通孔が設けられ、貫通孔により筒の内側と外側とが連通される。
【0091】
冷却部328から落下した液体窒素の液滴は、開口378aから飛散防止部378の内部に進入する。そして、液跳ね制御部376の傾斜面376aに衝突する。傾斜面376aに衝突した液滴は側方に飛散し、液跳ね制御部376の周囲を囲う飛散防止部378の側壁378bに当たる。側壁378bに当たった液滴は、側壁378bの内側面に沿って下方に移動し、液相324に至る。なお、冷却部328は、液滴がより確実に開口378aを通過するように下端部が尖っている。
【0092】
保存装置300は、実施の形態2、変形例2及び変形例3で説明したカバー部242と、カバー部242の開閉機構とを備えてもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態に係る保存装置300は、収容室312内の気相326に、冷凍機304の冷却部328が配置されている。このため、液体窒素の利用効率を向上させることができる。また、液跳ね制御部376及び飛散防止部378を備えるため、液体窒素によって保存対象物が汚染されるおそれを低減することができる。
【0094】
保存装置300は、気相326中の窒素を凝縮させて液体窒素を生成し、この液体窒素を液相324に戻して再利用している。これにより、保存装置300への液体窒素の充填の手間を軽減することができる。また、保存装置300への液体窒素の補充を怠ったことで保存対象物の保存状態が悪化するリスクを軽減することができる。また、液体窒素の消費量を抑制することができるため、保存対象物の保存に要する経済的な負担を軽減することができる。
【0095】
また、保存装置300は収容室312の上部に冷却部328を有する。これにより、気相326中に対流を誘発して、気相326の温度分布を均一化することができる。このため、保存対象物の収容スペースを収容室312の広範囲に拡大することができる。よって、保存対象物の収容効率を向上させることができる。
【0096】
また、冷凍機304を蓋部に設け、また収容室に液跳ね制御部376及び飛散防止部378を設置する、という簡単な加工だけで、冷凍機を備えない従来の保存装置から本実施の形態に係る保存装置300を製造することができる。このため、冷凍機付きの凝集室を外部に設けて液体窒素の再利用を図る場合に比べて、より簡単に、また改造に起因する収容室からの熱リークの増大を抑制しながら、液体窒素の再利用を実現することができる。
【0097】
なお、液体窒素の液跳ねを防ぐ方法としては、冷却部328を液相324の液面近傍まで延伸させることが考えられる。しかしながら、この場合は冷却部328が蓋部322の挿抜の障害となり得る。あるいは、液滴の流路部を収容室312の底面から冷却部328まで突出させることも考えられるが、この場合は流路部が保存対象物の出し入れの障害となり得る。
【0098】
本発明は、上述した各実施の形態及び各変形例に限定されるものではなく、これらの実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、当該組み合わせ、あるいはさらなる変形が加えられて生じる新たな実施の形態も本発明の範囲に含まれる。各実施の形態及び各変形例の組み合わせ、及び各実施の形態及び各変形例へのさらなる変形の追加によって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0099】
実施の形態3を除く各実施の形態及び各変形例において、庇部136,236が省略されて液滴受部132,232及び連結部140,240が直に内壁112a,212aや支持軸116,216、隔壁118,218に当接してもよい。また、流路部134,234は、液滴受部132,232と液相124,224とをパイプ等の接続部材で接続することで、内壁112a,212aを含まない構造とすることもできる。例えば、パイプ等の接続部材が、内壁112a,212aの近傍、もしくは支持軸116,216の内部あるいは外側面を経由して、液滴受部132,232から実質的に液相124,224の近傍まで延在する構成が例示される。