(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1を含む第1の充填方法は、潜熱蓄熱材の粉末と添加剤の粉末とが溶解した液相状態の蓄熱材組成物を、小分けして各容器に充填するため、容器内に収められた蓄熱材組成物では、潜熱蓄熱材と添加剤との混合比率は、各容器とも均一化する。この点で、第1の充填方法は、品質管理上、利点となる。しかしながら、第1の充填方法は、完全な液相状態の蓄熱材組成物を生成するのに、潜熱蓄熱材の粉末と添加剤の粉末とを混ぜ合わせた粉末状の混合物を、蓄熱材組成物の融点温度を超えた温度(例えば、約100℃)まで加熱しなければならず、その加熱を行う加熱設備が、蓄熱材組成物を容器に充填するためだけに必要となる。加えて、粉末状の混合物を約100℃に加熱して融解すると、加熱時に多大な熱エネルギが必要になるほか、作業者への安全策も必要となり、加熱に伴った作業時間も余分に掛かってしまうため、蓄熱材組成物を容器に効率良く封入することができない問題があった。
【0007】
他方、第2の充填方法では、細かく粉砕された粉末状の潜熱蓄熱材を万遍に撹拌しても、あるいは、潜熱蓄熱材の粉末と添加剤の粉末とが、万遍に混ぜ合わされた粉末状の混合物であっても、隣接する粉末同士の間に、物理的な隙間(間隙)が必然的に生じてしまう。間隙が容器内に存在すると、潜熱蓄熱材と熱媒体との間で熱伝導する熱は、容器以外に、間隙を介して伝導するため、熱伝導に要する時間がより長くなる。特に、給湯設備、空気調和設備等の熱源(エネルギ源)に、潜熱蓄熱材による蓄熱と放熱を利用した場合、給湯設備等の使い勝手に影響が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、蓄熱材を、または蓄熱材に添加剤を混合した蓄熱材組成物を、容器内に封入した状態にするのにあたり、蓄熱材等を容器内に封入するまでの工程を効率良く行うと共に、蓄熱材等を用いた蓄熱槽で、槽内の熱媒体と蓄熱材等との間で熱伝導を効率良く行うことができる蓄熱材の容器内封入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法は、以下の構成を有する。
(1)蓄熱または放熱を行う蓄熱材を、容器内に封入する蓄熱材の容器内封入方法において、前記蓄熱材は、無機塩水和物からなること、前記無機塩水和物に含む水和水を脱離した無水和物と、加えた水とを、前記容器内で水和反応させることにより、前記無機塩水和物を生成し、前記容器内に封入すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記無水和物を前記容器内に充填した後、前記無水和物に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または前記加水量を超える量の前記水を、前記容器内に充填すること、を特徴とする。
(3)(1)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記無水和物は粉末状であり、前記無水和物と、前記無水和物に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または前記加水量を超える量の前記水とを、少なくとも含んでスラリー状態に混合したスラリー状混合物を調製すること、前記スラリー状混合物の調製後、前記スラリー状混合物を前記容器内に充填すること、を特徴とする蓄熱材の容器内封入方法。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記容器は、柔軟性を有した袋状に形成されていること、前記容器内に、前記無水和物と前記水とを充填して前記容器を閉塞後、または、前記スラリー状混合物を充填して前記容器を閉塞後、前記容器内を吸引しながら、前記容器の開口が封止されること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記無機塩水和物は、前記容器として、第1の前記容器内で生成され、前記第1の容器とは別に、前記第1の容器より大きく、柔軟性を有した袋状に形成された第2の容器を用い、生成される前記無機塩水和物を内包する前記第1の容器は、単数の前記第2の容器による単層の状態で、または、複数の前記第2の容器により、入れ子のように、多重に重ね合わせた複層の状態で、前記第2の容器によって覆い包まれ、前記第2の容器の封止により、前記第2の容器内に封入されていること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記第1の容器内に、前記無水和物と前記水とを充填して前記第1の容器を閉塞後、または、前記スラリー状混合物を充填して前記第1の容器を閉塞後、この状態で前記第1の容器を前記第2の容器内に収容し、少なくとも最も外側の前記第2の容器内を吸引しながら、この外側の前記第2の容器の開口を封止すること、を特徴とする。
(7)(2)乃至(6)のいずれか1つに記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記蓄熱材の物性を調整する水溶性の添加剤が配合され、前記添加剤は、前記蓄熱材の融点を、必要に応じて設定した温度に調整する融点調整剤、液相状態にある前記蓄熱材の融液の粘度を高める増粘剤、または、前記蓄熱材の過冷却現象を防ぐのに、融液状態にある前記蓄熱材の結晶化の誘起を促す過冷却防止剤の少なくとも何れかであること、を特徴とする。
(8)(7)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記水に前記添加剤が溶解した添加剤水溶液を調製した後、前記水に代えて前記添加剤水溶液が、前記容器内に充填されること、または、前記スラリー状混合物を生成するのに、前記無水和物と混合されること、を特徴とする。
(9)(7)または(8)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記添加剤として配合する前記融点調整剤は、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)であること、を特徴とする。
(10)(9)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記蓄熱材に前記添加剤を配合した蓄熱材組成物では、前記蓄熱材組成物全体の重量に占める前記無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の配合比率は、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。
(11)(7)乃至(10)のいずれか1つに記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記添加剤として配合する前記増粘剤は、糖アルコールに属する物質であること、を特徴とする。
(12)(11)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記増粘剤は、マンニトール(C
6H
14O
6)であること、を特徴とする。
(13)(11)または(12)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記蓄熱材に前記添加剤を配合した蓄熱材組成物では、前記蓄熱材組成物全体の重量に占める前記増粘剤の配合比率は、20wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。
(14)(1)乃至(13)のいずれか1つに記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記無機塩水和物は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。
(15)(14)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH
4(SO
4)
2・12H
2O)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO
4)
2・12H
2O)であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の蓄熱材の容器内封入方法の作用・効果について説明する。
(1)蓄熱または放熱を行う蓄熱材を、容器内に封入する蓄熱材の容器内封入方法において、蓄熱材は、無機塩水和物からなること、無機塩水和物に含む水和水を脱離した無水和物と、加えた水とを、容器内で水和反応させることにより、無機塩水和物を生成し、容器に封入すること、を特徴とする。この特徴により、無水和物の容器への充填前、隣接する粉末同士の間にあった間隙は水和反応時に、容器に加えた水で満たされるため、容器の内容積に対し、蓄熱材が占める体積充填率は、粉末状の無機塩水和物を容器内に直に充填した従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比べて、大幅に向上する。また、間隙の発生を抑えているため、従来比で、蓄熱材と蓄熱槽内の熱媒体との間の熱伝導に要する時間も短くなるため、このような伝熱性能は高くなる。また、蓄熱材や、これに添加剤を配合した蓄熱材組成物を生成するのに、加熱設備を一切必要とせず、このような蓄熱材組成物等を、容器内で常温のまま簡単に生成することができる。しかも、融点が、例えば、約90℃のような比較的高い蓄熱材組成物等でも、液相状態の蓄熱材組成物等を直接取り扱うことがなく、蓄熱材組成物等の充填・封入作業は、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比して、安全である。
【0011】
従って、本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法によれば、蓄熱材を、または蓄熱材に添加剤を混合した蓄熱材組成物を、容器内に封入した状態にするのにあたり、蓄熱材等を容器内に封入するまでの工程を効率良く行うと共に、蓄熱材等を用いた蓄熱槽で、槽内の熱媒体と蓄熱材等との間で熱伝導を効率良く行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0012】
(2)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、無水和物を容器内に充填した後、無水和物に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または加水量を超える量の水を、容器内に充填すること、を特徴とする。また、(3)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、無水和物は粉末状であり、無水和物と、無水和物に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または加水量を超える量の水とを、少なくとも含んでスラリー状態に混合したスラリー状混合物を調製すること、スラリー状混合物の調製後、スラリー状混合物を容器内に充填すること、を特徴とする。
【0013】
(2)の特徴や(3)の特徴により、蓄熱材に、例えば、添加剤を添加した蓄熱材組成物を容器内で生成して充填した状態の蓄熱材封入物を作製し、この蓄熱材封入物を別の容器に収容した蓄熱材封入パック等では、蓄熱材封入パック内の空隙部の大きさを、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比べ、少なくとも30%以上低減することができる。
【0014】
(4)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、容器は、柔軟性を有した袋状に形成されていること、容器内に、無水和物と水とを充填して容器を閉塞後、または、スラリー状混合物を充填して容器を閉塞後、容器内を吸引しながら、容器の開口が封止されること、を特徴とする。無水和物と水とを充填して容器を閉塞した場合、または、スラリー状混合物を充填して容器を閉塞した場合、粉末同士の間にあった間隙は水によって満たされ、内部に空隙を持たない固体状の無機塩水和物を容器内に生成することができるが、容器を閉塞する際に外部から空気が浸入する。それ故に、無機塩水和物である蓄熱材等と容器の間に、空隙部が必然的に生じる。しかしながら、上述の特徴により、容器内を吸引しながら、容器の開口を封止することで、容器内に侵入した空気を除外し、容器内に生成される蓄熱材や蓄熱材組成物を、容器と密着した状態で容器内に封入することができる。そのため、蓄熱材等と容器との間に生じる空隙部に起因した熱伝導への悪影響を、より確実に抑制することができる。
【0015】
(5)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、無機塩水和物は、容器として、第1の容器内で生成され、第1の容器とは別に、第1の容器より大きく、柔軟性を有した袋状に形成された第2の容器を用い、生成される無機塩水和物を内包する第1の容器は、単数の第2の容器による単層の状態で、または、複数の第2の容器により、入れ子のように、多重に重ね合わせた複層の状態で、第2の容器によって覆い包まれ、第2の容器の封止により、第2の容器内に封入されていること、を特徴とする。この特徴により、無水和物と水、またはスラリー状混合物を第2の容器内に封入するにあたり、第1の容器が無水和物と水、またはスラリー状混合物の漏洩・飛散を防止し、例えば、融着等で第2の容器を封止する開口部分に、無水和物、スラリー状混合物等による異物が付着するのを抑止することができる。ひいては、第2の容器は、このような異物による阻害を受けることなく、しっかりと封止でき、第1の容器内で生成された蓄熱材組成物は、第2の容器の外部に漏れ出ることなく、より確実に第2の容器内に収容できている。
【0016】
(6)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、第1の容器内に、無水和物と水とを充填して第1の容器を閉塞後、または、スラリー状混合物を充填して第1の容器を閉塞後、この状態で第1の容器を第2の容器内に収容し、少なくとも最も外側の第2の容器内を吸引しながら、この外側の第2の容器の開口を封止すること、を特徴とする。無水和物と水とを充填して第1の容器を閉塞した場合、または、スラリー状混合物を充填して第1の容器を閉塞した場合、粉末同士の間にあった間隙は水によって満たされ、内部に空隙を持たない固体状の無機塩水和物を容器内に生成することができるが、第1の容器を閉塞する際に外部から空気が浸入する。それ故に、無機塩水和物である蓄熱材等と第1の容器の間に、空隙部が必然的に生じる。しかしながら、上述の特徴により、少なくとも最も外側の第2の容器内を吸引しながら、第2の容器の開口を封止することで、第1の容器内に侵入した空気を除外し、第1の容器内に生成される蓄熱材や蓄熱材組成物を、第1の容器を介して第2の容器に密着した状態で、第1の容器及び第2の容器内に封入することができる。そのため、蓄熱材等と第1の容器との間に生じる空隙部に起因した熱伝導への悪影響を、より確実に抑制することができる。なお、生成される無機塩水和物を内包する第1の容器を、複数の第2の容器により複層の状態で覆い包む場合には、第2の容器毎にそれぞれ、容器内を吸引しながら、容器の開口を封止すると、空隙部に起因した熱伝導への悪影響が、より効果的に抑制できる。
【0017】
(7)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、蓄熱材の物性を調整する水溶性の添加剤が配合され、添加剤は、蓄熱材の融点を、必要に応じて設定した温度に調整する融点調整剤、液相状態にある蓄熱材の融液の粘度を高める増粘剤、または、蓄熱材の過冷却現象を防ぐのに、融液状態にある蓄熱材の結晶化の誘起を促す過冷却防止剤の少なくとも何れかであること、を特徴とする。また、(9)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、添加剤として配合する融点調整剤は、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)であること、を特徴とする。この特徴により、無水硫酸ナトリウムは、融点884℃の物性で、常温では固体の物質であるものの、蓄熱材組成物全体の重量に対し、例えば、5wt%の配合比率で、蓄熱材であるアンモニウムミョウバン(融点93.5℃)等に添加されれば、所望とする融点約90℃の蓄熱材組成物等、融点を所望の温度に調整した蓄熱材組成物を生成することができる。
【0018】
(8)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、水に添加剤が溶解した添加剤水溶液を調製した後、水に代えて添加剤水溶液が、容器内に充填されること、または、スラリー状混合物を生成するのに、無水和物と混合されること、を特徴とする。この特徴により、例えば、蓄熱材が、アンモニウムミョウバン12水和物による潜熱蓄熱材等であるとき、スラリー状混合物を容器に充填した上記蓄熱材封入物では、粉末状のアンモニウムミョウバン12水和物と、粉末状の添加剤とを混ぜ合わせた粉末状の混合物(生成後に蓄熱材組成物)を容器に充填する場合に比べ、蓄熱材封入物内で生成した蓄熱材組成物は、その構成成分の濃度や分布を均一化した状態で、調製することができる。特に、生成した蓄熱材組成物を複数の容器に小分けする場合、容器に充填された蓄熱材組成物の組成が、全容器とも均一に保たれるため、蓄熱材組成物を容器に充填した蓄熱材封入パックを複数作製する場合に、品質の高い蓄熱材封入パックが提供できる。
【0019】
(10)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、蓄熱材に添加剤を配合した蓄熱材組成物では、蓄熱材組成物全体の重量に占める無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)の配合比率は、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱材が、例示したアンモニウムミョウバンである場合、例えば、融点が80〜90℃の温度帯域になるよう、調整された蓄熱材組成物が生成でき、この蓄熱材組成物により80〜90℃等の温度帯域で蓄熱やその放熱を行うことができる。そのため、給湯設備や、冷暖房を行う空気調和設備の熱源(エネルギ源)等に蓄熱材組成物の放熱を利用する場合に、約90℃の熱源は、このような給湯設備等にとって、使い勝手が良く、産業界において幅広い分野で多様的に活用することができる。
【0020】
(11)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、添加剤として配合する増粘剤は、糖アルコールに属する物質であること、を特徴とする。この特徴により、無機塩水和物が、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物等のミョウバン水和物である場合に、増粘剤は、無機塩水和物の構成成分である水に溶解し易く、組成した蓄熱材組成物は、化学的に安定している。
【0021】
(12)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、増粘剤は、マンニトール(C
6H
14O
6)であること、を特徴とする。この特徴により、マンニトールは、液相状態にある蓄熱材の融液の粘度を高めると共に、蓄熱材組成物を構成する成分同士の相分離現象や、この蓄熱材組成物を構成する成分で、密度が互いに異なる成分同士に対し、密度差による成分同士の不均一化を防止することができる。また、マンニトールは、無毒で非危険物であるため、取扱いが容易である上に、安価でもある。
【0022】
(13)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、蓄熱材に添加剤を配合した蓄熱材組成物では、蓄熱材組成物全体の重量に占める増粘剤の配合比率は、20wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱材組成物に、例えば、融点調整剤や過冷却防止剤等の添加剤が配合されている場合に、蓄熱材の成分と融点調整剤等の成分とが、不均一化せずバランス良く拡散した状態を、増粘剤により、安定的に維持することができる。
【0023】
(14)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、無機塩水和物は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。この特徴により、様々な種類の無機塩水和物の中でも、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物等のようなミョウバン水和物を用いた潜熱蓄熱材は、相変化に伴う潜熱が比較的大きい物性を有する。そのため、このような物性の潜熱蓄熱材では、蓄熱できる蓄熱量も比較的大きい。また、ミョウバン水和物である潜熱蓄熱材を含む蓄熱材組成物は、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。
【0024】
(15)に記載する蓄熱材の容器内封入方法において、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH
4(SO
4)
2・12H
2O)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO
4)
2・12H
2O)であること、を特徴とする。この特徴により、アンモニウムミョウバン12水和物やカリウムミョウバン12水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態)
以下、本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る蓄熱材は、無機塩水和物からなり、本実施形態では、相変化に伴う潜熱の移動により蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材である場合を挙げて説明する。また、潜熱蓄熱材は、添加剤と混合した蓄熱材組成物の態様で容器(第1の容器)内に充填され、さらにこの第1の容器を二重の第2の容器(容器)に封入された状態で、蓄熱槽内に収容されている。
【0027】
はじめに、蓄熱槽について、
図4を用いて簡単に説明する。
図4は、本実施形態に係る蓄熱槽を例示した模式図である。蓄熱槽60では、例えば、病院やビル等の非常用電源に設置されているコジェネレーション(CogenerationまたはCombined Heat and Power)のガスエンジンシステムの排熱や、工場や事業所、家庭等から生じる排熱を利用して、槽内に貯めた水等の熱媒体61が約90℃に加熱され、熱媒体61を介して、潜熱蓄熱材10が80〜90℃の温度帯域で蓄熱する。潜熱蓄熱材10に蓄熱した熱は、この温度帯域で放熱され、図示しない給湯設備や、冷暖房を行う空気調和設備等の熱源(エネルギ源)に活用される。潜熱蓄熱材10は、後述する蓄熱材封入パック1内に収容され、
図4に示すように、複数の蓄熱材封入パック1が、蓄熱槽60に収容されている。
【0028】
次に、潜熱蓄熱材10について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る蓄熱材を示す模式図である。潜熱蓄熱材10は、ミョウバン水和物であり、本実施形態では、アンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH
4(SO
4)
2・12H
2O)である。
図1に示すように、主成分である潜熱蓄熱材10は、配合した2種の添加剤20と共に、蓄熱材組成物3をなしている。アンモニウムミョウバン12水和物は、融点93.5℃の物性で、常温では固体の物質である。そのため、アンモニウムミョウバン12水和物が、単体で融点未満の90℃程度に加熱されたとしても、アンモニウムミョウバン12水和物は、ほとんど溶融することなく、潜熱を蓄熱することもできない。
【0029】
添加剤20は2種とも、潜熱蓄熱材10の物性を調整する役割を担う水溶性の添加剤である。第1の添加剤20は、潜熱蓄熱材10の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤21である。融点調整剤21は、本実施形態では、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)であり、無水硫酸ナトリウムは、融点884℃の物性で、常温では固体の物質である。蓄熱材組成物3全体の重量に占める無水硫酸ナトリウムの配合比率は、10wt%以下の範囲内であり、融点調整剤21が、例えば、2〜5wt%の配合比率で、潜熱蓄熱材10(アンモニウムミョウバン)に添加されていると、蓄熱材組成物3の融点は、約90℃になる。
【0030】
第2の添加剤20は、液相状態にある潜熱蓄熱材10の融液の粘度を高める増粘剤22である。増粘剤22は、糖アルコールに属する物質であり、本実施形態では、増粘剤22は、マンニトール(C
6H
14O
6)である。蓄熱材組成物3全体の重量に占めるマンニトールの配合比率は、20wt%以下の範囲内である。
【0031】
なお、本実施形態では、主成分である潜熱蓄熱材10を、アンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH
4(SO
4)
2・12H
2O)とした。しかしながら、潜熱蓄熱材の主成分で、アンモニウムミョウバン12水和物に含まれる金属イオンは、アルミニウムイオン以外にも、例えば、クロムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、マンガンイオン等、3価の金属イオンであっても良く、アンモニウムミョウバン12水和物は、このような3価の金属イオンを含む複硫酸塩となっていれば良い。また、潜熱蓄熱材10は、アンモニウムミョウバン12水和物に限らず、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO
4)
2・12H
2O)等のほか、ミョウバン水和物であれば、特に限定されるものではない。
【0032】
また、本実施形態では、増粘剤22にマンニトールを用いたが、増粘剤は、マンニトールのほか、例えば、エリトリトールや、加熱しても褐色化やキャラメル化を起こさず、酸に強い物性等を有する糖アルコールに属する物質であれば、特に限定されるものではない。また、増粘剤は、糖アルコールに属する物質の他、例えば、ジェランガム(gellan gum)(別名:ゲラン、ポリサッカライドS-60〔略称:PS-60〕等)のように、繰り返し単位を持ったポリマーの一種で、複合多糖類(ヘテロ多糖)に分類される多糖類(ポリサッカライド)に属する物質であっても良い。その理由として、例えば、ジェランガムが増粘剤とした場合、ジェランガム自身は、蓄熱特性を具備していないが、アンモニウムミョウバン12水和物にジェランガムを少量添加するだけで、ジェランガムのゲル化が促進され、蓄熱材組成物における構成成分の分離を、より効果的に抑制することができるからである。
【0033】
また、本実施形態では、添加剤に、融点調整剤21と増粘剤22とを配合した蓄熱材組成物3を挙げたが、蓄熱材組成物に配合する増粘剤は、融点調整剤や増粘剤に限らず、蓄熱材組成物に配合する増粘剤は、融点調整剤、増粘剤、または融液状態にある蓄熱材の結晶化の誘起を促す過冷却防止剤のうち、少なくとも何れかであれば良い。
【0034】
次に、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40(本発明の第1の容器に対応)に充填し、蓄熱材封入物2を構成するまでの工程について、実施例1,2を挙げて説明する。
図1は、実施形態の実施例1に係る蓄熱材の容器内封入方法の工程を説明したフロー図である。
図2は、実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法の工程を説明したフロー図である。
【0035】
前述したように、蓄熱槽60内には、蓄熱材封入パック1が収容されている。
図1及び
図2に示すように、蓄熱材封入物2として、蓄熱材組成物3は、漏洩防止用内袋40内に充填されている。蓄熱材封入物2は、2枚重ね合わせた封入袋50(第1封入袋50A、第2封入袋50B)(本発明の第2の容器に対応)のうち、内側の第1封入袋50A内に、蓄熱材封入プレパック1Aとして収容されている。そして、さらにこの蓄熱材封入プレパック1Aは、蓄熱槽60内に蓄熱材封入パック1を収容する態様として、外側の第1封入袋50B内に収容されている。漏洩防止用内袋40は、本実施形態では、例えば、縦23cm×横12cmの長方形で、厚さ0.02mm程度の薄いポリエチレン(PE:polyethylene)製の包装用袋等である。
【0036】
蓄熱材封入物2は、本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法により構成される。本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法は、無機塩水和物に含む水和水を脱離した無水和物と、加えた水とを、第1の容器(漏洩防止用内袋40)内で水和反応させることにより、無機塩水和物を生成し、容器を封入する方法である。
【0037】
無機塩水和物は、本実施形態では、アンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH
4(SO
4)
2・12H
2O)であり、その無水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物に含む水和水(12H
2O)を脱離した焼アンモニウムミョウバン(AlNH
4(SO
4)
2)である。水は、例えば、純水、イオン交換水、水道水等である。
【0038】
(実施例1)
本実施形態の実施例1に係る蓄熱材の容器内封入方法は、生成しようとする蓄熱材組成物3に対し、90wt%の配合比率となる量の焼アンモニウムミョウバン11を、平均1mm程度の大きさに粒子を粉砕して粉末状態(
図1中、(a))にした後、開口41を通じて漏洩防止用内袋40内に充填する(
図1中、(b))。なお、焼アンモニウムミョウバン11の粒子の大きさが、平均1mm程度よりも細かくなると、粒子間の間隙がより少なくなるため、好ましい。
【0039】
他方で、融点調整剤21と増粘剤22を、常温の水12と共に、ポリプロピレン (PP:polypropylene)製の第1瓶71に投入して、常温のまま撹拌することにより、融点調整剤21と増粘剤22とが水12に溶解した添加剤水溶液30を調製する(
図1中、(c))。このとき、融点調整剤21の投入量は、生成しようとする蓄熱材組成物3に対し2wt%であり、増粘剤22の投入量は、同じく8wt%である。融点調整剤21と増粘剤22は何れも、平均数百μm程度の大きさに粒子を粉砕した粉末状である。水12の投入量は、無水和物である焼アンモニウムミョウバン11に対し、その水和物であるアンモニウムミョウバン水和物10(潜熱蓄熱材10)を生成するのに必要な加水量と同量、または加水量を超える量の水である。この加水量は、すなわちアンモニウムミョウバン水和物10に含む水和水(12H
2O)に相当する量である。
【0040】
次に、焼アンモニウムミョウバン11を漏洩防止用内袋40内に充填後、開口41を通じて添加剤水溶液30を漏洩防止用内袋40内に注ぎ(
図1中、(d))、漏洩防止用内袋40内で焼アンモニウムミョウバン11と水12との水和反応が終了するまで、この漏洩防止用内袋40を水平に静置する。これにより、漏洩防止用内袋40には、配合比率90wt%の焼アンモニウムミョウバン11と、水和水(12H
2O)に相当する加水量の水12と、配合比率2wt%の融点調整剤21と、配合比率8wt%の増粘剤22とが、互いに混ざり合う。常温下にある焼アンモニウムミョウバン11と添加剤水溶液30との混合物は、
図1中、(e)に示すように、スラリー状混合物15を経て、次第に凝固する。これにより、焼アンモニウムミョウバン11と水12により生成されたアンモニウムミョウバン水和物10に、融点調整剤21と増粘剤22とを配合した蓄熱材組成物3が、漏洩防止用内袋40内で生成される。
【0041】
次に、漏洩防止用内袋40の開口41側の折返し部42を折り返して、漏洩防止用内袋40を閉塞する。折返し部42で折り返した漏洩防止用内袋40は、本実施形態では、例えば、縦18cm×横12cmの長方形である。かくして、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に収容した蓄熱材封入物2を作製する(
図1中、(f))。
【0042】
(実施例2)
本実施形態の実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法は、生成しようとする蓄熱材組成物3に対し、90wt%の配合比率となる量の焼アンモニウムミョウバン11を、平均1mm程度の大きさに粒子を粉砕した粉末状態にしておく(
図2中、(a))。他方で、何れも、粒子が平均数百μm程度の大きさに粉砕された粉末状の融点調整剤21と増粘剤22とを、常温の水12と共に、ポリプロピレン製の第1瓶71に投入して、常温のまま撹拌することにより、融点調整剤21と増粘剤22とが水12に溶解した添加剤水溶液30を調製する(
図2中、(b))。
【0043】
次に、粉末状の焼アンモニウムミョウバン11を投入した第2瓶72に、添加剤水溶液30を注ぎ、第2瓶72内で、焼アンモニウムミョウバン11と添加剤水溶液30とを混合し、常温のまま撹拌する(
図2中、(c))。これにより、焼アンモニウムミョウバン11と添加剤水溶液30とがスラリー状に混合した状態のスラリー状混合物15が、生成される(
図2中、(d))。
【0044】
次に、このスラリー状混合物15を、開口41を通じて漏洩防止用内袋40内に注ぎ、(
図2中、(e))、漏洩防止用内袋40内で焼アンモニウムミョウバン11と水12との水和反応が終了するまで、この漏洩防止用内袋40を水平に静置する。漏洩防止用内袋40内のスラリー状混合物15は、経時的に凝固する。これにより、焼アンモニウムミョウバン11と水12により生成されたアンモニウムミョウバン水和物10に、融点調整剤21と増粘剤22とを配合した蓄熱材組成物3が、漏洩防止用内袋40内で生成される。
【0045】
そして、実施例1と同様、漏洩防止用内袋40の開口41側の折返し部42を折り返して、漏洩防止用内袋40を閉塞する。かくして、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に収容した蓄熱材封入物2を作製する(
図2中、(f))。
【0046】
次に、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法のうち、蓄熱材封入物2を封入袋50内に収容する工程について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法で形成した蓄熱材封入物を、封入袋に封入する工程を説明したフロー図である。
【0047】
封入袋50は、開口51から蓄熱材封入物2を収容可能な大きさに形成され、柔軟性を有した袋である。具体的には、封入袋50は、本実施形態では、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン (PP:polypropylene)、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)等のフィルム状の樹脂の外側に、アルミ箔を蒸着した二層以上の構造を持つラミネート袋であり、厚さ約0.05〜0.15mmで長方形に形成された包装用袋等である。この封入袋50は、大きさの異なる袋を2枚1組として、入れ子のように、二重(第1封入袋50A、第2封入袋50B)に包み込んだ二重袋構造で用いられる。内側となる第1封入袋50Aは、縦さ21.5cm×横14.8cmの長方形の袋であり、外側の第2封入袋50Bは、縦さ25.0cm×横17.3cmの長方形の袋である。
【0048】
図3中、(a)に示すように、実施例1,2に係る蓄熱材の容器内封入方法で構成された蓄熱材封入物2は、開口51を通じて第1封入袋50A(封入袋50)内に収容される(
図3中、(b))。その後、
図3中、(c)に示すように、周知の真空脱気シーラにより、第1封入袋50A内を吸引しながら脱気すると同時に、第1封入袋50Aの開口51を融着した封止部52で、第1封入袋50Aを完全に封止する(
図3中、(d))。このとき、蓄熱材封入物2の漏洩防止用内袋40が、収縮した第1封入袋50Aに密着した状態になるまで、吸引を行って第1封入袋50Aの開口51を封止する。これにより、蓄熱材封入物2を第1封入袋50Aに内包した蓄熱材封入プレパック1Aが作製される。
【0049】
次に、作製した蓄熱材封入プレパック1Aは、開口51を通じて、第1封入袋50Aとは別の第2封入袋50B(封入袋50)内に収容される。この後、
図3中、(e)に示すように、再び真空脱気シーラにより、第2封入袋50B内を吸引しながら脱気すると同時に、第2封入袋50Bの開口51(
図3中、(b)参照)を融着した封止部52で、第2封入袋50Bを完全に封止する(
図3中、(f))。このとき、蓄熱材封入プレパック1Aが、収縮した第2封入袋50Bに密着した状態になるまで、吸引を行って第2封入袋50Bの開口51を封止する。かくして、蓄熱槽60内に収容する態様として、蓄熱材封入物2を内包した漏洩防止用内袋40を、二重袋構造の封入袋50(第1封入袋50A、第2封入袋50B)で覆った蓄熱材封入パック1が、作製される。
【0050】
なお、実施形態では、蓄熱材封入物2を内包した漏洩防止用内袋40を、二重袋構造の封入袋50で包み込んだが、漏洩防止用内袋40を包む封入袋50は、二重袋構造以外にも、1枚だけの封入袋50による一重袋構造のほか、三重袋構造、それ以上に封入袋50を多重に重ね合わせても良い。すなわち、蓄熱材や蓄熱材組成物を内包した第1の容器を、さらに包み込む第2の容器は、単数の第2の容器による単層の状態、または、複数の第2の容器により、入れ子のように、多重に重ね合わせた複層の状態になっていれば良い。
【0051】
次に、本実施形態に係る容器内封入方法の有意性を確認する目的で、本実施形態の実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法と、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法とを対比した調査実験を行った。
図9は、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法の工程を説明したフロー図である。
【0052】
はじめに、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法の概要について、
図9を用いて簡単に説明する。説明は、実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法により封入した蓄熱材組成物3と同じ組成の蓄熱材組成物を、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法で封入する場合を挙げて行う。なお、その説明の中で、本実施形態の実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法の内容と重複する部分は、省略または簡潔化する。
【0053】
アンモニウムミョウバン水和物10は、粒子を平均1mm程度の大きさに粉砕した粉末状である。融点調整剤21と増粘剤22とは何れも、粒子を平均数百μm程度の大きさに粉砕した粉末状である(
図9中、(a))。生成しようとする蓄熱材組成物3に対し、アンモニウムミョウバン水和物10の配合比率は90wt%、融点調整剤21の配合比率は2wt%、増粘剤22の配合比率は8wt%である。従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、これらのアンモニウムミョウバン水和物10と、融点調整剤21と、増粘剤22とが、万遍に撹拌され、これらの混合物が、複数の漏洩防止用内袋40内にそれぞれ、開口41を通じて投入され、小分けされていた(
図9中、(b))。これにより、蓄熱材組成物3が各漏洩防止用内袋40内で生成されていた。そして、漏洩防止用内袋40の開口41は、開口41側の折返し部42を折り畳むことにより閉塞され、この状態の漏洩防止用内袋40を、封入袋50内に収容し、封入袋50の開口を融着することにより、封入袋50が封止されていた。
【0054】
次に、調査実験について、説明する。
<実験方法>
・調査実験では、100gの蓄熱材組成物3を、A5サイズの漏洩防止用内袋40内に封入した蓄熱材封入物2を作製するのに、実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法で作製した実験1を、その比較例として、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法で作製した実験2を、それぞれ実施。
・実験1,2とも、前述したように、作製した蓄熱材封入物2を、まず第1封入袋50Aに収容し、この第1封入袋50A内を吸引しながら開口を融着し、第1封入袋50A内を封止して蓄熱材封入プレパック1A(実験1)(実験2では、蓄熱材封入プレパック1Aに相当する蓄熱材封入プレパック)を5つ作製。さらに、実験1ではこの蓄熱材封入プレパック1A(実験2では、蓄熱材封入プレパック)を個々に第2封入袋50Bに収容し、この第2封入袋50B内を吸引しながら開口を融着し、第2封入袋50B内を封止した蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)を、それぞれ5パックずつ作製。
・実験1,2ともそれぞれ、5パック全ての蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)を水槽内の水に浸し、上昇した水位分の水の体積を求めた上で、1パック当たりの蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)の平均体積を測定。
【0055】
<実験1と実験2との共通条件>
・生成しようとする蓄熱材組成物3の量:100g
・蓄熱材組成物3の融点:約90℃
・融点調整剤21:粉末状の無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)を2g
・増粘剤22:粉末状のマンニトール(C
6H
14O
6)を8g
・蓄熱材封入物2の風袋:漏洩防止用内袋40
・蓄熱材封入物2の封止:漏洩防止用内袋40の折返し部42で折り返し
・蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)の風袋:二重化した封入袋50
・蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)の封止:真空脱気シーラによる融着(封止部52)
【0056】
<実験1の条件>
・無水和物11:粉末状の焼アンモニウムミョウバン(AlNH
4(SO
4)
2)を47.12g (分子量237.162に対し、その0.198mol分相当)
・水12:純水を42.88g(アンモニウムミョウバン12水和物10の水和水(12H
2O)に相当する量)
・融点調整剤21と増粘剤22と水12の混合:常温で撹拌して添加剤水溶液30を調製
・蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に封入する方法:前述した実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法
【0057】
<実験2の条件>
・無機塩水和物10:粉末状のアンモニウムミョウバン12水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH4(SO
4)
2・12H
2O)を90g (分子量453.354に対し、その0.198mol分相当)
・無機塩水和物10と融点調整剤21と増粘剤22との混合:常温のまま鉢内で撹拌して混合
・蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に封入する方法:前述した従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法。但し、蓄熱材組成物3が漏洩防止用内袋40内に生成された後、実施例2と同様、漏洩防止用内袋40の開口41側の折返し部42を折り返すことで、漏洩防止用内袋40を閉塞し、この漏洩防止用内袋40を封入袋50内に収容しているが、封入袋50は二重袋構造とした。
【0058】
<実験結果>
図6は、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法の有意性を確認した調査実験の結果を示す表である。
図6に示すように、蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)の平均体積について、実験2では、体積が132.0cm
3であったのに対し、実験1では、体積が103.2cm
3であった。実験1で得られた体積は、実験2で得られた体積に比べ、21.8%減少している。生成された蓄熱材組成物3の量は、実験1,2とも同じ100gであるため、その体積は、実験1,2とも同じ61.2cm
3(算出値)である。
【0059】
ここで、漏洩防止用内袋40と封入袋50の体積は、その他に比べて極めて小さい上、蓄熱材封入パック1等では、漏洩防止用内袋40と封入袋50とが密着しているため、蓄熱材封入パック1(蓄熱材封入プレパック)の平均体積と蓄熱材組成物3の体積との差が、漏洩防止用内袋40内の間隙部の体積と近似できる。従って、漏洩防止用内袋40内の間隙部の体積について、実験2では、体積が70.8cm
3であるのに対し、実験1では、体積が42.0cm
3であると推定することができる。
【0060】
<考察>
蓄熱材組成物3をなす組成は、実験1,2とも実質的に同じである。しかしながら、実験2の場合、潜熱蓄熱材10として、計量した90gの無機塩水和物10(粉末状のアンモニウムミョウバン12水和物10)が、そのままの状態で、融点調整剤21と増粘剤22と共に、鉢の中で撹拌して混合されている。粉末状の無機塩水和物10と、粉末状の融点調整剤21と、粉末状の増粘剤22とが、鉢の中で万遍なく混合されていても、隣接する粉末同士の間には、物理的な隙間(間隙)が必然的に生じてしまう。
【0061】
実験2の場合には、無機塩水和物10において、このような間隙が存在することに起因して、蓄熱材封入パックで生成された蓄熱材組成物3の平均体積が、132.0cm
3にも及んでいるものと考えられる。
【0062】
これに対し、実験1の場合、潜熱蓄熱材10の主成分である粉末状の焼アンモニウムミョウバン(AlNH
4(SO
4)
2)(無水和物11)と、融点調整剤21と、増粘剤22とが水12に溶解した添加剤水溶液30を、予めポリプロピレン製の第1瓶71内で混合し、スラリー状混合物15とした上で、漏洩防止用内袋40内に注いでいる。そのため、漏洩防止用内袋40に投入前に、無水和物11の粉末同士の間に存在していた間隙は、添加剤水溶液30で満たされた状態となり、蓄熱材組成物3が漏洩防止用内袋40内で生成される。生成された蓄熱材組成物3は、充填密度の高い一体的な構造で形成されている。そのため、実験1の場合には、無水和物11の粉末同士の間に存在していた間隙による影響を受けず、蓄熱材封入パック1で生成された蓄熱材組成物3の平均体積は、実験2の場合の体積132.0cm
3よりも、21.8%も縮小した103.2cm
3に収まっているものと考えられる。つまり、実験1の場合に対し、蓄熱材組成物3の体積充填率は、実験2の場合に比して、132.0/103.2≒1.3(倍)に向上している。
【0063】
次に、蓄熱材封入パック1に包含する間隙の影響について、熱伝導の観点で考察する。
図7は、空隙部を含む蓄熱材封入パックの断面を示す模式図である。ここで、蓄熱材封入パック1は元々、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40に収容した蓄熱材封入物2を、封入袋50に封入されたものであるが、漏洩防止用内袋40は、厚さ0.02mm程度と非常に薄くなっている。また、二重化した封入袋50では、双方とも吸引しながら融着を行っているため、第1封入袋50Aと第2封入袋50Bとの間の隙間に起因した影響はかなり小さく、漏洩防止用内袋40や封入袋50による影響は無視することができる。そのため、ここでは、
図7に示すように、蓄熱材組成物3を直に封入袋50内に封入したモデルの蓄熱材封入パック1を用いて、熱伝導の観点による考察を行う。
【0064】
蓄熱槽60内に、
図7に示すように、蓄熱材封入パック1を横置きで蓄熱槽60内に配置した場合、蓄熱材封入パック1内の蓄熱材組成物3が、蓄熱槽60内の熱媒体61により、融点90℃を超える熱で温められると、蓄熱材組成物3は液相状態になる。このとき、液相状態の蓄熱材組成物3は、自重により封入袋50内の下方部に移動し、その上方部に、厚みd(0≦d)の空隙部4が生じると想定される。
【0065】
このような空隙部4が蓄熱材封入パック1内にあると、蓄熱材組成物3が蓄熱または放熱を行う上で、封入袋50内の蓄熱材組成物3の下面と、熱媒体61との間で行われる熱の伝導に比べ、封入袋50内の蓄熱材組成物3の上面と、熱媒体61との間で行われる熱の伝導が、空隙部4によって阻害されていると考えられる。そこで、空隙部4の熱抵抗による悪影響について、具体的に検討する。
【0066】
空隙部4における熱抵抗は、式(1)により算出できる。
R=d/λA …式(1)
R:熱抵抗[K/W]、d:空隙部の厚み[m]、λ:空隙部の熱伝導率[W/m・K]、A:空隙部の表面積(空隙部4と漏洩防止用内袋40の接触面積)[m
2]
但し、二重化した封入袋50の厚み分について、熱伝導への影響がほとんど無視できると仮定している。
【0067】
本実施形態で使用する二重袋構造の封入袋50のうち、内側の第1封入袋50Aは、縦さ21.5cm×横14.8cmの長方形であり、その四辺に1cmのシール部を含んでいるため、この第1封入袋50A(封入袋50)と空隙部4との接触面積Aは、
(0.215−0.02)×(0.148−0.02)≒0.025(m
2) …解(2)
【0068】
封入袋50内の空隙部4の体積は、
図6に示すように、実験1の場合に42.0cm
3、実験2の場合に70.8cm
3と近似でき、接触面積Aは解(2)で得られていることから、空隙部4の厚みdは、
実験1の場合で、
42.0×10
3/0.025×10
6=1.68 ∴d≒1.7(mm) …解(3)
実験2の場合で、
70.8×10
3/0.025×10
6=2.83 ∴d≒2.8(mm) …解(4)
【0069】
解(3),(4)により、1.7/2.8≒0.61 …解(5)
すなわち、実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法(実験1)で作製した蓄熱材封入パック1の空隙部4の厚みdは、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法(実験2)に比べ、約61%にまで抑制されている。そのため、空隙部4を挟み、蓄熱材組成物3の上面(
図7中、上側の面)と、封入袋50に密着した漏洩防止用内袋40の内面(
図7中、蓄熱材封入パック1の上辺の内側の面)との間における伝熱速度vは、実験1と実験2の対比で
1/0.61=1.64 ∴v≒1.6 …解(6)
解(6)より、実験1の場合は、実験2の場合の約1.6倍になると推察される。
【0070】
ところで、前述したように、本実施形態では、増粘剤22にマンニトール(C
6H
14O
6)が蓄熱材組成物3に配合されている。マンニトールは、潜熱蓄熱材10をなす焼アンモニウムミョウバンの成分と、融点調整剤21として配合した無水硫酸ナトリウムの成分とのバインダーとして作用するほかに、当該マンニトール自体に、蓄熱または放熱を可能とする蓄熱特性を兼ね備えている。
図8は、本実施形態に係る蓄熱材組成物に含有するマンニトールについて、その有意性を示すグラフである。
【0071】
図8に示すように、潜熱蓄熱材(
図8では、「PCM」と表示)以外に、何ら添加剤が配合されていないPCM単体の場合、単位体積当たりに蓄熱できる蓄熱量はPである。PCM単体に添加剤(例えば、無水硫酸ナトリウム等の融点調整剤)を加えた蓄熱材組成物では、蓄熱特性を持たない添加剤の配合により、単位体積当たりに蓄熱できる蓄熱量は、PよりP1(P1<P)だけ低減したP0(P1<P0<P)となる。この蓄熱量P0は、蓄熱材組成物に含まれるPCM単体に対応した熱量である。
【0072】
ところが、蓄熱材組成物に含まれる潜熱蓄熱材と同様、増粘剤として用いるマンニトールにも、蓄熱できる蓄熱量P2(P2<P)を有しているため、PCM蓄熱分として、潜熱蓄熱材に対応した蓄熱量P0と、マンニトール蓄熱分とする蓄熱量P2との和が、蓄熱材組成物における単位体積当たりに蓄熱できる蓄熱量となる。そのため、マンニトールのこのような蓄熱特性があることによって、蓄熱材組成物3では、例えば、300〜400kJ/Lという、非常に大きな蓄熱量が、得られるものと考えられる。
【0073】
次に、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法の作用・効果について説明する。本実施形態の蓄熱材の容器内封入方法では、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10を、漏洩防止用内袋40に封入する蓄熱材の容器内封入方法において、潜熱蓄熱材10は、無機塩水和物からなること、無機塩水和物に含む水和水を脱離した無水和物11と、加えた水12とを、漏洩防止用内袋40内で水和反応させることにより、無機塩水和物10(潜熱蓄熱材10)を生成し、漏洩防止用内袋40に封入すること、を特徴とする。この特徴により、無水和物11の漏洩防止用内袋40への充填前、隣接する粉末同士の間にあった間隙は水和反応時に、漏洩防止用内袋40に加えた水12で満たされるため、漏洩防止用内袋40の内容積に対し、潜熱蓄熱材10が実質的に占める体積充填率は、粉末状の無機塩水和物10(アンモニウムミョウバン12水和物)を漏洩防止用内袋40内に直に充填した従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比べて、大幅に向上する。また、間隙の発生を抑えているため、従来比で、潜熱蓄熱材10と蓄熱槽60内の熱媒体61との間の熱伝導に要する時間も短くなるため、このような伝熱性能は高くなる。また、アンモニウムミョウバン12水和物10と融点調整剤21と増粘剤22との混合物である蓄熱材組成物3を生成するのに、加熱設備を一切必要とせず、この蓄熱材組成物3を、漏洩防止用内袋40内で常温のまま簡単に生成することができる。そのため、蓄熱材組成物3を生成し、蓄熱材封入物2を作製する作業を、効率良く行うことができる。さらに、蓄熱材組成物3のように、融点(融点約90℃)が比較的高くても、液相状態の蓄熱材組成物3を直接取り扱うことがなく、蓄熱材封入物2の作製作業は、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比して、安全である。
【0074】
すなわち、従来、完全な液相状態の蓄熱材組成物3を生成するのに、粉末状のアンモニウムミョウバン12水和物10と、粉末状の融点調整剤21と、粉末状の増粘剤22とを混ぜ合わせた粉末状の混合物を、蓄熱材組成物3の融点約90℃を超えた温度(例えば、約100℃)まで加熱して融解しなければならなかった。その加熱を行う加熱設備が、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に充填するためだけに必要となっていた。加えて、上記粉末状の混合物を約100℃に加熱して融解すると、加熱時に多大な熱エネルギが必要になるほか、作業者への安全策も必要となり、加熱に伴った作業時間も余分に掛かってしまうため、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40に効率良く封入できなかった。これに対し、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、この加熱設備が不要であり、しかも漏洩防止用内袋40内では、蓄熱材組成物3を生成するのに必要な反応が、自発的に起き、蓄熱材組成物3の生成に掛かる作業も効率良く、安全に行うことができる。
【0075】
従って、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法によれば、潜熱蓄熱材10に添加剤20を混合した蓄熱材組成物3を、漏洩防止用内袋40内に封入した状態にするのにあたり、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に封入するまでの工程を効率良く行うと共に、蓄熱材組成物3を用いた蓄熱槽60で、槽内の熱媒体61と蓄熱材組成物3との間で熱伝導を効率良く行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0076】
また、本実施形態の実施例1に係る蓄熱材の容器内封入方法では、無水和物11(焼アンモニウムミョウバン11)を漏洩防止用内袋40内に充填した後、無水和物11に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または加水量を超える量の水12を、漏洩防止用内袋40内に充填すること、を特徴とする。また、本実施形態の実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法では、無水和物11は粉末状であり、無水和物11と、無水和物11に対し水和物を生成するのに必要な加水量と同量、または加水量を超える量の水12と、融点調整剤21と、増粘剤22とを含んでスラリー状態に混合したスラリー状混合物15を調製すること、スラリー状混合物15の調製後、スラリー状混合物15を漏洩防止用内袋40内に充填すること、を特徴とする。
【0077】
このような特徴により、潜熱蓄熱材10に融点調整剤21と増粘剤22を添加した蓄熱材組成物3を、漏洩防止用内袋40内で生成して充填した状態の蓄熱材封入物2を作製し、この蓄熱材封入物2を封入袋50に収容した蓄熱材封入パック1では、蓄熱材封入パック1内の空隙部(
図7中、空隙部4を参照)が、従来の実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法に比べ、
図6に示すように、42.0/70.8×100≒61(%)にまで抑制できている。そのため、蓄熱材封入パック1では、空隙部の発生を抑えているため、従来比で、蓄熱材組成物3と蓄熱槽60内の熱媒体61との間の熱伝導に要する時間も短くなる。換言すれば、蓄熱材封入パック1における蓄熱時や放熱時に、伝熱がより早くできるようになるため、提供先からの排熱を蓄熱材封入パック1に蓄熱する応答性や、蓄熱材封入パック1から放熱した熱を供給先に供給する応答性が、従来比で向上する。
【0078】
また、スラリー状混合物15を漏洩防止用内袋40に充填した蓄熱材封入物2では、粉末状のアンモニウムミョウバン12水和物10と、粉末状の融点調整剤21と、粉末状の増粘剤22とを混ぜ合わせた粉末状の混合物を漏洩防止用内袋40に充填する場合に比べ、蓄熱材封入物2内で生成した蓄熱材組成物3は、その構成成分の濃度や分布を均一化した状態で、調製することができる。また、水12が、規定の加水量を超えて加えられても、その超えた分の水12は、蓄熱材封入パック1内で蓄熱材組成物3と共存するが、この共存する水12も、融点調整剤21と同様、蓄熱材組成物3の温度を下げることに寄与するものと考えられ、蓄熱材組成物3に悪影響を及ばさないようであれば、蓄熱材封入パック1内に残存していても良い。
【0079】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、無機塩水和物10は、漏洩防止用内袋40内で生成され、漏洩防止用内袋40とは別に、漏洩防止用内袋40より大きく、柔軟性を有した袋状に形成された封入袋50を用い、生成される無機塩水和物10を内包する漏洩防止用内袋40は、2枚の封入袋50(第1封入袋50A、第2封入袋50B)により、入れ子のように、二重に重ね合わせた2層の状態で、封入袋50によって覆い包まれ、封入袋50の封止により、封入袋50内に封入されていること、を特徴とする。この特徴により、無水和物11と水12、またはスラリー状混合物15を封入袋50内に封入するにあたり、漏洩防止用内袋40が無水和物11と水12、またはスラリー状混合物15の漏洩・飛散を防止し、例えば、融着等で封入袋50を封止する封止部52に、無水和物11、スラリー状混合物15等による異物が付着するのを抑止することができる。ひいては、二重袋構造の封入袋50は、このような異物による阻害を受けることなく、しっかりと封止でき、漏洩防止用内袋40内で生成された蓄熱材組成物3は、封入袋50の外部に漏れ出ることなく、より確実に封入袋50内に収容できている。
【0080】
すなわち、焼アンモニウムミョウバン11(無水和物11)や添加剤水溶液30を封入袋50内に充填するときや、スラリー状混合物15を封入袋50内に注ぐとき、無水和物11等の粉末やスラリー状混合物15を、誤って封入袋50の開口51付近にこぼれてしまうこともあり、無水和物11等の粉末やスラリー状混合物15が封入袋50に付着する。これらの付着物が開口51付近にあったまま、この部分を融着等でシールすると、封入袋50が十分に封止できなく、蓄熱材組成物3が封入袋50からこぼれ出てしまうため、折返し部42で閉塞した状態の漏洩防止用内袋40を、封入袋50内に収容し、封入袋50の開口51を封止することにより、蓄熱材組成物3の漏れがより確実に抑止できる。
【0081】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、漏洩防止用内袋40内に、無水和物11と水12とを充填して漏洩防止用内袋40を閉塞後、または、スラリー状混合物15を充填して漏洩防止用内袋40を閉塞後、この状態で漏洩防止用内袋40を二重の封入袋50(第1封入袋50A、第2封入袋50B)内に収容し、第1封入袋50Aと第2封入袋50Bとも、封入袋50内を吸引しながら、これらの封入袋50の開口51を封止すること、を特徴とする。上述の特徴により、漏洩防止用内袋40内に生成される蓄熱材組成物3を、漏洩防止用内袋40を介して封入袋50に密着した状態で、漏洩防止用内袋40及び封入袋50に封入することができる。すなわち、漏洩防止用内袋40内に、無水和物11と水12とを充填してこの漏洩防止用内袋40を閉塞した場合、または、スラリー状混合物15を充填してこの漏洩防止用内袋40を閉塞した場合、無水和物11の粉末同士の間にあった間隙は水12によって満たされ、内部に空隙を持たない固体状の無機塩水和物10を漏洩防止用内袋40内に生成することができるが、漏洩防止用内袋40を閉塞する際に外部から空気が浸入する。それ故に、無機塩水和物10である潜熱蓄熱材10等と漏洩防止用内袋40の間に、空隙部4が必然的に生じる。しかしながら、上述の特徴により、二重袋構造の第1封入袋50A、第2封入袋50B(封入袋50)内をそれぞれ吸引しながら、各封入袋50の開口51を封止することで、漏洩防止用内袋40内に侵入した空気を除外し、漏洩防止用内袋40内に生成される蓄熱材組成物3を、漏洩防止用内袋40を介して封入袋50に密着した状態で、漏洩防止用内袋40及び封入袋50内に封入することができる。そのため、このような空隙部に起因した熱伝導への悪影響を、より効果的かつ確実に抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、水12に添加剤20(融点調整剤21、増粘剤22)が溶解した添加剤水溶液30を調製した後、水12に代えて添加剤水溶液30が、漏洩防止用内袋40内に充填されること、または、スラリー状混合物15を生成するのに、無水和物11と混合されること、を特徴とする。この特徴により、漏洩防止用内袋40内で生成した蓄熱材組成物3は、その構成成分の濃度や分布を均一化した状態で、調製することができる。特に、まとめて生成した蓄熱材組成物3を、複数の漏洩防止用内袋40に小分けして複数の蓄熱材封入パック1を作製する場合、各漏洩防止用内袋40内で生成された蓄熱材組成物3の組成が、全漏洩防止用内袋40とも均一に保たれる。
【0083】
すなわち、従来、潜熱蓄熱材の粉末と添加剤の粉末とを混ぜ合わせた粉状の混合物を、固相状態でそのまま直接、各々の容器に充填していたため、各容器の間で、潜熱蓄熱材と添加剤との混合比率に誤差が生じてしまい、蓄熱時または放熱時に熱を移動できる蓄熱性能に悪影響が生じる虞があった。しかしながら、本実施形態の実施例2に係る蓄熱材の容器内封入方法では、蓄熱材組成物3の構成成分は、均一化した濃度や分布になるため、蓄熱材封入物2を収容した蓄熱材封入パック1が複数作製されても、各蓄熱材封入パック1において、各蓄熱材封入パック1の蓄熱性能に、バラツキがほとんどなく、品質の高い蓄熱材封入パック1が提供できる。
【0084】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、潜熱蓄熱材10の物性を調整する水溶性の添加剤20が配合され、添加剤20は、潜熱蓄熱材10の融点を、必要に応じて設定した温度に調整する融点調整剤21、液相状態にある潜熱蓄熱材10の融液の粘度を高める増粘剤22であること、を特徴とする。また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、添加剤20として配合する融点調整剤21は、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)であること、を特徴とする。また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、潜熱蓄熱材10に添加剤20を配合した蓄熱材組成物3では、当該蓄熱材組成物3全体の重量に占める無水硫酸ナトリウム(融点調整剤21)の配合比率は、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。
【0085】
この特徴により、無水硫酸ナトリウムは、融点884℃の物性で、常温では固体の物質であるものの、蓄熱材組成物3全体の重量に対し、例えば、5wt%の配合比率で、潜熱蓄熱材10であるアンモニウムミョウバン(融点93.5℃)等に添加されれば、融点を所望とする約90℃に調整した蓄熱材組成物3を生成することができる。
【0086】
特に、ガスエンジンシステムの排熱や、工場や事業所、家庭等から生じた100℃近くの排熱を、熱媒体61を介して蓄熱材組成物3(潜熱蓄熱材10)に蓄熱し、この潜熱蓄熱材10からの放熱が、主に給湯設備や空気調和設備等の熱源に供給される場合、熱源に供給される熱は、取扱い上、80〜90℃の温度帯域であることが望ましい。潜熱蓄熱材10として用いているアンモニウムミョウバン12水和物は、融点93.5℃の物性であり、潜熱蓄熱材10の融点は、融点調整剤21により約90℃に調整される。また、蓄熱材組成物3の融点が約90℃であると、例えば、90℃以上の熱源で蓄熱し、80〜90℃の温度帯域で放熱することにより、給湯設備や、冷暖房を行う空気調和設備の熱源(エネルギ源)等として、約90℃の熱源は、このような給湯設備等にとって、使い勝手が良い。そのため、産業界において幅広い分野で多様的に活用することができる。
【0087】
また、融点調整剤21は、配合比率10wt%以下の範囲内であることが好ましい理由として、融点調整剤21は、増粘剤22であるマンニトールと異なり、融点調整剤21自体に蓄熱できる特性がないため、融点調整剤21の配合比率が多くなり過ぎてしまうと、蓄熱材組成物3全体で蓄熱できる特性が低下してしまう。そのため、蓄熱材組成物3全体の蓄熱特性の極端な低下を抑制しつつ、蓄熱材組成物3の融点を所望の約90℃に設定する条件が、配合比率10wt%以下の範囲内である。また、蓄熱材組成物3に占める無水硫酸ナトリウムがこのような配合比率10wt%以下の範囲内であれば、100℃近くの排熱に基づいて、80℃以上の温度を熱源として必要とする環境下で、潜熱蓄熱材10に蓄熱した熱を長時間、80℃以上の高温で、放熱させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、添加剤20として配合する増粘剤22は、糖アルコールに属する物質であること、を特徴とする。この特徴により、無機塩水和物10が、アンモニウムミョウバン12水和物等のミョウバン水和物であるため、増粘剤22は無機塩水和物10の構成成分である水に溶解し易く、組成した蓄熱材組成物3は、化学的に安定している。また、潜熱蓄熱材10の成分と融点調整剤21の成分とを均一な状態に保持することができるほか、潜熱蓄熱材10と同様、増粘剤22にも、潜熱の蓄熱または放熱を可能とする蓄熱性能を具備することができる。融点調整剤21が、蓄熱材組成物3の融点を約90℃に調整できる一方で、増粘剤22により、この融点調整剤21の成分と潜熱蓄熱材10の成分との不均一化が経時的に発生するのを抑止できている。
【0089】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、増粘剤22は、マンニトール(C
6H
14O
6)であること、を特徴とする。この特徴により、マンニトールは、液相状態にある潜熱蓄熱材10の融液の粘度を高めると共に、蓄熱材組成物3を構成する成分同士の相分離現象や、この蓄熱材組成物3を構成する成分で、密度が互いに異なる成分同士に対し、密度差による成分同士の不均一化を防止することができる。また、マンニトールは、無毒で非危険物であるため、取扱いが容易である上に、安価でもある。
【0090】
ところで、蓄熱性能を備えていない従来の添加剤が、潜熱蓄熱材に配合されていると、この潜熱蓄熱材とこの従来の添加剤との組成物である従来の潜熱蓄熱材組成物では、従来の添加剤が配合されているために、従来の潜熱蓄熱材組成物の蓄熱量は、それと同体積で比べても、潜熱蓄熱材だけの蓄熱量より大幅に低下する。これに対し、本実施形態の蓄熱材組成物3では、マンニトールは、増粘性のほか、当該蓄熱材組成物3に含有する主の潜熱蓄熱材10と共に、潜熱の蓄熱または放熱を可能とする蓄熱性能を具備している。そのため、添加剤20としてマンニトールが添加されていても、蓄熱性能を備えていない従来の添加剤と異なり、蓄熱材組成物3の畜熱量は、同体積で比べても、潜熱蓄熱材だけの蓄熱量より大幅に低下するのを抑制できている。
【0091】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、潜熱蓄熱材10に添加剤20を配合した蓄熱材組成物3では、当該蓄熱材組成物3全体の重量に占める増粘剤22の配合比率は、20wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、蓄熱材組成物3に融点調整剤21が配合されている場合に、融点調整剤21により、蓄熱材組成物3の融点を弊害なく約90℃に調整することができると共に、潜熱蓄熱材10の成分と融点調整剤21の成分とが、不均一化せずバランス良く拡散した状態を、増粘剤22により、安定的に維持することができる。
【0092】
好ましくは、増粘剤22が、配合比率5〜10wt%の範囲内で配合されていると、増粘剤22であるマンニトールは、潜熱蓄熱材10と相対的に小さいものの、マンニトール自体に蓄熱できる特性を有している。しかしながら、マンニトールの配合比率が多くなり過ぎてしまうと、マンニトールと潜熱蓄熱材10との配合比率の関係を見たときに、蓄熱材組成物3全体で蓄熱可能な蓄熱量は、その最大値から外れてしまい、小さくなってしまう。そのため、蓄熱材組成物3内で潜熱蓄熱材10の成分と融点調整剤21の成分との保持を、適切な状態で維持しつつ、蓄熱材組成物3による蓄熱量を、より大きく保つことができる条件が、配合比率5〜10wt%の範囲内である。
【0093】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、無機塩水和物10は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。この特徴により、様々な種類の無機塩水和物の中でも、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物等のようなミョウバン水和物を用いた潜熱蓄熱材10は、相変化に伴う潜熱が比較的大きい物性を有する。そのため、このような物性の潜熱蓄熱材10では、蓄熱できる蓄熱量も比較的大きい。また、ミョウバン水和物である潜熱蓄熱材10を含む蓄熱材組成物3は、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。
【0094】
また、本実施形態に係る蓄熱材の容器内封入方法では、ミョウバン水和物10は、アンモニウムミョウバン12水和物、または、カリウムミョウバン12水和物であること、を特徴とする。
【0095】
この特徴により、アンモニウムミョウバン12水和物やカリウムミョウバン12水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
【0096】
以上において、本発明を実施形態、実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態、実施例1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0097】
(1)例えば、実施形態では、蓄熱材組成物3を漏洩防止用内袋40内に収容して蓄熱材封入物2を作製した後、この蓄熱材封入物2を第1封入袋50Aに封入して蓄熱材封入プレパック1Aを作製し、さらに蓄熱材封入プレパック1Aを第2封入袋50Bに封入して蓄熱材封入パック1を作製した。つまり、漏洩防止用内袋40と第1封入袋50Aと第2封入袋50Bとの三重袋構造の容器内に蓄熱材組成物3を封入して、蓄熱槽60内に収容する態様の蓄熱材封入パック1を構成した。しかしながら、漏洩防止用内袋40を用いず、柔軟性を有した袋状の封入袋50内に直接、無水和物11と水12とを充填して封入袋50を閉塞後、または、スラリー状混合物15を充填して封入袋50を閉塞後、この封入袋50内を吸引しながら、封入袋50の開口51を封止することにより、蓄熱槽60内に収容する態様の蓄熱材封入パックが、構成されていても良い。これにより、封入袋50内に生成される潜熱蓄熱材10や蓄熱材組成物3を、封入袋50と密着した状態で封入袋50内に封入することができるため、蓄熱材組成物3と封入袋50との間に生じる空隙部に起因した熱伝導への悪影響を、より確実に抑制することができる。但し、この場合、封入袋50を封止する上で充填時に、無水和物11やスラリー状混合物15等が、こぼれ出るのを防止できており、異物として封入袋50の開口51付近に付着しないことが重要である。
【0098】
(2)また、実施形態では、アンモニウムミョウバン12水和物10(潜熱蓄熱材10)に、添加剤20として、融点調整剤21と増粘剤22とを配合した蓄熱材組成物3を挙げたが、蓄熱材組成物に配合する添加剤は、融点調整剤や増粘剤のほかにも、融液状態にある蓄熱材の結晶化の誘起を促す過冷却防止剤を含むものであっても良い。
(3)また、実施形態では、第1の容器の構成は、例示した漏洩防止用内袋40の構成に限定されず、種々変更可能である。同様に、第2の容器の構成は、例示した封入袋50の構成に限定されず、種々変更可能である。
【0099】
(4)また、実施形態では、蓄熱材組成物3を利用した蓄熱槽60を、
図4に例示したが、本発明に係る蓄熱材の容器内封入方法で封入された蓄熱材や蓄熱材組成物を利用した蓄熱槽について、当該蓄熱槽内で蓄熱材組成物等と熱媒体とを区画し、蓄熱材組成物等と熱媒体との間で、熱が伝導できる構造であれば、蓄熱槽の構成・形状・仕様は、何でも良い。
(5)また、実施形態では、融点調整剤21の配合により、蓄熱材組成物3の融点を約90℃に調整したが、融点調整剤により調整される蓄熱材組成物の融点温度は、約90℃に限定されるものではなく、蓄熱材組成物から放熱される熱を利用する熱供給先で、必要する熱源の温度に対応した温度に調整されたものであれば良い。
(6)また、実施形態では、蓄熱材を、相変化に伴う潜熱の移動により蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材としたが、蓄熱材は、水との化学反応に伴う反応熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う化学蓄熱材にも適用できるものと考えられる。