(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、推進軸の落下を防止することを目的としており、推進軸の落下を判断することはしていない。したがって、推進軸の落下を実際に把握する為には、乗務員が振動や音などを頼りに把握し、目視で確認するなどの方法に頼っているのが現状である。この為、推進軸の脱落・破損などの異常をいち早く検出する方法が望まれていた。また、補機軸など動力源からの出力を伝達する回転機構も、異常が発生した場合に早急に把握することが望ましい。
【0006】
そこで、本発明はこの様な課題を解決するために、鉄道車両が備える推進軸などの回転機構の異常を検知する鉄道車両の異常検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両の異常検知装置は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)推進軸などの回転機構を有する鉄道車両に、加速度センサと演算処理部を備え、前記演算処理部で、前記加速度センサから得られる加速度データより高周波成分と低周波成分を得て相互相関値を算出し、前記相互相関値が異常検出条件を満たした場合に、前記鉄道車両に備えられた前記回転機構の異常判定を行うこと、を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様によれば、鉄道車両の回転機構、例えば推進軸などが折損した場合に、推進軸が保護枠内を回転しながら移動する事で低周波振動と高周波振動が組み合わさった振動が生じる。これを検知・抽出することで、外的要因からの揺れと区別が可能となる。
【0010】
(2)(1)に記載の鉄道車両の異常検知装置において、前記加速度センサは、第1加速度センサを含み、前記演算処理部で、前記第1加速度センサから得られる加速度データより前記低周波成分と前記高周波成分を得て、第1相互相関値を算出し、前記低周波成分を正規化処理して第1正規化処理データを得て、前記高周波成分を正規化処理して第2正規化処理データを得て、前記第1正規化処理データと前記第2正規化処理データの振幅比を算出して振幅比データを得て、前記第1相互相関値と前記振幅比データを用い、前記鉄道車両に備えられた回転機構の異常判定を行うこと、が好ましい。
【0011】
(3)(2)に記載の鉄道車両の異常検知装置において、前記加速度センサは、第4加速度センサを含み、前記第4加速度センサは前記第1加速度センサに近接した位置に設けられ、前記演算処理部で、前記第1加速度センサより得られた加速度に関するデータと、前記第4加速度センサより得られた加速度に関するデータを用いてコヒーレンス処理し、コヒーレンス値を得て、前記第1相互相関値に前記振幅比データを掛け合わせた値と、前記コヒーレンス値とを用いて、前記鉄道車両に備えられた回転機構の異常判定を行うこと、が好ましい。
【0012】
上記(2)又は(3)に記載の態様によれば、誤検知の発生を抑えることが可能となる。これは、低周波成分及び高周波成分を正規化処理し、振幅比データを用いる事で、或いはコヒーレンス処理した値を用いる事で、片方の成分が極端に大きくなった場合や、加速度センサに故障が発生した場合等にも、誤検知が生じにくくなる。詳しくは、加速度の高周波成分を用いるのは、正常時は加速度の低周波成分と加速度の高周波成分は相関性が低く、異常時に相関が高くなることが出願人の調査で判明しているためである。また、加速度の低周波成分と加速度の高周波成分の相関だけでは、片方の成分が極端に大きくなった場合や、加速度センサに故障が発生した場合等に誤検知を生じる可能性があるため、これを振幅比と加速度のコヒーレンス値を掛け合わせることで誤検知を抑制することが可能となる。
【0013】
(4)(1)に記載の鉄道車両の異常検知装置において、前記加速度センサは、第1加速度センサと第2加速度センサを含み、前記演算処理部で、前記第1加速度センサから得られる加速度データより高周波成分と低周波成分を得て、第1相互相関値を算出し、前記第2加速度センサから得られる加速度データより高周波成分と低周波成分を得て、第2相互相関値を算出し、前記第1相互相関値と前記第2相互相関値を比較して、小さい方の値が異常検出条件を満たした場合に、前記鉄道車両に備えられた回転機構の異常判定を行うこと、が好ましい。
【0014】
上記(4)に記載の態様によれば、第1加速度センサと第2加速度センサの振動データを比較することで、鉄道車両の運行時における異常発生検出の確実性を増すことができる。これは、鉄道車両の推進軸などが折損した場合に、推進軸が保護枠内を回転しながら移動するため、低周波振動と高周波振動が組み合わさった振動が生じる。これを検知・抽出したうえで、異常が発生している状況では第1加速度センサと第2加速度センサの両方から振動が検出できるため、異常検知の確実性を増すことができる。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の鉄道車両の異常検知装置において、前記加速度データは1方向の加速度とすること、を特徴とすることが好ましい。
【0016】
(6)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の鉄道車両の異常検知装置において、前記加速度データは異なる2方向の加速度とすること、を特徴とすることが好ましい。
【0017】
上記(5)または(6)に記載の態様によれは、加速度データを用いた振動検出の異常検知の確実性を増すことができる。
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の別の態様による鉄道車両の異常検知方法は、以下のような特徴を有する。
【0019】
(7)台車に備えられた回転機構の異常を検出する鉄道車両の異常検知方法において、前記台車は、第1台車と第2台車とを含み、前記第1台車に備えられた第1加速度センサから得られる、第1X軸方向データと第1Y軸方向データからそれぞれ成分抽出をし、前記第1X軸方向データより高周波成分を、前記第1Y軸方向データより低周波成分を得て第1相互相関値を算出し、前記第2台車に備えられた第2加速度センサから得られる、第2X軸方向データと第2Y軸方向データからそれぞれ成分抽出をし、前記第2X軸方向データより高周波成分を、前記第2Y軸方向データより低周波成分を得て第2相互相関値を算出し、前記第1相互相関値と前記第2相互相関値とを比較して、小さい方の値が異常検出条件を満たした場合に、異常判定を行うこと、を特徴とする。
【0020】
上記(7)に記載の態様によれば、第1台車と第2台車の振動より得られるデータを比較することで、鉄道車両の運行時における異常発生の確認の確実性を増すことができる。これは、鉄道車両の推進軸などが折損した場合に、推進軸が保護枠内を回転しながら移動するため、低周波数振動と高周波数振動が組み合わさった振動が生じる。これを検知・抽出した上で、異常が発生している状況では第1台車と第2台車の両方から振動が検出できる為、外的要因からの揺れと区別が可能となる。
【0021】
これは例えば、線路のズレや段差などによる外乱によって鉄道車両が振動するケースでは、第1台車か第2台車のどちらか一方で振動が発生し、時間をおいて他方で振動が発生する。第1台車と第2台車は進行方向に対して所定の距離離れて鉄道車両に配置されているためである。この為、第1台車と第2台車の両方の振動を監視していれば、片方の台車だけから得られる振動に関しては排除可能である。一方、上述した推進軸の折損などのケースで振動が発生する場合には、鉄道車両からの振動発生であるために第1台車からも第2台車からも振動が検出される結果になる。つまり、相関値の小さい方のデータを用いて異常判定をすることで、確実な異常検出に繋がることとなる。
【0022】
(8)台車に備えられた回転機構の異常を検出する鉄道車両の異常検知方法において、前記台車は、第1台車を含み、前記第1台車に備えられた第1加速度センサから得られる、第1X軸方向データと第1Y軸方向データからそれぞれ成分抽出をし、前記第1X軸方向データより高周波成分を、前記第1Y軸方向データより低周波成分を得て第1相互相関値を算出し、前記高周波成分と前記低周波成分のそれぞれを正規化処理して振幅比データを算出し、前記第1台車に前記第1加速度センサに近接して備えられた第4加速度センサから得られる第4Y軸方向データと、前記第1加速度センサから得られる第1Y軸方向データを用いて、コヒーレンス値を算出し、前記第1相互相関値と前記振幅比データと前記コヒーレンス値を掛け合わせた第1処理値を得て、前記第1処理値を元に異常検知条件を満たしているどうかを判断し、異常判定を行うこと、を特徴とする。
【0023】
(9)(8)に記載の鉄道車両の異常検知方法において、前記台車は、第2台車を含み、前記第2台車に備えられた第2加速度センサから得られる、第2X軸方向データと第2Y軸方向データからそれぞれ成分抽出をし、前記第2X軸方向データより高周波成分を、前記第2Y軸方向データより低周波成分を得て第2相互相関値を算出し、前記高周波成分と前記低周波成分のそれぞれを正規化処理して振幅比データを算出し、前記第2台車に前記第2加速度センサに近接して備えられた第5加速度センサから得られる第5Y軸方向データと、前記第2加速度センサから得られる第2Y軸方向データを用いて、コヒーレンス値を算出し、前記第2相互相関値と前記振幅比データと前記コヒーレンス値を掛け合わせた第2処理値を得て、前記第1処理値と前記第2処理値を比較して値の小さい方を用いて異常検知条件を満たしているかどうかを判断し、異常判定を行うことを特徴とする。
【0024】
上記(8)又は(9)に記載の態様により、低周波成分及び高周波成分を正規化処理し、振幅比データ及びコヒーレンス処理した値を用いる事で、片方の成分が極端に大きくなった場合や、加速度センサに故障が発生した場合等にも、誤検知が生じにくくなる。よって、より確実な異常検出に繋がる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の鉄道車両の概略側面図を示す。
図2に、推進軸の側面図を示す。
図2は
図1に示すAの拡大図である。
図3に、鉄道車両の台車部分に関する平面図を示す。
図3では説明の都合上、鉄道車両100のうち車体20を省いている。鉄道車両100は、ディーゼルエンジン10と、車体20、及び台車30を備えている。車体20は第1台車30Aと第2台車30Bにて空気バネ21を介して支持され、第1台車30Aは、ディーゼルエンジン10から伸びる推進軸40に接続されている。なお、車体20の下面に吊り下げられた駆動力を発生するディーゼルエンジン10は、例えば電気モータのような駆動方式としても良い。
【0027】
ディーゼルエンジン10には変速機11が接続され、ディーゼルエンジン10が発生する回転出力を変速している。変速機11には
図2に示すように自在継手41を介して推進軸40の一端部40aが連結されている。車体20は、
図1に示すように図示しないレール方向に長く伸びている。車体20と台車30は空気バネ21を介して接続され、空気バネ21を伸縮させることで、車体20は上下方向に変位する。そして、鉄道車両100がカーブを通過する際には、車体20が台車30に対して枕木方向に大きく変位する。
【0028】
台車30(特に断りがない限り、台車30は第1台車30A及び第2台車30Bの何れか、或いはその両方を指すものとする)は、
図1に示すように前後左右に合計4つの車輪31と、車輪31を組み付けている台車枠32とを有している。そして、
図2に示すように第1台車30Aには減速した出力を車輪31に伝達する減速機33が設けられている。減速機33には、自在継手42を介して推進軸40の他端部40bが連結されている。又、
図3に示すように、第1台車30Aには第1加速度センサ34Aが、第2台車30Bには第2加速度センサ34Bが設けられている。
【0029】
推進軸40は、回転することでディーゼルエンジン10が発生した駆動力を伝達する機能を有している。推進軸40は、
図2に示すように、レール方向に延びていて、車体20の床台22より下側に配置されている。また、推進軸40は軽量化を図るために中空状の鋼管が用いられている。推進軸40の一端部40a及び他端部40bには、ボルト締結や溶接によって自在継手41及び自在継手42が連結されている。推進軸40の周囲には落下防止装置50が設けられている。こうして、ディーゼルエンジン10が発生した駆動力は変速機11と推進軸40と減速機33を介して、第1台車30Aの車輪31に伝達され、鉄道車両100が走行することができる。なお、落下防止装置50に関する詳細については、特許文献1に説明を譲ることとする。
【0030】
鉄道車両100には、演算処理部90が備えられている。
図1では表現の都合上、鉄道車両100の外に描かれているが、実際には車体20に搭載されている。この演算処理部90には、第1加速度センサ34Aと第2加速度センサ34Bからの信号が伝えられるように、接続されている。第1加速度センサ34Aと第2加速度センサ34Bからは、それぞれが検出する加速度データが得られる。これによって車両に伝わる振動を検出する。そして、必要なデータ処理が行えるような計算装置が採用されている。
【0031】
図4に、異常検知を行う際のデータ処理の流れをブロック図に示す。第1台車30Aの第1加速度センサ34Aから第1Y軸方向データSY1を第1バンドパスフィルタ処理B11し、第1X軸方向データSX1を第1ハイパスフィルタ処理B12する。又、第2台車30Bの第2加速度センサ34Bから第2Y軸方向データSY2を第2バンドパスフィルタ処理B13し、第2X軸方向データSX2を第2ハイパスフィルタ処理B14する。
【0032】
そして、第1バンドパスフィルタ処理B11を介した低周波成分PY1は、絶対値処理B15が行われ処理値y1となる。また、第1ハイパスフィルタ処理B12を介した高周波成分PX1は、絶対値処理B16が行われ処理値xe1となる。また、第2バンドパスフィルタ処理B13を介した低周波成分PY2は、絶対値処理B17が行われ処理値y2が得られる。また、第2ハイパスフィルタ処理B14を介した高周波成分PX2は、絶対値処理B18が行われ処理値xe2が得られる。
【0033】
そして、絶対値処理B15と絶対値処理B16より得られる処理値y1と処理値xe1から、相互相関B19の第1相互相関値e1を算出する。また、絶対値処理B17と絶対値処理B18より得られる処理値y2と処理値xe2から、相互相関B20の第2相互相関値e2を算出する。また、相互相関B19の処理の後、第1相互相関値e1は絶対値処理B21を経て処理値xcor1を得る。また、相互相関B20の処理の後、第2相互相関値e2は絶対値処理B22を経て処理値xcor2を得る。処理値xcor1と処理値xcor2を用いて台車比較B23を行い、処理値xcorを得る。こうして得られる処理値xcorが規定値以上であれば、異常判定を行う。
【0034】
第1実施形態の鉄道車両100の異常検知装置は上記構成であるので、以下に説明する作用及び効果を奏する。
【0035】
第1実施形態の鉄道車両100の異常検知装置によって、回転機構の異常を早期に検出可能となる。これは、第1実施形態の異常検知装置が、鉄道車両100の第1台車30Aに備えられる第1加速度センサ34Aと、第2台車30Bに備えられる第2加速度センサ34Bと、鉄道車両100の車体に備えられた演算処理部90を有し、演算処理部90で、第1加速度センサ34Aから得られる、第1X軸方向データSX1と第1Y軸方向データSY1からそれぞれ成分抽出をし、第1X軸方向データより高周波成分PX1を、第1Y軸方向データより低周波成分PY1を得て第1相互相関値を算出し、第2加速度センサ34Bから得られる、第2X軸方向データSX2と第2Y軸方向データSY2からそれぞれ成分抽出をし、第2X軸方向データより高周波成分PX2を、第2Y軸方向データより低周波成分PY2を得て第2相互相関値e2を算出し、第1相互相関値e1と第2相互相関値e2とを比較して、小さい方の値が異常検出条件を満たした場合に、鉄道車両100の推進軸40に関する異常判定を行う為である。
【0036】
図5に、波形データを示す。実際に台車30に備えられた加速度センサ34(第1加速度センサ34A、第2加速度センサ34B)から得られた加速度のデータであり、上段が「X軸方向データ」にハイパスフィルタ処理をした結果を、中段が「Y軸方向データ」にバンドパスフィルタ処理をした結果を、下段が上段と中段とのデータから得られる「相互相関」を示している。縦軸は振幅を反映したデータを示し、横軸は時間経過を示す。そして、上段と中段と下段のグラフはそれぞれ真ん中のラインで推進軸40が落下したことを示している。
【0037】
この結果、推進軸40落下前には、下段の「相互相関」のグラフで殆ど数値が検出されないのに対して、推進軸40落下後には、数値が大きく振れている事が分かる。つまり、
図4に示す処理によって、推進軸40の異常検出を確実に行うことが可能となる。この結果、鉄道車両100の推進軸40等を含む回転機構の異常を早期に、確実に検出することが可能となり、鉄道車両100の安全性向上に寄与することができる。
【0038】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と同様の構成であるが、以下に説明する点で構成が異なる。
【0039】
図6に、第2実施形態の鉄道車両100の側面図を示す。第2実施形態の鉄道車両100は、第3加速度センサ34Cを備える点で、第1実施形態の構成と異なる。その他の構成は同様である。第3加速度センサ34Cは車体20に備えられ、車体20の振動を検出する。
図7に、異常検知を行う際のデータ処理の流れを示すブロック図を示す。車体20に備えられた第3加速度センサ34Cからは第3Y軸方向データSY3を第1バンドパスフィルタ処理B25し、第3X軸方向データSX3を第3ハイパスフィルタ処理B26する。
【0040】
そして、第1バンドパスフィルタ処理B25を介した低周波成分PY3は、絶対値処理B27が行われ処理値y3となる。また、第3ハイパスフィルタ処理B26を介した高周波成分PX3は、絶対値処理B28が行われ処理値xe3となる。そして、絶対値処理B27と絶対値処理B28より得られる処理値y3と処理値xe3から、相互相関B29の第3相互相関値e3を算出する。また、相互相関B29の処理の後、第3相互相関値e3は絶対値処理B30を経て処理値xcor3を得る。こうして得られる処理値xcor3が規定値以上であれば、異常判定を行う。
【0041】
第2実施形態の鉄道車両100は上記構成であるので、第1実施形態の鉄道車両100と同様の作用及び効果を奏する。つまり、鉄道車両100の有する回転機構の異常を早期に、確実に検出することが可能となり、鉄道車両100の安全性向上に寄与することができる。尤も、第2実施形態では第1実施形態とは異なり、推進軸40ではなく図示しない補機軸の異常を検出する目的で第3加速度センサ34Cが備えられている。補機軸は、ディーゼルエンジン10から動力を伝達する軸であり、例えば図示しないエアコンや冷却ファン、エアコンプレッサなどに動力を伝達している。
【0042】
この補機軸に異常が発生した場合に、鉄道車両100の第3加速度センサ34Cが補機軸の振動を拾うのに適切な場所に配置されていることで、
図5に示されたような振動を得ることができる。したがって、
図7に示される処理値xcor3は、
図5に示される「相互相関」の値と似たような形で、異常があったことを明確に把握することが可能となる。ただし、第2実施形態の場合、第1実施形態と異なり、別の加速度センサとの比較を行っていないが、回転機構の出す振動の特性などの都合によって第1実施形態の態様を採用するか第2実施形態の態様を採用するかは適宜選択されるのが望ましい。
【0043】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3実施形態は第1実施形態と同様の構成であるが、扱う加速度データに関する点が異なる。以下に異なる点について説明を行う。
【0044】
図8に、第3実施形態の異常検知を行う際のデータ処理の流れを示すブロック図を示す。第3実施形態の構成の内、加速度センサ34は1方向の加速度を計測する仕様となっている。第3実施形態では、鉄道車両100の進行方向に対して前後に発生する加速度を加速度センサ34によって検知している。
図8に示される様に、第1台車30Aの第1加速度センサ34Aから第1X軸方向データSX1を得て、第1バンドパスフィルタ処理B11及び第1ハイパスフィルタ処理B12で処理を行う。第1バンドパスフィルタ処理B11を介した低周波成分PX11は、絶対値処理B15が行われ処理値x1となる。また第1ハイパスフィルタ処理B12を介して高周波成分PX12は、絶対値処理B16が行われ処理値xe1となる。
【0045】
また、第2台車30Bの第2加速度センサ34Bから第2X軸方向データSX2を得て、第2バンドパスフィルタ処理B13及び第2ハイパスフィルタ処理B14で処理を行う。また、第2バンドパスフィルタ処理B13を介した低周波成分PX21は、絶対値処理B17が行われ処理値x2が得られる。また、第2ハイパスフィルタ処理B14を介した高周波成分PX22は、絶対値処理B18が行われ処理値xe2が得られる。
【0046】
処理値x1と処理値xe1は相互相関B19にて第1相互相関値e1が算出される。処理値x2と処理値xe2から、相互相関B20の第2相互相関値e2が算出される。また、相互相関B19の処理の後、第1相互相関値e1は絶対値処理B21を経て処理値xcor1を得る。また、相互相関B20の処理の後、第2相互相関値e2は絶対値処理B22を経て処理値xcor2を得る。処理値xcor1と処理値xcor2を用いて台車比較B23を行い、処理値xcorを得る。こうして得られる処理値xcorが規定値以上であれば、異常判定を行う。
【0047】
第3実施形態の鉄道車両100の異常検知装置は上記構成であるので、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。したがって、
図5に示される「相互相関」の値と似たような形で、異常があったことを明確に把握することが可能となる。ただし、第3実施形態の場合、第1実施形態と異なり、別の加速度センサとの比較を行っていないが、回転機構の出す振動の特性などの都合によって第1実施形態の態様を採用するか第3実施形態の態様を採用するかは適宜選択されるのが望ましい。
【0048】
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第4実施形態は第1実施形態と同様の構成であるが、扱う加速度データの処理に関する点が異なる。また、第1台車30Aに2つのセンサが設けられている。以下に異なる点について説明を行う。
【0049】
図9に、第4実施形態の鉄道車両の概略側面図を示す。
図10に、異常検知を行う際のデータ処理の流れをブロック図に示す。第4実施形態では、鉄道車両100に備える第1台車30Aに第1加速度センサ34A及び第4加速度センサ34Dを備えている。また、第2台車30Bに第2加速度センサ34B及び第5加速度センサ34Eを備えている。この第1台車30Aに備えられる第1加速度センサ34Aと第4加速度センサ34Dは、近接した位置に配置されており、同様に第2台車30Bに備えられる第2加速度センサ34B及び第5加速度センサ34Eも近接した位置に配置されている。
【0050】
そして、第1Y軸方向データSY1と第1X軸方向データSX1を第1台車30Aの第1加速度センサ34Aから得ている。この第1Y軸方向データSY1を第1バンドパスフィルタ処理B11し、第1X軸方向データSX1を第1ハイパスフィルタ処理B12する。そして、第1バンドパスフィルタ処理B11を介した低周波成分PY1は、絶対値処理B15が行われ処理値y1となる。また、第1ハイパスフィルタ処理B12を介した高周波成分PX1は、絶対値処理B16が行われ処理値xe1となる。
【0051】
処理値y1は、正規化処理B31をされて第1正規化値ny1を得て、処理値xe1は正規化処理B32をされて第2正規化値nxe1を得て、これらより振幅比算出処理B33を行い、振幅比値Rv1を得る。これと平行して、絶対値処理B15と絶対値処理B16より得られる処理値y1と処理値xe1から、相互相関B19の第1相互相関値e1を算出する。
【0052】
そして、相互相関B19の処理の後、第1相互相関値e1は絶対値処理B21を経て処理値xcor1を得る。一方で、第1台車30Aの第1加速度センサ34Aより得られる第1Y軸方向データSY1と、第1加速度センサ34Aの近接した位置に備えられた第4加速度センサ34Dより得られる第4Y軸方向データSY4がコヒーレンス処理B35されて、第1コヒーレンス値Cohr1を得る。この第1コヒーレンス値Cohr1と振幅比値Rv1とが掛け合わされた値と、処理値xcor1とが掛け合わされて、第1の処理値xcorを得る。
【0053】
そして、第2台車30Bに備える第2加速度センサ34B及び第5加速度センサ34Eからも同様の処理を経て、第2の処理値xcorを得る。具体的には、第2Y軸方向データSY2と第2X軸方向データSX2を第2台車30Bの第2加速度センサ34Bから得る。この第2Y軸方向データSY2を第2バンドパスフィルタ処理B11し、第2X軸方向データSX2を第1ハイパスフィルタ処理B12する。
【0054】
そして、第1バンドパスフィルタ処理B11を介した低周波成分PY2は、絶対値処理B15が行われ処理値y2となる。また、第1ハイパスフィルタ処理B12を介した高周波成分PX2は、絶対値処理B16が行われ処理値xe2となる。処理値y2は、正規化処理B31をされて第1正規化値ny2を得て、処理値xe2は正規化処理B32をされて第2正規化値nxe2を得て、これらより振幅比算出処理B33を行い、振幅比値Rv2を得る。
【0055】
これと平行して、絶対値処理B15と絶対値処理B16より得られる処理値y2と処理値xe2から、相互相関B19の第2相互相関値e2を算出する。そして、相互相関B19の処理の後、第2相互相関値e2は絶対値処理B21を経て処理値xcor2を得る。一方で、第2台車30Bの第2加速度センサ34Bより得られる第2Y軸方向データSY2と、第2加速度センサ34Bの近接した位置に備えられた第5加速度センサ34Eより得られる第5Y軸方向データSY5がコヒーレンス処理B35されて、第2コヒーレンス値Cohr2を得る。この第2コヒーレンス値Cohr2と振幅比値Rv2とが掛け合わされた値と、処理値xcor2とが掛け合わされて、第2の処理値xcorを得る。
【0056】
そして、第1の処理値xcorと第2の処理値xcorとを比較した上で、値の小さい方が規定時間内に規定値を超える割合がしきい値以上で、かつ、規定時間内の平均振幅がしきい値以上の場合に、異常として判断する。例えば第2の処理値xcorの値が小さかった場合には、第2の処理値xcorが規定時間内に規定値を超える割合を調べ、それがしきい値異常であるかを判断し、また、規定時間内の平均振幅がしきい値以上であるかを判断する。この2つの条件を満たした場合、鉄道車両100の推進軸40の異常だと判断する。
【0057】
第4実施形態の鉄道車両100の異常検知装置は上記構成であるので、以下に説明する作用及び効果を奏する。
【0058】
まず、鉄道車両100の回転機構の異常を検出するにあたり、誤検知を防ぐことが可能になる。これは、鉄道車両100の異常検知装置において、加速度センサ34は、第1加速度センサ34Aを含み、演算処理部90で、第1加速度センサ34Aから得られる加速度データである第1Y軸方向データSY1や第1X軸方向データSX1などより低周波成分y1と高周波成分xe1を得て、第1相互相関値e1を算出し、低周波成分y1を正規化処理B31して第2正規化処理データにあたる第1正規化値ny1を得て、高周波成分xe1を正規化処理B32して第2正規化処理データにあたる第2正規化値nxe1を得て第1正規化値ny1と第2正規化値nxe1の振幅比を算出して振幅比値Rv1を得て、第1相互相関値e1と振幅比値Rv1を用い、鉄道車両100に備えられた回転機構である推進軸40などの異常判定を行う。
【0059】
また、加速度センサ34は、第2加速度センサに相当する第4加速度センサ34Dを含み、演算処理部90で、第1加速度センサ34Aより得られたデータである第1Y軸方向データSY1と第4加速度センサ34Dより得られたデータである第4Y軸方向データSY4を用いてコヒーレンス処理B35した値である第1コヒーレンス値Cohr1と、第1処理値xcor1と振幅比値Rv1を掛け合わせた値の処理値を用いて、第1の処理値xcorを得て、鉄道車両100に備えられた推進軸40などの異常判定を行う。この際には、第5加速度センサ34Eより得られたデータである第1X軸方向データSX1を用いてコヒーレンス処理B35した値である第2コヒーレンス値Cohr2と、第2処理値xcor2と振幅比値Rv2を掛け合わせた値の処理値xcor2を用いて、第2の処理値xcorを得る。そして、第1の処理値xcorと第2の処理値xcorのより値の小さい方が規定時間内に規定値を超える割合がしきい値以上、かつ規定時間の平均振幅がしきい値以上の場合に異常として検出する。
【0060】
こうした手法を用いることで、例えばエンジン始動時や空ぶかし時などの特定の周波数が発生して誤検知に繋がる可能性があるシーンにも対応が可能である。鉄道車両100のエンジン始動時には、加速度の低周波数成分が大きくなる傾向があり、一方、空ぶかし時には加速度の高周波成分が大きくなる傾向があることが知られている。したがって、鉄道車両100の固有振動数などによっては第1実施形態乃至第3実施形態で説明した態様の技術だけでは誤検知をする可能性もある。また、繰り返し雑音による誤検知のリスクも考えられ、こうしたケースにおいても第4実施形態で示したコヒーレンス処理B35を行うことで、誤検知の発生を低減させることが可能となる。
【0061】
これは、複数の加速度方向・周波数の組み合わせに、加速度の低周波成分と加速度の高周波成分の振幅比、及び加速度のコヒーレンス値を掛け合わせた値を監視しているからである。出願人の調査により正常時は加速度の低周波成分と加速度の高周波成分は相関が低く、異常時にこの相関が高くなることが分かっている。また、加速度の低周波成分と加速度の高周波成分の片方の成分が極端に大きくなった場合や、加速度センサに故障が発生した場合、振幅比を用いるだけでは対応できず、コヒーレンス値を用いる事が有効であることも判明している。このため、第4実施形態によって、例えばエンジン始動時や空ぶかし時の誤検知を抑え、検知精度を上げることが可能となる。
【0062】
以上、本発明に係る鉄道車両100の異常検出方法の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態乃至第4実施形態の鉄道車両100はディーゼルエンジン10による駆動方法を示しているが、電気モータなど他の駆動機関を対象に本発明の異常検出方法を用いることを妨げない。また、特に言及はしなかったが、第2実施形態では第1実施形態の推進軸40の異常検出を併用しても良いし、推進軸40の異常検出についても加速度センサ34を1つだけ用いて検出する手法を採ることを妨げない。もちろん、補機軸の異常検出に複数の加速度センサ34のデータを用いることも同様である。