特許第6754289号(P6754289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754289
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】鉱物繊維用水性バインダー
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4209 20120101AFI20200831BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20200831BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20200831BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   D04H1/4209
   D04H1/587
   D06M13/328
   D06M15/263
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-240328(P2016-240328)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2017-137612(P2017-137612A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-13898(P2016-13898)
(32)【優先日】2016年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 美有紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政義
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−506940(JP,A)
【文献】 特表2007−506002(JP,A)
【文献】 特表2008−505254(JP,A)
【文献】 特開2007−056415(JP,A)
【文献】 特開2007−146315(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162277(WO,A1)
【文献】 特開2012−136412(JP,A)
【文献】 特開2013−117083(JP,A)
【文献】 特開2014−028939(JP,A)
【文献】 特開2014−029051(JP,A)
【文献】 特開2017−031393(JP,A)
【文献】 特開2017−082374(JP,A)
【文献】 特開2017−137613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00 − 25/70
D04H 1/00 − 18/04
D06M 13/00 − 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)、架橋剤(B)、および水を含有してなる組成物であって、該(B)がジアルカノールアミン(B21)とトリアルカノールアミン(B22)とを含有してなり、該(B21)の重量に基づいて、該(B22)が0.02〜15重量%である鉱物繊維用水性バインダー(X)。
【請求項2】
前記(B21)がジエタノールアミンであって、(B22)がトリエタノールアミンである請求項1記載の水性バインダー。
【請求項3】
前記(A)中のカルボキシル基のモル数に対する、(B)中の1級アミノ基、2級アミノ基、および水酸基の合計モル数のモル比が0.2〜1.5である請求項1または2記載の水性バインダー。
【請求項4】
前記(a1)が、(メタ)アクリル酸およびマレイン酸(無水物)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の水性バインダー。
【請求項5】
前記(A)が(a1)と、(メタ)アクリル酸のアルキル(アルキルの炭素数1〜24)エステル(a2)とを構成単量体として含む共重合体(A)である請求項1〜4のいずれか記載の水性バインダー。
【請求項6】
前記(a1)と(a2)との重量比[(a1)/(a2)]が、40/60〜99.9/0.1である請求項5記載の水性バインダー。
【請求項7】
水性バインダー中の(A)と(B)の合計含有量が、2〜80重量%である請求項1〜6のいずれか記載の水性バインダー。
【請求項8】
さらに、硬化促進剤、撥水剤、シランカップリング剤、および中和剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)を含有してなる請求項1〜7のいずれか記載の水性バインダー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか記載の水性バインダー(X)の硬化物が、鉱物繊維積層物に付着した鉱物繊維積層体。
【請求項10】
水性バインダーの硬化物の付着量が、鉱物繊維積層物の重量に基づいて0.5〜30重量%である請求項9記載の積層体。
【請求項11】
断熱材、保温材または吸音材用である請求項9または10記載の積層体。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか記載の水性バインダー(X)が付着した鉱物繊維積層物を加熱、成形する鉱物繊維積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱物繊維用水性バインダーに関する。より詳細には、耐熱性積層体用材料のガラス繊維等の鉱物繊維の接着性に優れ、ホルムアルデヒドを含有しない水性バインダー、およびそれを用いた鉱物繊維積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性を有する鉱物繊維積層体は、グラスウール、ロックウール等の鉱物繊維から構成され、バインダーを付着させた該鉱物繊維を機械的手段でマット状等に成形して製造され、建築物や各種装置の断熱材等として幅広く使用されている。該バインダーとしては、従来からフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であるフェノール樹脂からなる水性バインダーが多く使用されてきたが、該バインダーは通常ホルムアルデヒドを含有し、これを用いた積層体からはホルムアルデヒドが環境中に放出されるという問題があることから、ホルムアルデヒドを含有しない改良バインダーが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−9206号公報
【特許文献2】特開2005−68399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のバインダーは、300から900の数平均分子量を有する、エチレン性不飽和カルボン酸のオリゴマーまたはコオリゴマーの水溶液およびポリオールを含む組成物であるが、バインダーの接着性が十分ではなかった。
また、上記特許文献2のバインダーは、少なくとも2個のカルボン酸基、酸無水物基またはこれらの塩を含有するポリ酸と、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するポリオールおよびC5以上のアルキル基を含有するエチレン性不飽和アクリルモノマーを共重合単位とするエマルションポリマーからなるバインダーであるが、エマルションポリマーを含むため、バインダーのスプレー性が劣るため、鉱物繊維積層体の接着性が十分でないという問題があった。
本発明の目的は、上記課題を解決し、耐熱性積層体材料のガラス繊維等の鉱物繊維の接着性に優れる鉱物繊維積層体を与える水性バインダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体として含む(共)重合体(A)、架橋剤(B)、および水を含有してなる組成物であって、該(B)がジアルカノールアミン(B21)とトリアルカノールアミン(B22)とを含有してなり、該(B21)の重量に基づいて、該(B22)が0.02〜15重量%である鉱物繊維用水性バインダー(X)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の鉱物繊維用水性バインダー(X)は、下記の効果を奏する。
(1)鉱物繊維積層体の接着性(機械的強度)に優れる。
(2)鉱物繊維積層体に優れた柔軟性を付与する。
(3)鉱物繊維の接着性、とくに鉱物繊維同士の交点での接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[(共)重合体(A)]
本発明における(共)重合体(A)は、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(a1)を構成単量体[以下、構成単位と略記することがある]として含む。
【0008】
(a1)は、重合性不飽和基を1個有する炭素数[以下においてCと略記することがある]3〜30の(ポリ)カルボン酸(無水物)である。なお、本発明において不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)は、不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸および/または不飽和ポリカルボン酸無水物を意味する。
該(a1)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族(C3〜24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有(C6〜24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2〜3またはそれ以上)カルボン酸(無水物)としては、不飽和ジカルボン酸(無水物)[脂肪族ジカルボン酸(無水物)(C4〜24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびこれらの無水物)、脂環含有ジカルボン酸(無水物)(C8〜24、例えばシクロヘキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、およびこれらの無水物)等]等が挙げられる。(a1)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
上記(a1)のうち、重合性および鉱物繊維の接着性の観点から好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、さらに好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタアクリル酸との併用、とくに好ましいのはアクリル酸である。
【0009】
前記(共)重合体(A)には、鉱物繊維積層体の接着性、柔軟性を高めるために、さらに(メタ)アクリル酸のアルキル(アルキルの炭素数1〜24)エステル(a2)を構成単量体として含んでもよい。
【0010】
該(a2)としては、[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよび(メタ)アクリル酸テトラコシル]等が挙げられる。
上記(a2)のうち、(a1)との重合性、および鉱物繊維の接着性の観点から好ましいのは該アルキルがC2〜18のもの、さらに好ましくは該アルキルがC3〜12の直鎖または分岐のアルキルエステル、とくに好ましいのは該アルキルがC4〜10の直鎖または分岐のアルキルエステルである。
【0011】
(A)を構成するモノマーの重量比[(a1)/(a2)]は、鉱物繊維の接着性、および鉱物繊維積層体の接着性、柔軟性の観点から、好ましくは40/60〜99.9/0.1、さらに好ましくは60/40〜99.5/0.5、とくに好ましくは80/20〜99/1である。
【0012】
また、(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記(a1)、(a2)のモノマー以外の不飽和モノマー(x)をさらに構成単量体とする共重合体としてもよい。
不飽和モノマー(x)としては、ヒドロキシアルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、アリルアミン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
上記(x)は、(a1)と(a2)との合計重量に基づいて、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、とくに好ましくは1重量%以下である。
【0013】
(A)の重量平均分子量[以下Mwと略記。測定は後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、鉱物繊維積層体の接着性のバランスの観点から、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜70,000、とくに好ましくは6,000〜40,000である。
【0014】
本発明におけるMw、数平均分子量(Mn)のGPC測定条件は下記のとおりである。
<GPC測定条件>
[1]装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー
[型番「HLC−8120GPC」、東ソー(株)製]
[2]カラム :「TSKgelG6000PWxl」、「TSKgel
G3000PWxl」[いずれも東ソー(株)製]を直列に連結。
[3]溶離液 :メタノール/水=30/70(容量比)に
0.5重量%の酢酸ナトリウムを溶解させたもの。
[4]基準物質:ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)
[5]注入条件:サンプル濃度0.25重量%、カラム温度40℃
【0015】
(共)重合体(A)は、前記構成単量体を、公知の溶液重合法で製造することができ、生産性の観点から好ましいのは水を含む溶液重合法である。水の含有量としては、使用する全溶媒量に対して水を40質量%以上使用することが好ましく、使用する溶媒の全量を水とすることが好ましい。
有機溶剤を使用する場合は、重合後脱溶剤して水に溶解させても、脱溶剤せずにそのまま用いてもいずれでもよい。単独で、または水と共に使用できる有機溶剤としては、水性溶剤(25℃での水への溶解度が10g以上/100g水)、例えばケトン(アセトン、メチルエチルケトン(以下MEKと略記)、ジエチルケトン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)等が挙げられ、生産性の観点から好ましいのはアセトン、MEK、イソプロパノールである。有機溶剤は1種または2種以上で使用することができる。
該(A)は、例えば、溶液(工業上の観点から好ましいのは水溶液)として得られ、溶液中の(A)の含有量(重量%)は、生産性および後工程の水性バインダー製造時のハンドリング性の観点から好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%、とくに好ましくは20〜60重量%である。
【0016】
(A)の製造時の重合温度は、生産性および(A)の分子量制御の観点から好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは40〜150℃である。
重合時間は、製品中の残存モノマー含量の低減および生産性の観点から好ましくは1〜10時間、さらに好ましくは2〜8時間である。
重合反応の終点は残存モノマー量で確認できる。残存モノマー量は、鉱物繊維積層体の接着性の観点から、(A)の重量に基づいて好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3%重量以下である。残存モノマー量はガスクロマトグラフィー法により測定できる。
【0017】
<架橋剤(B)>
本発明における架橋剤(B)は後述のジアルカノールアミン(B21)と後述のトリアルカノールアミン(B22)とを含有する。該(B21)の重量に基づいて、該(B22)が0.02〜15重量%であり、好ましくは0.03〜7重量%、さらに好ましくは0.04〜3重量%である。
該(B21)の重量に基づいて、該(B22)が0.02重量%未満では、鉱物繊維積層体の接着性が不十分であり、15重量%を超えると鉱物繊維積層体の柔軟性が不十分である。
【0018】
上記(B21)の重量に基づく、(B22)の重量は、後述の鉱物繊維用水性バインダー(X)をガスクロマトグラフィー(GC)測定することにより特定できる。なお、後述の実施例における(B21)の重量に基づく(B22)の重量は、上記方法により測定した。
また、架橋剤(B)中の(B21)と(B22)との合計は、鉱物繊維積層体の接着性の観点から好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは85〜100重量%、とくに好ましくは95〜100重量%である。
【0019】
架橋剤(B)としては、水酸基を1個有するアミン化合物(B1)、水酸基を2個または3個以上有する化合物(B2)、水酸基を有しないアミン化合物(B3)等が挙げられる。
【0020】
水酸基を1個有するアミン化合物(B1)としては、C2以上かつMn1,000以下のもの、下記(B11)〜(B13)等が挙げられる。
【0021】
(B11)モノアルカノールアミン
C2〜15、例えば、モノエタノールアミン、モノn−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、6−アミノ−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0022】
(B12)後述の(B3)のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)(C2〜4)1モル付加物
C4以上かつMn1,000以下、例えば、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド1モル付加物、1,4−フェニレンジアミンのエチレンオキサイド1モル付加物、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール等が挙げられる。
【0023】
(B13)前記(B11)、(B12)以外のもの
C3〜20、例えば、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ペンチルヘキサノールアミンが挙げられる。
【0024】
水酸基を2個または3個以上有する化合物(B2)としては、C4以上かつMn1,000以下のもの、下記(B21)〜(B24)等が挙げられる。
【0025】
(B21)ジアルカノールアミン
C4〜10、例えば、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられる。
上記(B21)のうち、鉱物繊維積層体の接着性の観点から、好ましいのはジエタノールアミンである。
【0026】
(B22)トリアルカノールアミン
C6〜15、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
上記(B22)のうち、鉱物繊維積層体の接着性の観点から、好ましいのはトリエタノールアミンである。
【0027】
(B23)後述の(B3)のAO付加物(付加モル数は2〜20モル)
C6以上かつMn1,000以下、例えば、ジエチレントリアミンの2〜20モルAO付加物、テトラメチレンペンタミンの2〜20モルAO付加物等が挙げられる。
【0028】
(B24)C2以上かつMn1,000以下のポリ(2価〜3価またはそれ以上)オール
例えば脂肪族ポリオール[C2〜12のもの、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル‐1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール];脂環式ポリオール[C5〜12のもの、例えば1,3−シクロペンタンジオール、1,4‐シクロヘキサンジオール];糖類[C6〜12のもの、例えばグルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖];並びに、これらポリオールのAO(C2〜4)付加物等が挙げられる。
【0029】
水酸基を有しないアミン化合物(B3)としては、C2以上かつMn2,000以下のポリ(2〜6価またはそれ以上)アミンで、脂肪族ポリアミン(B31)、脂環式ポリアミン(B32)、複素環式ポリアミン(B33)、芳香族ポリアミン(B34)およびポリアミドポリアミン(B35)が挙げられる。
【0030】
脂肪族ポリアミン(B31)としては、脂肪族ポリアミン〔C2〜6のアルキレンジアミン(C2〜10、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ヘキサンジアミン))、ポリアルキレン(C2〜6)ポリアミン[C4〜10、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン]〕等およびこれらのアルキル(C1〜4)置換体〔例えば、ジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン〕等、脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン〔C5〜20、例えば、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン〕等、芳香環含有脂肪族アミン〔C6〜14、例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン〕等が挙げられる。
【0031】
脂環式ポリアミン(B32)としては、C6〜20、例えば1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)が挙げられる。
【0032】
複素環式ポリアミン(B33)としては、C4〜20、例えばピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンが挙げられる。
【0033】
芳香族ポリアミン(B34)としては、非置換芳香族ポリアミン[C6〜30、例えば、1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)]、核置換アルキル基〔メチル、エチル、n−およびi−プロピル、ブチル等のC1〜C4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン[C7〜30、例えば、2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン]、イミノ基を有する芳香族ポリアミン[C7〜30、例えば、4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン]等が挙げられる。
【0034】
ポリアミドポリアミン(B35)としては、ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰(アミノ基/カルボキシル基の当量比が2以上)のポリアミン(上記アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量(Mn100〜1,000)ポリアミドポリアミンが挙げられる。
【0035】
[鉱物繊維用水性バインダー(X)]
本発明の鉱物繊維用水性バインダー(X)は、前記(共)重合体(A)、架橋剤(B)および水を含有してなる組成物である。
(A)中のカルボキシル基のモル数に対する、(B)中の1級アミノ基、2級アミノ基および水酸基の合計モル数のモル比(以下、当量比ということがある)は、鉱物繊維の接着性、積層体の柔軟性の観点から、好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.4〜1.2、とくに好ましくは0.6〜1.0である。
【0036】
該当量比は、(B)の1、2級アミン価を後述の測定方法で、また、(B)の水酸基価および(A)の酸価をJISK−0070「化学製品の酸価、水酸基の試験方法」に準拠して測定した結果から下記の計算式を用いて求めることができる。
なお、以下において、各アミン価、水酸基価および酸価の単位はいずれもmgKOH/gで表される。
なお、(A)が、ジカルボン酸無水物を構成単量体とする場合、酸無水物基由来の酸価はカルボキシル基2個分として測定される。

当量比=[(B)の水酸基価+(B)の1、2級アミン価]
×[(B)の重量]/〔[(A)の酸価]×[(A)の重量]〕
【0037】
<(B)の1、2級アミン価測定方法>
(B)の[1]全アミン価(全A)、[2]3級アミン価(3A)を後述の方法で測定し、下記の計算式より、1、2級アミン価(12A)を求める。

(12A)=(全A)−(3A)

但し、(12A):1、2級アミン価を表す。
(全A) :全アミン価を表す。
(3A) :3級アミン価を表す。
【0038】
[1]全アミン価(全A)測定方法
全アミン価とは、試料1g中に含まれる1級、2級および3級アミンを中和するのに要する塩酸と等当量の水酸化カリウムのmg数をいう。ASTMD2074に準じ下記方法で測定する。
(1)試料を精秤する。(試料量:S1g)
(2) 中性エタノール[ブロムクレゾールグリーン(BCG)中性]30mLを加え溶解
する。
(3)0.2モル/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f1)で滴定し、緑色から黄色に変わった点を終点とする。(滴定量:A1mL)
(4)次式から全アミン価(全A)を算出する。

全アミン価(全A)=A1×f1×0.2×56.108/S1
【0039】
[2]3級アミン価(3A)測定方法
3級アミン価(3A)とは、試料1g中に含まれる3級アミンを中和するのに要する過塩素酸と等当量の水酸化カリウムのmg数をいう。ASTMD2073に準じ下記方法で測定する。
(1)試料を精秤する。(試料量:S3g)
(2)無水酢酸/酢酸混合溶液(9/1)20mLを加えて溶解し、室温で3時間静置する。
(3)酢酸30mLを加えて、電位差滴定装置にて0.1モル/L過塩素酸/酢酸溶液(力価:f3)で滴定する。(滴定量:A3mL)
(4)上記と同様にして空試験を行う。(滴定量:B1mL)
(5)次式から3級アミン価(3A)を算出する。

3級アミン価(3A)=(A3−B1)×f3×0.1×56.108/S3
【0040】
本発明の水性バインダー(X)中の(A)と(B)の合計含有量は、後述する鉱物繊維積層体の生産性および水性バインダー(X)の均一散布性の観点から好ましくは2〜80重量%、さらに好ましくは4〜70重量%、とくに好ましくは6〜50重量%である。
【0041】
本発明の水性バインダー(X)には、前記(A)、(B)および水の他に、さらに必要により硬化促進剤(C1)、撥水剤(C2)、シランカップリング剤(C3)および中和剤(C4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)を含有させてもよい。
【0042】
硬化促進剤(C1)としては、プロトン酸[リン酸化合物(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アルキルホスフィン酸等)、カルボン酸、炭酸等]、およびその塩[金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、2B族、4A族、4B族、5B族等)塩等]、金属(上記のもの)の、酸化物、塩化物、水酸化物およびアルコキシド、チタンラクテート、ジルコニルアセテート等の水溶性有機金属化合物等が挙げられ、これらは単独使用でも2種類以上併用してもいずれでもよい。
これらのうち硬化速度の観点から好ましいのはリン酸化合物およびその塩、チタンラクテート、ジルコニルアセート、さらに好ましいのはリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アルキルホスフィン酸、およびそれらの塩と、チタンラクテート、ジルコニルアセート、とくに好ましいのは次亜リン酸の塩である。
(C1)の含有量は、硬化性および鉱物繊維の接着性の観点から(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.3〜15重量%、とくに好ましくは0.5〜10重量%である。
【0043】
撥水剤(C2)としては、ワックス、重質オイルおよびシリコーンオイルが挙げられる。ワックスとしては、動物由来ワックス[蜜ろう、ラノリンワックス、セラックワックス等]、植物由来ワックス[カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス等]、鉱物由来ワックス[モンタンワックス、オゾケライト等]、石油由来ワックス[パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等]、合成ワックス[フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリカーボネートワックス、やし油脂肪酸エステル、牛脂脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド、ジヘプタデシルケトン、硬化ひまし油等]が挙げられ、これらは単独使用でも2種類以上併用してもいずれでもよい。
重質オイルとしては、C15〜120のパラフィンあるいはナフテンで構成されているものが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、反応性または非反応性のシリコーンオイルが挙げられる。
【0044】
これらのうち撥水性の観点から好ましいのはパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、反応性シリコーンオイル、とくに好ましいのはパラフィンワックスである。
【0045】
シランカップリング剤(C3)としては、アミノシランカップリング剤[γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]、エポキシシランカップリング剤[γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等]が挙げられ、これらは単独使用でも2種類以上併用してもいずれでもよい。
(C3)の含有量は、鉱物繊維の接着性の観点から(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜2重量%、さらに好ましくは0.2〜2重量%である。
【0046】
中和剤(C4)は、鉱物繊維から溶出するアルカリ成分を中和するために用いる。(C4)としては、無機酸のアンモニウム塩[硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硫酸アンモニム、リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、次亜硫酸アンモニウム、塩素酸塩アンモニウム、ペルオキソ二硫酸二アンモニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム等]が挙げられ、これらは単独使用でも2種類以上併用してもいずれでもよい。
(C4)の含有量は、鉱物繊維積層体の耐加水分解性および鉱物繊維の接着性の観点から(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは1〜3%重量である。
【0047】
本発明の水性バインダー(X)の製造方法としては、(共)重合体(A)、架橋剤(B)、水、および必要により加えられる添加剤(C)を混合、分散できる方法であれば、とくに限定されることはない。混合時間は、例えば30分〜3時間であり、水性バインダー(X)の均一混合は目視で確認することができる。
【0048】
本発明の水性バインダー(X)は、従来の、フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であるフェノール樹脂からなるものではないことから、ホルムアルデヒドは含有しない。また、該水性バインダー(X)は、後述の方法で評価される鉱物繊維積層体の接着性、鉱物繊維積層体の柔軟性において極めて優れている。
【0049】
本発明の水性バインダー(X)は、耐熱性積層体材料である鉱物繊維用のバインダーとして好適に用いられる。
鉱物繊維としては、ガラス繊維、スラグ繊維、岩綿、石綿、金属繊維等が挙げられる。
【0050】
[鉱物繊維積層体]
本発明の鉱物繊維積層体は、前記水性バインダー(X)の硬化物が、鉱物繊維積層体に付着した鉱物繊維積層体である。例えば、鉱物繊維に前記水性バインダー(X)を付着させ、これを積層して積層物とした後、これを加熱、成形するか、あるいは、該鉱物繊維またはそのストランド(繊維束)を積層して積層物とし、これに前記水性バインダー(X)を散布し付着させて、これを加熱、成形することにより得られる。
水性バインダー(X)の該鉱物繊維またはその積層物への付着方法としては、例えばエアスプレー法またはエアレススプレー法、パッディング法、含浸法、ロール塗布法、カーテンコーティング法、ビーターデポジション法、凝固法等の公知の方法が挙げられる。
【0051】
鉱物繊維積層体を構成する鉱物繊維(鉱物繊維積層物)の重量に基づく水性バインダー(X)の硬化物付着量は、鉱物繊維の接着性、積層体表面の平滑性および積層体の柔軟性、耐水性の観点から好ましくは0.4〜40重量%、さらに好ましくは1〜20重量%、とくに好ましくは2〜15重量%である。
【0052】
本発明の鉱物繊維積層体の製造に際して、水性バインダー(X)は、例えば、鉱物繊維に適当量付着させた後、加熱、乾燥して硬化させる。
加熱温度は、該積層体の、接着性、耐水性および該積層体の着色抑制、工業上の観点から好ましくは100〜400℃、さらに好ましくは200〜350℃である。
加熱時間は、反応率および該積層体の着色抑制の観点から好ましくは2〜90分、さらに好ましくは5〜40分である。
【0053】
本発明の水性バインダー(X)は、鉱物繊維積層体の接着性に優れ、鉱物繊維積層体に優れた柔軟性を付与できる。これは、前記(共)重合体(A)と前記のような架橋剤(B)との構成により、硬化途中でバインダー溶融物が鉱物繊維の交点で効率的に硬化が進行し、その硬化物の形状(形状係数SF1)が適切であり、かつ樹脂物性に優れるため、鉱物繊維の接着性が優れることに起因すると推定される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0055】
[(共)重合体(A)の製造]
<製造例1>
オートクレーブに、溶媒として水260部、次亜リン酸ナトリウム57.4部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度400ppm以下)。窒素を吹き込みながら、100℃に昇温した後、過酸化水素水(30重量%水溶液)21.6部を水60部に溶解した水溶液と、アクリル酸(a1−1)250部を別々に同時に3時間かけて滴下し、さらに100℃で2時間撹拌して重合させ、不揮発成分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A−1)の水溶液を得た。(A−1)はMw2,500、酸価800であった。
【0056】
<製造例2〜4>
製造例1において、表1に従った以外は製造例1と同様に行い、(共)重合体(A−2)〜(A−4)の水溶液を得た。
【0057】
<製造例5>
オートクレーブに、溶媒として水300部、イソプロパノール300部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度400ppm以下)。窒素を吹き込みながら82℃に昇温した後、過硫酸ナトリウム17.6部を水45部に溶解させた溶液と、アクリル酸(a1−1)260部とアクリル酸ブチル(a2−1)60部を同時に2時間かけて滴下し、さらに82℃で2時間撹拌して重合反応を行った。その後、溶液中のイソプロパノールを脱溶剤し、不揮発分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A−5)の水溶液を得た。(A−5)はMw14,000、酸価635であった。
【0058】
<製造例6>
オートクレーブに、溶媒として水300部、イソプロパノール300部を仕込み、撹拌下窒素を通気してオートクレーブ内の窒素置換を行った(気相酸素濃度400ppm以下)。窒素を吹き込みながら82℃に昇温した後、3−メルカプトプロピオン酸8.6部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.41部および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.93部をイソプロパノール50部に溶解させた溶液と、アクリル酸(a1−1)180部とアクリル酸2−エチルヘキシル(a2−2)150部を同時に2時間かけて滴下し、さらに82℃で2時間撹拌して重合反応を行った。その後、溶液中のイソプロパノールを脱溶剤し、不揮発分が40%になるように水を加え、(共)重合体(A−6)の水溶液を得た。(A−6)はMw8,000、酸価425であった。
【0059】
製造例1〜製造例6の結果を表1に示す。
【0060】
<実施例1〜17、比較例1〜2>
表2に示した配合組成(部)に従って各鉱物繊維用水性バインダーを調製した。該バインダーを用いて下記要領で鉱物繊維積層体の試験片およびガラス繊維試験片を作成し、それぞれ後述の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0061】
<鉱物繊維積層体の作成>
タテ×ヨコ×厚みが30cm×30cm×1cm、密度が0.030g/cm3のガラス繊維積層物を、離型処理したタテ×ヨコ×深さが30cm×30cm×5cmの平板金型内に載置した。次に、付着固形分量が該積層物の重量に対して20%相当量となる水性バインダーをエアスプレーを使用して該積層物に均一噴霧した。その後、200℃の循風乾燥機で60分間熱処理(乾燥、硬化)を行い、厚み約1cm、密度0.036g/cm3の積層体(S−1)を得た。同様にして積層体(S−1)を合計5個作成した。
【0062】
(1)鉱物繊維積層体の接着性
各積層体(S−1)から、長さ×幅×厚みが10cm×1.5cm×1cmの試験片を5個切り出した。これらをオートグラフ[型番「AGS−500D」、(株)島津製作所製]を用いてJISR3420「ガラス繊維一般試験方法」の「7.4引張強さ」に準拠して引張強さを測定し、試験片5個の平均値を下記の基準で接着性を評価した。
<評価基準>
☆:500N/m2以上
◎:450N/m2以上500N/m2未満
○:400N/m2以上450N/m2未満
△:300N/m2以上400N/m2未満
×:300N/m2未満
【0063】
(2)鉱物繊維積層体の柔軟性
各積層体(S−1)から長さ×幅×厚みが10cm×1.5cm×1cmの試験片を5個切り出した。該試験片の厚みをノギスを用いて0.1mmの単位で測定した(L0)。
これらの試験片に、ステンレス製板(長さ、幅は試験片と同じ)を載置して、1.4g/cm2の荷重をかけて10秒後の試験片を厚みを測定した(L1)。
次に、ステンレス製板を取り除き、取り除いてから60秒後の試験片の厚みを測定した(L2)。
下記式(1)により柔軟度合(%)、式(2)により維持度合(%)を算出し、試験片5個の平均値を下記の基準で柔軟性を評価した。

柔軟度合(%)=[(L0)−(L1)]×100/(L0) (1)

維持度合(%)=100−[(L0)−(L2)]×100/(L0)

<評価基準>
☆:柔軟度合30%以上、かつ維持度合90%以上
◎:柔軟度合25%以上、かつ維持度合90%以上
○:柔軟度合20%以上25%未満、かつ維持度合90%以上
△:柔軟度合15%以上20%未満、かつ維持度合90%以上
×:柔軟度合15%未満、または維持度合90%未満
【0064】
(3)硬化物の形状係数SF1
ガラス繊維(長さ3cm、直径100μm)2本を繊維の中点で直交、接合し、ガラス繊維の端部を4つそれぞれ固定した。ガラス繊維が直交した交点に、マイクロシリンジを用いて、水性バインダー0.01gを、付着させた。15秒静置した後、ガラス繊維を200℃×60分加熱した。
ガラス繊維交点の硬化物について、上方から形状係数SF1を求めた。各水性バインダーについて合計10回行い、その形状係数SF1の平均値を算出した。
なお、形状係数SF1は、粒子の形状の丸さを示すものであり、下記式(1)で表される、硬化物を2次元平面に投影してできる図形の最長径の二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。SF1の値が100の場合、硬化物の形状は真球であり、SF1の値が大きくなるほど、硬化物は不定形になる。

SF1={(最長径)2/(AREA)}×(100π/4) (1)

上記SF1の値を以下の基準で評価した。
<評価基準>
☆:120未満
◎:120以上、130未満
○:130以上、140未満
△:140以上、150未満
×:150以上
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表2中、使用した架橋剤(B)は以下のとおり。
(B−1):ジエタノールアミン[東京化成工業製、試薬、GR]
(B−2):トリエタノールアミン[米山薬品工業製、試薬、GR]
(B−3):1,6−ヘキサンジアミン[東京化成工業製、試薬、GR]
(B−4):ソルビトール[東京化成工業製、試薬]
【0068】
<参考例1>
容器に、上記(B−1)50部と、水50部とを仕込み、混合して、50重量%(B−1)水溶液を作成した。この水溶液をGC測定したところ、(B21)に基づく(B22)は0.009重量%であった。
【0069】
表1、2の結果から、本発明の鉱物繊維用水性バインダーは、比較のものに比べて、鉱物繊維積層体の接着性に優れ、さらに柔軟性に優れることがわかる。また、鉱物繊維交点での接着性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の鉱物繊維用水性バインダー(X)は、耐熱性積層体材料である鉱物繊維(ガラス繊維等)を接着するのに好適であり、該水性バインダーを用いた鉱物繊維積層体は、建築物や各種装置の断熱材、保温材および吸音材等として幅広い分野に適用できることから、極めて有用である。