特許第6754295号(P6754295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6754295-ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754295
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20200831BHJP
   C08J 9/14 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   !C08J9/14CET
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-252763(P2016-252763)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103480(P2018-103480A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃
(72)【発明者】
【氏名】直井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010299(JP,A)
【文献】 特開2003−183438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に共押出により積層接着された熱可塑性樹脂層を有する、全体見掛け密度0.03〜0.3g/cmのポリスチレン系樹脂板状積層発泡体であって、
該発泡層は、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有するポリスチレン系樹脂組成物から構成されており、該ポリスチレン系樹脂組成物100質量%に対して、該ポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量が60〜94質量%、ポリエチレン系樹脂の含有量が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が1〜10質量%であり、該樹脂層は、ポリエチレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物から構成されており、該熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、該熱可塑性樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量が20〜65質量%、ポリスチレン系樹脂の含有量が20〜70質量%であることを特徴とするポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項2】
前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]が、前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項3】
前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、さらにスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、前記熱可塑性樹脂組成物中のスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が、該熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して1〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項4】
前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中におけるポリスチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項5】
前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物が、さらに高分子型帯電防止剤を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項6】
前記発泡層と樹脂層との接着強度が2N/25mm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のポリスチレン系樹脂発泡体は、その発泡体特有の剛性、軽量性を利用し、ディスプレイ材、包装材、食品容器等の素材として使用されている。また最近では、剛性向上、帯電防止等の機能性付与のため、ポリスチレン系樹脂発泡層に樹脂層を積層したポリスチレン系樹脂板状積層発泡体が検討されている(特許文献1を参照)。
【0003】
一方、これらのポリスチレン系樹脂発泡板は、用途によっては剛性、軽量性の他に緩衝性(クッション性)、耐衝撃性、耐折り曲げ割れ性(折り曲げた際などに割れない)等の物性を要求されることがある。
【0004】
ポリスチレン系樹脂発泡体の耐衝撃性等の機械的物性や緩衝性を改良するために、ポリスチレン系樹脂発泡層にスチレン系エラストマーを含有させ、少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層を積層した共押出積層発泡体が提案されている(特許文献2を参照)。
【0005】
また、ポリスチレン系樹脂発泡体の緩衝性を改良するために、ポリスチレン系樹脂、低密度ポリエチレン及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる混合物を主成分とする熱成形用発泡シートが提案されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−145047号公報
【特許文献2】特開2006−297838号公報
【特許文献3】特開2003−183438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されている共押出積層発泡体は、容器等への熱成形用途に用いられることが考慮されており、発泡層に含まれるスチレン系エラストマー成分が比較的多いため、耐衝撃性には優れたものであるが、板状の緩衝材として使用する場合等、用途によってはより高い剛性が望まれる場合があった。
【0008】
このような問題に対して、本出願人は、ポリスチレン系樹脂発泡層を特定の割合のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含むポリスチレン系樹脂組成物から構成し、該発泡層の両面に、ポリエチレン系樹脂組成物を含む熱可塑性樹脂層を共押出により積層接着させたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提案している。
【0009】
上記の構成により、ポリスチレン系樹脂発泡層とポリエチレン系樹脂組成物を含む熱可塑性樹脂層樹脂層とを接着させることが可能となると共に、耐衝撃性と剛性とのバランス及び耐折り曲げ割れ性に優れた板状積層発泡体を提供することができる。
【0010】
しかしながら、この提案のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体においては、例えば、積層発泡体の表面にテープ等を貼り付けた後にそのテープを剥がしたとき、発泡層と熱可塑性樹脂層が剥離するおそれがあり、発泡層と熱可塑性樹脂層の接着強度について改善の余地を残すものであった。また、特許文献3では、発泡層と樹脂層との接着強度について何ら考慮されていない。
【0011】
本発明は、上記要請に鑑みなされたものであって、耐衝撃性と剛性の物性バランスに優れ、かつ発泡層と樹脂層との接着強度、耐折り曲げ割れ性に優れるポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供する。
<1>ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に共押出により積層接着された熱可塑性樹脂層を有する、全体見掛け密度0.03〜0.3g/cmのポリスチレン系樹脂板状積層発泡体であって、
該発泡層は、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有するポリスチレン系樹脂組成物から構成されており、該ポリスチレン系樹脂組成物100質量%に対して、該ポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量が60〜94質量%、ポリエチレン系樹脂の含有量が5〜30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が1〜10質量%であり、該樹脂層は、ポリエチレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物から構成されており、該熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、該熱可塑性樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量が20〜65質量%、ポリスチレン系樹脂の含有量が20〜70質量%であることを特徴とするポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<2>前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]が、前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]よりも少ないことを特徴とする<1>に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<3>前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、さらにスチレン系熱可塑性エラストマーを含み、前記熱可塑性樹脂組成物中のスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が、該熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して1〜10質量%であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<4>前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中におけるポリスチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)を含むことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<5>前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物が、さらに高分子型帯電防止剤を含むことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<6>前記発泡層と樹脂層との接着強度が2N/25mm以上であることを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体によれば、ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に共押出により積層接着されたポリエチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂層を有すると共に、発泡層をポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びスチレン系熱可塑性エラストマーを特定割合で含む樹脂組成物で構成し、樹脂層を特定割合のポリスチレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物で構成することで、耐衝撃性と剛性のバランス、発泡層と樹脂層との接着強度、耐折り曲げ割れ性に優れる板状積層発泡体を提供することができる。また、樹脂層に特定割合のポリスチレン系樹脂を含有させることで、滑り性に優れるポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造に用いる押出機の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体(以下、発泡体ともいう)は、ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に発泡層と略称する)の両面に共押出により積層接着された熱可塑性樹脂層(以下、単に樹脂層と略称する)を有するポリスチレン系樹脂板状積層発泡体であり、該発泡層はポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びスチレン系熱可塑性エラストマーを含有するポリスチレン系樹脂組成物(以下、単にポリスチレン系樹脂組成物と略称する)から構成され、該樹脂層はポリエチレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物(以下、単に熱可塑性樹脂組成物と略称する)から構成されたものである。
【0016】
[発泡層]
(ポリスチレン系樹脂)
本発明において、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂組成物におけるポリスチレン系樹脂は、スチレン成分を主体とする重合体であり、スチレン単独重合体のみならず、スチレンと他の単量体との共重合体を用いることができる。具体的には、ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。また、これらのポリスチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。これらのポリスチレン系樹脂の中でも、押出発泡性に優れることから、ポリスチレン(GPPS)が好ましい。
【0017】
なお、本発明におけるポリスチレン系樹脂は、スチレン成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。また、ポリスチレン系樹脂は、ジビニルベンゼンや多分岐状多官能性マクロモノマーなどの分岐化成分を含んでいてもよい。
【0018】
(ポリエチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂組成物におけるポリエチレン系樹脂は、エチレン成分を主体とする重合体であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、発泡体製造時の押出発泡性、発泡体の耐衝撃性と剛性のバランス、コスト性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。
【0019】
低密度ポリエチレンを用いる場合、押出発泡性や発泡体の物性バランスの観点から、JIS K 7210−1:2014(試験温度:190℃、荷重2.16kg)に基づいて測定される低密度ポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)が、5g/10min以下であることが好ましい。また、その下限は、概ね0.1g/10min以上である。
【0020】
なお、一般に、低密度ポリエチレンとは、長鎖分岐構造を有する密度0.91g/cm以上0.93g/cm未満のポリエチレン系樹脂をいう。また、本発明におけるポリエチレン系樹脂は、エチレン成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0021】
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
ポリスチレン系樹脂組成物におけるスチレン系熱可塑性エラストマーとして、既知の一般的なスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略称する)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SBBSと略称する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等を挙げることができる。これらの中でも、樹脂層との接着性やリサイクル原料としての使いやすさの観点から、SEBS、SBBSを好適に用いることができる。
【0022】
なお、上記したスチレン系熱可塑性エラストマーについては、例えば、「プラスチックエージ」、第101頁〜第106頁(June1985)等に詳述されている。また、スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン成分比率については、本発明の目的、効果が達成される範囲であれば特に限定されるものではないが、概ね20〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜45質量%である。
【0023】
(ポリスチレン系樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量)
ポリスチレン系樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、該組成物を100質量%として5〜30質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量が低すぎると、発泡層と樹脂層との接着性が低下するおそれや、発泡体の耐衝撃性を確保するために組成物中におけるスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量を増加させる必要が生じるため、発泡体の剛性が低下しやすくなると共に、コスト高につながるおそれがある。
【0024】
また、ポリエチレン系樹脂の含有量が高すぎると、発泡体の外観が悪化するおそれがあると共に、発泡層の高い独立気泡率を維持することが困難となり、剛性が低下するおそれがある。
【0025】
上記観点から、ポリエチレン系樹脂の含有量の下限は7質量%が好ましく、より好ましくは10質量%である。一方、含有量の上限は25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0026】
(ポリスチレン系樹脂組成物中のスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量)
ポリスチレン系樹脂組成物中のスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は、該組成物を100質量%として1〜10質量%である。スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が少なすぎると、発泡体の耐衝撃性や耐折り曲げ割れ性が低下するおそれがあると共に、ポリスチレン系樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の分散状態が悪化し、発泡体の表面状態が悪化するおそれがある。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が多すぎると、発泡体の剛性が低下しやすくなると共に、コスト高につながるおそれがある。
【0027】
上記観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量の下限は1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは2質量%である。一方、含有量の上限は9質量%であることが好ましく、より好ましくは8質量%である。
【0028】
(ポリエチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの質量比)
ポリスチレン系樹脂組成物中におけるポリエチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの質量比は、100:15〜100:80であることが好ましい。これらの質量比を上記範囲とすることで、発泡層と樹脂層との接着性がより良好であると共に、発泡体の剛性、耐衝撃性及びコスト性のバランスにより優れる発泡体を得ることができる。
【0029】
上記観点から、ポリエチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの質量比は、100:15〜100:70であることがより好ましく、さらに好ましくは100:15〜100:60である。
【0030】
(ポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量)
ポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量は、該組成物を100質量%として60〜94質量%である。
【0031】
(ポリスチレン系樹脂組成物に配合可能な樹脂)
本発明の発泡層を構成するポリスチレン系樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記したポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂以外のその他の樹脂を配合することができる。その場合、その他の樹脂の配合量は、ポリスチレン系樹脂組成物100質量%に対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。
【0032】
[樹脂層]
(ポリエチレン系樹脂)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂は、エチレン成分を主体とする重合体であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)や、これら2種以上の混合物を用いることができる。また、リサイクル原料としての使いやすさの観点から、発泡層と同一のポリエチレン系樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
(ポリスチレン系樹脂)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂は、スチレンを主体とする重合体であり、例えば、スチレン単独重合体のみならず、スチレンと他の単量体との共重合体を用いることができる。具体的には、ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。また、これらのポリスチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
なお、これらのポリスチレン系樹脂は、スチレン成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。また、ポリスチレン系樹脂は、ジビニルベンゼンや多分岐状多官能性マクロモノマーなどの分岐化成分を含んでいてもよい。
【0035】
これらの中でも、発泡体が耐折り曲げ割れ性に優れたものとなることから、ポリスチレン又はハイインパクトポリスチレンを用いることが好ましく、特にハイインパクトポリスチレンを好適に用いることができる。ハイインパクトポリスチレンは、ブタンジエンゴムなどのゴム粒子の存在下でスチレンを重合してなるポリスチレン系樹脂であり、ゴムにスチレンがグラフトし、分散相を形成するゴム粒子と、連続相を形成するポリスチレンで構成されるものであり、ゲル分を含む。該ハイインパクトポリスチレンは、他のポリスチレン系樹脂と同様に、スチレンのほかに、共重合成分として他の単量体成分や分岐化剤成分を含むことができる。耐折り曲げ割れ性の観点から、ハイインパクトポリスチレン中のゲル含有率は、15%以上であることが好ましく、その上限は、概ね35%であることが好ましい。
【0036】
本発明においては、共押出により発泡層の両面に樹脂層として上記したポリエチレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を特定の割合で含む樹脂組成物を積層接着することにより、発泡層と樹脂層の接着強度を向上させることができ、さらに、発泡体の表面の滑り性を向上させることができる。
【0037】
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、さらにスチレン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性樹脂組成物がスチレン系熱可塑性エラストマーを含むことにより、組成物中でポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とがより微細に分散し、発泡体の耐折り曲げ割れ性をより向上させることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、既知の一般的なスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと略称する)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SBBSと略称する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等を挙げることができる。これらの中でも、発泡層との接着性やリサイクル原料としての使いやすさの観点から、SEBS、SBBSを好適に用いることができる。
【0038】
なお、上記したスチレン系熱可塑性エラストマーについては、リサイクル原料としての使いやすさの観点から、発泡層と同一のスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。
【0039】
(帯電防止剤)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物においては、上記成分のほか、発泡体への埃等の付着を防止できる帯電防止剤を配合するのが好ましい。帯電防止材としては、従来公知のものを用いることができ、界面活性剤などのほかに、例えば、ポリオレフィンのブロックとポリエーテルなどの親水性ポリマーのブロックとが繰り返し結合した構造を有するブロック共重合体等の高分子型帯電防止剤を用いることができる。具体的には、三洋化成工業株式会社製のペレスタット(商標)VL300、ペレスタットHC250、ペレクトロン(商標)HS、ペレクトロンPVH等を例示することができる。
【0040】
(熱可塑性樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量%として、20〜65質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量が前記範囲であると、耐折れ曲げ割れ性と、発泡層への樹脂層の接着力とのバランスに特に優れた発泡体となる。
【0041】
上記観点から、ポリエチレン系樹脂の含有量の下限は30質量%が好ましく、より好ましくは40質量%である。一方、含有量の上限は60質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。
【0042】
(熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量%として、20〜70質量%である。ポリスチレン系樹脂の含有量が低すぎると、発泡層と樹脂層との間の接着力が不十分となるおそれがある。また、ポリスチレン系樹脂の含有量が高すぎると、樹脂層が脆くなり、折り曲げ時に割れやすくなるおそれがある。
【0043】
上記観点から、ポリスチレン系樹脂の含有量の下限は25質量%が好ましい。一方、含有量の上限は60質量%が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
また、発泡体の耐衝撃性と耐折れ曲げ割れ性とを高いレベルで両立させるという観点から、樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]は、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有量[質量%]よりも少ないことが好ましい。
【0044】
(熱可塑性樹脂組成物中のスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中にスチレン系熱可塑性エラストマーを配合する場合の含有量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量%として1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%であり、さらに好ましくは3〜5質量%である。
【0045】
(熱可塑性樹脂組成物中の高分子型帯電防止剤の含有量)
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物中に帯電防止剤を配合する場合の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量%(帯電防止剤を含む)に対して20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%の範囲である。
【0046】
(添加剤)
さらに、樹脂層には、本発明の目的を阻害しない範囲において添加剤を添加することができる。添加剤の種類は特に制限されるものではないが、機能性添加剤として、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤等を添加することもできる。
【0047】
[ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体]
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体は、前記ポリスチレン系樹脂組成物から構成された発泡層の両面に、共押出により前記熱可塑性樹脂組成物から構成された樹脂層を積層接着させたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体である。以下に、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の詳細を説明する。
【0048】
(全体見かけ密度)
本発明の発泡体の全体見掛け密度は0.03〜0.3g/cmである。全体見掛け密度が低すぎる場合には、発泡体の剛性や強度を維持することが困難となるおそれがある。また、全体見掛け密度が高すぎる場合には、発泡体の軽量性を維持することが困難となるおそれがある。
【0049】
上記観点から、発泡体の全体見掛け密度の上限は0.2g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.1g/cmである。一方、発泡体の全体見掛け密度の下限は0.04g/cmであることが好ましい。
【0050】
なお、本発明における発泡体の全体見掛け密度は、次のようにして求められる。まず、発泡体から適宜寸法にて切り出された発泡体片(例えば、長さ10cmの寸法にて、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の全幅にわたってその幅方向に切断して得られる発泡体片)からなる試験片の重量[g]を、その試験片の面積(例えば、10cm×発泡体の全幅[cm])で除し、単位換算することにより、発泡体の坪量[g/m]を求める。そして、発泡体の坪量を発泡体の全体厚み[mm]で除した値を単位換算[g/cm]して発泡体の全体見掛け密度が求められる。
【0051】
(全体厚み)
本発明の発泡体の全体厚みは、発泡体の軽量性や生産性の観点から、30mm以下であることが好ましく、より好ましくは25mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。また、全体厚みの下限は、発泡体の剛性の観点から、概ね0.5mmであることが好ましく、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上である。
【0052】
なお、発泡体の全体厚みは、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の全幅にわたって幅方向に1cm間隔で測定される厚み(mm)の算術平均値として求めることができる。
【0053】
(発泡層の独立気泡率)
発泡層の独立気泡率は、優れた剛性、耐衝撃性等の物性を得る観点から60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0054】
上記独立気泡率:S(%)は、ASTMD2856−70(1976再認定)に記載されている手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型等を使用して測定される試験片の実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和):Vx(cm)から、下記式(1)により算出できる。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(1)
但し、上記式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va: 測定に使用した試験片の見掛け容積(cm
W: 試験片の重量(g)
ρ: 試験片を構成する樹脂組成物の密度(g/cm
【0055】
なお、樹脂組成物の密度ρ(g/cm)は、試験片の重量W(g)及び測定に使用した試験片を加熱プレスにより気泡を脱泡させてから冷却する操作を行い、得られたサンプルの体積(cm)から求めることができる。
【0056】
(樹脂層の片面当たりの坪量)
樹脂層の片面当たりの坪量は、3〜50g/mであることが好ましい。樹脂層の片面あたりの坪量を上記範囲とすることで、より安定して樹脂層を均一に積層できると共に、軽量かつ耐衝撃性や耐曲げ割れ性に優れた発泡体を得ることができる。また、コスト性や軽量性の観点から、発泡体の片面あたりの坪量の上限は、40g/mであることが好ましく、より好ましくは30g/m、さらに好ましくは20g/mである。
【0057】
樹脂層の片面当たりの坪量は、発泡体の坪量から、発泡体製造時の発泡体全体の吐出量と樹脂層の片面当たりの吐出量をもとに下記式(2)により求めることができる。
樹脂層の片面当たりの坪量[g/m]=発泡体の坪量[g/m]×(発泡層の片面当たりの吐出量[kg/hr]/発泡体全体の吐出量[kg/hr])・・・(2)
【0058】
なお、発泡層と樹脂層とを切り分けることができる場合には、切り分けた樹脂層の坪量は、その重量と面積から1m当たりの重量(g)に換算することにより求めることができる。
【0059】
(発泡層と樹脂層との接着強度)
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の発泡層と樹脂層との接着強度は、優れた外観(表面状態、表面平滑性)を得る観点から、2N/25mm以上が好ましく、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは4N/25mm以上である。
【0060】
接着強度は、JIS K6854−1:1999に記載された90°はく離試験に基づき測定されるはく離接着強さとして特定される。具体的には、まず、発泡体から、押出方向、及び幅方向に沿って長さ250mm×幅25mmの寸法にそれぞれ切り出し、試験片とする。次に、試験片に対して、引きはがし速度50mm/minの条件にて、樹脂層を押出方向(MD)、及び幅方向(TD)に剥離し、その時の荷重を接着強度として測定する。MDの測定値とTDの測定値の算術平均値を接着強度とする。
【0061】
なお、樹脂層の坪量が小さい等の理由で、接着強度測定時、樹脂層が破断しやすく、測定が困難な場合は、樹脂層の表面側をテープ等で補強し、測定しても構わない。
【0062】
(本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造方法)
以下、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造方法の一実施形態を説明する。図1に本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造に用いる押出機の概略図を示す。
【0063】
本発明の発泡体1の製造方法は、まず、発泡層を構成するポリスチレン系樹脂2、ポリエチレン系樹脂3、スチレン系エラストマー4、その他必要に応じて添加される気泡調整剤等の添加剤を第1押出機5に供給して加熱混練し、発泡剤6を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整し、発泡層形成用樹脂溶融物7とする。
【0064】
また同時に、樹脂層を構成するポリエチレン系樹脂8、ポリスチレン系樹脂9、その他必要に応じて添加されるスチレン系エラストマー10、帯電防止剤11、揮発性可塑剤13、各種添化剤等を第2押出機12に供給して加熱混練し、適正温度に調整し、樹脂層形成用樹脂溶融物14とする。
【0065】
上記発泡層形成用樹脂溶融物7と樹脂層形成用樹脂溶融物14の吐出量を制御して環状ダイ15に導入する。環状ダイ15内で発泡層形成用樹脂溶融物7と樹脂層形成用樹脂溶融物14とを合流積層させてから、共押出して発泡層形成用樹脂を発泡させることにより、発泡層の外周面に樹脂層が積層接着された筒状積層発泡体を製造する。この筒状積層発泡体を引き取りながらピンチロールに通過させて、筒状積層発泡体の内側の発泡層の内面同士を融着させることにより発泡層の両面側に樹脂層が積層接着された本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を得ることができる。
【0066】
なお、共押出では、発泡層形成用樹脂溶融物7の温度に樹脂層形成用樹脂溶融物14の温度をできるだけ近づけた方がより独立気泡率の高い発泡板が得られるため好ましい。また、共押出により発泡層の外面、及び内面の両面に樹脂層が積層接着された筒状積層発泡体を製造し、該筒状積層発泡体を筒状の冷却装置であるマンドレルに沿わせ、切り開いてシート状の積層発泡体を得て、その後加熱炉等で平板化し、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を得ることもできる。
【0067】
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の製造に用いられる環状ダイ15、押出機等の各種装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを適宜用いることができる。
【0068】
発泡層形成用樹脂溶融物7の発泡適正温度とは、発泡するのに最適な粘弾性を示す温度を意味する。発泡適正温度は、ポリスチレン系樹脂2の種類や溶融粘度、発泡剤6の種類や添加量によって適宜定まるものであるが、通常、130℃以上170℃以下程度の範囲である。
【0069】
(気泡調整剤)
発泡層形成用樹脂溶融物7に添加される気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0070】
気泡調整剤の添加量は、発泡層を構成するポリマー成分100質量部に対して、概ね0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0071】
(発泡剤)
発泡剤6としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又はメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等の有機物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。
【0072】
上記した発泡剤6は、2種以上を混合して使用することが可能である。発泡剤6は、上記した中でもポリスチレン系樹脂を発泡させやすいことから、有機系物理発泡剤が好ましく、特にノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好ましい。
【0073】
発泡剤6の添加量は、発泡剤6としてイソブタン30質量%とノルマルブタン70質量%とのブタン混合物等の有機系物理発泡剤を用いる場合、発泡層6を構成するポリマー成分100質量部に対して、概ね0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、より好ましくは2〜6質量部である。なお、発泡剤6としては、物理発泡剤以外に化学発泡剤などを併用して用いることもできる。
【0074】
(揮発性可塑剤)
本発明の発泡体の製造方法においては、発泡層形成用樹脂溶融物7と樹脂層形成用樹脂溶融物14とを共押出する際に、適正発泡温度での、樹脂層形成用樹脂溶融物14の溶融伸びを向上させ、樹脂層形成用樹脂溶融物14の伸びを発泡層形成用樹脂溶融物7の伸びに対応させるために、樹脂層形成用樹脂溶融物14には揮発性可塑剤13が添加されることが好ましい。
【0075】
揮発性可塑剤13は、樹脂層形成用樹脂溶融物14中に存在している状態で、溶融粘度を低下させる機能を有すると共に、樹脂層形成後に、樹脂層より揮発してその樹脂層から除去されるものが用いられる。
【0076】
揮発性可塑剤13としては、例えば、炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素、炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、又は炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等から選択される1種、又は2種以上で構成されるものが好ましく用いられ、これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物に対する溶解性、取扱いの容易さ等の観点から、炭素数2〜6の脂肪族炭化水素が好ましく、特にノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものがより好ましい。
【0077】
揮発性可塑剤13の添加量については、樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、概ね1〜10質量部であることが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0079】
製造装置として、バレル内径90mmの押出機と、該押出機に接続されたバレル内径120mmの押出機とからなるタンデム型の発泡層形成用押出機(第1押出機)の出口に共押出用環状ダイ(リップ径100mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイに、バレル内径50mmの樹脂層形成用押出機(第2押出機)を連結させた共押出装置を用いた。
【0080】
なお、上記製造装置に導入する発泡層用及び樹脂層用の各材料は、以下のものを用いた。
[発泡層]
ポリスチレン系樹脂(PS):PSジャパン社製 ポリスチレン GX154
ポリエチレン系樹脂(PE):住友化学社製 低密度ポリエチレン F102
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS):旭化成社製 スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体 タフテックH1041
【0081】
[樹脂層]
ポリエチレン樹脂(PE 略称A):日本ユニカー社製 低密度ポリエチレン NUC8321
ポリエチレン樹脂(PE 略称B):日本ポリエチレン社製 直鎖状低密度ポリエチレン ノバテックLL UJ960
帯電防止剤(帯防 略称C):三洋化成社製 高分子型帯電防止剤 ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体 ペレクトロンHS
スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS 略称D):旭化成社製 スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS) タフテックH1041
ポリスチレン樹脂(PS 略称E):PSジャパン社製 ポリスチレン GX154
ポリスチレン樹脂(PS 略称F):東洋スチレン社製 ポリスチレン HRM12
ポリスチレン樹脂(PS 略称G):PSジャパン社製 ハイインパクトポリスチレンHT60
【0082】
発泡層形成用のポリスチレン系樹脂GX154、ポリエチレン系樹脂F102、スチレン系熱可塑性エラストマーH1041を表1に示す含有量となるように第1押出機に供給し、これらの合計100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク35質量%マスターバッチを1.0質量部添加し、加熱、混練し、これに発泡剤として混合ブタン(ノルマルブタン:イソブタン=70:30(質量比))5.7質量部を注入してさらに混練した後、136℃に調整して、発泡層形成用樹脂溶融混合物とし、吐出量96.8kg/hrで共押出用環状ダイ中に導入した。
【0083】
同時に、樹脂層形成用のポリエチレン系樹脂(A)、(B)、帯電防止剤(C)、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)、ポリスチレン樹脂(E)、(F)、(G)から表1に示す材料を用い、各々の配合量にて第2押出機に供給して、加熱、混練し、これに揮発性可塑剤として混合ブタン4.5質量部を注入してさらに混練した後、160℃に調整して樹脂層形成用樹脂溶融混合物とし、吐出量9.4kg/hrで共押出用環状ダイに導入した。
【0084】
共押出用環状ダイ中で、発泡層形成用樹脂溶融混合物と樹脂層形成用樹脂溶融混合物とを合流させ、発泡層形成用樹脂溶融混合物の外周面に樹脂層形成用樹脂溶融混合物を積層してから筒状に共押出して、筒状積層発泡体を形成した。該筒状発泡体を15.7m/minの速度で引き取りながらピンチロールで挟み込んで、この内面同士を融着させることにより幅500mm、厚み5.0mmの実施例1〜4及び比較例1〜6のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
得られた上記実施例1〜4及び比較例1〜6のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、全体の見掛け密度、厚み、坪量、発泡層の独立気泡率、樹脂層の片面あたりの坪量、発泡層と樹脂層の接着強度を前記した方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
樹脂層の片面あたりの坪量については、発泡体から樹脂層をはく離させ、樹脂層の質量をその面積により除することにより求めた。発泡層の独立気泡率は、発泡体を幅方向に5等分し、その幅方向中央部から試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片の独立気泡率の算術平均値として求めた。
【0088】
また、得られた上記実施例1〜4及び比較例1〜6のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、曲げ弾性率を下記条件で測定し、また、耐衝撃性、耐折り曲げ割れ性、表面状態(外観)を下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0089】
(曲げ弾性率)
発泡体の曲げ弾性率の測定は、JIS K 7203−1982に基づき、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の押出方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて測定した。ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体から、押出方向、及び幅方向に沿って長さ100mm×幅25mmの寸法にそれぞれ切り出し、試験片(試験片の厚みは、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体と同じ)とした。
【0090】
次に、前記試験片を用い、支点先端のR=5mm、圧支先端のR=5mm、支点間距離50mm、曲げ速度10mm/minの条件にて曲げ弾性率の測定試験を行った。押出方向、幅方向それぞれ5個の試験片について測定を行い、得られた押出方向についての曲げ弾性率の測定値、幅方向についての曲げ弾性率の測定値について算術平均値をそれぞれ求め、押出方向(MD)の曲げ弾性率(MPa)、幅方向(TD)の曲げ弾性率(MPa)とした。
【0091】
(耐衝撃性)
耐衝撃性については、パンクチャー衝撃強度により評価を行った。
パンクチャー衝撃強度は、JIS P8134:1998に基づいて、温度23℃、湿度50%の環境下、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体から押出方向に沿って長さ120mm×幅120mmの寸法で切り出した試験片を用いて測定した。5個の試験片について測定を行い、各測定値の算術平均値を発泡体のパンクチャー衝撃強度(N・cm)とし、以下の基準で評価した。
◎:150N・cm以上
○:100N・cm以上150N・cm未満
×:100N・cm未満
【0092】
(耐曲げ割れ性)
折り曲げた際の表面の割れの発生状態を以下の試験方法で評価した。
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体から押出方向に沿って長さ100mm×幅25mmの寸法で切り出した試験片を、短手方向を軸に速度100mm/minで90°又は180°折り曲げた。5個の試験片について試験を行い、目視により以下の基準で評価した。
◎:全ての試験片で180°折り曲げた際に樹脂層に割れなし
○:全ての試験片で90°折り曲げた際に樹脂層に割れはないが、180°まで折り曲げた際にいずれかの試験片で樹脂層に割れあり
×:90°折り曲げた際にいずれかの試験片で樹脂層に割れあり
××:90°折り曲げた際にいずれかの試験片で発泡層にも割れあり
(表面状態(外観))
表面状態(外観)を目視により以下の基準で評価した。
○:表面に凹凸なし
△:表面に若干の凹凸あり
×:表面に凹凸あり、又は模様発生
【0093】
表1に示す結果から、本発明に係る実施例1〜4の構成のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体は、発泡層と樹脂層の接着強度、曲げ弾性率、耐衝撃性、耐折り曲げ割れ性、表面状態(外観)の全てについて、バランスのとれた優れた結果が得られた。
【0094】
これに対して、樹脂層にポリスチレン系樹脂を配合しなかった比較例1〜4では、発泡層と樹脂層の接着強度が劣っていた。樹脂層へのポリスチレン系樹脂の配合量が少なすぎる比較例5では、発泡層と樹脂層の接着強度が劣っていた。また、樹脂層へのポリスチレン樹脂の配合量が多すぎる比較例6は、耐衝撃性、耐曲げ割れ性が劣っていた。
【0095】
これらの結果から、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体は、耐衝撃性と剛性の物性バランスに優れ、かつ接着強度、耐折り曲げ割れ性に優れるポリスチレン系樹脂板状積層発泡体であることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
1 ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体
2 ポリスチレン系樹脂
3 ポリエチレン系樹脂
4 スチレン系熱可塑性エラストマー
5 第1押出機
6 発泡剤
7 発泡層形成用樹脂溶融物
8 ポリエチレン系樹脂
9 ポリスチレン系樹脂
10 スチレン系熱可塑性エラストマー
11 帯電防止剤
12 第2押出機
13 揮発性可塑剤
14 樹脂層形成用樹脂溶融物
15 環状ダイ
図1