(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記モータロックの解除動作にかかわらず、前記モータロックが解除されなかった場合、前記モータを前記規定時間以下の予め定められた第2時間だけ一方向に回転させた後、前記第2時間だけ逆方向に回転させる反復動作を前記硬貨排出機構に繰り返し行わせる請求項1に記載の自動釣銭入出金機。
前記硬貨収納部は、1種類の硬貨を収納し、前記硬貨を外部に排出するための第1排出口を有する第1室と、他の1種類の硬貨を収納し、前記硬貨を外部に排出するための第2排出口を有する第2室とを備え、
前記硬貨排出機構は、前記モータが一方向に回転する回転駆動力を受けて回転することにより、前記第1室内の硬貨の前記第1排出口からの排出動作を行う第1回転板と、前記モータが逆方向に回転する回転駆動力を受けて回転することにより、前記第2室内の硬貨の前記第2排出口からの排出動作を行う第2回転板と、前記第1回転板と噛合して前記モータの回転駆動力を前記第1回転板に伝達するモータギアと、前記第1回転板と噛合する第1連結ギアと、前記第1連結ギアに連結軸を介して連結し、前記第2回転板と噛合する第2連結ギアと、前記連結軸と前記第2連結ギアとの間に設けられたクラッチとを備え、
前記クラッチは、前記モータの逆方向の回転駆動力を前記第2回転板に伝達するが、前記モータの一方向の回転駆動力を前記第2回転板に伝達しないように構成されたワンウェイクラッチであり、
前記第1連結ギアは、前記連結軸に対して回転可能に設けられ、前記連結軸に対し、予め定められた角度だけ回転したとき、前記連結軸に設けられた係合片と係合して前記連結軸に前記モータの回転駆動力を伝達する係合凸部を備えた請求項1〜4のいずれか1つに記載の自動釣銭入出金機。
前記1以上の硬貨収納部は、1円硬貨および5円硬貨を個別に収納可能な第1硬貨収納部と、10円硬貨および50円硬貨を個別に収納可能な第2硬貨収納部と、100円硬貨および500円硬貨を個別に収納可能な第3硬貨収納部とから構成される請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動釣銭入出金機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(i)2種類の硬貨を個別に収納可能な1以上の硬貨収納部と、モータを一方向または逆方向に回転する回転駆動力によって前記2種類の硬貨を選択的に前記硬貨収納部内から外部に排出する硬貨排出機構と、硬貨の排出時に前記硬貨収納部内で前記硬貨が詰まることによって前記モータの回転が停止するモータロックを検出するモータロック検出部と、前記硬貨排出機構および前記モータロック検出部を制御する制御部とを備え、前記硬貨排出機構は、前記モータの回転方向を反転して1種類の硬貨の排出動作から他の1種類の硬貨の排出動作に切り替えるとき、前記モータの反転後、予め定められた規定時間だけ前記モータを回転した後に他の1種類の硬貨の排出動作を開始するように構成され、前記制御部は、前記硬貨排出機構が前記モータを一方向に回転して硬貨を排出する際に前記モータロック検出部が前記モータのモータロックを検出したとき、前記硬貨排出機構に前記モータの回転方向を反転させ、前記規定時間以下の予め定められた第1時間だけ前記モータを逆方向に回転させることによって前記モータロックの解除動作を行うことを特徴とする。
【0012】
「自動釣銭入出金機」は、投入された硬貨を収容し、収容された硬貨を用いて払出しを行い、硬貨を金種別に収納する1以上の硬貨収納部を有する装置である。また、この発明の自動釣銭入出金機は、複数種類の紙幣を金種別に収納出金可能な紙幣収納出金装置を備えていてもよい。
「予め定められた規定時間」および「第1時間」は、モータの反転後、モータを回転した後に他の1種類の硬貨の排出動作を開始するまで(または他の1種類の硬貨が排出されない範囲)のモータの回転に要する時間(例えば、900msなど)である。また、モータの回転時間で規定する代わりに、モータの回転数(例えば、0.25回転(90°の回転に相当)や0.5回転(180°の回転に相当))で規定してもよい。
【0013】
この発明の「モータロック検出部」は、制御部105,電源回路113,モータ駆動IC111およびモータMA,MBおよびMCの協働により実現する。
【0014】
また、本発明の自動釣銭入出金機は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0015】
(ii)前記制御部は、前記モータロックの解除動作にかかわらず、前記モータロックが解除されなかった場合、前記モータを前記規定時間以下の予め定められた第2時間だけ一方向に回転させた後、前記第2時間だけ逆方向に回転させる反復動作を前記硬貨排出機構に繰り返し行わせるものであってもよい。
【0016】
このようにすれば、硬貨の排出を生じる規定時間以下の第2時間だけモータを一方向および逆方向に繰り返し回転させるため、意図しない硬貨の払出しを生じさせることなく、モータのロック状態を解除することができる。
【0017】
(iii)前記第2時間は、前記第1時間よりも短いものであってもよい。
【0018】
このようにすれば、硬貨の排出を生じる規定時間未満の時間でモータを一方向および逆方向に繰り返し回転させるため、意図しない硬貨の払出しを生じさせることなく、モータのロック状態を解除することができる。
【0019】
(iv)エラー情報を報知する報知部をさらに備え、前記制御部は、前記反復動作を予め定められた反復回数、前記モータに反復させたにもかかわらず、前記モータロックが解除されなかった場合、前記報知部にエラー情報を報知させるものであってもよい。
【0020】
このようにすれば、モータロックの解除動作を何度か反復してもモータロックを解除できない場合にのみ、ユーザーにエラー情報を報知するため、ユーザーの負担が軽減される。
【0021】
「報知部」は、ディスプレイ等の表示部にエラー情報を報知するものであってもよいし、スピーカー等の音声発生部によりエラー情報を報知するものであってもよい。
【0022】
(v)前記硬貨収納部は、1種類の硬貨を収納し、前記硬貨を外部に排出するための第1排出口を有する第1室と、他の1種類の硬貨を収納し、前記硬貨を外部に排出するための第2排出口を有する第2室とを備え、前記硬貨排出機構は、前記モータが一方向に回転する回転駆動力を受けて回転することにより、前記第1室内の硬貨の前記第1排出口からの排出動作を行う第1回転板と、前記モータが逆方向に回転する回転駆動力を受けて回転することにより、前記第2室内の硬貨の前記第2排出口からの排出動作を行う第2回転板と、前記第1回転板と噛合して前記モータの回転駆動力を前記第1回転板に伝達するモータギアと、前記第1回転板と噛合する第1連結ギアと、前記第1連結ギアに連結軸を介して連結し、前記第2回転板と噛合する第2連結ギアと、前記連結軸と前記第2連結ギアとの間に設けられたクラッチとを備え、前記クラッチは、前記モータの逆方向の回転駆動力を前記第2回転板に伝達するが、前記モータの一方向の回転駆動力を前記第2回転板に伝達しないように構成されたワンウェイクラッチであり、前記第1連結ギアは、前記連結軸に対して回転可能に設けられ、前記連結軸に対し、予め定められた角度だけ回転したとき、前記連結軸に設けられた係合片と係合して前記連結軸に前記モータの回転駆動力を伝達する係合凸部を備えたものであってもよい。
【0023】
このようにすれば、ギア、連結軸およびクラッチからなる簡単な機構により、1つのモータの回転方向により2種類の硬貨の払出しを行う硬貨収納部を有する場合において、意図しない硬貨の払出しを生じさせることなく、モータのロック状態を解除する自動釣銭入出金機を実現できる。
【0024】
(vi)前記1以上の硬貨収納部は、1円硬貨および5円硬貨を個別に収納可能な第1硬貨収納部と、10円硬貨および50円硬貨を個別に収納可能な第2硬貨収納部と、100円硬貨および500円硬貨を個別に収納可能な第3硬貨収納部とから構成されるものであってもよい。
【0025】
このようにすれば、1つのモータを一方向または逆方向に回転させることにより2種類の硬貨の払出しを行う硬貨収納部を上記のように3つ設けることで、我が国の全ての種類の硬貨を収納でき、かつ、意図しない硬貨の払出しを生じさせることなく、モータのロック状態を解除する自動釣銭入出金機を実現できる。
【0026】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0027】
(実施形態1)
≪自動釣銭入出金機100の概要≫
まず、この発明による自動釣銭入出金機100の構成の概要を説明する。
図1は、この発明による自動釣銭入出金機100の一実施形態の構成例を示すブロック図である。
図1に示す自動釣銭入出金機100は、例えば自動販売機、自動券売機、セルフ式ガソリンスタンドやスーパーマーケット等に設置された自動精算機などに内蔵される。
【0028】
自動釣銭入出金機100は、3つの硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cを備える。さらに、硬貨投入口101と、この硬貨投入口101に投入された硬貨Kの金種を識別する硬貨識別部102と、金種が識別された硬貨Kをいずれかの硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cに搬送する搬送通路103aを有する硬貨搬送部103を備える。さらに、各硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cにそれぞれ対応するモータMA,MBおよびMCと、硬貨収納部内の硬貨Kを釣銭として払い出す硬貨払出口104を備える。さらにまた、硬貨識別部102からの識別信号に基づいて、硬貨搬送部103、硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cの動作を制御する制御部105、記憶部107および報知部109を備える。
【0029】
この実施形態で、制御部105は主としてマイクロコンピュータで構成され、さらに入出力インターフェイス回路を含み、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働して処理および制御動作が実現される。また、記憶部107は不揮発性及び揮発性の半導体メモリで構成される。ただし、この構成に限定されるものでない。
【0030】
硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cは、自動釣銭入出金機100の本体により着脱可能に支持されている。ユーザー、管理者あるいはサービス技術者は、必要に応じてそれぞれの硬貨収納部を個別に自動釣銭入出金機100の本体から取り外すことができる。
【0031】
詳細には、この自動釣銭入出金機100は、1円および5円硬貨を個別に収納する硬貨収納ユニット1A、10円および50円硬貨を個別に収納する硬貨収納ユニット1B、100円および500円硬貨を個別に収納する硬貨収納ユニット1Cを備える。さらに、各硬貨収納部のオーバーフローする硬貨Kを収納する予備硬貨収納部2を備えている。
【0032】
自動釣銭入出金機100の筐体の一面には、自動釣銭入出金機100内に3つの硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cをそれぞれ着脱可能に装着するための機構(
図1に不図示)が形成されている。そして、各硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cに対応する3つのモータMA,MBおよびMCが設けられており、各モータMA,MBおよびMCの出力は駆動ギアを介して各硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cの回転力伝達部に伝達されて硬貨Kの払い出しが行われる。
【0033】
硬貨収納ユニット1Aは、釣銭使用頻度の高い硬貨Kを収納する容積が大きい第1収納室1Aaと、釣銭使用頻度が低い硬貨Kを収納する容積が小さい第2収納室1Abとを有する。同様に、硬貨収納ユニット1Bは、収納容積が大きい第1収納室1Baと、収納容積が小さい第2収納室1Bbとを有し、硬貨収納ユニット1Cは、収納容積が大きい第1収納室1Caと、収納容積が小さい第2収納室1Cbとを有する。
【0034】
各硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cの第1収納室1Aa,1Ba,1Caおよび第2収納室1Ab,1Bb,1Cbの上方には、それぞれの収納室に対応する複数の開口部が配置されている。各開口部に対応してその開口部を塞ぐシャッターが設けられている。
【0035】
この実施形態において、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaと第2収納室1Abには、1円硬貨と5円硬貨がそれぞれ収納される。硬貨収納ユニット1Bの第1収納室1Baと第2収納室1Bbには、10円硬貨と50円硬貨がそれぞれ収納される。硬貨収納ユニット1Cの第1収納室1Caと第2収納室1Cbには、100円硬貨と500円硬貨がそれぞれ収納される。
【0036】
なお、1つの硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1C内に収納する使用頻度の高い硬貨Kと低い硬貨Kの組み合わせは自由である。例えば、1円硬貨と50円または500円硬貨の組み合わせ、10円硬貨と5円または500円硬貨の組み合わせ、100円硬貨と5円または50円硬貨の組み合わせであってもよい。さらに、異なる国では硬貨Kの種類や組み合わせが異なる。
【0037】
また、図示省略するが、この自動釣銭入出金機100は、複数種類の紙幣(例えば、千円、五千円および一万円札)を種類別に収納出金可能な紙幣収納出金装置を備えてもよい。紙幣収納出金装置は、紙幣導入口、この紙幣導入口に導入された紙幣の金種を識別する紙幣識別部、金種を識別された紙幣を紙幣収納出金装置に搬送する搬送通路を有する紙幣搬送部および紙幣収納出金装置内の紙幣を釣銭として払い出す紙幣払出口を備えてもよい。この場合、制御部105は、紙幣識別部、紙幣搬送部およびその他の紙幣収納出金装置の各部分とも電気的に接続される。
【0038】
硬貨識別部102は、従来公知の方法、例えば硬貨Kの大きさ(厚みを含む)、重量、材質等から金種を識別し、硬貨識別信号を制御部105へ送信する。また、紙幣識別部は、従来公知の方法、例えば紙幣の印刷パターン(透かしを含む)、印刷インクの材質、縦横寸法等から金種を識別し、紙幣識別信号を制御部105へ送信する。
【0039】
硬貨搬送部103は、搬送通路103a上に設けられた図示しない硬貨移動機構と、硬貨収納ユニット1Aの後述する第1または第2収納室へ硬貨Kが搬送されるように搬送通路103aを切り換える複数の搬送通路切換機構103bを有している。硬貨収納ユニット1Bおよび1Cについても同様である。
【0040】
硬貨移動機構は、搬送通路103a上に設けられたゴム製のエンドレスベルトと、エンドレスベルトを張架しかつ回転させる複数のプーリーとを備えてなる。搬送通路103a上に寝た硬貨Kの平坦面にエンドレスベルトが接触しながら搬送方向(矢印A方向)へ移動することにより、硬貨Kを搬送通路103a上で滑らせて1枚ずつ搬送するよう構成されている。
【0041】
搬送通路103aに沿って、硬貨Kの種類別に開口部3Aa,3Ab,3Ba,3Bb,3Ca,3Cbが設けられている。さらに、予備硬貨収納部2に連通する開口部4が設けられている。
開口部3Bbに対応する搬送通路切換機構103bは、ソレノイド103b
1と、ソレノイド103b
1によって硬貨収納ユニット1Aへ通じる搬送通路103aに設けられた連通孔を開閉するシャッター103b
2とを有してなる。他の開口部についても同様の搬送通路切換機構が設けられている。
【0042】
制御部105は、硬貨識別部102からの硬貨識別信号を受信し、硬貨識別信号に応じて所定の硬貨収納部の第1または第2収納室へ硬貨Kを搬送する搬送指令信号を搬送通路切換機構103bへ送信するように構成されている。
例えば、制御部105は、硬貨識別部102からの1円硬貨の硬貨識別信号を受信すると、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaへ硬貨Kを搬送する搬送指令信号を搬送通路切換機構103bのソレノイド103b
1へ送信する。これにより、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaに対応するソレノイド103b
1が作動してシャッター103b
2を矢印Fで示す方向に開く。そして、搬送通路103a上を移動する1円硬貨が硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaに落下して収納される。制御部105は、他の硬貨Kについても硬貨Kの種類に応じた開口部から落下させて種類別に硬貨収納部10に収納する。
このように、硬貨搬送部103は、硬貨投入口101から投入された硬貨Kを1枚毎にその種類に応じた開口部へ案内する。
【0043】
また、制御部105は、釣銭が必要となったときに所定の硬貨収納部の後述するモータMAへ正回転および/または逆回転を指令する回転指令信号を送信するように構成されている。この際、制御部105は、硬貨識別部102にて金種を識別された硬貨Kの枚数を計数して合計金額を算出する。また、外部からの商品代金信号を受信し、合計金額と商品代金信号に含まれる金額とを比較して釣銭が必要であるか否かを判断する。そして、釣銭が必要な場合に釣銭に応じた硬貨収納部のモータMAへ正回転および/または逆回転の指令信号を送信する。モータMAが正回転すると、第1収納室から硬貨Kの払出しが行われる。このとき、第2収納室から硬貨Kの払出しは行われない。モータMAが逆回転すると、第2収納室から硬貨Kの払出しが行われる。このとき、第1収納室からの硬貨Kの払出しは行われない。各室からの硬貨Kの払出しは、1枚ずつ所定の時間間隔をおいて行われる。
【0044】
≪硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1C≫
図2は、
図1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cを構成する壁部の一部を取り外した状態を示す斜視図であり、
図3は、
図1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cを構成する別の壁部を取り外した状態を示す斜視図である。
自動釣銭入出金機100に備えられた3つの硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cは、それぞれ同じ構造を有するものであるため、以下の説明では、1円および5円硬貨を収納する硬貨収納ユニット1Aを代表として説明する。他の硬貨収納ユニット1Bおよび1Cについても同様である。
【0045】
硬貨収納ユニット1Aは、2種類の硬貨Kを個別に収納可能な硬貨収納部10と、2種の硬貨Kを選択的に硬貨収納部10内から外部に排出する硬貨排出機構20とを備える。
硬貨収納ユニット1Aは、種類に応じた硬貨Kをそれぞれ収納する第1収納室1Aaおよび第2収納室1Abを有し、第1収納室1Aaの容積は第2収納室1Abの容積よりも大きく設定されている。
第1収納室1Aaは、1種類の硬貨K(この場合、1円硬貨)を第1収納室1Aa内に導入するための広い第1導入口11aを有する。さらに、第1収納室1Aa内の硬貨Kを外部に排出するために底部に設けられた第1排出口11b(
図2参照)と、第1導入口11aの一部に設けられたスロープ部11c(
図3参照)とを有する。
【0046】
また、第1収納室1Aaの底部には、4つの円形の孔とその孔から下方へ延びる側壁部が形成されて回転可能な第1回転板21が嵌め込まれる円形凹部11dと、円形凹部11dの周囲に設けられた凹曲面部11e(
図2参照)とを有する。そして、凹曲面部11eと隣接する円形凹部11dの段差部11d
1(
図2参照)の一部を切り欠いて前述の第1排出口11bが形成されている。円形凹部11dには、2個の円柱形の第1凸部24aおよび24bが固定されている。第1凸部24aおよび24bは、略硬貨1枚分の高さを有している。第1回転板21の各孔には下方に延びる側壁部が形成されているが、第1回転板21が回転した場合にその側壁部が第1凸部24aと24bに接触しないように側壁部に切り欠きが形成されている。
【0047】
第1収納室1Aaには、硬貨K(1円硬貨)が平積み状態ではなくランダムに収納される。この際、自動釣銭入出金機100の硬貨搬送部103から落下する硬貨Kをスロープ部11cにて受けて第1回転板21上に滑り落とすようにしている。また、第1回転板21の回転軸にL形の攪拌棒26(
図3参照)がネジ止めされている。第1回転板21が回転すると攪拌棒26も一緒に回転して第1室1Aa内の硬貨Kを攪拌する。そのために、立った状態の硬貨Kが横に寝かせられ、第1回転板21の孔に硬貨Kが嵌り込みやすくなる。
【0048】
モータMAが正回転すると、第1回転板21が上方から見て時計回りに回転する。第1回転板21のいずれかの孔に嵌った硬貨Kは、円形凹部11d上を移動する。硬貨Kの先端側が第1凸部24aと24bに当接すると、後端側からその硬貨Kを押す第1回転板21の側壁部が、その硬貨Kを第1回転板21の外周側へ逃がし、硬貨Kが第1排出口11bから排出されるように前記側壁部の形状が形成されている。なお、モータMAが逆回転する場合、第1回転板21は上方から見て反時計方向に回転し得るが、モータMAの駆動を第1回転板21に伝達する伝達機構は一方向クラッチを有している。第1回転板21のいずれかの孔に嵌った硬貨Kが第1回転板21と共に反時計回りに移動して先端側が第1凸部24aと24bに当接すると一方向クラッチの作用で硬貨Kを押す第1回転板21の移動が停止し、硬貨Kは第1凸部24aと24bに当接した位置で留まる。
【0049】
第2収納室1Abは、他の1種類の硬貨K(この場合、5円硬貨)を第2収納室1Ab内に導入するための第2導入口12aと、第2収納室1Ab内の硬貨Kを外部に排出するための第2排出口12b(
図2参照)とを有する。そして、全体的には収納される硬貨Kの直径よりも僅かに大きい内径を有する円筒形に形成されている。
第2収納室1Abは、その第2導入口12aが第1収納室1Aaのスロープ部11cと隣接するように配置されている。
この第2収納室1Abには、硬貨K(5円硬貨)が第2収納室の上方にあるシャッター103b
2が解放されることによって収納室へ落下して導入される。落下した硬貨Kは、硬貨Kの面と面とが接して並ぶように下端側から積み上がる。即ち、第2収納室では硬貨Kが平積み収納される。積み上がった硬貨列は上下方向に延びる。払出しの際は円筒状部材の下端側から必要な枚数の硬貨Kを排出する。
【0050】
第2収納室1Abの下端には、第2回転板22が平積みされた硬貨Kと平行な方向に配置されている。第2回転板22は、その上面の外周寄りの位置に第2凸部25を有する。第2凸部25は、硬貨K1枚分の高さを有する。第2回転板22が回転すると第2凸部25が第2収納室1Abの下端部を横切る。第2収納室1Abの下端部の側壁には、下端部を横切る第2凸部25を避けるように切欠きが形成されている。
【0051】
第2収納室1Abに収容された硬貨は、最下端の硬貨Kの下面側が第2回転板22に接した状態で収容される。モータMAが逆回転する場合、それに伴って第2回転板22が回転する。第2回転板22に固定された第2凸部25が第2収納室1Abの下端を横切る場合、その第2凸部25が最下端の硬貨Kを側方から押す。押された最下端の硬貨Kが第2収納室1Abから排出されるように、第2収納室1Abの下端部には第2回転板22との間に硬貨K略一枚分の隙間ができるように第2排出口12bが形成されている。
【0052】
なお、モータMAからの駆動力は、第1回転板21と第2回転板22との間に設けられた第1連結ギア210(
図8参照)、連結軸230(
図8参照)および第2連結ギア220(
図8参照)を介して第2回転板22に伝達される。モータMAが逆方向に回転すると、第2回転板22および第2凸部25が回転する。やがて、最下端の硬貨Kは第2収納室1Abの第2排出口12bと反対側の側壁に先端側が当接した状態になる。その際、その硬貨Kを押す第2凸部25および第2回転板22と共に停止するように一方向クラッチが作用する。
【0053】
以上のように、2つの一方クラッチの作用により、モータMAが正回転すると第1収納室1Aaに収納された硬貨Kが第1排出口11bから1枚ずつ排出される。モータMAが逆回転すると第2収納室1Abに収納された硬貨Kが下端部の第2排出口12bから1枚ずつ排出される。
排出される硬貨Kの枚数は、第2回転板22が何周回ったか、即ちモータMAが逆回転した角度で管理できる。あるいは、第2排出口12bの付近にセンサを設けて排出される硬貨Kを検出し、その枚数を数えてもよい。
【0054】
≪フローチャート≫
次に、
図4〜
図7に基づき、この発明の実施形態1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cにおける硬貨出金処理の流れについて説明する。
図4は、実施形態1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cにおける硬貨出金処理の概要を示すフローチャートであり、
図5は、実施形態1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cの第1収納室1Aa,1Baおよび1Caにおける硬貨出金処理の手順を示すフローチャートであり、
図6は、実施形態1のモータMA,MBおよびMCの制御を示す説明図であり、
図7は、実施形態1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cの第2収納室1Ab,1Bbおよび1Cbにおける硬貨出金処理の手順を示すフローチャートである。
【0055】
図4のステップS101において、制御部105は、出金すべき硬貨Kの出金額を設定し、その出金額に基づき、硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cから出金すべき硬貨Kの枚数を決定する(ステップS101)。
【0056】
例えば、出金すべき硬貨Kの出金額が296円の場合、制御部105は、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaから1円硬貨を1枚、第2収納室1Abから5円硬貨を1枚の計6円分の硬貨Kを出金させる。
また、制御部105は、硬貨収納ユニット1Bの第1収納室1Baから10円硬貨を4枚、第2収納室1Bbから50円硬貨を1枚の計90円分の硬貨Kを出金させる。
さらに、制御部105は、硬貨収納ユニット1Cの第1収納室1Caから100円硬貨を2枚の計200円分の硬貨Kを出金させるが、第2収納室1Bbから500円硬貨の出金は不要となる。
【0057】
このように、制御部105は、出金額に応じて各硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cから必要な枚数の硬貨Kを出金する処理を行うが、以下の説明では、硬貨収納ユニット1Aを代表として説明する。ここで、第1収納室1Aaに格納された硬貨(1円硬貨)を硬貨K
1、第2収納室1Abに格納された硬貨(5円硬貨)を硬貨K
2として説明する。他の硬貨収納ユニット1Bおよび1Cについても同様である。
【0058】
次に、ステップS102において、制御部105は、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaから硬貨K
1の出金が必要か否かを判定する(ステップS102)。
【0059】
硬貨K
1の出金が必要な場合(ステップS102の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS103において、硬貨K
1の出金処理を行う(ステップS103)。その後、制御部105は、ステップS104の判定を行う(ステップS104)。
なお、硬貨K
1の出金処理の詳細については、
図5の説明において後述する。
【0060】
一方、硬貨K
1の出金が不要な場合(ステップS102の判定がNoの場合)、制御部105は、ステップS104の判定を行う(ステップS104)。
【0061】
次に、ステップS104において、制御部105は、硬貨収納ユニット1Aの第2収納室1Baから硬貨K
2の出金が必要か否かを判定する(ステップS104)。
【0062】
硬貨K
2の出金が必要な場合(ステップS104の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS105において、硬貨K
2の出金処理を行う(ステップS105)。その後、制御部105は、硬貨収納ユニット1Aの出金処理を終了させる。
なお、硬貨K
2の出金処理の詳細については、
図7の説明において後述する。
【0063】
一方、硬貨K
2の出金が不要な場合(ステップS104の判定がNoの場合)、制御部105は、硬貨収納ユニット1Aの出金処理を終了させる。
【0064】
≪第1収納室1Aaにおける硬貨排出処理の手順≫
次に、
図5および
図6に基づき、硬貨収納ユニット1Aの第1収納室1Aaにおける硬貨出金処理の手順について説明する。
【0065】
図5のステップS201において、制御部105は、モータMAを正回転方向NRに回転させる(ステップS201)。
ここで、硬貨収納ユニット1Aにおいて、第1収納室1Aa内の硬貨K
1の払い出し時に回転する第1回転板21、第2回転板22、モータMAおよび各ギアの回転方向を「正回転方向NR」とし、第1収納室1Ab内の硬貨K
2の払い出し時に回転する第1回転板21、第2回転板22および各ギアの回転方向を「逆回転方向IR」として説明する。
硬貨収納ユニット1Bおよび1Cについても同様である。
【0066】
図6に示すように、制御部105は、モータ駆動IC111に回転制御信号を送信することにより、モータMA,MBおよびMCの回転を制御する。
【0067】
モータ駆動IC111は、制御部105から回転制御信号を受けて、電源回路113から各モータMA,MBおよびMCに供給される電源のON/OFFおよび電圧の極性を制御するICである。
モータ駆動IC111は、電源回路113から各モータMA,MBおよびMCに供給される電圧の極性により、各モータMA,MBおよびMCの回転方向(すなわち、正回転方向NRまたは逆回転方向IR)を制御することができる。
【0068】
続いて、
図5のステップS202において、制御部105は、モータロックが検出されたか否かを判定する(ステップS202)。
【0069】
モータロックが生じてモータMAの回転が停止すると、モータMAのコイルを流れる電流回路が常時繋がったままになり、ショートした状態となるため、モータ過電流が発生する。それゆえ、モータロックが生じたか否かは、モータ駆動IC111に流れる電流をモニタすることで検出することができる。
図6に示すように、モータ駆動IC111は、モータ過電流を検出したとき、制御部105に通知する。
【0070】
モータロックが検出された場合(ステップS202の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS203〜S206において、モータロックの解除処理を実行する(ステップS203〜S206)。
【0071】
一方、モータロックが検出されていない場合(ステップS202の判定がNoの場合)、制御部105は、ステップS207において、リトライカウンタを0にリセットする(ステップS207)。
ここで、リトライカウンタは、硬貨K
1のモータロック解除処理において、モータロックを何度リトライするかの基準を定めるカウンタである。
【0072】
続いて、ステップS208において、制御部105は、硬貨K
1について指定枚数の出金が完了したか否かを判定する(ステップS208)。
【0073】
硬貨K
1について指定枚数の出金が完了した場合(ステップS208の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS209においてモータMAの回転を停止させる(ステップS209)。その後、制御部105は、ステップS210の処理を行う(ステップS210)。
【0074】
一方、硬貨K
1について指定枚数の出金が完了していない場合(ステップS208の判定がNoの場合)、制御部105は、ステップS201の処理を繰り返す(ステップS201)。
【0075】
次に、ステップS210において、制御部105は、モータロックが未だに解除されていない場合、報知部109(
図6参照)にエラー情報を報知させる(ステップS210)。
ここで、報知部は、ディスプレイ等の表示部にエラー情報を報知するものであってもよいし、スピーカー等の音声発生部によりエラー情報を報知するものであってもよい。
その後、制御部105は、第1収納室1Aaにおける硬貨出金処理を終了させる。
【0076】
次に、モータロック解除処理について説明する。
ステップS202において、モータロックが検出されたとき、制御部105は、ステップS203において、モータMAを停止させる(ステップS203)。
具体的には、制御部105は、モータ駆動IC111にモータMAを停止させる制御信号を送信し、モータIC111は、逆極性の電圧をモータMAに印加してモータMAの正回転方向NRの回転を停止させる。
【0077】
続いて、ステップS204において、制御部105は、モータロック解除処理のリトライ回数が予め定められた規定回数未満か否かを判定する(ステップS204)。
モータロック解除処理のリトライ回数が予め定められた規定回数未満の場合(ステップS204の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS205においてリトライカウンタを+1だけ増加させる(ステップS205)。
規定回数は、例えば3回に設定されるが、硬貨K
1の詰まりの解消およびユーザーの利便性を考慮して適切な回数に設定される。
【0078】
その後、続くステップS206において、モータMAを予め定められた時間、逆回転方向IRに回転させる(ステップS206)。その後、制御部105は、ステップS201の処理を繰り返す(ステップS201)。
【0079】
一方、モータロック解除処理のリトライ回数が予め定められた規定回数に達した場合(ステップS204の判定がNoの場合)、制御部105は、ステップS209において、モータMAの回転を停止させる(ステップS209)。その後、制御部105は、ステップS210の処理を行う(ステップS210)。
【0080】
このように、モータロックが生じたときに、予め定められた規定回数だけモータMAの正回転方向NRおよび逆回転方向IRの回転を繰り返すことにより、第1収納室1Aaにおける硬貨K
1の詰まりを解消することができる。
【0081】
≪第2収納室1Abにおける硬貨排出処理の手順≫
次に、
図7に基づき、硬貨収納ユニット1Aの第2収納室1Abにおける硬貨出金処理の手順について説明する。
【0082】
図7のステップS301において、制御部105は、モータMAを逆回転方向IRに回転させる(ステップS301)。
ここで、
図6に示すように、制御部105から指令を受けたモータ駆動IC111は、モータMAに印加する電圧の極性を反転させることにより、モータMAの回転を正回転方向NRから逆回転方向IRに移行させることができる。
【0083】
続いて、ステップS302において、制御部105は、硬貨K
2について指定枚数の出金が完了したか否かを判定する(ステップS302)。
【0084】
硬貨K
2について指定枚数の出金が完了した場合(ステップS302の判定がYesの場合)、制御部105は、ステップS303においてモータMAの回転を停止させる(ステップS303)。その後、制御部105は、第2収納室1Abにおける硬貨出金処理を終了させる。
【0085】
一方、硬貨K
2について指定枚数の出金が完了していない場合(ステップS302の判定がNoの場合)、制御部105は、ステップS301の処理を繰り返す(ステップS301)。
【0086】
図2および
図3の説明で述べたように、硬貨K
2が平積み収納される第2収納室1Abでは、硬貨K
2の詰まりによるモータロックは生じにくいため、モータロックの解除処理は採用していない。
これに対し、第1収納室1Aaは、様々な角度で硬貨K
1がランダムに収納されるため、硬貨K
1の詰まりが生じやすい。そのため、第1収納室1Aaにおいては、逆回転方向IRの回転により硬貨K
1の詰まりを解消するモータロック解除処理を設けている。
【0087】
しかしながら、第1収納室1Aaにおいてモータロックが生じたときに硬貨K
1の詰まりを解消すべく、モータMAを逆回転方向IRに回転させると、第2収納室1Abから硬貨K
2が繰り出されて、意図しない硬貨K
2の払出しが生じるおそれがある。
【0088】
そこで、このような問題を解決すべく、この発明の実施形態1の硬貨収納ユニット1A,1Bおよび1Cには、
図8および
図9に示すような硬貨繰り出し機構が設けられている。
以下の説明では、硬貨収納ユニット1Aを代表として説明するが、他の硬貨収納ユニット1Bおよび1Cについても同様である。
【0089】
≪硬貨収納ユニット1Aの硬貨繰り出し機構≫
以下、
図8〜
図10に基づき、硬貨収納ユニット1Aの硬貨繰り出し機構について説明する。
図8(A)は、実施形態1の各硬貨収納ユニット1Aの硬貨繰り出し機構において、モータMAの正回転方向NRの回転時の動作を示す説明図であり、
図8(B)は、実施形態1の各硬貨収納ユニット1Aの硬貨繰り出し機構において、モータMAの逆回転方向IRの回転時の動作を示す説明図であり、
図9(A)は、
図8(A)に示す第1連結ギア210を上側からみた説明図であり、
図9(B)は、
図8(B)に示す第1連結ギア210を上側からみた説明図であり、
図10(A)は、
図8(A)に示す第1連結ギア210を上側からみた説明図であり、
図10(B)は、
図10(A)の状態から第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転を開始したときの状態を示す説明図であり、
図10(C)は、
図10(B)の状態から第1連結ギア210を約180°逆回転方向IRに回転させたときの状態を示す説明図であり、
図10(D)は、
図10(B)の状態から第1連結ギア210を約360°逆回転方向IRに回転させたときの状態を示す説明図である。
なお、説明の便宜のため、
図8〜
図10では、各ギアおよび回転板を支持する軸および支持部材の図示を省略している。
【0090】
≪モータMAの正回転方向NRの回転時における硬貨繰り出し機構の動作≫
最初に、モータMAの正回転方向NRの回転時における硬貨繰り出し機構の動作について説明する。
図8(A)において、モータMAからの回転駆動力は、モータギア200を介して、第1収納部1Aaの第1回転板21に伝達され、第1回転板21の回転により第1収納室1Aa内の硬貨K
1が外部に排出される。
【0091】
また、第1回転板21の回転に連動して、第1連結ギア210が回転する。
図8(A)に示すように、第1連結ギア210は、上面の周縁部に係合凸部210aが固定され、第1連結ギア210の中心の貫通孔に連結軸230の上端が挿通されているが、第1連結ギア210は、連結軸230に固定されず、連結軸230に対して回転しうるように連結されている。
【0092】
また、連結軸230の上端には、連結軸230とともに回転し、第1連結ギア210の上面に設けられた係合凸部210aと係合しうる位置に係合片230aが設けられている。
図9(A)に示すように、第1連結ギア210の上面の係合凸部210aが係合片230aと係合したとき、第1連結ギア210の回転力が係合凸部210aとの係合を介して連結軸230に伝達される。このとき、連結軸230は、第1連結ギア210とともに正回転方向NRに回転する。
【0093】
一方、連結軸230の下端は、第2連結ギア220の中心の貫通孔に挿通されており、さらに、連結軸230と第2連結ギア220との間には、ワンウェイクラッチ241が設けられている。
【0094】
ワンウェイクラッチ241は、
図8(A)および(B)に示すように、連結軸230の逆回転方向IRの回転力を第2連結ギア220に伝達するが、連結軸230の正回転方向NRの回転力は伝達しないように構成されている。
【0095】
このように、ワンウェイクラッチ241により、連結軸230の正回転方向NRの回転力が第2連結ギア220に伝達されないため、第2連結ギア220は正回転方向NRには回転せず、また、第2連結ギア220に連動した第2回転板22も正回転方向NRには回転しない。
【0096】
このように、モータMAの正回転方向NRの回転時には、第1回転板21が回転するが、第2回転板22は回転しないため、硬貨K
1のみを繰り出すことが可能となる。
【0097】
≪モータMAの逆回転方向IRの回転時における硬貨繰り出し機構の動作≫
次に、モータMAの逆回転方向IRの回転時における硬貨繰り出し機構の動作について説明する。
図8(B)に示すように、モータMAを逆回転方向IRに回転させたとき、モータギア200は、
図8(A)とは反対方向に回転し、モータギア200の回転駆動力が第1回転板21に伝達される。
【0098】
また、第1回転板21の回転に連動して、第1連結ギア210が回転する。
図9(B)に示すように、第1連結ギア210の上面の係合凸部210aが係合片230aと係合したとき、第1連結ギア210の回転力が係合凸部210aとの係合を介して連結軸230に伝達される。
それゆえ、連結軸230は、第1連結ギア210とともに逆回転方向IRに回転する。
【0099】
また、ワンウェイクラッチ241により、連結軸230の逆回転方向IRの回転力が第2連結ギア220に伝達されるため、
図8(B)に示すように、第2連結ギア220も第1連結ギア210とともに逆回転方向IRに回転する。
その結果、第2連結ギア220に連動した第2回転板22も逆回転方向IRに回転するため、硬貨K
2の操り出しが可能となる。
【0100】
ところで、従来の硬貨繰り出し機構においては、モータMAの回転駆動力がギアを介して直接、第1回転板21および第2回転板22に伝達される機構を有していた。それゆえ、第1収納室1Aaにおいてモータロックが生じたときに、硬貨K
1の詰まりを解消すべくモータMAを逆回転方向IRに回転させると、モータMAの回転駆動力を受けて第2回転板22も逆回転方向IRに回転するため、第2収納室1Abからも硬貨K
2が繰り出されて、意図しない硬貨K
2の払出しが生じるおそれがあった。
【0101】
このような問題を解決すべく、この発明の実施形態1の硬貨繰り出し機構においては、第1回転板21が逆回転方向IRに回転しても、その回転力がすぐに第2回転板22に伝達されず、第1回転板21がある規定回数、回転した後に第2回転板22が回転を開始するように構成されている。
【0102】
≪モータMAの逆回転方向IRの回転時における第2収納室1Abからの硬貨K
2の繰り出し遅延機構≫
以下、
図10に基づき、この発明の実施形態1に係るモータMAの逆回転方向IRの回転時における第2収納室1Abからの硬貨K
2の繰り出し遅延機構について説明する。
【0103】
図10(A)に示すように、第1連結ギア210を正回転方向NRに回転させた後、
図10(B)に示すように、第1連結ギア210を逆回転方向IRに反転させたとする。
【0104】
図10(A)において、係合凸部210aと係合片230aとの係合を介して、第1連結ギア210の正回転方向NRの回転力が連結軸230に伝達される。
一方、
図10(B)において、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転を開始すると、係合凸部210aと係合片230aとの係合が解除されるため、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転力が連結軸230に伝達されなくなる。
【0105】
また、
図10(C)に示すように、第1連結ギアを約180°逆回転方向IRに回転した場合においても、係合凸部210aは、係合片230aから離れた位置にあるため、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転力が連結軸230に伝達されない。
【0106】
しかしながら、
図10(D)に示すように、第1連結ギア210がほぼ1回転して係合凸部210aが再び係合片230aと係合すると、当該係合を介して、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転力が連結軸230に伝達されるようになる。
【0107】
このように、第1連結ギア210が正回転方向NRの回転から逆回転方向IRの回転に転じた場合、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転力は、第2回転板22にすぐに伝達されず、ある程度の遅延時間DTが生じる。
それゆえ、モータロックが生じたときに、硬貨K
1の詰まりを解消すべくモータMAを逆回転方向IRに回転させたとしても、当該遅延時間DTが経過するまで(あるいは、当該遅延時間DTに対応する規定回転数だけモータMAが回転するまで)、第2収納室1Abから硬貨K
2が繰り出されることがない。
【0108】
≪モータMAのモータロック解除動作の一例≫
次に、
図11に基づき、モータMAのモータロック解除動作の一例について説明する。
図11は、硬貨収納ユニット1AのモータMAのモータロック解除動作の一例を示すフローチャートである。
【0109】
図11のステップS401において、硬貨K
1の出金処理中にモータロックが検出された場合(ステップS401)、制御部105は、続くステップS402において、モータMAを停止後、予め定められた時間、逆回転方向IRに回転する(ステップS402)。
【0110】
ここで、第1連結ギア210の回転を正回転方向NRから逆回転方向IRに反転させて、係合凸部210aが係合片230aとの係合が解除された後、再び係合片230aと係合するまでに要する遅延時間をDTとしたとき、モータMAの逆回転方向IRの回転時間は遅延時間DT以下であることが望ましい。
【0111】
実施形態1において、遅延時間DTを1000msとしたとき、モータMAの逆回転方向IRの回転時間を遅延時間DTよりも短い900msとすることで、第2収納室1Abから硬貨K
2が繰り出されることなく、モータロックの解除動作を行うことができる。
【0112】
次に、ステップS403において、制御部105は、モータMAを停止後、再び正回転方向NRに回転させる(ステップS403)。
このとき、モータMAの正回転方向NRの回転時間をステップS402の逆回転方向IRの回転時間900msよりも短い800msとすることで、係合凸部210aが係合片230aと再び係合する位置まで第1連結ギア210が回転することなく、モータロックの解除動作を行うことができる。
【0113】
続いて、ステップS404において、再びモータロックが検出されると(ステップS404)、制御部105は、硬貨K
1の詰まりが未だ解消されていないものとして、続くステップS405において、モータMAを停止後、再び800ms逆回転方向IRに回転させる(ステップS405)。
【0114】
次に、ステップS406において、モータロックが解除されたことを検出すると(ステップS406)、制御部105は、続くステップS407において、硬貨K
1の出金処理を再開する(ステップS407)。
【0115】
このようにして、第1連結ギア210の逆回転方向IRの回転力が、第2回転板22に伝達されない範囲内で、1つのモータMAを正回転方向NRまたは逆回転方向IRに繰り返し回転させることにより、意図しない硬貨K
2の払出しを生じさせることなく、モータのロック状態を解除する自動釣銭入出金機100を実現できる。
【0116】
(実施形態2)
モータMAの逆回転方向IRの回転時において、係合凸部210aの回転位置を光センサ等でモニタし、第1連結ギア210がほぼ1回転して係合凸部210aが再び係合片230aと係合する直前の位置で、モータMAの逆回転方向IRの回転を停止させるようにしてもよい。
【0117】
このようにすれば、係合凸部210aが再び係合片230aと係合するまでのモータMAの回転数または回転時間を予め設定しなくても、適切な位置でモータMAの回転を停止させることができる。
【0118】
(実施形態3)
第1回転板21および第2回転板22の間の回転の比率または硬貨K
1,K
2が排出されるまでの時間(または角度)を調整することにより、モータMAの回転が正回転方向NRから逆回転方向IRに反転後、硬貨K
2が繰り出されるまでの遅延時間DTが生じるようにしてもよい。
【0119】
例えば、硬貨K
2が排出される位置まで第2回転版22が回転する前に、第1回転板21が大きく回転して硬貨K
1の詰まりが解消されるように、第1回転板21および第2回転板22の間の回転の比率または硬貨K
1,K
2が排出されるまでの時間(または角度)を調整する。
【0120】
このようにすれば、第1回転板21および第2回転板22の間の回転の比率または硬貨が排出されるまでの時間(または角度)を調整することで、意図しない硬貨K
2の払出しを生じさせることなく、モータロックを解除する自動釣銭入出金機100を実現できる。
【0121】
(実施形態4)
モータロックの発生時にモータMAの回転を正回転方向NRから逆回転方向IRに転じたときに、硬貨K
2が繰り出されるまでの遅延時間DTが長くなるように、第1凸部24aと24bおよび第2凸部25の位置を調整するようにしてもよい。
【0122】
このようにすれば、第1凸部24aと24bおよび第2凸部25の位置を調整することで、意図しない硬貨K
2の払出しを生じさせることなく、モータロックを解除する自動釣銭入出金機100を実現できる。
【0123】
(実施形態5)
第2凸部25を第2回転板22内に収納可能に設け、モータロックの発生時にモータMAの回転を正回転方向NRから逆回転方向IRに転じたときに、第2回転板22の上面の第2凸部25を予め定められた時間、第2回転板22内に収納するようにしてもよい。
【0124】
このようにすれば、モータMAの逆回転方向IRの回転時に予め定められた時間、第2凸部25によって第2収納室1Abから硬貨K
2が繰り出されなくなるため、連結ギア等を設けることなく、簡単な機構で意図しない硬貨K
2の払出しを生じさせることなく、モータロックを解除する自動釣銭入出金機100を実現できる。
【0125】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。